説明

スキャナ装置

【課題】 スキャナ装置の取り外したカバーを再び取り付けて復元する際の作業性を向上させる。
【解決手段】 スキャナ装置の本体に対してカバーを回転可能に支持するヒンジ部と、本体側に設けられヒンジ部の構成部材が上下にスライド可能に保持される保持部と、カバーが開けられたときに前記カバーの回転を規制する規制部とを有し、前記本体から前記カバーを取り外すことが可能である。構成部材が保持部から上方に引き抜かれると、カバーとヒンジ部が一体になって本体から外れる。カバーを規制部の規制を超えて開けようとする力が与えられると、構成部材と保持部の少なくとも一方が弾性変形して構成部材が保持部から外れてカバーとヒンジ部が一体になって本体から外れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を押さえるカバーを有する画像読取のためのスキャナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットベッド型のスキャナ装置の多くは、原稿台に置かれた原稿を上から押さえる開閉可能なカバー(圧板)が設けられている。特許文献1には、ヒンジによって回動可能に支持されたカバーを有するスキャナ装置が開示されている。この装置では、カバーを開けて所定角度以上にカバーを開けようとする力が与えられると、装置本体からカバーが外れるようになっている。また、本などの厚手の原稿を押さえ付けるために、カバーの一部が上方にスライドし、さらに上方にスライドさせると、カバーをスキャナ装置本体から取り外すことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−228529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバーをスキャナ装置本体から2つの方法で取り外すことができる。しかし、外したカバーを本体に取り付けて元に戻す際には、2種類の取り外し方法それぞれに対応する組み立て方法が異なる。そのため、不慣れなユーザーにとっては分かりにくく、組み立ての際に混乱をきたす可能性がある。
【0005】
本発明の目的の一つは、スキャナ装置のカバー取り外しを複数の方法で行うことができ、且つカバー取り付けは共有の1つの方法であるよう構成することで、カバーを取り付けて復元する際の作業性を向上させることである。本発明の別の目的は、スキャナ装置のヒンジ部の構造を簡略にして、装置の信頼性の向上や小型化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスキャナ装置は、原稿が置かれる透明板とスキャナ部を備える本体と、前記透明板の上に置かれた原稿を押さえるカバーと、前記本体に対して前記カバーを回転可能に支持するヒンジ部と、前記本体側に設けられ、前記ヒンジ部の構成部材が上下にスライド可能に保持される保持部と、前記カバーが開けられたときに前記カバーの回転を規制する規制部とを有し、前記本体から前記カバーを取り外すことが可能であって、前記構成部材が前記保持部から上方に引き抜かれると、前記カバーと前記ヒンジ部が一体になって前記本体から外れ、前記カバーを前記規制部の規制を超えて開けようとする力が与えられると、前記構成部材と前記保持部の少なくとも一方が弾性変形して前記構成部材が前記保持部から外れて、前記カバーと前記ヒンジ部が一体になって前記本体から外れることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザーは複数の方法で本体からカバーを取り外すことができ、いずれの方法でもカバーとヒンジが一体になって外れる。ユーザーがカバーを再び取り付けて復元する際には、取り付け方法は共通の1つの方法しかなく、不慣れなユーザーであっても迷うことなく容易に復元することができる。加えて、ヒンジ部の構造が簡略であるので、装置の信頼性の向上や装置サイズの小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態のスキャナ装置の外観を示す斜視図(カバーを閉じた状態)
【図2】スキャナ装置の斜視図(カバーを開いた状態)
【図3】ヒンジ部の構造を示す斜視図
【図4】図4はカバーの開閉に伴うヒンジ部の動きを示す図
【図5】厚手の原稿が置かれたときのヒンジ部の状態を示す図
【図6】第1の方法でカバーを取り外す際のヒンジ部の状態を示す図
【図7】第2の方法でカバーを取り外す際のヒンジ部の状態を示す図
【図8】仮想例における第1の取り外し方法を説明する図
【図9】仮想例における第2の取り外し方法を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の説明に先立ち、本発明の優位性を明らかにするための仮想例について説明する。この例では、カバーをスキャナ装置本体から2つの方法で取り外すことができる。
【0010】
図8は第1の取り外し方法を説明する図である。ユーザーがスキャナ装置の本体110からカバー120を上方(図中矢印方向)に引き上げると、ヒンジ部の一部の構成部材150が、本体側に設けられた保持部から引き抜かれる。カバー120と構成部材150が一体になった状態で本体110から取り外される。
【0011】
図9は第2の取り外し方法を説明する図である。カバー120を回転支持するヒンジ機構は、本体側のヒンジ要素151とカバー側のヒンジ要素121とが回転可能にヒンジ結合した構造となっている。原稿を置くためにユーザーがカバー120を開けると、ヒンジ機構を中心にカバー120が回転するが。決められた角度になるとそれ以上は回転しないように規制される。この規制をさらに超えてカバー120を回転させようとする方向(図中矢印方向)に力を与えると、ヒンジ要素151とヒンジ要素121の結合が外れる。こうして、本体110からカバー120が取り外されるが、ヒンジ部の構成部材150は本体側に残されたままとなる。
【0012】
取り外したカバー120をスキャナ装置の本体110に取り付けて元に復元する際には、2種類の取り外し方法それぞれに対応する組み立て方法が異なる。そのため、不慣れなユーザーにとっては分かりにくく、組み立ての際に混乱をきたす可能性がある。
【0013】
また、ヒンジ要素151とヒンジ要素121の結合は、通常の開閉動作で想定される以上の力がかかると破損する前に外れる複雑な構造となっている。そのため、ヒンジ結合を元に戻すための作業にはコツが必要であり、ユーザーの作業性が良好とは言えない。また、ヒンジ結合は繰り返しの脱着に耐えるだけの信頼性が必要であり、機構のサイズアップや複雑化を招きやすい。
【0014】
本発明はこのような課題の認識を元になされたものである。基本的な考え方は、カバー取り外しは複数の方法で行うことができ且つカバー取り付けは1通りの方法しかないよう構成するものである。より具体的には、以下の実施形態によって示される。
【0015】
本実施形態はスキャナ装置が組み込まれた画像形成装置である。なお、本発明はフラットベッド型のスキャナ装置のほか、スキャナ装置が組み込まれた装置、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらを複合した複合機等の画像形成装置に適用可能である。
【0016】
図1は実施形態の装置の外観を示す斜視図で、カバーは閉じた状態である。図2はカバーを開いた状態を示す斜視図である。
【0017】
スキャナ装置の本体1の上には、ヒンジ部5によって開閉可能な原稿圧板であるカバー2が設けられている。本体1の上面には透明板(ガラス板)を含む原稿台12が設けられ、カバー2を開けると原稿台12が露出して、ユーザーは読取面である透明板の上に原稿P1を置くことができる。本体1の上面にはユーザーが入力操作を行う操作部11が設けられている。本体1の正面には、開閉可能なフロントドア3が設けられ、フロントドア3を開けると、プリント部から排出されるシートが載置されるトレイ4が出現する。
【0018】
本体1の内部には、透明板の上に置かれた原稿の画像を光学的に走査して読み取るフラットベッド式のスキャナ部、ならびにシートに画像を形成するプリント部(画像形成部)を備える。例えば、スキャナ部で読み取られた画像をプリント部で複写して出力することができる。プリント部はインクジェット方式、電子写真方式、サーマル方式など種々の方式を採用することができる。
【0019】
一辺の両端近傍の2カ所に設けられたヒンジ部5は、本体1に対してカバー2を回転可能に支持するヒンジ機構である。ヒンジ部の詳細について以下説明する。図3は、1つのヒンジ部の構造を示す斜視図である。
【0020】
ヒンジ部5は、本体側のヒンジ要素51(回転軸として機能する)とカバー側のヒンジ要素21(軸受として機能する)とが回転可能にヒンジ結合した構造となっている。ヒンジ要素51は本体1に保持される板状部材50の上端に設けられている。ヒンジ要素21はカバー2に固定され実質的に一体化されている。
【0021】
本体側には、板状部材50が上下方向(装置の設置面を基準にした垂直方向)にスライド可能に保持される保持部13が設けられている。保持部13は、板状部材の両脇50aをそれぞれ保持して且つ上下方向にスライド可能に案内する、フック形状の部材からなる2つのガイドレールを有する。板状部材50は2つのガイドレールに両側から挟まれるように差し込まれ、奥まで差し込まれると板状部材50の先端が本体1の段差に突き当たる。この状態で板状部材50と2つのガイドレールは係合して、ヒンジ部の主要な構成部材が本体1に固定される。
【0022】
板状部材50には、ヒンジ要素51の近傍に、カバー2が開けられたときにカバー2の回転を規制する規制部52が設けられている。ユーザーがカバー2を開けると、カバー2に固定されたヒンジ要素21が回転し、回転が所定角度に達したところで、ヒンジ要素21が規制部52に当接し、それ以上のカバーの開き規制される。図4はカバーの開閉に伴うヒンジ部の動きを示す図である。図4(a)はカバー2が閉じられた状態、図4(b)はカバー2が開けられて、ヒンジ要素21と規制部52とが当接している状態を示す。この例では、カバー2をほぼ垂直に開いた位置でヒンジの回転に規制がかかるようになっている。
【0023】
原稿台12に通常の紙厚の原稿P1だけでなく、ブック原稿のような厚手の原稿P2を置いて読取を行うことがある。図5は、厚手の原稿P2が置かれたときのヒンジ部の状態を示す図である。カバー2を閉じると、原稿P2の厚さ分だけヒンジ部の板状部材50が保持部13にガイドされながら上方(図中矢印方向)に持ち上がる。その結果、厚手の原稿P2であってもカバー2は原稿上面をほぼ水平に原稿台12に向けて押さえ付けることが可能となる。
【0024】
原稿台12に原稿P2よりもさらに厚手の原稿を載せる読取を行うことがある。この場合は、ユーザーはカバー2を本体1から取り外す(カバー取り外しの第1の方法と称する)。
【0025】
図6は、第1の取り外し方法でカバー2を本体1から取り外す際のヒンジ部の状態を示す図である。図6(a)は斜視図、図6(b)は断面図である。ユーザーがカバー2を上方に持ち上げると、板状部材50が保持部13のガイドレールから引き抜かれて、カバー2とヒンジ部5が一体になって外れる。
【0026】
第1の取り外し方法で外したカバー2を本体1に取り付けて復元する際には、ユーザーは板状部材50を保持部13の2つのガイドレールの間に上側から下側に向けてスライドさせて挿入する。
【0027】
図4(b)の状態から、ユーザーがさらにカバーを開ける方向に力を与えることにより、カバー2を本体1から取り外すことができる(第2の取り外し方法と称する)。
【0028】
図7は、第2の取り外し方法により、カバー2を本体1から取り外す際のヒンジ部の状態を示す図である。規制部52の規制に抗してカバー2に所定以上の力が与えられると、保持部13の2つのガイドレールと係合していた板状部材50が保持部13から図7(b)の矢印方向に外れて、カバー2がヒンジ部5と一体になって本体1から外れる。板状部材50が2つのガイドレールの係合から外れる際には、2つのガイドレールは互いに対向する方向の外側(図7(a)の矢印に示す方向)に撓む。本体1と2つのガイドレールそれぞれとの間には、ガイドレールが外側には撓んだ際に逃げとなる隙間が設けられている。
【0029】
ガイドレールは、板状部材50がガイドレールから外される際に弾性変形する剛性を持つ部材から構成されている。板状部材50は、ガイドレールよりも剛性の高い材質を有し、第2の取り外し方法で取り外す際には、ガイドレールが撓むが板状部材50の撓みは殆ど生じない。また、板状部材50の少なくともガイドレールと接触する部位は、表面の摩擦抵抗(摺動性)をガイドレールよりも小さくすることで、スライドの際の動摩擦抵抗を小さくして、スムースな移動が可能となる。
【0030】
第2の取り外し方法で外したカバー2を本体1に取り付けて復元する際には、第1の取り外し方法のときと同じく、ユーザーは板状部材50を保持部13の2つのガイドレールの間に上側から下側に向けてスライドさせて挿入する。つまり、第1の取り外し方法、第2の取り外し方法いずれの方法でカバー2を外しても、取り付け方法は1つである。
【0031】
変形例として、第2の取り外し方法で取り外す際に、ガイドレールが撓むのではなく板状部材50が撓むように構成にしてもよい。これを実現するには、板状部材50は、少なくともガイドレールと係合する部位が、板状部材50がガイドレールから外される際に弾性変形する材質であればよい。すなわち、第2の取り外し方法では、ヒンジ部の構成部材と保持部の少なくとも一方が弾性変形して構成部材が保持部から外れて、カバーとヒンジ部が一体になって本体から外れる形態であればよい。
【0032】
以上の実施形態の作用効果について以下に列挙する。
(1)第1の取り外し方法、第2の取り外し方法いずれの方法でカバー2を外しても、カバー2にヒンジ部の構成部材である板状部材50が一体になって本体1から外れる。外し方は複数あっても、取り付けはスライド挿入するだけの共通の1つの方法のみである。そのため、不慣れなユーザーであっても迷うことが復元することができ、装置の使い勝手が良い。
(2)第2の取り外し方法では、ヒンジ要素51とヒンジ要素21の結合は維持したままである。そのためヒンジ結合部の破損の可能性は少なく信頼性が高い。また、ユーザーにコツのいる取り付け作業を強いることもない。
(3)第2の取り外し方法では、保持部13のガイドレールと板状部材50の少なくとも一方が弾性変形により撓んで外れる簡素な構造であるので、ヒンジ部の小型化つまりは装置の小型化が図れる。
【符号の説明】
【0033】
1 本体
2 カバー
5 ヒンジ部
12 原稿台
13 保持部
21 ヒンジ要素(軸受)
51 ヒンジ要素(回転軸)
52 規制部
P1 原稿(通常)
P2 原稿(厚手)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が置かれる透明板とスキャナ部を備える本体と、
前記透明板の上に置かれた原稿を押さえるカバーと、
前記本体に対して前記カバーを回転可能に支持するヒンジ部と、
前記本体の側に設けられ、前記ヒンジ部の構成部材が上下にスライド可能に保持される保持部と、
前記カバーが開けられたときに前記カバーの回転を規制する規制部と
を有し、前記本体から前記カバーを取り外すことが可能であって、
前記構成部材が前記保持部から上方に引き抜かれると、前記カバーと前記ヒンジ部が一体になって前記本体から外れ、
前記カバーを前記規制部の規制を超えて開けようとする力が与えられると、前記構成部材と前記保持部の少なくとも一方が弾性変形して前記構成部材が前記保持部から外れて、前記カバーと前記ヒンジ部が一体になって前記本体から外れる、
ことを特徴とするスキャナ装置。
【請求項2】
前記構成部材は板状部材であり、前記保持部は、前記板状部材の両側を上下方向にスライド可能に案内する2つのガイドレールを含むことを特徴とする、請求項1に記載のスキャナ装置。
【請求項3】
前記本体から取り外された前記カバーを再び取り付ける際には、前記板状部材が前記2つのガイドレールの間に上側から下側に向けてスライド挿入されることを特徴とする、請求項2に記載のスキャナ装置。
【請求項4】
前記ガイドレールは、前記板状部材が前記ガイドレールから外される際に弾性変形する部材から構成されていることを特徴とする、請求項2または3に記載のスキャナ装置。
【請求項5】
前記板状部材は、少なくとも前記ガイドレールと係合する部位が、前記板状部材が前記ガイドレールから外される際に弾性変形する材質であることを特徴とする、請求項2または3に記載のスキャナ装置。
【請求項6】
前記ヒンジ部は、回転軸として機能する第1のヒンジ要素が前記板状部材の上端に設けられ、軸受として機能する第2のヒンジ要素が前記カバーの一部に設けられ、前記第1のヒンジ要素と前記第2のヒンジ要素は回転可能に係合してヒンジ機構を構成することを特徴とする、請求項2から5のいずれか1項に記載のスキャナ装置。
【請求項7】
前記規制部は前記第1のヒンジ要素の近傍に設けられた前記板状部材の一部であり、前記カバーを開けると前記カバーの一部が前記規制部に当接して回転が規制されることを特徴とする、請求項6に記載のスキャナ装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のスキャナ装置と、シートに画像を形成する画像形成部とを有することを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−38508(P2013−38508A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171107(P2011−171107)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】