説明

スタイレットマーキング

本発明は、カテーテル又は針などの、長手方向ルーメンを有する細長い医療用具と、長手方向ルーメンに挿入され、後にそこから取り出されるよう構成されるスタイレットとを含んでなる医療装置を提供する。スタイレットは、使用中にスタイレットが引き抜かれているとき、スタイレットの遠位端が間もなくルーメンから出ることを標示する少なくとも1つのインジケータを有するよう構成される。各インジケータが使用者に対し、スタイレットがもう少しでルーメンから完全に引き抜かれる旨を警告することにより、使用者は適切な事前注意を払うことができ、スタイレットがルーメンから不注意且つ制御不能に出ることが防止され得る。各インジケータはスタイレットの遠位端に近接して位置し得るとともに、視覚的、物理的、又は可聴式のいずれかの標示を呈示する。加えて、本発明は、スタイレットの細長い医療用具に対する長手方向位置を標示する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により全体として本明細書に援用される、2005年12月8日付けで出願された米国仮特許出願第60/749,075号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は概して、医療用スタイレットの分野に関する。より詳細には、本発明は、針又はカテーテルなどの医療用具内で使用するためのスタイレットに関する。
【背景技術】
【0003】
スタイレットは、患者の体内への医療用具の導入中及び導入後の当該用具の正確な操縦を制御するために、針及びカテーテルなどの医療用具で使用されている。医療用具は典型的には長手方向内部ルーメンを有し、そこにスタイレットが挿入され得る。スタイレットは一端に操作機構を有し、医療従事者はこれを使用して医療用具のルーメン内でスタイレットを長手方向に動かす。
【0004】
従来式スタイレットを使用するとき、医療従事者は医療用具を患者の体内に導入した後、スタイレットを医療用具から引き抜く。スタイレットが医療用具から引き抜かれるに従い、スタイレットの遠位端がルーメンの近位端に接近する。最終的に、スタイレットはルーメンから完全に引き抜かれる。しかしながら、スタイレットの遠位端がルーメンから出るとき、多数の不都合が生じ得る。
【0005】
従来式スタイレット及び医療用具は、スタイレットがルーメンから引き抜かれるとき、スタイレットの遠位端が間もなくルーメンから出ることを標示するインジケータを一切有しない。換言すれば、スタイレットをルーメンから引き抜く医療従事者は、スタイレットがルーメンから文字通り「飛び出る」寸前であることを警告してくれる機構を何ら有しない。従って、スタイレットをルーメンから取り出す医療従事者は、スタイレットの遠位端がルーメンから出るときに不意を突かれることがある。
【0006】
例えば、スタイレットがルーメンから急に飛び出るとき、不用意な医療従事者はスタイレットの遠位端を物理的に制御していないことがある。結果として、扱いにくいスタイレットの遠位端が制御不能に揺れ動き、不注意に医療従事者又は患者のいずれかに接触し得る。扱いにくいスタイレットの遠位端はまた、不規則に揺れ動くため、体液飛沫を振り撒き、飛び散らし得る。加えて、スタイレットの遠位端がルーメンから出るとき、体液が回避不可能な形でルーメンから不必要に流出し得る。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/749,075号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の欠点のうち1つ又は複数を軽減する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カテーテル又は針などの医療用具内で使用するためのスタイレットを提供する。医療用具は長手方向内部ルーメンを有し得る。スタイレットの外部はルーメン内に挿入可能で、且つそこを長手方向に移動可能なサイズであるため、医療用具を患者の体内に導入中及び導入後、スタイレットを使用して医療用具を所望のとおりに制御及び操縦し得る。使用中、スタイレットはルーメンから完全に引き抜かれるか、又は取り出される。少なくとも1つのインジケータ又はマーカーがスタイレットに提供され、スタイレットがルーメンから引き抜かれているとき、スタイレットがもう少しでルーメンから完全に取り出されることを医療従事者に警告する。
【0009】
本発明の一実施形態において、医療システムは、長手方向ルーメンが一部分を貫通している細長い医療用具と、ルーメン内に挿入可能で、且つそこを長手方向に移動可能なサイズのスタイレットとを含み得る。スタイレットはその遠位端にほぼ近接して位置する少なくとも1つのインジケータを有するよう構成され、インジケータはスタイレットが使用中にルーメンから取り出されているとき、スタイレットがルーメンから間もなく完全に引き抜かれることを標示する。インジケータのタイプとしては、インクマーキング、レーザエッチング、スタイレットの材料タイプの変化、孔、スタイレットの外部の凹刻、スタイレットの外部の少なくとも一部分のサンドブラスト、スタイレットの外部の少なくとも一部分のコーティング、又はスタイレットの外径の縮径又は拡径を挙げることができる。
【0010】
本発明の別の実施形態において、医療用具は近位端及び遠位端を有するスタイレットを含んでもよく、スタイレットは細長い医療器具の長手方向ルーメン内に挿入可能で、且つそこを長手方向に移動可能であるよう構成される。スタイレットはスタイレットの遠位端にほぼ近接して位置する少なくとも1つのインジケータを有し、これはスタイレットが使用中にルーメンから取り出されているとき、スタイレットが間もなくルーメンから完全に引き抜かれることを標示する。インジケータは少なくとも1つの視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示を提供し得る。
【0011】
本発明の別の実施形態において、スタイレットの細長い医療用具に対する長手方向位置を標示するための方法が、近位端及び遠位端を有するスタイレットを細長い医療用具の長手方向ルーメンから少なくとも部分的に引き抜くステップ、及びスタイレット上で遠位端にほぼ近接して位置するインジケータにより提供される少なくとも1つの標示を認識するステップを含み得る。本方法は、視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示を認識するステップを含み得る。
【0012】
本発明の利点は、例示として図示及び記載されている以下の本発明の好ましい実施形態の説明から当業者に明らかとなるであろう。認識されるであろうとおり、本発明は他の異なる実施形態が可能であるとともに、その詳細は様々な点で修正可能である。従って、図面及び説明は本質的に例示と見なされるべきであって、限定と見なされてはならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明によれば、針、カテーテル、又は他のカニューレ型用具などの医療用具内で使用されるスタイレットが提供される。医療用具は長手方向内部ルーメンを有し得る。スタイレットは医療用具のルーメン内に挿入可能で、且つそこを長手方向に移動可能なサイズとされ得ることにより、医療処置中に医療用具を患者の体内に導入する間、スタイレットを使用して医療用具を所望のとおりに制御及び操縦し得る。スタイレットはハンドル又はノブなどの、一端に取り付けられる機構を介して移動可能とされ得る。
【0014】
医療処置中、スタイレットはルーメンから完全に引き抜かれ得るか、又は取り出され得る。スタイレットは、使用者がスタイレットを使用中にルーメンから引き抜いているとき、スタイレットが間もなくルーメンから完全に引き抜かれることを使用者に標示するインジケータを有するよう構成される。インジケータは使用者に、医療用具及びスタイレットの後続する作業及び操作に関して適切な事前注意を払うべきであることを警告する。インジケータは1つ又は複数の視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示を提供し得る。
【0015】
図1は、本発明により提供される医療用具10の一実施形態を示す。スタイレット12は医療用具10内に挿入可能で、且つそこを長手方向に移動可能なサイズとされ得る。図示されるとおり、スタイレット12は筒形であり、長くて細いワイヤ様本体を有する。スタイレット12は近位端14及び遠位端16を有する。スタイレット12はまた、近位端14に取り付けられるノブ18又は他の操作機構も有し得る。一態様において、スタイレット12は、金属、例えばステンレス鋼、プラスチック、ポリマー、又はコポリマーから製造され得る。
【0016】
医療用具10はチューブ状主本体20を有する。チューブ状本体20は、従来式針又はカテーテルの本体形状と同様に、筒形外部を有するとともに長くて細い。このため、チューブ状本体20は近位端22及び遠位端24を有する。一態様において、チューブ状本体20は、金属、プラスチック、ポリマー、コポリマー、又は他の何らかの可撓性材料から製造され得る。
【0017】
医療用具10は、使用中に医療用具10の制御性を高めるよう促進するハンドル26又は他の操作機構を有し得る。医療用具10はまた、長手方向内部ルーメン28も有する。ルーメン28は、スタイレット12がルーメン28内に挿入され、続いてその長手方向軸に沿って移動可能であり得るサイズとされる。ハンドル26もまた、スタイレット12がハンドル26の内部に挿通され、続いてハンドル26の長手方向軸に沿って移動可能であり得るサイズの空洞を有し得る。
【0018】
図2は、本発明の医療用具10の一実施形態の一部分の断面図を示す。チューブ状本体20の内表面30は略筒形であるとともにルーメン28の境界を形成する。スタイレット12は円形断面の略筒形外部を有する。スタイレット12はチューブ状本体20の内表面30と締まり嵌め又は隙間嵌めのいずれかをなし得る。
【0019】
チューブ状本体20の外表面32もまた略筒形である。チューブ状本体20は外表面32及び内表面30により画定される環状断面を有し得る。
【0020】
患者の体内への医療用具10の導入中、スタイレット12の遠位端16はチューブ状本体20の遠位端24から突出し得る。スタイレット12はチューブ状本体20の遠位端24を所望の部位まで案内するよう働く。導入後、使用者は一方の手でノブ18を、及び他方の手でハンドル26を把持し得る。使用者はノブ18を引っ張ることによりスタイレット12をルーメン28から引き抜き得る。スタイレット12が引き抜かれるに従い、スタイレット12の遠位端16がチューブ状本体20の近位端22に接近する。医療用具10は、より構成要素が少ないもの、又は追加の構成要素を備えるものを含め、他の構成を有し得る。
【0021】
スタイレット12は遠位端16の近傍に少なくとも1つのインジケータ又はマーカーを有する。結果的に、使用者がスタイレット12をルーメン28から引き抜くと、インジケータ又はマーカーがスタイレット12の遠位端16より先にチューブ状本体20の近位端22又はルーメン28から出ることになる。結果として、使用者はスタイレット12の遠位端16がルーメン28を出る前にインジケータから警告を受け得る。従って、使用者は然るべき事前注意を払うことが可能となり得るため、スタイレット12をルーメン28から早まって完全に引き抜いてしまう結果、扱いにくいスタイレット12の遠位端が制御不能に揺動して、場合により医療従事者又は患者のいずれかと不注意に接触したり、又は不必要に体液飛沫を振り撒いたりすること、並びに体液がルーメン28から早まって流出することが防止され得る。
【0022】
従って、本発明の一態様において、スタイレットは、使用中にスタイレットが間もなくルーメンから完全に引き抜かれる旨の標示を提供するインジケータを有する。インジケータはスタイレットの遠位端に近接して位置し得る。インジケータとしては、(1)インクマーキング、(2)レーザエッチング、(3)スタイレットの材料タイプの変化、(4)孔、(5)スタイレットの外部の凹刻、(6)スタイレットの外部の少なくとも一部分のサンドブラスト、(7)スタイレットの外部の少なくとも一部分のコーティング、又は(8)スタイレットの外径の縮径又は拡径を挙げることができる。
【0023】
本発明の別の態様において、使用者は、スタイレットの遠位端がルーメンの近位端にごく近接している旨の警告を視覚的に受け得る。スタイレットはスタイレットの遠位端に近接して位置する視覚的インジケータを有し得る。作業中、使用者がスタイレットをルーメンから取り出すとき、視覚的インジケータは使用者に対し、スタイレットがルーメンから完全に引き抜かれる点に接近している旨の視覚的な標示を提供し得る。
【0024】
本発明の別の態様において、使用者は、スタイレットの遠位端がルーメンの近位端にごく近接している旨の警告を物理的に受け得る。スタイレットはスタイレットの遠位端に近接して位置する物理的インジケータを有し得る。作業中、使用者がスタイレットをルーメンから取り出すとき、物理的インジケータは使用者に対し、スタイレットがルーメンから完全に引き抜かれる点に接近している旨の物理的な標示を提供し得る。
【0025】
本発明の別の態様において、使用者は、スタイレットの遠位端がルーメンの近位端にごく近接している旨の警告を可聴式に受け得る。スタイレットはスタイレットの遠位端に近接して位置する可聴式インジケータを有し得る。作業中、使用者がスタイレットをルーメンから取り出すとき、可聴式インジケータは使用者に対し、スタイレットがルーメンから完全に引き抜かれる点に接近している旨の可聴式の標示を提供し得る。
【0026】
図3は、本発明のインジケータの一タイプを示す。図示されるとおり、インジケータはインクマーキング34であり得る。インクマーキング34は、一時的なもの、消去不可能なもの、又は永久的なもののいずれであってもよい。例えば、スタイレット12は、耐水性インク又は墨のいずれかでマーキングされてもよい。インクは種々の色、例えば青、黒、赤、黄等であってもよい。しかしながら、色はスタイレット12の残りの外部と対照的なものでなければならない。
【0027】
加えて、インクマーキング34は目立つ形、例えば正方形、矩形、円形、五角形等であってもよい。各インクマーキング34の様々な形はまた、種々のサイズであってもよい。前述の結果として、インクマーキング34は使用者によって視覚的に認識され得る、すなわち、目視され得る。従って、インクマーキング34は使用者に対し、スタイレット12の遠位端16がチューブ状本体の近位端にごく近接している旨の視覚的な標示を提供し得る。
【0028】
図4は、別のタイプの本発明のインジケータを示す。図示されるとおり、インジケータはレーザエッチング36であり得る。レーザ彫刻、レーザマーキング、又はレーザスクライビングとしても知られるレーザエッチングの工程には、レーザエッチャを使用したスタイレット12の外部へのレーザエッチング36の作成が伴い得る。レーザエッチャは、種々のフォントキャラクタ、例えば文字及び数字、形、線、及びロゴをエッチングすることが可能であり得る。レーザエッチャはまた、調節された深さ及び濃さの仕上がりのレーザエッチング36も提供し得る。このため、レーザエッチング36は使用者によって視覚的に認識され得る。従って、レーザエッチング36は使用者に対し、スタイレット12の遠位端16がルーメンの近位端にごく近接している旨の視覚的な標示を提供し得る。
【0029】
別のタイプの本発明のインジケータはスタイレットの材料タイプの変化であり得る。スタイレットは金属又はプラスチックなど、様々なタイプの材料から作製され得る。スタイレットの外部の材料タイプの変化により、外部の粗さ又は平滑度が変わり得るか、又はスタイレットの剛性が変わり得る。材料タイプの変化により、スタイレット外部の色もまた変わり得る。従って、異なるタイプのスタイレット材料はスタイレットの外部に対し、使用者によって視覚的又は物理的に認識され得る、すなわち、目視又は触知され得る感知可能な変化を提供し得る。
【0030】
さらに、スタイレットの外部の変化により、スタイレットをチューブ状本体から引き抜くことで発生する音に感知可能な差が生じ得る。換言すれば、スタイレットをルーメンから取り出す結果、使用者に聴覚上認識可能な、すなわち、聞き取れる雑音が生じ得る。例えば、スタイレット外部とチューブ状本体の内部との間に締まり嵌めがある場合、スタイレット外部上の滑らかな材料から極度に粗い材料への、又はその逆の変化により、スタイレットをルーメンから引き抜くことで発生する音の音量が増加若しくは低下し得るか、又は音調が変化し得る。隙間嵌めであっても、引き抜き中にスタイレット外部の一部分がチューブ状本体の内部と接触する場合には、同じことが該当し得る。従って、材料タイプの変化は使用者に対し、スタイレットの遠位端がルーメンの近位端にごく近接している旨の視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示を提供し得る。
【0031】
図5は、さらなる2つのタイプの本発明のインジケータを示す。図示されるとおり、あるタイプのインジケータはスタイレット12における孔38であり得る。孔38はスタイレット12の端から端まであってもよい。孔38は使用者によって視覚的又は物理的に認識され得る。
【0032】
さらに、孔38はスタイレット12の外部に、スタイレット12をチューブ状本体から引き抜くことで発生する音の音量又は音調に感知可能な差を生成するのに十分な変化を生じさせ得る。聴覚上認識可能な雑音の大きさは、スタイレット12の外部とチューブ状本体の内表面との間の嵌め合いが緊密になるに従い増加し得る。例えば、締まり嵌めは結果として隙間嵌めより大きい雑音を生じ得る。さらに、インジケータとして多数の孔が使用される場合、使用者がスタイレット12をルーメンから引き抜くときの聴覚上認識可能な雑音の大きさはさらに増加し得るか、又は音調が変わり得る。従って、孔38は使用者に対し、スタイレット12の遠位端16がルーメンの近位端にごく近接している旨の視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示を提供し得る。
【0033】
図5はまた、別のタイプのインジケータがスタイレット12の外部の凹刻40であり得ることも示す。凹刻40は視覚的又は物理的に認識可能であり得る。さらに、凹刻40によりスタイレット12の外部に、スタイレット12をチューブ状本体から引き抜くことで発生する音の音量又は音調に感知可能な差を生成するのに十分な変化が生じ得る。凹刻40がルーメンから取り出されるとき、凹刻はチューブ状本体の内表面と、聴覚上認識可能な雑音を生じるような形で相互作用し得る。聴覚上認識可能な雑音の大きさは、スタイレット12の外部とルーメンの内部との間の嵌め合いが緊密になるに従い増加し得る。例えば、締まり嵌めは結果として、隙間嵌めより大きい雑音を生じ得る。さらに、インジケータとして多数の凹刻40が使用される場合、使用者がスタイレット12をルーメンから引き抜くときの聴覚上認識可能な雑音の大きさはさらに増加し得るか、又は音調が変わり得る。従って、凹刻40は使用者に対し、スタイレット12の遠位端16がルーメンの近位端にごく近接している旨の視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示を提供し得る。
【0034】
別のタイプの本発明のインジケータは、スタイレットの外部の少なくとも一部分のサンドブラストであり得る。サンドブラストは霞んだような外観を作り出すなど、スタイレットの外部の少なくとも一部分の色を歪曲し得る。サンドブラストはまた、スタイレットの外部の平滑度を変え得る。従って、スタイレットの外部の少なくとも一部分のサンドブラストはスタイレットの外部に対し、使用者によって視覚的又は物理的に認識され得る感知可能な変化を提供し得る。
【0035】
スタイレット外部の平滑度の変化はまた、引き抜き中にスタイレット外部の一部分がチューブ状本体の内部と接触する場合には、スタイレットをチューブ状本体から引き抜くことで発生する音の音量又は音調に感知可能な差も生じさせ得る。従って、スタイレットの外部の少なくとも一部分のサンドブラストは使用者に対し、スタイレットの遠位端がルーメンの近位端にごく近接している旨の視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示を提供し得る。
【0036】
別のタイプの本発明のインジケータは、スタイレットの外部の少なくとも一部分のコーティングであり得る。スタイレットの一部分のコーティングにより、スタイレットの外部の色又は磨損度に差が発生し得る。従って、スタイレットの外部の少なくとも一部分のコーティングはスタイレットの外部に対し、使用者によって視覚的又は物理的に認識され得る感知可能な変化を提供し得る。
【0037】
スタイレット外部の平滑度の変化はまた、引き抜き中にスタイレット外部の一部分がチューブ状本体の内部と接触する場合には、スタイレットをチューブ状本体から引き抜くことで発生する音の音量又は音調に感知可能な差を生じさせ得る。従って、スタイレットの外部の少なくとも一部分のコーティングは使用者に対し、スタイレットの遠位端がルーメンの近位端にごく近接している旨の視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示を提供し得る。
【0038】
図6は、別のタイプの本発明のインジケータを示す。図示されるとおり、インジケータは、スタイレット16の外径の縮径42又は拡径のいずれかであり得る。スタイレット16の外周の縮径42又は拡径は使用者に対し、視覚的又は物理的に認識可能であり得るスタイレット16のサイズの感知可能な変化を提供し得る。
【0039】
加えて、スタイレット16の外径の縮径又は拡径は、スタイレット外部の一部分が縮径前又は拡径後にチューブ状本体の内部と接触する場合には、スタイレットをチューブ状本体から引き抜くことで発生する音の音量又は音調に感知可能な差を生じさせ得る。例えば、スタイレットの外径の縮径によりスタイレット外部とルーメンの境界との間が締まり嵌めから隙間嵌めに、又は外径の拡径によりその逆に移行することで、スタイレットが引き抜かれるときに生じる雑音の音量が増加又は低下し得るか、又はその音調が変化し得る。従って、スタイレットの外径の縮径42又は拡径は使用者に対し、スタイレット12の遠位端16がルーメンの近位端にごく近接している旨の視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示を提供し得る。
【0040】
本発明の別の実施形態において、スタイレットは、使用中にスタイレットが間もなくルーメンから完全に引き抜かれる旨のインジケータを2つ以上有し得る。インジケータはスタイレットの遠位端に近接して位置し得る。さらに、インジケータのタイプとしては、(1)インクマーキング、(2)レーザエッチング、(3)スタイレットの材料タイプの変化、(4)孔、(5)スタイレットの外部の凹刻、(6)スタイレットの外部の少なくとも一部分のサンドブラスト、(7)スタイレットの外部の少なくとも一部分のコーティング、又は(8)スタイレットの外径の縮径又は拡径の各々からの1つ又は複数を挙げることができる。
【0041】
選択されるインジケータはまた、直前に指定されるとおりのインジケータのうち同じタイプを複数含み得る。例えば、選択されるインジケータは、複数のインクマーキング、複数のレーザエッチング、複数のスタイレットの材料タイプの変化、複数の孔等であってもよい。図3は複数のインクマーキング34を示す。さらに、図4は複数のレーザエッチング36を図示する。
【0042】
あるいは、選択されるインジケータは、上記に指定される8種の異なるタイプのインジケータのうち少なくとも2種を含み得る。例えば、選択されるインジケータはインクマーキングとレーザエッチングの組み合わせであってもよい。さらなる例示的組み合わせとしては、(1)インクマーキングと材料のタイプの変化、(2)レーザエッチングと孔、(3)スタイレットの外部の凹刻とスタイレットの外部の少なくとも一部分のサンドブラスト、及び(4)スタイレットの外部の少なくとも一部分のコーティングとスタイレットの外径の縮径といった組み合わせが挙げられる。当業者であれば理解するであろうとおり、他の可能な組み合わせとして、上記に指定される8種のタイプのインジケータの各々からの1つと記載されるインジケータの残りのタイプからの任意の1つを挙げることができる。
【0043】
別の代替例において、選択されるインジケータは、上記に指定される8種の異なるタイプのインジケータのうち3種以上を含み得る。例えば、選択されるインジケータは、インクマーキング、レーザエッチング、及び材料のタイプの変化を含む組み合わせであってもよい。当業者であれば理解するであろうとおり、他の可能な組み合わせとして、異なる8種のタイプのインジケータからの任意の3つ以上を挙げることができる。換言すれば、この種々のタイプのインジケータは、互いに組み合わせるうえで全てを交換可能に使用できる。
【0044】
さらに別の代替例において、選択されるインジケータはさらに、上記に指定される8種の異なるタイプのインジケータのうち2種以上を含み得る。加えて、選択される種々のタイプのうち1種は、複数の当該タイプのインジケータを含み得る。例えば、選択されるインジケータは、2つ以上のインクマーキングとレーザエッチング、又はその逆の組み合わせであり得る。さらなる例示的組み合わせとしては、(1)2つ以上のインクマーキングと材料のタイプの変化、(2)2つ以上のレーザエッチングと孔、(3)2つ以上のスタイレットの外部の凹刻とスタイレットの外部の少なくとも一部分のサンドブラスト、又は(4)これらの逆の組み合わせが挙げられる。当業者であれば理解するであろうとおり、他の可能な組み合わせとして、上記に指定される8種のタイプのインジケータからの任意の1種を複数と、記載されるインジケータの残りのタイプからの任意の1つを挙げることができる。
【0045】
さらに別の代替例において、選択されるインジケータは、上記に指定される8種の異なるタイプのインジケータのうち2種以上を含み得る。加えて、選択される種々のタイプの各々は、複数の当該タイプのインジケータを含み得る。例えば、選択されるインジケータは、2つ以上のインクマーキングと2つ以上のレーザエッチング、又はその逆の組み合わせであってもよい。さらなる例示的組み合わせとして、(1)2つ以上のインクマーキングと2つ以上の材料のタイプの変化、(2)2つ以上のレーザエッチングと2つ以上の孔、及び(3)2つ以上のスタイレットの外部の凹刻と2つ以上のスタイレットの外部の少なくとも一部分のサンドブラストといった組み合わせが挙げられる。当業者であれば理解するであろうとおり、他の可能な組み合わせとしては、上記に指定される8種のタイプのインジケータからの任意の1種を複数と、先述されるインジケータの残りのタイプからの任意の1種を複数とを挙げることができる。示される例として、図5が、多数の凹刻40と組み合わせられた複数の孔38を示す。
【0046】
本発明の別の実施形態において、針又はカテーテルなどの細長い医療用具に対するスタイレットの長手方向位置を標示するための方法が提供される。本方法は、近位端及び遠位端を有するスタイレットを細長い医療用具の長手方向ルーメンから少なくとも部分的に引き抜くステップ、及びスタイレット上でスタイレットの遠位端にほぼ近接して位置するインジケータにより提供される少なくとも1つの標示を認識するステップを含む。
【0047】
本方法はさらに、少なくとも1つの視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示を認識するステップを含む。視覚的な、物理的な、又は可聴式の標示は、上記で既に考察されたとおり、インクマーキング、レーザエッチング、スタイレットの材料タイプの変化、孔、スタイレットの外部の凹刻、スタイレットの外部の少なくとも一部分のサンドブラスト、スタイレットの外部の少なくとも一部分のコーティング、又はスタイレットの外径の縮径又は拡径を含む種々のタイプのインジケータにより提供され得る。
【0048】
一実施形態において、本器具は複数回使用され得るとともに本方法は反復可能であり得る。例えば、同一のスタイレット及び/又は医療用具が数回使用され得る。加えて、本方法は、スタイレットを医療用具から取り出した後、そのスタイレットを医療用具に挿入すること、又はその逆を何度も伴う反復可能なプロセスであり得る。
【0049】
別の実施形態において、1つ又は複数のインジケータはスタイレットの遠位端の近傍に最適に配置され得る。例えば、インジケータはスタイレットの遠位端の先端から5〜50mmに配置され得る。一態様において、インジケータはスタイレットの遠位端の先端から10〜20mmに配置され得る。他の距離が使用されてもよい。
【0050】
2つ以上のインジケータが使用される場合、インジケータは均一な間隔で、例えば5、10、15、又は20mmずつ離間され得る。あるいは、複数のインジケータはスタイレットの遠位端の先端に近いほど互いにより近接するよう離間され得る。インジケータは、遠位端が医療用具からの完全な引き抜きに近づくに従い、より認識し易く(又は数が多く)なり得る。例えば、複数のインジケータは、20mm、15mm、10mm、次に5mmで離間されることで、スタイレットの遠位端が医療用具からの完全な引き抜きに接近している旨の標示を促進し得る。一態様において、インジケータは、スタイレットの遠位端から60mm、40mm、25mm、15mm、10mm、次に5mmで離間され得る。他の間隔が使用されてもよい。
【0051】
本発明の好ましい実施形態が記載されたが、本発明はそのように限定的されるのではなく、本発明から逸脱することなく修正が加えられてもよいことを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により定義されるとともに、特許請求の範囲には、その文字通りの又は等価的な意味の範囲内にある全ての装置が包含されるものとする。
【0052】
従って前述の詳細な説明は限定ではなく例示と見なされるものとし、本発明の精神及び範囲を定義するよう意図されるのは、全ての等価物を含め、以下の特許請求の範囲であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の医療用具の一実施形態の縦断面図である。
【図2】本発明の医療用具の一実施形態の一部分の断面図である。
【図3】本発明のインジケータの一タイプの概略図である。
【図4】別のタイプの本発明のインジケータの概略図である。
【図5】2つのタイプの本発明のインジケータの概略図である。
【図6】別のタイプの本発明のインジケータの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向ルーメン(28)が一部分を貫通している細長い医療用具(10)、及び
前記長手方向ルーメン(28)に挿入されるとともに後にそこから取り出されるよう構成されるスタイレット(12)であって、近位端(14)及び遠位端(16)を有するスタイレット(12)、
を含んでなる医療装置であって、
前記スタイレット(12)が前記遠位端(16)にほぼ近接して位置する少なくとも1つのインジケータを有して、前記スタイレット(12)が前記長手方向ルーメン(28)から引き抜かれているとき、前記スタイレット(12)の前記遠位端(16)が間もなく前記長手方向ルーメン(28)から出ることを前記インジケータが標示することを特徴とする、医療装置。
【請求項2】
前記細長い医療用具(10)がカテーテルであることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記細長い医療用具(10)が針であることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのインジケータがインクマーキング(34)を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのインジケータがレーザエッチング(36)を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つのインジケータが前記スタイレット(12)の材料タイプの変化を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのインジケータが孔(38)を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのインジケータが前記スタイレット(12)の外部の凹刻(40)を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのインジケータが前記スタイレット(12)の外部の少なくとも一部分のサンドブラストを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのインジケータが前記スタイレット(12)の外部の少なくとも一部分のコーティングを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのインジケータが前記スタイレット(12)の外径の縮径(42)又は拡径を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の医療装置。
【請求項12】
近位端(14)及び遠位端(16)を有するスタイレット(12)を細長い医療用具(10)の長手方向ルーメン(28)から少なくとも部分的に引き抜くステップ、
を含んでなる、前記スタイレット(12)の前記細長い医療用具(10)に対する長手方向位置を標示するための方法であって、
前記スタイレット(12)が前記長手方向ルーメンから引き抜かれ続けている場合に、前記スタイレット(12)の前記遠位端が間もなく前記細長い医療用具(10)から出ることを、前記スタイレット(12)上で前記遠位端(16)にほぼ近接して位置する前記インジケータが示す少なくとも1つの標示を認識するステップを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記スタイレット(12)上で前記遠位端(16)にほぼ近接して位置するインジケータが示す少なくとも1つの標示を認識するステップが、少なくとも1つの標示を視覚的に認識するステップを含んでなることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スタイレット(12)上で前記遠位端(16)にほぼ近接して位置するインジケータが示す少なくとも1つの標示を認識するステップが、少なくとも1つの標示を物理的に認識するステップを含んでなることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記スタイレット(12)上で前記遠位端(16)にほぼ近接して位置するインジケータが示す少なくとも1つの標示を認識するステップが、少なくとも1つの標示を可聴式に認識するステップを含んでなることを特徴とする、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−518136(P2009−518136A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544515(P2008−544515)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/046757
【国際公開番号】WO2007/067707
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(591157154)ウィルソン−クック・メディカル・インコーポレーテッド (135)
【氏名又は名称原語表記】WILSON−COOK MEDICAL INCORPORATED
【Fターム(参考)】