説明

スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物およびその使用

本発明は、スクラレオールまたはその誘導体を含有する組成物を提供するものであり、前記スクラレオールまたはその誘導体は糖タンパク質マトリクスにより結合されている。本発明の組成物は、スクラレオールまたはその誘導体の能力、安定性および生活性等の特性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物および環状アデノシン一リン酸(cAMP)活性を高める方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米国人口の約40%が、肥満症に罹っているものと報告されている(Glazer, Arch. Intern. Med., 2001, 161:1814-1824)。肥満は、多くの疾患、例えば心臓血管疾患、呼吸器病、睡眠時無呼吸、ピックウイック症候群、糖尿病、および肺高血圧症と関連している。
体重減少養生を効果あるものとするためには、脂肪燃焼能力を高めて、消費され、蓄積された脂肪を利用する必要がある。体重減少に加えて、脂肪を燃焼する高い能力も、例えばボディービルダー、アスリート等、並びに脂肪の無い体重を維持したいと願っている個々人にとっては重要である。
環状アデノシン一リン酸(cAMP)は、細胞表面から細胞内のタンパク質にシグナルを搬送する、重要なセカンドメッセンジャーである。cAMPは、細胞内の様々なタンパクキナーゼを活性化することによって、その効果を発揮するものと考えられている。高レベルの細胞内cAMPは、多数の代謝過程に関与していることが報告されている。
【0003】
例えば、高レベルのcAMPが、グリコーゲンの分解を増強し、またグルコースの主な貯蔵形態であるグリコーゲン合成を阻害する役割を担うことが報告されている。更に、脂肪細胞(即ち、脂肪貯蔵細胞)においては、cAMPレベルの増加は、cAMP依存性のタンパクキナーゼを活性化し、これは更に酵素のリパーゼを活性化する。リパーゼは、トリアシルグリセロールの脂肪酸への加水分解(脂質分解としても知られる)を担っている。更に、高いcAMPレベルは、ホルモン、例えばエストロゲン、プロゲステロンおよびテストステロンの合成を増強することも報告されている。
従って、cAMPの細胞内レベルを高めることのできる組成物は、例えば体重減少を誘導し、脂肪分解を増強し、および/またはリビドーを高める上で有用であろう。
【0004】
スクラレオールの誘導体であるスクラレオリドが、環状cAMP活性を増大させる上で有用であることが報告されている。現在、スクラレオリドを含有する幾つかの製品が存在する。これらの製品は、例えばサイトダイン(Cytodyne) LLCから入手できるキセナドリン(Xenadrine) 40+およびホット-ロックス(HOT-ROXTM)を包含する。
残念ながら、現在入手できるスクラレオリド含有製品が与える利点は、皆無ではないにしても、それ程多くはない。その理由の一つは、従来から入手できる製品中に存在するスクラレオリドの量および品質(例えば、能力、安定性および生物学的活性)が、不十分である点にある。
【0005】
スクラレオールは、典型的にオニサルビア植物(Salvia sclarea)から得られる。しかし、このオニサルビアの入手量は限られている。従って、スクラレオールおよびその誘導体(例えば、スクラレオリド)の入手性も、制限されている。
従って、より高い能力、高い安定性、および生物学的活性を持つ、スクラレオールまたはその誘導体の新規な組成物に対する需要がある。即ち、より少ない量のスクラレオールまたはその誘導体によって、上記の如き有利な効果を達成する必要がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物を目的とし、ここで前記スクラレオールまたはその誘導体は、糖タンパク質マトリクスによって結合されている。一実施態様において、前記誘導体はスクラレオリドである。もう一つの実施態様において、前記組成物は、また微生物をも含む。更に別の実施態様では、前記微生物が糖タンパク質マトリクスを生成する。
好ましい実施態様において、前記微生物は酵母、例えばサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を包含する。他の実施態様では、前記微生物は細菌、例えばラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)を含むラクトバチルス(Lactobacillus)、バクテリウムビフィズス(Bacterium bifidus)またはこれらの組合せを包含する。更に別の実施態様において、前記微生物は酵母および細菌両者を含む。
【0007】
本発明の一態様によれば、前記組成物は、更に安定化剤および/または添加剤をも含む。
本発明は、スクラレオールまたはその誘導体を含む栄養補給物をも提供するものであり、ここで前記スクラレオールまたはその誘導体は糖タンパク質マトリクスによって結合されている。
本発明の別の態様によれば、本発明はさらに、宿主における環状アデノシン一リン酸活性を高めるための方法を提供することを目的とする。この方法は、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物の有効量を前記宿主に投与する工程を含み、スクラレオールまたはその誘導体は糖タンパク質マトリクスによって結合されている。
【0008】
本発明の別の態様において、本発明は、体重減少の誘導を必要とする宿主における体重減少を誘導する方法を提供する。この方法は、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物の有効量を前記宿主に投与する工程を含み、スクラレオールまたはその誘導体は糖タンパク質マトリクスによって結合されている。
本発明の更に別の態様においては、リビドーを高めることが必要な宿主におけるリビドーを高める方法を提供する。この方法は、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物の有効量を前記宿主に投与する工程を含み、スクラレオールまたはその誘導体は糖タンパク質マトリクスによって結合されている。
更に別の本発明の態様において、本発明は、脂質分解能を高めることが必要な宿主における脂質分解能を高める方法を提供する。この方法は、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物の有効量を前記宿主に投与する工程を含み、スクラレオールまたはその誘導体は糖タンパク質マトリクスによって結合されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明によれば、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物が提供され、前記組成物中のスクラレオールまたはその誘導体は糖タンパク質マトリクスによって結合されている。本発明の組成物は、スクラレオールまたはその誘導体の、改善された能力、安定性および生物学的性等の特性を与える。
【0010】
スクラレオール
スクラレオールは、以下の一般式Iを有する、生物学的に活性なジテルペンである:
【0011】
【化1】

【0012】
スクラレオールは、典型的にはオニサルビア植物(Salvia sclarea L.)から得られる。通常、スクラレオールは、オニサルビア植物の頭状花から得られる。しかし、本発明は、オニサルビア由来のスクラレオールに限定されない。スクラレオールを含有するものとして、当分野において公知の任意の植物学的生物を、スクラレオールを得るために使用することができる。
スクラレオールは、当業者には公知の任意の方法によって生物から得ることができる。典型的には、スクラレオールは、溶媒抽出によって得られる。例えば、米国特許第3,060,172号は、オニサルビアからスクラレオールを単離する方法を開示している。同様に、米国特許第5,945,546号をも参照のこと。米国特許第3,060,172号および同第5,945,546号を、本明細書に参考文献として組入れる。
スクラレオールを抽出するための溶媒は、極性溶媒等の任意のものであり得る。極性溶媒の一例は、水である。
本明細書において使用する用語「スクラレオール」とは、スクラレオールまたはその誘導体を意味する。スクラレオールの誘導体の一例は、スクラレオリドである。スクラレオリドは、以下に式IIで示される一般式を持つ:
【0013】
【化2】

【0014】
スクラレオリドは、当業者には公知の任意の方法で製造することができる。例えば、スクラレオリドは、スクラレオールの化学的酸化、それに続くラクトン化により、あるいは酵母株を用いた、スクラレオールの生物学的転換(biotransformation)によって製造される。スクラレオリドを製造するための例示的な方法は、Schneider等に付与された米国特許第5,525,728号、Gerke等に付与された同第5,247,100号、およびGerke等のドイツ特許出願DE3,942,358号に記載されている方法を包含する。
簡単に説明すると、これらの方法は、ルテニウム触媒および酸化工程を使用して、スクラレオールを、粗製スクラレオリド生成物に転化する。より一層一般的に利用されている、スクラレオールを、スクラレオリドに転化する、他の例示的な方法は、米国特許第4,970,163号および同第5,212,078号(何れもFarbood等に付与された)に記載されている、生物学的転換および発酵法を含む。これら特許に記載の方法で製造したスクラレオリドは、通常湿潤状態にある、あるいは乾燥状態にあるケーキ形状のものとして与えられ、一般にその純度は、約90%〜98%なる範囲内にある。スクラレオールからスクラレオリドを製造する方法を開示するこれら特許の開示事項全体を、本発明の参考として、ここに組入れる。
【0015】
糖タンパク質マトリクス
スクラレオールは、糖タンパク質マトリクスにより結合されている。糖タンパク質マトリクスは、一緒に結合した複数の糖タンパク質分子で構成される分子網状構造(molecular network)である。糖タンパク質は、炭水化物基および簡単なタンパク質で構成される。
糖タンパク質中の炭水化物は、任意の適当な炭水化物、例えば単糖、二糖、オリゴ糖、または多糖であり得る。オリゴ糖が好ましい。糖タンパク質のタンパク質は、任意の適当なポリペプチドであり得る。糖タンパク質マトリクス中の炭水化物対タンパク質の比は、例えば99:1〜1:99(質量基準で)なる範囲内で変動し得る。約1:1なる比が好ましい。
【0016】
組成物
本発明の組成物は、少なくとも一つのスクラレオールと結合した、糖タンパク質マトリクスを含む。糖タンパク質マトリクスおよびスクラレオールは、物理的におよび/または化学的に、例えば化学反応によって、および/または二次的な化学結合、例えばファンデルワールス力等によって相互に結合していてもよい。理論に拘泥するつもりは無いが、糖タンパク質マトリクスは、弱い共有結合によってスクラレオールと結合している可能性があると考えられる。
前記組成物は、所望によって、任意の割合でスクラレオールを含むことができる。例えば、スクラレオールの割合は、スクラレオールおよび宿主における所望の結果に依存して、組成物を基準として、0.1〜99質量%なる範囲内で変えることができる。好ましい一実施態様において、前記組成物は、前記組成物を基準として約5〜50質量%なる範囲の量でスクラレオールを含む。
【0017】
糖タンパク質マトリクス対スクラレオールの比も変更することが可能である。糖タンパク質マトリクス対スクラレオールの比は、組成物中の全ての、または殆ど全てのスクラレオールが、糖タンパク質マトリクスにより結合されるような値である。実質的に全てのスクラレオールの結合を保証するために、高い糖タンパク質マトリクス対スクラレオールの比を使用することができる。
本発明は、またスクラレオールの全量と結合するのに十分な糖タンパク質が存在しない組成物をも意図する。このような場合において、糖タンパク質マトリクス対スクラレオールの比は、低くすることができる。
好ましい一実施態様において、糖タンパク質マトリクスの起源は微生物であり、従って本発明の好ましい組成物は微生物を含む。この組成物製造工程の終了時点において、これらの微生物は、通常不活性である。
【0018】
糖タンパク質マトリクスは、スクラレオールの存在下で、微生物による発酵を可能とすることにより、スクラレオールと結合させることができる。ここで使用する、発酵とは、微生物が原料物質、例えばアミノ酸および炭水化物を代謝して糖タンパク質を製造する過程である。
微生物は、細胞内および細胞外両者において糖タンパク質を生成する。細胞内糖タンパク質は、主として微生物の細胞質中に局在し、あるいは微生物の物理的な構造の一部となるであろう。糖タンパク質マトリクスを形成する微生物由来の糖タンパク質は、主として細胞外タンパク質であり、従ってスクラレオールと結合するのに利用できる。細胞内糖タンパク質もまた、糖タンパク質の製造後、微生物を破壊することによって、スクラレオールとの結合のために利用することができる。
【0019】
糖タンパク質マトリクスを製造する微生物は、酵母および幾つかの細菌を含むが、これらに限定されない。好ましい酵母は、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。糖タンパク質を製造する細菌は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する細菌である。例えば、このような細菌は、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルスブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルスコーカシカス(Lactobacillus caucasicus)およびバクテリウムビフィズス(Bacterium bifidus)を含むが、これらに限定されない。好ましい細菌は、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)またはバクテリウムビフィズス(Bacterium bifidus)を包含する。
【0020】
少なくとも一つの前記微生物が糖タンパク質を生成することを条件として、前記微生物の組合せを使用することも可能である。微生物の組合せを使用する場合、一方の種類の微生物の生育が、他方の種類の微生物の生育を阻害するものであってはならない。例えば、糖タンパク質を生成する様々な種類の異なる酵母を使用することができる。また、酵母と細菌とを組合わせて糖タンパク質を製造することも可能である。この組合せは、特に有利である。というのは、様々な種類の細菌、例えばラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)も、糖タンパク質を生成するからである。例えば、一実施態様において、微生物は、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)とバクテリウムビフィズス(Bacterium bifidus)との組合せを包含する。
糖タンパク質マトリクスと化合物とを結合するための方法は、米国特許出願第09/757,222号および同第09/962,917号(両者共に、ファルマケムラボラトリーズ(PhamaChem Labs.)社に付与されている)に記載されている。上に引用したこれらの特許出願に記載されている方法は、糖タンパク質マトリクスとスクラレオールとを結合するために、改変することができる。米国特許出願第09/757,222号および同第09/962,917号に記載されている方法を、参考としてここに組入れる。
【0021】
安定化剤および添加剤
本発明の組成物は、また安定化剤および/または添加剤をも含むことができる。安定化剤および添加剤は、例えば製薬上許容されるバッファー、賦形剤、希釈剤、界面活性剤、佐剤、香料等を含むことができる。当業者は、このような添加剤の量を決定することができる。
添加剤は、当業者にとって公知の、任意のものであり得る。例えば、糖タンパク質を製造する微生物の生存性を改善し、あるいは活性成分と結合することとなる糖タンパク質の収率を高める、添加剤を添加することができる。例えば、塩を添加して、微生物の生存性を高めることができる。このような塩は、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、および硫酸マグネシウムを含むが、これらに限定されない。炭酸カルシウムが好ましい。微生物溶液に添加される塩の量は、当分野において公知の如く、生存性を改善するという所定の結果を得るのに十分な量とすべきである。微生物溶液に添加すべき塩の好ましい範囲は、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の微生物375g当たり、約25〜約150gなる範囲の量の塩である。微生物375g当たり、約40gのが、最も好ましい。
【0022】
本発明の組成物は、生体適合性となるように製造することができる。スクラレオール含有組成物は摂取されるものであるから、糖タンパク質マトリクスを製造するのに使用される微生物は、哺乳動物、特にヒトが消費するのに適したものであるべきである。このような微生物の例は、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)およびサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を含む。
【0023】
投与量および投与
スクラレオールを含有する糖タンパク質マトリクス組成物は、局所的に、または全身的に投与することができる。全身的な投与は、腸内投与または腸管外投与であり得る。腸内投与が好ましい。例えば、本発明の組成物は容易に経口投与することができる。液体または固体(例えば、錠剤、ゼラチンカプセル)製剤を使用することができる。製剤は、製薬上許容される賦形剤、佐剤、希釈剤、または担体を含むことができる。本発明の組成物は、また当業者には理解されるであろうように、適当な製薬担体(ビヒクル)または賦形剤と共に、静脈内投与することもできる。
【0024】
好ましい一実施態様において、本発明の組成物は、栄養補給物として調合される。この栄養補給物は、典型的には経口投与される。この補給物は、液体または固体(例えば、錠剤、ゼラチンカプセル)製剤であり得る。
本発明の組成物の有効量は、環状アデノシン一リン酸活性を高める上で有効な量である。環状アデノシン一リン酸活性における増加は、例えば体重減少を誘導し、リビドーを高め、および/または脂質分解能の増進をもたらす。有効量は、前臨床および臨床実験中に、臨床医および医師には馴染みの方法によって、決定される。
典型的には、スクラレオリドの用量は、約30〜75mg/投薬なる範囲にある。一般に、糖タンパク質マトリクスによって結合したスクラレオリドの用量は、スクラレオリド単独の場合よりも少ないであろう。従って、糖タンパク質マトリクスによって結合したスクラレオリドの適当な用量は、約5〜50mg/投薬なる範囲内にある。
【0025】
宿主
好ましい一実施態様において、宿主は哺乳動物である。哺乳動物は、例えばヒト、並びにペット動物、例えばイヌおよびネコ、実験動物、例えばラット、およびマウス、および家畜、例えばウマおよびウシを含む。ヒトが最も好ましい。
環状アデノシン一リン酸(cAMP)を高める必要のある宿主は、例えばcAMP活性における増加が、宿主の健康および幸福にとって有利であるような状況となる、任意の宿主である。ヒトが、cAMP活性における増加による利益を受けるであろう状況の例は、体重減少を必要とする宿主、脂質分解の増強を必要とする宿主、リビドーの増強を必要とする宿主、および脂肪生成を阻害する必要のある宿主を含むが、これらに限定されない。
体重減少を必要とする宿主は、例えば宿主の体重が、その健康にとって有益でないような任意の宿主である。体重減少を必要とする宿主の別の例は、例えば体重過多のために、その外観に不満を感じている宿主である。体重減少を必要とする宿主の幾つかの例は、糖尿病にかかっている宿主および体重過多の個体を含むが、これらに限定されない。
【0026】
哺乳動物の体重が、宿主の体高(身長)と体格に応じた理想的な体重を越える場合には、体重過多であると考えられる。宿主の理想的な体重は、当業者には公知である。宿主は、その体重が、宿主の理想的な体重の、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約60%、および最も好ましくは少なくとも約100%高い場合には、体重減少が必要であると考えられる。
宿主、例えばヒトは、その体重が、その身体において過度に脂肪を蓄積した結果として、骨格および肉体的な要求の限界を越えて、増大した場合に、肥満であると考えられる。肥満は、多くの異なる影響力、例えば過食または医学的な状態等の結果である可能性がある。肥満をもたらし得る医学的な状態とは、例えば低い代謝速度である。
病的肥満は、個々人の体重が、当該個体に関する理想的な体重の2倍、3倍または4倍である場合に起り、また、これが多くの重篤な生命を脅かす疾患と関連しているためそのように呼ばれる。
【0027】
脂質分解能の増強を必要とする宿主は、例えば脂質を加水分解したいと考える任意の宿主、例えば貯蔵された体脂肪を燃焼したいと考える宿主である。脂質分解能の増強を必要とする宿主の他の例は、例えば前記宿主の健康にとって最適とはいえない量の体脂肪を持つ宿主、あるいはその痩身状態を高めたいと考える宿主である。脂質分解能の増強を必要とする宿主の幾つかの例は、体重過多の宿主、またはアスリート、例えばボディービルダーを含むが、これらに限定されない。
最適ではないと考えられる体脂肪の量は、宿主の体脂肪量が、前記宿主の体高(身長)と体格に応じた理想的な体脂肪を越える場合の体脂肪量である。宿主、例えばヒトの体脂肪は、その体脂肪がその身体において過度に脂肪を蓄積した結果として、骨格および肉体的な要求の限界を越えて増大した場合に、最適とは言えないものと考えられる。
【0028】
宿主の理想的な体脂肪は、当業者には公知である。宿主は、その体脂肪が、理想的な体脂肪量よりも、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約60%、および最も好ましくは少なくとも約100%高い場合に、脂質分解が必要であると考えられる。例えば、ヒトにおいては、最適の体脂肪量は、20-29歳の男性に関しては、約15%〜約19%なる範囲にあり、また20-29歳の女性に関しては、約19%〜約23%なる範囲にある。
脂肪生成を阻害する必要のある宿主は、例えば脂肪の生産または蓄積を阻害したいと願う任意の宿主である。脂肪の製造は、例えば炭水化物またはタンパク質の脂肪への転化を含む。脂肪生成を阻害する必要のある宿主の他の例は、例えば前記宿主の健康にとって、最適とはいえない体脂肪量を持つ宿主である。脂肪生成を阻害する必要のある宿主の幾つかの例は、体重過多の宿主またはアスリートを含むが、これらに限定されない。
リビドーの増強を必要とする宿主は、例えば抑制されたまたは減退したリビドーを持つ任意の宿主である。リビドーの増強を必要とする宿主の他の例は、例えばリビドーのレベルが、前記宿主の精神的な幸福にとって有益ではない場合における宿主、またはそのリビドーを増強したいと願う宿主である。リビドーの増強を必要とする宿主幾つかの例は、リビドーを減退し、または抑制する、抗-鬱薬等の投薬を受けている宿主、およびホルモンレベルの低い宿主を含むが、これらに限定されない。
【実施例】
【0029】
実施例1:糖タンパク質マトリクスに結合したスクラレオールまたはスクラレオリドの調製
この方法は、第一の容器内での、スクラレオールまたはスクラレオリドの水性溶液の製造を利用する。第二の容器内で、活性酵母溶液を調製する。活性ベーカーズイースト、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を水に添加して、水性溶液を生成する。次いで、マルトースおよびアカシアガムを添加する。
次に、スクラレオールまたはスクラレオリドを含有する前記第一の容器を、極めてゆっくりと前記活性酵母溶液で接種し、生きた発酵溶液を生成する。この混合物を4〜6時間発酵させる。酵母の成長を促進するために、植物タンパク質および炭水化物を添加する。次に、タンパク質分解酵素、例えばパパインを添加する。
【0030】
ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)を、前記生きた発酵溶液に添加し、約2時間発酵させる。次いで、活発な発酵を、3時間、約71.1〜76.7℃(160-170°F)にて、前記溶液を加熱することによって停止させる。
次に、この発酵させた無機溶液を、剪断ポンプ(チャールスロス&サンズ社(Charles Ross & Sons Corp.)製)で、1-2時間ホモジナイズし、約4時間、噴霧乾燥(NIRO、ニコラスエンジニアーズリサーチ社(Nicholas Engineers Research Corp.)製)する。得られる製品は、スクラレオール-糖タンパク質マトリクス複合体またはスクラレオリド-糖タンパク質マトリクス複合体を含む粉末である。
【0031】
実施例2:スクラレオリド+GPMの、脂質分解に及ぼす効果
ヒト皮下の前脂肪細胞(preadipocytes)を、脂肪吸引を行った患者から得、またこれをプールした。患者の特徴を以下に示す:
性別:F; B.M.I.:27.25(平均); 年齢:43(平均)
ヒト皮下の前脂肪細胞を、ロット#SL0028と命名した。
前脂肪細胞を、96-ウェルプレートにプレーティングし、約2週間、化合物(例えば、スクラレオリドまたはスクラレオリド+GPM)の存在しない条件下で、分化させた。アッセイの日に培地を除去し、前記細胞を、以下の様式でクレブス-リンゲルバッファー(KRB)を用いて穏やかに洗浄した。ウェル内の120μlの培地を除去し、200μl/ウェルのKRBを添加した。ウェル内のKRBを除去し、KRBの別のアリコート200μl/ウェルを添加した。これらのウェルを一列ずつ洗浄することで、細胞が湿潤状態に維持され、またプレートに付着した状態に留まることを保証した。
【0032】
次に、KRBの全てを除去し、150μl/ウェルのコントロールまたは150μl/ウェルのテスト化合物(1%BSAを含むKRBに再懸濁):1) 10μl/mlのスクラレオリドまたは2) 7.5μl/mlのスクラレオリド+GPMの何れかで、細胞を処理し、37℃にて5時間インキュベートした。このアッセイはトリプリケートで行った。
この処置の終了時点において、アッセイプレートから調整培地100μl/ウェルを取り出し、新規なプレートの対応するウェルに添加した。この新規なプレートに、100μl/ウェルのグリセロールアッセイ試薬を添加した。新規なプレートを、次に25℃にて、15分間インキュベートした。
前記新規なプレートの各ウェルの光学密度を、540nmにて測定した。光学密度を以下の表に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
上記表に示したように、スクラレオリドおよびスクラレオリド+GPMは、コントロールを大幅に越える、著しく高い脂肪分解能を示す。
驚いたことに、スクラレオリド+GPM(より低濃度でスクラレオリドを含む)について観測された脂質分解能は、スクラレオリド単独の場合よりも大幅に高いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物であって、前記スクラレオールまたはその誘導体が糖タンパク質マトリクスによって結合されている、組成物。
【請求項2】
誘導体がスクラレオリドである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
更に微生物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
糖タンパク質マトリクスを、スクラレオールまたはその誘導体の存在下で微生物を発酵させることによって得る、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
微生物が酵母を含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
微生物が細菌を含む、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
微生物が酵母および細菌を含む、請求項4記載の組成物。
【請求項8】
組成物が栄養補給物である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
宿主における環状アデノシン一リン酸(cAMP)活性を高める方法であって、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物の有効量を前記宿主に投与する工程を含み、スクラレオールまたはその誘導体は糖タンパク質マトリクスによって結合されている、方法。
【請求項10】
誘導体がスクラレオリドである、請求項13記載の方法。
【請求項11】
更に微生物を含む、請求項13記載の方法。
【請求項12】
糖タンパク質マトリクスを、スクラレオールまたはその誘導体の存在下で微生物を発酵させることによって得る、請求項13記載の組成物。
【請求項13】
宿主における体重減少を誘導する方法であって、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物の有効量を前記宿主に投与する工程を含み、スクラレオールまたはその誘導体が糖タンパク質マトリクスによって結合されている、方法。
【請求項14】
誘導体がスクラレオリドである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
更に微生物を含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
糖タンパク質マトリクスを、スクラレオールまたはその誘導体の存在下で微生物を発酵させることによって得る、請求項13記載の組成物。
【請求項17】
宿主におけるリビドーを高める方法であって、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物の有効量を前記宿主に投与する工程を含み、スクラレオールまたはその誘導体が糖タンパク質マトリクスによって結合されている、方法。
【請求項18】
誘導体がスクラレオリドである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
糖タンパク質マトリクスを、スクラレオールまたはその誘導体の存在下で微生物を発酵させることによって得る、請求項17記載の組成物。
【請求項20】
宿主における脂質分解能を高める方法であって、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物の有効量を前記宿主に投与する工程を含み、スクラレオールまたはその誘導体が糖タンパク質マトリクスによって結合されている、方法。
【請求項21】
誘導体がスクラレオリドである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
糖タンパク質マトリクスを、スクラレオールまたはその誘導体の存在下で微生物を発酵させることによって得る、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
宿主における脂質生成を阻害する方法であって、スクラレオールまたはその誘導体を含む組成物の有効量を前記宿主に投与する工程を含み、スクラレオールまたはその誘導体が糖タンパク質マトリクスによって結合されている、方法。
【請求項24】
誘導体がスクラレオリドである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
更に微生物を含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
糖タンパク質マトリクスを、スクラレオールまたはその誘導体の存在下で微生物を発酵させることによって得る、請求項23記載の組成物。

【公表番号】特表2008−524215(P2008−524215A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546670(P2007−546670)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/040212
【国際公開番号】WO2006/065395
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(507200639)アヴォカ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】