説明

スケジューリング装置

【課題】「一部の試験装置については、同一の試験装置、同一の治具、同一の試験条件で、異なる種類の部品をセットにして一緒に試験を行うことが可能」といった制約条件を考慮して、最適なスケジュールを作成する。
【解決手段】入力装置1によりスケジュールを作成するための各種の制約条件を入力し、スケジュール演算部2によりスケジュールを作成し、出力装置3からスケジュールを出力する。スケジュール演算部2では、割り付けできる可能性があるとして選択した「電子部品に対する試験」が、作業者及びバッチ処理が可能な試験装置が必要で且つ作業者及びバッチ処理が可能な試験装置が空いていると判定したときには、複数の「電子部品に対する試験」を同一の試験装置で同一の試験条件となるものどうしでグループにし、予め決めたグループ選択基準に基づき選択した一つのグループの「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付けする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローショップ型工程のスケジューリング装置に関し、バッチ処理が可能か否か等の設備能力を考慮することにより、総処理時間が短い最適なスケジュールを作成することができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
ロケットや航空機などの製品には、多数・多種類の電子部品が組み込まれている。これら多数・多種類の電子部品は、製品に組み込む前に、環境ストレス試験が実施される。
環境ストレス試験を短時間で効率的に行うには、電子部品の試験順序を規定するスケジュールを最適に決める必要がある。
【0003】
各電子部品は、作業者により又は試験装置により複数の試験を行う必要がある。いずれの電子部品も、試験は必ず決まった順番で行うが、電子部品によっては一部の試験を行わない(スキップする)ことが決まっている。
【0004】
このように、全ての電子部品を、必ず決まった一定の順番で試験(ジョブ:処理)を行う(但し、一部の電子部品は所定のジョブをスキップすることも含む)工程のことを、フローショップ工程と呼んでいる。
【0005】
例えば、
電子部品P1は、作業者による試験t1,作業者による試験t2,試験装置T3及び作業者による試験t3,作業者による試験t4,試験装置T5及び作業者による試験t5を、この順番(t1→t2→t3→t4→t5の順)に行い、
電子部品P2は、作業者による試験t1,作業者による試験t2,試験装置T3及び作業者による試験t3,作業者による試験t4,試験装置T5及び作業者による試験t5を、この順番(t1→t2→t3→t4→t5の順)に行い、
電子部品P3は、試験t2,試験t3,試験t4は行わない(スキップする)が、作業者による試験t1,試験装置T5及び作業者による試験t5を、この順番(t1→t5の順)に行う。
このようなフローショップ型工程において、作業時間や納期遅れが最小になるように、各ジョブを各ショップでどのような順番で処理(試験)すべきかを決めることを、フローショップ型問題と呼んでいる。
【0006】
各試験内容に応じて、使用する試験装置、治具、試験条件が決まっており、一部の試験装置については、同一の試験装置、同一の治具、同一の試験条件で、異なる種類の部品をセットにして一緒に試験を行うこと、即ち「バッチ処理」が可能である。
例えば、上記例では、試験装置T3はバッチ処理が可能であるが、試験装置T5はバッチ処理ができないようになっていることがある。
【0007】
従来技術では、いわゆる一般的なフローショップ工程に対して、スケジューリングを行い、結果を表示する装置や方法が提案されてきた(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−184923
【特許文献2】特開平07−073244
【特許文献3】特開平02−042503
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
「一部の試験装置については、同一の試験装置、同一の治具、同一の試験条件で、異なる種類の部品をセットにして一緒に試験を行うことが可能」といった「制約条件」を考慮してスケジュールを作成するには、従来では、上記の制約条件を人手で考慮し、試験スケジュールを作成していた。
このため、以下の問題が発生していた。
・設備能力を十分に活かした数量になっておらず、作業ロットが分かれる場合があり、効率が悪い。
・多くの情報を紙ベースで手作業により確認するため、手間がかかる。
・作業遅れが発生する。
・作業があふれる場合には、外注に流れてしまうことになり、追加費用が発生する。
【0010】
また、特許文献1〜3に示す従来技術では、1つの装置(設備)に対し、1つの部品を扱う古典的なフローショップ問題を解くのに留まっており、本件で扱う問題のように、1つの装置(設備)に対して同時に複数種類の電子部品を扱えるケースには対応していない。
即ち、一般的なフローショップ工程に対するスケジューリングでは、1装置に対して1部品が原則であり、本件で扱うような、「一部の試験装置については、同一の試験装置、同一の治具、同一の試験条件で、異なる種類の部品をセットにして一緒に試験を行うことが可能」といった制約条件を考慮することができなかった。
【0011】
本発明は、上記従来技術に鑑み、「一部の試験装置については、同一の試験装置、同一の治具、同一の試験条件で、異なる種類の部品をセットにして一緒に試験を行うことが可能」といった制約条件を考慮して、総処理時間の短い最適なスケジュールを作成することができる、スケジューリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の構成は、
複数の電子部品を、予め決めた試験順序にしたがって複数の試験をするフローショップ型工程のスケジュールを作成するスケジューリング装置であって、
各試験における「バッチ処理の可否」,「作業者の要否」,「試験装置の要否」に関する制約条件と、各電子部品の「個数」,「納期」に関する制約条件と、各電子部品について各試験を行うときの「試験条件及び試験時間」に関する制約条件と、作業者の人数と、各試験装置の台数を入力する入力部と、
前記入力部により入力された条件を基に、スケジュールを作成するスケジュール演算部とを有し、
前記スケジュール演算部は、
各電子部品に対する各試験のうち、開始・終了時刻の割り付けをしていないもので、開始・終了時刻の割り付けができる可能性がある「電子部品に対する試験」を選択し、
選択した「電子部品に対する試験」が、作業者のみが必要で且つ作業者が空いていると判定したときには、作業者のみが必要な「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付け、
選択した「電子部品に対する試験」が、作業者及びバッチ処理ができない試験装置が必要で且つ作業者及びバッチ処理ができない試験装置が空いていると判定したときには、作業者及びバッチ処理ができない試験装置が必要な「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付け、
選択した「電子部品に対する試験」が、作業者及びバッチ処理が可能な試験装置が必要で且つ作業者及びバッチ処理が可能な試験装置が空いていると判定したときには、複数の「電子部品に対する試験」を同一の試験装置で同一の試験条件となるものどうしでグループにし、予め決めたグループ選択基準に基づき選択した一つのグループの「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付ける、という演算を次々と行うことによりスケジュールを作成する、ことを特徴とする。
【0013】
また本発明の構成は、
前記スケジュール演算部は、
前記グループ選択基準として複数のグループ選択基準を有しており、
それぞれのグループ選択基準を用いて複数のスケジュールを作成し、
作成した複数のスケジュールのうち、総処理時間が最も短いスケジュールを最終的なスケジュールとすることを特徴とする。
【0014】
また本発明の構成は、
前記グループ選択基準は、納期が最も早い電子部品が含まれているグループを選択する基準、または、一度に試験することができる量が最も多いグループを選択する基準、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、「一部の試験装置については、同一の試験装置、同一の治具、同一の試験条件で、異なる種類の部品をセットにして一緒に試験を行うことが可能」といった制約条件を考慮することにより、総処理時間の短い最適なスケジュールを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係るスケジューリング装置を示す構成図。
【図2】電子部品ごとの試験工程と試験条件に関する制約条件を示す表。
【図3】試験条件と試験時間に関する制約条件を示す表。
【図4】本発明の実施例の演算処理を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施例で求めたスケジュールを示すガントチャート。
【図6】本発明の実施例の演算処理手順を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1は、複数の電子部品を、予め決められた試験順序にしたがって、複数の試験をするフローショップ型工程のスケジュールを作成するスケジューリング装置10である。
実施例1は、発明の理解を容易にするため、電子部品の種類を6種類(P1〜P6)、試験の数を5種類(t1〜t5)とした例である。
【0019】
図1に示すように、スケジューリング装置10は、入力装置1と、スケジュール演算部2と、出力装置3により構成されている。
スケジュール演算部2は、後述するスケジュール演算をするためのソフトウエア(プログラム)とハードウエア資源(コンピュータ)とが協働した具体的手段であり、フローショップ型工程のスケジュールを作成する特有の情報処理装置を構築している。
【0020】
入力装置1は、例えば、図2に示す「電子部品ごとの試験(ジョブ:処理)工程と試験条件」に関する制約条件と、図3に示す「試験条件と試験時間」に関する制約条件と、作業者人数(本例では4人)に関する制約条件を、スケジュール演算部2に入力する。
【0021】
図2に示す「電子部品ごとの試験工程と試験条件」に関する制約条件と、図3に示す「試験条件と試験時間」に関する制約条件について、更に説明すると、次の通りである。
【0022】
各試験t1〜t5における、「バッチ処理の可否」、「作業者の要否」、「試験装置の要否」に関する制約条件がある。
具体的には、図2に示すように、
・試験t1では、バッチ処理は不可(×)、作業者は必要(○)、試験装置は不要(×)であり、
・試験t2では、バッチ処理は不可(×)、作業者は必要(○)、試験装置は不要(×)であり、
・試験t3では、バッチ処理は可能(○)、作業者は必要(○)、試験装置(試験装置T3)は必要(○)であり、
・試験t4では、バッチ処理は不可(×)、作業者は必要(○)、試験装置は不要(×)であり、
・試験t5では、バッチ処理は不可(×)、作業者は必要(○)、試験装置(試験装置T5)は必要(○)である。
この例においては、試験t5で用いる試験装置T5ではバッチ処理は不可(×)であるのに対して、試験t3で用いる試験装置T3ではバッチ処理は可能(○)であることに着目して、後述するスケジュール演算をしていることが、特徴の一つである。
なお、本例では、試験装置T3は1台であり、試験装置T5も1台である。このような各試験装置の台数も、入力装置1によりスケジュール演算部2に入力される。
【0023】
各電子部品P1〜P6の「個数」、「納期」に関する制約条件がある。
具体的には、図2に示すように、
・電子部品P1では、「個数」は10個、「納期」は2011年4月30日であり、
・電子部品P2では、「個数」は10個、「納期」は2011年4月30日であり、
・電子部品P3では、「個数」は10個、「納期」は2011年7月31日であり、
・電子部品P4では、「個数」は10個、「納期」は2011年5月31日であり、
・電子部品P5では、「個数」は10個、「納期」は2011年5月31日であり、
・電子部品P6では、「個数」は10個、「納期」は2011年7月31日である。
【0024】
各電子部品P1〜P6について各試験t1〜t5を行うときの「試験条件及び試験時間」に関する制約条件がある。
具体的には、図2、図3に示すように、
・電子部品P1に関しては、試験t1では試験条件c1で1個当たりの試験時間は0.02時間、試験t2では試験条件c2で1個当たりの試験時間は0.01時間、試験t3では試験条件c3−1で試験時間は21分、試験t4では試験条件c4で1個当たりの試験時間は0.01時間、試験t5では試験条件c5で試験時間は6分であり、
・電子部品P2に関しては、試験t1では試験条件c1で1個当たりの試験時間は0.02時間、試験t2では試験条件c2で1個当たりの試験時間は0.01時間、試験t3では試験条件c3−1で試験時間は21分、試験t4では試験条件c4で1個当たりの試験時間は0.01時間、試験t5では試験条件c5で試験時間は6分であり、
・電子部品P3に関しては、試験t1では試験条件c1で1個当たりの試験時間は0.02時間、試験t5では試験条件c5で試験時間は6分であり、試験t2,t3,t4はスキップし、
・電子部品P4に関しては、試験t1では試験条件c1で1個当たりの試験時間は0.02時間、試験t2では試験条件c2で1個当たりの試験時間は0.01時間、試験t3では試験条件c3−2で試験時間は36分、試験t4では試験条件c4で1個当たりの試験時間は0.01時間、試験t5では試験条件c5で試験時間は6分であり、
・電子部品P5に関しては、試験t1では試験条件c1で1個当たりの試験時間は0.02時間、試験t2では試験条件c2で1個当たりの試験時間は0.01時間、試験t3では試験条件c3−2で試験時間は36分、試験t4では試験条件c4で1個当たりの試験時間は0.01時間、試験t5では試験条件c5で試験時間は6分であり、
・電子部品P6に関しては、試験t1では試験条件c1で1個当たりの試験時間は0.02時間、試験t5では試験条件c5で試験時間は6分であり、試験t2,t3,t4はスキップしている。
この例においては、バッチ処理が可能な試験t3において、電子部品P1,P2に関しては試験条件c3−1で試験時間は21分であるのに対して、電子部品P4,P5に関しては試験条件c3−2で試験時間は36分であることに着目して、後述するスケジュール演算をしていることが、特徴の一つである。
【0025】
スケジュール演算部2は、入力装置1から上記の各制約条件(図2、図3参照)が入力されると、図4のフローチャートに示すスケジュール演算(詳細は後述する)をして、図5のガントチャートに示すスケジュールを作成する。
作成されたスケジュール(図5参照)は、出力装置3から出力されて、画面表示されたりプリントアウトされたりする。
【0026】
ここでスケジュール演算部2によるスケジュール演算手法を、図4のフローチャートに基づき説明する。
【0027】
まず、各電子部品に対する各試験の開始・終了時刻のスケジュールへの割り付けが全て終了したか否かを判定する(ステップS1)。
【0028】
各電子部品に対する各試験の開始・終了時刻のスケジュールへの割り付けが全て終了していないと判定したときには、各電子部品に対する各試験のうち、開始・終了時刻の割り付けをしていないもので、開始・終了時刻の割り付けができる可能性がある「電子部品に対する試験」を選択する(ステップS2)。
ステップ2でいう、『開始・終了時刻の割り付けができる可能性がある「電子部品に対する試験」』とは、各電子部品に対して順番に行う試験のうち、まだ試験が行われていない最も順番の早い試験のことを意味している。
【0029】
選択した「電子部品に対する試験」が、作業者のみが必要か、または、作業者と試験装置が必要かを判定する(ステップ3)。
【0030】
選択した「電子部品に対する試験」が、作業者のみが必要と判定したときには、作業者が空いているか否かを判定する(ステップ4)。
【0031】
作業者が空いていないと判定したときには、作業者が空く時間まで待ち(ステップ5)、ステップS2に戻る。
作業者が空いていると判定したときには、作業者のみが必要な「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付ける(ステップS6)。その後、ステップS1に戻る。
【0032】
ステップS3において、選択した「電子部品に対する試験」が、作業者と試験装置が必要と判定したときには、作業者と試験装置が空いているか否かを判定する(ステップS7)。
【0033】
作業者と試験装置が空いていないと判定したときには、作業者と試験装置が空く時間まで待ち(ステップS8)、ステップS2に戻る。
作業者と試験装置が空いていると判定したときには、空いている試験装置はバッチ処理が可能か否かを判定する(ステップS9)。
【0034】
空いている試験装置はバッチ処理が可能でないと判定したときには、作業者と試験装置が必要な「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付ける(ステップS10)。
【0035】
空いている試験装置はバッチ処理が可能であると判定したときには、複数の「電子部品に対する試験」を、同一の試験装置で同一の試験条件となるものどうしでグループにする(ステップS11)。
【0036】
ステップS11でグループ化した後、納期が最も早い電子部品が含まれているグループの「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付ける(ステップS12)。その後、ステップS1に戻る。
【0037】
ステップS1で、各電子部品に対する各試験の開始・終了時刻のスケジュールへの割り付けが全て終了したと判定したら、スケジュール作成を完了する(ステップS13)。
【0038】
次に、図5に示すガントチャート及び図6に示すタイムチャートに基づき、スケジュール演算部2によるスケジュール演算の具体例を説明する。
【0039】
時刻が0時00分においては、電子部品P1に対する試験t1、電子部品P2に対する試験t1、電子部品P4に対する試験t1、電子部品P5に対する試験t1を開始する割り付けを行う。この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6の演算処理をして決定したものである。
これら電子部品P1,P2,P4,P5に対する試験t1は、0時12分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験する電子部品の数に1個当たりの試験時間をかけた時間を加えることによって決定することができる。
【0040】
時刻が0時12分においては、電子部品P1に対する試験t2、電子部品P2に対する試験t2を開始する割り付けを行う。この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6の演算処理をして決定したものである。
これら電子部品P1,P2に対する試験t2は、0時18分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験する電子部品の数に1個当たりの試験時間をかけた時間を加えることによって決定することができる。
【0041】
時刻が0時12分においては、電子部品P3に対する試験t1、電子部品P6に対する試験t1を開始する割り付けを行う。この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6の演算処理をして決定したものである。
これら電子部品P3,P6に対する試験t1は、0時24分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験する電子部品の数に1個当たりの試験時間をかけた時間を加えることによって決定することができる。
【0042】
時刻が0時18分においては、電子部品P4に対する試験t2、電子部品P5に対する試験t2を開始する割り付けを行う。この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6の演算処理をして決定したものである。
これら電子部品P4,P5に対する試験t2は、0時24分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験する電子部品の数に1個当たりの試験時間をかけた時間を加えることによって決定することができる。
【0043】
時刻が0時24分においては、電子部品P1,P2に対する試験t3(試験条件c3−1、試験時間21分)のグループと、電子部品P4,P5に対する試験t3(試験条件c3−2、試験時間36分)のグループとが、バッチ処理ができるグループとして割り付けができる可能性がある。
両グループの電子部品の納期を比べると、電子部品P1,P2の納期(2011年4月30日)が、電子部品P4,P5の納期(2011年5月31日)よりも厳しいので、電子部品P1,P2のグループを選択し、電子部品P1,P2に対する試験t3(試験装置T3によりバッチ処理で行う試験t3)を開始する割り付けを行う。
この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS7→ステップS9→ステップS11→ステップS12の演算処理をして決定したものである。
これら電子部品P1,P2に対する試験t3は、0時45分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験条件c3−1における試験時間21分を加えることによって決定することができる。
【0044】
時刻が0時24分においては、電子部品P3に対する試験t5(試験装置T5によりバッチ処理でなく行う試験t5)を開始する割り付けを行う。
この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS7→ステップS9→ステップS10の演算処理をして決定したものである。
電子部品P3に対する試験t5は、0時30分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験条件c5における試験時間6分を加えることによって決定することができる。
【0045】
時刻が0時30分においては、電子部品P6に対する試験t5(試験装置T5によりバッチ処理でなく行う試験t5)を開始する割り付けを行う。
この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS7→ステップS9→ステップS10の演算処理をして決定したものである。
電子部品P6に対する試験t5は、0時36分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験条件c5における試験時間6分を加えることによって決定することができる。
【0046】
時刻が0時45分においては、電子部品P1に対する試験t4、電子部品P2に対する試験t4を開始する割り付けを行う。この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6の演算処理をして決定したものである。
これら電子部品P1,P2に対する試験t4は、0時51分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験する電子部品の数に1個当たりの試験時間をかけた時間を加えることによって決定することができる。
【0047】
時刻が0時45分においては、電子部品P4,P5に対する試験t3(試験条件c3−2、試験時間36分)のグループが、バッチ処理ができるグループとして割り付けができる。このため、電子部品P4,P5に対する試験t3(試験装置T3によりバッチ処理で行う試験t3)を開始する割り付けを行う。
この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS7→ステップS9→ステップS11→ステップS12の演算処理をして決定したものである。
これら電子部品P4,P5に対する試験t3は、1時21分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験条件c3−2における試験時間36分を加えることによって決定することができる。
【0048】
時刻が0時51分においては、電子部品P1に対する試験t5(試験装置T5によりバッチ処理でなく行う試験t5)を開始する割り付けを行う。
この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS7→ステップS9→ステップS10の演算処理をして決定したものである。
電子部品P1に対する試験t5は、0時57分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験条件c5における試験時間6分を加えることによって決定することができる。
【0049】
時刻が0時57分においては、電子部品P2に対する試験t5(試験装置T5によりバッチ処理でなく行う試験t5)を開始する割り付けを行う。
この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS7→ステップS9→ステップS10の演算処理をして決定したものである。
電子部品P2に対する試験t5は、1時03分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験条件c5における試験時間6分を加えることによって決定することができる。
【0050】
時刻が1時21分においては、電子部品P4に対する試験t4、電子部品P5に対する試験t4を開始する割り付けを行う。この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS6の演算処理をして決定したものである。
これら電子部品P4,P5に対する試験t4は、1時27分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験する電子部品の数に1個当たりの試験時間をかけた時間を加えることによって決定することができる。
【0051】
時刻が1時27分においては、電子部品P4に対する試験t5(試験装置T5によりバッチ処理でなく行う試験t5)を開始する割り付けを行う。
この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS7→ステップS9→ステップS10の演算処理をして決定したものである。
電子部品P4に対する試験t5は、1時33分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験条件c5における試験時間6分を加えることによって決定することができる。
【0052】
時刻が1時33分においては、電子部品P5に対する試験t5(試験装置T5によりバッチ処理でなく行う試験t5)を開始する割り付けを行う。
この割り付けは、図4のステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS7→ステップS9→ステップS10の演算処理をして決定したものである。
電子部品P5に対する試験t5は、1時39分の時刻に終了する。終了時刻は、試験開始時刻に、試験条件c5における試験時間6分を加えることによって決定することができる。
【0053】
このようにして、図5に示すスケジュールが作成される。このスケジュールの総処理時間は、処理(試験)開始時刻から、最終ジョブ(電子部品P5の試験t5)が終了する時刻までの時間である、1時間39分である。
【実施例2】
【0054】
上記の実施例1では、試験装置がバッチ処理可能であるときには、複数の「電子部品に対する試験」を、同一の試験装置で同一の試験条件となるものどうしでグループにし、納期が最も早い電子部品が含まれているグループの「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付けている。
しかし、最も納期が厳しい電子部品を含むグループを選択するルール(グループ選択基準)が必ずしも最適とは限らない。
【0055】
そこで、最も納期が厳しい電子部品を含むグループを選択するルール(グループ選択基準)に固定するだけではなく、グループ選択基準を最適化変数(値の例:最も納期が厳しい電子部品を選択、一度に処理できる量が最も多いものを選択など)と考え、下記の「局所探索法」に実装することにより、最適なグループ選択基準を求めることもできる。
【0056】
例えば、スケジュール演算部2に、グループ選択基準として複数のグループ選択基準を備えておき、それぞれのグループ選択基準を用いて複数のスケジュールをそれぞれ作成し、作成した複数のスケジュールのうち、総処理時間が最も短いスケジュールを最終的なスケジュールとすることもできる。
【0057】
また、各試験装置ごとに最大待ち時間を変数(値の例:待ちなし、30分、1時間、4時間など)として設定し、当該試験装置が使用可能な状態になってから、本変数時間内に当該試験装置を使用する電子部品が到着すると予想される場合は、待ちを発生させ、現在試験可能な電子部品と合わせて試験を行うようなスケジュールを作成することもできる。
【0058】
また、各電子部品のロットサイズについても、試験すべき部品数の分割手段を変数として考える(試験すべき部品数が50個である部品に関する変数の値の例:10個+40個、20個+30個、50個、10個×5など)ことで、上記と同様に扱うことが可能である。
【0059】
探索手法は「局所探索法」と呼ばれる手法である。これはあるスケジュールに対して、一部の変数の値を変えた場合(例えば、ある装置を使う際の待ち時間を変更する)について、スケジュールを作成しなおし、そのスケジュールの評価関数の値が、元のスケジュールの評価関数の値よりも小さいものであれば、そのスケジュールを元のスケジュールと置き換えるという操作を繰り返すものである。
このように、局所探索法を用いて、評価関数の値の最も小さいスケジュール、即ち、スケジュールの総処理時間が最も短いスケジュールを探し出して、最終的なスケジュールとして採用する。
【実施例3】
【0060】
現実のスケジューリングにおいては、電子部品の数や種類は極めて多く、試験種類も極めて多い。
そこで、より精度のよいスケジュールを作成するためには、
(1)入力データとして、
・各電子部品の納期
・各試験工程において使用する試験装置、使用する治具、試験条件、作業時間
・作業者の人数
・試験装置の台数
・各試験装置、各作業員の稼働シフト
を入力し、
(2)スケジュール作成の制約条件として、
・試験装置の取り合い
・治具の取り合い
・試験条件
・納期
・試験装置の体積(部品の体積を考慮して、一度に処理できる個数を計算)
・各試験装置、各作業者の稼働シフト
・特定の工程に対して固定された日程
を考慮し、局所探索法を用いて、スケジュールの総処理時間が最も短いものを最終的なスケジュールとして採用することが望ましい。
【符号の説明】
【0061】
1 入力装置
2 スケジュール演算部
3 出力装置
10 スケジューリング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品を、予め決めた試験順序にしたがって複数の試験をするフローショップ型工程のスケジュールを作成するスケジューリング装置であって、
各試験における「バッチ処理の可否」,「作業者の要否」,「試験装置の要否」に関する制約条件と、各電子部品の「個数」,「納期」に関する制約条件と、各電子部品について各試験を行うときの「試験条件及び試験時間」に関する制約条件と、作業者の人数と、各試験装置の台数を入力する入力部と、
前記入力部により入力された条件を基に、スケジュールを作成するスケジュール演算部とを有し、
前記スケジュール演算部は、
各電子部品に対する各試験のうち、開始・終了時刻の割り付けをしていないもので、開始・終了時刻の割り付けができる可能性がある「電子部品に対する試験」を選択し、
選択した「電子部品に対する試験」が、作業者のみが必要で且つ作業者が空いていると判定したときには、作業者のみが必要な「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付け、
選択した「電子部品に対する試験」が、作業者及びバッチ処理ができない試験装置が必要で且つ作業者及びバッチ処理ができない試験装置が空いていると判定したときには、作業者及びバッチ処理ができない試験装置が必要な「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付け、
選択した「電子部品に対する試験」が、作業者及びバッチ処理が可能な試験装置が必要で且つ作業者及びバッチ処理が可能な試験装置が空いていると判定したときには、複数の「電子部品に対する試験」を同一の試験装置で同一の試験条件となるものどうしでグループにし、予め決めたグループ選択基準に基づき選択した一つのグループの「電子部品に対する試験」の開始・終了時刻をスケジュールに割り付ける、という演算を次々と行うことによりスケジュールを作成する、
ことを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記スケジュール演算部は、
前記グループ選択基準として複数のグループ選択基準を有しており、
それぞれのグループ選択基準を用いて複数のスケジュールをそれぞれ作成し、
作成した複数のスケジュールのうち、総処理時間が最も短いスケジュールを最終的なスケジュールとすることを特徴とするスケジューリング装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記グループ選択基準は、納期が最も早い電子部品が含まれているグループを選択する基準、または、一度に試験することができる量が最も多いグループを選択する基準、を含むことを特徴とするスケジューリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−118843(P2012−118843A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269116(P2010−269116)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】