説明

スクリューロータの製造方法及び製造装置

【課題】工具と被加工物とを相対移動させつつ工具で被加工物を加工することによって、スクリューロータを製造するスクリューロータの製造において、スクリューロータの品質向上及び加工時間の短縮を図る。
【解決手段】スクリューロータ2の製造方法は、荒加工ステップS1と仕上げ加工ステップS2、S3とを有している。荒加工ステップS1は、被加工物の外径に螺旋溝11を荒加工する工程である。仕上げ加工ステップS2、S3は、荒加工ステップS1の後に、螺旋溝11の側面13及び底面14を仕上げ加工する工程である。仕上げ加工ステップS2、S3では、先端に凸状に湾曲するR刃152aを有する側面仕上げ工具152を使用して、側面13を底面14の側面近傍部分とともに仕上げ加工し、底面仕上げ工具153を使用して、底面14の中央部分を仕上げ加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリューロータの製造方法及び製造装置、特に、冷媒圧縮機等として用いられるスクリュー圧縮機のスクリューロータの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(国際公開第2004/089569号)に示す冷媒圧縮機等として用いられるスクリュー圧縮機がある。このようなスクリュー圧縮機は、ゲートロータに噛み合う螺旋溝が形成されたスクリューロータを有している。そして、スクリューロータは、NC軸工作装置を使用して、工具と被加工物とを相対移動させつつ工具で被加工物を加工することによって製造される。より具体的には、スクリューロータは、被加工物の外径に螺旋溝を荒加工し、その後、螺旋溝を仕上げ加工することによって製造される。ここで、仕上げ加工は、螺旋溝の側面及び底面をそれぞれ側面仕上げ用及び底面仕上げ用のバイト工具(工具自体が回転しないもの)によって切削することによって行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のスクリューロータの螺旋溝の仕上げ加工では、螺旋溝の側面を仕上げ加工するバイト工具と、螺旋溝の底面を仕上げ加工するバイト工具とが異なるため、螺旋溝の側面と底面との継ぎ目に加工残りが生じやすい。また、仕上げ加工にバイト工具を使用しているため、螺旋溝の側面や底面を何回も繰り返して切削する必要があり、仕上げ加工の加工時間が長くなる。
【0004】
このため、螺旋溝の側面と底面との継ぎ目の加工残りをなくして品質を向上すること、及び、仕上げ加工の加工時間を短縮することが望まれている。
【0005】
本発明の課題は、工具と被加工物とを相対移動させつつ工具で被加工物を加工することによって、スクリューロータを製造するスクリューロータの製造において、スクリューロータの品質向上及び加工時間の短縮を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点にかかるスクリューロータの製造方法は、工具と被加工物とを相対移動させつつ工具で被加工物を加工することによって、スクリューロータを製造するスクリューロータの製造方法であって、荒加工ステップと仕上げ加工ステップとを有している。荒加工ステップは、被加工物の外径に螺旋溝を荒加工する工程である。仕上げ加工ステップは、荒加工ステップの後に、螺旋溝の側面及び底面を仕上げ加工する工程である。仕上げ加工ステップでは、先端に凸状に湾曲するR刃を有する回転工具からなる側面仕上げ工具を使用して、側面を底面の側面近傍部分とともに仕上げ加工し、底面仕上げ工具を使用して、底面の中央部分を仕上げ加工する。ここで、回転工具とは、エンドミル等のような工具自体が回転することによって切削加工を行うものを意味する。
【0007】
このスクリューロータの製造方法では、螺旋溝の側面の仕上げ加工において、回転工具からなる側面仕上げ工具を使用しているため、螺旋溝の側面を何回も繰り返して切削する必要がなくなる。このため、螺旋溝の側面の仕上げ加工において、従来のバイト工具のような工具自体が回転しないものを使用する場合に比べて、螺旋溝の側面の仕上げ加工の加工時間の短縮を図ることができる。しかも、このスクリューロータの製造方法では、側面仕上げ工具のR刃によって、底面の側面近傍部分が従来よりもえぐられるように加工されることになる。このため、螺旋溝の側面と底面との継ぎ目に加工残りが生じにくくなり、スクリューロータの加工品質の向上を図ることができる。さらに、螺旋溝の底面の仕上げ加工において、底面仕上げ工具によって切削する範囲が底面の中央部分だけで済むため、螺旋溝の底面の仕上げ加工の加工時間の短縮も図ることができる。
【0008】
第2の観点にかかるスクリューロータの製造方法は、第1の観点にかかるスクリューロータの製造方法において、側面仕上げ工具のR刃の半径が、螺旋溝の底面の中央部分における半径よりも小さい。ここで、螺旋溝の底面の中央部分における半径とは、仕上げ加工後の螺旋溝の底面の中央部分における半径を意味する。
【0009】
このスクリューロータの製造方法では、螺旋溝の底面の中央部分における螺旋溝の底面の側面近傍部分をえぐるように加工しやすくなる。このため、螺旋溝の側面と底面との継ぎ目の加工残りを確実に生じにくくすることができる。
【0010】
第3の観点にかかるスクリューロータの製造方法は、第1又は第2の観点にかかるスクリューロータの製造方法において、底面仕上げ工具が、先端に凸状に湾曲しており螺旋溝の底面の中央部分における半径と同じ半径を有するR刃を有する回転工具である。
【0011】
このスクリューロータの製造方法では、上記のように、螺旋溝の側面の仕上げ加工において、R刃を有する側面仕上げ工具を使用しているため、螺旋溝の底面の仕上げ加工において、底面仕上げ工具によって切削する範囲が底面の中央部分だけで済むようになっている。このため、螺旋溝の底面の仕上げ加工において、螺旋溝の側面に接触するまで底面仕上げ工具を螺旋溝の側面に近づける必要がなくなり、底面仕上げ工具として、従来のようなバイト工具を使用する必要がなくなっている。
【0012】
そこで、このスクリューロータの製造方法では、上記のように、底面仕上げ工具として、先端にR刃を有する回転工具を使用するようにしている。このため、螺旋溝の底面の仕上げ加工において、従来のようなバイト工具を使用する場合に比べて、螺旋溝の底面の仕上げ加工の加工時間の短縮をさらに図ることができる。
【0013】
第4の観点にかかるスクリューロータの製造装置は、工具と被加工物とを相対移動させつつ工具で被加工物を加工することによって、スクリューロータを製造するスクリューロータの製造装置であって、被加工物支持部と刃物支持部と制御部とを有している。被加工物支持部は、被加工物を支持して移動させる。刃物支持部は、工具を支持して移動させる。制御部は、被加工物の外径に螺旋溝を荒加工する荒加工ステップと、荒加工ステップの後に螺旋溝の側面及び底面を仕上げ加工する仕上げ加工ステップとを行わせるように、被加工物支持部と刃物支持部とを相対移動させつつ工具に前記被加工物を加工させる。そして、仕上げ加工ステップでは、先端に凸状に湾曲するR刃を有する回転工具からなる側面仕上げ工具を使用して、側面を前記底面の側面近傍部分とともに仕上げ加工し、底面仕上げ工具を使用して、底面の中央部分を仕上げ加工する。
【0014】
このスクリューロータの製造装置では、螺旋溝の側面の仕上げ加工において、回転工具からなる側面仕上げ工具を使用しているため、螺旋溝の側面を何回も繰り返して切削する必要がなくなる。このため、螺旋溝の側面の仕上げ加工において、従来のバイト工具のような工具自体が回転しないものを使用する場合に比べて、螺旋溝の側面の仕上げ加工の加工時間の短縮を図ることができる。しかも、このスクリューロータの製造装置では、側面仕上げ工具のR刃によって、底面の側面近傍部分が従来よりもえぐられるように加工されることになる。このため、螺旋溝の側面と底面との継ぎ目に加工残りが生じにくくなり、スクリューロータの加工品質の向上を図ることができる。さらに、螺旋溝の底面の仕上げ加工において、底面仕上げ工具によって切削する範囲が底面の中央部分だけで済むため、螺旋溝の底面の仕上げ加工の加工時間の短縮も図ることができる。
【0015】
第5の観点にかかるスクリューロータの製造装置は、第4の観点にかかるスクリューロータの製造装置において、側面仕上げ工具のR刃の半径が、螺旋溝の底面の中央部分における半径よりも小さい。
【0016】
このスクリューロータの製造装置では、螺旋溝の底面の中央部分における螺旋溝の底面の側面近傍部分をえぐるように加工しやすくなる。このため、螺旋溝の側面と底面との継ぎ目の加工残りを確実に生じにくくすることができる。
【0017】
第6の観点にかかるスクリューロータの製造装置は、第4又は第5の観点にかかるスクリューロータの製造装置において、底面仕上げ工具が、先端に凸状に湾曲しており螺旋溝の底面の中央部分における半径と同じ半径を有するR刃を有する回転工具である。
【0018】
このスクリューロータの製造装置では、上記のように、螺旋溝の側面の仕上げ加工において、R刃を有する側面仕上げ工具を使用しているため、螺旋溝の底面の仕上げ加工において、底面仕上げ工具によって切削する範囲が底面の中央部分だけで済むようになっている。このため、螺旋溝の底面の仕上げ加工において、螺旋溝の側面に接触するまで底面仕上げ工具を螺旋溝の側面に近づける必要がなくなり、底面仕上げ工具として、従来のようなバイト工具を使用する必要がなくなっている。
【0019】
そこで、このスクリューロータの製造装置では、上記のように、底面仕上げ工具として、先端にR刃を有する回転工具を使用するようにしている。このため、螺旋溝の底面の仕上げ加工において、従来のようなバイト工具を使用する場合に比べて、螺旋溝の底面の仕上げ加工の加工時間の短縮をさらに図ることができる。
【0020】
第7の観点にかかるスクリューロータの製造方法は、工具と被加工物とを相対移動させつつ工具で被加工物を加工することによって、スクリューロータを製造するスクリューロータの製造方法であって、荒加工ステップと仕上げ加工ステップとを有している。荒加工ステップは、被加工物の外径に螺旋溝を荒加工する工程である。仕上げ加工ステップは、回転工具からなる側面仕上げ工具を使用して、側面を仕上げ加工し、先端に側方に突出する凸刃を有するバイト工具からなる底面仕上げ工具を使用して、底面を側面の底面近傍部分とともに仕上げ加工する。
【0021】
このスクリューロータの製造方法では、螺旋溝の側面の仕上げ加工において、回転工具からなる側面仕上げ工具を使用しているため、螺旋溝の側面を何回も繰り返して切削する必要がなくなる。このため、螺旋溝の側面の仕上げ加工において、従来のバイト工具のような工具自体が回転しないものを使用する場合に比べて、螺旋溝の側面の仕上げ加工の加工時間の短縮を図ることができる。しかも、このスクリューロータの製造方法では、底面仕上げ工具の凸刃によって、側面の底面近傍部分が従来よりもえぐられるように加工されることになる。このため、螺旋溝の側面と底面との継ぎ目に加工残りが生じにくくなり、スクリューロータの加工品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、螺旋溝の側面の仕上げ加工において、従来のバイト工具のような工具自体が回転しないものを使用する場合に比べて、螺旋溝の側面の仕上げ加工の加工時間の短縮を図ることができる。しかも、螺旋溝の側面と底面との継ぎ目に加工残りが生じにくくなり、スクリューロータの加工品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】スクリュー圧縮機の主要部分を示す斜視図である。
【図2】スクリューロータの断面図である。
【図3】スクリューロータ製造装置をZ軸方向前方から見た概略図である。
【図4】スクリューロータ製造装置をX軸方向側方から見た概略図である。
【図5】スクリューロータ製造装置をY軸方向上方から見た概略図である。
【図6】スクリューロータ製造装置の制御部の主要部分を示すブロック図である。
【図7】第1実施形態にかかるスクリューロータの螺旋溝の加工工程を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態にかかるスクリューロータの螺旋溝の加工工程を示す図であって、荒加工後の螺旋溝を示す図である。
【図9】第1実施形態にかかるスクリューロータの螺旋溝の加工工程を示す図であって、側面の仕上げ加工後の螺旋溝を示す図である。
【図10】第1実施形態にかかるスクリューロータの螺旋溝の加工工程を示す図であって、側面及び底面の仕上げ加工後の螺旋溝を示す図である。
【図11】従来のスクリューロータの仕上げ加工後の螺旋溝を示す図である。
【図12】スクリューロータの底面の仕上げ加工時の様子を工具側から見た状態を示す図である。
【図13】側面仕上げ工具の先端の刃先形状の違いによる螺旋溝の仕上げ加工後の状態を示すシミュレーション結果である。
【図14】第2実施形態にかかるスクリューロータの螺旋溝の加工工程を示すフローチャートである。
【図15】第2実施形態にかかるスクリューロータの螺旋溝の加工工程を示す図であって、荒加工後の螺旋溝を示す図である。
【図16】第2実施形態にかかるスクリューロータの螺旋溝の加工工程を示す図であって、側面の仕上げ加工後の螺旋溝を示す図である。
【図17】第2実施形態にかかるスクリューロータの螺旋溝の加工工程を示す図であって、側面及び底面の仕上げ加工後の螺旋溝を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明にかかるスクリューロータの製造方法及び製造装置について、図面に基づいて説明する。
【0025】
<スクリュー圧縮機の構成>
図1は、スクリュー圧縮機1の主要部分を示す斜視図である。図2は、スクリューロータ2の断面図である。スクリュー圧縮機1は、ここでは、冷媒を圧縮するための冷媒圧縮機として使用されるシングルスクリュー圧縮機である。
【0026】
スクリュー圧縮機1は、主として、スクリューロータ2と、スクリューロータ2を収納するケーシング(図示せず)と、スクリューロータ2の回転軸となるシャフト4と、ゲートロータ5、6と、ゲートロータ5、6のための回転軸8、9とを有している。
【0027】
スクリューロータ2は、外周面に複数の螺旋状の螺旋溝11を有している円柱状のロータである。スクリューロータ2は、シャフト4と一体になって、ケーシングの内部で回転することが可能である。シャフト4は、その一端が駆動用モータ(図示せず)に連結されている。
【0028】
ゲートロータ5、6は、いずれもスクリューロータ2の螺旋溝11に噛み合う複数の歯12を有する回転体であり、シャフト4に略直交する回転軸8、9回りに回転することが可能である。ゲートロータ5、6は、スクリューロータ2の回転中心に対して対称な位置に配置されている。スクリューロータ2が回転すると、ゲートロータ5、6の歯12は、順次螺旋溝11に噛み合うようになっている。
【0029】
また、ケーシングには、ケーシング内部に冷媒を吸入するための吸入ポート(図示せず)と、ケーシング内部で圧縮された冷媒を吐出するための吐出ポート(図示せず)とが、設けられている。
【0030】
<スクリュー圧縮機の動作>
まず、シャフト4がケーシング外部の駆動モータから回転力を受けると、図1に示すように、スクリューロータ2が矢印R1の方向に回転する。このとき、スクリューロータ2の螺旋溝11に噛み合うゲートロータ5、6は、これらの歯12が螺旋溝11の側面13に押されることによって、矢印R2の方向へ回転する。このとき、スクリューロータ2では、螺旋溝11の溝容積が広がり、吸入ポートを通じて、冷媒が螺旋溝11に吸入される。そして、スクリューロータ2の回転が進むと、スクリューロータ2の螺旋溝11の溝容積が最大になったところで、ゲートロータ5、6の歯12によって螺旋溝11が閉じこめられる。さらに、スクリューロータ2の回転が進むと、スクリューロータ2の螺旋溝11の溝容積が小さくなり、冷媒が圧縮されて、吐出ポートを通じて吐出される。
【0031】
<第1実施形態にかかるスクリューロータの製造方法及び製造装置>
−スクリューロータの製造方法及び製造装置−
次に、上記のスクリュー圧縮機1を構成するスクリューロータ2を製造するためのスクリューロータ製造装置100の第1実施形態について、図3〜図10を用いて説明する。ここで、図3は、スクリューロータ製造装置100をZ軸方向前方から見た概略図である。図4は、スクリューロータ製造装置100をX軸方向側方から見た概略図である。図5は、スクリューロータ製造装置100をY軸方向上方から見た概略図である。図6は、スクリューロータ製造装置100の制御部140の主要部分を示すブロック図である。図7は、スクリューロータ2の螺旋溝11の加工工程を示すフローチャートである。図8は、スクリューロータ2の螺旋溝11の加工工程を示す図であって、荒加工後の螺旋溝11を示す図である。図9は、スクリューロータ2の螺旋溝11の加工工程を示す図であって、側面13の仕上げ加工後の螺旋溝11を示す図である。図10は、スクリューロータ2の螺旋溝11の加工工程を示す図であって、側面13及び底面14の仕上げ加工後の螺旋溝11を示す図である。
【0032】
スクリューロータ製造装置100は、主として、刃物支持部110と、被加工物支持部120と、基礎台130と、制御部140とを有している。
【0033】
刃物支持部110は、工具を支持して移動させる部分である。刃物支持部110は、主として、基礎台130に設けられたコラム111と、コラム111に取り付けられたスピンドル部112とを有している。コラム111は、基礎台130の上面に設けられたZ軸ガイドレール131に対してスライド自在に取り付けられた部分であり、Z軸ガイドレール131が延びるZ軸方向に移動可能になっている。ここで、Z軸は、水平方向に延びている。コラム111は、サーボモータ(図示せず)によってZ軸方向に位置決めされながら移動する。コラム111の被加工物支持部120と対向する面には、Y軸に沿って延びるY軸ガイドレール113が設けられている。ここで、Y軸は、鉛直方向に延びている。スピンドル部112は、主として、ベース部114と、スピンドル本体115と、工具ホルダ116とを有している。ベース部114は、コラム111のY軸ガイドレール113にスライド自在に取り付けられた部分である。ベース部114は、サーボモータ(図示せず)によってY軸方向に位置決めされながら移動する部分である。スピンドル本体115は、ベース部114に設けられた部分であり、工具ホルダ116が着脱可能に取り付けられている。また、スピンドル本体115には、モータ(図示せず)が設けられており、このモータによって所望の回転速度で工具ホルダ116を回転させることができるようになっている。工具ホルダ116は、工具を支持する部分である。尚、工具ホルダ116に支持される工具は、自動工具交換装置(図示せず)によって交換可能になっている。このような刃物支持部110においては、制御部140からの制御信号に応じて、コラム111及びベース部114のサーボモータが駆動制御されて、工具が所望のY軸方向位置及びZ軸方向位置に位置決めされるようになっている。また、制御部140からの制御信号に応じて、スピンドル本体115のモータが駆動制御されて、工具が回転駆動されるか、又は、回転不能に支持されるようになっている。
【0034】
被加工物支持部120は、被加工物を支持して移動させる部分である。被加工物支持部120は、主として、回転テーブル121と、クランプ部122と、センタ123とを有している。回転テーブル121は、基礎台130に対して回転自在に設けられた部分である。回転テーブル121は、主として、基礎部124と回転台125とを有している。基礎部124は、基礎台130の上面に設けられ、かつ、X軸方向(Y軸及びZ軸に直交する方向)に延びるX軸ガイドレール132に対してスライド自在に取り付けられた部分である。回転台125は、基礎部124に対して鉛直方向に延びる鉛直軸B回りに回転自在に取り付けられた部分である。基礎部124は、サーボモータ(図示せず)によってX軸方向に位置決めされながら移動する。回転台125は、モータ(図示せず)によって鉛直軸B回りの回転角度を位置決めされながら回転移動する。クランプ部122は、回転テーブル121上に設けられて被加工物をクランプする部分である。クランプ部122は、水平方向に延びる水平軸A回りに被加工物を回転自在に支持する。ここで、水平軸Aは、回転台125の回転中心となる鉛直軸Bと交差している。クランプ部122は、被加工物をモータ(図示せず)によって水平軸A回りの回転角度を位置決めしながら回転移動させる。センタ123は、回転テーブル121上に設けられてクランプ部122に支持された被加工物の回転中心を支持する部分である。センタ123は、回転テーブル121上において水平軸Aに沿ってスライド自在な部分である。センタ123は、クランプ部122に支持された被加工物の回転中心に対して被加工物の先端側から当接するように構成されている。センタ123は、クランプ部122によって片持ち状にクランプされた被加工物の自由端において、その回転中心をセンタ押しすることで、被加工物を水平軸A回りに回転駆動する際の軸ブレを防止している。このような被加工物支持部120においては、制御部140からの制御信号に応じて、回転テーブル121のサーボモータが駆動制御されて、被加工物が所望のX軸方向位置に位置決めされるようになっている。また、制御部140からの制御信号に応じて、回転テーブル121及びクランプ部122のモータが駆動制御されて、被加工物が鉛直軸B回り及び水平軸A回りに位置決めされるようになっている。
【0035】
このように、スクリューロータ製造装置100は、制御部140からの制御信号に応じて、主として、刃物支持部110及び被加工物支持部120を制御することによって、工具をY軸及びZ軸に沿って直進移動させ、被加工物をX軸に沿う直進移動させ、さらに、被加工物を水平軸A及び鉛直軸B回りに回転移動させつつ(すなわち、工具と被加工物とを相対移動させつつ)、工具で被加工物をスクリューロータ2に加工するように構成されている。
【0036】
制御部140は、主として、工具経路設定部141と、NCデータ作成部142と、出力部143とを有している。工具経路設定部141は、目標工具経路データを設定する部分である。より具体的には、工具経路設定部141は、スクリューロータ2の螺旋溝11の設計データや加工前の被加工物の形状等が入力され、これらの設計データ等に基づいて被加工物に対する工具の目標工具経路データを算出して設定する。ここで、目標工具経路データとは、加工時における被加工物に対する工具の先端の位置や姿勢、移動経路に関するデータである。NCデータ作成部142は、主として、刃物支持部110及び被加工物支持部120を制御するためのNCデータを作成する部分である。より具体的には、NCデータ作成部142は、工具経路設定部141で設定された目標工具経路データに基づいて、刃物支持部110及び被加工物支持部120を駆動するためのNCデータを作成する。このNCデータは、スクリューロータ製造装置100における直交3軸(X軸、Y軸及びZ軸)の位置指令データや回転2軸(水平軸A及び鉛直軸B)の位置指令データ等からなる。出力部143は、NCデータを刃物支持部110及び被加工物支持部120に出力する部分である。より具体的には、出力部143は、NCデータ作成部142からのNCデータに基づいて、刃物支持部110及び被加工物支持部120のモータ等に制御信号を出力する。
【0037】
そして、出力部143から刃物支持部110及び被加工物支持部120のモータ等に制御信号が入力されることによって、刃物支持部110及び被加工物支持部120が移動し、工具が被加工物に対して所望の目標工具経路に沿って移動しつつ被加工物に螺旋溝11を加工するようになっている。より具体的には、螺旋溝11の加工は、主として、荒加工ステップS1、仕上げ加工ステップS2、S3の順に行われる。
【0038】
荒加工ステップS1は、被加工物の外周に螺旋溝11を荒加工する工程である。荒加工ステップS1では、工具として、回転工具(工具自体が回転することによって切削加工を行うもの)としてのエンドミルからなる荒加工工具151が使用される。まず、工具ホルダ116を介してスピンドル部112に荒加工工具151を取り付ける。そして、荒加工工具151によって被加工物に螺旋溝11を切削加工する。このとき、荒加工工具151の目標工具経路は、荒加工用の目標工具経路が設定されており、荒加工用の目標工具経路に応じて刃物支持部110及び被加工物支持部120が駆動される。尚、図8中の実線は、実際に被加工物に加工される螺旋溝11の形状を示しており、図8中の破線は、仕上げ加工後の螺旋溝11の形状を示している。
【0039】
仕上げ加工ステップS2、S3は、荒加工ステップS1の後に、螺旋溝11の側面13及び底面14を仕上げ加工する工程である。側面13の仕上げ加工ステップS2では、工具として、回転工具としてのエンドミルからなる側面仕上げ工具152が使用される。側面仕上げ工具152は、先端に凸状に湾曲するR刃152aを有している。すなわち、側面仕上げ工具152は、R刃152a付きの回転工具となっている。ここで、R刃152aの半径r1は、仕上げ加工後の底面14の中央部分の半径r2よりも小さくなっている。ここでは、R刃152aの半径r1は、仕上げ加工後の底面14の中央部分の半径r2の0.7倍以上、1.0倍未満に設定されている。まず、工具ホルダ116を介してスピンドル部112に側面仕上げ工具152を取り付ける。そして、側面仕上げ工具152によって螺旋溝11の側面13を底面14の側面近傍部分とともに切削加工する。より具体的には、側面仕上げ加工用の目標工具経路は、側面仕上げ加工用の目標工具経路が設定されており、側面仕上げ加工用の目標工具経路に応じて刃物支持部110及び被加工物支持部120が駆動される。ここで、側面仕上げ加工用の目標工具経路は、側面仕上げ工具152のR刃152aによって、底面14の側面近傍部分が、仕上げ加工後の底面14を、その中央部分の半径r2を維持したままで側面方向に延長した線(図8〜図10中の2点鎖線参照)よりもえぐられるような経路に設定されている。次に、底面14の仕上げ加工ステップS3では、工具として、回転工具としてのエンドミルからなる底面仕上げ工具153が使用される。底面仕上げ工具153は、先端に凸状に湾曲するR刃153aを有している。すなわち、底面仕上げ工具153は、R刃153a付きの回転工具となっている。ここで、R刃153aの半径r3は、仕上げ加工後の底面14の中央部分の半径r2と同じになっている。まず、工具ホルダ116を介してスピンドル部112に底面仕上げ工具153を取り付ける。そして、底面仕上げ工具153によって螺旋溝11の底面14の中央部分を切削加工する。より具体的には、底面仕上げ加工用の目標工具経路は、底面仕上げ加工用の目標工具経路が設定されており、底面仕上げ加工用の目標工具経路に応じて刃物支持部110及び被加工物支持部120が駆動される。ここで、底面仕上げ加工用の目標工具経路は、底面仕上げ工具153によって、底面14の中央部分だけが切削されるような経路に設定されている。
【0040】
−スクリューロータの製造方法及び製造装置の特徴−
本実施形態のスクリューロータ2の製造方法及び製造装置100には、以下のような特徴がある。
【0041】
まず、本実施形態のスクリューロータ2の製造方法及び製造装置100では、螺旋溝11の側面13の仕上げ加工において、回転工具からなる側面仕上げ工具152を使用しているため、螺旋溝11の側面13を何回も繰り返して切削する必要がなくなる。このため、螺旋溝11の側面13の仕上げ加工において、従来のバイト工具のような工具自体が回転しないものを使用する場合に比べて、螺旋溝11の側面13の仕上げ加工の加工時間の短縮を図ることができる。
【0042】
また、従来のスクリューロータの製造方法及び製造装置では、スクリューロータの螺旋溝の仕上げ加工において、螺旋溝の側面を仕上げ加工するバイト工具と、螺旋溝の底面を仕上げ加工するバイト工具とが異なるため、図11に示すように、螺旋溝の側面と底面との継ぎ目に加工残りが生じやすかった。しかし、本実施形態のスクリューロータ2の製造方法では、側面仕上げ工具152のR刃152aによって、底面14の側面近傍部分が、仕上げ加工後の底面14を、その中央部分の半径r2を維持したままで側面方向に延長した線よりもえぐられるように加工されることになる。このため、螺旋溝11の側面13と底面14との継ぎ目に加工残りが生じにくくなり、スクリューロータ2の加工品質の向上を図ることができる。しかも、ここでは、側面仕上げ工具152のR刃152aの半径r1を、螺旋溝11の底面14の中央部分における半径r2よりも小さくしているため、螺旋溝11の底面14の中央部分における螺旋溝11の底面14の側面近傍部分をえぐるように加工しやすい。このため、螺旋溝11の側面13と底面14との継ぎ目の加工残りを確実に生じにくくすることができる。
【0043】
また、本実施形態のスクリューロータ2の製造方法及び製造装置100では、螺旋溝11の底面14の仕上げ加工において、底面仕上げ工具153によって切削する範囲が底面14の中央部分だけで済むため、螺旋溝11の底面14の仕上げ加工の加工時間の短縮も図ることができる。
【0044】
また、従来のスクリューロータの製造方法及び製造装置では、スクリューロータの螺旋溝の仕上げ加工においては、底面仕上げ用の工具として回転工具は使用されておらず、バイト工具を使用していた。なぜなら、スクリューロータの螺旋溝は、工具側(図3〜図5におけるX軸方向)から見ると傾斜をなしているため、回転工具で底面の仕上げ加工を行うと、図12に示すように、底面の側面近傍部分を切削する前に、回転工具が螺旋溝の側面に接触してしまうからである。しかし、本実施形態のスクリューロータ2の製造方法及び製造装置100では、上記のように、螺旋溝11の底面14の仕上げ加工において、底面仕上げ工具153によって切削する範囲が底面14の中央部分だけで済むようになっている。このため、螺旋溝11の底面14の仕上げ加工において、螺旋溝11の側面13に接触するまで底面仕上げ工具を螺旋溝の側面に近づける必要がなくなり、底面仕上げ工具として、従来のようなバイト工具を使用する必要がなくなっている。そこで、本実施形態のスクリューロータ2の製造方法及び製造装置100では、底面仕上げ工具153として、先端にR刃153aを有する回転工具を使用するようにしている。このため、螺旋溝11の底面14の仕上げ加工において、従来のようなバイト工具を使用する場合に比べて、螺旋溝11の底面14の仕上げ加工の加工時間の短縮をさらに図ることができる。
【0045】
尚、本実施形態のスクリューロータ2の製造方法及び製造装置100によれば、螺旋溝11の底面14の形状は、図13に示すように、R刃付回転工具(すなわち、底面仕上げ工具153)による底面14の仕上げ加工の加工線(図13中の太い実線参照)と、R刃付回転工具(すなわち、側面仕上げ工具152)による側面13の仕上げ加工の加工線(図13の細い実線参照)とを合成したものになる。すなわち、側面仕上げ工具152による側面13の仕上げ加工の加工線は、回転工具による底面14の仕上げ加工が可能な限界位置よりも中央線(図10参照)寄りの位置において、底面仕上げ工具153による底面14の仕上げ加工の加工線に繋がっている。このため、底面14の側面近傍の部分は、螺旋溝11の底面14の設計理想線(図13中の細い1点鎖線参照)よりも、わずかにえぐられるように加工されていることがわかる。この底面14のえぐりの程度は、底面14のr2が100mm程度で側面13間の溝幅が30mm程度の螺旋溝において、約20μmである。一方、側面仕上げ工具として、R刃なし回転工具(すなわち、R刃152aを有しない先端が平坦な回転工具)を使用する場合には、R刃付回転工具を使用する場合と同じ側面方向位置において、底面仕上げ工具153による底面14の仕上げ加工の加工線に繋がるようにすると、底面14の側面近傍の部分が、螺旋溝11の底面14の設計理想線(図13中の細い1点鎖線参照)よりも、非常に大きくえぐられるように加工せざるを得ないことがわかる(図13中の2点鎖線参照)。この底面14のえぐりの程度は、底面14のr2が100mm程度で側面13間の溝幅が30mm程度の螺旋溝において、約100μmとなる。このように、本実施形態のスクリューロータ2の製造方法及び製造装置100によれば、側面仕上げ工具としてR刃付回転工具を使用しているため、設計理想線に近い状態で、底面14の側面近傍部分をわずかにえぐるように加工しつつ、底面仕上げ工具として回転工具を使用することができる。
【0046】
<第2実施形態にかかるスクリューロータの製造方法及び製造装置>
−スクリューロータの製造方法及び製造装置−
次に、上記のスクリュー圧縮機1を構成するスクリューロータ2を製造するためのスクリューロータ製造装置100の第2実施形態について、図14〜図17を用いて説明する。ここで、図14は、スクリューロータ2の螺旋溝11の加工工程を示すフローチャートである。図15は、スクリューロータ2の螺旋溝11の加工工程を示す図であって、荒加工後の螺旋溝11を示す図である。図16は、スクリューロータ2の螺旋溝11の加工工程を示す図であって、側面13の仕上げ加工後の螺旋溝11を示す図である。図17は、スクリューロータ2の螺旋溝11の加工工程を示す図であって、側面13及び底面14の仕上げ加工後の螺旋溝11を示す図である。
【0047】
尚、スクリューロータ製造装置100の構成は、第1実施形態のスクリューロータ製造装置100と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
ここでは、螺旋溝11の加工は、主として、荒加工ステップS11、仕上げ加工ステップS12、S13の順に行われる。
【0049】
荒加工ステップS11は、被加工物の外周に螺旋溝11を荒加工する工程である。荒加工ステップS11では、工具として、回転工具(工具自体が回転することによって切削加工を行うもの)としてのエンドミルからなる荒加工工具161が使用される。まず、工具ホルダ116を介してスピンドル部112に荒加工工具161を取り付ける。そして、荒加工工具161によって被加工物に螺旋溝11を切削加工する。このとき、荒加工工具161の目標工具経路は、荒加工用の目標工具経路が設定されており、荒加工用の目標工具経路に応じて刃物支持部110及び被加工物支持部120が駆動される。尚、図15中の実線は、実際に被加工物に加工される螺旋溝11の形状を示しており、図15中の破線は、仕上げ加工後の螺旋溝11の形状を示している。
【0050】
仕上げ加工ステップS12、S13は、荒加工ステップS11の後に、螺旋溝11の側面13及び底面14を仕上げ加工する工程である。側面13の仕上げ加工ステップS12では、工具として、回転工具としてのエンドミルからなる側面仕上げ工具162が使用される。側面仕上げ工具162は、まず、工具ホルダ116を介してスピンドル部112に側面仕上げ工具162を取り付ける。そして、側面仕上げ工具162によって螺旋溝11の側面13を切削加工する。より具体的には、側面仕上げ加工用の目標工具経路は、側面仕上げ加工用の目標工具経路が設定されており、側面仕上げ加工用の目標工具経路に応じて刃物支持部110及び被加工物支持部120が駆動される。次に、底面14の仕上げ加工ステップS13では、工具として、バイト工具としての切削バイトからなる底面仕上げ工具163が使用される。底面仕上げ工具163は、先端に側方に突出する凸刃163aを有しており、これにより、先端の形状が略扇形をなしている。すなわち、底面仕上げ工具163は、凸刃163a付きのバイト工具となっている。まず、工具ホルダ116を介してスピンドル部112に底面仕上げ工具163を取り付ける。そして、底面仕上げ工具163によって螺旋溝11の底面14及び側面13の底面近傍部分とともに切削加工する。より具体的には、底面仕上げ加工用の目標工具経路は、底面仕上げ加工用の目標工具経路が設定されており、底面仕上げ加工用の目標工具経路に応じて刃物支持部110及び被加工物支持部120が駆動される。ここで、底面仕上げ加工用の目標工具経路は、底面仕上げ工具163の凸刃163aによって、側面13の底面近傍部分が、仕上げ加工後の側面13を、その外周寄りの部分を底面側に延長した線(図15〜図17中の2点鎖線参照)よりもえぐられるような経路に設定されている。
【0051】
−スクリューロータの製造方法及び製造装置の特徴−
本実施形態のスクリューロータ2の製造方法及び製造装置100には、以下のような特徴がある。
【0052】
まず、本実施形態のスクリューロータ2の製造方法及び製造装置100では、螺旋溝11の側面13の仕上げ加工において、回転工具からなる側面仕上げ工具162を使用しているため、螺旋溝11の側面13を何回も繰り返して切削する必要がなくなる。このため、螺旋溝11の側面13の仕上げ加工において、従来のバイト工具のような工具自体が回転しないものを使用する場合に比べて、螺旋溝11の側面13の仕上げ加工の加工時間の短縮を図ることができる。
【0053】
また、従来のスクリューロータの製造方法及び製造装置では、スクリューロータの螺旋溝の仕上げ加工において、螺旋溝の側面を仕上げ加工するバイト工具と、螺旋溝の底面を仕上げ加工するバイト工具とが異なるため、図11に示すように、螺旋溝の側面と底面との継ぎ目に加工残りが生じやすかった。しかし、本実施形態のスクリューロータ2の製造方法では、底面仕上げ工具163の凸刃163aによって、側面13の底面近傍部分が、仕上げ加工後の側面13を、その外周寄りの部分を底面側に延長した線よりもえぐられるように加工されることになる。このため、螺旋溝11の側面13と底面14との継ぎ目に加工残りが生じにくくなり、スクリューロータ2の加工品質の向上を図ることができる。
【0054】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、上記の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0055】
上記の実施形態にかかるスクリューロータ製造装置では、工具と被加工物とを相対移動させるための構成として、工具をY軸及びZ軸に沿って直進移動させ、被加工物をX軸に沿う直進移動させ、さらに、被加工物を水平軸A及び鉛直軸B回りに回転移動させる構成を採用しているが、これに限定されない。例えば、工具を鉛直軸B回りに回転移動させるようにしてもよいし、また、工具を被加工物に対して水平方向に進退させるのではなく、工具を被加工物に対して鉛直方向に進退させるようにしてもよい。
【0056】
また、上記の実施形態にかかるスクリューロータの製造方法では、螺旋溝11の仕上げ加工において、側面13の仕上げ加工を行った後に底面14の仕上げ加工を行うようにしているが、この仕上げ加工の順序に限定されるものではなく、底面14の仕上げ加工を行った後に側面13の仕上げ加工を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、冷媒圧縮機等として用いられるスクリュー圧縮機のスクリューロータの製造方法及び製造装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
2 スクリューロータ
11 螺旋溝
13 側面
14 底面
100 スクリューロータ製造装置
110 刃物支持部
120 被加工物支持部
140 制御部
152、162 側面仕上げ工具
152a、153a R刃
153、163 底面仕上げ工具
163a 凸刃
r1、r2、r3 半径
S1、S11 荒加工ステップ
S2、S3、S12、S13 仕上げ加工ステップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】国際公開第2004/089569号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具と被加工物とを相対移動させつつ前記工具で前記被加工物を加工することによって、スクリューロータ(2)を製造するスクリューロータの製造方法であって、
前記被加工物の外径に螺旋溝(11)を荒加工する荒加工ステップ(S1)と、
前記荒加工ステップの後に、前記螺旋溝の側面(13)及び底面(14)を仕上げ加工する仕上げ加工ステップ(S2、S3)とを備え、
前記仕上げ加工ステップでは、先端に凸状に湾曲するR刃(152a)を有する回転工具からなる側面仕上げ工具(152)を使用して、前記側面を前記底面の側面近傍部分とともに仕上げ加工し、底面仕上げ工具(153)を使用して、前記底面の中央部分を仕上げ加工する、
スクリューロータの製造方法。
【請求項2】
前記側面仕上げ工具(152)のR刃(152a)の半径(r1)は、前記螺旋溝(11)の底面(14)の中央部分における半径(r2)よりも小さい、請求項1に記載のスクリューロータの製造方法。
【請求項3】
前記底面仕上げ工具(153)は、先端に凸状に湾曲しており前記螺旋溝(11)の底面(14)の中央部分における半径(r2)と同じ半径(r3)を有するR刃(153a)を有する回転工具である、請求項1又は2に記載のスクリューロータの製造方法。
【請求項4】
工具と被加工物とを相対移動させつつ前記工具で前記被加工物を加工することによって、スクリューロータ(2)を製造するスクリューロータの製造装置であって、
前記被加工物を支持して移動させる被加工物支持部(120)と、
前記工具を支持して移動させる刃物支持部(110)と、
前記被加工物の外径に螺旋溝(11)を荒加工する荒加工ステップと、前記荒加工ステップの後に前記螺旋溝の側面(13)及び底面(14)を仕上げ加工する仕上げ加工ステップとを行わせるように、前記被加工物支持部と前記刃物支持部とを相対移動させつつ前記工具に前記被加工物を加工させる制御部(140)とを備え、
前記仕上げ加工ステップでは、先端に凸状に湾曲するR刃(152a)を有する回転工具からなる側面仕上げ工具(152)を使用して、前記側面を前記底面の側面近傍部分とともに仕上げ加工し、底面仕上げ工具(153)を使用して、前記底面の中央部分を仕上げ加工する、
スクリューロータの製造装置(100)。
【請求項5】
前記側面仕上げ工具(152)のR刃(152a)の半径(r1)は、前記螺旋溝(11)の底面(14)の中央部分における半径(r2)よりも小さい、請求項4に記載のスクリューロータの製造装置(100)。
【請求項6】
前記底面仕上げ工具(153)は、先端に凸状に湾曲しており前記螺旋溝(11)の底面(14)の中央部分における半径(r2)と同じ半径(r3)を有するR刃(153a)を有する回転工具である、請求項4又は5に記載のスクリューロータの製造装置(100)。
【請求項7】
工具と被加工物とを相対移動させつつ前記工具で前記被加工物を加工することによって、スクリューロータ(2)を製造するスクリューロータの製造方法であって、
前記被加工物の外径に螺旋溝(11)を荒加工する荒加工ステップ(S11)と、
前記荒加工ステップの後に、前記螺旋溝の側面(13)及び底面(14)を仕上げ加工する仕上げ加工ステップ(S12、S13)とを備え、
前記仕上げ加工ステップでは、回転工具からなる側面仕上げ工具(162)を使用して、前記側面を仕上げ加工し、先端に側方に突出する凸刃(163a)を有するバイト工具からなる底面仕上げ工具(163)を使用して、前記底面を前記側面の底面近傍部分とともに仕上げ加工する、
スクリューロータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−251377(P2011−251377A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127568(P2010−127568)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】