説明

スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法およびモノフィラメント。

【課題】優れた繊径均一性を有するスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法を提供すること。
【解決手段】繊度40dtex以下のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを溶融紡糸するに際し、温度10〜25℃、風速10〜35m/分の冷却風で糸条を冷却し、紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風速を10〜25m/分とすることを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法に関するものであり、詳しくはCD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ製造時の感熱孔版印刷に使用する繊径均一性を特に重要視されるスクリーン紗に用いられる繊度40dtex以下のポリエステルモノフィラメントの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷スクリーン用織物としては、従来はシルクなどの天然繊維やステンレスなどの無機繊維からなるメッシュ織物が広く使用されてきたが、近年は、柔軟性や耐久性、コストパフォーマンスに優れる合繊メッシュが好んで使用され、中でもポリエステルモノフィラメントは寸法安定性に優れるなどスクリーン用適正が高く、広く普及している。
【0003】
近年、家電業界におけるコンパクトディスク(以下、CDと略す)の普及や、コンピューターグラフィックによるデザイン物の印刷・刊行物が主流となり、更にはプラズマディスプレイの普及が進む中で、感熱孔版印刷などに合繊メッシュを用いる試みがなされており、メッシュがより細かく、紗張り時の伸びが少なく寸法安定性や繊径均一性に優れたスクリーン紗が要求される。殊に、プラズマディスプレイ製造時に基板に誘電体や電極として使われるペーストを塗布する際のスクリーン紗印刷においては、メッシュ織物の繊径斑などの欠点が直ちに印刷欠点となり、商品価値が失われてしまうことが知られている。
【0004】
すなわち、前記用途における要求品質を満足するためには、細繊度かつ高強度、高モジュラス化し、スカム発生などが無いことは勿論のこと、繊径均一性の優れたスクリーン紗用原糸を提供することが最も重要な課題となる。
【0005】
従来、スクリーン紗用モノフィラメントの製造方法については、種々の提案がなされている。
【0006】
例えば、ポリエステルポリマーを、溶融紡糸口金より紡出した後、冷却し、油剤を付与して引き取り、一旦巻き取ることなく連続して延伸を行いながら、1500m/分以上で巻き取るスピンドローである(特許文献1参照)。また、他の提案として、紡糸口金下2m以内の位置で冷却風をモノフィラメントに付与し、600〜2000m/分で未延伸糸を巻き取った後に、多段延伸する方法である(特許文献2参照)。更に、他の提案として、25℃のチムニーエアーにて冷却固化した後、水系エマルジョン油剤を給油し、引取速度800m/分で未延伸モノフィラメントを得た後に延伸する方法である(特許文献3参照)。これらの方法は、単に巻き取り速度の比較的低速な直接紡糸延伸方法であったり、紡糸口金からの冷却風の位置や温度、あるいは延伸条件のみに着眼してモノフィラメントの繊径均一性を得ようとしているものであり、未延伸状態での繊径均一性が不足するために、得られたモノフィラメントのウースター斑を測定した際、測定数値としては1.0%以下のものが得られたとしても、ウースター波形中に例えば糸長3m当たりの繊径変動を無くすことはできず、得られたモノフィラメントをスクリーン紗織物にした際には、比較的精密性の求められないTシャツ印刷などの捺染用途には使用できたとしても、高精密性を要求されるCD印刷やグラフィック印刷あるいはプラズマディスプレイ用印刷に用いるには繊径均一性の不十分なスクリーン紗織物となる。
【特許文献1】特開2004−52173号公報(請求の範囲)
【特許文献2】特開昭63−262289号公報(問題点を解決するための手段、4頁右下段)
【特許文献3】特開2000−355830号公報(実施例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決し、CD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ製造時に基板に誘電体や電極として使われるペーストを塗布する際のスクリーン紗印刷に用いた際に、塗布欠点が発生しない、繊径均一性に優れたスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを得る方法を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明は、繊度40dtex以下のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを溶融紡糸するに際し、温度10〜25℃、風速10〜35m/分の冷却風で糸条を冷却し、紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風速を10〜25m/分とすることを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハイメッシュスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法は、糸条冷却に用いる冷却風の温度と風速、紡糸ダクト中を糸条に沿って流れる吹き下げ風速度を適正なものとすることにより、従来の製造方法で達成し得なかった高い繊径均一性を有する、CD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ製造時に基板に誘電体や電極として使われるペーストを塗布する際のスクリーン紗印刷などの、あらゆる高精密印刷に好適なスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明におけるスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントとは、繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)をを用いて溶融紡糸して得られるものであり、芯鞘複合糸や単成分糸でも良いが、芯鞘複合糸の芯成分、あるいは単成分糸に用いるPETの極限粘度は0.70〜1.25であることがモノフィラメント強度を得るのに好ましい。芯鞘複合糸の鞘成分については、スクリーン紗製織時のスカム抑制の観点から、共重合PETやポリアミドは不適であり、極限粘度0.40〜0.70のPETであることが好ましい。
【0011】
また、本発明におけるモノフィラメントの断面形状は、安定した製糸性やスクリーン製織性を得やすいという点や、製織後乳剤を塗布して感光させる際にハーレーションの発生を抑えるため、スクリーン紗の目開き、すなわちタテ糸とヨコ糸の交差により形成される格子状空間の形状の安定性などより、丸断面とすることが好ましい。また、前記ハーレーション抑制効果を向上させるために、モノフィラメント中に紫外線吸収剤を含有させても良く、紫外線吸収剤を含有せしめる場合、スクリーン紗製織時の筬羽根でのスカム発生を抑制するために、有機化合物系のものが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物やアンスラキノン系化合物が好ましい。より好ましくは、アンスラキノン系イエロー顔料を用いることが好ましく、スクリーン紗製織後の染色加工を不要とし、製織コストを低減することができるものである。
【0012】
スクリーン紗の紗張り工程においては、紗の寸法安定上、一定値以上の張力が要求され、張力は強度(cN/dtex)×メッシュにより定まる。高密度化を図る場合、一般的には細繊度のモノフィラメントを用いれば良いが、モノフィラメント繊度とメッシュ密度は完全には反比例しないため、細繊度化するほど破断強度は高くする方向で。このため、本発明におけるモノフィラメントの場合、破断強度は5.4cN/dtex以上が好ましく、より好ましくは6.0cN/dtex以上である。また、一般的にスクリーン印刷においては、印刷時の紗伸び率が10%前後であることから、モノフィラメントにおいては、紗張り寸法安定性や耐久性の面から、10%伸張時応力を高く保持することが重要であり、3.5cN/dtex以上であることが好ましい。より好ましくは4.5cN/dtex以上、更に好ましくは5.0cN/dtex以上である。
【0013】
本発明におけるモノフィラメントの繊度は、一般的にスクリーン紗用途に用いるモノフィラメントは捺染用途では、繊度40dtex以下、特にCD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ基板へのペースト塗布に用いるスクリーン紗用途では、モノフィラメント繊度は18dtex以下であることが従来公知である。繊度40dtexを上回るモノフィラメントを溶融紡糸する際には、冷却風で均一に糸条を固化することが非常に困難となり、実質的には吐出糸条を冷却水層に通過させて固化させる水冷法を採用せざるを得ず、スクリーン紗用モノフィラメントとして必要な繊径均一性を得ることが困難である。
【0014】
本発明におけるモノフィラメントについては、スクリーン紗メーカーおよび製版メーカーと種々実験を行った結果、CD印刷やグラフィック印刷、プラズマディスプレイ基板へのペースト塗布に用いるスクリーン紗用途で印刷欠点を無くすためには、ウースター斑が1.0%以下およびウースター波形中に糸長3m当たり5%以上の繊径変動波形が無いことを両立させることが重要であることが分かった。ウースター斑が1.0%以下であり、糸長3m当たり5%以上の繊径波形が無い場合、スクリーン印刷時の塗布膜厚に斑が発生することなく、CD印刷やグラフィック印刷、あるいは電子基板回路印刷などの高精密印刷用途、さらにはプラズマディスプレイ基板へのペースト塗布に用いた場合においても、原糸繊径変動に起因する印刷欠点を発生させることは無い。より好ましくは、ウースター斑0.6%以下で糸長3m当たり3%以上の繊径変動波形が無いことである。
【0015】
本発明において、モノフィラメント特性が得られれば特に延伸方法を限定するものでは無く、一旦未延伸糸を巻き取った後に、延伸熱処理する方法でもよく、一旦未延伸糸を巻き取ることなく、延伸熱処理する直接紡糸延伸法でも良い。また、いずれの延伸方法においても、十分な強度や10%伸張時応力をバラツキ無く得るため、ホットローラーを用いた延伸が好ましく、より好ましくは、第1ホットローラーと第2ホットローラー間で1段目の延伸を行い、続いて第2ホットローラーと第3ホットローラー或いは冷却ローラー間で2段目の延伸を行う多段延伸法を採用することが好ましい。また、延伸糸を巻き取る際には、スクリーン紗製織のヨコ糸に用いた際のパーンヒケを抑制するために、最終ホットローラーと冷却ローラー間でリラックス付与することが好ましい。
【0016】
本発明において、口金から吐出した糸条を冷却する際の冷却風は、温度10〜25℃、風速10〜35m/分である。10℃を下回る温度では、冷却ダクト内や口金近傍に結露が発生して、口金面でのポリマーの加水分解を誘発して糸切れを発生させたり、冷却ダクト内の結露にポリマー昇華物や空気中の微少な塵が付着・蓄積して、連続して溶融紡糸する中で、経時的な糸切れを誘発したり、吐出糸条に随伴して引取部へ蓄積物が落下して、給油斑や延伸熱処理斑を誘発する。また、25℃を超えて高い温度、あるいは10m/分を下回る風速の冷却風では、冷却効果が不十分であるために、実質的に吐出糸条を均一に固化することが困難となり、冷却ダクトを過剰に長尺化して冷却風を付与する時間を長くすることが必要となり、工業的紡糸設備としては不適切なものとなる。また、35m/分を超える風速では、吐出糸条の揺れが発生してウースター斑したり、紡糸ダクト内壁への糸条接触が生じて、ウースター斑が悪化するばかりでなく、糸切れを誘発する。より好ましい冷却風の温度は15〜20℃、風速は15〜30m/分である。
【0017】
本発明において、紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風速を10〜25m/分とすることが重要である。乾式紡糸で溶融紡糸する場合、紡糸口金から吐出した糸条は冷却された後、冷却エアー吹き出し部から引取部までの空間を円筒又は矩形の筒である紡糸ダクト内を通過して、引き取られる。本発明者らがスクリーン紗用モノフィラメントの高い繊径均一性を得る方法を鋭意検討した結果、空調設備で紡糸部雰囲気の静圧が引取部のそれより高く設定して、紡糸ダクト内で口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる吹き下げ気流を発生させて、吐出糸条の揺れを抑制することが重要であることが判明した。この際、該気流が10m/分を下回る風速である場合や気流が逆方向、すなわち引取部から口金方向へ吹き上げる気流を発生させた場合には、吐出糸条の揺れ抑制効果が得られず、モノフィラメントの繊径均一性が低下したり糸切れが発生する。また、風速25m/分を超えた気流では、紡糸ダクト内に糸条が入っていく上端部、あるいは引取部へ糸条が出て来る下端部における気流乱れが発生して糸揺れが大きくなり、繊径均一性が低下する。より好ましい気流の吹き下げ風速は15〜20m/分である。
【0018】
本発明において、気流の風速を調整する方法は特に限定するものでは無いが、紡糸部雰囲気と引取部雰囲気の静圧差とともに、紡糸ダクト下端の開口面積を調整することによりコントロールすることができる。例えば、紡糸部雰囲気と引取部雰囲気の静圧差40mmHgとして、1000m/分で吐出糸条を引き取る場合、紡糸ダクト開口面積を240cmとし、ダクト出口開口面積を55cmとすることで風速15m/分の吹き下げ気流が得られる。なお、本発明における気流の吹き下げ風速とは、紡糸ダクト出口を除く紡糸ダクト内気流のうち、最も風速の高い点で測定したものを示す。例えば、ユニフローチムニーを用いる場合は、チムニーダクト下端と紡糸ダクト入口の境界部が最も吹き下げ風速が高くなる。
【実施例】
【0019】
以下本発明を実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の評価は以下の方法に従った。
【0020】
1.溶液粘度(IV)
オルソクロロフェノール中25℃で測定された値より算出した。
【0021】
2.破断強伸度
オリエンテックス社製テンシロン引張試験機を用い、初期試料長20cm、引張速度2cm/分で測定した。
【0022】
3.ウースター斑
ツェルベルガー社製USTER TESTER4−CXを用いて、モノフィラメント延伸糸100本を各々、速度200m/分、Tensioner force10、無撚りで5分間(糸長1000mに相当)測定し、ハーフイナートの数値の平均を測定結果として用いた。また、測定した全てのCut lenguth:HInertのDiagram Massにおいて糸長3m毎の繊径変動を測定し、最大のものを糸長3m当たりの繊径変動とし、以下の評価基準で○および△を合格とした。
○:ウースター斑1.0%未満であり、繊径変動4.0%未満
△:ウースター斑1.0%未満であり、繊径変動4.0〜5.0%
×:ウースター斑1.0%を超えるか、繊径変動5.0%を超えるもの
実施例1
IV=0.80のPETを用いて、紡糸部と引取部の雰囲気静圧差40mmHgの雰囲気中に設置した通常の紡糸機にて、紡糸温度295℃にて口金から糸条を吐出した後、吹き出し長100cmの前面開口型ユニフローチムニーを用いて、25℃で35m/分の冷却風で糸条冷却した後、紡糸ダクト入口開口面積240cm、出口開口面積55cmで長さ420cmとして、吹き下げ気流の風速15m/分とした紡糸ダクト内を通過させた単成分モノフィラメント糸条を、油剤付与後に紡糸速度1000m/分で未延伸糸を一旦巻き取った。
【0023】
この未延伸糸を、表面温度91℃の第1ホットローラーと表面温度130℃の第2ホットローラー間で4.20倍、第2ホットローラーと室温の冷却ローラー間で0.6%のストレッチを付与して延伸熱セットし、繊度が32.デシテックスのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの破断強度は5.5cN/dtex、10%伸張時応力3.6cN/dtexであり、ウースター斑0.43%、糸長3m当たりの繊径変動は2.8%であった。
【0024】
実施例2
日本製綱所製スクリュー外径φ25mmのエクストルダー押し出し機からなる複合紡糸機を用いて、芯部ポリマーにIV=1.00のPET、IV=0.51のPETを用いて、複合断面積比80:20となるようにポリマー吐出量を調整して、紡糸温度298℃にて口金から糸条を吐出した後、内壁温度300℃で糸条との距離が4.5cm、長さ10cmの加熱帯を通過させた後に、20℃で25m/分の冷却風を用いて冷却長70cmで冷却し、吹き下げ気流の風速20m/分に設定した紡糸ダクト内を通過させた芯鞘型複合モノフィラメント糸条を、油剤付与後に紡糸速度850m/分で未延伸糸を一旦巻き取った。
【0025】
この未延伸糸を、表面温度90℃の第1ホットローラーと表面温度100℃の第2ホットローラー間で4.39倍、第2ホットローラーと表面温度200℃の第3ホットローラー間で1.07倍、第3ホットローラーと表面温度が室温の冷却ローラー間で4.29%のリラックスを付与して延伸熱セットし、繊度が12.0デシテックスの複合モノフィラメントを得た。
【0026】
得られたモノフィラメントの破断強度は7.1cN/dtex、10%伸張時応力5.5cN/dtexであり、ウースター斑0.32%、糸長3m当たりの繊径変動は2.1%であった。
【0027】
実施例3
芯部ポリマーにIV=0.780のPET鞘成分にアンスラキノンイエローYELLO#147を0.6%含有したIV=0.680のPETを用いて、複合断面積比80:20となるようにポリマー吐出量を調整して、紡糸温度295℃にて口金から糸条を吐出した後、10℃で10m/分の冷却風を用いて冷却長100cmで冷却し、吹き下げ気流10m/分とした紡糸ダクト内を通過させた芯鞘型複合モノフィラメント糸条を、油剤付与後に紡糸速度1000m/分で未延伸糸を一旦巻き取った。
【0028】
この未延伸糸を、表面温度90℃の第1ホットローラーと表面温度130℃の第2ホットローラー間で4.43倍、第2ホットローラーと室温の冷却ローラー間で1.35%のリラックスを付与して延伸熱セットし、繊度が13.0デシテックスの複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの破断強度は5.8cN/dtex、10%伸張時応力4.3cN/dtexであり、ウースター斑0.79%、糸長3m当たりの繊径変動は4.3%であった。
【0029】
実施例4
紡糸ダクト内の吹き下げ風速が25m/分となる様にダクト開口面積を調整したこと以外、実施例1と同様の方法で繊度が32.デシテックスのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの破断強度は5.5cN/dtex、10%伸張時応力3.6cN/dtexであり、ウースター斑0.90%、糸長3m当たりの繊径変動は4.7%であった。
【0030】
実施例5
芯部ポリマーにIV=0.780のPET、IV=0.51のPETを用いて、複合断面積比80:20となるようにポリマー吐出量を調整して、紡糸温度295℃にて口金から糸条を吐出した後、10℃で20m/分の冷却風を用いて冷却長70cmで冷却し、吹き下げ風速15m/分とした紡糸ダクト内を通過させた芯鞘型複合モノフィラメント糸条を、油剤付与後に表面温度が室温の冷却ローラーで600m/分で引き取った後に、引き続いて表面温度90℃の第1ホットローラーと表面温度100℃の第2ホットローラー間で4.16倍、第2ホットローラーと表面温度200℃の第3ホットローラー間で1.07倍、第3ホットローラーと表面温度が室温の冷却ローラー間で3.15%のリラックスを付与して延伸熱セットし、直接紡糸延伸法にて繊度13.0デシテックスの複合モノフィラメントを得た。
【0031】
得られたモノフィラメントの破断強度は6.2cN/dtex、10%伸張時応力5.4cN/dtexであり、ウースター斑0.45%、糸長3m当たりの繊径変動は3.8%であった。
【0032】
【表1】

【0033】
比較例1
冷却風温度を5℃としたこと以外、実施例5と同様の方法で複合モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの破断強度や10%伸張時応力は問題ないものの、ウースター斑1.00%、糸長3m当たりの繊径変動は6.2%となり、冷却風温度が過剰に低温であったために、紡糸ダクト内に結露が発生し、連続紡糸している中でPET昇華物が紡糸ダクト内壁に多量に蓄積したものが見られ、また第1ホットローラー上にも該昇華物と思われる汚れが見つかった。前記ダクト内での結露が原因となり、PET昇華物が糸条とともに延伸工程にまで及んでしまい延伸斑によるウースター斑悪化を誘発したものであることが判明した。
【0034】
比較例2
冷却風温度を30℃としたこと以外。実施例4と同様の方法で単成分モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントは破断強度5.2cN/dtex、10%伸張時応力3.4cN/dtex、ウースター斑は1.28%、糸長3m当たりの繊径変動は7.1%で繊径均一性の劣ったものとなった。
【0035】
比較例3
冷却風速を5m/分としたこと以外、実施例3と同様の方法で複合モノフィラメントを得ようとしたが、冷却不足による糸切れが頻発し、実質的に未延伸糸を採取することが不可能であった。
【0036】
比較例4
吹き下げ気流の風速を5m/分としたこと以外、実施例2と同様の方法で複合モノフィラメントを得た。紡糸中には、糸揺れが大きくなり、紡糸ダクト内への糸条接触による糸切れが発生した。また、得られたモノフィラメントの破断強度や10%伸張時応力は問題無いののの、ウースター斑0.93%で1.0%以下であったものの糸長3m当たりの繊径変動は12.1%であり、繊径均一性の著しく劣ったものとなった。
【0037】
比較例5
吹き下げ気流の風速を35m/分としたこと以外、実施例1と同様の方法で単成分モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの破断強度や10%伸張時応力は問題無いののの、ウースター斑3.21%、糸長3m当たりの繊径変動は15.1%であり、繊径均一性の著しく劣ったものとなった。
【0038】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度40dtex以下のスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントを溶融紡糸するに際し、温度10〜25℃、風速10〜35m/分の冷却風で糸条を冷却し、紡糸ダクト内を紡糸口金から引取方向へ吐出糸条に沿って流れる気流の吹き下げ風速を10〜25m/分とすることを特徴とするスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
【請求項2】
ウースター斑が1.0%以下およびウースター波形中に糸長3m当たり5%以上の繊径変動波形が無いことを特徴とする請求項1記載の製造方法で得られるスクリーン紗用ポリエステルモノフィラメント。

【公開番号】特開2006−169680(P2006−169680A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365463(P2004−365463)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】