説明

スカム掻き寄せ機

【課題】
水処理施設の沈殿池等に浮遊するスカムをスカム排出手段へ確実に掻き寄せるスカム掻き寄せ機を提供すること。
【解決手段】
スカム掻き寄せ機10を、スカムSをトラフ41に向かって掻き寄せるフライト板21と、フライト板21をガイドするフレーム23と、フライト板21を往復運動させるエアーシリンダ24と、フライト板21を上下方向へ移動させるエアーシリンダ30と、前記2つのシリンダの動作を制御する制御手段CBとで構成し、水処理設備の沈殿池1に浮遊するスカムを外部へ排出するスカム排出手段40の近傍に設けることによって、スカムSをスカム排出手段40へ確実に掻き集めることを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理設備の沈殿池等における水面上の浮遊物(スカム)を効果的にスカム排出手段に向けて掻き寄せるスカム掻き寄せ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水処理設備の沈殿池等では、水面に浮遊物(スカム)が滞留し、これが沈殿池流出水の悪化、悪臭発生等の原因となり水の浄化処理の妨げになるため、浮遊するスカムを随時取り除いてやる必要がある。この為、スカム除去装置として、沈殿池の幅一杯の長さを有する円筒形状でスカム流入口が開口されたパイプスキマーや、上面が開口したトラフなどのスカム排出手段を設けるとともに、沈殿池内に水没させた無端チェーンに掻き寄せ板(フライト板と称される)を設けてスカムをスカム排出手段の流入口に向けて掻き寄せていた。
【0003】
ところが、無端チェーンを使用したスカム掻き寄せ機のフライト板は、構造上スカム排出手段の流入口へ通常2〜3mまでしか近づけることができない。また、前記円筒形状のパイプスキマーの場合、長さが長いのでスカム流入口への水の越流速度はパイプスキマーの流出口に近いほど速く、反対側ほど遅くなる。このため、越流速度の遅い方の水面上に浮遊するスカムがそのまま水面に滞留し易く、うまく除去できないという問題があった。
【0004】
この問題を解決する為に、スカム排出手段と水没しているスカム掻き寄せ機の間へ、水面上から無端チェーンに設けられたフライト板を下ろして、浮遊するスカムをスカム排出手段近くへ掻き寄せるスカム掻き寄せ機が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、スカム排出手段と水没しているスカム掻き寄せ機との間へ水面上から下ろしたフライト板が、水没しているスカム掻き寄せ機の動作を利用して、スカム排出手段方向へ移動することによりスカムをスカム排出手段近くへ掻き寄せるスカム掻き寄せ機等が考案されていた(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2000−335720号公報
【特許文献2】特開平9−327691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述の特許文献1又は特許文献2に記載されたような機械では、設備が大型化することにより設置が困難であったり、構造が複雑な為に汚水などの影響を受けやすく耐久性などに問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題に対してなされたもので、水処理施設の沈殿池等に浮遊するスカムをスカム排出手段へ確実に掻き寄せるスカム掻き寄せ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、沈殿池に浮遊するスカムを外部に排出するスカム排出手段の近傍に設けられ、スカムを前記排出手段に向かって掻き寄せるスカム掻き寄せ機において、掻き寄せ板と、前記掻き寄せ板を掻き寄せ開始位置と掻き寄せ終了位置との間で往復運動させる往復駆動手段と、前期掻き寄せ板の往復運動をガイドするフレームと、前記掻き寄せ板を上下方向に移動する上下方向駆動手段と、前記往復駆動手段と上下方向駆動手段との動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明によれば、スカム排出手段付近まで流れてきて停滞しているスカムをスカム排出手段内へ効果的に取り込むことができる為、浮遊するスカムを確実に除去することが可能になる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、前記往復駆動手段と前記上下方向駆動手段には流体シリンダが用いられていることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明によれば、水処理設備に標準的に使われている空圧、油圧などの動力を利用してスカム掻き寄せ機を駆動させることが可能になる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記制御手段は、前記掻き寄せ板を掻き寄せ開始位置から掻き寄せ終了位置に向けて移動させる際には掻き寄せ板が水中に降下するように、また、掻き寄せ終了位置から掻き寄せ開始位置に戻す際には掻き寄せ板が水面から上昇するように、前記上下方向駆動手段を制御することを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明によれば、スカムを掻き寄せる際には掻き寄せ板が着水しており、掻き寄せ板を戻す際には水面から上がっている為、スカムをスカム排出手段の方向にのみ掻き寄せることが可能になり、確実にスカムを除去する事ができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明のスカム掻き寄せ機によれば、スカム排出手段の近傍に設置できるとともに、単純な機構で、且つ設置済みの動力を用いてスカム掻き寄せ機を駆動させることができ、水処理施設の沈殿池等に浮遊するスカムをスカム排出手段へ確実に掻き寄せることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下添付図面に従って本発明に係るスカム掻き寄せ機について好ましい実施の形態について詳説する。尚、各図において同一部材には同一の番号または記号を付している。
【0016】
最初に、本発明に係るスカム掻き寄せ機の機構について説明する。図1は本発明に係るスカム掻き寄せ機のスカム掻き寄せ時の側面図、図2は平面図、図3はスカム掻き寄せ機の掻き寄せ開始位置復帰時の側面図である。
【0017】
スカム掻き寄せ機10は、図1のようにスカムSが浮遊する沈殿池1の水面に向かって梁32からスペーサ33を介して長方形の枠型の土台31が設けられている。
【0018】
前記土台31の四隅には、一対の耳板27Aが水面に向かって設けられており、それぞれの耳板の間にはピン28によりリンク棒29が揺動可能に取り付けられている。土台31から下がるリンク棒29の下端には土台31に向かって四隅に一対の耳板27Bを有するフレーム23が、耳板27Bとピン28とによってリンク棒29に対して揺動可能に取り付けられている。
【0019】
土台31には、中央よりも図1に示すA側寄りに取り付け柱34が設けられ、取り付け柱34にはフレーム23を上下運動させる上下方向駆動手段としてのエアーシリンダ(流体シリンダ)30が設けられている。
【0020】
取り付け柱34に設けられたエアーシリンダ30の一端は揺動可能に支持され、エアーシリンダ30のシャフト先端はフレーム23に揺動可能に取り付けられ、エアーシリンダ30が収縮することにより、フレーム23は図1の状態から図3に示す状態まで上下方向に移動する。
【0021】
フレーム23には、図2に示すように、スカムSを掻き寄せる為に、沈殿池の幅一杯の長さを有する掻き寄せ板(フライト板)21がブロック22に設けられ、フレーム23の側面にはガイド溝25が設けられており、ブロック22に設けられたバー26がフレーム23の長手方向に沿って移動可能なようにガイドされている。また、フライト板21を往復運動させる往復駆動手段としてのエアーシリンダ(流体シリンダ)24が、図2に示すB側へ設けられている。
【0022】
エアーシリンダ24とエアーシリンダ30とは、水処理設備に広く用いられている動力としての空圧を利用して動作しており、水処理設備内又は近傍に設けられた制御手段としての制御装置CBによって制御されている。
【0023】
エアーシリンダ24が収縮してフライト板21が図1に示すB側に移動する際には、エアーシリンダ30は伸張しており、フレーム23が図1で示す位置で維持され、フライト板21が沈殿池1内に一部沈んでいる。
【0024】
エアーシリンダ24が完全に収縮し、フライト板21が掻き寄せ終了位置KEまで移動するとエアーシリンダ30も収縮し、フレーム23は図3に示す位置で維持され、フライト板21は水面に触れなくなる。この状態でエアーシリンダ24が完全に伸張してフライト板21がA側の掻き寄せ開始位置KSへ戻ると、エアーシリンダ30が再び伸張し、フレーム23は図1の状態に戻り再びフライト板21の一部が水に沈む。
【0025】
これらの構成により、本発明のスカム掻き寄せ機10は、単純な機構の為容易にスカム排出手段の近傍に設けることが可能であり、設置済みの動力を用いて駆動可能となる。また、スカムSを掻き寄せる際にはフライト板21の一部が水没し、掻き寄せ開始位置KSへ戻る際には水面から上がっている為、水面上に浮かぶスカムSを一方向にのみ確実に掻き集めることが可能である。
【0026】
次に本発明に係るスカム掻き寄せ機10とスカム排出手段とを組み合わせたスカム除去装置について説明する。図4は本発明のスカム掻き寄せ機10が設置されたスカム除去装置を概念的に表わした断面図、図5はスカム掻き寄せ機10を沈殿池1に設置した状態を表わす平面図である。
【0027】
沈殿池1は図5に示すように隔壁2によって複数(図5においては3個)の沈殿槽1A、1B、1Cに分けられ、各槽には図4に示すように、水没しているチェーン式スカム掻き寄せ機90と、本発明に係るスカム掻き寄せ機10と、スカム排出手段40とが設けられている。
【0028】
チェーン式スカム掻き寄せ機90は、図示しない駆動装置と複数のローラ93とによって回転する無端チェーン92を有している。チェーン92にはフライト板91が取り付けられ、フライト板91はチェーン92によって移動しながら水面上のスカムSをスカム排出手段40へ向かって掻き集め、回転して逆方向へ進む際に沈殿池1の底に溜まった汚泥を掻き寄せ、図示しない汚泥ピットへ汚泥を運ぶ。
【0029】
スカム排出手段40は、前記沈殿池1の水面に浮遊する前記スカムSを流入させて排出するトラフ41を有している。トラフ41はステンレススチール製又は樹脂製で、上方が開口したU字形断面を有する箱状で、沈殿池1の幅方向一杯の長さを有している。
【0030】
トラフ41は、トラフ本体41AとU字形断面の一側面(図4における左側側面)の上半分を形成するトラフ本体41Aとは別部材である側板42とで構成されている。側板42は、支点部材43によってトラフ本体41Aに対して揺動自在に連結されている。また、この側板42とトラフ本体41Aとの連結部はゴム製のシール部材44で覆われ、スカムSやその他の異物によって支点部材43の動きが阻害されることと水漏れ防止を行っている。
【0031】
側板42の上部には中空のフロート45が取り付けられている。また、側板42の長手方向中央部には、取り付けブロック47及び支点部材48を介してロッド46が揺動自在に連結され、上方に屹立している。更に、ロッド46の先端部には受け台49が取り付けられ、受け台49の上には複数のドーナツ状の錘50、50、・・・が載置されている。
【0032】
トラフ41は、沈殿池1の隔壁2に設けられた梁(もしくは架台)32にビーム52を介して取り付けられ、沈殿池1内に垂下される。この時、トラフ本体41Aの側板42が取り付けられた一面とは反対側の一面(図4における右側側面)の上部は水面から突出するように垂下される。
【0033】
また、側板42はトラフ本体41Aに対して揺動自在に連結され、フロート45による浮力と側板42及びロッド46や錘50、50・・・等の質量による重力方向の力とを受けている。このため、錘50を調節することにより、側板42の上端を所定の水面下位置Hに調整することができるようになっている。この水面下位置Hは、沈殿池1の水位の変化があっても常に一定に保たれる。
【0034】
なお、ロッド46は、梁32に形成された長孔32Aによって図4の紙面と垂直方向が規制され、長孔32Aの長手方向に案内されるようになっており、側板42の揺動に対応して移動できるようになっている。
【0035】
スカム排出手段40は、側板42が所定量揺動した位置で側板42を固定する側板固定手段60を有している。側板固定手段60は、ロッド46に固定されたラック部材61と、ガイドブロック64によって左右に移動可能に設けられた爪部材62と、ホルダ66によって梁51に固定されたエアーシリンダ63とからなっている。
【0036】
ガイドブロック64は取り付け板65によってホルダ66に固定され、爪部材62はエアーシリンダ63のシャフトに取り付けられて、エアーシリンダ63の作動によって左右に移動される。
【0037】
側板42の揺動を固定する時は、エアーシリンダ63によって押し出された爪部材62がラック部材61を押圧してロッド46を、梁32に形成された長孔32Aの左端部に押付けるとともに、爪部材62の先端がラック部材61のラック溝に噛合い、ロッド46が固定されて側板42が固定される。また、エアーシリンダ33のシャフトが後退することによって、側板42の固定が解除される。
【0038】
トラフ41は、底部に排水口41Bが形成されており、スカム排出手段40はこの排水口41Bを開閉する開閉手段70を有している。開閉手段70は、排水口41Bを閉鎖可能なゴム製又は樹脂製のボール栓71、ホルダ75で梁51に固定されたエアーシリンダ74、ローラ73を介してボール栓71とエアーシリンダ74のシャフトとを接続するワイヤ72とからなっている。
【0039】
エアーシリンダ74のシャフトを後退させることによって排水口41Bが開口され、トラフ41内の水とスカムSが排出され、エアーシリンダ74のシャフトを前進させることによって排水口41Bが閉鎖されるようになっている。
【0040】
排水口41Bから排出されたスカムSは、図5に示す副管4Aを経由して、沈殿池1の前記複数の沈殿槽1A、1B、1Cをつなぐ主排水管4に排出される。主排水管4を通ったスカムSは最終的に最終の沈殿槽(図5の場合は沈殿槽1C)の外側に設けられたスカムピット3に排出される。
【0041】
また、スカム排出手段40は、側板42を上方に揺動(図4においては時計方向に揺動)させるリフト手80を有している。リフト手段80は、ロッド46に固定された受け板81と、ホルダ83で梁32に固定されたエアーシリンダ82とからなっている。
【0042】
エアーシリンダ82のシャフトを前進させることによって受け板81を介してロッド46を押し上げ、側板42を上方に揺動させ、エアーシリンダ82のシャフトを後退させることによって側板42を元に戻すようになっている。
【0043】
側板42を上方に最大に揺動させた場合、側板42の上端が水面上に十分突出できるようになっており、この状態にすることによりトラフ41内への水の流入を停止する事ができる。
【0044】
スカム排出手段40は以上のような構造となっているため、側板42の上端を沈殿池1の水位の変化に関係なく常に水面下位置Hを所定の値に維持することができ、水面に浮遊するスカムSを常時トラフ41内に流入させることができる。
【0045】
実際には、側板42の上端の水面下位置Hが20mm程度になるように、錘50を調整する。側板42の上端の水面下位置Hが10mm程度以下では水面に浮遊するスカムSがトラフ41内に流入し難い。
【0046】
また、開閉手段70を作動させてトラフ41内の水とスカムSを排出する時に、固定手段60を作動させて側板42が揺動しないように固定する。これによりトラフ41内の排水中に側板42のふらつきを抑えることができ、支点部材43の損傷を防ぎ、トラフ41の長寿命化を図ることができる。
【0047】
また、リフト手段80を作動させて側板42の上端を水面上に十分突出させ、この状態で開閉手段70を作動させることにより、トラフ41内に水が入ってこないので、トラフ41内の水とスカムSとを全排出することができる。
【0048】
このようなチェーン式スカム掻き寄せ機90と、スカム排出手段40とが設置された沈殿池1に、本発明に係るスカム掻き寄せ機10が前述の通り、沈殿池1に向かってフライト板21の一部が、沈殿池1内のチェーン式スカム掻き寄せ機90と、スカム排出手段40との間に水没するように設けられている。
【0049】
エアーシリンダ24が収縮してフライト板21が図3に示す掻き寄せ終了位置KEに向けて移動しながらスカムSをトラフ41へ掻き寄せる際には、エアーシリンダ30は伸張しており、フレーム23が図1で示す位置で維持され、フライト板21が沈殿池1内に一部沈んでいる。
【0050】
エアーシリンダ24が完全に収縮し、フライト板21が元の掻き寄せ開始位置KSに戻る際には、エアーシリンダ30が収縮しスカム掻き寄せ機構20が上昇し、フライト板21が水面から上がる。この状態でエアーシリンダ24が伸張してフライト板21が沈殿池1の水面に触れることなく掻き寄せ開始位置KSまで戻ると、エアーシリンダ30が伸張してスカム掻き寄せ機構20が下降してフライト板21の一部が再度水没する。
【0051】
スカム掻き寄せ機10は、以上の動作を繰り返してスカムSをスカム排出手段40へ掻き寄せる。
【0052】
これらの構成により、本発明のスカム掻き寄せ機10は、スカムSを掻き寄せる際にはフライト板21の一部が沈殿池1に水没して掻き寄せ、掻き寄せ開始位置KSへ戻る際にはフライト板21が水面から上がっているためスカムを押し戻す事がなく、一方向にのみスカムSを掻き集める。よって、スカムSをスカム排出手段40へ確実に掻き集めることが可能である。
【0053】
次に本発明に係るスカム掻き寄せ機の別の実施形態について説明する。図6は別の実施形態に係るスカム掻き寄せ機が設置されたスカム除去装置を概念的に表わした断面図である。
【0054】
スカム掻き寄せ機100は、図6のように中央付近に上向きに設けられた一対の耳板104を持つフレーム105の一端が、壁106に設けられた一対の耳板103にピン28によって回転自在に設置されている。
【0055】
フレーム105を上下運動させる上下方向駆動手段としてのエアーシリンダ(流体シリンダ)101は、一端を壁106に耳板103よりも高い位置に設けられた一対の耳板102へピン28によって回転自在に取り付けられ、もう一端はフレーム105に設けられた耳板104へピン28により回転自在に取り付けられている。
【0056】
これによりフレーム105は耳板103とピン28を支点にして上下に回転運動することが可能となる。
【0057】
フレーム105には、前述のスカム掻き寄せ機10のフレーム23と同様に、沈殿池の幅一杯の長さを有するフライト板21がブロック22に設けられ、フレーム105の側面にはガイド溝25が設けられており、ブロック22に設けられたバー26がフレーム105の長手方向に沿って移動可能なようにガイドされている。また、フライト板21を往復運動させる往復駆動手段としてのエアーシリンダ24が、図6に示すA側へ設けられている。
【0058】
エアーシリンダ101とエアーシリンダ24とは、水処理設備に広く用いられている動力としての空圧を利用して動作しており、水処理設備内又は近傍に設けられた制御手段としての制御装置CBによって制御されている。
【0059】
スカムSをトラフ41へ向かって掻き寄せる際には、エアーシリンダ101が伸張してフレーム105が水面と水平になる位置まで下がり、フライト板21の一部が沈殿池1内に水没している。この状態でエアーシリンダ24が伸張し、水面に浮遊するスカムSをトラフ41へ掻き入れる。
【0060】
フライト板が掻き寄せ終了位置KEまで移動した後、掻き寄せ開始位置KSまで戻る際には、エアーシリンダ101が収縮して、フライト板21が完全に水面に触れない位置までフレーム105が上がる。この状態でエアーシリンダ24が収縮し、フライト板21がスカムSを掻き戻すことなく掻き寄せ開始位置KSまで戻る。フライト板が掻き寄せ開始位置KSまで戻ると、エアーシリンダ101が再び伸張し、フレーム105が水面と水平になる位置まで下がり、フライト板21の一部が沈殿池1内に水没する。
【0061】
スカム掻き寄せ機100は、以上の動作を繰り返してスカムSをスカム排出手段40へ掻き寄せる。
【0062】
これらの構成により、この別の実施形態に係るスカム掻き寄せ機100は、単純な機構の為容易にスカム排出手段の近傍に設けることが可能であり、設置済みの動力を用いて駆動可能となる。また、スカムSを掻き寄せる際にはフライト板21の一部が水没し、掻き寄せ開始位置KSへ戻る際には水面から上がっている為、水面上に浮かぶスカムSを一方向にのみ確実に掻き集めることが可能である。
【0063】
なお、前述した実施形態と別の実施形態とでは、各シリンダはエアーで駆動することになっているが、本発明はこれに限らず油圧等その他既知のシリンダを用いてもよい。
【0064】
以上説明したように、本発明によれば、単純な機構で、且つ設置済みの動力を用いてスカム掻き寄せ機を駆動させることができ、水処理施設の沈殿池等に浮遊するスカムをスカム除去手段へ確実に掻き寄せることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に係るスカム掻き寄せ機のスカム掻き寄せ時の側面図。
【図2】本発明の実施の形態に係るスカム掻き寄せ機の平面図。
【図3】本発明の実施の形態に係るスカム掻き寄せ機の掻き寄せ開始位置復帰時の側面図。
【図4】スカム掻き寄せ機が設置されたスカム除去装置を概念的に表わした断面図。
【図5】スカム掻き寄せ機を沈殿池に設置した状態を表わす平面図。
【図6】別の実施形態に係るスカム掻き寄せ機が設置されたスカム除去装置を概念的に表わした断面図。
【符号の説明】
【0066】
1…沈殿池,10、100…スカム掻き寄せ機,21…フライト板(掻き寄せ板),22…ブロック,23、105…フレーム,24…エアーシリンダ(往復駆動手段),25…ガイド溝,26…ガイドバー,27A、27B、102、103…耳板,28…ピン,29…リンク棒,30、101…エアーシリンダ(上下方向駆動手段),32…梁,40…スカム排出手段,41…トラフ,90…チェーン式スカム掻き寄せ機,CB…制御装置,KS…掻き寄せ開始位置,KE…掻き寄せ終了位置,S…スカム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池に浮遊するスカムを外部に排出するスカム排出手段の近傍に設けられ、スカムを前記排出手段に向かって掻き寄せるスカム掻き寄せ機において、
掻き寄せ板と、
前記掻き寄せ板を掻き寄せ開始位置と掻き寄せ終了位置との間で往復運動させる往復駆動手段と、
前期掻き寄せ板の往復運動をガイドするフレームと、
前記掻き寄せ板を上下方向に移動する上下方向駆動手段と、
前記往復駆動手段と上下方向駆動手段との動作を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするスカム掻き寄せ機。
【請求項2】
前記往復駆動手段と前記上下方向駆動手段には流体シリンダが用いられていることを特徴とする請求項1に記載のスカム掻き寄せ機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記掻き寄せ板を掻き寄せ開始位置から掻き寄せ終了位置に向けて移動させる際には掻き寄せ板が水中に降下するように、また、掻き寄せ終了位置から掻き寄せ開始位置に戻す際には掻き寄せ板が水面から上昇するように、前記上下方向駆動手段を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスカム掻き寄せ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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