説明

スタンソポルフィンの高純度で大規模な製造

高純度スタンソポルフィンを含む大規模(バルク)組成物、およびこうした組成物の合成方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年10月4日に出願された米国仮特許出願第60/849641号、および2007年2月28日に出願された米国仮特許出願第60/904601号の優先権の利益を主張する。これらの特許出願の内容は、その全体を本願明細書においても参照して取り入れられる。
【0002】
本発明は、高純度で大量にスタンソポルフィン(錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド)を合成する方法、およびその得られた組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
スタンソポルフィンまたは錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリドは、酵素ヘムオキシゲナーゼの阻害剤である。スタンソポルフィンは、幼児の高ビリルビン血症(特許文献1〜3)および乾癬(特許文献4)のようないくつかの疾病の治療用途に提案されている。この治療用途のために、スタンソポルフィンの調製方法が大きな関心になっている。
【0004】
幼児の高ビリルビン血症(幼児黄疸または新生児高ビリルビン血症としても知られる)は、肝臓がビリルビンを結合することができずに、ビリルビンが生成と釣り合う速度で分泌され得るときに、新生児において生じる。ビリルビンは、生まれた時に胎児から成体ヘモグロビンへの生理学的変換の一部としてのヘムの放出に由来する。酵素ヘムオキシゲナーゼは、ヘムを胆緑素に酸化し、次いで、ビリベルジン還元酵素が胆緑素をビリルビンに還元する。高血清レベルのビリルビンは、神経毒物質である。成人において、肝臓は、ビリルビンを、結合した排泄可能な形態に迅速に変化させる。しかしながら、新生のヒトにおいて、肝臓は未だ生育中であり、肝臓による摂取と結合は、成人のようには効率的でない。さらに、溶血が、成人よりも大きい相対速度で生じることがある。これらの要素は全て、幼児の過剰なビリルビンをもたらし得る。ある幼児においては、ビリルビンの高血清レベルは、有害な生理学的影響を有し得る。ビリルビンは黄色であり、過度のビリルビンを有する幼児は、肌と白眼に黄色の模様を有する黄疸にかかった状態に見える。
【0005】
ビリルビンの非常に高い血清レベルを有する幼児は、核黄疸にかかる恐れがあり、稀ではあるが、重度の一生に及ぶ身体障害や合併症、例えば、アテトーシス、難聴、視力問題、および歯科疾患をもたらす大変な神経障害を起こす可能性もある(非特許文献1)。したがって、幼児は、誕生後に注意深く監視しなければならず、幼児のピリルビンのレベルが過剰であると、治療的介入を開始しなければならない。米国小児科学会は、高ビリルビン血症についての新生児の検査と危険性のある新生児の治療について、標準的治療法ガイドラインを発行している(非特許文献2)。アメリカ合衆国における医療費は上昇しているため、外見的に健康な新生児と母親は、迅速に退院させられ、誕生後に24〜48時間というように早急な場合もある。しかしながら、この慣行は、核黄疸の症例の増加に寄与し得ると考えられ、先進国からは実質的に排除された(非特許文献3)。早期の退院は、幼児における黄疸と高ビリルビン血症の検出を遅らし得るため、迅速に高ビリルビン血症を治療する有効な手段が望まれる。新生児の独特の医学的状態は、成人において許容できる副作用が新生児においては完全に許容できないことがあり得るため、全ての治療手段が出来るだけ安全なことを必要とする。
【0006】
高ビリルビン血症について現在認可されて一般に使用される治療には、光線療法と交換輸血が挙げられる。光線療法は、430〜490nmの範囲の光(青色光)を新生児に照射することを伴う。この光は、ピリルビンをルミルビンとフォトビリルビンに変化させ、これらは幼児によってより迅速に排泄され、したがって、ビリルビンのレベルの低下をもたらすことができる。
【0007】
スタンソポルフィン(錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド)は、高ビリルビン血症の治療において治癒的価値があることが実証されている(非特許文献4〜5)。スタンソポルフィンが使用可能な他の適応症は、特許文献5(ヘムの排泄速度を高める)、特許文献6(癌治療の毒性を相殺する)、特許文献7(乾癬を治療する)、およびその他の文献に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4657902号
【特許文献2】米国特許第4668670号、
【特許文献3】国際公開公報WO94/28906
【特許文献4】米国特許第4782049号
【特許文献5】米国特許第4692440号
【特許文献6】国際公開公報WO89/02269
【特許文献7】米国特許第4782049号
【特許文献8】米国特許6818763号
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0210048
【特許文献10】米国特許出願第11/096359号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Centers for Disease Control and Prevention World-Wide- Web.cdc.gov/ncbddd/dd/kernicterus.htm.
【非特許文献2】Pediatrics 1 14:297-316 (2004)
【非特許文献3】Hansen TWR, Acta Paediatr. 89:1155-1157 (2000)
【非特許文献4】Valaes et al., Pediatrics 93:1-11 (1994)
【非特許文献5】Kappas et al., Pediatrics, 95:468-474 (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献8〜10は、スタンソポルフィンの合成方法を開示している。しかしながら、出来るだけ純粋な物質として使用する治療上の利点のため、および監督官庁の厳しい要請のために、より高純度でスタンソポルフィンを製造する方法を開発することが依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願は、これまでに達成されていない純度のレベルでスタンソポルフィンを合成する方法、および純粋なスタンソポルフィンの大量調製を開示する。また、本出願は、ポルフィリン環の中に錫および他の金属を挿入する新たな方法を開示する。この新規な方法は、スタンソポルフィンの合成のために必要な時間を大きく短縮する。
【0012】
本発明は、ある態様において、大規模(バルク)量の高純度スタンソポルフィン、およびそのスタンソポルフィン組成物の製造方法を包含する。また、本発明は、本願明細書で開示の別な合成方法および化学組成物を包含する。
【0013】
1つの実施形態において、本発明は、大規模(バルク)量で高純度スタンソポルフィンを含む物質の組成物を包含する。別の実施形態において、本発明は、単一バッチ、即ち、スタンソポルフィンの単一バッチの大規模(バルク)の高純度量で製造したときの大規模(バルク)量の高純度スタンソポルフィンを含む物質の組成物を包含する。高純度スタンソポルフィンは、少なくとも約97%の純度、少なくとも約98%の純度、少なくとも約98.5%の純度、少なくとも約99%の純度、少なくとも約99.5%の純度、または少なくとも約99.8%の純度であることができる。高純度スタンソポルフィンにおける何らかの1つの不純物の量は、約0.1%未満、約0.09%未満、約0.08%未満、または約0.07%未満であることができ、別な実施形態において、何らかの単一不純物は何らかの単一生産物に関係する不純物である。スタンソポルフィンの大規模(バルク)量は、少なくとも約10グラム、少なくとも約25グラム、少なくとも約50グラム、少なくとも約100グラム、少なくとも約200グラム、少なくとも約500グラム、少なくとも約1.0kg、少なくとも約2.0kg、または少なくとも約5.0kgであることができる。1つの実施形態において、上記に種々に記載したような高純度スタンソポルフィンは、単一のバッチで製造される。
【0014】
別の実施形態において、大規模量スタンソポルフィンは、少なくとも約97%の純度、少なくとも約98%の純度、少なくとも約98.5%の純度、少なくとも約99%の純度、少なくとも約99.5%の純度、または少なくとも約99.8%の純度であり、約0.2%を上回る量で存在する不純物を有さず、より好ましくは、約0.15%を上回る量で存在する不純物を有さず、さらにより好ましくは、約0.12%を上回る量で存在する不純物を有さない。1つの実施形態において、高純度スタンソポルフィンは単一バッチで製造される。
【0015】
さらなる実施形態において、大規模量の高純度スタンソポルフィン中に存在するパラジウム不純物の量は、約20ppm未満、約15ppm未満、約10ppm未満、または約5ppm未満である。1つの実施形態において、高純度スタンソポルフィンは単一バッチで製造される。
【0016】
別な実施形態において、本発明は、大規模で高純度スタンソポルフィンを製造する方法を包含し、a)金属水素化触媒を水素雰囲気に曝して、予め水素化された触媒を作成し、および、b)ヘミンをその予め水素化された触媒に接触させ、ヘミンと触媒を、ヘミンから鉄を除去してヘミンのビニル基をエチル基に還元するのに十分な温度、水素ガス圧力、および時間の1または複数の組み合わせに維持し、このようにして、メソポルフィリンIXを製造する、各工程を含む。別の実施形態において、本発明は、大規模で高純度スタンソポルフィンを製造する方法を包含し、a)金属水素化触媒を水素雰囲気に曝して、予め水素化された触媒を作成し、b)ヘミンをその予め水素化された触媒に接触させ、ヘミンと触媒を、ヘミンから鉄を除去してヘミンのビニル基をエチル基に還元するのに十分な温度、水素ガス圧力、および時間の1または複数の組み合わせに維持し、このようにして、メソポルフィリンIXを製造し、および、c)制御された酸化速度を用い、メソポルフィリンIXを錫(II)塩と反応させてスタンソポルフィンを製造する、各工程を含む。1つの実施形態において、金属水素化触媒は、パラジウム、炭素上のパラジウム、白金、炭素上の白金、ニッケル、またはニッケル−アルミニウム触媒を含む。別な実施形態において、金属水素化触媒はパラジウムである。別の実施形態において、金属水素化触媒は炭素上のパラジウムである。本方法は、単一バッチで、大規模量の高純度スタンソポルフィンを製造することができる。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、大規模で高純度スタンソポルフィンを製造する方法を包含し、a)金属水素化触媒を水素雰囲気に曝して、予め水素化された触媒を作成し、b)ヘミンをその予め水素化された触媒に接触させ、ヘミンと触媒を、ヘミンから鉄を除去してヘミンのビニル基をエチル基に還元するのに十分な温度、水素ガス圧力、および時間の1または複数の組み合わせに維持し、このようにして、メソポルフィリンIXを製造し、および、c)メソポルフィリンIXを錫(II)酸化物と反応させてスタンソポルフィンを製造する、各工程を含む。1つの実施形態において、金属水素化触媒は、パラジウム、炭素上のパラジウム、白金、炭素上の白金、ニッケル、またはニッケル−アルミニウム触媒を含む。別な実施形態において、金属水素化触媒はパラジウムである。別の実施形態において、金属水素化触媒は炭素上のパラジウムである。本方法は、単一バッチで、大規模量の高純度スタンソポルフィンを製造することができる。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、メソポルフィリンIXを製造する方法を包含し、a)炭素上パラジウムの触媒を水素雰囲気に曝して、予め水素化されたパラジウム触媒を作成し、b)ヘミンをその予め水素化された触媒に接触させ、ヘミンと触媒を、ヘミンから鉄を除去してヘミンのビニル基をエチル基に還元するのに十分な温度、水素ガス圧力、および時間の1または複数の組み合わせに維持し、このようにして、メソポルフィリンIXを製造する、各工程を含む。さらなる実施形態において、工程b)は、約80〜100℃、好ましくは、約85〜90℃であり、水素圧力は、約50〜70psi、好ましくは、約55〜60psiで約1〜3時間、好ましくは、約1〜1.5時間であり、次いで、約40〜60℃、好ましくは、約45〜50℃であり、水素圧力は、約50〜70psi、好ましくは、約55〜60psiで約18〜48時間、好ましくは、約24時間である。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、容易に濾過できるメソポルフィリンIX二塩酸塩の調製を包含し、ここで、溶媒の量がメソポルフィリンIX二塩酸塩の量に対し、少なくとも約50/1の重量比で存在する溶液から、少なくとも約10グラムを、約90分間未満で、約60分間未満で、約45分間未満で、約35分間未満で、約25分間未満で、または約10分間未満で濾過することができる。別の実施形態において、本発明は、容易に濾過できるメソポルフィリンIX二塩酸塩の調製を包含し、ここで、溶媒の量がメソポルフィリンIX二塩酸塩の量に対し、少なくとも約50/1の重量比で存在する溶液から、少なくとも約1000グラムを、約1日未満で、約12時間未満で、約6時間未満で、約4時間未満で、約3時間未満で、または約2時間未満で濾過することができる。1つの実施形態において、溶媒は、水、塩酸、およびギ酸の混合物であり、塩酸は、混合前は、約31%の塩酸であることができる。
【0020】
1つの実施形態において、本発明は、容易に濾過できるメソポルフィリンIX二塩酸塩の調製方法を包含し、ギ酸中のメソポルフィリンIXホルメートの溶液に塩酸の水溶液を添加する工程を含む。1つの実施形態において、水溶液中の塩酸の濃度は約0.5〜2.0Nである。別の実施形態において、水溶液中の塩酸の濃度は約0.75〜1.25Nである。別の実施形態において、水溶液中の塩酸の濃度は約1.0Nである。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、錫をメソポルフィリンIXの中に包含する方法を包含し、プロトン捕捉剤が存在しない中でメソポルフィリンIXを錫塩と反応させることを含む。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、錫をメソポルフィリンIXの中に包含する方法を包含し、制御された酸化速度でメソポルフィリンIXを錫塩と反応させることを含む。1つの実施形態において、メソポルフィリンIXは、ヘッドスペースを有する反応容器中で錫塩と反応させ、酸化速度は、酸素含有ガスを反応容器のヘッドスペースに導入することによって制御される。別の実施形態において、反応容器中のヘッドスペースに導入される酸素含有ガスは、窒素のような不活性ガス中の約3〜22%の酸素である。別の実施形態において、反応容器中のヘッドスペースに導入される酸素含有ガスは空気である。別の実施形態において、反応容器中のヘッドスペースに導入される酸素含有ガスは、窒素のような不活性ガス中の約4〜15%の酸素である。別の実施形態において、反応容器中のヘッドスペースに導入される酸素含有ガスは、窒素のような不活性ガス中の約5〜10%の酸素である。別の実施形態において、反応容器中のヘッドスペースに導入される酸素含有ガスは、窒素のような不活性ガス中の約6%の酸素である。別の実施形態において、反応容器中のヘッドスペースに導入される酸素含有ガスは、窒素中の約6%の酸素である。
【0023】
上記の任意の実施形態において、大規模量の高純度スタンソポルフィンを単一バッチで製造することができる。
【0024】
上記の任意の実施形態において、反応体、中間体、および/または生成物は、付加的な精製工程を受けることができる。ある実施形態において、付加的な精製工程は、珪藻土および/または活性炭を用いて、反応体、中間体、または生成物を処理することを含む。1つの実施形態において、珪藻土および/または活性炭を用いて、反応体、中間体、および/または生成物を処理することは、溶媒中に、反応体、中間体、および/または生成物を溶解または懸濁させ、珪藻土および/または活性炭を添加し、珪藻土および/または活性炭を濾過して分離し、濾液から反応体、中間体、または生成物を回収することを含む。ある実施形態において、付加的な精製は、水中の約0.1〜6NのHCl、好ましくは、水中の約3NのHClの熱酸を用いて、反応体、中間体、または生成物を倍散することを含む。ある実施形態において、珪藻土を用いて処理する、活性炭を用いて処理する、熱酸を用いて倍散する各工程の1、2、または3工程を任意の順序で順次に行い、所望により繰り返すことができる。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、金属酸化物を用いて、金属をポルフィリン化合物またはその塩の中に挿入する方法を包含する。別の実施形態において、金属酸化物の金属カチオンは、中間酸化状態にある。別の実施形態において、ポルフィリン化合物は、メソポルフィリンまたはその塩、プロトポルフィリンまたはその塩、またはヘマトポルフィリンまたはその塩、またはジュウテロポルフィリンまたはその塩である。別の実施形態において、ポルフィリン化合物は、メソポルフィリンIXまたはその塩である。別の実施形態において、ポルフィリン化合物は、メソポルフィリンIX二塩酸塩である。別の実施形態において、得られる生成物は、メタル化されたポルフィリンまたはその塩である。別の実施形態において、得られる生成物は、メタル化されたメソポルフィリンまたはその塩、またはメタル化されたプロトポルフィリンまたはその塩、またはメタル化されたヘマトポルフィリンまたはその塩、またはメタル化されたジュウテロポルフィリンまたはその塩である。他の実施形態において、金属酸化物は、酸化錫、酸化亜鉛、酸化銅、酸化カドミウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化銀、酸化金、酸化バナジウム、酸化白金、酸化アンチモン、または酸化ヒ素から選択される。他の実施形態において、金属酸化物は、錫(II)酸化物、亜鉛(II)酸化物、銅(I)酸化物、銅(II)酸化物、カドミウム(II)酸化物、コバルト(II)酸化物、コバルト(III)酸化物、コバルト(IV)酸化物、Co、クロム(II)酸化物、クロム(III)酸化物、クロム(IV)酸化物、クロム(V)酸化物、クロム(VI)酸化物、鉄(II)酸化物、鉄(III)酸化物、Fe、アルミニウム(III)酸化物、チタン(II)酸化物、チタン(III)酸化物、チタン(IV)酸化物、ニッケル(II)酸化物、マンガン(II)酸化物、マンガン(III)酸化物、マンガン(IV)酸化物、マンガン(VII)酸化物、銀(I)酸化物、銀(II)酸化物、金(I)酸化物、金(III)酸化物、バナジウム(II)酸化物、バナジウム(III)酸化物、バナジウム(IV)酸化物、バナジウム(V)酸化物、白金(II)酸化物、白金(IV)酸化物、アンチモン(III)酸化物、アンチモン(IV)酸化物、アンチモン(V)酸化物、ヒ素(III)酸化物、またはヒ素(V)酸化物から選択される。他の実施形態において、得られる生成物は、錫ポルフィリン、亜鉛ポルフィリン、銅ポルフィリン、カドミウムポルフィリン、コバルトポルフィリン、クロムポルフィリン、鉄ポルフィリン、アルミニウムポルフィリン、チタンポルフィリン、ニッケルポルフィリン、マンガンポルフィリン、銀ポルフィリン、金ポルフィリン、バナジウムポルフィリン、白金ポルフィリン、アンチモンポルフィリン、ヒ素ポルフィリン、またはこれらの塩である。他の実施形態において、得られる生成物は、錫メソポルフィリン、亜鉛メソポルフィリン、銅メソポルフィリン、カドミウムメソポルフィリン、コバルトメソポルフィリン、クロムメソポルフィリン、鉄メソポルフィリン、アルミニウムメソポルフィリン、チタンメソポルフィリン、ニッケルメソポルフィリン、マンガンメソポルフィリン、銀メソポルフィリン、金メソポルフィリン、バナジウムメソポルフィリン、白金メソポルフィリン、アンチモンメソポルフィリン、ヒ素メソポルフィリン、またはこれらの塩である。他の実施形態において、得られる生成物は、錫メソポルフィリンIX、亜鉛メソポルフィリンIX、銅メソポルフィリンIX、カドミウムメソポルフィリンIX、コバルトメソポルフィリンIX、クロムメソポルフィリンIX、鉄メソポルフィリンIX、アルミニウムメソポルフィリンIX、チタンメソポルフィリンIX、ニッケルメソポルフィリンIX、マンガンメソポルフィリンIX、銀メソポルフィリンIX、金メソポルフィリンIX、バナジウムメソポルフィリンIX、白金メソポルフィリンIX、アンチモンメソポルフィリンIX、ヒ素メソポルフィリンIX、またはこれらの塩である。他の実施形態において、得られる生成物は、錫プロトポルフィリン、亜鉛プロトポルフィリン、銅プロトポルフィリン、カドミウムプロトポルフィリン、コバルトプロトポルフィリン、クロムプロトポルフィリン、鉄プロトポルフィリン、アルミニウムプロトポルフィリン、チタンプロトポルフィリン、ニッケルプロトポルフィリン、マンガンプロトポルフィリン、銀プロトポルフィリン、金プロトポルフィリン、バナジウムプロトポルフィリン、白金プロトポルフィリン、アンチモンプロトポルフィリン、ヒ素プロトポルフィリン、またはこれらの塩である。他の実施形態において、得られる生成物は、錫ヘマトポルフィリン、亜鉛ヘマトポルフィリン、銅ヘマトポルフィリン、カドミウムヘマトポルフィリン、コバルトヘマトポルフィリン、クロムヘマトポルフィリン、鉄ヘマトポルフィリン、アルミニウムヘマトポルフィリン、チタンヘマトポルフィリン、ニッケルヘマトポルフィリン、マンガンヘマトポルフィリン、銀ヘマトポルフィリン、金ヘマトポルフィリン、バナジウムヘマトポルフィリン、白金ヘマトポルフィリン、アンチモンヘマトポルフィリン、ヒ素ヘマトポルフィリン、またはこれらの塩である。他の実施形態において、得られる生成物は、錫ジュウテロポルフィリン、亜鉛ジュウテロポルフィリン、銅ジュウテロポルフィリン、カドミウムジュウテロポルフィリン、コバルトジュウテロポルフィリン、クロムジュウテロポルフィリン、鉄ジュウテロポルフィリン、アルミニウムジュウテロポルフィリン、チタンジュウテロポルフィリン、ニッケルジュウテロポルフィリン、マンガンジュウテロポルフィリン、銀ジュウテロポルフィリン、金ジュウテロポルフィリン、バナジウムジュウテロポルフィリン、白金ジュウテロポルフィリン、アンチモンジュウテロポルフィリン、ヒ素ジュウテロポルフィリン、またはこれらの塩である。
【0026】
別な実施形態において、本発明は、錫(II)酸化物を用いて、ポルフィリン化合物またはその塩の中に錫を挿入する方法を包含する。別の実施形態において、ポルフィリン化合物は、メソポルフィリンもしくはその塩、またはプロトポルフィリンもしくはその塩、またはヘマトメソポルフィリンもしくはその塩である。別の実施形態において、ポルフィリン化合物は、メソポルフィリンIXもしくはその塩である。別の実施形態において、ポルフィリン化合物は、メソポルフィリンIX二塩酸塩である。別の実施形態において、得られる生成物は、錫(IV)ポルフィリンまたはその塩である。別の実施形態において、得られる生成物は、錫(IV)メソポルフィリンもしくはその塩、または錫(IV)プロトポルフィリンもしくはその塩、または錫(IV)ヘマトポルフィリンもしくはその塩である。別の実施形態において、得られる生成物は、錫(IV)メソポルフィリンIXまたはその塩である。
【0027】
別な実施形態において、本発明は、ポルフィリン化合物またはその塩に錫を挿入する方法を包含し、ポルフィリン化合物またはその塩を提供し、錫(II)酸化物を提供し、酸性条件下で、錫(II)酸化物をポルフィリン化合物またはその塩に接触させ、それによって、錫(II)酸化物がポルフィリン環に挿入し、錫(IV)ポルフィリン化合物を生成する。別の実施形態において、錫(II)酸化物は、酢酸またはギ酸、好ましくは、酢酸に溶解または懸濁する。別の実施形態において、ポルフィリン化合物またはその塩は、ギ酸または酢酸、好ましくは、ギ酸に溶解または懸濁する。別の実施形態において、使用されるポルフィリン化合物またはその塩の合計量に対する使用される錫(II)酸化物の合計量の当量比は、約2〜6、好ましくは、約4である。別の実施形態において、ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液は、錫(II)酸化物の溶液に滴状で添加される。滴状の添加は、約3〜9時間、好ましくは、約6時間にわたって行うことができる。錫(II)酸化物の溶液または懸濁液は、約25〜115℃、好ましくは、約50〜75℃、より好ましくは、約60〜65℃の温度に維持される。
【0028】
別な実施形態において、本発明は、ポルフィリン化合物またはその塩(例えば、メソポルフィリンIXまたはその塩、例えば、メソポルフィリンIX二塩酸塩)に錫を挿入する方法を包含し、メソポルフィリン化合物またはその塩(例えば、メソポルフィリンIXまたはその塩、例えば、メソポルフィリンIX二塩酸塩)を提供し、錫(II)酸化物を提供し、酸性条件下で、錫(II)酸化物をメソポルフィリン化合物またはその塩(例えば、メソポルフィリンIXまたはその塩、例えば、メソポルフィリンIX二塩酸塩)に接触させ、それによって、錫(II)酸化物がポルフィリン環(例えば、メソポルフィリンIX環)に挿入し、錫(IV)ポルフィリン化合物を生成する。別の実施形態において、錫(II)酸化物は、酢酸またはギ酸、好ましくは、酢酸に溶解または懸濁する。別の実施形態において、メソポルフィリン化合物またはその塩(例えば、メソポルフィリンIXまたはその塩、例えば、メソポルフィリンIX二塩酸塩)は、ギ酸または酢酸、好ましくは、ギ酸に溶解または懸濁する。別の実施形態において、使用されるメソポルフィリン化合物またはその塩(例えば、メソポルフィリンIXまたはその塩、例えば、メソポルフィリンIX二塩酸塩)の合計量に対する使用される錫(II)酸化物の合計量の当量比は、約2〜6、好ましくは、約4である。別の実施形態において、ポルフィリン化合物またはその塩(例えば、メソポルフィリンIXまたはその塩、例えば、メソポルフィリンIX二塩酸塩)の溶液または懸濁液は、錫(II)酸化物の溶液に滴状で添加される。滴状の添加は、約3〜9時間、好ましくは、約6時間にわたって行うことができる。錫(II)酸化物の溶液または懸濁液は、約25〜115℃、好ましくは、約50〜75℃、より好ましくは、約60〜65℃の温度に維持される。滴状の添加が完了した後、反応混合物を、約60〜65℃の温度にさらに約18〜24時間にわたって維持することができる。反応混合物は、この付加的な反応時間の後に、冷却して濾過することができる。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、錫(IV)ポルフィリン化合物またはその塩の製造方法を包含し、a)非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液を調製し、b)錫(II)酸化物の溶液または懸濁液を調製する工程を含み、ここで、工程a)と工程b)は、任意の順序または同時に行ってよく、および、c)錫(IV)ポルフィリン化合物またはその塩を生成させるのに適切な条件下で、錫(II)酸化物の溶液または懸濁液を、非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液に接触させる工程を含む。錫(II)酸化物の溶液または懸濁液、および非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液は、ギ酸または酢酸を用いて独立して調製することができ、例えば、錫(II)酸化物の溶液または懸濁液は、酢酸を用いて調製することができ、非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液は、ギ酸を用いて調製することができる。非メタル化ポルフィリン化合物は、メソポルフィリン類、プロトポルフィリン類、ヘマトポルフィリン類、およびこれらの塩、例えば、メソポルフィリンIXまたはその塩、例えば、メソポルフィリンIX二塩酸塩から選択される。接触工程c)は、錫(IV)ポルフィリン化合物またはその塩を生成させるのに適切な条件下で、非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液を滴状の状態で、錫(II)酸化物の溶液または懸濁液に添加することを含むことができる。滴状の状態での添加は、約3〜9時間以内、例えば、約6時間で完了することができる。錫(II)酸化物の溶液または懸濁液は、滴状の状態で添加している際、約60〜65℃の温度に維持することができる。非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液を、錫(II)酸化物の溶液または懸濁液に、滴状の状態で添加を完了した後、反応混合物を、約60〜65℃の温度にさらに約18〜24時間にわたって維持することができる。反応混合物は、この付加的な反応時間の後に、冷却して濾過することができる。別な実施形態において、錫(IV)ポルフィリン化合物またはその塩の製造方法は、プロトン捕捉剤またはプロトンスポンジの存在しない中で行われる。
【0030】
上述の任意の方法によって製造した錫(IV)は、さらなる精製工程を経ることができる。ある実施形態において、さらなる精製工程は、珪藻土および/または活性炭を用いて錫(IV)メソポルフィリンを処理することを含む。1つの実施形態において、珪藻土および/または活性炭を用いた錫(IV)メソポルフィリンの処理は、溶媒に錫(IV)メソポルフィリンを溶解または懸濁させ、珪藻土および/または活性炭を添加し、珪藻土および/または活性炭を濾過によって分離し、濾液から錫(IV)メソポルフィリンを回収することを含む。ある実施形態において、付加的な精製は、水中の約0.1〜6NのHCl、好ましくは、水中の約3NのHClの熱酸を用いて、約60〜95℃、好ましくは、約80〜95℃、より好ましくは、約85〜90℃の温度で錫(IV)メソポルフィリンを倍散することを含む。ある実施形態において、珪藻土を用いて処理する、活性炭を用いて処理する、熱酸を用いて倍散する各工程の1、2、または3工程を任意の順序で順次に行い、所望により繰り返すことができる。
【0031】
別な実施形態において、本発明は、本明細書に記載の任意の方法によって製造されるスタンソポルフィンを包含する。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、大規模(バルク)量の高純度スタンソポルフィンを包含し、ここで、その高純度スタンソポルフィンは、貯蔵下で、少なくとも約3箇月または少なくとも約6箇月にわたって安定である。別の実施形態において、単一バッチで、高純度スタンソポルフィンが大量に調製される。別の実施形態において、本発明は、大規模(バルク)量の高純度スタンソポルフィンを包含し、ここで、その高純度スタンソポルフィンは、貯蔵下で、少なくとも約3箇月または少なくとも約6箇月にわたってその高純度を保持する。別の実施形態において、貯蔵条件は、約25℃と相対湿度約60%の条件である。別の実施形態において、約40℃と相対湿度約75%の条件である。別の実施形態において、スタンソポルフィンは、ポリエチレン袋に保管される。別の実施形態において、スタンソポルフィンは、もう1つのポリエチレン袋の中のポリエチレン袋に保管される。別の実施形態において、二重袋のスタンソポルフィンが、高密度ポリエチレンのドラム缶に保管される。別の実施形態において、各ポリエチレンは、約4ミルの厚さである(1インチの約4/1000または約0.1mm)。
【0033】
別の実施形態において、本発明は、幼児の高ビリルビン血症の治療方法を包含し、その治療の必要に応じて患者にスタンソポルフィンを投与することを含み、ここで、そのスタンソポルフィンは、大規模で高純度に製造されたものである。別の実施形態において、スタンソポルフィンは、単一バッチとして製造される。
【0034】
別の実施形態において、本発明は、幼児の高ビリルビン血症の予防方法を包含し、その予防の必要に応じて患者にスタンソポルフィンを投与することを含み、ここで、そのスタンソポルフィンは、大規模で高純度に製造されたものである。別の実施形態において、スタンソポルフィンは、単一バッチとして製造される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の1つの実施形態において、スタンソポルフィンが、高純度で大量に調製される。本発明の別な実施形態において、スタンソポルフィンが、高純度で大量に調製され、ここで、その大量は、単一バッチで調製される。スタンソポルフィン(錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド、ケミカルアブストラクト登録番号106344−20−1)は、商標Stanate(登録商標)としても知られる(インファケア・ファーマシューティカルズ社の商標、プライマウス・ミーティング、ペンシルバニア州)。スタンソポルフィンは、次の構造を有し、分子式C3436ClSnと分子量754.29を有する。
【0036】
【化1】

【0037】
「大量」、「大規模」、または「バルク」とは、少なくとも約10グラムを意味する。スタンソポルフィンの大規模生産についての他の量は、少なくとも約25グラム、少なくとも約50グラム、少なくとも約100グラム、少なくとも約200グラム、少なくとも約500グラム、少なくとも約1.0kg、少なくとも約2.0kg、または少なくとも約5.0kgである。
【0038】
「単一バッチ」とは、特定の製造量が1回で合成されることを意味する。単一バッチは、典型的に、反応(または一連の反応)がひとたび開始されてから製造される(留意すべきことは、繰り返しの精製のように、化合物の単一の調製において全体として1回または複数回にわたって反応が繰り返して行われた場合も、単一バッチとみなされる)。このため、時間を隔ててまたは量を分割して化合物の調製を複数回にわたって行い、その後に混合することは、単一バッチから除外される。
【0039】
「高純度」とは、次の2つの基準の双方を満たす調製物を意味する。1)不純物の全体レベルが少なくとも約97%、即ち、所望の製品(スタンソポルフィン)が、調製物の少なくとも97%を構成する、および、2)製造に関連して存在する何らかの個々の不純物が、調製物の約0.1%未満の量で存在する。不純物は、好ましくは、HPLC分析によって測定される。「製造に関連」した不純物とは、米国食品医薬品局のカイドラインによる評価を必要とする不純物であり、したがって、水のような医薬品の成分は不純物とはみなさない。
【0040】
「非メタル化ポルフィリン」とは、1または複数のピロール窒素によって配位される金属イオンを有しないポルフィリンを意味する。「メタル化ポルフィリン」とは、少なくとも1つのピロール窒素によって配位された金属イオンを有するポルフィリンを意味する。
【0041】
「中間酸化状態」とは、その中性状態(非電荷またはゼロ酸化状態)とその最大酸化状態の間の中間の酸化状態に、金属のような元素が存在する状態を意味する。限定されない例として、鉄は、典型的に、(0)、(II)、(III)の酸化状態を形成し、(II)の酸化状態(第1鉄状態)が中間酸化状態である。
【0042】
調製物の純度は、調合薬としての化合物の使用にとって重要である。純度の全体的レベルは、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約98.5%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.5%であることができる。また、高純度の調製物は、上記のように、存在する個々の不純物が調製物の約0.1%未満の量で存在するといった付加的条件を持つ調製物としても定義される(留意すべきことは、不純物の合計量は0.1%を超えてもよく、例えば、1つの不純物は0.08%で存在し、別な不純物は0.07%で存在し、合計で0.15%であってもよいが、個々に測定したとき、約0.1%に等しいまたは約0.1%を超える量で不純物が存在しないことである)。別の実施形態において、存在する任意の個々の不純物は、約0.09%未満の量で存在する。別の実施形態において、存在する任意の個々の不純物は、約0.08%以下の量で存在する。別の実施形態において、存在する任意の個々の不純物は、約0.07%以下の量で存在する。水は調製物の中に、かなりの量であっても(少なくとも約1〜5%)存在することができるが、不純物とはみなさない。その他の残存溶媒、例えば、アセトン、ギ酸、および酢酸もまた、とりわけ、「ヒトに使用される薬剤の登録のための技術的要請のハーモナイゼーション国際会議、ICH Harmonised Tripartite Guideline --Impurities: Guideline for Residual Solvents, Q3C(R3), Step 4 version, November 2005 (World-Wide-Web.ich.org/LOB/media/MEDIA423.pdf)」のガイドラインに記載の許容レベル以下であるならば、不純物とはみなさない。
【0043】
代わりの実施形態において、スタンソポルフィンは、約0.2%を超える量で存在する不純物を有さず、より好ましくは、約0.15%を超える量で存在する不純物を有さず、さらにより好ましくは、約0.12%を超える量で存在する不純物を有さない。
【0044】
本合成は、上述の高純度に関して掲げた2つの基準を満たすスタンソポルフィンを製造する(少なくとも97%の全体的純度、水または残存溶媒を不純物として扱わない、存在する何らかの個々の不純物が約0.1%未満の量で存在する)。個々の不純物のレベルに関する第2の基準は、法的要請により検討課題となる。アメリカ合衆国の食品医薬品局は、典型的に、0.1%までのレベルの不純物は、詳細な特性評価を要求し、一方、0.1%未満のレベルで存在する不純物は、非常に強力な薬理学的または毒性効果を有しない限り、詳細な特性評価を要求しない。(「Guidance for Industry: ANDAs: Impurities in Drug Substances, U.S. Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research (CDER), November 1999」(World-Wide-Web-site-.fda.gov/cder/guidance/2452fnl.htmのサイトで入手可能);「Guidance for Industry, Q3A Impurities in New Drug Substances, United States Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration, Center for Drug Evaluation and Research (CDER) and Center for Biologies Evaluation and Research (CBER), February 2003 ICH, Revision 1」(World-Wide-Web-site-.fda.gov/cder/guidance/4164fnl.pdfのサイトで入手可能)を参照)。食品医薬品局により設定されたこれらの閾値条件を満たすことにより、高純度材料は、規制上の見地から、低純度の材料を凌駕する有意な長所を有する。
【0045】
本明細書に記載の本発明の別な長所は、大量の高純度スタンソポルフィンの繰り返しハッチを生成する能力を与える、合成の期待される再現性である。本明細書に記載の本発明の別な長所は、種々の国々における法律、規制、または監督官庁の要請に規定されるような、適正製造基準(GMP)の要件に適合する方法と製造の能力である(例えば、United States Code of Federal Regulations, Title 21, Sections 210 and 211に規定の現状の適正製造基準)。
【0046】
本明細書に記載の本発明の別な長所は、単一バッチにおけるスタンソポルフィンの高純度のバルク量の製造であり、併せて、高い均質性、低い合成コスト、および特性評価の相対的容易性の長所を有する。
【0047】
[高純度スタンソポルフィンの合成]
ポルフィリン類は、光に敏感な化合物であり、その出発材料、中間体、生産物、および溶液または懸濁液は、露光から保護し、遮光性容器中の暗い場所で保管するべきである。
【0048】
スタンソポルフィンの合成は、出発材料としてヘミン(鉄(III)プロトポルフィリンIX塩化物)を用いて進行させる。大規模の合成に必要な量は、ブタ赤血球から得られる。ヘミンDMFグレードは、ハリミックス社(レーネン、オランダ)から購入され、この材料は、使用前の精製なしに使用される(供給時の純度はHPLCによると約98%超)。ヘミンは、水素雰囲気下で、炭素上の水素化触媒とともに有機溶媒中で加熱される。この還元工程は、下記の式に示すように、ポルフィリン環からFeイオンを除去し、かつプロトポルフィリンIXのビニル基をエチル基に還元する(即ち、プロトポルフィリンIXをメソポルフィリンIXに変える)ことの双方に役立つ。
【0049】
【化2】

【0050】
好ましい水素化触媒は、炭素上のパラジウムであり、約0.0135〜0.0165当量、好ましくは、約0.015当量の量で使用される。製品中の触媒の残存量が薬剤規格に適合するならば、パラジウム金属粒子、炭素上の白金、白金金属粒子、ニッケル、またはニッケル−アルミニウム触媒などのその他の適切な触媒もまた使用可能である。ニッケル−アルミニウム触媒はラネーニッケルであることができる(ラネーは、W.R. Grace & Co.(ニューヨーク州、ニューヨーク)の登録商標)。好ましい有機溶媒はギ酸である。
【0051】
反応物にヘミンを添加する前に、水素ガスでPd/C触媒を前処理すると、パラジウム不純物が低下し、したがって、最終的なスタンソポルフィン生成物の全体的純度に寄与することが見出された。ヘミン添加の前に触媒の予備的水素化がないと、生成物中に約50ppmのレベルの残存パラジウムが検出され、これは、約20ppmの残存パラジウム未満の製品規格よりもかなり高い。予備的水素化工程を用いると、残存パラジウムは、検出できないレベルまで低下した(約5ppm未満の残存パラジウム)。したがって、改良された合成は、生産物の錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド中で、残存パラジウムのレベルについて、約20ppm未満のパラジウム、好ましくは、約15ppm未満のパラジウム、より好ましくは、約10ppm未満のパラジウム、さらにより好ましくは、約5ppm未満のパラジウムのレベルを与える。触媒の予備的水素化は、約15〜75psi(約1〜5バール、約100000〜500000パスカル)、好ましくは、約30〜50psi(約2〜3.5バール、約200000〜350000パスカル)、より好ましくは、約40psi(約2.75バールまたは275000パスカル)の水素雰囲気下で行うことができる。触媒の予備的水素化の温度は、約25〜60℃、好ましくは、約35〜50℃、約40〜45℃であることができる。触媒の予備的水素化の時間は、約2〜48時間、好ましくは、約6〜24時間、より好ましくは、約8〜16時間、さらにより好ましくは、約12時間であることができる。
【0052】
このように、典型的に、触媒が先ず化学反応器に添加された後、ギ酸溶媒が添加される(例えば、約17.5〜22.5部の溶媒、好ましくは、約20部の溶媒)。溶媒の添加の前に、安全上の理由により、水素を排気し、窒素で反応器を充満することができる。ギ酸の添加を完了した後、窒素雰囲気を、例えば、約40ポンド/平方インチ(約2.75バールまたは275000パスカル)の窒素雰囲気で置き換える。次いで、反応器へのヘミン出発物質の導入前に、温度を約35〜50℃、好ましくは、約40〜45℃に約8〜24時間、好ましくは、約12時間にわたって調節する。次いで、予備的水素化した触媒の懸濁液を冷却した後、反応器にヘミン(溶媒中)を添加する。安全上の目的で、ヘミン導入の際には水素雰囲気を排気し、Pd/C触媒に結合した水素のみを残す。反応器を水素で30〜35psiまで再加圧し、反応物を約20〜25℃で約30分間にわたって攪拌する。次いで、反応物を強く攪拌しながら、約80〜100℃、好ましくは、約85〜90℃に加温し、水素圧力を、約50〜70psi(約3.4〜4.8バールまたは約340000〜480000パスカル)、好ましくは、約55〜60psi(約3.8〜4.2バールまたは約380000〜420000パスカル)に高める。その反応温度を約1〜3時間、好ましくは、約1〜1.5時間にわたって維持する。次いで、反応物を約40〜60℃、好ましくは、約45〜50℃まで降温し、水素圧力を維持して、約18〜48時間、好ましくは、20〜30時間、より好ましくは、約24時間にわたって水素化を継続する。
【0053】
次いで、反応物を冷却し、反応器から水素を排気して降圧する。反応器に、珪藻土(例えば、HYFLO SUPERCEL、カリフォルニア州サンタバーバラ所在のセライト社の登録商標、)、活性炭(例えば、DARCO KB、テキサス州マーシャル所在のNORIT Americas社の登録商標)、および溶媒を添加する。懸濁液を濾過し、濾過ケーキを溶媒で洗浄する。この処理は、その物質から残存鉄と残存パラジウムを除去する役割をする。
【0054】
濾液を真空下で蒸留によって濃縮し(室温または約10〜15℃のような低温で行うことができる)、過剰の溶媒を除去する。次いで、その濃縮した溶液に、沈殿剤、例えば、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)のようなエーテルを、少なくとも約30秒間から少なくとも約3時間にわたって、好ましくは、少なくとも1時間にわたって添加する。MTBEを添加するとき、約17.5〜22.5部で、好ましくは、約20部で添加することができる。
【0055】
懸濁液は、約−15〜−30℃、好ましくは、約−20〜−25℃の温度に冷却することができる。
【0056】
懸濁液は濾過され、濾過ケーキは、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、またはジイソプロピルエーテルなどのエーテルのような有機溶媒ですすぎ洗いされる。濾過が完了した後、ケーキをすすぎ洗いし、次いで、約60℃を超えない温度、例えば、45〜60℃で、その物質を真空オーブン中で乾燥する。
【0057】
溶媒としてギ酸を用いて調製するとき、得られる生成物のメソポルフィリンIXは、ギ酸塩として析出し、これは、水素化工程後のメソポルフィリンIXの分離にとって好ましい形態である。付加的な精製工程の後、メソポルフィリンIXギ酸塩は、塩酸塩に変化する。この工程は、中間体のさらなる精製を提供する。また、以降の錫挿入工程の際のギ酸(または酢酸塩のような他の有機アニオン)のようなプロトン捕捉剤の存在は、そうした捕捉剤が排除されるよりも、高いレベルの不純物をもたらすことが実証されている。したがって、メソポルフィリンIXギ酸塩のギ酸塩アニオンを、プロトンを捕捉する能力または錫挿入工程の際に溶液を緩衝する能力が少ないアニオンで置換することが好ましく、例えば、こうしたアニオンには、塩化物、およびその他のハロゲン化物アニオン、例えば、臭化物またはヨウ化物が挙げられる。
【0058】
水素化工程から分離される中間体がメソポルフィリンIXギ酸塩のとき、これは、珪藻土、活性炭、およびギ酸を入れた(例えば、約10重量%の珪藻土、約20重量%の活性炭、および約10部のギ酸)反応容器に配置され、付加的な精製を受ける。この懸濁液を、例えば、約20〜30℃、好ましくは、約20〜25℃で、約1.5〜2.5時間にわたって攪拌する。次いで、懸濁液を濾過し、濾過ケーキをギ酸、例えば、約5部のギ酸で洗浄する。次いで、得られた濾過溶液を約5〜6体積部まで濃縮する。別な容器に、純水と31%塩酸を充填し、約15部の約1Nの塩酸を調製する。このHCl溶液の約6部を、好ましくは、約20〜25℃の温度で少なくとも約60分間にわたって、約6部の濾液を入れた容器に移し込む。次いで、溶液に、メソポルフィリンIX二塩酸塩(先の合成から入手可能)を用いて種を入れ、好ましくは、少なくとも約2時間にわたって攪拌する。残りの9部の1N塩酸は、強い攪拌下で、好ましくは、少なくとも60分間にわたって、容器に移し込む。次いで、懸濁液を、約20〜30℃、好ましくは、20〜25℃で約2〜3時間にわたってさらに攪拌する。次いで、濾過に供し、純水ですすぎ洗いする。生成物を窒素気流下のフィルター上で乾燥する。
【0059】
先のプロセスにおいて、上記の工程は、固体のメソポルフィリンIXギ酸塩をギ酸中に再度溶かした後、メソポルフィリンIXギ酸塩をメソポルフィリンIX二塩酸塩に変えるために、塩酸にギ酸溶液を添加する。しかしながら、このようにして得られるメソポルフィリンIX二塩酸塩の濾過は、パイロットプラント規模では極めて遅いことが分かっており、完了までに5日間を要し、その後にフィルター上で乾燥するのに約2〜3週間を要する。上記のように、このプロセスの改良を開発し、メソポルフィリンIXギ酸塩のギ酸溶液に、1Nの塩酸溶液を添加する。これは、より迅速に濾過することができるメソポルフィリンIX二塩酸塩を生じることが見出されている。また、この操作の際に、例えば、メソポルフィリンIXギ酸塩のギ酸溶液に1NのHClの添加を開始したとき、または、メソポルフィリンIXギ酸塩のギ酸溶液に1NのHClを添加する途中に、例えば、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%の1NのHClをメソポルフィリンIXギ酸塩のギ酸溶液に添加したときに、種物質の添加を行うこともできる。好ましくは、プロセスに関して直前に説明したように、メソポルフィリンIXギ酸塩のギ酸溶液に1NのHClの40%を添加した後に、種物質を添加する。また、種物質の添加は、より迅速に濾過可能な生成物の生成を助長することができる。これらのプロセスの改良から得られるメソポルフィリンIX二塩酸塩は、数日間ではなくて数時間さらには数分間のオーダーといったようなはるかにより迅速に濾過可能なため、時間とコストの顕著な削減が達成される。即ち、別な実施形態において、少なくとも約10グラムのメソポルフィリンIX二塩酸塩の濾過時間が、約90分間未満、約60分間未満、約45分間未満、約35分間未満、約25分間未満、または約10分間未満まで低下する。さらなる実施形態において、少なくとも約1000グラムのメソポルフィリンIX二塩酸塩の濾過時間が、少なくとも約1日間未満、約12時間未満、約6時間未満、約4時間未満、約3時間未満、または約2時間未満まで低下する。
【0060】
【化3】

【0061】
[錫(II)塩を用いた処理によるメソポルフィリンIX塩酸塩のスタンソポルフィン(錫(IV)メソポルフィリン)への変化]
次いで、メソポルフィリンIX塩酸塩を、酸化条件下で、酢酸のような有機溶媒中で、SnClのような錫(II)塩で処理し、所望の生成物の錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド(スタンソポルフィン)を生成させる。例えば、メソポルフィリンIX二塩酸塩と錫(II)クロリドを容器に入れ、酢酸を約20〜30℃、好ましくは、約20〜25℃で添加する。懸濁した試薬を少なくとも約30分間にわたって攪拌する。強く攪拌しながら、混合物を不活性雰囲気下(例えば、窒素またはアルゴン)で加温し、還流させる。
【0062】
【化4】

【0063】
還流が開始した後、窒素中の酸素約6%の雰囲気を容器のヘッドスペースに導入する。ガスは、約3%から約22%までの酸素であることができ、約6%が、爆発の危険性を抑えるために好ましい。混合物は、約100〜130時間にわたって還流下に維持する。液体を通してガス混合物を散布するまたは泡立たせる代わりに、ヘッドスペースの窒素雰囲気に6%酸素を使用することは、錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリドの収率を高めるのに有益であることが見出されている。錫(II)は、ポルフィリン環に入って窒素とともに複合化することができ、また、ポルフィリン環を離れることもできる。ここで、ポルフィリン環の窒素に未だ結合していない錫(IV)は、環に入って窒素とともに複合化することができない。錫(IV)メソポルフィリンIXを発生させるために、錫(II)は、ポルフィリン環に入り、そしてその場で錫(IV)への酸化に供されなければならない。錫(II)イオンの過度に迅速な酸化は、挿入反応の失速を生じさせることがあり、収率を大きく低下させることがある。したがって、酸化速度の適切な制御が必要とされる。溶媒と酸素/窒素ヘッドスペース雰囲気の界面を経由して混合物の中に酸素を導入することは、最終的生成物の良好な収率とともに妥当な反応速度をもたらす。
【0064】
反応混合物は、所望により、約50〜70℃、好ましくは、約55〜60℃まで降温し、サンプルを取り出し、そして反応物を還流に戻すことによって、挿入工程の間にサンプル採取をすることができる。
【0065】
錫挿入工程の後、反応混合物を冷却し、WFI(注入水)グレードの水を添加する。次いで、懸濁液を濾過し、濾過ケーキをWFI水で洗浄する。次いで、濾過ケーキを真空下に少なくとも4時間置き、残存水を除去する。
【0066】
[錫(II)酸化物での処理によるメソポルフィリンIX二塩酸塩のスタンソポルフィン(錫(IV)メソポルフィリンIX)への変化]
【0067】
【化5】

【0068】
錫(II)酸化物を用いたメソポルフィリンIX二塩酸塩の処理によって、錫をメソポルフィリンIX環の中に挿入することができる。この反応は、上記の錫(II)塩の方法を用いた錫挿入に4日間〜3週間を必要とするのに対比し、完了まで2時間のように短時間で進行することができる。例えば、ギ酸または酢酸のような適切な溶媒中のメソポルフィリンIX二塩酸塩の溶液/懸濁液を、例えば、酢酸またはギ酸のような適切な溶媒中の錫(II)酸化物の溶液/懸濁液に添加する。代表的な手順を、以下および実施例に記載する。
【0069】
メソポルフィリンIX二塩酸塩を、周囲温度のギ酸に溶解/懸濁させる。溶液/懸濁液は、濃い紫色を有するため、溶解を助長するため、メソポルフィリンIX二塩酸塩を出来るだけ細かい粉末に粉砕することが有益である。
【0070】
錫(II)酸化物を外界温度の酢酸に懸濁させて攪拌する。長時間の攪拌の後、錫酸化物の懸濁液を、反応に悪影響を及ぼすことが観察されていないゲルに変化させることができる。メソポルフィリンIX二塩酸塩の添加が開始すると、ゲルは破壊する。錫(II)酸化物の量は、メソポルフィリンIX二塩酸塩の1当量あたり約2当量〜約6当量であり、好ましくは、メソポルフィリンIX二塩酸塩の1当量あたり約4当量の錫(II)酸化物が使用される(この反応において、当量比はモル比と同じである)。
【0071】
錫(II)酸化物の溶液は、約25〜115℃、好ましくは、約50〜75℃、より好ましくは、約60〜65℃の温度に維持される。次いで、メソポルフィリンIX二塩酸塩の溶液を、約3〜9時間にわたって、好ましくは、約6時間にわたって添加する。メソポルフィリンIX二塩酸塩の溶液は、添加の間は、外界温度にあることができ、あるいは、添加の間は、約50〜75℃、例えば、約60〜65℃のような温度に維持することができる。反応混合物は、約25〜115℃、好ましくは、約50〜75℃、より好ましくは、約60〜65℃の温度に、さらに約2〜48時間、好ましくは、さらに約16〜30時間、より好ましくは、さらに約18〜24時間、例えば、さらに約18時間またはさらに約24時間にわたって維持される。さらなる反応時間の後、懸濁液を室温(約20〜25℃)まで冷却し、少なくとも約5分間、好ましくは少なくとも約1時間にわたって攪拌またはかき回し、濾過する。
【0072】
[金属酸化物を用いたポルフィリン類への金属の一般的挿入]
金属酸化物を用いたポルフィリン環への錫の挿入に使用される手順は、金属酸化物を用いた他の金属の挿入にも適用できる。特に有用な金属酸化物は、金属酸化物の金属カチオンが中間酸化状態にある金属カチオンである。この手順は、ポルフィリン化合物類またはその塩、限定されるものではないが、例えば、メソポルフィリンまたはその塩、メソポルフィリンIXまたはその塩、メソポルフィリンIX二塩酸塩、プロトポルフィリンまたはその塩、ヘマトポルフィリンまたはその塩、またはジュウテロポルフィリンまたはその塩が挙げられ、メタル化ポルフィリン化合物(またはその塩)を生成することができる。
【0073】
使用可能な金属酸化物には、限定されるものではないが、酸化錫、酸化亜鉛、酸化銅、酸化カドミウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化銀、酸化金、酸化バナジウム、酸化白金、酸化アンチモン、酸化ヒ素、錫(II)酸化物、亜鉛(II)酸化物、銅(I)酸化物、銅(II)酸化物、カドミウム(II)酸化物、コバルト(II)酸化物、コバルト(III)酸化物、コバルト(IV)酸化物、Co、クロム(II)酸化物、クロム(III)酸化物、クロム(IV)酸化物、クロム(V)酸化物、クロム(VI)酸化物、鉄(II)酸化物、鉄(III)酸化物、Fe、アルミニウム(III)酸化物、チタン(II)酸化物、チタン(III)酸化物、チタン(IV)酸化物、ニッケル(II)酸化物、マンガン(II)酸化物、マンガン(III)酸化物、マンガン(IV)酸化物、マンガン(VII)酸化物、銀(I)酸化物、銀(II)酸化物、金(I)酸化物、金(III)酸化物、バナジウム(II)酸化物、バナジウム(III)酸化物、バナジウム(IV)酸化物、バナジウム(V)酸化物、白金(II)酸化物、白金(IV)酸化物、アンチモン(III)酸化物、アンチモン(IV)酸化物、アンチモン(V)酸化物、ヒ素(III)酸化物、またはヒ素(V)酸化物が挙げられる。
【0074】
本明細書に記載の手順を用い、他のポルフィリン化合物やテトラピロール類もまたメタル化することができ、限定されるものではないが、ポルフィリン類、例えば、ジュウテロポルフィリン類、ジュウテロポルフィリンIX2,4−ビス(エチレングリコール)(8,13−ビス(1,2−ジヒドロキシエチル)−3,7,12,17−テトラメチル−21H,23H−ポルフィン−2,18−ジプロピオン酸)が挙げられる。本明細書に記載の手順を用いてメタル化することが可能なさらなるポルフィリン化合物としては、限定されるものではないが、コプロポルフィリン類、サイトポルフィリン類、エチオポルフィリン類、ヘマトポルフィリン類、メソポルフィリン類、フィロポルフィリン類、プロトポルフィリン類、ピロポルフィリン類、ロドポルフィリン類、ウロポルフィリン類、およびフィトポルフィリン類が挙げられる。ポルフィリン化合物の包括的な列挙が、World-Wide-Web,chem.qmul.ac.uk/iupac/tetrapyrrole/に記載されており、このサイトに記載のポルフィリン類は、本明細書に記載の手順を用いてメタル化することが可能なポルフィリン化合物として、参照により本明細書に組み入れられる。
【0075】
[錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリドの精製:熱酸倍散]
この時点で、不純物を除去するために、粗生成物の錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリドを、熱酸を用いて倍散する。その物質を、塩酸(約0.5N〜2.0N、好ましくは、1N)に再度懸濁させ、穏やかに攪拌しながら、温度を約75〜100℃または約80〜100℃、好ましくは、約85〜95℃、より好ましくは、約85〜90℃に、約1〜2時間にわたって加温する。次いで、懸濁液を、約20〜30℃、好ましくは、約20〜25℃に冷やして濾過し、濾過ケーキを純水ですすぎ洗いし、窒素気流下のフィルター上で乾燥させる。
【0076】
[錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリドの精製:高pHでの処理]
熱酸倍散工程からの物質を、珪藻土、活性炭、水、および水酸化アンモニウムと組み合わせる。温度を約20〜30℃、好ましくは、約20〜25℃に調節し、好ましくは、約1〜2時間にわたって攪拌する。サンプルを採取し、pHが約9であるかまたはそれより高いことを確認する。次いで、好ましくは、混合物をさらに約1〜2時間にわたって攪拌する。次いで、混合物を濾過する。フィルター上に残存する全ての物質を水ですすぎ洗いし、次いで、濾過ケーキを廃棄する。
【0077】
[錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリドの再酸性化]
次いで、濾液を、酢酸と31%塩酸の混合物の中に移し込み、その混合物を約20〜30℃、好ましくは、約20〜25℃に調節する。得られた懸濁液を、好ましくは、約15分間にわたって攪拌し、サンプルを採取し、pHが約1であるかまたはそれより低いことを確認した後、好ましくは、さらに約1〜2時間にわたって再度攪拌する。次いで、懸濁液を濾過し、濾過ケーキを水ですすぎ洗いした後、真空下で残存水を除去する。
【0078】
この段階で、残存する出発物質メソポルフィリンIX二塩酸塩についてサンプル採取する。そのレベルが約0.1%を上回ると、高pH処理とそれに続く再酸性化を必要により繰り返す(例えば、さらに1、2、または3回)。
【0079】
[錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリドのさらなる熱酸倍散]
先の工程からの濾過ケーキを、約2重量部のWFIグレードの水と約1重量部の31重量%HClの、約20〜30℃、好ましくは、約20〜25℃の混合物に再度懸濁させる。穏やかな攪拌下で、この混合物を約80〜100℃、好ましくは、約85〜90℃に、6〜48時間、好ましくは、約12〜24時間、より好ましくは、約16〜18時間にわたって設定した後、約20〜30℃、好ましくは、約20〜25℃に少なくとも約1時間にわたって冷やす。懸濁液を濾過し、塩酸の水溶液(例えば、25重量部のWFIグレードの水に対して約1重量部の31%HCl)を用いて濾過ケーキをすすぎ洗いし、窒素気流下で乾燥させる(50℃以上)。
【0080】
最終的な熱酸処理は、スタンソポルフィンの形態をモノマーに再設定するために役立つ。中性溶液において、スタンソポルフィンは、単量体と二量体の平衡にあり、強酸による処理は、この平衡を単量体の形態に大きく移行させる。
【0081】
スタンソポルフィンの合成における開発研究は、最適な結果を得るためには、ヘミン出発物質の導入前に水素化触媒は予め水素化されるべきであり、ギ酸中のメソポルフィリンIXギ酸塩からのメソポルフィリンIX二塩酸塩の分離は、ギ酸溶液にHCl溶液を添加して開始すべきであり、プロトン捕捉剤の存在は、錫挿入工程の際は避けるべきであり、錫挿入工程の際の酸素導入は、溶液を通したガスの泡立てまたは散布よりも、反応物のヘッドスペースに酸素/窒素の混合物を導入することによって進行させるべきである、ことを示す。これらの最適パラメータに留意し、その他の可変因子、例えば、温度、反応時間、試薬濃度、および試薬の添加順序をある範囲で操作することができ、例えば、濃度と反応時間を指示値の約50〜200%、または指示値の約75〜150%の中で変化させることができ、温度を指示値の約5〜10℃から、本願明細書で規定する高純度を下回るスタンソポルフィンの大規模合成に帰結しない範囲まで、変化させることができる。精製工程と沈殿工程は、スタンソポルフィンの大規模生産の高純度を維持する目的で、必要に応じて繰り返すことができる。
【0082】
[幼児の高ビリルビン血症その他の疾病を治療または防止するためのスタンソポルフィンの治療上の使用]
本発明によって製造されるスタンソポルフィンは、幼児の高ビリルビン血症(幼児の黄疸)の治療または予防のために使用することができる(米国特許第4657902号、同4668670号、国際公開公報WO94/28906、参照)。スタンソポルフィンを使用するさらなる方法は、米国特許第4692440号(ヘムの排泄速度を高める)、国際公開公報WO89/02269(癌治療の毒性に対抗)、米国特許第4782049号(乾癬の治療)、およびその他の刊行物に記載されている。幼児の高ビリルビン血症の治療または予防は、薬学的に許容される媒体にスタンソポルフィンを溶かすことによって行われる。スタンソポルフィンは、好ましくは、適切なpHを維持するように緩衝され得る溶液で提供される。使用可能な緩衝剤には、カチオンとして存在するナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、またはアルミニウムを含むリン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリシン酸塩、グリシルグリシネート、重炭酸塩、炭酸塩、マレイン酸塩、または酢酸塩が挙げられる。ヒスチジンとイミダゾールもまた緩衝剤として使用可能である。リン酸塩の緩衝剤、とりわけ、リン酸ナトリウムの緩衝剤が好ましい。緩衝剤は、新生児の注射可能な薬剤としての使用に、薬学的に許容されなければならない。投与のための溶液のpHは、好ましくは、約7.0〜8.0、より好ましくは、約7.2〜7.9、さらにより好ましくは、約7.4である。溶液のモル浸透圧濃度は、好ましくは、生理学的モル浸透圧濃度にあるかその付近であり、好ましい範囲は、約280mOsm/L〜310mOsm/Lである。スタンソポルフィンは、好ましくは、注射によって投与され、より好ましくは、筋肉注射によって投与される。スタンソポルフィンは、幼児の高ビリルビン血症の治療または予防に十分な量で投与され、典型的に出生時体重の1kgあたり約4.5mgであり、米国特許出願(代理人整理番号No.606952000200、2007年10月4日出願)およびPCT国際出願(代理人整理番号No.606952000240、2007年10月4日出願)(双方とも2006年10月4日出願の米国仮特許出願No.60/849509の優先権を主張)は、出生時体重の1kgあたり1.5mgまたは3.0mgのような少ない用量のスタンソポルフィンを用いる幼児の高ビリルビン血症の治療方法を開示している。
【0083】
米国特許第6818763号、米国特許出願公開第2004/0210048号、および米国特許出願第11/096359号は、とりわけ、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0084】
以下の実施例は、本発明の例証を目的とし、いかなる様式においても本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0085】
実施例1
[高純度スタンソポルフィンの例示的合成]
[ヘミンのメソポルフィリンIXへの初期変化]
200Lのガラス内張り容器(定格圧力150psi)に0.6kgの炭素上5%パラジウムおよび73kgのギ酸を充填する。強く攪拌しながら、反応器を水素で60〜65psiに加圧し、少なくとも12時間にわたって40〜45℃まで加温する。穏やかに攪拌しながら、反応物を20〜25℃に冷やし、水素雰囲気を排気し、反応器に6.0kgのヘミン(DMFグレード)と73kgのギ酸を充填する。反応器を水素で30〜35psiに加圧し、20〜25℃で30分間にわたって攪拌する。
【0086】
強く攪拌しながら、反応物を85〜90℃に加温する。次いで、水素圧力を55〜60psiまで高める。その圧力と温度を1〜1.5時間にわたって維持する。
【0087】
反応物を45〜50℃まで降温し、水素化を55〜60psiで24時間にわたって継続する。次いで、反応物を20〜25℃まで降温し、圧力を下げ、サンプルを採取する。
【0088】
反応物を45〜50℃に加温し、水素で55〜60psiまで加圧し、さらに6時間攪拌する。次いで、反応物を20〜25℃まで降温し、圧力を下げ、サンプルを再度採取する。
【0089】
水素を容器から排気した後、3.0kgのHYFLO SUPERCEL、2.3kgのDARCO KB、および42kgのギ酸を充填する。懸濁液を濾過し、濾過ケーキを122kgのギ酸ですすぎ洗いする。
【0090】
濾液の一部を200Lのガラス内張り容器に移し、10〜15℃に降温し、真空下で蒸留してギ酸を除去する。残存体積が25〜35Lまで低下した後、濾液の残りを移し入れ、25〜30Lの残存体積まで蒸留を継続する。
【0091】
反応温度を20〜25℃に調節し、89kgのメチルtert−ブチルエーテルを少なくとも1時間にわたって添加する。得られた懸濁液を、−25〜−20℃に4時間にわたって冷却する前に、2時間にわたって20〜25℃で攪拌する。
【0092】
懸濁液を濾過し、12kgのメチルtert−ブチルエーテルですすぎ洗いする。中間生成物を60℃以下の真空オーブン中で乾燥する。
【0093】
[珪藻土と活性炭を用いたメソポルフィリンIXギ酸塩の精製]
[メソポルフィリンIXギ酸塩のメソポルフィリンIX二塩酸塩への変換]
中間体を、10重量%のDARCO KB、20重量%のHYFLO SUPERCEL、および10部のギ酸を充填した50Lのガラス内張り容器に移す。懸濁液を20〜25℃で1.5〜2.5時間にわたって攪拌する。
【0094】
懸濁液を濾過して、第2の50Lのガラス内張り容器に入れる。濾過ケーキを5部のギ酸ですすぎ洗いし、廃棄する。濾過溶液を、5〜6部の残存体積となるまで真空蒸留する。
【0095】
第3の容器に純水と31%塩酸を充填し、15部の1Nの塩酸を調製する。6部の濾過溶液を、少なくとも60分間にわたって、20〜25℃の反応器に移し込む。
【0096】
この溶液に、メソポルフィリンIX二塩酸塩を用いて種を入れ、少なくとも2時間にわたって攪拌する。強く攪拌しながら、残りの9部の1N塩酸を、少なくとも1時間にわたって容器に移し込む。
【0097】
得られた懸濁液を、濾過による分離の前に、20〜25℃で2〜3時間にわたって攪拌する。濾過ケーキを、4部の純水ですすぎ洗いする。中間生成物のメソポルフィリンIX二塩酸塩を、窒素気流下のフィルター上で乾燥する。
【0098】
[錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド(スタンソポルフィン)へのメソポルフィリンIX二塩酸塩の変化]
50Lのガラス内張り容器に、1.57kgのメソポルフィリンIX二塩酸塩、1.862kgの錫(II)クロリド、および40.9kgの酢酸を20〜25℃で充填する。穏やかに攪拌しながら、懸濁液を20〜25℃に少なくとも30分間にわたって維持する。
【0099】
窒素下で強く攪拌しながら、混合物を加温して還流する(約115℃)。還流が得られた後、窒素中の6%酸素の雰囲気中を、容器のヘッドスペースに導入する。反応混合物を100〜130時間にわたって還流に維持する。
【0100】
反応混合物を55〜60℃まで降温し、残存メソポルフィリンについてサンプルを採取し、結果を待ちながら、反応混合物を加温して還流に戻す。完了の後、反応物を60〜70℃まで降温し、WFI(注入水)グレードの水15.7kgを充填する。懸濁液の温度を30分間にわたって20〜25℃に調節し、1時間にわたって攪拌する。
【0101】
懸濁液を濾過し、容器とケーキを6.3kgのWFI水ですすぎ洗いする。洗浄を完了した後、ケーキを真空下に少なくとも4時間にわたって置き、残存水を除去する。
【0102】
50Lのガラス内張り容器に、湿り濾過ケーキ、22.4kgの純水、および3.7kgの31%塩酸を20〜25℃で充填する。穏やかに攪拌しながら、混合物の温度を1〜2時間にわたって85〜90℃に調節した後、20〜25℃に降温する。懸濁液を濾過して濾過ケーキを6.3kgの純水ですすぎ洗いする。生成物を窒素気流下のフィルター上で乾燥し、包装する。
【0103】
[珪藻土と活性炭を用いた高pHにおける錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド(スタンソポルフィン)の精製]
50Lのガラス内張り容器に、1.448kgの錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド、0.194kgのHYFLO SUPERCEL、0.066kgのDARCO KB、14.5kgのWFI水、および1.0kgの水酸化アンモニウム26Beを充填する。反応混合物の温度を20〜25℃に調節し、1〜2時間にわたって攪拌する。サンプルを採取し、pHが9を超えることを確認する。次いで、混合物をさらに1〜2時間にわたって攪拌する。この混合物を濾過してガラス受液器に入れる。ケーキを2.9kgの水で洗浄して廃棄する。
【0104】
第2の50Lのガラス内張り容器に、38.2kgの酢酸と2.6kgの31%HClを充填する。温度を20〜25℃に調節する。ガラス受液器からの濾液を、20〜25℃にて少なくとも45分間にわたって第2の50Lの容器に移し込む。ガラス受液器と移液装置を2.1kgのWFI水ですすぎ洗いして容器に入れる。サンプルを採取してpHが1を下回ることを確かめる前に、得られた懸濁液を20〜25℃で15分間にわたって攪拌する。次いで、懸濁液をさらに1〜2時間にわたって攪拌する。
【0105】
懸濁液を濾過し、容器とケーキを1.3kgのWFI水ですすぎ洗いする。洗浄を完了した後、ケーキを少なくとも4時間にわたって真空下に置き、残存水を除去する。
【0106】
濾過ケーキのサンプルを試験のために採取する。残存の出発物質(メソポルフィリンIX二塩酸塩)が許容レベルにあれば、反応を次の工程に進め、そうでなければ、全体の処理を繰り返す(即ち、上記のように水酸化アンモニウムを用いて濾過ケーキを再溶解する)。
【0107】
[単量体の形態に整えるための低pHにおける錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド(スタンソポルフィン)の処理]
湿り濾過ケーキを50Lのガラス内張り容器に戻した後、20.4kgのWFI水と10.2kgの31%塩酸を20〜25℃で充填する。穏やかに攪拌しながら、混合物の温度を85〜90℃に16〜18時間にわたって調節した後、少なくとも1時間にわたって20〜25℃に降温する。懸濁液を濾過し、12.8kgのWFI水の中の0.5kgの31%塩酸の予め混合した溶液で濾過ケーキをすすぎ洗いする。生成物を、窒素気流下の50℃未満にてフィルター上で乾燥し、包装する。
【0108】
実施例2
[錫源として錫(II)酸化物を用いた別の態様の錫挿入工程]
スタンソポルフィンを製造するためのメソポルフィリンIXへの錫の挿入は、錫導入のための試薬として錫(II)酸化物を用いる別な合成ルートによって行うことができる。
【0109】
磁気攪拌棒、クライゼンヘッド、添加漏斗、温度計、コンデンサー、および窒素ガス注入器を備えた暗色の1000mLの三つ口丸底フラスコに8.4gの錫(II)酸化物と200mLの酢酸を20〜25℃で充填し、灰色の懸濁液を作成する。この懸濁液を窒素下で60〜65℃に加温する。
【0110】
攪拌棒を備えた別な250mLの一つ口丸底フラスコに、10gのメソポルフィリンIX二塩酸塩と50mLのギ酸を充填した。この混合物を30分間にわたって20〜25℃で攪拌して溶解させ、20〜25℃の約60mLの濃紫色の懸濁液/溶液を得た(着色溶液のため、完全な溶解の観察は目視上困難であり、メソポルフィリンIX二塩酸塩は、ギ酸添加の前に十分に粉砕すべきである)。
【0111】
錫(II)酸化物/酢酸の懸濁液/溶液の温度を60〜65℃に維持しながら、メソポルフィリンIX二塩酸塩の溶液を添加漏斗に供給し、6時間にわたって錫(II)酸化物/酢酸の懸濁液/溶液に滴下した。フラスコの体積が200mLから260mLに増加し、反応物の外観が、灰色の懸濁液(または白色のゲル)から紫色の懸濁液に、赤色の懸濁液に変化した。
【0112】
添加が完了した後、反応物を、60〜65℃にてさらに18〜24時間にわたって窒素雰囲気下で攪拌した。次いで、温度を60〜65℃に維持しながら、100mLの水を20〜40分間にわたって滴状で添加した。得られた赤色の懸濁液(約360mL)を30分間にわたって20〜25℃で冷却し、少なくとも1時間にわたって攪拌した後、減圧下で濾過に供した(合計の濾過時間は約10〜20分間であった)。濾過ケーキを、20mLの水で2回すすぎ洗いした。約400mLの体積の濾液は濃赤紫色であり、約40〜50gの質量の濾過ケーキもまた濃赤紫色であった。
【0113】
湿り濾過ケーキを注意深く破壊して破片にし、100mLの1NのHClとともに反応フラスコに再度充填した。得られた濃赤紫色の懸濁液を85〜95℃に1時間にわたって加温した。次いで、その懸濁液を20〜25℃まで冷やし、減圧下で濾過し(合計の濾過時間は約20〜30分間であった)、濾液の色は濃赤紫色から茶色であった。濃赤紫色の濾過ケーキを20mLの水で2回すすぎ洗いし、窒素気流下で乾燥し、80〜90℃の高真空下で24時間にわたってさらに乾燥した。合成の種々の繰り返しにおいて、生成物の収率は、16.5gから21.2gまで変化した(70〜90%)。
【0114】
実施例3
[錫源として錫(II)クロリドを用いた代表的合成によって得られる高純度スタンソポルフィンの分析]
実施例1において概要を示した代表的合成方法、および先行方法(米国特許第6818763号、米国特許出願第2004/0210048号参照)を用い、スタンソポルフィンのバッチを調製した。
【0115】
C−18カラム(ゾルバックス・エクステンドC−18、4.6×150mm、3.5μmの粒子径、または同等品)を用いて基本的HPLC分析を行う。検出器は400nmに設定する。溶媒(アセトニトリル、メタノール、および水)はHPLCグレードである。移動相は、16%のアセトニトリル、40%のメタノール、44%の0.5M酢酸アンモニウムであり、pHは5.15である。(酢酸アンモニウム溶液は、440mLのHOに38.5gの酢酸アンモニウムを溶かし、酢酸を用いてpHを5.15に調節することによって調製する。酢酸アンモニウムと酢酸は、双方とも試薬グレードである。次いで、160mLのアセトニトリルと400mLのメタノールを添加し、移動相溶液を混合し、濾過し、使用前に脱ガスする。)流量は1.0mL/分である。スタンソポルフィンのサンプルと対照標準を、1NのNaOH中の0.04mg/mLの濃度で注入するために調製する。スタンソポルフィンと関連化合物は、光に敏感であり、スタンソポルフィンを含む溶液、出発物質、または不純物の対照標準は、不透明容器に保管すべきであり、取り扱いと分析は、光を抑えた条件下で行うべきである。サンプルと標準溶液は、調製の12時間以内に使用すべきである。5μLの分析物溶液を注入し、10分間のランタイムを使用する。スタンソポルフィンの保持時間は典型的に約4.8分間である。カラム温度は60℃に維持する。分析の後、カラムを、80%メタノールと20%水を用い、少なくとも1時間にわたって1.0mL/分で洗浄する。
【0116】
不純物の定量のためのHPLC分析は、ACE5C−18カラムを用い、4.6×250mm、5μmの粒子径、400nmの検出で行う。光に敏感なサンプルと対照標準の保護は、上記のようにして実施する。使用する移動相は、A:30%メタノール、70%水(0.02M酢酸アンモニウムを含む)、pH9.1、および、B:80%メタノール、20%水(0.02M酢酸アンモニウムを含む)、pH9.1である(移動相Aは、1400mLの水に3.0gの酢酸アンモニウムを溶かし、NHOHを用いてpHを9.1に調節し、600mLのメタノールを添加することによって調製し、移動相Bは、400mLの水に3.0gの酢酸アンモニウムを溶かし、NHOHを用いてpHを9.1に調節し、1600mLのメタノールを添加することによって調製し、これらの移動相は、使用前に、混合、濾過、脱ガスをする)。サンプルは、水中の0.5体積%TEAに約0.2mg/mLの濃度で溶かす。サンプルと標準溶液は、調製から12時間以内に使用すべきである。
【0117】
分析は以下の勾配条件を用いて行う。
【0118】

【0119】
ここで、濃度は、示した点の間で線形に変化する。
【0120】
表1は、欄Cに本合成の生成物のHPLC分析、欄Aと欄Bに従来法の合成から得られた生成物の分析を、比較して示す。検出したピークは、スタンソポルフィンの保持時間を1に設定し、スタンソポルフィンに対する保持時間の順序で掲げている。欄Aの分析バッチは1.1kgの量で製造し、欄Cの分析バッチもまた1.1kgの量で製造した。
【0121】
【表1】

【0122】
表1から分かるように、欄Cに示す本合成方法のスタンソポルフィンは、全体の純度が99%を超え、0.1%以上の不純物を全く含まない高純度生成物をもたらした。
【0123】
実施例4
[錫源として錫(II)酸化物を用いた代表的合成によって得られる高純度スタンソポルフィンの分析]
実施例2に記載したような錫挿入工程を用い、3つのバッチでスタンソポルフィンを製造した。3つのバッチの分析は、得られたポルフィリンの純度が99.7%、99.7%、および99.6%であることを示した(スタンソポルフィンの全含有率はそれぞれ96.4%、99.1%、および97.2%)。
【0124】
ゾルバックス・エクステンドC−18カラム、4.6×150mm、厚さ5μmで、HPLC分析を行った。使用した溶出剤は、A:80%の0.05M酢酸アンモニウム、酢酸でpH5.15、および、20%のアセトニトリル、ならびに、B:90%のメタノールと10%のアセトニトリルであった。使用した温度は40℃であった。1.2mL/分の流量を使用し、400nmで検出した。スタンソポルフィンの保持時間は8.8分間であり、メソポルフィリンIXのそれは23.1分間であり、表2に掲げる以下の勾配を使用した。
【0125】
【表2】

【0126】
錫酸化物の挿入方法を用いて製造したスタンソポルフィンの2つのバッチについて、より広範囲な分析を行った。これらの分析を、下記の表3(バッチ重量0.840kg)と表4(バッチ重量1.364kg)に詳しく示す(ここで、a/aは、HPLCピークの面積比を示す)。
【0127】
【表3】

【0128】
【表4】

【0129】
実施例5
[高純度スタンソポルフィンの調製の安定性]
化合物の長期間の安定性を、2つの異なる貯蔵条件下、即ち、25℃(±2℃)と相対湿度60%(±5%)、および40℃(±2℃)と相対湿度75%(±5%)において検討した。化合物の一次包装は、4ミルのポリエチレン袋とし、化合物の二次包装は、4ミルのポリエチレン袋とした。二重袋のスタンソポルフィンを、高密度ポリエチレンのドラム(CurTec(登録商標))の中で保管した。
【0130】
表5と表6は、それぞれ25℃/60%RHと40℃/75%RHの条件下での、表3に記載のバッチについての安定性データを示す。表7と表8は、それぞれ25℃/60%RHと40℃/75%RHの条件下での、表4に記載のバッチについての安定性データを示す。ゼロ箇月の時点についてのデータは、バッチに関する分析から求めた(ゼロ時点は、サンプルを安定性試験チャンバーに配置したときの実際のデータを表す)。サンプルは、貯蔵条件下にサンプルを配置した後、約3箇月と約6箇月に分析した。
【0131】
【表5】

【0132】
【表6】

【0133】
【表7】

【0134】
【表8】

【0135】
引用を特定することによって本明細書において言及した全ての刊行物、特許、および公開特許出願の開示事項は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0136】
本発明を、理解を明確にする目的で、例証と実施例によって詳細に説明したが、ある種の多少の変化や変更が実施できることは当業者には明らかである。したがって、本明細書における説明や実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈するべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約10グラムの量でスタンソポルフィンを含む組成物であって、該スタンソポルフィンは、少なくとも約98.5%の純度であり、存在する個々の不純物はいずれも約0.1%未満の量で存在する組成物。
【請求項2】
少なくとも約100グラムのスタンソポルフィンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該スタンソポルフィンが少なくとも約99%の純度である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
存在する個々の不純物がいずれも約0.09%未満の量で存在する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも約100グラムのスタンソポルフィンを含む請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
該スタンソポルフィンが、単一バッチのスタンソポルフィンの調製である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
a)金属水素化触媒を水素雰囲気に曝して、予め水素化された触媒を作成し、
b)ヘミンを該予め水素化された触媒に接触させ、該ヘミンと触媒を、ヘミンから鉄を除去してヘミンのビニル基をエチル基に還元するのに十分な温度、水素ガス圧力、および時間の1または複数の組み合わせに維持し、それによって、メソポルフィリンIXを生成する、
各工程を含むスタンソポルフィンの製造方法。
【請求項8】
c)制御された酸化速度を用い、メソポルフィリンIXを錫(II)塩と反応させてスタンソポルフィンを生成する工程をさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該金属水素化触媒が炭素上のパラジウムである請求項7に記載の方法。
【請求項10】
該工程a)において、該炭素上のパラジウムが、約45〜50℃の温度で約30〜50psiの水素雰囲気に約8〜16時間にわたって曝される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
メソポルフィリンIXと錫(II)塩との反応が、プロトン捕捉剤が存在しない中で行われる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
該工程c)が、ヘッドスペースを有する反応容器中で行われ、酸化速度が、酸素含有ガスを反応容器のヘッドスペースに導入することによって制御される請求項8に記載の方法。
【請求項13】
該酸素含有ガスが、窒素中の約6%の酸素である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該工程b)の後、該メソポルフィリンIXをメソポルフィリンIXギ酸塩として分離する工程b1)をさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項15】
該工程b1)の後、該メソポルフィリンIXギ酸塩を精製する付加的工程b2)をさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該メソポルフィリンIXギ酸塩を精製する該付加的工程b2)が、該メソポルフィリンIXギ酸塩を珪藻土と活性炭で処理することを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該工程b1)の後、該メソポルフィリンIXギ酸塩をメソポルフィリンIX二塩酸塩に変化させる工程をさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項18】
該メソポルフィリンIX二塩酸塩が容易に濾過可能な請求項17に記載の方法。
【請求項19】
該工程c)の後、スタンソポルフィンを塩基性溶液の中に溶かし、活性炭で処理し、該スタンソポルフィンを再度沈殿させる工程d)をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項20】
該工程d)の後、該スタンソポルフィンを熱い酸性水溶液に倍散する工程e)をさらに含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
a)非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液を調製する工程、
b)錫(II)酸化物の溶液または懸濁液を調製する工程、
ここで、工程a)と工程b)は、任意の順序または同時に行ってよく、および、
c)錫(IV)ポルフィリン化合物またはその塩を生成させるのに適切な条件下で、該錫(II)酸化物の溶液または懸濁液を、該非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液に接触させる工程、
を含む錫(IV)ポルフィリン化合物またはその塩の製造方法。
【請求項22】
該錫(II)酸化物の溶液または懸濁液、および該非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液が、ギ酸または酢酸を用いて独立して調製される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
該錫(II)酸化物の溶液または懸濁液が、酢酸を用いて調製される請求項21に記載の方法。
【請求項24】
該非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液が、ギ酸を用いて調製される請求項21に記載の方法。
【請求項25】
該非メタル化ポルフィリン化合物が、メソポルフィリン類、プロトポルフィリン類、ヘマトポルフィリン類、およびこれらの塩から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項26】
該非メタル化ポルフィリン化合物が、メソポルフィリンIXまたはその塩である請求項21に記載の方法。
【請求項27】
該非メタル化ポルフィリン化合物が、メソポルフィリンIX二塩酸塩である請求項21に記載の方法。
【請求項28】
該工程c)が、錫(IV)ポルフィリン化合物またはその塩を生成させるのに適切な条件下で、該非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液を滴状の状態で、該錫(II)酸化物の溶液または懸濁液に添加することを含む請求項21に記載の方法。
【請求項29】
該滴状の状態での添加が約3〜9時間以内に完了する請求項28に記載の方法。
【請求項30】
該錫(II)酸化物の溶液または懸濁液が、滴状の状態で添加している際、約60〜65℃の温度に維持される請求項28に記載の方法。
【請求項31】
該非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液を、該錫(II)酸化物の溶液または懸濁液に、滴状の状態で添加を完了した後、反応混合物を、約60〜65℃の温度にさらに約18〜24時間にわたって維持する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該錫(IV)ポルフィリン化合物またはその塩を生成させるのに適切な条件下で、該錫(II)酸化物の溶液または懸濁液を、該非メタル化ポルフィリン化合物またはその塩の溶液または懸濁液に接触させる工程が、プロトン捕捉剤またはプロトンスポンジの存在しない中で行われる請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2010−505853(P2010−505853A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531482(P2009−531482)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/021485
【国際公開番号】WO2008/045377
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(509095743)インファケア ファーマスーティカル,コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】