スキャナおよびプリンタを用いた上書き印刷システム
【課題】 ある原稿から刷られた印刷物が複数部あり、それらの印刷物に別個に、ボールペン等で直接あるいは原稿の電子データを編集してデータが書き加えられた場合に、この新たな複数の書き込みを互いの印刷物に反映させる手段がない。
【解決手段】 原稿のデータを保存しておく。あらかじめ保存してある原稿データとの差分データおよびその座標を取得する。
【解決手段】 原稿のデータを保存しておく。あらかじめ保存してある原稿データとの差分データおよびその座標を取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙などの記録媒体から画像を読み取るスキャナ、原稿や画像データを処理する画像処理システム及びその制御方法、画像情報を記録媒体に印刷するプリンタに関する。特に、原稿との差分を検出して他の印刷物へ出力する画像処理システム及びその制御方法、プログラム、並びに画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、原稿への追記データを原稿が印刷された紙面(紙面)へ上書き印刷する方法として、紙面をスキャナによって取り込み、紙面と原稿が同一のものであることを確認した後、差分データを紙面へ上書き印刷する方法が提案されている。(特許文献1参照)
あるいは、紙面をスキャナによって取り込み、原稿の電子データと比較し、不一致領域を検出したときに、紙面上で前記不一致領域に対応する箇所が空白であればデータを追記する方法が提案されている。しかし不一致領域に画像がある場合には、予め設定された優先度に応じて、ファイルもしくは紙面のどちらかの画像のみが他方へ反映される。(特許文献2参照)
【特許文献1】特開平7-250237号公報
【特許文献2】特開平11-127341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では電子データのオリジナル画像データに追記・修正を行った際、追記画像データのみを紙面へ一度のみ上書きすることを目的としており、紙面への追記に関してはなんら保証するものではない。
【0004】
また、上記の特許文献2では、原稿の電子データへの追記及び紙面への追記の双方を考慮し、常に原稿と紙面の一致を測ることを提案している。しかし、電子データと紙面の双方に追記が発生している状態で更新を行おうとすると、競合処理に入った場合、あらかじめ設定されている優先順位に応じてどちらかの情報が失われてしまうことがある。
【0005】
本発明は上記した従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、原稿への追記データを他の紙原稿へ反映させるために上書き印刷することを可能にする。とくに、複数人の独立した追記画像データをお互いの紙面に最小限の手順で反映させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、オリジナル画像データを保存する手段と、追記画像データをスキャンする手段と、差分データを検出する手段と、追記画像データの優先度を決定する手段と、発生元を区別する手段と、オリジナルの原稿が印刷されている用紙の余白を検出する手段と、余白に1つ以上の差分データを配置する手段と、差分データ同士が重なる場合には優先度に応じて位置をずらして配置する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、同じ原稿からの複数部の印刷物の余白に書き込みが加えられた場合に、簡単な操作で互いの書き込み情報を共有することが可能になる。複数人の書き込み情報をオリジナル画像データを出力した印刷物に上書き印刷することができる。あるいは、白紙に対してオリジナル画像データと書き込み情報を同時に印刷することができる。書き込み情報の記入者を区別する情報を付加することも可能なため、効率的な情報共有と無駄な印刷用紙の使用量削減とが可能になる。
【0008】
また、本発明では出力したい追記データ同士の位置に重なりが生じる場合に、優先度の低いものの位置をずらすことで可能な限りの上書き情報を搭載することができる。その際、データの元の位置を明示しておくことが可能なため、ユーザが書き込んだ情報は失われずにすむ。
【0009】
さらに、上記の手段をもってしても入りきらないデータがある場合には、データを縮小することで可能な限りの上書き情報を搭載することができる。
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施例1)
本システムは同じ原稿からの複数部の印刷物(以下、印刷物)に対して独立にその余白に書き込みが加えられた場合に、各印刷物からその追記画像データを検出し、追記画像データを全てまとめて原稿の余白へ上書き印刷することを実現する処理である。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像処理システムの全体構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、本画像処理システムは、例えば、企業の事務所や事業所内等などでLAN104を有する環境で実現される。
【0014】
オフィス10内に構築されたLAN104には、印刷機能、スキャン機能、複写(コピー)機能、及びファクシミリ機能など複数の機能を有するMFP(Multi Function Printer)101と、印刷機能のみを有するSFP(ステップSingle Function Printer)102と、クライアントPC103とプリンタサーバ105が接続されている。
【0015】
クライアントPC103は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、キーボードやマウス等の操作部、及びモニタ等をそれぞれ備え、ユーザが画像データ(イメージデータ)を作成または編集するためのPC(Personal Computer)である。
【0016】
クライアントPC103は、MFP101及びSFP102の印刷を制御するプリンタドライバを有する。
【0017】
MFP101及びSFP102は、クライアントPC103から出力された印刷データを受信し、画像の印刷出力を行う。特に、MFP101はオートドキュメントフィーダ(ADF)または原稿台ガラス上に置かれた原稿から画像データを読み取り印刷出力を行う。
【0018】
図2は、図1のMFP101の内部構成を示すブロック図である。
【0019】
図2において、MFP101は、データの物理的な入出力に係わる機構、データの処理に係わる機構とインタフェースに係わる機構を備える。データの物理的な入出力に係わる機構は、ADFを含む原稿の画像を読み取るための画像読み取り部202と手動で給紙を行うための手差しトレー207を備える。データ処理装置203はデータの処理に係わる機構である。インタフェースに係わる機構は、本システムの使用に際して手動で設定を行うための設定UI206とLAN104に接続するためのネットワークIF205を備える。
【0020】
画像読み取り部202は、ADFまたは原稿台ガラス上に載置された原稿を不図示の光源で照射し、その反射光をレンズで固体撮像素子上に結像して、固体撮像素子からラスタ化された画像読み取り信号を600DPIの密度の画像信号として出力するものである。
【0021】
図3は、図1のプリンタサーバ105の内部構成を示すブロック図である。主にデータの保存に用いられ、本システムにおいては非常に重要な役割を担う機構である。
【0022】
ここで、オリジナルの画像データをオリジナル画像データ、余白に書き込みが加えられた画像データを追記画像データ、オリジナル画像データと追記画像データとの差を抽出したものを差分画像データとする。
【0023】
図3において、プリンタサーバ105はデータの保存に係わる機構とネットワークIF305を備える。オリジナル画像データ記憶部301はオリジナル画像データを、追記画像データ記憶部302は追記画像データを、差分データ画像記憶部303は差分画像データを保存する。前記プリンタサーバの各記憶部は、ネットワークIF305を介してネットワーク上のMFP101から参照され、本発明の処理に必要な画像にアクセスされる。
【0024】
本発明において主要な処理はスキャン機能とプリント機能である。これらの機能について、本システムにおいて重要なデータ記憶部301、302、303と設定UI部208をとりあげながら以下に説明する。
【0025】
MFP101はスキャン機能として、画像読み取り部202から出力された画像信号をページ単位で各記憶部へ保存する。このデータはオリジナル原稿データであればLAN104を介してプリンタサーバへ保存され、追記画像データであれば追記画像データ記憶部へ保存される。
【0026】
MFP101およびSFP102はプリント機能として、クライアントPC103から送信された画像データをプリンタサーバ105を介してネットワークIF205で受信する。受信したデータがオリジナル原稿データであればデータ処理装置203でラスタデータに変換した後、画像出力部204で用紙上に画像形成を行う。
【0027】
クライアントPC103からのプリントジョブは一般的に、プリンタサーバ105にスプールされた後、プリンタへ送られ、当該のプリントジョブが終了した時点で消去されてしまう。しかし、本発明においてはオリジナル画像データを保存しておく必要がある。そこで、オリジナル画像データを印刷する際にはデータをプリンタサーバ105上のオリジナル画像データ記憶部301へ保存することを指定しなければならない。例えば、クライアントPC103のプリンタドライバがUI(不図示)上でその指定を受け付ければよい。
【0028】
本発明の核となる上書き印刷は、MFP101に装備された設定UI206からユーザにより指示される。前記指示に続いて一連の処理がデータ処理装置203内の不図示の制御部(CPU)で実行される。SFP102においてはスキャン機能がないため本システムのスキャンを用いた処理に関しては実行できない。ただし、プリンタサーバ105上の追記画像データ記憶部302にすでに画像がある場合には、上書き印刷も可能である。
【0029】
次に、上記システム構成を用いて本発明における上書き印刷処理を実現する手順について処理の流れを追って説明する。
【0030】
本システムを実現するための処理は大きく分けて追記画像データの抽出(図4)と追記(図5)の2つである。
【0031】
まず、追記画像データの抽出処理について図4の流れに沿って説明する。
【0032】
図4においてステップS401では上記プリンタ機能で述べた通り、オリジナル画像データを保存する。ステップS401の詳細を図7に示す。
【0033】
クライアントPC103からのプリントジョブで送られたPDLデータのオリジナル画像データ701は、MFP101で出力される(S702)。オリジナル画像データを保存の設定がされている場合にはプリンタサーバ105上にスプールされているPDLデータをラスタ化し、オリジナル画像データ記憶部301へ保存する(S703)。
【0034】
オリジナル画像データをMFP内のメモリではなくプリンタサーバ上へ保存することで、後に記載する追記画像データとの差分検出が同一のネットワーク上のMFPであればどこからでも行える。これで追記画像データの抽出のための下準備が整ったことになる。
【0035】
図4においてステップS403では加筆原稿のスキャンを行う。ここから追記画像データの抽出処理が開始する。まず、MFP101の設定UI206で追記モードを選択する。
【0036】
図10はMFP101の設定UI206一例としてタッチパネルを表したものである。上記追記モードの選択は、追記モードのタブ1001を選択することで行う。
【0037】
続けて図10の手順1.オリジナル画像を選択を行う。参照ボタン1003をタッチし、プリンタサーバにあるオリジナル画像データの中から追記しようとしているものを選択する。選択された前記オリジナル画像データへのパスがアドレスバー1002に表示される。これによりオリジナル画像データがLAN105を介してMFP101へダウンロードされる。
【0038】
続けて図10の手順2.追記画像データ抽出を行う。前記追記画像データ抽出処理はスキャンボタン1004にタッチすることで開始する。
【0039】
図4においてステップS403では加筆原稿をADFまたは原稿台にセットしてスキャンを行い、ラスタデータの追記画像データを取り込む。原稿が複数ページにわたる場合にはページ順に画像データを取り込む。取り込まれた前記画像データは追記画像データ記憶部302へ保存される。
【0040】
ここで、追記画像データは紙媒体をスキャナで読み込んだものとして説明したが、オリジナル画像データに電子データとして追記がなされたものでも問題ない。その場合には、追記画像データはLAN104を介してプリンタサーバ105上の追記画像データ記憶部302へ保存される。
【0041】
図4においてステップS404では取り込まれた画像データの追記画像データとオリジナル原稿データを照らし合わせ、データが一致しない領域を差分画像データが存在する領域として検出する。ステップS404の詳細を図6に示す。
【0042】
図6は本発明の第1の実施の形態に係わる追記画像データの検出処理についてのフローチャートである。
【0043】
まず、ステップS603ではオリジナル画像データ記憶部301のオリジナル画像データと追記画像データ記憶部302の追記画像データをRGB値の平均値を用いてグレースケール化する。
【0044】
ここで、追記画像データ記憶部302の追記画像データはPDLからラスタライズされたデータと異なりスキャナで読み込んだ画像データであるため、裏移りや下地に色が出てしまうことが考えられる。そこで前記問題に対処するために以下の処理を行う。
【0045】
ステップS604では前記グレースケール化処理を行った追記画像データに対して下地飛ばしを行い、裏移りや下地のデータを排除する。下地飛ばしの一例としては、図12に示したような1次元のルックアップテーブルを用い、実際の読み取り値よりも多きな値を返す方法がある。しかし前記以外のいかなる方法を用いてもよい。
【0046】
ステップS605では前記下地飛ばし処理を行った追記画像データに対してノイズ除去を行い原稿台の汚れやスキャン時のノイズを除去する。ノイズ除去の方法としては例えば、孤立点を検出して除去する方法がある。しかし、どのような方法でも問題はない。
【0047】
そして、ステップS608で前記追記画像データから前記オリジナル原稿データを引いて差分検出を行うことで、追記された画像部分が差分画像データ群609として検出される。
【0048】
ステップS610で前記差分画像データ群をグループ化する。前記グループ化処理について図11を用いて詳細を説明する。
【0049】
図11に示す星型の図形はあるページの検出された差分画像データとする。前記差分画像データが検出されたページを図11に示すように適当なブロック(例えば5*5ピクセル)に分割する。ブロック内に差分画像データが一部でも存在する場合、そのブロックには1のフラグ(図11において太線で囲んだブロック)、全く差分画像データが入っていない場合にはそのブロックには0のフラグ(図11において細線で囲んだブロック)をたてる。フラグを立てた画像にラベリング処理を施すことで単なる差分画像データ群が意味のある塊にグループ化される。図11においては1101、1102、1103の3つの差分画像データが検出されている。次にグループ化された差分画像データを左上から走査し、初めて前記差分画像データにぶつかるごとにその差分画像データにデータIDを1から順に振る。図11において1101のIDは1、1102のIDは2、1103のIDは3となる。
【0050】
画像処理を施した追記画像データはMFP101内の一時メモリへスプールしてもよい。
【0051】
オリジナル画像データと追記画像データを照らし合わせる際には対応するページを比較することはもちろん、ページの向きも重要となる。オリジナル画像データに、向きを明示する印を何らかの形で埋め込むことは一つの解決策である。この印は目に見えるバーコードのような印であっても、透かし印刷のような目に見えない印であってもよい。さらにこの印がページも識別できるものであれば間違ったデータ同士を比較することはなくなる。
【0052】
図4にもどり、ステップS405では検出された差分画像データをデータIDごとに一つの画像データとして差分画像データ記憶部303へ記録する。その際に、前記差分画像データの属性情報としてデータID、発生元ID、優先度、発生時間、座標、ページ番号を同時に記録する。一例としては図13に示したテーブルの様な形で保存される。
【0053】
前記発生元IDは印刷物が読み込まれた順番に1から番号が振られるものとする。
【0054】
前記データIDは印刷物の読み込まれた順番に従い、かつ、上述通りページ内で検出された差分画像データの座標順に1から番号が振られるものとする。
【0055】
差分画像データの優先度はユーザによる設定がなければ発生元IDに基づくものとする。ユーザによる優先度の設定は設定UI208を用いて印刷物の読み込み前または後に行われるものとする。
【0056】
ステップS403〜405はS406の判定に基づき、追記画像データのある原稿分だけ繰り返す。
【0057】
次に、追記画像データの追記処理について図5の流れに沿って説明する。前記追記処理は設定UI208のプリントボタン1005にタッチすることで開始する。
【0058】
図5においてステップS501ではオリジナル画像データの余白領域を検出する。ラスタ化した前記オリジナル画像データ内で下地と判断される領域を余白とする。
【0059】
ステップS502では優先度の高い差分画像データから、前記余白領域へ配置していく。ステップS502の詳細を図9に示す。
【0060】
図9は、本発明において最も重要な処理のひとつである差分画像データの配置方法についてのフローチャートである。
【0061】
差分画像データ901は、優先度に応じて差分画像データ記憶部303から順に取り出される。まず、優先度1の差分画像データ901を前記余白領域へ配置する(S906)。その際、ステップS902の判定はスルーである。優先度2以降の追記画像データ901を前記余白領域へ配置する際、先に配置された差分画像データ901と重なりが生じる場合がある(ステップS903)。そこで、ステップS903では重なりが生じた差分画像データ901の座標を他の前記余白領域へ移動させる。
【0062】
移動させた前記差分画像データ901については元の位置がわかるよう、オプション設定の線引きモードがONの場合は、差分画像データ901と元の座標の間に線を引きそれを示す。
【0063】
ステップS904において前記追記画像データ901を配置する十分な余白が存在しない場合(S905)、ステップS905で前記差分画像データ901を縮小する。
【0064】
ステップS902からステップS907の処理を、全ての差分画像データの配置が終わるまで繰り返す。
【0065】
ステップS908において、差分画像データが全て配置された画像データを出力画像データ記憶部201へ保存する。
【0066】
図5にもどり、出力データ記憶部201から出力データを読み込み、ステップS503において、手差しトレー207にセットされているオリジナル画像データが印刷されている紙へ上書き印刷を行う。
【0067】
ステップS503において、オプション設定の色分けモードがONの場合は差分画像データ303の発生元IDに応じて色別に印刷する。
【0068】
上記上書き印刷をもって、本発明における上書き印刷処理を実現する手順が終了となる。
【0069】
次に、具体例を用いて本処理の例を示す。図13はオリジナル画像データ(a)と、追記画像データを読み込んだ順に(b)から(e)まで並べている。差分データB1401と差分データC1402、差分データD1403と差分データG1404が重なるようになっている。前記画像データを用いて本発明の特徴的な処理を行った結果を図15、図16に示す。
【0070】
図15は、(a)オリジナル画像データに(b)追記画像データ1、(c)追記画像データ2、(d)追記画像データ3の差分データを上書き印刷したものである。差分データの優先度はデフォルトのままで、オプション設定に関しては差分データの移動前の位置を明示する設定と差分データを発生元IDで色分けする設定がONとなっている。座標位置が重なる差分データB1401と差分データC1402において、優先度の低い差分データC1402が他の余白へ移動している。
【0071】
図16は余白に(b)追記画像データ1、(c)追記画像データ2、(d)追記画像データ3、(e)追記画像データ4の差分データを上書き印刷したものである。差分データの優先度はデフォルトのままで、オプション設定に関しては白紙に印刷する設定がONとなっているため、オリジナル画像データも印刷されている。座標位置が重なる差分データD1403と差分データG1404において、優先度の低い差分データG1404は移動しても十分な余白がないため、縮小されている。
【0072】
(実施例2)
第2の実施の形態に係わる画像処理システムは、その基本的な構成が上記第1の実施の形態と同じであり、説明の繰り返しになる部分は省略する。
【0073】
上記第1の実施の形態では、オリジナル画像データをクライアントPC103からのPDLデータとしてプリンタサーバへ保存する場合について説明したが、第2の実施の形態ではオリジナル画像データをスキャナから読み込んだラスタデータとしてプリンタサーバへ保存する場合について説明する。
【0074】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係わるオリジナル画像データ保存の流れについてのフローチャートである。
【0075】
図8においてステップS801では原稿をADFまたは原稿台にセットしスキャンを行い、ラスタデータのオリジナル画像データ802を取り込む。スキャンしたオリジナル画像データはPDLデータと異なり、裏移りや下地に色が出てしまうことが考えられるためこれらに対処するために以下の処理を行う。
【0076】
図8においてステップS803では下地飛ばしをすることにより、裏移りや読み取り値の不足を解消する。図8においてステップS804ではノイズ除去を行い原稿台の汚れやスキャン時のノイズを除去する。以上の処理を行った画像データをオリジナル画像データとしてオリジナル画像データ記憶部301へ保存する。
【0077】
(実施例3)
第3の実施の形態に係わる画像処理システムは、その基本的な構成が上記第1の実施の形態と同じであり、説明の繰り返しになる部分は省略する。
【0078】
上記第1の実施の形態では、オリジナル画像データが印刷されている用紙に差分画像データのみを上書き印刷することを説明したが、第3の実施の形態では白紙へ印刷する場合について説明する。ステップ1701から1702については実施例1と同じであるため説明は省略する。
【0079】
第3の実施の形態においては追記処理のフロー図17において、ステップS1703の印刷の際に、出力画像データ記憶部303からのデータと同時に、オリジナル画像データ記憶部301からもデータを読み込み双方のデータをマージして出力する。
【0080】
上記印刷処理をもって、本発明におけるオリジナル画像データおよび追記データを同時に印刷する処理が終了となる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施例に係わるシステム全体の構成を表すブロック図
【図2】図1のMFP101の内部構成を表すブロック図
【図3】図1のプリンタサーバ105の内部構成を表すブロック図
【図4】追記画像データの抽出処理のフローチャート
【図5】追記処理のフローチャート
【図6】追記画像データ検出の詳細についてのフローチャート
【図7】オリジナル原稿データがPDLデータ時のデータ保存処理のフローチャート
【図8】オリジナル原稿データがラスタデータ時のデータ保存処理のフローチャート
【図9】余白に追記画像データを配置する処理のフローチャート
【図10】追記画像データ上書き処理の際のMFPのUI(タッチパネル)の例
【図11】追記画像データのクラスタリングについての概念図
【図12】下地飛ばしに用いる1次元ルックアップテーブルの例
【図13】差分データの属性一覧
【図14】オリジナル画像データと追記画像データの例
【図15】上書き印刷結果の例(1)
【図16】上書き印刷結果の例(2)
【図17】白紙へ印刷する処理のフローチャート
【符号の説明】
【0082】
202 画像読み取り部
203 データ処理装置
301 オリジナル画像データ記憶部
302 追記画像データ記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙などの記録媒体から画像を読み取るスキャナ、原稿や画像データを処理する画像処理システム及びその制御方法、画像情報を記録媒体に印刷するプリンタに関する。特に、原稿との差分を検出して他の印刷物へ出力する画像処理システム及びその制御方法、プログラム、並びに画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、原稿への追記データを原稿が印刷された紙面(紙面)へ上書き印刷する方法として、紙面をスキャナによって取り込み、紙面と原稿が同一のものであることを確認した後、差分データを紙面へ上書き印刷する方法が提案されている。(特許文献1参照)
あるいは、紙面をスキャナによって取り込み、原稿の電子データと比較し、不一致領域を検出したときに、紙面上で前記不一致領域に対応する箇所が空白であればデータを追記する方法が提案されている。しかし不一致領域に画像がある場合には、予め設定された優先度に応じて、ファイルもしくは紙面のどちらかの画像のみが他方へ反映される。(特許文献2参照)
【特許文献1】特開平7-250237号公報
【特許文献2】特開平11-127341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では電子データのオリジナル画像データに追記・修正を行った際、追記画像データのみを紙面へ一度のみ上書きすることを目的としており、紙面への追記に関してはなんら保証するものではない。
【0004】
また、上記の特許文献2では、原稿の電子データへの追記及び紙面への追記の双方を考慮し、常に原稿と紙面の一致を測ることを提案している。しかし、電子データと紙面の双方に追記が発生している状態で更新を行おうとすると、競合処理に入った場合、あらかじめ設定されている優先順位に応じてどちらかの情報が失われてしまうことがある。
【0005】
本発明は上記した従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、原稿への追記データを他の紙原稿へ反映させるために上書き印刷することを可能にする。とくに、複数人の独立した追記画像データをお互いの紙面に最小限の手順で反映させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、オリジナル画像データを保存する手段と、追記画像データをスキャンする手段と、差分データを検出する手段と、追記画像データの優先度を決定する手段と、発生元を区別する手段と、オリジナルの原稿が印刷されている用紙の余白を検出する手段と、余白に1つ以上の差分データを配置する手段と、差分データ同士が重なる場合には優先度に応じて位置をずらして配置する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、同じ原稿からの複数部の印刷物の余白に書き込みが加えられた場合に、簡単な操作で互いの書き込み情報を共有することが可能になる。複数人の書き込み情報をオリジナル画像データを出力した印刷物に上書き印刷することができる。あるいは、白紙に対してオリジナル画像データと書き込み情報を同時に印刷することができる。書き込み情報の記入者を区別する情報を付加することも可能なため、効率的な情報共有と無駄な印刷用紙の使用量削減とが可能になる。
【0008】
また、本発明では出力したい追記データ同士の位置に重なりが生じる場合に、優先度の低いものの位置をずらすことで可能な限りの上書き情報を搭載することができる。その際、データの元の位置を明示しておくことが可能なため、ユーザが書き込んだ情報は失われずにすむ。
【0009】
さらに、上記の手段をもってしても入りきらないデータがある場合には、データを縮小することで可能な限りの上書き情報を搭載することができる。
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施例1)
本システムは同じ原稿からの複数部の印刷物(以下、印刷物)に対して独立にその余白に書き込みが加えられた場合に、各印刷物からその追記画像データを検出し、追記画像データを全てまとめて原稿の余白へ上書き印刷することを実現する処理である。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像処理システムの全体構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、本画像処理システムは、例えば、企業の事務所や事業所内等などでLAN104を有する環境で実現される。
【0014】
オフィス10内に構築されたLAN104には、印刷機能、スキャン機能、複写(コピー)機能、及びファクシミリ機能など複数の機能を有するMFP(Multi Function Printer)101と、印刷機能のみを有するSFP(ステップSingle Function Printer)102と、クライアントPC103とプリンタサーバ105が接続されている。
【0015】
クライアントPC103は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、キーボードやマウス等の操作部、及びモニタ等をそれぞれ備え、ユーザが画像データ(イメージデータ)を作成または編集するためのPC(Personal Computer)である。
【0016】
クライアントPC103は、MFP101及びSFP102の印刷を制御するプリンタドライバを有する。
【0017】
MFP101及びSFP102は、クライアントPC103から出力された印刷データを受信し、画像の印刷出力を行う。特に、MFP101はオートドキュメントフィーダ(ADF)または原稿台ガラス上に置かれた原稿から画像データを読み取り印刷出力を行う。
【0018】
図2は、図1のMFP101の内部構成を示すブロック図である。
【0019】
図2において、MFP101は、データの物理的な入出力に係わる機構、データの処理に係わる機構とインタフェースに係わる機構を備える。データの物理的な入出力に係わる機構は、ADFを含む原稿の画像を読み取るための画像読み取り部202と手動で給紙を行うための手差しトレー207を備える。データ処理装置203はデータの処理に係わる機構である。インタフェースに係わる機構は、本システムの使用に際して手動で設定を行うための設定UI206とLAN104に接続するためのネットワークIF205を備える。
【0020】
画像読み取り部202は、ADFまたは原稿台ガラス上に載置された原稿を不図示の光源で照射し、その反射光をレンズで固体撮像素子上に結像して、固体撮像素子からラスタ化された画像読み取り信号を600DPIの密度の画像信号として出力するものである。
【0021】
図3は、図1のプリンタサーバ105の内部構成を示すブロック図である。主にデータの保存に用いられ、本システムにおいては非常に重要な役割を担う機構である。
【0022】
ここで、オリジナルの画像データをオリジナル画像データ、余白に書き込みが加えられた画像データを追記画像データ、オリジナル画像データと追記画像データとの差を抽出したものを差分画像データとする。
【0023】
図3において、プリンタサーバ105はデータの保存に係わる機構とネットワークIF305を備える。オリジナル画像データ記憶部301はオリジナル画像データを、追記画像データ記憶部302は追記画像データを、差分データ画像記憶部303は差分画像データを保存する。前記プリンタサーバの各記憶部は、ネットワークIF305を介してネットワーク上のMFP101から参照され、本発明の処理に必要な画像にアクセスされる。
【0024】
本発明において主要な処理はスキャン機能とプリント機能である。これらの機能について、本システムにおいて重要なデータ記憶部301、302、303と設定UI部208をとりあげながら以下に説明する。
【0025】
MFP101はスキャン機能として、画像読み取り部202から出力された画像信号をページ単位で各記憶部へ保存する。このデータはオリジナル原稿データであればLAN104を介してプリンタサーバへ保存され、追記画像データであれば追記画像データ記憶部へ保存される。
【0026】
MFP101およびSFP102はプリント機能として、クライアントPC103から送信された画像データをプリンタサーバ105を介してネットワークIF205で受信する。受信したデータがオリジナル原稿データであればデータ処理装置203でラスタデータに変換した後、画像出力部204で用紙上に画像形成を行う。
【0027】
クライアントPC103からのプリントジョブは一般的に、プリンタサーバ105にスプールされた後、プリンタへ送られ、当該のプリントジョブが終了した時点で消去されてしまう。しかし、本発明においてはオリジナル画像データを保存しておく必要がある。そこで、オリジナル画像データを印刷する際にはデータをプリンタサーバ105上のオリジナル画像データ記憶部301へ保存することを指定しなければならない。例えば、クライアントPC103のプリンタドライバがUI(不図示)上でその指定を受け付ければよい。
【0028】
本発明の核となる上書き印刷は、MFP101に装備された設定UI206からユーザにより指示される。前記指示に続いて一連の処理がデータ処理装置203内の不図示の制御部(CPU)で実行される。SFP102においてはスキャン機能がないため本システムのスキャンを用いた処理に関しては実行できない。ただし、プリンタサーバ105上の追記画像データ記憶部302にすでに画像がある場合には、上書き印刷も可能である。
【0029】
次に、上記システム構成を用いて本発明における上書き印刷処理を実現する手順について処理の流れを追って説明する。
【0030】
本システムを実現するための処理は大きく分けて追記画像データの抽出(図4)と追記(図5)の2つである。
【0031】
まず、追記画像データの抽出処理について図4の流れに沿って説明する。
【0032】
図4においてステップS401では上記プリンタ機能で述べた通り、オリジナル画像データを保存する。ステップS401の詳細を図7に示す。
【0033】
クライアントPC103からのプリントジョブで送られたPDLデータのオリジナル画像データ701は、MFP101で出力される(S702)。オリジナル画像データを保存の設定がされている場合にはプリンタサーバ105上にスプールされているPDLデータをラスタ化し、オリジナル画像データ記憶部301へ保存する(S703)。
【0034】
オリジナル画像データをMFP内のメモリではなくプリンタサーバ上へ保存することで、後に記載する追記画像データとの差分検出が同一のネットワーク上のMFPであればどこからでも行える。これで追記画像データの抽出のための下準備が整ったことになる。
【0035】
図4においてステップS403では加筆原稿のスキャンを行う。ここから追記画像データの抽出処理が開始する。まず、MFP101の設定UI206で追記モードを選択する。
【0036】
図10はMFP101の設定UI206一例としてタッチパネルを表したものである。上記追記モードの選択は、追記モードのタブ1001を選択することで行う。
【0037】
続けて図10の手順1.オリジナル画像を選択を行う。参照ボタン1003をタッチし、プリンタサーバにあるオリジナル画像データの中から追記しようとしているものを選択する。選択された前記オリジナル画像データへのパスがアドレスバー1002に表示される。これによりオリジナル画像データがLAN105を介してMFP101へダウンロードされる。
【0038】
続けて図10の手順2.追記画像データ抽出を行う。前記追記画像データ抽出処理はスキャンボタン1004にタッチすることで開始する。
【0039】
図4においてステップS403では加筆原稿をADFまたは原稿台にセットしてスキャンを行い、ラスタデータの追記画像データを取り込む。原稿が複数ページにわたる場合にはページ順に画像データを取り込む。取り込まれた前記画像データは追記画像データ記憶部302へ保存される。
【0040】
ここで、追記画像データは紙媒体をスキャナで読み込んだものとして説明したが、オリジナル画像データに電子データとして追記がなされたものでも問題ない。その場合には、追記画像データはLAN104を介してプリンタサーバ105上の追記画像データ記憶部302へ保存される。
【0041】
図4においてステップS404では取り込まれた画像データの追記画像データとオリジナル原稿データを照らし合わせ、データが一致しない領域を差分画像データが存在する領域として検出する。ステップS404の詳細を図6に示す。
【0042】
図6は本発明の第1の実施の形態に係わる追記画像データの検出処理についてのフローチャートである。
【0043】
まず、ステップS603ではオリジナル画像データ記憶部301のオリジナル画像データと追記画像データ記憶部302の追記画像データをRGB値の平均値を用いてグレースケール化する。
【0044】
ここで、追記画像データ記憶部302の追記画像データはPDLからラスタライズされたデータと異なりスキャナで読み込んだ画像データであるため、裏移りや下地に色が出てしまうことが考えられる。そこで前記問題に対処するために以下の処理を行う。
【0045】
ステップS604では前記グレースケール化処理を行った追記画像データに対して下地飛ばしを行い、裏移りや下地のデータを排除する。下地飛ばしの一例としては、図12に示したような1次元のルックアップテーブルを用い、実際の読み取り値よりも多きな値を返す方法がある。しかし前記以外のいかなる方法を用いてもよい。
【0046】
ステップS605では前記下地飛ばし処理を行った追記画像データに対してノイズ除去を行い原稿台の汚れやスキャン時のノイズを除去する。ノイズ除去の方法としては例えば、孤立点を検出して除去する方法がある。しかし、どのような方法でも問題はない。
【0047】
そして、ステップS608で前記追記画像データから前記オリジナル原稿データを引いて差分検出を行うことで、追記された画像部分が差分画像データ群609として検出される。
【0048】
ステップS610で前記差分画像データ群をグループ化する。前記グループ化処理について図11を用いて詳細を説明する。
【0049】
図11に示す星型の図形はあるページの検出された差分画像データとする。前記差分画像データが検出されたページを図11に示すように適当なブロック(例えば5*5ピクセル)に分割する。ブロック内に差分画像データが一部でも存在する場合、そのブロックには1のフラグ(図11において太線で囲んだブロック)、全く差分画像データが入っていない場合にはそのブロックには0のフラグ(図11において細線で囲んだブロック)をたてる。フラグを立てた画像にラベリング処理を施すことで単なる差分画像データ群が意味のある塊にグループ化される。図11においては1101、1102、1103の3つの差分画像データが検出されている。次にグループ化された差分画像データを左上から走査し、初めて前記差分画像データにぶつかるごとにその差分画像データにデータIDを1から順に振る。図11において1101のIDは1、1102のIDは2、1103のIDは3となる。
【0050】
画像処理を施した追記画像データはMFP101内の一時メモリへスプールしてもよい。
【0051】
オリジナル画像データと追記画像データを照らし合わせる際には対応するページを比較することはもちろん、ページの向きも重要となる。オリジナル画像データに、向きを明示する印を何らかの形で埋め込むことは一つの解決策である。この印は目に見えるバーコードのような印であっても、透かし印刷のような目に見えない印であってもよい。さらにこの印がページも識別できるものであれば間違ったデータ同士を比較することはなくなる。
【0052】
図4にもどり、ステップS405では検出された差分画像データをデータIDごとに一つの画像データとして差分画像データ記憶部303へ記録する。その際に、前記差分画像データの属性情報としてデータID、発生元ID、優先度、発生時間、座標、ページ番号を同時に記録する。一例としては図13に示したテーブルの様な形で保存される。
【0053】
前記発生元IDは印刷物が読み込まれた順番に1から番号が振られるものとする。
【0054】
前記データIDは印刷物の読み込まれた順番に従い、かつ、上述通りページ内で検出された差分画像データの座標順に1から番号が振られるものとする。
【0055】
差分画像データの優先度はユーザによる設定がなければ発生元IDに基づくものとする。ユーザによる優先度の設定は設定UI208を用いて印刷物の読み込み前または後に行われるものとする。
【0056】
ステップS403〜405はS406の判定に基づき、追記画像データのある原稿分だけ繰り返す。
【0057】
次に、追記画像データの追記処理について図5の流れに沿って説明する。前記追記処理は設定UI208のプリントボタン1005にタッチすることで開始する。
【0058】
図5においてステップS501ではオリジナル画像データの余白領域を検出する。ラスタ化した前記オリジナル画像データ内で下地と判断される領域を余白とする。
【0059】
ステップS502では優先度の高い差分画像データから、前記余白領域へ配置していく。ステップS502の詳細を図9に示す。
【0060】
図9は、本発明において最も重要な処理のひとつである差分画像データの配置方法についてのフローチャートである。
【0061】
差分画像データ901は、優先度に応じて差分画像データ記憶部303から順に取り出される。まず、優先度1の差分画像データ901を前記余白領域へ配置する(S906)。その際、ステップS902の判定はスルーである。優先度2以降の追記画像データ901を前記余白領域へ配置する際、先に配置された差分画像データ901と重なりが生じる場合がある(ステップS903)。そこで、ステップS903では重なりが生じた差分画像データ901の座標を他の前記余白領域へ移動させる。
【0062】
移動させた前記差分画像データ901については元の位置がわかるよう、オプション設定の線引きモードがONの場合は、差分画像データ901と元の座標の間に線を引きそれを示す。
【0063】
ステップS904において前記追記画像データ901を配置する十分な余白が存在しない場合(S905)、ステップS905で前記差分画像データ901を縮小する。
【0064】
ステップS902からステップS907の処理を、全ての差分画像データの配置が終わるまで繰り返す。
【0065】
ステップS908において、差分画像データが全て配置された画像データを出力画像データ記憶部201へ保存する。
【0066】
図5にもどり、出力データ記憶部201から出力データを読み込み、ステップS503において、手差しトレー207にセットされているオリジナル画像データが印刷されている紙へ上書き印刷を行う。
【0067】
ステップS503において、オプション設定の色分けモードがONの場合は差分画像データ303の発生元IDに応じて色別に印刷する。
【0068】
上記上書き印刷をもって、本発明における上書き印刷処理を実現する手順が終了となる。
【0069】
次に、具体例を用いて本処理の例を示す。図13はオリジナル画像データ(a)と、追記画像データを読み込んだ順に(b)から(e)まで並べている。差分データB1401と差分データC1402、差分データD1403と差分データG1404が重なるようになっている。前記画像データを用いて本発明の特徴的な処理を行った結果を図15、図16に示す。
【0070】
図15は、(a)オリジナル画像データに(b)追記画像データ1、(c)追記画像データ2、(d)追記画像データ3の差分データを上書き印刷したものである。差分データの優先度はデフォルトのままで、オプション設定に関しては差分データの移動前の位置を明示する設定と差分データを発生元IDで色分けする設定がONとなっている。座標位置が重なる差分データB1401と差分データC1402において、優先度の低い差分データC1402が他の余白へ移動している。
【0071】
図16は余白に(b)追記画像データ1、(c)追記画像データ2、(d)追記画像データ3、(e)追記画像データ4の差分データを上書き印刷したものである。差分データの優先度はデフォルトのままで、オプション設定に関しては白紙に印刷する設定がONとなっているため、オリジナル画像データも印刷されている。座標位置が重なる差分データD1403と差分データG1404において、優先度の低い差分データG1404は移動しても十分な余白がないため、縮小されている。
【0072】
(実施例2)
第2の実施の形態に係わる画像処理システムは、その基本的な構成が上記第1の実施の形態と同じであり、説明の繰り返しになる部分は省略する。
【0073】
上記第1の実施の形態では、オリジナル画像データをクライアントPC103からのPDLデータとしてプリンタサーバへ保存する場合について説明したが、第2の実施の形態ではオリジナル画像データをスキャナから読み込んだラスタデータとしてプリンタサーバへ保存する場合について説明する。
【0074】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係わるオリジナル画像データ保存の流れについてのフローチャートである。
【0075】
図8においてステップS801では原稿をADFまたは原稿台にセットしスキャンを行い、ラスタデータのオリジナル画像データ802を取り込む。スキャンしたオリジナル画像データはPDLデータと異なり、裏移りや下地に色が出てしまうことが考えられるためこれらに対処するために以下の処理を行う。
【0076】
図8においてステップS803では下地飛ばしをすることにより、裏移りや読み取り値の不足を解消する。図8においてステップS804ではノイズ除去を行い原稿台の汚れやスキャン時のノイズを除去する。以上の処理を行った画像データをオリジナル画像データとしてオリジナル画像データ記憶部301へ保存する。
【0077】
(実施例3)
第3の実施の形態に係わる画像処理システムは、その基本的な構成が上記第1の実施の形態と同じであり、説明の繰り返しになる部分は省略する。
【0078】
上記第1の実施の形態では、オリジナル画像データが印刷されている用紙に差分画像データのみを上書き印刷することを説明したが、第3の実施の形態では白紙へ印刷する場合について説明する。ステップ1701から1702については実施例1と同じであるため説明は省略する。
【0079】
第3の実施の形態においては追記処理のフロー図17において、ステップS1703の印刷の際に、出力画像データ記憶部303からのデータと同時に、オリジナル画像データ記憶部301からもデータを読み込み双方のデータをマージして出力する。
【0080】
上記印刷処理をもって、本発明におけるオリジナル画像データおよび追記データを同時に印刷する処理が終了となる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施例に係わるシステム全体の構成を表すブロック図
【図2】図1のMFP101の内部構成を表すブロック図
【図3】図1のプリンタサーバ105の内部構成を表すブロック図
【図4】追記画像データの抽出処理のフローチャート
【図5】追記処理のフローチャート
【図6】追記画像データ検出の詳細についてのフローチャート
【図7】オリジナル原稿データがPDLデータ時のデータ保存処理のフローチャート
【図8】オリジナル原稿データがラスタデータ時のデータ保存処理のフローチャート
【図9】余白に追記画像データを配置する処理のフローチャート
【図10】追記画像データ上書き処理の際のMFPのUI(タッチパネル)の例
【図11】追記画像データのクラスタリングについての概念図
【図12】下地飛ばしに用いる1次元ルックアップテーブルの例
【図13】差分データの属性一覧
【図14】オリジナル画像データと追記画像データの例
【図15】上書き印刷結果の例(1)
【図16】上書き印刷結果の例(2)
【図17】白紙へ印刷する処理のフローチャート
【符号の説明】
【0082】
202 画像読み取り部
203 データ処理装置
301 オリジナル画像データ記憶部
302 追記画像データ記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリジナル原稿のデータ(以下、オリジナル画像データ)を保存する手段と、加筆原稿のデータ(以下、追記画像データ)をスキャンする手段と、オリジナル画像データと加筆原稿の差分データ(以下、差分データ)を検出する手段と、追記画像データの優先度を決定する手段と、発生元を区別する手段と、オリジナルの画像が印刷されている用紙の余白を検出する手段と、余白に1つ以上の差分データを配置する手段と、差分データ同士が重なる場合には優先度に応じて位置をずらして配置する手段を備えた画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、差分データを配置する位置をずらしても余白に差分データが入らない場合には、差分データを縮小して配置する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
請求項1において、位置をずらしても元のデータ位置がわかる様に元のデータ位置を明示する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
請求項1において、オリジナルの画像が印刷されている用紙上に差分データの発生元別に色を設定して印刷する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記加筆原稿をスキャンする手段は、ADFまたは原稿台に原稿をセットし読み取る請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記差分データを検出する手段は、ラスタ化したオリジナル画像データとスキャンした追記画像データを比較し、ある条件を超える差分を検出することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記差分データを検出する手段は、PDLで記述されたオリジナル原稿データとスキャンした追記画像データを比較し、ある条件を超える差分データを検出することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記差分データの優先度を決定する手段は、あらかじめ設定した情報に基づいて優先度を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記差分データの優先度を決定する手段は、ユーザがUIから設定することによって優先度を決定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記差分データの優先度を決定する手段は、ユーザがUIから設定するにあたってはそのタイミングは問わず設定可能なことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記差分データの発生元を区別する手段は、発生元を区別する番号が1から自動的に割り付けられることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記発生元を区別する番号は同一人物の追記データを同じ番号で管理するものであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記オリジナルの画像が印刷されている用紙の余白を検出する手段は、オリジナル画像データより、文字および画像データのない領域を検出することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記余白に1つ以上の差分データを配置する手段は、前記余白に前記差分データがくるように画像形成を行うことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項15】
請求項14において、前記差分データ同士の位置が重なる場合には優先度に応じて位置をずらして配置する手段とは、優先度の低い方の差分データを他の余白へずらして配置することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項16】
請求項14において、前記差分データを縮小して配置する手段は、前記差分データを移動させても入る余白がない場合に、前記差分データを縮小して余白へ配置することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記、差分データの発生元別に色を設定して印刷する手段は、発生元別に異なる色を用いて印刷することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項1】
オリジナル原稿のデータ(以下、オリジナル画像データ)を保存する手段と、加筆原稿のデータ(以下、追記画像データ)をスキャンする手段と、オリジナル画像データと加筆原稿の差分データ(以下、差分データ)を検出する手段と、追記画像データの優先度を決定する手段と、発生元を区別する手段と、オリジナルの画像が印刷されている用紙の余白を検出する手段と、余白に1つ以上の差分データを配置する手段と、差分データ同士が重なる場合には優先度に応じて位置をずらして配置する手段を備えた画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、差分データを配置する位置をずらしても余白に差分データが入らない場合には、差分データを縮小して配置する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
請求項1において、位置をずらしても元のデータ位置がわかる様に元のデータ位置を明示する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
請求項1において、オリジナルの画像が印刷されている用紙上に差分データの発生元別に色を設定して印刷する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記加筆原稿をスキャンする手段は、ADFまたは原稿台に原稿をセットし読み取る請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記差分データを検出する手段は、ラスタ化したオリジナル画像データとスキャンした追記画像データを比較し、ある条件を超える差分を検出することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記差分データを検出する手段は、PDLで記述されたオリジナル原稿データとスキャンした追記画像データを比較し、ある条件を超える差分データを検出することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記差分データの優先度を決定する手段は、あらかじめ設定した情報に基づいて優先度を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記差分データの優先度を決定する手段は、ユーザがUIから設定することによって優先度を決定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記差分データの優先度を決定する手段は、ユーザがUIから設定するにあたってはそのタイミングは問わず設定可能なことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記差分データの発生元を区別する手段は、発生元を区別する番号が1から自動的に割り付けられることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記発生元を区別する番号は同一人物の追記データを同じ番号で管理するものであることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記オリジナルの画像が印刷されている用紙の余白を検出する手段は、オリジナル画像データより、文字および画像データのない領域を検出することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記余白に1つ以上の差分データを配置する手段は、前記余白に前記差分データがくるように画像形成を行うことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項15】
請求項14において、前記差分データ同士の位置が重なる場合には優先度に応じて位置をずらして配置する手段とは、優先度の低い方の差分データを他の余白へずらして配置することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項16】
請求項14において、前記差分データを縮小して配置する手段は、前記差分データを移動させても入る余白がない場合に、前記差分データを縮小して余白へ配置することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記、差分データの発生元別に色を設定して印刷する手段は、発生元別に異なる色を用いて印刷することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−147435(P2009−147435A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319872(P2007−319872)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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