説明

スクリーン及び画像表示装置

【課題】
輝度ムラが低減され奥行き感に優れた画像を表示可能なスクリーン及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】
レンチキュラーシート13の入射面側には、半円柱形状を有する複数のレンズ部25が配置され、レンズ部25の曲率が垂直方向の中央部25Aから上下端部25Bに向けて連続的に小さくなる。これにより、レンチキュラーシート13は、レンチキュラーシート12から入射した入射光の水平拡散角θtを垂直方向(Z方向)に連続的に変化させる。つまり、垂直拡散スクリーン10の垂直方向での位置に応じて、垂直拡散スクリーン10から出射される光の水平拡散角θtを最適水平拡散角にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を拡散して表示するスクリーン及びスクリーンを備える画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元画像の生成を実現するために、人間の左右の眼に対して、3次元画像に対応する視差情報を入射する必要がある。例えば、スクリーンの後方に多数の投射部を配置し、スクリーンで光を拡散する。このスクリーンは、入射する光を垂直方向には比較的広く拡散させ水平方向にはほとんど拡散させない拡散角特性を必要とする。このような拡散特性は、特定の拡散特性を持つ1枚の拡散板(例えばレンチキュラーレンズ)を用いることにより得られる。このような構成にすることで、スクリーンの各画素を通過する光の水平方向の出射角度を保持し、左右の眼に対して別々の画像情報を入射することができる。
【0003】
このとき、1台の投射部から表示される光がスクリーンの拡散異方性により垂直方向にしか拡散されない。このため、複数台の投射部からそれぞれ必要な情報が眼に入るようになっている。このようにしてスクリーン上に表示される縦ラインの光は、観察者の眼に視差映像として入射される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−25062号公報(図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、奥行き方向の解像度を向上させるために投射部の間隔を小さくして投射部の数を増加させると、スクリーンに縦縞状の輝度ムラが発生する場合がある。本発明者らが検討した結果、スクリーンの拡散板から拡散異方性を持って拡散される光は、その垂直方向の拡散角度によって水平成分がそれぞれ異なる。このため、拡散された光は、垂直方向に直線状でなく円弧状に曲がってしまうことが判明した。この結果、投射部が規則正しく配設されていると、円弧状に曲がった拡散光の重なる部分と重ならない部分とによる光の粗密の分布が生じてしまい、結果的に、輝度ムラが生じてしまう、という問題がある。
【0006】
例えばリアプロジェクター型の画像表示装置では、光線密度がスクリーン上下方向で異なるため、スクリーンの中心部分の最適水平拡散角と、スクリーンの上下端部の最適水平拡散角とが異なる。このため、水平拡散角を中心部分の最適水平拡散角に合わせると上下端部の水平拡散角が最適拡散角と異なってしまい、スクリーンの周辺部分の奥行き感が損なわれる、という問題があった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、輝度ムラが低減され奥行き感に優れた画像を表示可能なスクリーン及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るスクリーンは、投射装置からの光を投影するスクリーンであって、第1の拡散板と、第2の拡散板とを有する。上記第1の拡散板は、垂直方向への拡散角を有する。上記第2の拡散板は、上記垂直方向に対して直交する水平方向への拡散の角度が上記垂直方向に連続的に変化する。
【0009】
本発明では、第2の拡散板は、垂直方向に対して直交する水平方向への拡散の角度が上記垂直方向に連続的に変化する。つまり、スクリーンの垂直方向のそれぞれの位置に応じて、スクリーンから出射される光の水平方向の拡散角を最適な水平方向の拡散角に調整することができる。これにより、従来、垂直方向に円弧状に曲がってスクリーンから出射されていた光を直線状にすることができ、輝度ムラを低減することができると共に、スクリーンに表示される画像の奥行き感を向上させることができる。
【0010】
上記第2の拡散板の上記水平方向の拡散角は、上記第2の拡散板の垂直方向の中央部が最大、上下端部が最小となるように、垂直方向の位置に応じて連続的に変化するようにしてもよい。
これにより、スクリーンの中央部から上下端部に向けて曲がって表示されていたライン状の光の隙間を間隔に応じて最小限の拡散角で埋めることが出来る。
【0011】
上記第2の拡散板の光入射面には、垂直方向に軸を有する半円柱状の光学要素が水平方向に複数配列されており、上記半円柱の曲率により水平方向の拡散角が設定されているようにしてもよい。
これにより、スクリーンの中央部から上下端部に向けて曲がって表示されていたライン状の光の隙間を間隔に応じて最小限の拡散角で埋めることが出来る。
【0012】
上記第2の拡散板の前記水平方向の拡散角は、上記第2の拡散板の垂直方向の中央部が最小、上下端部が最大となるように、垂直方向の位置に応じて連続的に変化するようにしてもよい。
これにより、スクリーンの中央部から上下端部に向けて曲がって表示されていたライン状の光の隙間を間隔に応じて最小限の拡散角で埋めることが出来る。
【0013】
本発明に係る画像表示装置は、投射部と、スクリーンとを有する。上記投射部は、光源からの光を空間光変調して出射する。上記スクリーンは、上記投射部からの光を投影する。上記スクリーンが、垂直方向への拡散角を有する第1の拡散板と、上記垂直方向に対して直交する水平方向への拡散の角度が上記垂直方向に連続的に変化する第2の拡散板とを具備する。
【0014】
本発明では、第2の拡散板は、垂直方向に対して直交する水平方向への拡散の角度が上記垂直方向に連続的に変化する。つまり、スクリーンの垂直方向のそれぞれの位置に応じて、スクリーンから出射される光の水平方向の拡散角を最適な水平方向の拡散角に調整することができる。これにより、従来、垂直方向に円弧状に曲がってスクリーンから出射されていた光の隙間を間隔に応じて最小限の拡散角で埋めることができ、輝度ムラを低減することができると共に、スクリーンに表示される画像の奥行き感を向上させることができる。
【0015】
上記第2の拡散板の上記水平方向の拡散角は、上記第2の拡散板の垂直方向の中央部が最大、上下端部が最小となるように、垂直方向の位置に応じて連続的に変化するようにしてもよい。
これにより、スクリーンの中央部から上下端部に向けて曲がって表示されていたライン状の光の隙間を間隔に応じて最小限の拡散角で埋めることが出来る。
【0016】
上記第2の拡散板の前記水平方向の拡散角は、上記第2の拡散板の垂直方向の中央部が最小、上下端部が最大となるように、垂直方向の位置に応じて連続的に変化するようにしてもよい。
これにより、スクリーンの中央部から上下端部に向けて曲がって表示されていたライン状の光の隙間を間隔に応じて最小限の拡散角で埋めることが出来る。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、輝度ムラが低減され奥行き感に優れた画像を表示可能なスクリーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像表示装置の概略を示す斜視図である。
【図2】垂直拡散スクリーンの分解斜視図である。
【図3】図2に示すレンチキュラーシートの部分側面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】垂直拡散スクリーンの部分平面図である。
【図6】各投射部から光を投射した状態を示す図である。
【図7】複数の画像情報を利用した画像表示態様を模式的に示す図である。
【図8】投射部の光源から投射される光が従来の垂直拡散スクリーンを通して拡散される様子をシミュレーションした結果を示す光線図である。
【図9】垂直拡散スクリーンの正面の観察者の観察する拡散光パターンを示す図である。
【図10】第2の実施の形態に係る画像表示装置の投射部を示す斜視図である。
【図11】図10に示す画像表示装置の投射部の側面図である。
【図12】第3の実施形態に係る立体画像表示装の投射部の正面図である。
【図13】図12に示す投射部と、従来の垂直拡散スクリーンとを備える画像表示装置を用いた場合の垂直拡散スクリーンの正面の観察者の観察する拡散光のパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
<第1の実施の形態>
図1は本発明の一実施形態に係る画像表示装置の概略を示す斜視図である。
同図に示すように、この画像表示装置1は光線再生法を用いて立体画像の表示を行う装置である。画像表示装置1は、ベース2と、ベース2の上に設けられた基板保持部3、プロジェクタベース4及びスクリーン枠5と、投射部6と、基板7と、垂直拡散スクリーン10と、図示しない冷却ファンなどで構成される。投射部6は、プロジェクタベース4に設けられている。基板7は、基板保持部3に保持され、投射部6を駆動及び制御する回路が実装されている。垂直拡散スクリーン10は、スクリーン枠5に保持され、投射部6から投射される複数の画像光をそれぞれ垂直方向(Z方向)に拡散して、水平方向(Y方向)に連続的な視点の画像が投影される。
【0020】
光線再生法では、画像を撮像するときに複数のカメラが用いられ、そのカメラごとに担当する撮像範囲が設定され、各カメラによって撮像されたそれぞれ視差のある画像が用意される。そして、視差の角度やそれに伴う屈折率等が計算され、その計算結果に基づき各画像が加工され、この加工処理により得られたそれぞれの画像が合成されることで1つの立体画像フレームが生成される。この実施の形態では、その複数のカメラによって撮像された個々の画像に対応する画像光が投射部6から垂直拡散スクリーン10に向けて投射され、垂直拡散スクリーン10でそれぞれ垂直方向に長い縦ラインの画像の連続として投影されるようになっている。
【0021】
投射部6は、プロジェクタベース4に水平方向(図1のY方向)に複数配列して設けられている。複数の投射部6は、投射光の出射面をほぼ一平面(YZ平面)にそろえて配列されている。投射部6は、垂直拡散スクリーン10に向けて所定の拡散角で光を投射する。
【0022】
なお、本実施形態では、投射部6が水平方向に1列に配列されている例を示したが、水平方向に加えて垂直方向(図1のZ方向)にも投射部6が配列されるようにしてもよい。なお、投射部6は立体画像における一つの画素に相当するので、高画質な立体画像を得るためには投影素子の数はできるだけ多い方がよい。
【0023】
投射部6は、それぞれ光源、空間光変調素子等を内蔵しており、それぞれ独立した投射装置として機能する。光源は、例えば白色光を出射するランプであり、具体的には超高圧水銀ランプなどが用いられている。空間光変調素子は、光源から入射した青、緑、赤ごとの光を変調して画像光を生成する。個々の投射部6から所定の画像が表示されるように、基板7に実装された回路によって、空間光変調素子への画像データの供給が制御される。空間光変調素子には、例えば反射型の液晶素子が用いられる。なお、空間光変調素子としては、反射型の液晶表示素子の他に、透過型の液晶表示素子、DMD(Digital Micro-mirror Device)等を用いることもできる。
【0024】
[垂直拡散スクリーン10の構成]
次に、垂直拡散スクリーン10の構成を図2から図5を用いて説明する。
図2は垂直拡散スクリーン10の分解斜視図である。
同図に示すように、垂直拡散スクリーン10は、例えばフレネルレンズシート11、レンチキュラーシート12及びレンチキュラーシート13を備える。
【0025】
フレネルレンズシート11は、光源から入射した光を平行光に変換し、レンチキュラーシート12に入射させる。
【0026】
レンチキュラーシート12は、フレネルレンズシート11から入射した光を垂直方向(図2のZ方向)に所定の垂直拡散角で拡散する。レンチキュラーシート12の入射面側には、半円柱形状を有する複数のレンズ部24が配列されている。レンズ部24は、それぞれ軸方向を水平方向(図2のY方向)にして配置されている。複数のレンズ部24は、垂直方向(図2のZ方向)に隣接して配設されている。レンズ部24の曲面の曲率は、垂直拡散角に応じて適宜変更可能である。
【0027】
レンチキュラーシート13は、レンチキュラーシート12から入射した光を水平方向(図2のY方向)に所定の水平拡散角で拡散する。レンチキュラーシート13は、垂直方向(Z方向)に対して直交する水平方向(Y方向)への拡散の角度(水平拡散角)が垂直方向(Z方向)に連続的に変化する。レンチキュラーシート13の入射面側には、半円柱形状を有する複数のレンズ部25が配列されている。レンズ部25は、それぞれ軸方向(長手方向)を垂直方向(図2のZ方向)にして配置されている。複数のレンズ部25は、水平方向(図2のY方向)に隣接して配設されている。レンズ部25のピッチは、例えば100μmに設定されている。なお、このピッチは、特に限定されず、適宜変更可能である。
【0028】
図3は図2に示すレンチキュラーシート12の部分側面図である。図3は図2のレンチキュラーシート12をY方向から見た図である。
同図に示すように、レンチキュラーシート12のレンズ部24は、フレネルレンズシート11からの入射光(平行光)を垂直方向に垂直拡散角θvで拡散する。垂直拡散角θvは、レンズ部24の曲面の曲率を変更することで変更可能である。垂直拡散角θvは、例えば40度以上とされている。レンズ部24の垂直拡散角θvは、水平方向の全域に亘って一定である。
【0029】
図4は図2のA−A断面図である。図4はレンチキュラーシート13の垂直方向(図4のZ方向)の中央部25Aでの断面図である。
レンチキュラーシート13のレンズ部25は、レンチキュラーシート12からの入射光を水平方向(図4のY方向)に水平拡散角θt(θt1)で拡散する。水平拡散角θt1は、レンズ部25の曲面の曲率を変更することで変更可能である。水平拡散角θt1は、例えば1度以下程度とされている。
【0030】
図5は垂直拡散スクリーン10の部分平面図である。図5はレンチキュラーシート13の垂直方向(図4のZ方向)の上下端部25Bでの断面図である。
レンチキュラーシート13のレンズ部25は、レンチキュラーシート12からの入射光を水平方向(図4のY方向)に水平拡散角θt(θt2)で拡散する。水平拡散角θt2は、水平拡散角θt1より小さく水平拡散角θt1の80%以上の大きさとされている。水平拡散角θt2は、レンズ部25の曲面の曲率を変更することで変更可能である。つまり、レンズ部25の曲率は、図2に示すように、垂直方向の中央部25Aから上下端部25Bに向けて連続的に小さくなる。これにより、レンチキュラーシート13の水平拡散角θtは、レンチキュラーシート13の垂直方向の中央部25Aが最大、上下端部25Bが最小となるように、垂直方向(Z方向)の位置に応じて連続的に変化する。
【0031】
次に、立体画像を表示する原理について説明する。
まず、例えば画像表示装置1によって、予め表示する立体像を複数方向から撮影して、立体画像表示に必要な画像情報n枚(nは、複数、例えば100以上)分容易し、図示しない記憶部に記憶する。
【0032】
図6は、各投射部6から光を投射した状態を示す図である。同図に示すように、各投射部6は、所定の水平拡散角及び垂直拡散角で、垂直拡散スクリーン10に向けて、光を射出する。
【0033】
図7は、複数の画像情報を利用した画像表示態様を模式的に示す図である。
例えば投射部6のうち1つの投射部6mから、矢印m1〜m5で示すように垂直拡散スクリーン10に向かって投射光が投射される。なお、投射部6と垂直拡散スクリーン10とが対向する空間の側面にミラー30を配置する。これによって、ミラー30により反射された光も矢印m1’で示すように垂直拡散スクリーン10に入射され、垂直拡散スクリーン10における観察者からの視野角を広げる効果が得られる。
【0034】
これらのm1’、m2〜m5で示す光が垂直拡散スクリーン10を通過する角度は、垂直拡散スクリーン10を水平方向(Y方向)には微小な水平拡散角θt1〜θt2を有する構成とすることにより、ほぼ保持される。ここで、これらの矢印m1’、m2〜m5で示す光は、予め用意しておいた立体画像を構成する複数枚の画像情報P1〜Pnのうち、縦方向に分割された一部の画像情報p2m〜pnmを表示する。
【0035】
この場合、垂直拡散スクリーン10を、その垂直方向には大きい垂直拡散角θvを有し、水平方向には微小な水平拡散角θt1〜θt2を有する構成にすることによって、1つの投射部6の情報は、垂直方向にしか拡散されない。このため、1つの投射部6の情報は、縦ライン形状に表示される。
【0036】
すなわち、矢印m1’、m2〜m5で示す光が通過する垂直拡散スクリーン10の位置を単位画素とすると、垂直方向に延びる単位画素から、立体画像を構成する縦ラインの画像情報p2m〜pnmが出射されることになる。
【0037】
ここで、垂直拡散スクリーン10の隣の単位画素の表示ラインは、その隣の投射部6からの表示情報が眼に入ることで視認される。このように、複数台の投射部6からそれぞれ必要な情報が眼に入るようにすることによって、左右の眼で観察される垂直拡散スクリーン10上の画像は、各投射部6による縦ラインを合成した画像である。
【0038】
この場合、垂直拡散スクリーン10が所定の水平拡散角θt1〜θt2(例えば1°未満)を有するため、各投射部6が表示するこれらの縦ラインの間に隙間が生じることなく、良好な立体画像を表示することができる。
【0039】
一方、投射部6から従来の垂直拡散スクリーン10’へ入射する光の水平入射角は、上述したように0°でないので、光に垂直成分だけでなく水平成分も発生してしまう。このため、従来の垂直拡散スクリーン10’に対して斜め方向に入射した光は傾きを持って拡散する。この現象について、図8を参照して説明する。なお、従来の垂直拡散スクリーン10’は、垂直拡散スクリーン10’の垂直方向での中央部と上下端部とでの水平拡散角が同じになるように設定されている。
【0040】
図8(a)、(b)は、投射部6の光源から投射される光が従来の垂直拡散スクリーン10’を通して拡散される様子をシミュレーションした結果を示す光線図である。
図8(a)は投射部6の光源41から観察位置(観察面)42までの光線軌跡の概略斜視図である。図8(a)に示すように、光源41から出射された光は、垂直拡散スクリーン10’で拡散され、観察位置42で観察者に観察される。この場合の観察位置42とは、観察者の位置を二次元の平面で表現した観察面であり、垂直拡散スクリーン10’と平行に位置している。
【0041】
図8(b)は、観察位置42の平面上にて、光源41の光軸と平行な方向より右側斜め約10°の角度から垂直拡散スクリーン10’を見た場合の光線軌跡の正面図である。垂直拡散スクリーン10’への垂直方向の入射角が大きい光ほど、水平成分を多くもって拡散し、0°で入射した光は水平成分をほとんど持たずに拡散する。このため、それぞれの拡散光Ldが観察面42上で描く輝線は円弧状に撓む。このように拡散光が円弧状に撓んでしまうと、観察者の眼には、図8(b)に示す円弧状の輝線の曲線とは逆向きの円弧状の輝線が入射されることになる。この結果、円弧状に撓んだ輝線が垂直拡散スクリーン10’の上下端部で隣の円弧状に撓んでしまう。このときの垂直拡散スクリーン10’の状態を図9に示す。
【0042】
図9は垂直拡散スクリーン10’の正面の観察者の観察する拡散光のパターンを示す図である。
同図に示すように、垂直拡散スクリーン10’に表示された点線で示す丸は、それぞれ投射部6に備えられた投射レンズを示す。これらの投射レンズは、図9では観察者からは本来見えないが理解を助けるために図示した。図9に示すように、垂直拡散スクリーン10’には、太い黒線で示す縦ラインが複数表示される。垂直拡散スクリーン10’の上下端付近において、縦ラインが円弧状に撓む。つまり、垂直拡散スクリーン10’の中心部分の水平拡散角θtを最適水平拡散角に合わせると上下端部の水平拡散角θtが最適拡散角と異なってしまい、垂直拡散スクリーン10’の周辺部分の奥行き感が損なわれてしまう。また、円弧状に曲がった縦ラインの重なる部分と重ならない部分とによる光の粗密の分布が生じてしまい、結果的に、輝度ムラが生じてしまうことになる。
【0043】
[作用等]
本実施形態によれば、レンチキュラーシート13の入射面側には、半円柱形状を有する複数のレンズ部25が配置され、レンズ部25の曲率が垂直方向の中央部25Aから上下端部25Bに向けて連続的に小さくなる。これにより、レンチキュラーシート13は、レンチキュラーシート12から入射した入射光の水平拡散角θtを垂直方向(図2に示すZ方向)に連続的に変化させる。レンチキュラーシート13の水平拡散角θtは、レンチキュラーシート13の垂直方向の中央部25Aが最大、上下端部25Bが最小となるように、垂直方向(Z方向)の位置に応じて連続的に変化する。つまり、垂直拡散スクリーン10の垂直方向での位置に応じて、垂直拡散スクリーン10から出射される光の水平拡散角θtを最適水平拡散角にすることができる。
【0044】
この結果、従来、図9に示すように垂直方向に円弧状に曲がって垂直拡散スクリーン10に表示されていた縦ラインの隙間を間隔に応じて最小限の拡散角で埋めることができ、輝度ムラを低減することができ、垂直拡散スクリーン10に表示される画像の奥行き感を向上させることができる。
【0045】
<第2の実施の形態>
本発明に一実施形態に係る画像表示装置について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態以降においては、上記第1の実施の形態と同様の構成部材には同一の符号を付しその説明を省略し、異なる箇所を中心に説明する。
【0046】
[投射部の構成]
図10は第2の実施の形態に係る画像表示装置の投射部の構成を示す斜視図、図11は図10に示す画像表示装置の投射部の側面図である。
これらの図に示すように、本実施形態の画像表示装置100は、上記第1の実施の形態の画像表示装置1に比べて、複数の投射部6A及びハーフミラー51を更に備え、投射部6、6Aが複数段に配設されている点が異なる。
【0047】
投射部6の幅は、図10に示すように、所定の幅Wに設定されている。この投射部6の幅とは、複数の投射部6が配列される方向(図10のY方向)の投射部6の長さである。複数の投射部6Aは、投射部6と同じ方向に同じ間隔で配列されている。それぞれの投射部6Aは、それぞれ投射部6に対して配列方向(図10のY方向)に投射部6の幅Wの半分の長さだけずらして配置されている。なお、本実施形態では、投射部6の幅Wの半分の長さW/2だけずらす例を示した。しかし、これに限定されず、例えば隣接して配列された投射部6のピッチの半分の長さだけ投射部6に対して投射部6Aをずらして配列するようにしてもよい。
【0048】
それぞれの投射部6Aは、図11に示すように、それぞれ投射部6に対して90度回転した状態で配置される。投射部6は、内蔵する光源側からの光をハーフミラー51に向けて投射する投射レンズ53を備える。投射レンズ53は、ハーフミラー51の背面の近くに設けられている。投射部6Aは、内蔵する光源からの光をハーフミラー51に向けて投射する投射レンズ54を備える。投射レンズ54は、ハーフミラー51の上面の近くに配置されている。
【0049】
ハーフミラー51は、各投射レンズ53及び54に対面するように、投射部6Aの配列方向に配置されている。ハーフミラー51は、投射レンズ53からの光と、投射レンズ54からの光とを合成し、垂直拡散スクリーン10Aに投影する。なお、本実施形態では、ハーフミラー51を例示したが、これに限定されず、例えばハーフミラー51の代わりに偏光ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter PBS)を用いるようにしてもよい。この場合には、例えば投射部6の投射レンズ53から偏光ビームスプリッタに入射した光のp偏光成分が垂直拡散スクリーン10Aに投射され、投射部6Aの投射レンズ54から偏光ビームスプリッタに入射した光のs偏光成分が垂直拡散スクリーン10Aに投射される。
【0050】
投射部6の投射レンズ53から投射された光は、ハーフミラー51に入射し、図10及び図11に示すように垂直拡散スクリーン10Aに入射する。投射部6Aの投射レンズ54から投射された光は、ハーフミラー51にその上面側から入射し、ハーフミラー51で反射し、垂直拡散スクリーン10Aに入射する。つまり、図10に示すように投射部6の幅Wの半分の間隔W/2でハーフミラー51上の複数の投射位置Tから光が垂直拡散スクリーン10Aに向けて照射される。投射部6の幅Wより小さい間隔W/2で光を投射することができる。これらの複数の投射位置Tは、光学的に1段かつ等間隔に配置されている。垂直拡散スクリーン10Aのレンチキュラーシート13のレンズ部25に入射した光は、上記実施形態と同様に、中央部25Aから上下端部25Bに向けて徐々に水平拡散角θtが小さくなるように拡散する。
【0051】
[作用等]
本実施形態によれば、水平方向(図10のY方向)に所定の間隔で複数配列された投射部6と、それぞれの投射部6に対して投射部6の幅Wの半分の長さ水平方向(図10のY方向)にずれて配列された投射部6Aと、ハーフミラー51とを備える。これにより、図11に示すように、投射レンズ53からの光はハーフミラー51を透過し垂直拡散スクリーン10Aに向けて拡散し、投射レンズ54からの光はハーフミラー51に入射し反射面で垂直拡散スクリーン10Aに向けて反射する。この結果、図10に示すように投射部6の幅Wの半分の間隔で配列方向(Y方向)に直線状に配列された複数の投射位置Tから光を垂直拡散スクリーン10Aに向けて照射することができる。つまり、より多くの画像情報を用いることができ、画像情報の数が多い程奥行き方向の解像度が向上するので、より高解像度の立体画像を垂直拡散スクリーン10Aに表示することができる。
【0052】
このとき、本実施形態では、垂直拡散スクリーン10Aのレンチキュラーシート13のレンズ部25に入射した光は、上記実施形態と同様に、中央部25Aから上下端部25Bに向けて徐々に水平拡散角θtが小さくなるように拡散する。この結果、縦ラインの上下端での湾曲をなくし、輝度ムラを低減すると共に画像の奥行き感を向上させることができる。光学的に1段かつ等間隔に配置された複数の投射位置Tから光を投射することができるので、確実に輝度ムラの発生を防止することができる。
【0053】
<第3の実施の形態>
[投射部の構成]
次に、第3の実施の形態の画像表示装置について説明する。
図12は第3の実施形態に係る立体画像表示装の投射部の正面図である。
同図に示すように、本実施形態の画像表示装置200は、第2の実施形態に比べて、上段に配列された投射部6Bの投射方向が下段の投射部6の投射方向に一致している点と、後述する第2の垂直拡散レンズを備える点が異なる。
【0054】
図12に示すように、水平方向に配列された投射部6の上には、水平方向に所定の長さずらして(例えば投射部6の幅Wの半分の長さ)、複数の投射部6Bが水平方向に配列されている。投射部6Bの投射レンズ54Bは、それぞれ投射部6の投射レンズ53と同一方向(Y方向)に向けて配置されている。つまり、投射部6Bの投射レンズ54Bから投射される光と、投射部6の投射レンズ53から投射される光の方向は一致している。
【0055】
[垂直拡散スクリーンの構成]
本実施形態の垂直拡散スクリーンは、第1の実施の形態の垂直拡散スクリーン10に比べて、レンチキュラーシート13の代わりに図示しない第2のレンチキュラーシートを備える。第2のレンチキュラーシートは、水平拡散角を垂直拡散スクリーンの中央部より一方の端部で大きくし他方の端部で小さくするように連続的に曲率が変化する半円柱形状の第2のレンズ部を複数備える。これらの第2のレンズ部は、上下を逆にして隣り合わされて第2のレンチキュラーシートの一方の面側に複数配列されている。第2のレンチキュラーシートの第2のレンズ部は、中央部の曲率に対して一方の端部の曲率が大きく、他方の端部の曲率が小さい。
【0056】
図13は図12に示す投射部6、6Bと、従来の垂直拡散スクリーン10’とを備える画像表示装置を用いた場合の垂直拡散スクリーン10’の正面の観察者の観察する拡散光のパターンを示す図である。
【0057】
同図に示すように、垂直拡散スクリーン10’に表示された点線で示す丸は、それぞれ投射部6、6Bに備えられた投射レンズ53、54Bを示す。これらの投射レンズ53、54Bは、図13では観察者からは本来見えないが理解を助けるために図示した。図13に示すように、垂直拡散スクリーン10’には、太い黒線で示す縦ラインが複数表示される。垂直拡散スクリーン10’の上下端付近において、縦ラインが円弧状に撓む。つまり、垂直拡散スクリーン10’の中心部分の水平拡散角θtを最適水平拡散角に合わせると上下端部の水平拡散角θtが最適拡散角と異なってしまい、垂直拡散スクリーン10’の周辺部分の奥行き感が損なわれてしまう。このときの撓みは、図9に示す撓みと異なり、図13に示すようになる。
【0058】
図13に示す縦ラインを左側から1本目の縦ライン、2本目の縦ライン・・・とする。このとき、垂直拡散スクリーン10’の下端において、1本目の縦ラインと2本目の縦ラインとの間隔が、2本目の縦ラインと3本目の縦ラインとの間隔より大きくなっている。逆に、垂直拡散スクリーン10’の垂直方向の上端において、1本目の縦ラインと2本目の縦ラインとの間隔が、2本目の縦ラインと3本目の縦ラインとの間隔より小さくなっている。つまり、垂直拡散スクリーン10’の下端において、奇数本目の縦ラインと偶数本目の縦ラインとの間隔が、偶数本目の縦ラインと奇数本目の縦ラインとの間隔より大きくなっている。垂直拡散スクリーン10’の上端において、奇数本目の縦ラインと偶数本目の縦ラインとの間隔が、偶数本目の縦ラインと奇数本目の縦ラインとの間隔より小さくなっている。この結果、図9に示す輝度ムラに比べて図13に示すように、より複雑な輝度ムラが生じてしまう。
【0059】
[作用等]
これにより、垂直拡散スクリーンの第2のレンチキュラーシートの第2のレンズ部の一方の端部に入射した光は、中央部より大きい水平拡散角で拡散し、第2のレンズ部の他方の端部に入射した光は、中央部より小さい水平拡散角で拡散する。この結果、例えば図13に示す2本目の縦ラインの下端側と1本目の縦ラインの下端側の隙間を埋める拡散角とし、2本目の縦ラインの上端側を3本目の縦ラインの上端側の隙間を埋める拡散角にすることで輝度ムラを低減すると共に画像の奥行き感を向上させることができる。
【0060】
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述したいずれの実施形態にも限定されず、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更し或は上述した各実施形態を組み合わせて実施できるものである。
【0061】
上記第1の実施の形態では、図2に示すように、光源側からフレネルレンズシート11、レンチキュラーシート12、レンチキュラーシート13の順に配列されて垂直拡散スクリーン10が構成されている例を示した。しかし、垂直拡散スクリーンはこれに限定されない。例えば、レンチキュラーシート12とレンチキュラーシート13との配置位置を入れ替えるようにしてもよい。また、垂直方向と水平方向とに複数の拡散レンズが配列され、各拡散レンズの焦点位置に対応する位置にピンホールが形成されたシートを複数の拡散レンズが配列されたシートと重ねて用いるようにしてもよい。このようにしても上記実施形態と同様に輝度ムラを低減し奥行き感が損なわれることを防止することができる。
【0062】
上記実施形態では、図2に示すようにレンチキュラーシート13の複数のレンズ部25がレンチキュラーシート12に対面するように、レンチキュラーシート13が配置されている例を示した。しかし、レンチキュラーシート13の配置はこれに限定されず、例えばレンチキュラーシート13の複数のレンズ部25をレンチキュラーシート12側とは反対側にして配置するようにしてもよい。この場合には、レンチキュラーシート12からの入射光は、レンチキュラーシート13のレンズ部25側の面とは反対側の平坦な面から入射し、レンズ部25により所定の水平方向に拡散される。このようにしても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
上記実施形態では、レンチキュラーシート13の水平拡散角θtが水平拡散角θt1〜θt2の間で連続的に調整されている例を示した。この連続的とは、例えばレンチキュラーシートの垂直方向の中央部から上下端部に向けて水平拡散角を断続的に変更することを含む。
【符号の説明】
【0064】
θv 垂直拡散角
θt1、θt2 水平拡散角
Ld 拡散光
1、100、200 画像表示装置
6、6A、6B、6m 投射部
10、10A 垂直拡散スクリーン
11 フレネルレンズシート
12、13 レンチキュラーシート
25A 中央部
25B 上下端部
51 ハーフミラー
53、54、54B 投射レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射装置からの光を投影するスクリーンであって、
垂直方向への拡散角を有する第1の拡散板と、
前記垂直方向に対して直交する水平方向への拡散の角度が前記垂直方向に連続的に変化する第2の拡散板と
を具備する
スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリーンであって、
前記第2の拡散板の前記水平方向の拡散角は、前記第2の拡散板の垂直方向の中央部が最大、上下端部が最小となるように、垂直方向の位置に応じて連続的に変化する
スクリーン。
【請求項3】
請求項2に記載のスクリーンであって、
前記第2の拡散板の光入射面には、垂直方向に軸を有する半円柱状の光学要素が水平方向に複数配列されており、
前記半円柱の曲率により水平方向の拡散角が設定されている
スクリーン。
【請求項4】
請求項1に記載のスクリーンであって、
前記第2の拡散板の前記水平方向の拡散角は、前記第2の拡散板の垂直方向の中央部が最小、上下端部が最大となるように、垂直方向の位置に応じて連続的に変化する
スクリーン。
【請求項5】
光源からの光を空間光変調して出射する投射部と、
前記投射部からの光を投影するスクリーンとを具備し、
前記スクリーンが、垂直方向への拡散角を有する第1の拡散板と、前記垂直方向に対して直交する水平方向への拡散の角度が前記垂直方向に連続的に変化する第2の拡散板とを具備する
画像表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像表示装置であって、
前記第2の拡散板の前記水平方向の拡散角は、前記第2の拡散板の垂直方向の中央部が最大、上下端部が最小となるように、垂直方向の位置に応じて連続的に変化する
画像表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の画像表示装置であって、
前記第2の拡散板の前記水平方向の拡散角は、前記第2の拡散板の垂直方向の中央部が最小、上下端部が最大となるように、垂直方向の位置に応じて連続的に変化する
画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−122646(P2010−122646A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2383(P2009−2383)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】