説明

スクリーン印刷版の製造方法および製造装置

【課題】フィルムと感光性乳剤との間に気泡が閉じ込められるのを防止し、感光性乳剤の表面を平滑化できるスクリーン印刷版の製造方法を提供する。
【解決手段】スクリーン3の一面に感光性乳剤4を塗布し、感光性乳剤4の乾燥前に、感光性乳剤の外表面に対し、対向する表面が平滑な樹脂フィルム6を貼り付ける。貼り付け時に、樹脂フィルム6を感光性乳剤4に対し、スクリーン3の一端側から他端に向かって順次押し付けながら貼り付けることにより、樹脂フィルム6と感光性乳剤4との間に気泡が閉じ込められるのを防止できる。樹脂フィルム6を貼り付けた状態で感光性乳剤4を乾燥させ、樹脂フィルム6を感光性乳剤4の表面から剥離すれば、感光性乳剤4の表面を平滑化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷版の製造方法および製造装置、特にスクリーンの印刷領域に塗布された感光性乳剤の表面を平坦化させる方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、枠体の内側に張設されたスクリーンの一面に感光性乳剤(エマルジョン)を塗布し、この乳剤を露光・現像することで所望の印刷パターンを形成するスクリーン印刷版の製造方法が知られている。近年、電子部品の超小型化及び高精密度化に伴い、スクリーン印刷の高精度化への要求は日増しに強くなっている。そこで、スクリーン印刷版における感光性乳剤の塗布においても、高精度な塗布管理が必要条件となってきている。そのためには、塗布機の調整を十分に行い、製版の塗布膜厚バラツキを少なくし、塗布最終仕上げ面を鏡面のごとくフラットに加工する必要性が発生してきている。その理由は、塗布された感光性乳剤の表面に凹凸が存在すると、スキージで押圧した際に被印刷物とスクリーンとに空隙が発生して、印刷ペーストの滲みなど印刷精度が低下するからである。
【0003】
感光性乳剤の塗布面をフラット加工するために、スクリーンに乳剤の塗布と乾燥を数回繰り返し、乳剤が乾燥する前に表面が平滑な樹脂フィルムを感光性乳剤に貼り付け、乾燥させた後で樹脂フィルムを剥離する方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1には、感光性乳剤の塗布後に樹脂フィルムを貼り付け、その後、フィルムの上から押圧することで、樹脂フィルムの平滑面を感光性乳剤の表面に転写し、感光性乳剤表面の平坦性を高める方法が開示されている。このように感光性乳剤の表面を平坦化させることで、被印刷物へスクリーン印刷版で印刷する際、印刷ペーストの滲みなど印刷精度の低下を防止できる。
【0004】
しかし、上記先行技術においては、樹脂フィルムを感光性乳剤に貼り付けた後で、フィルムの上から押圧するため、フィルムと感光性乳剤との間に気泡が閉じ込められやすく、この状態で乾燥させると、感光性乳剤の表面に気泡形状が残ってしまい、平滑面にならないという問題があった。
【0005】
特許文献2には、感光性乳剤と原版とを貼り付けた後、その隙間を取り除くため、乳剤塗布用のバケットのエッジ部分を原版に押し当て、下部から上部へ摺動走査することにより、隙間の空気を外部へ押し出す方法が提案されている。しかしながら、感光性乳剤の中央領域に閉じ込められた空気溜まりは、バケットを用いても簡単に押し出すことができず、またバケットのエッジ部分を用いた押出し操作を繰り返すと、バケットとの摩擦によりフィルムに歪みが発生したり、感光性乳剤の厚みが変化してしまうという新たな問題が発生する。
【特許文献1】特開2002−79775号公報
【特許文献2】特開2004−325552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、フィルムと感光性乳剤との間に気泡が閉じ込められるのを防止し、感光性乳剤の表面を平滑化できるスクリーン印刷版の製造方法および製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の好ましい実施の形態は、枠体の内側に張設されたスクリーンの印刷領域に感光性乳剤を塗布し、この乳剤を露光・現像することで所望の印刷パターンを形成するスクリーン印刷版の製造方法において、上記スクリーンに感光性乳剤を塗布する工程と、上記感光性乳剤の乾燥前に、上記感光性乳剤の外表面に対し、対向する表面が平滑な樹脂フィルムを貼り付ける工程であって、上記樹脂フィルムを感光性乳剤に対し、上記スクリーンの一端側から他端に向かって順次押し付けながら貼り付けることにより、上記樹脂フィルムの平滑面を感光性乳剤の外表面に転写する工程と、上記樹脂フィルムを貼り付けた状態で感光性乳剤を乾燥させる工程と、上記樹脂フィルムを感光性乳剤の外表面から剥離させる工程と、を含むことを特徴とするスクリーン印刷版の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明の好ましい実施の形態は、枠体の内側に張設されたスクリーンの印刷領域に感光性乳剤を塗布し、この乳剤を露光・現像することで所望の印刷パターンを形成するスクリーン印刷版の製造装置において、上記スクリーンに塗布された感光性乳剤の乾燥前に、上記感光性乳剤の外表面に対し、対向する表面が平滑な樹脂フィルムの背面を押しつける押圧手段と、上記押圧手段を上記スクリーンとの対向方向に移動させる第1作動手段と、上記押圧手段を上記スクリーンの一端側から他端に向かって移動させる第2作動手段とを備え、上記感光性乳剤に対し、樹脂フィルムを上記スクリーンの一端側から他端に向かって順次押し付けながら貼り付けることにより、上記樹脂フィルムの平滑面を感光性乳剤の外表面に転写することを特徴とするスクリーン印刷版の製造装置である。
【0009】
本発明では、樹脂フィルムを感光性乳剤に貼り付けた後で、フィルムの上から押圧するのではなく、樹脂フィルムを感光性乳剤に対してスクリーンの一端側から他端側にかけて順次貼り付けると同時に押圧する点を特徴としている。つまり、柔軟性のあるフィルムを感光性乳剤に対して一端側から他端側へ順次貼り付けると、フィルムと感光性乳剤との間に空気が閉じ込められる現象を防止できるからである。しかも、フィルムと感光性乳剤との貼り付けおよび押圧工程を同時に実施できるので、作業時間を短縮できる。
【0010】
好ましい実施の形態によれば、樹脂フィルムを感光性乳剤に対し貼り付ける場合に、樹脂フィルムの背面とスクリーンの背面とを一対の押圧部材によって挟持し、これら一対の押圧部材をスクリーンの一端側から他端に向かって移動させることにより、感光性乳剤の外表面に樹脂フィルムを貼り付けるようにしてもよい。すなわち、樹脂フィルムの上から押圧部材によって押圧しながら樹脂フィルムを感光性乳剤に貼り付けることも可能であるが、押圧部材の押圧力によってスクリーンが押されて延びるため、スクリーンやフィルムの変形、さらには感光性乳剤の厚みを一定にできない場合がある。これに対し、樹脂フィルムとスクリーンとを一対の押圧部材によって挟持しながら、押圧部材を移動させれば、スクリーンの背面が一方の押圧部材で支持されるので、スクリーンの撓みを防止でき、スクリーンやフィルムの変形を防止できるとともに、感光性乳剤の厚みを一定に制御できる。
【0011】
樹脂フィルムとスクリーンとを挟持する一対の押圧部材としては、例えば感光性乳剤を塗布する際に使用したバケットを利用することもできるし、あるいは別の押圧部材を用いてもよい。さらに、押圧部材として一対の回転ローラを用いることもできる。また、樹脂フィルムを感光性乳剤に貼り付ける際、樹脂フィルムに皺や弛みなどが発生しないように、所定の剛性または厚みを持つフィルムを使用するのがよい。
【0012】
本発明で使用する樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)などを使用することができる。PETフィルムを使用した場合、フィルムの厚みは、薄過ぎると、皺や弛みが発生しやすく、逆に厚過ぎると、感光性乳剤に対して貼り付ける際に撓みにくく、感光性乳剤と樹脂フィルムとの間に空気が噛み込みやすくなるため、50〜75μm程度のものがよい。
【0013】
好ましい実施の形態によれば、樹脂フィルムをスクリーン方向に所定の抵抗力をもってガイドするガイド手段をさらに備え、ガイド手段は、樹脂フィルムの一面を支え、磁性体で構成されたガイド面と、上記ガイド面に対して上記樹脂フィルムを間にして吸着されるマグネットとで構成されてもよい。樹脂フィルムを感光性乳剤に対して一端側から順次貼り付けるため、貼り付け前の樹脂フィルムに弛みや歪みが発生すると、それが貼り付け後の樹脂フィルムに皺が発生したり、感光性乳剤との間に空気が取り込まれる可能性がある。そこで、貼り付け前の樹脂フィルム部分を所定の抵抗力をもってガイドすれば、樹脂フィルムを感光性乳剤に対して皺や歪みがなく適正に貼り付けることができる。マグネットは、磁力が強過ぎるとフィルムが動きにくくなり、弱過ぎると撓みや歪み等の発生防止効果が得にくくなるので、適当な磁力を有するものが選択される。この磁力は間にシートなどを挟むことで、簡単に調整できる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の好ましい実施の形態によれば、樹脂フィルムを感光性乳剤に貼り付ける際に一端側から他端側に向かって順次押し付けながら貼り付けるので、樹脂フィルムと感光性乳剤との間に空気が閉じ込められることがなく、樹脂フィルムを剥離した後に感光性乳剤の表面に気泡痕が残らない。そのため、感光性乳剤の表面を平滑化でき、高精度のスクリーンを実施することができる。また、従来のように樹脂フィルムと感光性乳剤との間に閉じ込められた空気を排出する作業を省略できるので、貼り付け作業時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係るスクリーン印刷版を示す。このスクリーン印刷版1は、例えば金属製の枠体2の内側にスクリーン3を張設したものである。スクリーン3の中央部には印刷領域が設けられ、この印刷領域の一面に感光性乳剤4が塗布され、この乳剤4を露光・現像することで所望の印刷パターンが形成される。
【0017】
図2は本発明の実施の形態に係るスクリーン印刷版の製造工程の流れを示す。まず、枠体2に張設されたスクリーン3の一面に、印刷領域と対応した領域に感光性乳剤4を所定厚みに塗布する(ステップS1)。塗布回数は1回に限らず、所望の厚みとなるまで複数回実施してもよい。その場合、下側の感光性乳剤が乾燥する前にその上に感光性乳剤を重ねて塗布してもよいし、下側の感光性乳剤が乾燥した後でその上に感光性乳剤を重ねて塗布してもよい。乾燥は自然乾燥であってもよいし、オーブンや乾燥機等を用いて加熱乾燥してもよい。このように乳剤塗布工程と乾燥工程とを繰り返すことで、感光性乳剤4を所望の厚さに近づけることができる。
【0018】
次に、最外の感光性乳剤4が自然乾燥する前に、感光性乳剤4の外表面に対して表面が平滑な樹脂フィルムを貼り付ける(ステップS2)。樹脂フィルムは、少なくとも印刷領域4より大きな面積を持つものを使用する。この際、樹脂フィルムと感光性乳剤4との間に空気が閉じ込められないように、樹脂フィルムを感光性乳剤4に対し、スクリーンの一端側から他端に向かって順次貼り付けながら押圧する。これによって、樹脂フィルムの平滑面が感光性乳剤4の外表面に転写される。次に、樹脂フィルムを貼り付けた状態で感光性乳剤4を乾燥させる(ステップS3)。乾燥は自然乾燥であってもよいし、オーブンや乾燥機等を用いて加熱乾燥してもよい。感光性乳剤4の乾燥後、樹脂フィルムを感光性乳剤4の外表面から剥離すると、感光性乳剤4の表面は平滑面とされ、硬化されている(ステップS4)。その後、感光性乳剤4を露光し(ステップS5)、現像する(ステップS6)ことで、所定の印刷パターンが形成される。露光、現像工程は公知の通りであるため、説明を省略する。
【0019】
図3は本発明に係る製造装置の一例を示し、この装置は感光性乳剤塗布工程と樹脂フィルム貼り付け工程を実施するための一部分を示す。なお、製造装置には、図3に示す装置の他に、露光・現像装置および乾燥装置が別に設けられているが、露光・現像装置および乾燥装置は公知であるため、省略する。図3において、スクリーン印刷版1は上下一対のビーム10,11にリテーナ12,13を介して着脱可能に取り付けられ、垂直に支持されている。一対のビーム10,11は固定されたビームでもよいが、一方のビームを支点として他方のビームを傾動させるように構成してもよい。
【0020】
スクリーン印刷版1を間にして左右両側には、水平方向に延びる横レール14,15が配置されており、これら横レール14,15はそれぞれ昇降手段16,17によって同期して上下方向に駆動される。横レール14,15の内側には、水平方向に移動自在なスライド板18,19が設けられており、左右のスライド板18,19はビーム20によって連結されている。ビーム20は、作動手段21によってスクリーン印刷版1との対向方向に作動される。作動手段21としては任意の一軸アクチュエータを使用できるが、荷重制御できる流体圧シリンダが望ましい。ビーム20上にはガイドプレート22が支持されており、ガイドプレート22の上面にはスライド板18,19の移動方向に移動可能な一対のL型ガイドレール23が配置されている。これらガイドレール23は樹脂フィルム6の両側縁をガイドするものであり、樹脂フィルム6の幅寸法に対応した間隔をあけるように、また樹脂フィルム6を感光性乳剤4に貼り付ける位置を調整することができるように、ガイドレール23の位置が調整されている。左右のガイドレール23の水平部23a上には薄板状のマグネット24がそれぞれ吸着保持されており、これらマグネット24の保持力によって長尺な樹脂フィルム6の弛みを防止することができる。
【0021】
ガイドプレート22のスクリーン印刷版側の側面には、バケット5がそのエッジ部をスクリーン側に向けて取り付けられている。ここで、バケット5とガイドプレート22との連結部に、バケット5の傾きを調整できる機構を設けるのがよい。この実施例では、バケット5が感光性乳剤塗布用治具と樹脂フィルムの貼り付け用押圧部材とを兼ねるものであるが、樹脂フィルムの貼り付け専用の押圧部材を設けてもよい。
【0022】
横レール14,15の間には、スクリーン印刷版1の背面側に別のビーム30が水平方向に移動自在に配置され、このビーム30も作動手段31によってスクリーン印刷版1との対向方向に作動される。作動手段31としては任意の一軸アクチュエータを使用できるが、荷重制御できる流体圧シリンダが望ましい。ビーム30の中間部にはリテーナ32を介して別のバケット9がそのエッジ部をスクリーン側に向けて取り付けられている。なお、このバケット9は感光性乳剤塗布に用いるものではなく、バケット5が感光性乳剤4を塗布するとき、およびバケット5が樹脂フィルム6を押し付けながらスクリーン3に貼り付けるとき、バケット9がスクリーン3の背面から支持することで、スクリーン3の撓みを防止したり、スクリーン3や樹脂フィルム6の変形を防止したりするために用いられる。
【0023】
ここで、感光性乳剤4の塗布工程を図4を参照して説明する。
まず、スクリーン印刷版1を垂直あるいはやや傾けて保持する。ここでは、スクリーン印刷版1を上下のビーム10,11によって垂直に保持した。次に、内部に感光性乳剤4を貯留した樋状のバケット5のエッジ部を、スクリーン3の印刷領域の下端部に接触させる。一方、スクリーン印刷版1の背面側から、感光性乳剤4を貯留していないバケット9のエッジ部をスクリーン3の背面に対し、バケット5の接触位置と同一位置に接触させる。このとき、スクリーン3が撓まないように、バケット5,9を作動手段21,31によって作動させるのがよい。そして、バケット5を傾けて感光性乳剤4をスクリーン3に付着させた状態で、バケット5,9を下方から上方へ移動させることにより、余分な感光性乳剤4を掻き取りながらスクリーン3に塗布する。バケット5,9の移動は、昇降手段16,17を作動させればよい。上記塗布と乾燥とを数回ないし十数回程度実施することで、スクリーン3の一面に感光性乳剤4を所定厚みで塗布することができる。上記塗布工程において、バケット9がスクリーン3の背面を支持しているので、バケット5の押圧力によるスクリーン3の撓みが抑制される。但し、塗布工程において、背面側のバケット9を省略することもできる。
【0024】
図5は樹脂フィルム6の貼り付け工程を示す。
上記塗布工程の終了した感光性乳剤4の外表面には凹凸が生じているため、この凹凸をなくして平滑面とするため、感光性乳剤4が乾燥する前に樹脂フィルム6を貼り付ける。そのため、スクリーン印刷版1を上下のビーム10,11によって垂直に保持する。そして、樹脂フィルムの一端側を感光性乳剤4が塗布されたスクリーン3の下端部に接触させ、樹脂フィルム6の背面とスクリーン3の背面とを一対のバケット5,9によって挟持する。そのため、バケット5,9を作動手段21,31によってスクリーン印刷版1の方向に作動させるが、作動手段21,31として荷重制御用アクチュエータを使用した場合には、バケット5,9の押し付け圧力が所定値に設定される。ここでは、樹脂フィルム6とスクリーン3とを挟持する押圧部材としてバケット5,9を使用し、バケット5,9のエッジ部を樹脂フィルム6の背面とスクリーン3の背面とに接触させた。なお、バケット5,9のエッジ部にはR面が形成されているため、樹脂フィルム6やスクリーン3を傷つけることがない。バケット5,9は昇降手段16,17によって上下方向に昇降される。
【0025】
図6に示すように、樹脂フィルム6の両側縁は、一対のL型ガイドレール23の垂直部23bによってガイドされている。ガイドレール23は磁性体で形成され、その水平部23aの上面にマグネット24が磁力により吸着保持されている。なお、水平部23aの一部だけを磁性体で構成してもよい。そのため、樹脂フィルム6はガイドレール23の水平部23aとマグネット24とによって保持され、この保持力により生じる摩擦力により、樹脂フィルム6の移動に所定の抵抗力を与え、貼り付け前の樹脂フィルム6の弛みや歪みを防止している。ガイドレール23はガイドプレート22に設けられているので、昇降手段16,17によってバケット5と一体的に昇降可能である。そのため、樹脂フィルム6に無理な張力がかからない。この例ではマグネット24はガイドレール23に対して着脱自在であるが、例えばマグネット24の一側縁部をガイドレール23に係止することによって、水平部23aに吸着された水平位置と、垂直部23bに吸着された垂直位置との2位置に回動するように構成してもよい。樹脂フィルム6のガイド手段は、上記のようなガイドレール23とマグネット24の組み合わせに限るものではなく、ガイドローラなどの任意の手段を用いることができる。
【0026】
図7に示すように、樹脂フィルム6とスクリーン3とを一対のバケット5,9で挟持した状態から、バケット5,9をスクリーン3に対して相対的に上方へ移動させると、樹脂フィルム6が感光性乳剤4に貼り付けられると同時に、樹脂フィルム6が感光性乳剤4に所定の圧力で押し付けられる。このとき、樹脂フィルム6は感光性乳剤4に対してスクリーン3の下側から上側に向かって順次貼り付けられるので、樹脂フィルム6と感光性乳剤4との間に空気が入り込まない。スクリーン3と樹脂フィルム6と感光性乳剤4とを含めた合計の厚みを一対のバケット5,9の間隔により規定するようにすれば、感光性乳剤4の厚みを一定に制御することができる。スクリーン3は一方のバケット5によって押されるが、スクリーン3の背面が他方のバケット9によって支えられているので、スクリーン3が撓むことがなく、スクリーン3および樹脂フィルム6の変形を防止でき、感光性乳剤4の厚みを正確に制御できる。
【0027】
上記のような貼り付け方法で樹脂フィルム6を感光性乳剤4に貼り付けた場合、樹脂フィルム6と感光性乳剤4との間に空気が閉じ込められることがなく、良好な結果を得た。なお、条件は以下の通りである。
スクリーンのメッシュテンション:1.0mm/100g
感光性乳剤の塗布目標厚み:11μm
感光性乳剤のコーティング速度:1.2m/min
樹脂フィルム:35cm×40cm×75μmのPETフィルム
バケットの押し付け圧力:0.8kg/cm2
【0028】
上記実施例では、押圧部材としてバケットを兼用したが、どのような押圧部材を用いてもよく、例えば回転ローラを使用してもよい。また、樹脂フィルムの背面を押圧する押圧部材と、スクリーンの背面を支える押圧部材は同一形状である必要はなく、異なる形状であってもよい。
上記実施例では、樹脂フィルムの貼り付けに際し、スクリーンを静止させ、バケットをスクリーンに対して移動させたが、これとは逆にバケットを静止させ、スクリーンを移動させてもよい。
さらに、押圧部材(バケット)の移動方向は、上下方向に限らず、スクリーン印刷版を水平状態に保持し、押圧部材をスクリーン印刷版に対して水平方向に移動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態にかかるスクリーン印刷版の斜視図である。
【図2】図1のスクリーン印刷版の製造工程を示す流れ図である。
【図3】図1のスクリーン印刷版の製造装置の一例の斜視図である。
【図4】スクリーン印刷版への感光性乳剤の塗布工程を示す側面図である。
【図5】スクリーン印刷版への樹脂フィルムの貼り付け工程を示す側面図である。
【図6】樹脂フィルムを吸着保持するガイド手段の一例の斜視図である。
【図7】樹脂フィルムの貼り付け方法を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0030】
1 スクリーン印刷版
2 枠体
3 スクリーン
4 感光性乳剤
5,9 バケット(押圧部材)
6 樹脂フィルム
16,17 昇降手段(第2作動手段)
21,31 作動手段(第1作動手段)
23 ガイドレール
24 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の内側に張設されたスクリーンの印刷領域に感光性乳剤を塗布し、この乳剤を露光・現像することで所望の印刷パターンを形成するスクリーン印刷版の製造方法において、
上記スクリーンに感光性乳剤を塗布する工程と、
上記感光性乳剤の乾燥前に、上記感光性乳剤の外表面に対し、対向する表面が平滑な樹脂フィルムを貼り付ける工程であって、上記樹脂フィルムを感光性乳剤に対し、上記スクリーンの一端側から他端に向かって順次押し付けながら貼り付けることにより、上記樹脂フィルムの平滑面を感光性乳剤の外表面に転写する工程と、
上記樹脂フィルムを貼り付けた状態で感光性乳剤を乾燥させる工程と、
上記樹脂フィルムを感光性乳剤の外表面から剥離させる工程と、を含むことを特徴とするスクリーン印刷版の製造方法。
【請求項2】
上記樹脂フィルムを感光性乳剤に貼り付ける工程は、上記樹脂フィルムの背面と上記スクリーンの背面とを一対の押圧部材によって挟持しながら、上記一対の押圧部材を上記スクリーンの一端側から他端に向かって移動させることにより、上記感光性乳剤の外表面に樹脂フィルムを貼り付けることを特徴とする、請求項1に記載のスクリーン印刷版の製造方法。
【請求項3】
枠体の内側に張設されたスクリーンの印刷領域に感光性乳剤を塗布し、この乳剤を露光・現像することで所望の印刷パターンを形成するスクリーン印刷版の製造装置において、
上記スクリーンに塗布された感光性乳剤の乾燥前に、上記感光性乳剤の外表面に対し、対向する表面が平滑な樹脂フィルムの背面を押しつける押圧手段と、
上記押圧手段を上記スクリーンとの対向方向に移動させる第1作動手段と、
上記押圧手段を上記スクリーンの一端側から他端に向かって移動させる第2作動手段とを備え、
上記感光性乳剤に対し、樹脂フィルムを上記スクリーンの一端側から他端に向かって順次押し付けながら貼り付けることにより、上記樹脂フィルムの平滑面を感光性乳剤の外表面に転写することを特徴とするスクリーン印刷版の製造装置。
【請求項4】
上記押圧手段は、上記樹脂フィルムの背面と上記スクリーンの背面とを挟持する一対の押圧部材を備え、上記一対の押圧部材によって挟持しながら、上記一対の押圧部材を上記スクリーンの一端側から他端に向かって移動させることにより、上記感光性乳剤の外表面に樹脂フィルムを貼り付けることを特徴とする、請求項3に記載のスクリーン印刷版の製造装置。
【請求項5】
上記樹脂フィルムを上記スクリーン方向に所定の抵抗力をもってガイドするガイド手段をさらに備え、
上記ガイド手段は、上記樹脂フィルムの一面を支え、磁性体で構成されたガイド面と、上記ガイド面に対して上記樹脂フィルムを間にして吸着されるマグネットとで構成されることを特徴とする請求項3または4に記載のスクリーン印刷版の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate