説明

スタッカー

【課題】搬送ベルトが軌道からトリッパーに乗継ぐ乗継ぎ部における搬送ベルトの捻れや反転を検知して、トラブルを未然に防止することができるスタッカーを提供する。
【解決手段】ブームコンベアの後端側に配置され、前端部から後端部に向けて下方に傾斜するスロープ部を有し、地上に敷設された軌道上を走行するトリッパーを備えるスタッカーにおいて、搬送ベルト16から落下する積荷を検知する積荷落下検知装置30がトリッパーの後端部に設置されている。積荷落下検知装置30は、中間部が軸支され鉛直面内で回動自在とされた天秤棒31と、天秤棒31の一端部に設けられ、落下した積荷を捕捉する検知板32と、天秤棒31の他端部に設けられた反力部材33と、天秤棒31が回動して当接することにより作動するリミットスイッチ35とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトにより搬送されてくる鉱石などの積荷を原料ヤードに積付けするスタッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
運搬船などによって輸送されてきた鉱石などの積荷は、荷揚げ岸壁近くに設けられた原料ヤードにスタッカーにより積付けられる。スタッカーは、ブームコンベアと、ブームコンベアの後端側に配置され、前端部から後端部に向けて下方に傾斜するスロープ部を有するトリッパーとを備え、原料ヤードに沿って敷設された軌道上を走行する。地上に設けた軌道に沿って延在しトリッパーのスロープ部を経由する搬送ベルトによりブームコンベアまで搬送された積荷は、ブームコンベアにより原料ヤードに積付けされる。
なお、本明細書では、積荷が搬送される下流側を「前」側とし、上流側を「後」側とする。
【0003】
トリッパーのスロープ部に沿って設置された搬送ベルトは、軌道に沿って設置された搬送ベルトと繋がっているため、搬送ベルトが軌道からトリッパーに乗継ぐ乗継ぎ部では、軌道に沿って設置された搬送ベルトとトリッパーとの芯ズレや搬送ベルト上の積荷の片寄り或いは積荷に含まれる過剰水分によって、搬送ベルトが大きく捻れたり反転したりして搬送ベルト上の積荷が落下することがある。その結果、軌道が積荷に埋没して走行トラブルが発生したり、搬送ベルトのテールプーリーが積荷に埋没して搬送ベルトが破断するトラブルを誘発したりする。
【0004】
この種のベルトコンベア設備では、搬送ベルト上の積荷に片寄りがある場合、搬送ベルトが蛇行し、積荷を安定して搬送できなくなると共に、搬送ベルトが損傷し搬送ベルトの寿命が短くなるなどの問題が発生する。この問題に対して、特許文献1では、上流側ベルトコンベア終端から落下する搬送物を一旦受け止めて下流側ベルトコンベアへ案内するバッファの位置を、下流側ベルトコンベアに当接するタッチローラーと該タッチローラーの回転を検出する回転検出器からなる片荷検出センサの検出信号に基づいて調整する発明が開示されている。また、特許文献2では、下流側ベルトコンベアが旋回する場合でも、積荷の片寄り状態を防止する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−3815号公報
【特許文献2】特開平8−143135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、地上部からトリッパーに乗継ぐ乗継ぎ部では、搬送ベルトが逆「へ」の字状に折れ曲がり、しかも該搬送ベルトにはテンションが掛かっていることから、積荷が少量もしくは荷切れ時の場合、この乗継ぎ部において搬送ベルトが2m近く浮き上がる場合がある。このため、特許文献1や特許文献2に記載されている片荷検出センサや超音波距離センサを設置したとしても、これらのセンサが搬送ベルトの上昇に追従できず、浮き上がりに起因して発生する搬送ベルトの捻れや反転を検出することができない。
一方、トリッパーのスロープ部の傾斜角度を小さくすれば搬送ベルトの浮上量は減少するが、トリッパーの全長が長くなるため、原料ヤード端部にデッドゾーンが発生するという問題がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、搬送ベルトが軌道からトリッパーに乗継ぐ乗継ぎ部における搬送ベルトの捻れや反転を検知して、トラブルを未然に防止することができるスタッカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ブームコンベアの後端側に配置され、前端部から後端部に向けて下方に傾斜するスロープ部を有し、地上に敷設された軌道上を走行するトリッパーを備え、前記軌道に沿って延在し前記トリッパーのスロープ部を経由する搬送ベルトにより、前記ブームコンベアまで積荷が搬送されるスタッカーにおいて、前記搬送ベルトから落下する積荷を検知する積荷落下検知装置が、前記トリッパーの後端部に設置されていることを特徴としている。
【0009】
当該構成では、トリッパーの後端部に積荷落下検知装置を設置しているので、搬送ベルトが軌道からトリッパーに乗継ぐ乗継ぎ部における積荷の落下を検知することができる。これにより、乗継ぎ部において搬送ベルトに捻れもしくは反転が生じていることを把握することができ、トラブルを未然に防止することができる。
【0010】
また、本発明に係るスタッカーでは、前記積荷落下検知装置は、中間部が軸支され鉛直面内で回動自在とされた天秤棒と、前記天秤棒の一端部に設けられ、落下した積荷を捕捉する検知板と、前記天秤棒の他端部に設けられた反力部材と、前記天秤棒が回動して当接することにより作動するリミットスイッチとを備えていてもよい。これにより、積荷落下検知装置がシンプルな機構となり、低コストで信頼性の高い積荷落下検知装置を実現することができる。
【0011】
また、本発明に係るスタッカーでは、前記リミットスイッチが、警報装置及び/又は前記搬送ベルトの非常停止装置と連動していることを好適とする。これにより、搬送ベルトから積荷が落下すると、警報が発せられるか、搬送ベルトが非常停止するので、トラブルを迅速に防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスタッカーでは、トリッパーの後端部に積荷落下検知装置を設置しているので、搬送ベルトが軌道からトリッパーに乗継ぐ乗継ぎ部における積荷の落下を検知することができる。これにより、乗継ぎ部において搬送ベルトに捻れもしくは反転が生じていることを把握することができ、トラブルを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスタッカーの模式図である。
【図2】同スタッカーのトリッパーの全体図である。
【図3】(A)は適正積荷時におけるトリッパー後端部の詳細図、(B)はX−X矢視断面図である。
【図4】(A)は少量積荷もしくは荷切れ時におけるトリッパー後端部の詳細図、(B)はY−Y矢視断面図である。
【図5】積荷落下検知装置の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
【0015】
本発明の一実施の形態に係るスタッカー10の模式図を図1に示す。スタッカー10は、地上に敷設された軌道17上を走行する機体11と、機体11に支持され、旋回及び伏仰可能とされたブーム12と、ブーム12の後端側に連結配置され、軌道17上を走行するトリッパー14とを備えている。
【0016】
ブーム12上には、ブームコンベア13がブーム12の全長に亘って設置されている。一方、トリッパー14は、前端部18から後端部19に向けて下方に傾斜するスロープ部15を有し、軌道17に沿って地上に設置された搬送ベルト16がスロープ部15を経由している(図2参照)。軌道17に沿って走行する搬送ベルト16は、トリッパー14の後端部19から前端部18までスロープ部15上を移動した後、トリッパー14の前端部18から下方に向けて移動し、再び軌道17に沿って移動する。搬送ベルト16によって軌道17に沿って搬送された積荷は、搬送ベルト16によってトリッパー14の後端部19から前端部18まで搬送された後、ブームコンベア13によってブーム12の先端部まで搬送され、原料ヤードに積付けられる。
【0017】
トリッパー14の後端部19の詳細を図3及び図4に示す。図3(A)、(B)は適正積荷時、図4(A)、(B)は少量積荷もしくは荷切れ時における状態を示している。トリッパー14の後端部19には、搬送ベルト16の浮き上がりを防止するための押えローラー20が搬送ベルト16上に、また搬送ベルト16の片寄りを防止するためのサイドローラー21が搬送ベルト16の両サイドに設置されている。しかし、図4に示すように、少量積荷もしくは荷切れ時には、押えローラー20も効果が無く、搬送ベルト16が2m近く浮き上がり、搬送ベルト16の捻れや反転現象が発生しやすくなる。そのため、本スタッカー10では、トリッパー14の後端部19に積荷落下検知装置30を設置している。
【0018】
積荷落下検知装置30は、中間部が回動軸34により軸支され鉛直面内で回動自在とされた天秤棒31と、搬送ベルト16と略平行に配置された天秤棒31の一端部(トリッパー14の後端側)に設けられ、落下した積荷を捕捉する検知板32と、天秤棒31の他端部(トリッパー14の前端側)に設けられた反力部材となるカウンタウェイト33と、天秤棒31が回動して当接することにより作動するリミットスイッチ35とを備えている(図5参照)。また、リミットスイッチ35には、警報装置36と搬送ベルト16の非常停止装置37が接続されている。
さらに、リミットスイッチ35の横には、天秤棒31の上下動範囲を規制するための規制部材38が立設されている。具体的には、天秤棒31を挟んで上下に並設された一対の突出部38aが規制部材38に設けられている。天秤棒31の上下動が大きくなり過ぎると、天秤棒31が突出部38aに当接して天秤棒31の上下動範囲が規制される。
【0019】
落下した積荷を捕捉する検知板32は、帯板材を大略U字状に折り曲げた形状とされ、その一方の上端部が天秤棒31に固着されている。検知板32は、トリッパー14の後端部19の後方、即ち、搬送ベルト16が軌道17からトリッパー14に乗継ぐ乗継ぎ部の位置において、搬送ベルト16の下方を横断するように配置される。
一方、カウンタウェイト33は、検知板32と釣り合う位置を調節できるように、天秤棒31に沿って移動可能とされている。
【0020】
本スタッカー10では、積荷搬送中に搬送ベルト16が捻れたり反転したりして搬送ベルト16上の積荷が落下した場合、落下した積荷は検知板32によって捕捉される。検知板32の上に積荷が落下すると、積荷の自重により検知板32が下方に移動する。これに伴い、カウンタウェイト33が上方に移動し、回動した天秤棒31の中間部がリミットスイッチ35に当接する。これにより、リミットスイッチ35が作動し、警報装置36によって警報が発せられると共に、非常停止装置37が作動して搬送ベルト16が停止する。その結果、乗継ぎ部において搬送ベルト16に捻れもしくは反転が生じていることを把握することができ、トラブルを未然に防止することができる。
【0021】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、積荷落下検知装置を構成する天秤棒の他端部に反力部材としてカウンタウェイトを設けたが、天秤棒の他端部とトリッパーの後端部とをバネなどで連結してもよい。また、上記実施の形態では、警報装置及び非常停止装置を設置した構成としたが、いずれか一方のみでも良い。さらにまた、上記実施の形態では、検知板は大略U字状としたが、かご形など他の形状でも良いことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0022】
10:スタッカー、11:機体、12:ブーム、13:ブームコンベア、14:トリッパー、15:スロープ部、16:搬送ベルト、17:軌道、18:前端部、19:後端部、20:押えローラー、21:サイドローラー、30:積荷落下検知装置、31:天秤棒、32:検知板、33:カウンタウェイト(反力部材)、34:回動軸、35:リミットスイッチ、36:警報装置、37:非常停止装置、38:規制部材、38a:突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームコンベアの後端側に配置され、前端部から後端部に向けて下方に傾斜するスロープ部を有し、地上に敷設された軌道上を走行するトリッパーを備え、前記軌道に沿って延在し前記トリッパーのスロープ部を経由する搬送ベルトにより、前記ブームコンベアまで積荷が搬送されるスタッカーにおいて、
前記搬送ベルトから落下する積荷を検知する積荷落下検知装置が、前記トリッパーの後端部に設置されていることを特徴とするスタッカー。
【請求項2】
請求項1記載のスタッカーにおいて、前記積荷落下検知装置は、中間部が軸支され鉛直面内で回動自在とされた天秤棒と、前記天秤棒の一端部に設けられ、落下した積荷を捕捉する検知板と、前記天秤棒の他端部に設けられた反力部材と、前記天秤棒が回動して当接することにより作動するリミットスイッチとを備えることを特徴とするスタッカー。
【請求項3】
請求項2記載のスタッカーにおいて、前記リミットスイッチは、警報装置及び/又は前記搬送ベルトの非常停止装置と連動していることを特徴とするスタッカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−190089(P2011−190089A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59474(P2010−59474)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】