説明

スクリーン印刷装置

【課題】 ペースト溜まりの問題を解決することで生産性を高くし、ペーストの無駄の無い低コストのスクリーン印刷装置を提供する。
【解決手段】 対象物3に重ね合わわれたスクリーン版1の上にペースト2を供給し、スクレッパー4で薄く伸ばしてコートし、スキージ5がペースト2をスクリーン版1を通して対象物3に押し付けて印刷を行う。制御手段7は、装置をペースト寄せモードで動作させることが可能であり、ペースト寄せモードでは、スクレッパー4は、スキージ移動終了位置よりも印刷領域から離れたペースト寄せ位置から移動を開始し、スキージ5は、スクレッパー移動終了位置よりも印刷領域から離れたペースト寄せ位置から移動を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、スクリーン印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷装置は、高精細の印刷を高速で行えるため、産業の各分野において盛んに使用されている。最近では、特開2006−76183号公報で紹介されているように、プラズマディスプレイのようなディスプレイ装置の製造においても、スクリーン印刷装置が使用されている。
【特許文献1】特開2006−76183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなスクリーン印刷装置においては、生産性即ち印刷速度の向上や印刷コストの低減が要求されている。この観点で、従来のスクリーン印刷装置は、次のような課題を抱えている。
図13及び図14は、従来のスクリーン印刷装置の課題を示した図であり、図13は正面概略図、図14は平面概略図である。
スクリーン印刷装置では、通常、版(以下、スクリーン版)1は水平な姿勢とされ、対象物3の上に重ね合わされる。ペースト状のインキ(以下、単にペースト)2がスクリーン版1の上に盛られ、薄く伸ばされる。この薄く伸ばすことを、本明細書ではコートと呼ぶ。スクリーン印刷は、コートされたペースト2を対象物3に向けて押し付けることで行われる。
【0004】
より具体的に説明すると、スクリーン印刷装置は、ペースト2のコートを行う部材としてスクレッパー4を備えており、コートされたペースト2の押し付けを行う部材としてスキージ5を備えている。尚、コートされたペースト2の押し付けを本明細書ではスキージングと呼ぶ。
図14に示すように、スクリーン版1は、方形な枠(以下、スクリーン枠)11に固定されている。スクリーン版1には、方形の印刷領域12が設定されている。印刷領域12は、少なくともこの領域においてペースト2のコートとスキージングが行われる領域として設定されるものである。印刷領域12は、転写するパターンが描かれた領域(以下、パターン領域)13を含んでいる。印刷領域12とパターン領域13が同じであっても良いが、通常は印刷領域12はパターン領域13よりも大きくパターン領域13の外側のマージンを含んだ形状となっている。
【0005】
スクレッパー4もスキージ5も、長尺な帯板状の部材であって、一種のヘラとして機能する部材である。スクレッパー4もスキージ5も、スクリーン枠11の方形の一辺の方向に沿って配置されている。スクレッパー4とスキージ5は、狭い間隔で並んで平行に配置されている。
スクレッパー4とスキージ5には、スクリーン枠11の方形の他方の辺の方向に直線移動させる不図示の移動機構と、スクリーン版1との距離を調節するための不図示の昇降機構がぞれぞれ付設されている。
【0006】
従来の装置を使用した印刷方法について説明すると、まず、ペースト2がスクリーン版1の上に盛られる。そして、昇降機構によってスクレッパー4がスクリーン版1に接近した高さに位置した後、移動機構によって移動し、図13に示すように、ペースト2のコートが行われる。スクレッパー4が方形の印刷領域12の一端から反対側の他端まで移動してコートが行われた後、スクレッパー4が上昇し、スキージ5が下降してスクリーン版1に当接した状態とされる。そして、スキージ5が他端から一端まで移動してスキージングが行われる。この際、スキージ5の先端がスクリーン版1を対象物3に押し付けながら移動する状態となり、ペースト2もスクリーン版1を通して対象物3に押し付けられる。これにより、印刷領域12に形成されたパターンでペースト2が対象物3に付着し、印刷が行われる。
【0007】
このようなスクリーン印刷において、コートにしてもスキージングにしても、ペースト2を掻き出しながら行われるので、無駄になるペースト2が出てくる。即ち、スクレッパー4が印刷領域12の一端から他端まで移動してペースト2がコートされた際、他端で停止したスクレッパー4の先には、余ったペースト2の溜まり(以下、ペースト溜まり)22が形成される。スキージ5が他端から一端まで移動してスキージングが行われた際、他端の先にもやはりペースト溜まり21が形成される。
【0008】
一つの対象物3に対する印刷は、スクレッパー4の往路移動とスキージ5の復路移動とで終了するが、印刷(スクレッパー4とスキージ5の往復動)を繰り返すたびにペースト溜まり21,22は増えていく。大量のペースト溜まり21,22が形成されたままであると、無駄になるペースト2が多くなるので、ある程度の回数の印刷を繰り返した後、作業者が手作業でペースト溜まりを印刷領域12に戻す作業をしている。この作業は面倒な上、装置をいったん停止した後に行わなければならないため、生産性を低下させる原因となっている。また、ペーストによっては長時間ペースト溜まりに溜まっていると劣化するものもあり、この場合にはペーストを戻す作業は頻繁に行う必要がある。したがって、より生産性が低下する原因となる。
本願の発明は、このような課題を解決するために為されたものであり、ペースト溜まりの問題を解決することで生産性を高くし、ペーストの無駄の無い低コストのスクリーン印刷装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、水平な姿勢のスクリーン版を対象物に重ね合わせ、スクリーン版に設定された印刷領域にペーストをコートし、コートされたペーストをスクリーン版を通して対象物に押し付けるスキージングを行うことで印刷領域のパターンを印刷するスクリーン印刷装置であって、
スクレッパーと、
スキージと、
スクレッパーをスクリーン版に沿って移動させることでスクレッパーにペーストのコートを行わせるクレッパー移動機構と、
ペーストがコートされたスクリーン版に沿ってスキージーを移動させることでスキージにスキージングを行わせるスキージー移動機構と、
スクリーン版に対するスクレッパーの距離を調節するスクレッパー昇降機構と、
スクリーン版に対するスキージの距離を調節するスキージ昇降機構と、
スクレッパー移動機構、スキージ移動機構、スクレッパー昇降機構及びスキージ昇降機構を制御する制御手段と
を備えたスクリーン印刷装置であって、
前記スクレッパー移動機構は、前記印刷領域の端部又はその先の位置であるスクレッパー移動終了位置までスクレッパーを移動させるものであり、
前記スキージ移動機構は、前記印刷領域の端部又はその先の位置であるスキージ移動終了位置までスキージを移動させるものであり、
前記制御手段は、スクレッパーペースト寄せ位置をスクレッパー移動開始位置とした上でスクレッパーの移動を開始させるようスクレッパー移動機構を制御することが可能であり、
スクレッパーペースト寄せ位置は、前回のコートの際のスクレッパー移動終了位置又は前回のスキージングの際のスキージ移動終了位置よりも印刷領域から離れた位置であって、このスクレッパーペースト寄せ位置と印刷領域の端部との間に形成されているペースト溜まりを印刷領域に寄せることが可能な位置であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、水平な姿勢のスクリーン版を対象物に重ね合わせ、スクリーン版に設定された印刷領域にペーストをコートし、コートされたペーストをスクリーン版を通して対象物に押し付けるスキージングを行うことで印刷領域のパターンを印刷するスクリーン印刷装置であって、
スクレッパーと、
スキージと、
スクレッパーをスクリーン版に沿って移動させることでスクレッパーにペーストのコートを行わせるクレッパー移動機構と、
ペーストがコートされたスクリーン版に沿ってスキージーを移動させることでスキージにスキージングを行わせるスキージー移動機構と、
スクリーン版に対するスクレッパーの距離を調節するスクレッパー昇降機構と、
スクリーン版に対するスキージの距離を調節するスキージ昇降機構と、
スクレッパー移動機構、スキージ移動機構、スクレッパー昇降機構及びスキージ昇降機構を制御する制御手段と
を備えたスクリーン印刷装置であって、
前記スクレッパー移動機構は、前記印刷領域の端部又はその先の位置であるスクレッパー移動終了位置までスクレッパーを移動させるものであり、
前記スキージ移動機構は、前記印刷領域の端部又はその先の位置であるスキージ移動終了位置までスキージを移動させるものであり、
前記制御手段は、スキージペースト寄せ位置をスキージ移動開始位置とした上でスキージの移動を開始させるようスキージ移動機構を制御することが可能であり、
スキージペースト寄せ位置は、前回のスキージングの際のスキージ移動終了位置又は前回のコートの際のスクレッパー移動終了位置よりも印刷領域から離れた位置であって、この位置と印刷領域の端部との間に形成されているペースト溜まりを印刷領域に寄せることが可能な位置であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、水平な姿勢のスクリーン版を対象物に重ね合わせ、スクリーン版に設定された印刷領域にペーストをコートし、コートされたペーストをスクリーン版を通して対象物に押し付けるスキージングを行うことで印刷領域のパターンを印刷するスクリーン印刷装置であって、
スクレッパーと、
スキージと、
スクレッパーをスクリーン版に沿って移動させることでスクレッパーにペーストのコートを行わせるクレッパー移動機構と、
ペーストがコートされたスクリーン版に沿ってスキージーを移動させることでスキージにスキージングを行わせるスキージー移動機構と、
スクリーン版に対するスクレッパーの距離を調節するスクレッパー昇降機構と、
スクリーン版に対するスキージの距離を調節するスキージ昇降機構と、
スクレッパー移動機構、スキージ移動機構、スクレッパー昇降機構及びスキージ昇降機構を制御する制御手段と
を備えたスクリーン印刷装置であって、
前記スクレッパー移動機構は、スクレッパーを、前記印刷領域の第一の端部又はその手前の位置をスクレッパー移動開始位置とし、その反対側の第二の端部又はその先の位置をスクレッパー移動終了位置としてスクレッパーを移動させるものであり、
前記スキージ移動機構は、前記印刷領域の第二の端部又はその手前の位置をスキージ移動開始位置とし、前記第一の端部又はその先の位置をスキージ移動終了位置としてスキージを移動させるものであり、スクレッパーの往路移動とスキージの復路移動とから成る一往復の移動により一回の印刷が行われる装置であり、
前記制御手段は、スキージペースト寄せ位置をスキージ移動開始位置とした上でスキージの移動を開始させるようスキージ移動機構を制御することが可能であるとともに、スクレッパーペースト寄せ位置をスクレッパー移動開始位置とした上でスクレッパーの移動を開始させることが可能であり、
スキージペースト寄せ位置は、スクレッパー移動終了位置よりも印刷領域から離れた位置であって、この位置と印刷領域の端部との間に形成されているペースト溜まりを印刷領域に寄せることが可能な位置であり、
スクレッパーペースト寄せ位置は、スキージ移動終了位置よりも印刷領域から離れた位置であって、この位置と印刷領域の端部との間に形成されているペースト溜まりを印刷領域に寄せることが可能な位置であるという構成を有する。
【発明の効果】
【0010】
以下に説明する通り、本願の各請求項の発明によれば、印刷領域の外側に形成されたペースト溜まりがスクレッパー又は及びスキージにより印刷領域に寄せられるので、ペーストの無駄の無い低コストの印刷が可能となる。また、作業者がペースト溜まりのペーストを印刷領域に戻す必要が無くなるので、生産性が低下することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
まず、第一の実施形態について説明する。図1は、本願発明の第一の実施形態に係るスクリーン印刷装置の正面概略図である。図1に示す装置は、従来の装置と同様に、スクレッパー4とスキージ5とを備えており、水平な姿勢のスクリーン版1を対象物3に重ね合わせてペースト2をコートし、スキージングを行うことで印刷領域12のパターンを印刷する装置である。
【0012】
そして、この装置は、スクレッパー4をスクリーン版1に沿って移動させることでスクレッパー4にペースト2のコートを行わせるスクレッパー移動機構と、ペースト2がコートされたコートスクリーン版1に沿ってスキージを移動させることでスキージ5にスキージングを行わせるスキージ移動機構と、スクリーン版1に対するスクレッパー4の距離を調節するスクレッパー昇降機構41と、スクリーン版1に対するスキージ5の距離を調節するスキージ昇降機構51とを備えている。
【0013】
スクレッパー4、スキージ5は、同様に長尺なヘラ状の部材であり、印刷領域12の奥行きより少し長い長さを有する。そして、スクレッパー4もスキージ5も、スクリーン枠11の方形の一辺の方向に沿って平行に配置され、狭い間隔で並んで配置されている。
スクレッパー昇降機構41は、スクレッパー4を昇降させてスクリーン版1に対する距離を調節する機構である。スキージ昇降機構51は、スキージ5を昇降させてスクリーン版1に対する距離を調節する機構である。スクレッパー昇降機構41やスキージ昇降機構51としては、サーボモータと精密ネジを使用した機構が採用できる。精密ネジを垂直な姿勢で配置し、これに噛み合う被駆動体に回転止めを設け、精密ネジの回転を被駆動体の昇降に変換する構成が採用できる。被駆動体に、スクレッパー4やスキージ5が固定され、サーボモータにより精密ネジを回転させてその回転角度を制御することで、スクレッパー4やスキージ5の上下方向の位置が制御される。
【0014】
本実施形態では、スクレッパー移動機構とスキージ移動機構とが一つの機構6で兼用されている。この機構を単に移動機構と呼ぶ。移動機構6も、サーボモータと精密ネジを使用した機構が採用できる。精密ネジが水平に延びるように配置し、これと同じ高さで平行に延びるようにしてリニアガイドを配置する。被駆動体が精密ネジに噛み合うとともにリニアガイドにガイドされる構成が採用される。そして、スクレッパー昇降機構41及びスキージ昇降機構51が被駆動体に固定されており、これらの機構ごとスクレッパー4やスキージ5が一体に水平方向に移動するようになっている。
移動機構6による移動方向は、スクレッパー4やスキージ5の長さ方向に対して垂直な水平方向(スクリーン枠11の方形の他の一辺の方向)である。本実施形態では、移動方向は、図1の紙面上左右方向となっている。
【0015】
また、装置は、各機構を制御する制御手段7を備えている。制御手段7は、演算処理部(プロセッサ)、記憶部(メモリ)、入力部、インターフェース等を備えたコンピュータである。制御手段7の記憶部には、制御プログラムがインストールされている。この制御プログラムは、一種のシーケンス制御プログラムであり、各機構が所定のシーケンスで動作するよう制御するプログラムである。
【0016】
尚、装置は、不図示のペーストディスペンサーを備えている。ペーストディスペンサーは、スクリーン版1の印刷領域12の上にペースト2を所定量ずつ供給する機構である。その他、対象物3をスクリーン版1の真下に供給する機構を備えている。この機構は、対象物3によって異なるが、例えば対象物3が紙であれば、ロールツーロール(roll-to-roll)で紙を供給する機構が備えられる。また、装置は、対象物3がスクリーン版1に対して所定の位置に配置されたことを確認する不図示のセンサを備えている。
【0017】
本実施形態の装置は、制御手段7が備える制御プログラムによって特徴づけられている。本実施形態の装置は、通常モードとペースト寄せモードとの二つのモードで動作することが可能となっている。図2〜図4は、制御手段7が備える制御プログラムの概略を示したフローチャートである。このうち、図2は制御プログラムの全体を概略的に示したもの、図3は、通常モードのフローチャートを示したもの、図4は、ペースト寄せモードのフローチャートを示したものである。制御プログラムは、図2に示すように、通常モードでの印刷を所定の回数行った後、ペースト寄せモードでの印刷を1回行うようプログラミングされている。
【0018】
図3〜図6を使用して、通常モードとペースト寄せモードについて説明する。図5は、通常モードでの動作状態を示した正面概略図、図6は、ペースト寄せモードでの動作状態を示した正面概略図である。
まず、図3及び図5を使用して通常モードの制御プログラムについて説明する。
装置が印刷を開始する際、スクレッパー4及びスキージ5は、印刷領域12の一端付近の所定の原点位置に位置している。この位置は、印刷領域12のどちら側の端部でも良いが、例えば図5(1)に示すように、左側の端部付近を原点位置とする。また、スクレッパー4もスキージ5も、スクリーン版1から所定位置離れた上方(以下、スタンバイ高さ)に位置している。
【0019】
不図示のセンサからの信号により、対象物3が所定位置に位置したことが確認されると、制御プログラムは、ペーストディスペンサーに動作指令を発する。これにより、図5(1)に示すように、ペースト2がスクリーン版1の上に盛られる。次に、制御プログラムは、スクレッパー昇降機構41に制御信号を送り、スクレッパー4を下方の所定の高さに位置させる(図5(2))。この高さは、ペースト2をコートする際のスクレッパー4の高さであり、以下、コート高さと呼ぶ。尚、スキージ5は、スタンバイ高さに維持されたままである。尚、コート高さは、スクレッパー4の下端がスクリーン版1から僅かに高い位置であるが、スクレッパー4の下端がスクリーン版1に接触する位置がコート高さとされることもある。
【0020】
制御プログラムは、スクレッパー昇降機構41を制御してスクレッパー4をコート高さに維持し、スキージ5がスタンバイ高さに維持した状態で、移動機構6に動作指令を送り、所定のストローク(以下、コートストローク)だけ、スクレッパー4及びスキージ5を移動させる。コートストロークは、スクレッパー4が印刷領域12の一端からその反対側の端部まで移動するための距離である。
【0021】
コートストロークでの移動により、図5(3)に示すように、スクレッパー4がペースト2を押し広げ、ペースト2を薄く伸ばしたような状態になり、ペースト2のコートが行われる。
尚、図5(1)に示すように、印刷を開始する際、原点位置の上方にはスキージ5が位置しており、スクレッパー4は、スキージ5との離間距離(D)の分だけ原点位置の手前から移動を始める。したがって、通常モードモードでのスクレッパー4の移動開始位置は、印刷領域12の端部から距離Dだけ手間の位置であり、コートストロークは印刷領域12の幅Wに距離Dを加えた距離である。また、スクレッパー4の移動終了位置は、印刷領域12の反対側の端部である。
【0022】
スクレッパー4を停止させた後、制御プログラムは、スクレッパー昇降機構41に制御信号を送り、スクレッパー4を上昇させてスタンバイ高さに位置させる。それとともに、制御プログラムは、スキージ昇降機構51に制御信号を送り、スキージ5を下方の所定の高さに位置させる(図5(4))。この高さは、図5(4)に示すように、スキージ5の下端がスクリーン版1に当接し、スクリーン版1を若干押圧する位置である。この高さをスキージング高さと呼ぶ。
【0023】
制御プログラムは、移動機構6に制御信号を送り、スキージ5をスキージング高さに位置し、スクレッパー4がスタンバイ高さに位置した状態で、スキージ5及びスクレッパー4を右から左に所定のストローク(以下、スキージングストローク)だけ移動させる。このスキージングストロークは、図5(5)に示すように、スキージ5の下端が印刷領域12の左端にまで達するだけの距離である。この移動の際、スキージ5の下端がペースト2を対象物3に向けて押し付ける状態となり、スキージングが行われる。
尚、図5(3)から解るように、スキージ5がスキージングを開始する位置は、印刷領域12の端部から離間距離Dだけ手間の位置である。したがって、スキージングストロークは、やはり印刷領域12の幅W+距離Dであり、コートストロークに等しい。
【0024】
その後、制御プログラムは、スキージ昇降機構51に制御信号を送り、スキージ5を上昇させてスタンバイ高さに位置させる。これで、一回の印刷の一連の動作が終了である。印刷された対象物3が排出され、次の対象物3がスクリーン版1の真下の所定位置に位置し、これをセンサが検出すると、制御プログラムは、同様のステップを繰り返す。
【0025】
次に、ペースト寄せモードについて図4及び図6を使用して説明する。ペースト寄せモードは、スクレッパー4の移動開始位置とスキージ5の移動開始位置とが異なるのみで、他のステップは通常モードと同様である。但し、前述したように、ペースト寄せモードは、通常モードでの印刷が何回か繰り返された後に行われるものとなっている。したがって、背景技術の欄で述べたように、スクリーン版1の両側にはペースト溜まり21,22が形成された状態が前提となっている。
【0026】
まず、図6(1)に示す状態は、図5(4)に示す状態であり、通常モードにおいてスキージングが終了し(即ち、一回の印刷が終了し)、スキージ5がスタンバイ高さに戻った状態である。この状態から、制御プログラムは、まず、ペーストディスペンサーに制御信号を送り、ペースト供給を行わせる。
【0027】
次に、制御プログラムは、移動機構6に制御信号を送り、スクレッパー4及びスキージ5を印刷領域12から離れる向きに(この場合は左に)所定距離L1だけ移動させる(図6(2))。次に、制御プログラムは、スクレッパー昇降機構41に制御信号を送り、この位置からスクレッパー4を下降させ、コート高さに位置させる(図6(3))。そして、制御プログラムは、移動機構6に制御信号を送り、スクレッパー4及びスキージ5を一体に右に向けて所定のコートストロークだけ移動させる。スクレッパー4は、印刷領域12の右端に設定された移動終了位置で停止する(図6(4))。この移動の際、スクレッパー4によりペースト2がコートされる。この際のスクレッパー4の停止位置は、図2(2)に示す通常モードでの停止位置と同じである。その後、制御プログラムは、スクレッパー昇降機構41に制御信号を送り、スクレッパー4をスタンバイ高さに戻す(図6(5))。尚、図6(2)〜(4)から解るように、ペースト寄せモードにおけるコートストロークは、印刷領域12の幅W+離間距離D+距離L1となる。
【0028】
次に、制御プログラムは、図6(6)に示すように、移動機構6に制御信号を送り、スクレッパー4及びスキージ5を印刷領域12から離れる向きに所定距離L2だけ移動させる。そして、制御プログラムは、スキージ昇降機構51に制御信号を送り、スキージ5を下降させてスキージング高さに位置させる(図6(6))。制御プログラムは、この状態で移動機構6に制御信号を送り、スクレッパー4及びスキージ5を右から左に所定のスキージングストローク移動させる(図6(7))。この場合のスキージ5の移動終了位置は、通常モードにおける移動終了位置と同じである。この移動によりスキージングがされ、対象物3への印刷が行われる。尚、図6(6)(7)から解るように、ペースト寄せモードにおけるスキージングストロークは、印刷領域12の幅W+離間距離D+距離L2となる。
【0029】
上記説明から解るように、ペースト寄せモードは、コートを行う際にスクレッパー4を通常よりも手前に位置させてから移動させるモードであり、またスキージングを行う際にスキージ5を通常よりも手前に位置させてから移動させるモードである。手前に位置させてから移動させることで、スキージングの際に形成されたペースト溜まりをスクレッパー4が印刷領域12に寄せることになり、コートの際に形成されたペースト溜まりをスキージ5が印刷領域12に寄せることになる。
【0030】
上記説明から解るように、ペースト寄せモードでは、コートに先立ってスクレッパー4をL1だけ後退させ(印刷領域12から離れる向きに移動させ)、そのL1だけ長い距離移動してコートを行う。そして、スキージングに先だってスキージ5をL2だけ後退させ、そのL2の分だけ長い距離移動させてスキージングを行う。
つまり、ペースト寄せモードでは、コートの部分ではスクレッパー4の後退のシーケンスが追加され、コートストロークW+DがW+D+L1に書き換えられたシーケンスとなっている。また、スキージングの部分は、スキージ5の後退のシーケンスが追加され、スキージングストロークがW+D+L2に書き換えられたシーケンスとなっている。
【0031】
後退距離L1,L2は、一回のコートやスキージングで余るペースト2の量、ペースト2の粘度、どの程度の頻度でペースト寄せモードを行うかによって適宜決定される。一回のコートやスキージングで余るペースト2の量は、確実にコートやスキージングを行うためのマージンとして設定されており、ほぼ一定である。
どの程度の頻度でペースト寄せモードを行うかは、必要な生産性やペースト2の劣化速度によって異なる。上記のように、ペースト寄せモードは、スクレッパー4やスキージ5の後退という余分な動作が入るので、一回の印刷に要する時間(1タクト)は若干長くなる。したがって、高い生産性が要求されている場合、ペースト寄せモードの頻度はなるべく低くすることが望ましい。一方、ペースト寄せモードの頻度が低くなると、ペースト2がペースト溜まりの中にいる時間が長くなる。このため、劣化し易いペースト2の場合、ペースト寄せモードをある程度高い頻度で行う必要がある。例えば、ペースト2中に揮発成分が含まれており、時間が経つと揮発成分が揮発して変性してしまうような場合がある。このあたりを勘案して、ペースト寄せモードの頻度を最適に決定する。
【0032】
また、ペースト2の粘性によってペースト溜まりの形状が異なる。この点について、図7を使用して説明する。図7は、ペースト2の粘性に応じて後退距離L1,L2を決める点について示した正面概略図である。
【0033】
図7(1)に示すように、ペースト2の粘性が高い場合、ペースト2はある程度の高さの膨らみ(山)を形成しながら溜まる。したがって、このようなペースト溜まりを寄せるのに必要な後退距離L1,L2は比較的短くて良い。一方、ペースト2の粘性が低い場合、ペースト2はなだらかに広がって溜まるので、必要な後退距離L1,L2は長くなる。但し、ペースト寄せモードの頻度が低い場合、ペースト2の粘性が高くでも時間によりペースト溜まりがなだらかな山に広がってしまう場合がある。この場合は長いL1,L2が必要になる。
【0034】
本実施形態において、制御手段7は、入力手段において、上記ペースト寄せモードの頻度と、後退距離L1,L2を入力できるようになっている。また、制御手段7の記憶部には、入力されたこれらのデータに基づいて、制御プログラムを更新する更新プログラムがインストールされている。オペレーターは、ペースト2の特定(粘度や劣化度合い等)や必要な生産性に応じて、ペースト寄せモードの頻度や後退距離L1,L2を入力し、更新プログラムを実行させて制御プログラムを更新させる。
【0035】
上述した実施形態の装置によれば、ペースト寄せモードが実行される際、ペースト溜まり21,22がスクレッパー4やスキージ5により印刷領域12に寄せられ、印刷に使用される。したがって、ペースト2の無駄が無くなる。また、作業者がペースト2を印刷領域12に戻す作業が不要になるので、この点で生産性が格段に向上する。さらに、ペースト寄せモードの頻度を適宜設定することで、ペースト2の劣化を防止しつつペースト寄せモードによる生産性の低下を抑えることができる。
【0036】
次に、第二の実施形態について説明する。第二の実施形態の装置は、制御手段7が有する制御プログラムの構成のみが異なり、他は第一の実施形態と同様である。
図8〜図11は、第二の実施形態における制御プログラムが行う二つの制御モードについて示した図であり、図8及び図9が通常モードを示し、図10及び図11がペースト寄せモードを示している。
【0037】
第二の実施形態では、各機構をジャンプモードと呼ばれる特殊なモードで動作させることができるようになっている。ジャンプモードは、第一の実施形態における通常モードとペースト寄せモードの双方に適用可能なモードである。制御手段7には、ジャンプモードを適用するかどうかの選択を行わせるプログラムがインストールされており、入力手段における入力によってジャンプモードを適用するかどうかを選択できるようになっている。そして、ジャンプモードが選択されると、以下に説明する構成の制御プログラムが実行されるようになっている
【0038】
まず、制御プログラムのうち、ジャンプモードが適用された通常モードの部分について図8及び図9を参照して説明する。
ジャンプモードは、スクレッパー4やスキージ5の移動終了時の動作が異なるのみで、他は第一の実施形態と同様である。ジャンプモードでは、スクレッパー4やスキージ5の移動終了時に、ペースト2の垂れを考慮してスクレッパー4やスキージ5がジャンプするモードとなっている。図8はスクレッパー4のジャンプを示し、図9はスキージ5のジャンプを示している。
【0039】
図8を使用してスクレッパー4のジャンプについて説明すると、第一の実施形態と同様に、スキージ5がスキージングのために移動して移動終了位置で停止する(図8(1))。次に、スクレッパー4は、ペースト2の垂れを考慮して、直ちにペースト溜まり23の上にジャンプする動作を行う。即ち、制御プログラムは、スキージ5が移動終了位置に停止した際、直ちにスキージ昇降機構51に制御信号を送り、スキージ5をスタンバイ高さに位置させる(図8(2))。そして、制御プログラムは、スクレッパー4及びスキージ5を所定距離L3だけ手前に戻す。即ち、印刷領域12に近づく向きに移動させる(図8(3))。このL3は、スキージ5により形成されたペースト溜まり23の真上にスクレッパー4が位置する距離として予め定められている。図8(1)〜(3)の動作は短時間のうちに行われるので、実際の動作では、スクレッパー4がペースト溜まり23の上方位置にジャンプしたように見える。
【0040】
図8(3)に示す状態が少しの時間保持され、その間に、ペーストディスペンサーによりペースト2が盛られる。次に、制御プログラムは、コートのための制御信号を送る。即ち、移動機構6に制御信号を送ってスクレッパー4を移動開始位置の真上に位置させる。そして、スクレッパー昇降機構41に制御信号を送ってスクレッパー4をコート高さまで下降させる(図8(4))。その後、移動機構6に制御信号を送り、所定のストロークでスクレッパー4及びスキージ5を移動させ、コートを行う(図8(5))。
【0041】
次に、図9を使用してスキージ5のジャンプについて説明する。第一の実施形態と同様に、スクレッパー4がコートのために移動して移動終了位置で停止する(図9(1))。次に、スキージ5は、ペースト2の垂れを考慮して、直ちにペースト溜まり24の上にジャンプする。即ち、制御プログラムは、スクレッパー4が移動終了位置に停止した際、直ちにスクレッパー昇降機構41に制御信号を送り、スクレッパー4をスタンバイ高さに位置させる(図9(2))。そして、制御プログラムは、スクレッパー4及びスキージ5を所定距離L4だけ戻す。即ち、印刷領域12に近づく向きに移動させる。このL4は、スクレッパー4により形成されたペースト溜まり24の真上にスキージ5が位置する距離として予め定められている。図9(1)〜(3)の動作は短時間のうちに行われるので、実際の動作では、スキージ5がペースト溜まり24の上方位置にジャンプしたように見える。
【0042】
図9(3)に示す状態を少しの時間保持した後、制御プログラムは、スキージングのための制御信号を送る。即ち、移動機構6に制御信号を送ってスキージ5を移動開始位置の真上に位置させる。そして、スキージ昇降機構51に制御信号を送ってスキージ5をスキージング高さまで下降させる(図9(4))。その後、移動機構6に制御信号を送り、所定のスキージングストロークでスキージ5を移動させ、スキージングを行う(図9(5))。
【0043】
次に、図10及び図11を使用して、ジャンプモードを適用したペースト寄せモードについて説明する。
まず、図10を使用してスクレッパー4のジャンプについて説明すると、第一の実施形態と同様に、スキージ5がスキージングのために移動して移動終了位置で停止する(図10(1))。次に、スクレッパー4は、ペースト2の垂れを考慮して、通常モードと同様に直ちにペースト溜まり23の上にジャンプする動作を行う。即ち、制御プログラムは、スキージ5をスタンバイ高さに戻し、スクレッパー4及びスキージ5を所定距離L3だけ印刷領域12に近い側に移動させる(図10(2))。この図10(2)に示す状態を少しの時間保持した後、制御プログラムは、移動機構6に制御信号を送り、スクレッパー4及びスキージ5を印刷領域12から遠ざかる向きに移動させ、スクレッパー4をペースト寄せ位置に位置させる。その後、制御プログラムは、スクレッパー昇降機構41に制御信号を送ってスクレッパー4をコート高さまで下降させる(図10(3))。そして、制御プログラムは、移動機構6に制御信号を送ってスクレッパー4及びスキージ5を移動させ、スクレッパー4にペースト2のコートを行わせる(図10(4))。
【0044】
次に、図11を使用してスキージ5のジャンプについて説明する。第一の実施形態と同様に、スクレッパー4がコートのために移動して移動終了位置で停止する(図11(1))。次に、スキージ5は、ペースト2の垂れを考慮して、直ちにペースト溜まり24の上にジャンプする。即ち、スクレッパー4をスタンバイ高さに位置させ、スクレッパー4及びスキージ5を所定距離L4だけ印刷領域12に近い側に移動させる(図11(2))。
【0045】
図11(2)に示す状態を少しの時間保持した後、制御プログラムは、移動機構6に制御信号を送ってスクレッパー4及びスキージ5を印刷領域12から離れる向きに移動させ、スキージ5ををペースト寄せ位置に位置させる。その後、制御プログラムは、スキージ昇降機構51に制御信号を送ってスキージ5をスキージング高さまで下降させ(図11(3))、移動機構6に制御信号を送って所定のストロークでスキージ5をスクレッパー4及びスキージ5を移動させ、スキージングを行う(図11(4))。
【0046】
上記説明から解るように、ジャンプモードが適用されたペースト寄せモードでは、スクレッパー4は、スキージングの終了後にいったん印刷領域12に近い位置にジャンプした後にペースト寄せ位置に後退し、そこからコートのための移動を開始するという動作を行う。スキージ5も、コートの終了後にいったん印刷領域12に近い位置にジャンプした後にペースト寄せ位置に後退し、そこからスキージングのための移動を開始するという動作を行う。
【0047】
このように、第二の実施形態では、制御プログラムがジャンプモードが実行されるよう制御プログラムが書き換えられている。このようなジャンプモードは、スクレッパー4やスキージ5からのペースト2が問題となる場所に垂れるのを防止する意義を有する。以下、この点について説明する。
【0048】
上述したコートを行った際、移動終了位置で停止しスタンバイ高さに上昇したスクレッパー4の下端には、ペースト2が付着している。この状態で、スキージングのためにスクレッパー4及びスキージ5が移動すると、スクレッパー4の下端からペースト2が垂れ落ちることがある。垂れ落ちたペースト2は、スクリーン版1の印刷領域12の上に落下する。スキージ5は、落下したペースト2を掻き出すようにして移動するものの、部分的にペースト2のコートが厚い部分ができるため、印刷が不均一になる恐れがある。
【0049】
また、スキージングを行った際、移動終了位置に停止しスタンバイ高さに上昇したスキージ5の下端にもやはりペースト2が付着している。この状態でコートのためにスクレッパー4及びスキージ5が移動すると、スキージ5の下端からやはりペースト2が垂れることがある。スクレッパー4は、垂れたペースト2を掻き出すようにして移動するものの、やはり局所的にコート厚が厚くなり、印刷が不均一になる恐れがある。
また、スクレッパー4やスキージ5の下端に付着したペースト2は、スクレッパー4やスキージ5の上昇や下降の際、移動の開始や停止の際などに、反動で飛び散るようにして落下することがある。この飛び散るようにして落下するペースト2は、スクリーン版1上の本来付着してはいけない場所に付着することがあり、印刷ミスの原因になることがある。
【0050】
ジャンプモードは、このような問題を考慮し、スクレッパー4やスキージ5をペースト溜まりの真上の位置に保持する時間帯を持つモードとなっている。ペースト溜まりの真上に位置させ、ペースト2をペースト溜まりに向けて垂らすことで上記問題を防止している。場合によっては、ペースト溜まりの上でスクレッパー4やスキージ5を上下動させ、ペースト2の離脱を促進するようにしても良い。この実施形態が図12に示されている。図12は、ペースト2の離脱を促進する実施形態について示した正面概略図である。
【0051】
この図12に示す実施形態の装置も、制御プログラムの構成が異なるのみである。この実施形態の装置では、図12(1)に示すように、ジャンプモードにおいてスクレッパー4をペースト溜まり23の真上に位置させた後、その位置から下降及び上昇を数回繰り返し、スクレッパー4の下端をペースト溜まりに漬けたりペースト溜まり23から離したりする。これにより、下端に付着していたペースト2が迅速に離脱し、ペースト溜まり23に混入する。
【0052】
スキージ5についても同様であり、図12(2)に示すように、スキージ5の下降及び上昇を数回繰り返し、スキージ5の下端をペースト溜まり24に漬けたり離したりする。これにより、スキージ5の下端に付着していたペースト2が迅速に離脱し、ペースト溜まり24に混入する。
尚、上記説明において、「数回」とは、ペースト2の付着量や粘度、濡れ性などにもよるが、2回から5回程度で良い。
【0053】
次に、本願発明の他の実施形態について説明する。上記各実施形態では、往路においてスクレッパー4がコートを行い、復路においてスキージ5がスキージングを行う形態であった。本願発明は、このような形態でなくとも実施は可能である。即ち、スクレッパー4が往路と復路を移動して(一往復で)ペースト2のコートを行い、次に、スキージ5が一往復してスキージングを行うようにしても良い。この場合は、スクレッパー4は、往路を移動して移動終了位置で停止した後、スタンバイ高さに上昇し、その後、ペースト寄せ位置まで移動する。そして、スクレッパー4はコート高さまで下降し、その位置から反転して復路を移動し、もう一度コートを行う。つまり、スクレッパー4は、往路でのコートの際に自分が形成したペースト溜まりを復路でのコートの際に印刷領域12に寄せるようにする。
スキージ5についても同様である。スキージ5が往路と復路を移動してスキージングを行う場合、スキージ5は、往路を移動して移動終了位置で停止した後、スタンバイ高さに上昇する。スキージ5は、次にペースト寄せ位置まで移動した後、スキージング高さまで下降し、その位置から反転して復路を移動してもう一度スキージングを行う。
【0054】
尚、スキージ5が最初に復路を移動する際、スクレッパー4が往路を移動することで形成されたペースト溜まりを寄せるよう少し後退してから復路の前進を行うしてもよく、この構成は、前述した第一の実施形態の場合と同様である。スクレッパー4についても、最初に往路を移動する際、前回の印刷でスキージ5が復路を移動することで形成したペースト溜まりを寄せるよう少し後退してから復路の前進を行うようにしても良い。
【0055】
以上の説明から解るように、本願発明において、ペースト寄せとは、スクレッパー4が自身が形成したペースト溜まりを寄せる場合とスキージ5が形成したペースト溜まりを寄せる場合とがあり、またスキージ5が自身が形成したペースト溜まりを寄せる場合とスクレッパー4が形成したペースト溜まりを寄せる場合とがある。
【0056】
以上の説明した各実施形態では、スクレッパー移動機構とスキージ移動機構が兼用された構成であったため、水平方向の移動についてはスクレッパー4とスキージ5は常に一体に移動したが、別々の機構を採用しても良い。この場合は、スクレッパー4が往路を移動してコートを行った後、スキージ5がそれを追いかけるようにして往路を移動してスキージングを行う場合もある。この場合、それぞれの往路の移動で一回の印刷が行われ、それぞれの復路の移動で次の一回の印刷が行われるようにしても良い。
【0057】
このように、スクレッパー4とスキージ5が同じ向きに移動してコートとスキージングが行われる場合、移動した先にはスクレッパー4が形成した分とスキージ5が形成した分とを合わせたペースト溜まりが形成される。これは、次の印刷の際にスクレッパー4が移動を開始する際に印刷領域12に寄せることになる。即ち、次の印刷の際、スクレッパー4は手前のペースト寄せ位置まで後退し、スクレッパー4自身とスキージ5が溜めたペースト溜まりを印刷領域12に寄せた上でコートを行うことになる。この場合は、ペースト溜まりの量が多いから、印刷領域12の端部からペースト寄せ位置までの距離は、第一の実施形態などと比べて長くなると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本願発明の第一の実施形態に係るスクリーン印刷装置の正面概略図である。
【図2】制御手段7が備える制御プログラムの概略を示したフローチャートであり、制御プログラムの全体を概略的に示したものである。
【図3】制御手段7が備える制御プログラムの概略を示したフローチャートであり、通常モードのフローチャートを示したものである。
【図4】制御手段7が備える制御プログラムの概略を示したフローチャートであり、ペースト寄せモードのフローチャートを示したものである。
【図5】通常モードでの動作状態を示した正面概略図である。
【図6】ペースト寄せモードでの動作状態を示した正面概略図である。
【図7】ペースト2の粘性に応じて後退距離L1,L2を決める点について示した正面概略図である。
【図8】第二の実施形態における制御プログラムが行う通常モードについて示した正面概略図である。
【図9】第二の実施形態における制御プログラムが行う通常モードについて示した正面概略図である。
【図10】第二の実施形態における制御プログラムが行うペースト寄せモードを示した正面概略図である。
【図11】第二の実施形態における制御プログラムが行うペースト寄せモードを示した正面概略図である。
【図12】ペースト2の離脱を促進する実施形態について示した正面概略図である。
【図13】従来のスクリーン印刷装置の課題を示した正面概略図である。
【図14】従来のスクリーン印刷装置の課題を示した平面概略図である。
【符号の説明】
【0059】
1 スクリーン版
2 ペースト
21 ペースト溜まり
22 ペースト溜まり
3 対象物
4 スクレッパー
5 スキージ
6 移動機構
7 制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な姿勢のスクリーン版を対象物に重ね合わせ、スクリーン版に設定された印刷領域にペーストをコートし、コートされたペーストをスクリーン版を通して対象物に押し付けるスキージングを行うことで印刷領域のパターンを印刷するスクリーン印刷装置であって、
スクレッパーと、
スキージと、
スクレッパーをスクリーン版に沿って移動させることでスクレッパーにペーストのコートを行わせるクレッパー移動機構と、
ペーストがコートされたスクリーン版に沿ってスキージーを移動させることでスキージにスキージングを行わせるスキージー移動機構と、
スクリーン版に対するスクレッパーの距離を調節するスクレッパー昇降機構と、
スクリーン版に対するスキージの距離を調節するスキージ昇降機構と、
スクレッパー移動機構、スキージ移動機構、スクレッパー昇降機構及びスキージ昇降機構を制御する制御手段と
を備えたスクリーン印刷装置であって、
前記スクレッパー移動機構は、前記印刷領域の端部又はその先の位置であるスクレッパー移動終了位置までスクレッパーを移動させるものであり、
前記スキージ移動機構は、前記印刷領域の端部又はその先の位置であるスキージ移動終了位置までスキージを移動させるものであり、
前記制御手段は、スクレッパーペースト寄せ位置をスクレッパー移動開始位置とした上でスクレッパーの移動を開始させるようスクレッパー移動機構を制御することが可能であり、
スクレッパーペースト寄せ位置は、前回のコートの際のスクレッパー移動終了位置又は前回のスキージングの際のスキージ移動終了位置よりも印刷領域から離れた位置であって、このスクレッパーペースト寄せ位置と印刷領域の端部との間に形成されているペースト溜まりを印刷領域に寄せることが可能な位置であることを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
水平な姿勢のスクリーン版を対象物に重ね合わせ、スクリーン版に設定された印刷領域にペーストをコートし、コートされたペーストをスクリーン版を通して対象物に押し付けるスキージングを行うことで印刷領域のパターンを印刷するスクリーン印刷装置であって、
スクレッパーと、
スキージと、
スクレッパーをスクリーン版に沿って移動させることでスクレッパーにペーストのコートを行わせるクレッパー移動機構と、
ペーストがコートされたスクリーン版に沿ってスキージーを移動させることでスキージにスキージングを行わせるスキージー移動機構と、
スクリーン版に対するスクレッパーの距離を調節するスクレッパー昇降機構と、
スクリーン版に対するスキージの距離を調節するスキージ昇降機構と、
スクレッパー移動機構、スキージ移動機構、スクレッパー昇降機構及びスキージ昇降機構を制御する制御手段と
を備えたスクリーン印刷装置であって、
前記スクレッパー移動機構は、前記印刷領域の端部又はその先の位置であるスクレッパー移動終了位置までスクレッパーを移動させるものであり、
前記スキージ移動機構は、前記印刷領域の端部又はその先の位置であるスキージ移動終了位置までスキージを移動させるものであり、
前記制御手段は、スキージペースト寄せ位置をスキージ移動開始位置とした上でスキージの移動を開始させるようスキージ移動機構を制御することが可能であり、
スキージペースト寄せ位置は、前回のスキージングの際のスキージ移動終了位置又は前回のコートの際のスクレッパー移動終了位置よりも印刷領域から離れた位置であって、この位置と印刷領域の端部との間に形成されているペースト溜まりを印刷領域に寄せることが可能な位置であることを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項3】
水平な姿勢のスクリーン版を対象物に重ね合わせ、スクリーン版に設定された印刷領域にペーストをコートし、コートされたペーストをスクリーン版を通して対象物に押し付けるスキージングを行うことで印刷領域のパターンを印刷するスクリーン印刷装置であって、
スクレッパーと、
スキージと、
スクレッパーをスクリーン版に沿って移動させることでスクレッパーにペーストのコートを行わせるクレッパー移動機構と、
ペーストがコートされたスクリーン版に沿ってスキージーを移動させることでスキージにスキージングを行わせるスキージー移動機構と、
スクリーン版に対するスクレッパーの距離を調節するスクレッパー昇降機構と、
スクリーン版に対するスキージの距離を調節するスキージ昇降機構と、
スクレッパー移動機構、スキージ移動機構、スクレッパー昇降機構及びスキージ昇降機構を制御する制御手段と
を備えたスクリーン印刷装置であって、
前記スクレッパー移動機構は、スクレッパーを、前記印刷領域の第一の端部又はその手前の位置をスクレッパー移動開始位置とし、その反対側の第二の端部又はその先の位置をスクレッパー移動終了位置としてスクレッパーを移動させるものであり、
前記スキージ移動機構は、前記印刷領域の第二の端部又はその手前の位置をスキージ移動開始位置とし、前記第一の端部又はその先の位置をスキージ移動終了位置としてスキージを移動させるものであり、スクレッパーの往路移動とスキージの復路移動とから成る一往復の移動により一回の印刷が行われる装置であり、
前記制御手段は、スキージペースト寄せ位置をスキージ移動開始位置とした上でスキージの移動を開始させるようスキージ移動機構を制御することが可能であるとともに、スクレッパーペースト寄せ位置をスクレッパー移動開始位置とした上でスクレッパーの移動を開始させることが可能であり、
スキージペースト寄せ位置は、スクレッパー移動終了位置よりも印刷領域から離れた位置であって、この位置と印刷領域の端部との間に形成されているペースト溜まりを印刷領域に寄せることが可能な位置であり、
スクレッパーペースト寄せ位置は、スキージ移動終了位置よりも印刷領域から離れた位置であって、この位置と印刷領域の端部との間に形成されているペースト溜まりを印刷領域に寄せることが可能な位置であることを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記スクレッパーペースト寄せ位置よりも前記印刷領域に近い位置であるスクレッパー通常開始位置をスクレッパー移動開始位置としてスクレッパー移動機構にスクレッパーを移動させる通常モードと、前記スクレッパーペースト寄せ位置をスクレッパー移動開始位置としてスクレッパー移動機構にスクレッパーを移動させるペースト寄せモードとの二つのモードでスクレッパー移動機構を制御することが可能であり、
前記制御手段は、通常モードでの所定回数の印刷のたびごとにペースト寄せモードでの印刷を行うものであることを特徴とする請求項1記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記スキージペースト寄せ位置よりも前記印刷領域に近い位置であるスキージ通常開始位置をスキージ移動開始位置としてスキージ移動機構にスキージを移動させる通常モードと、前記スキージペースト寄せ位置をスキージ移動開始位置としてスキージ移動機構にスキージを移動させるペースト寄せモードとの二つのモードでスキージ移動機構を制御することが可能であり、
前記制御手段は、通常モードでの所定回数の印刷のたびごとにペースト寄せモードでの印刷を行うものであることを特徴とする請求項2記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記スクレッパーペースト寄せ位置よりも前記印刷領域に近い位置であるスクレッパー通常開始位置をスクレッパー移動開始位置としてスクレッパー移動機構にスクレッパーを移動させるとともに前記スキージペースト寄せ位置よりも前記印刷領域に近い位置であるスキージ通常開始位置をスキージ移動開始位置としてスキージ移動機構にスキージを移動させる通常モードと、前記スクレッパーペースト寄せ位置をスクレッパー移動開始位置としてスクレッパー移動機構にスクレッパーを移動させるとともに前記スキージペースト寄せ位置をスキージ移動開始位置としてスキージ移動機構にスキージを移動させるペースト寄せモードとの二つのモードでスクレッパー移動機構及びスキージ移動機構を制御することが可能であり、
前記制御手段は、通常モードでの所定回数の印刷のたびごとにペースト寄せモードでの印刷を行うものであることを特徴とする請求項3記載のスクリーン印刷装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記スクレッパー移動終了位置で前記スクレッパーが停止した後、そのスクレッパー移動終了位置のその先に形成されているペースト溜まりの真上の位置であるジャンプ位置に前記スキージを位置させ、その後、スキージ移動機構によりスキージングを行わせるものであることを特徴とする請求項3又は6記載のスクリーン印刷装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記ペースト溜まりの真上の位置においてスクレッパーを昇降させ、スクレッパーの下端のペースト溜まりへの接触とペースト溜まりからの離間とを一回又は複数回行うよう前記スクレッパー昇降機構を制御するものであることを特徴とする請求項7記載のスクリーン印刷装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記スキージ移動終了位置で前記スキージが停止した後、そのスキージ移動終了位置のその先に形成されているペースト溜まりの真上の位置であるジャンプ位置に前記スクレッパーを位置させ、その後、スクレッパー移動機構に次の印刷のためのコートを行わせるものであることを特徴とする請求項3、6、7又は8記載のスクリーン印刷装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記ペースト溜まりの真上の位置においてスキージを昇降させ、スキージの下端のペースト溜まりへの接触とペースト溜まりからの離間とを一回又は複数回行うよう前記スクレッパー昇降機構を制御するものであることを特徴とする請求項9記載のスクリーン印刷装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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