説明

スチレン勾配を有するスチレン−ブタジエン重合体およびその製法

本発明は、スチレンと1,3−ブタジエンに由来する単量体単位を含む重合体を重合する方法を提供する。その方法は、A)重合に使用されるスチレンの全量および溶媒を含む反応器に、重合に使用されるブタジエンの全量の60質量%未満を加える工程、B)反応器に少なくとも1種の開始剤を加え、時間tの間、反応を進行させる工程、C)残りの量のブタジエンを2回以上に分けて反応器に追加する工程を含み、各々のブタジエンの追加について、次に追加されるブタジエンの量は、直前に追加されたブタジエンの量以下であり、ブタジエンの各々の追加について、時間tncの間、ブタジエンを追加し、各々の追加の後、時間tnrの間、反応を進行させる。ただし、nはブタジエンの追加の数であり、そして各々の追加に関し、nは独立に1以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特別の構造を有する高スチレンゴム(SSBR)が、このゴムを製造する方法とともに、発見された。この特別の構造は、分子鎖の両末端においてはスチレン含有量が相対的に低く、そして重合体分子鎖の中央に向かってスチレン含有量が高くなるような、重合体分子鎖上の特別のスチレン勾配を特徴とする。
【背景技術】
【0002】
英国特許第994726号明細書は、(A)1,3−ブタジエンまたはイソプレンからなる少なくとも1種のジエン、および(B)少なくとも1種のビニル置換芳香族化合物から誘導された線状共重合体を開示している。ジエンおよび芳香族化合物は共重合体中にランダムに分布し、そして、共重合体のジエン含有量が、(1)ジエンがブタジエンまたはピペリレンであり、シス−1,4構造が少なくとも30%であり、かつ1,2構造が12%を超えないこと、または(2)ジエンがイソプレンであり、シス−1,4構造が少なくとも70%であり、3,4構造が15%を超えず、かつ1,2含有量が実質的にないことを特徴とする。エラストマー共重合体はリチウム系触媒を使用した共重合法によって作られ、重合したビニル置換芳香族化合物を10〜40質量%を含むべきである。共重合反応の間、単量体比率は、より速く重合するジエン25単量体の増加分の添加によって一定に維持される。共重合体は、より速く重合する単量体の最後の増加分の添加の後に重合を継続することによるより遅く重合する単量体によってテロマー化される(telomerized)かもしれない。
【0003】
欧州特許第0530795号明細書は、重合体主鎖に沿って30ミクロ構造の連続的な変化を有する、連続的に先細になっている重合体および共重合体を調製する方法を開示している。その方法は、非常に小さなエネルギー吸収の複数のガラス転移温度を有する、すなわち定義可能なガラス転移温度がない、重合体および共重合体を製造する。その重合体は、柔軟な分子鎖末端を有し、そして分子鎖の長さに沿って次第に堅くなることが開示されている。
【0004】
欧州特許第0530796号明細書は、35〜70質量%のビニル置換芳香族化合物単量体と30〜65質量%の共役ジエン単量体の分散共重合の方法を開示している。その方法は、液体の脂肪族直鎖炭化水素分散媒質、陰イオン触媒系および少なくとも2つの重合体ブロックを含むブロック共重合体分散剤を含む反応混合物の中で共重合を行うことを含む。重合体ブロックの少なくとも1つは分散媒に可溶であり、重合体ブロックの他の少なくとも1つは分散媒に不溶である。分散剤は、ビニル置換芳香族化合物と共役ジエンのランダム共重合体を分散させるように作用することが開示されており、その共重合体は分散剤の存在下で形成される。
【0005】
欧州特許第0648790号明細書は、共役ジオレフィン単量体(好ましくはブタジエン)30〜65質量%とビニル置換芳香族化合物単量体(好ましくはスチレン)35〜70質量%の混合物の非水分散ランダム重合によって、ゴム状共重合体を調製する連続的な重合方法を開示している。重合は、その場で連続的に調製される、ブロック共重合体の分散剤の存在下で、アニオン重合開始剤触媒系で、液体の脂肪族炭化水素分散媒の中で起こる。分散剤の少なくとも1つのブロックは分散重合反応に先立って連続的に調製され、分散剤の第二のブロックとゴム状共重合体は、分散共重合の間にその場で連続的に調製される。分散剤の第二のブロックは、連続的に生成されたゴム共重合体の重合体構造を有することが開示されている。
【0006】
米国特許第6,903,155号明細書は、重い荷物を運ぶのに適したタイヤ、およびそのようなタイヤのトレッドを形成するためのゴム組成物の使用を開示している。そのゴム組成物は、補強白色充填剤に結合する活性がある官能基をその分子鎖末端の1つ以上に有する少なくとも1種のジエンエラストマーを半分以上含むエラストマーマトリックス、少なくとも50質量%の補強白色充填剤を含む補強充填剤、および補強白色充填剤/官能基含有ジエンエラストマー結合剤を含む。
【0007】
米国特許第3,094,512号明細書は、共役ジエンとビニル置換芳香族化合物のランダム共重合体を調製する方法、1,3−ブタジエン/スチレンランダム共重合体を調製する方法、およびイソプレン/スチレン共重合体を調製する方法を開示している。この特許は、有機リチウム触媒を使用して、そのような重合体を製造する方法を開示している。その方法は、式R(Li)x(Rは、脂肪族基、脂環式基および芳香族基からなる群から選ばれた炭化水素基である。)の触媒および炭化水素希釈剤を含む重合帯域に、4〜5個の炭素原子の共役ジエンおよび、同時にビニル基が核炭素原子に結合したビニル置換芳香族炭化水素を装填することを含む。単量体は、使用された条件の下で、その系の通常の重合の速度より少ない速度で仕込まれる。
【0008】
英国特許出願公開第2110695号明細書は、有機リチウム化合物および必要があればルイス塩基の存在下で炭化水素溶媒中でスチレンとブタジエンを重合させ、その後、生じた重合体をハロゲン化スズ15化合物と結合させることによって得られる、高スチレン含有量を有するスチレン−ブタジエン共重合体を開示している。その共重合体は、その主鎖中に、スズ−炭素結合を有する重合体を少なくとも30質量%含み、結合スチレン含有量が25質量%より多く60質量%以下であり、ブタジエン部分の中のビニル結合の含有量が30%以上50%未満である。
【0009】
英国特許第903,331号明細書は、炭化水素希釈剤と触媒RLix(式中、xは1〜4であり、Rは脂肪族基、脂環式基または芳香族基である。)とを含む重合帯域に、共役ジエンとビニル置換芳香族炭化水素を仕込むことによって調製される、2質量%以下のブロック共重合体を含むランダム共重合体を開示している。単量体は、使用された条件下で、通常の重合の速度より少ない速度で仕込まれる。単量体は、1分あたり全仕込み量の1/10〜1/300が(すなわち10分〜5時間かけて)加えられる。生成物は、5〜20%がビニル、30〜95%がシスおよび0〜60%がトランスである構造を有し、それらはゴム状または液体である。
【0010】
米国特許第6372863号明細書は、(1)第一の重合帯域に、1,3−ブタジエン、スチレン、開始剤および溶媒を連続的に仕込む工程、(2)リビングスチレン−ブタジエン鎖を含む重合体接合剤を生成するために、第一の重合帯域で、全転化率60〜90%まで、1,3−ブタジエンとスチレンを共重合させる工程、(3)第二の重合帯域に重合体接合剤と追加の1,3−ブタジエン単量体とを連続的に仕込む工程(ただし、仕込まれる1,3−ブタジエンの合計量の20〜40%が第二の重合帯域に仕込まれる。)、(4)1,3−ブタジエン単量体の転化率が少なくとも90%になるまで、第二の重合帯域で共重合を継続させる工程(ただし、第二の重合帯域におけるスチレンと1,3−ブタジエンの全転化率は最大95%に制限される。)、(5)第二の反応帯域からリビング分子鎖末端を有するランダムスチレン−ブタジエンゴムの重合体接合剤を抜き出す工程、(6)ランダムスチレン−ブタジエンゴム上のリビング分子鎖末端を殺す工程、および(7)重合体接合剤からランダムスチレン−ブタジエンゴムを回収する工程を含むランダムスチレン30ブタジエンゴムを合成する方法を開示している。第一の重合帯域および第二の重合帯域における共重合は、70℃〜100℃の範囲の温度で行われ、第一の重合帯域に仕込まれるスチレンの量は、ゴムの中に結合されるスチレンの合計量より少なくとも5%多い。
【0011】
米国特許第4,845,154号明細書は、共重合体の末端部分の少なくとも一方において、微分含有量が末端部分の外側の端の方向に鋭くかつ大幅な増加を示すように芳香族ビニル化合物の微分含有量を有する、芳香族ビニル化合物(たとえばスチレン)と共役ジオレフィン(たとえばブタジエン)の共重合体を開示している。好ましい共重合体は、少なくとも30%のビニル含有量を有するスチレン−ブタジエン共重合体である。いくつかの実施態様において、共重合体は、共重合体鎖の5%以下の部分において第一の値から第二の値に変化するスチレン含有量を有し、第二の値は第一の値よりも25多い少なくとも25%の点であり、そして、その部分は共重合体の10%の末端の部分内に存在する。
【0012】
英国特許第1387920号明細書は、スチレンとブタジエンの混合物を同時に反応帯域へ通し、重合体有機ジリチウム化合物(たとえばポリブタジエンジリチウム)の存在下で、好ましくは有機媒質の中で、重合を行うことによって調製された共重合体を開示している。反応の間、単量体混合物は、少なくとも重合速度で、好ましくは重合速度より5〜10%大きい速度で、重合容器に添加される。したがって、反応性の小さい方の単量体スチレンは反応混合物中に増加し、その結果、単量体の添加を停止しかつすべてのブタジエンが反応した後、分子鎖末端に向かって増加する重合体比率を形成し、末端単独重合体ブロックを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】英国特許第994726号明細書
【特許文献2】欧州特許第0530795号明細書
【特許文献3】欧州特許第0530796号明細書
【特許文献4】欧州特許第0648790号明細書
【特許文献5】米国特許第6903155号明細書
【特許文献6】米国特許第3094512号明細書
【特許文献7】英国特許出願公開第2110695号明細書
【特許文献8】英国特許第903331号明細書
【特許文献9】米国特許第6372863号明細書
【特許文献10】米国特許第4845154号明細書
【特許文献11】英国特許第1387920号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
優れたウェットグリップ性/ころがり抵抗/消耗特性を有する新しいゴム配合物に対するニーズがある。さらに、高価な変性剤を必要としないで、経済的に製造することができる新しいゴムに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、スチレンと1,3−ブタジエンに由来する単量体単位を含む重合体を調製する方法を提供し、該方法は、
A)重合に使用されるスチレンの全量および溶媒を含む反応器に、重合に使用されるブタジエンの全量の60質量%未満を加える工程、
B)反応器に少なくとも1種の開始剤を添加し、時間tの間、反応を進行させる工程、
C)反応器に残りの量のブタジエンを2回以上に分けて追加する工程
を含み、
ブタジエンの各々の追加について、次に追加されるブタジエンの量は、直前に追加されたブタジエンの量以下であり、
ブタジエンの各々の追加について、ブタジエンはtncの時間をかけて追加され、そして各々の追加の後、tnrの時間、反応を進行させる(ただし、nはブタジエンの追加の数であり、そして各々の追加について、nは独立して1以上である。)ことを特徴とする。
【0016】
本発明は、また、スチレンと1,3−ブタジエンに由来する単量体単位を含む重合体を含む組成物であって、該重合体はカップリングしていない重合体鎖を含み、カップリングしていない重合体鎖は、各々、スチレン含有量が重合体鎖の中央領域において相対的に高く、重合体鎖の末端領域において相対的に低く、重合体鎖の中央領域と重合体鎖の両末端領域のスチレン含有量の差は、重合体鎖中の重合したスチレンのモルの合計を基準として、1モル%より大きく、好ましくは5モル%より大きく、より好ましくは10モル%より大きいことを特徴とする組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、いくつかの重合例における重合体鎖に沿った微分スチレンプロフィールを示す。Mp=0g/モルは、重合体鎖のアルファ鎖末端を特徴づけ、約250,000g/モルのMpは、重合体鎖(実施例1、実施例2、実施例3および実施例4)のオメガ鎖末端の分子量である。
【図2】図2は、いくつかの重合例(実施例1、実施例2、実施例3および実施例4)について、各追加/重合工程の後の、重合体鎖中の微分スチレン含有量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上に説明したように、本発明はスチレンと1,3−ブタジエンに由来する単量体単位を含む重合体を調製する方法を提供し、
該方法は、
A)重合に使用されるスチレンの全量および溶媒を含む反応器に、重合に使用されるブタジエンの全量の60質量%未満を添加する工程、
B)反応器に少なくとも1種の開始剤を添加し、時間tの間、反応を進行させる工程、
C)反応器に残りの量のブタジエンを2回以上に分けて追加する工程
を含み、
ブタジエンの各々の追加について、次に追加されるブタジエンの量は、直前に追加されたブタジエンの量以下であり、
ブタジエンの各々の追加について、ブタジエンはtncの時間をかけて追加され、そして各々の追加の後、tnrの時間、反応を進行させることを特徴とする。ただし、nはブタジエンの追加の数であり、各々の追加について、nは独立して1以上である。ここで、nは、各々の次のブタジエンの追加について、順序通りに増加する。
【0019】
1つの実施態様においては、工程Bにおいて、時間tは1分〜30分の範囲内で変動する。1つの実施態様においては、tncは、各追加について、独立して、1分〜45分の範囲内で変動する。
【0020】
1つの実施態様においては、tnrは、各追加について、独立して、0〜45分の範囲内で変動する。
【0021】
1つの実施態様においては、工程Aにおいて、重合に使用される溶媒の全量が反応器に添加される。
【0022】
1つの実施態様においては、工程Aにおいて、ブタジエンの全量の50質量%未満が反応器に添加される。
【0023】
1つの実施態様においては、工程Aにおいて、ブタジエンの全量の0.01質量%以上60質量%未満、好ましくは0.5質量%以上50質量%未満が、反応器に添加される。
【0024】
1つの実施態様においては、工程Cにおいて、残りの量のブタジエンが3回に分けて追加される。
【0025】
1つの実施態様においては、工程Cにおいて、残りの量のブタジエンが4回に分けて追加される。
【0026】
1つの実施態様においては、工程Cにおいて、残りの量のブタジエンが5回に分けて追加される。
【0027】
1つの実施態様においては、工程Cにおいて、残りの量のブタジエンが7回に分けて追加される。
【0028】
1つの実施態様においては、重合温度は、0℃〜130℃、好ましくは20℃〜110℃である。重合温度は、重合溶液の中に置かれた電極(たとえばSPEC電極)によって測定することができる。
【0029】
1つの実施態様においては、tncは、各々独立に、3分〜35分の範囲内で変動する。
【0030】
1つの実施態様においては、プロセスはビニル剤を使用しない。
【0031】
別の実施態様においては、ビニル剤はプロセスに添加される。さらなる実施態様においては、ビニル剤はブタジエンの追加の前に工程Aにおいて添加される。
【0032】
1つの実施態様においては、テトラヒドロフラン、グリコールおよびアミンからなる群から選ばれるビニル剤が使用される。さらなる実施態様においては、ビニル剤はテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)である。さらなる実施態様においては、TMEDA/開始剤のモル比が、0.05モル/モル〜10モル/モル、好ましくは0.05モル/モル〜3モル/モルである。
【0033】
1つの実施態様においては、t(n−1)rは1分より長く、nは2以上であり、時間t(n−1)rの間、カップリング剤が反応器に添加される。
【0034】
1つの実施態様においては、カップリング剤は、四塩化スズ、四塩化ケイ素およびケイ素アルコキシド(たとえばケイ素メトキシド)からなる群から選ばれる。
【0035】
1つの実施態様においては、カップリング率は、最終重合体の質量を基準として10〜49質量%、好ましくは15〜35質量%であり、RI検出法を使用して、全面積に対するカップリングした重合体のSECピークの面積から測定される。
【0036】
1つの実施態様においては、tnrは1分より長く、nは3以下であり、そして、時間tnrの間、変性剤が反応器に添加される。
【0037】
1つの実施態様においては、変性剤(または改質剤)は、アミン、アミド、チオグリコール、ケイ素アルコキシド(たとえばケイ素メトキシド)、シラン−スルフィド変性剤からなる群から選ばれる。
【0038】
1つの実施態様においては、変性剤はアミドを含む。
【0039】
1つの実施態様においては、変性剤/開始剤のモル比は、0.05モル/モル〜3モル/モル、好ましくは0.3モル/モル〜1.5モル/モルである。
【0040】
本発明の方法は、ここに記載された2つ以上の実施態様の組合わせを含んでもよい。
【0041】
本発明は、また、本発明の方法によって形成された重合体、およびその重合体を含む組成物をも提供する。
【0042】
1つの実施態様においては、その重合体は、1H−NMRによって測定した重合したスチレンの含有量が、重合した単量体の全質量を基準として、42〜62質量%、好ましくは44〜60質量%)である。
【0043】
1つの実施態様においては、その重合体は、1H−NMRによって測定した重合したスチレンの含有量が、重合した単量体の全質量を基準として、45〜62質量%、好ましくは47〜60質量%である。
【0044】
1つの実施態様においては、その重合体は、1H−NMRによって測定した重合したブタジエンの含有量が、重合した単量体の全質量を基準として、38〜58質量%、好ましくは40〜56質量%である。
【0045】
1つの実施態様においては、その重合体は、1H−NMRによって測定した重合した1,2−ブタジエンの含有量が、重合したブタジエンの全モル数を基準として、3〜50質量%、好ましくは5〜35質量%である。
【0046】
1つの実施態様においては、その重合体は、ムーニー粘度(100℃のML1+4)が、20〜150、好ましくは40〜120である。
【0047】
1つの実施態様においては、その重合体は、ガラス転移温度(T)が100℃〜−45℃、好ましくは−5℃〜−45℃である。
【0048】
本発明は、また、スチレンと1,3−ブタジエンに由来する単量体単位を含む重合体を含む組成物であって、前記重合体はカップリングしていない重合体鎖を含み、カップリングしていない重合体鎖は、各々、スチレン含有量が、重合体鎖の中央領域において相対的に高く、重合体鎖の末端領域において相対的に低く、重合体鎖の中央領域と重合体鎖の両末端領域のスチレン含有量の差は、重合体鎖中の重合したスチレンのモルの合計を基準として、1モル%より大きく、好ましくは5モル%より大きく、より好ましくは10モル%より大きいことを特徴とする組成物を提供する。ここで、スチレン含有量は1H−NMRによって測定される。
【0049】
ここで、重合体鎖の中央領域は、重合体鎖の分子量を基準として、重合体鎖の5%〜95%、好ましくは20%〜70%、より好ましくは40%〜60%である。たとえば、5〜95%の中央領域については、重合体鎖の分子量(M)が300kg/モルである場合は、アルファ鎖末端は0〜15kg/モルであり、中央領域は15〜285kg/モルであり、そしてオメガ鎖末端は285〜300kg/モルである。アルファ鎖末端とオメガ鎖末端は、鎖の末端領域を表わす。
【0050】
1つの実施態様においては、重合体の10〜49%、好ましくは15〜35%(最終重合体の質量を基準とする質量%)はカップリングされ、RI検出法を使用して、全面積に対するカップリングした重合体のSECピークの面積から測定される。
【0051】
1つの実施態様においては、重合体は、アミン、アミド、チオグリコール、ケイ素アルコキシドおよびシラン−スルフィド変性剤からなる群から選ばれる、変性剤(または改質剤)で変性される。
【0052】
1つの実施態様においては、重合体は、重合したスチレンの含有量が、重合した単量体の全質量を基準として、42〜62質量%、好ましくは44〜60質量%である。この含有量は1H−NMRによって測定することができる。
【0053】
1つの実施態様においては、重合体は、重合したブタジエンの含有量が、重合した単量体の全質量を基準として、38〜58質量%、好ましくは40〜56質量%である。
【0054】
1つの実施態様においては、重合体は、重合した1,2−ブタジエンの含有量が、重合したブタジエンの全質量を基準として、3〜50質量%、好ましくは5〜35質量%である。
【0055】
1つの実施態様においては、重合体は、20〜150、好ましくは40〜120のムーニー粘度(100℃のML1+4)を有する。
【0056】
1つの実施態様においては、重合体は、0℃〜−45℃、好ましくは−5℃〜−45℃のガラス転移温度(T)を有する。
【0057】
本発明の組成物は、ここに記載した2つ以上の実施態様の組合わせを含んでもよい。
【0058】
本発明の重合体は、ここに記載した2つ以上の実施態様の組合わせを含んでもよい。
【0059】
本発明は、また、本発明の組成物から形成された少なくとも1つの部品を含む物品をも提供する。
【0060】
1つの実施態様においては、物品はタイヤである。
【0061】
1つの実施態様においては、物品は靴の部品である。
【0062】
本発明の物品は、ここに記載した2つ以上の実施態様の組合わせを含んでもよい。
【0063】
本発明の重合体は特別の構造を有する高スチレンゴム(SSBR)である。この特別の構造は、両鎖端においてスチレン含有量が相対的に低く、そして重合体鎖の中央に向かってスチレン含有量が増加する、重合体鎖に沿った特別のスチレン勾配を特徴とする。最も高いスチレン濃度は、重合体鎖の真ん中にある必要はなく、また、スチレン含有量の増加が両鎖端において対称的である必要はない。
【0064】
SSBRの鎖端において相対的に低いスチレン含有量および重合体鎖の内部において相対的に高いスチレン含有量は、反応器に、溶媒、好ましくは溶媒の全量、恐らくビニル変性剤と一緒に、スチレンの全量、および必要とされるブタジエンの一部のみを仕込むことによって達成される。反応は、目標分子量に従って、たとえばブチルリチウムを仕込むことによって開始される。その後、残りのブタジエンは、ブタジエン量、原料供給流量および/または反応時間が異なる、少なくとも2回の追加に分けて、反応器に仕込まれる。
【0065】
好ましい実施態様においては、この特別の重合体構造は、本発明の重合方法によって達成され、その方法は、溶媒の全量、スチレンの全量、およびブタジエン単量体の一部のみ(重合反応に添加されるブタジエンの全量の60%未満)を仕込むことを含む。ビニル剤(たとえばTHF、グリコール、アミン)が、(ジエンからの)ビニル含量を調節するために使用されてもよく、典型的には、最初の重合混合物に仕込まれる(工程A)。重合は、アニオン重合開始剤(たとえばn−ブチルリチウムまたはs−ブチルリチウム)の添加による典型的な方法で開始される。残りのブタジエンは、ある時間の後に、数回(2回以上)の追加工程で仕込まれる。重合体鎖に沿ってスチレン勾配分布を得るために、各追加は、反応器に仕込まれるブタジエンの量(前の追加におけるブタジエンの量以下)、ブタジエン供給流量、および/または次の反応時間の1つ以上が異なる。
【0066】
最初のすなわち出発原料の混合物に仕込まれるブタジエンの質量比は、もしあればビニル剤の量に依存する。ある種のビニル剤は、また、スチレンランダマイザー(たとえばTHF、TMEDA)としても反応する。ビニル剤を使用しない重合については、ブタジエンのほんの一部のみ(ブタジエンの全量の0.1〜35質量%)が、最初の混合物に添加される。ブタジエンの重合速度は、いかなるビニル剤も使用しないで、スチレンの重合速度の約10倍速い。したがって、重合の初期の結合スチレンは、典型的には、重合のこの段階における重合体の全質量を基準として10〜40質量%の範囲内にある。結合スチレンの量は、出発混合物(工程A)中に存在するスチレンと単量体(スチレンおよびブタジエン)との比率、重合温度、およびビニル剤と開始剤との比率に依存する。ブタジエンの追加の仕込みがなければ、反応混合物からブタジエンが消耗される。そして、反応混合物中のより高いスチレン含有量のために、スチレンの取り込みが増加する。反応を急に止めた重合体試料についての1H−NMRによって、または反応混合物についてのガスクロマトグラフィー分析(未反応ブタジエン)によって、または反応混合物(未反応ブタジエン)についてのFTIRまたはNIRによって測定されるように、スチレンがブロックとして組み込まれる前に、ブタジエンの第一の追加が始まる。これらの手法の1つまたは当技術分野で知られているような他の手法によって、遊離の未反応のブタジエンを監視しなければならない。
【0067】
ビニル剤の量が増加するにつれて、初期の混合物へのブタジエンの仕込み量は、典型的には、増加させなければならない。たとえば、TMEDAがビニル剤として使用されるときは、用いられるブタジエンの全量の40〜60質量%まで増加させなければならない。しかし、典型的に、初期の仕込みにおけるブタジエンの量は、重合で使用されるブタジエンの全量の60%未満である。
【0068】
第一の追加(工程C)において、初期の反応混合物(スチレン、ブタジエン、ビニル剤、開始剤)に仕込まれるブタジエンの追加の開始の時は、(a)出発原料反応混合物中の単量体比率、(b)ビニル剤が使用されるときは、ビニル剤/開始剤の比率、および(c)適用される温度に依存する。また、初期の反応混合物中の開始時のスチレン/ブタジエン比率が高ければ高いほど、最初のブタジエンの追加は早くなる。ビニル剤/開始剤の比率が高ければ高いほど、最初のブタジエンの追加は遅くなる。ほとんどの場合、最初のブタジエンの追加は、55℃〜80℃の範囲中の温度で反応に加えられる。最初のブタジエンの追加は、典型的には、開始剤の仕込みから5〜20分後に始まる。
【0069】
好ましくは、最初のブタジエンの追加および時には2回目のブタジエンの追加は、単量体混合物中のスチレン含有量を減少させることによって、重合体鎖中の増加するスチレン含有量を制御するために使用される。最初の追加と時には2回目の追加におけるブタジエンの供給流量は各々、重合体鎖中の増加するスチレン含有量を得るために減少させられる。最後の1つないし4つのブタジエンの追加の供給流量は、重合体鎖の新しく形成された部分におけるスチレン含有量が鎖の末端に向かって減少していくように調節される。したがって、ブタジエンの仕込み速度は、結局、重合体鎖の成長速度より大きくまたは等しくなり、そして、ブタジエンの原料供給速度と重合体鎖の成長速度の差は、重合中、非常に注意深く増加しなければならない。進行する反応および生じる単量体の減損のために、重合体鎖の全体の成長速度は減少する。重合のこの段階で、ブタジエンの追加は、反応混合物中のブタジエンの過剰に帰着する。したがって、仕込み工程を終了した後、鎖中の結合スチレンの著しい増加なしに、または重合体鎖内のブロックスチレン単量体単位の形成なしに、重合を5〜15分間進行させることが可能である。
【0070】
ブタジエンの原料供給速度は、典型的には、目標スチレンプロフィールを得るために記載された方法で、少なくとも2〜5回調節される。その調節は、原料供給速度の連続的な変更によって、または新しく定義された原料供給速度および量でブタジエンを仕込む新しい工程に変更することによって行うことができる。この工程の後、直ちにブタジエン仕込み工程が続いてもよいし、次のブタジエン仕込み工程の前に、ブタジエンを仕込まないいくらかの時間があってもよい。
【0071】
生じるリビングポリマーは、鎖末端変性および/またはカップリングによって、化学的に変性することができる。目的の用途および充填剤に従って、適切な鎖末端変性剤および/またはカップリング剤を選ばなければならない。よく知られた変性剤としては、ハロゲン化スルフェニル(欧州特許出願公開第1016674号明細書(引用によってここに組み入れられる。)参照)、ベンゾフェノン、イソシアン酸エステル、ヒドロキシルメルカプタン(欧州特許出願公開第0464478号明細書(引用によってここに組み入れられる。)参照)、アクリルアミド化合物(欧州特許出願公開第0334042号明細書(引用によってここに組み入れられる。)参照)が挙げられるが、これらに限定されない。特にカーボンブラック化合物において使用するために、アミン、アミド、イミド、ニトリル変性剤(たとえば欧州特許出願公開第548799号明細書、欧州特許出願公開第510410号明細書、米国特許第513271号明細書、欧州特許出願公開第451604号明細書、欧州特許出願公開第180141号明細書、米国特許第4412041号明細書参照。各々引用によってここに組み入れられる)。他方、限定するものではないがエポキシ含有シランなどの特別のシランが、シリカ充填剤に使用するための重合体鎖末端を変性するために使用される(たとえば、欧州特許出願公開第299074号明細書、欧州特許出願公開第102045号明細書、欧州特許出願公開第0447066号明細書、欧州特許出願公開第0692493号明細書を参照。各々引用によってここに組み入れられる。)。しかしながら、重合体鎖の末端においてスチレン含有量を減少させるために反応系における一定のブタジエン含量をこれらの工程の間中も保証することが重要である。カップリングおよび/または鎖末端変性は、99.7%を超える全単量体転化率で重合を終了した後、通常の方法で、行うことができる。より好ましい方法は、最後の2回の追加工程の反応時間の間に、重合体をカップリングし、および/または重合体を鎖末端変性することである。カップリングしていない重合体鎖は、カップリング剤で別の重合体鎖に結合されなかった。
【0072】
添加剤
1つの実施態様において、重合体は、1種以上の充填剤および加硫剤、ならびに、所望により、追加の成分、限定するものではないが、たとえば促進剤、カップリング剤、および未変性の未架橋のエラストマー重合体(すなわち、変性剤と反応していない、当技術分野において従来の方法で調製され末端処理された、従来の未架橋のエラストマー重合体)と、結合させられ、反応させられる。
【0073】
1つの実施態様においては、重合体配合物は1種以上の充填剤を含み、充填剤は補強剤としての役割を果たす。カーボンブラック、シリカ、炭素−シリカ2相充填剤、粘土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどがその例である。1つの実施態様においては、カーボンブラックとシリカとの組合わせ、炭素−シリカ2相充填剤、または炭素−シリカ2相充填剤とカーボンブラックおよび/またはシリカとの組合わせが使用される。カーボンブラックは、典型的には、ファーネス法によって製造され、50〜200m/gの窒素吸着比表面積および80〜200mL/100gのDBP吸油量を有し、たとえばFEF;HAF、ISAF、またはSAF等級カーボンブラックである。1つの実施態様においては、高凝集型カーボンブラックが使用される。1つの実施態様においては、カーボンブラックまたはシリカは、全エラストマー重合体100質量部に対して、2〜100質量部、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは10〜95質量部の量で加えられる。重合体配合物はまたオイルをも含んでもよい。
【0074】
定義
もし低い方の値と高い方の値の間の少なくとも2つの単位の分離があれば、ここに記載されるいかなる数値範囲も、1単位の増分で、低い方の値から上の方の値までのすべての値を含む。例として、たとえば分子量、メルトインデックスなどのような、組成の、物理的または他の特性が100〜1,000であると記載されるならば、100、101、102などのような個々の値、および100〜144、155〜170、197〜200などのような副次的範囲がすべて、この明細書に明示的に列挙されていると意図される。1未満の数値を含む範囲、または1より大きな分数(たとえば1.1、1.5など)を含む範囲については、1単位は、適宜、0.0001、0.001、0.01または0.1であると見なされる。10未満の1桁数を含む範囲(たとえば1〜5)については、1単位は典型的には0.1であると見なされる。これらは特に意図されたもののほんの例にすぎず、列挙された最も低い値から最も高い値までの数値のすべての可能な組合わせが、この出願において明示的に記載されていると見なされるべきである。ムーニー粘度、分子量および他の特性に関して、ここに説明されるように、数値範囲が列挙されている。
【0075】
用語「組成物」は、ここで用いるときは、その組成物、ならびにその組成物の物質から形成された反応生成物および分解生成物を含む、物質の混合物を含む。
【0076】
用語「重合体」とは、ここで用いるときは、同一の種類か異なる種類かにかかわらず、単量体を重合することによって調製された重合体化合物をいう。したがって、総括的な用語「重合体」は、たった1つの種類の単量体から調製された重合体を指称するために通常使用される用語「単独重合体」、および下に定義されるような用語「共重合体(interpolymer)」を包含する。
【0077】
用語「共重合体(interpolymer)」は、ここで用いるときは、少なくとも2種類の異なる単量体の重合によって調製された重合体をいう。したがって、総括的な用語「共重合体(interpolymer)」は、異なる2種類の単量体から調製された重合体を指称するために通常使用される共重合体(copolymer)、および異なる3種類以上の単量体から調製された重合体を含む。
【0078】
用語は「混合物」または「重合体混合物」は、ここで用いるときは、2種以上の重合体の混合物を意味する。そのような混合物は混和(分子レベルで相分離しない)していてもよいし、混和していなくてもよい。そのような混合物は、相分離していてもよいし、相分離していなくてもよい。そのような混合物は1つ以上のドメイン配置を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよく、ドメイン配置は、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当技術分野において既知の他の方法で測定される。
【0079】
試験方法
カップリングした重合体鎖の割合を測定するためのサイズ排除クロマトグラフィー
重合体の分子量、分子量分布およびカップリング率(CR)は、各々、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、ポリスチレン標準を基準として、測定した。各重合体試料(9〜11mg)を10mLのテトラヒドロフランに溶かし、溶液を作った。0.45μmフィルターを使用して溶液を濾過した。GPCカラム(3 PLgel 10μm MIXED−Bカラムを備えたヒューレット・パッカード・システム1100)の中に100μLの試料を注入した。分子量を分析するための検出器として、屈折率−検出を使用した。分子量は、ポリマー・ラボラトリーズ社(Polymer Laboratories)のEasiCal PS1(Easy AおよびB)ポリスチレン標準を用いた較正に基づいて、ポリスチレンとして計算した。カラムの分解能に依存して、2つ、3つまたは4つのピークが検出され得る。最大の面積を有するピークはカップリングしていない重合体の量に相当する。異なる2〜4つのピークがカラムの分解能に依存して得られた。高分解能では、4つのピークが得られた。最も広い面積を有する最も高いピークは、カップリングしていない線状重合体の量を表わした。分子量Mp(PS)とは、ポリスチレンとして計算された、この線状のカップリングしていない重合体の、分子量Mw,top(最も高い強度(質量)でのM)、最も高い分子質量のMの値を意味する。より高い分子量のより小さなピークは、カップリングした重合体を表わした。カップリング率は、カップリングしていない重合体を含むすべてのピークの全面積を基準として、カップリングした重合体に相当する、すべてのカップリングしたピークの面積の合計の質量分率として計算される。
【0080】
単量体転化率を測定するための重量分析
単量体転化率は、重合中に重合体溶液の固形分濃度を測定することによって決定した。最大の固形分は、TSCmax=(ΣmiBd+ΣmiSt)/(.(ΣmiBd+ΣmiSt+mTMEDA+mNBL+mシクロヘキサン)×100%によって100質量%濃度で得られる。予期された単量体転化率に依存して、約1g〜10gの重合体溶液の試料を、反応器から抜き出し、直接、50mLのエタノールで満たされた200mLの三角フラスコの中に入れた。満たされた三角フラスコの質量は、サンプリング前は「A」、サンプリング後は「B」とした。沈殿した重合体を、秤量した濾紙(ミクロガラス繊維紙、φ90mm、MUNKTELL、質量C)の上に濾過によってエタノールから取り除き、水分分析計HR73(メトラー・トレド(Mettler-Toledo))を使用して、恒量が達成されるまで、140℃で乾燥した。判定規準5が使用された。最後に、スイッチ切断判定規準4を用いて、第二の乾燥期間を適用し、濾紙の上の乾燥試料の最終質量「D」を得た。試料中の重合体含有量は「TSC=(D−C)/(B−A)×100%」として計算した。最後に、単量体転化率は「TSC/TSCmax×100%」として計算した。
【0081】
減少した揮発物を測定するための重量分析
ハロゲン水分分析計HR73(メトラー・トレド)を使用して、残存水分の値が重合体の全量を基準として0.5質量%未満になるまで、約5gの重合体試料を120℃で乾燥した。
【0082】
1H−NMR
ビニルおよびスチレン含有量は、1H−NMRを使用して、ISO 21561−2005に従って、NMR分光計BRUKER Avance 200および5mmデュアルプローブを使用して、測定した。溶媒として、CDCl/TMSを0.05%/99.95%の質量比で使用した。
【0083】
DSC(Tg)
ガラス転移温度Tgは、10K/分の加熱速度を使用した点を除いて、Tmg用のISO 11357−2(1999)に記載された方法で、測定し計算した。次の条件を使用した。
試料の質量:約11mg
試料容器:標準アルミニウム皿
温度範囲:−140〜100℃
加熱速度:10K/分
冷却速度:自然冷却
パージガス:Ar20mL/分
冷却剤:液体窒素
評価方法:半分高さ
装置:ティー・エイ・インスツルメント製DSC 2920
【0084】
ムーニー粘度ML1+4(100℃)
重合体(充填剤もオイルも含まない)のムーニー粘度は、アルファ−テクノロジーズ(Alpha-Technologies)製MV2000Eで、ASTM D 1646(2004)に従って、予熱時間1分、回転子運転時間4分、温度100℃で[ML1+4(100℃)]、測定した。
【0085】
引張強さ、破断点伸び、300%伸長時モジュラス(モジュラス300)および100%伸長時モジュラス(モジュラス100)は各々、ASTM D 412−06に従って、ダンベル・ダイCを使用して、ツウィック(Zwick)Z010引張機(t95、160℃、160〜220バール、周囲雰囲気で硬化した後の2mmの厚さの板から打ち抜いた試料)で測定した。
【0086】
発熱性は、ASTM D 623−07、方法Aに従って、Doli ‘Goodrich’−Flexometer(t95+5分;寸法:高さ:25.4mm、直径17.8mm、160℃、160〜220バール、周囲雰囲気で試験片を硬化)で測定した。
【0087】
tanδ(60℃)は、ガーボー・クォリメーター・テストアンラーゲン社(Gabo Qualimeter Testanlagen GmbH)(ドイツ)製の動的分光計Eplexor 150Nを使用して、60℃で、2Hzの周波数で、0.2%の圧縮動的歪を適用することによって、測定した。指数が小さければ小さいほど、ころがり抵抗が低い(低い方が良い)。
【0088】
tanδ(0℃)は、0℃で、上述したのと同じ装置および負荷条件を使用して、測定した。指数が大きければ大きいほど、ウェット滑り抵抗は良い(高い方が良い)。
【0089】
tanδ測定については、未加硫の重合体配合物を、内径60mmおよび高さ8mmのディスクに加圧成形した。上記の金属ディスクの中にゴム化合物を加圧成形(圧力約200バール)することは、空気を除去し、したがって気泡の混入を回避し、そして視覚的に泡のない均質な化合物物質の形成につながる。加硫プロセス(160℃、t95+5分(注:t95は加硫転化率95%を達成するための時間であり、約10〜22分、周囲雰囲気(空気))の完了後に、直径60mmおよび高さ8mmの均質のディスクが生じる。試験片は、前述の皿から穴を空けられ、直径10mmおよび高さ8mmの寸法を有する。
【0090】
未加硫の試料についてのレオロジー特性の測定は、回転子のない剪断レオメーター(MDR2000E)を使用して、ASTM D5289−07に従って、行ない、スコーチ時間(ts)および加硫時間(tx)を測定する。「t50」および「t95」は、加硫反応の転化率50%および95%を達成するのに必要なそれぞれの時間である。試料片はASTM D5289−07に従って調製された。
【0091】
DIN耐摩耗性はASTM D5963−04に従って測定した。指数が大きければ大きいほど、耐摩耗性は低くなる(低い方が良い)。tanδのための試験片を、記載のとおり、調製した。
【0092】
引裂き強さは、ASTM D624−00に従って、硬化後の2mmの板から打ち抜かれたダイCを使用して、測定した。ショアーA硬度は、ZWICK硬度計ショアーAで、直径50mmの12.5mm試験片を使用して、ASTM D2240−05に従って測定した。
【0093】
反発弾性は、ZWICK 5109 Schob振子型で、直径50mmの12.5mm試験片を使用して、ISO 4662−86に従って測定した。
【実施例】
【0094】
重合
重合は、水分と酸素の排除下で、窒素雰囲気で行なった。
【0095】
試薬
シクロヘキサン(蒸留品)を溶媒として使用した。1,3−ブタジエン(蒸留品)およびスチレン(CaHによって乾燥したもの)を単量体として使用した。テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA(メルク(Merck)))をシクロヘキサンで希釈し、ランダマイザーとして、およびビニルプロモーターとして使用した。四塩化スズ(フルカ(Fluka))もシクロヘキサンで希釈し、カップリング剤として使用した。メタノール(メルク)を反応停止剤として使用した。2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェノール(B.H.T)は、サンビット社(Sunvit GmbH)から入手した。
【0096】
実施例1(TT17)
シクロヘキサン(mCH,0=4980g)、ブタジエン(mBD,0=245.51g)、スチレン(mSt,0=510.92g)およびテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA(2.86ミリモル、mTMEDA,0=13.6g、シクロヘキサン溶液))を、窒素雰囲気下で、10リットルの反応器に仕込み、その混合物を攪拌しながら55℃まで加熱した。次に、4.704ミリモルのn−ブチルリチウム(mNBL,T=12.69g、シクロヘキサン溶液)を、反応混合物の色がやや黄色に変わるまで、混合物に滴下した(不純物と反応させた)(滴定工程)。次に、重合体の目標分子量に対応する6.487ミリモルのn−ブチルリチウム(シクロヘキサン溶液、mNBL,P=17.5g)を、ポンプによって直ちに仕込み、重合を開始した。「n−ブチルリチウム6.487ミリモル」の仕込みの開始時を、初期の重合反応の開始時として使用した。
【0097】
最初の重合工程は、いかなる追加の反応原料を追加して仕込まない、典型的な回分式重合によって特徴づけられた。反応温度は、反応器の壁の中に熱水を循環することによって調節し、重合反応を加速しかつ反応時間を短くするために、6.487ミリモルのn−ブチルリチウムを仕込んだ後、最終重合温度(Tpm)85℃まで、1℃/分の速度で昇温した。
【0098】
最初に仕込んだ原料を15分間反応させた後、第一のブタジエンの追加(mBD,1,=168.83g)を、供給速度11.26g/分、仕込み時間15分で、開始した。この追加の後、反応時間を設けなかった。第二のブタジエンの追加(mBD,2=86.81g)は、第一の追加直後に、供給速度5.79g/分、15分間で、開始した。第二のブタジエンの仕込みが完了した後、反応を5分間進行させた。その後、第三のブタジエンの追加(mBD,3=5.15g)を、供給速度5.15g/分で、開始した。この追加が完了した後、反応をさらに12分間進行させた。この時間の後、第四のブタジエンの追加(mBD,4=5.15g)を、供給速度5.15g/分で、開始した。この追加の後、15分間の反応時間が続いた。
【0099】
反応時間中、第三のブタジエンの後、重合体鎖の一部(重合した鎖の約25%、SECによって測定)をカップリングするために、四塩化スズ(0.423ミリモル、5.24gの溶液)を反応槽に加えた。反応時間中、第四のブタジエンの追加の後、n−メチルピロリドン(5.65ミリモルを含む、シクロヘキサン中の2.38gの溶液)を、重合体鎖端の変性のために、反応槽に加えた。変性重合体は、カーボンブラック充填化合物に使用することができる。
【0100】
最終の重合体懸濁液を外界温度に冷却した。メタノールを、反応を停止するために、撹拌しながら、「2モル/モル」の「メタノール/活性開始剤I」モル比で、加えた。次に、シクロヘキサンにBHT(13ミリモルのBHTを含む8.14g)を溶かした溶液を、重合体懸濁液の中に分配した。その後、100℃で水蒸気ストリッピングによって溶液から重合体を回収した。重合体を、小さなかけらに粉砕し、70℃で空気循環オーブンで30分間乾燥した。最後に、重合体のかけらを、120℃で重量分析によって測定した残存揮発物含有量が0.5%未満に達するまで、空気雰囲気、周囲条件下で乾燥した。
【0101】
実施例2(TT18)
次の変更をして、実施例1を繰り返した。TMEDA(5.179ミリモル)を最初の仕込みに使用した。
【0102】
実施例3(TT15)
次の変更をして、実施例1を繰り返した。最初の仕込みは、2.86ミリモルのTMEDA」の代わりに「4.59ミリモルのTMEDA」を含んでいた。
【0103】
実施例4(TT23)
シクロヘキサン(4989g)、ブタジエン(154.02g)、スチレン(512.02g)およびTMEDA(0.86ミリモル)を、窒素雰囲気で10リットルの反応器に仕込み、混合物を撹拌し、55℃に加熱した。次に、反応混合物の色がやや黄色に変化するまで、n−ブチルリチウム(3.23ミリモル)を(不純物と反応させるために)一滴ずつ仕込んだ(滴定工程)。次に、重合体の目標分子量に対応する、n−ブチルリチウム(6.52ミリモル)を、重合を開始するために、ポンプによって、直ちに仕込んだ。n−ブチルリチウムの主なアリコート(6.52ミリモル)の仕込みの時を、最初の重合工程の開始時として使用した。最初の重合工程は、反応原料を追加で仕込まない、典型的な回分式重合によって特徴づけられた。反応温度は、反応器の壁の中に水を循環することによって加熱または冷却することによって調節し、重合反応を加速しかつ反応時間を短くするために、n−ブチルリチウムの主なアリコートの仕込みから、最終の重合温度(Tpm)85℃まで、1℃/分の速度で昇温した。
【0104】
最初に仕込んだ原料を15分間反応させた後、第一のブタジエンの追加(162.27g)を、供給速度8.1g/分、仕込み時間15分で、開始した。この仕込みの後、反応時間は設けなかった。第二のブタジエンの追加(118.33g)を直ちに開始し、供給速度5.9g/分で20分間行った。次に、第三のブタジエン(57.43g)の追加を供給速度3.82g/分で開始した。ブタジエンの仕込みが完了した後、反応を5分間進行させた。次に、第四のブタジエンの追加(15.72g)を開始し、その後、12分間反応させた。最後に、第五のブタジエンの追加(5.25g)を、供給速度5.1g/分で開始し、その後、15分間、反応させた。
【0105】
第四の追加の反応時間中に、四塩化スズ(0.4349ミリモル)を反応槽に加え、重合体鎖の一部(SECによって測定した、鎖の25%)をカップリングさせた。第五の追加の反応時間中に、5.676ミリモルのn−メチルピロリドンを、重合体鎖端の変性のために、反応槽に加えた。
【0106】
最終の重合体懸濁液を外界温度に冷却した。反応を停止するために、メタノールを「2モル/モル」の「メタノール/活性開始剤I」モル比で撹拌しながら加えた。次に、酸化防止剤を、シクロヘキサンの溶液として、重合体懸濁液の中に分配した。その後、100℃で水蒸気ストリッピングによって溶液から重合体を回収した。その後、重合体を、小さなかけらに粉砕し、70℃で空気循環オーブンで30分間乾燥した。最後に、120℃で重量分析によって測定した残存揮発物含有量が0.5%未満に達するまで、空気雰囲気で周囲条件下で、重合体のかけらを乾燥した。
【0107】
実施例5(TT2310)
鎖端変性剤を使用しないように変更して、実施例4を繰り返した。
【0108】
実施例6(TT2312)
シリカ充填剤を目標とする変性の例として、鎖端変性剤として3−メトキシ−3,8,8−トリエチル−2−オキサ7−チア−3,8−ジシラデカンを使用するように変更して、実施例4を繰り返した。
【0109】
実施例7(TT235M)
実施例4を繰り返した。
【0110】
実施例8(TT238)
シリカ充填剤を目標とする変性の例として、鎖端変性剤として3−メトキシ−3,8,8,9,9−ペンタメチル−2−オキサ−7−チア−3,8−ジシラデカンを使用するように変更して、実施例4を繰り返した。
【0111】
実施例9A、9B、9C、9D、9Eおよび9F
実施例4を繰り返した。
【0112】
重合体の分子量、分子量分布およびカップリング率(CR)は、各々、サイズ排除クロマトグラフィーSECを使用して、ポリスチレン標準を基準として、測定した。ビニルおよびスチレンの含有量は1H−NMRを使用して測定した。ムーニー粘度ML1+4(100℃)は、アルファー・テクノロジーズ社製MV2000Eを使用して測定した。ガラス転移温度Tgはティー・エイ・インスツルメント社(TA-Instruments)製DSC2920を使用して測定した。
【0113】
重合体の物性を、下記の表1および2に示す。
【0114】
【表1】

【0115】
【表2】

【0116】
表1の各試料の微分スチレン含有量を、それぞれ、図1および2に示す。図1は、例として、重合体鎖に沿った微分スチレンプロフィールを表わす。「Mp=0g/モル」は重合体鎖のアルファ鎖端を特徴づけ、「MP約250000g/モル」は、重合体鎖のオメガ鎖端の分子量である(実施例1、実施例2、実施例3および実施例4参照)。
【0117】
図2は、各工程の後の、全単量体転化率(cTTL)に対する、重合体鎖中の微分スチレン含有量(m結合スチレン、i)を表わす。曲線上の最初の点は、最初の重合工程の後、第一のブタジエンの追加のすぐ前の、微分結合スチレンを特徴づける。第二の点は、最初のブタジエンの追加の工程中の、重合体鎖中の微分スチレン含有量を特徴づける。第三の点は、第二のブタジエンの追加の工程中の、重合体鎖中の微分スチレン含有量を特徴づける。最後の点は最後の追加の工程における微分スチレン含有量を特徴づける。
【0118】
代表的な計算−実施例1
第一のブタジエンの追加の工程の開始の直前に、反応器から重合体溶液の試料を抜き出した。その時点の単量体転化率は、その時点までに仕込んだ単量体を基準として、cその時点53.74質量%であると測定され、それは新しく生成した重合体406.5gに相当する。この「406.5g」の量は、最終的に仕込まれた単量体の全量(m単量体=mst,0+mBd,0+mBd,1+mBd,2+mBd,3+mBd,4=1022.4g)に対する転化率に相当し、その転化率は全転化率(cTTL=m重合体/m単量体×100%=39.76%)と呼ばれる。重合体の組成を1H−NMRによって調べたところ、その時点に生成している重合体を基準として、45.3質量%のスチレンからなる、すなわち結合スチレン184.16gであることが分かった。
【0119】
重合体溶液の次の試料は、第一の追加の工程の終わりに抜き出した。その時点の単量体転化率は、この時点までに仕込んだ単量体を基準として、cその時点86.75質量%であると測定され、それは802.7gの重合体に相当し、すなわちこの工程において新しく生成した重合体394.11gに相当する。この「802.7g」の量は、最終的に仕込まれた単量体の全量(m単量体=1022.4g)に対する転化率に相当し、その転化率は全転化率cTTL=m重合体/m単量体×100%とも呼ばれ、(単量体の全配合量を基準として)78.51質量%であった。重合体の組成を1H−NMRによって調べたところ、(生成した重合体の全量を基準として)49.1質量%のスチレンからなる、すなわち結合スチレン394.11gであることが分かった。したがって、この第一の追加の工程において、209.95g(=394.11g−184.16g)の量のスチレンが、新たに「新しく形成された394.11gの重合体」の中に組み込まれ、それはこの重合体鎖部分中の53%(この追加の工程中に新しく生成した重合体を基準とした質量%)のスチレンに相当する。
【0120】
重合体溶液のさらなる試料を、第二の追加の工程の終わりに抜き出した。その時点の単量体転化率はcその時点95.58%(この時点で仕込まれた単量体を基準とした質量%)であると測定され、それは967.4gの重合体に相当し、すなわちこの工程において新しく生成した重合体164.7gに相当した。この「967.4g」の量は、最終的に仕込まれた単量体の全量(m単量体=mst,0+mBd,0+mBd,1+mBd,2+mBd,3+mBd,4=1022.4g)に対する転化率に相当し、その転化率は全転化率(cTTL=m重合体/m単量体×100%)と呼ばれ、94.62%(仕込まれた全単量体を基準とする質量%)である。重合体の組成を1H−NMRによって調べたところ、スチレン49.1%(重合体を基準とした質量%)からなる、すなわち結合スチレン474.98gであることが分かった。したがって、この第二の追加の工程においては、80.87g(=474.98g−384.11g)の量のスチレンが、「164.7gの新しく生成した重合体」の中に組み入れられ、それはこの重合体鎖部分中の49.1%(この追加の工程中に新しく生成した重合体を基準とする質量%)のスチレンに相当した。
【0121】
最後の重合体溶液試料は反応の終わりに抜き出された。その時点の単量体転化率は、cその時点99.46%(仕込まれた単量体を基準とする質量%)であると測定され、それは1016.8gの重合体に相当し、この工程において新たに49.4gの重合体が生成したことに相当する。この1016.8gの量は、最終的に仕込まれた単量体の全量(m単量体=mst,0+mBd,0+mBd,1+mBd,2+mBd,3+mBd,4=1022.4g)に対する転化率に相当し、全転化率(cTTL=m重合体/m単量体×100%)とも呼ばれ、99.46%(仕込まれた全単量体を基準とした質量%)である。重合体の組成を1H−NMRによって調べたところ、スチレン48.7%(生成した重合体を基準とする質量%)からなる、すなわち結合スチレン495.18gであることが分かった。したがって、これらの最後の追加の工程においては、20.21g(=495.18g−474.98g)の量のスチレンが、新たに生成した「49.4g」の重合体の中に組み入れられ、この重合体鎖部分中の40.9%(この追加の工程中に新たに生成した重合体を基準とした質量%)のスチレンに相当した。重合体の最終分子量はMp(PS)=238637g/モルであると分析された。
【0122】
各重合工程の終了時の重合体鎖の分子量は、M工程i=cTTL,工程i×Mp(PS)に従って計算された。各重合工程の終了時の重合体鎖の分子量は以下のように計算される。
・最初の重合工程の終了時の重合体鎖の分子量は、M工程0=39.76%/100%×238637g/モル=94891g/モル、
・第一のブタジエンの追加の工程の終了時の重合体鎖の分子量は、M工程1=78.51%/100%×238637g/モル=187356g/モルと計算され、
・第二のブタジエンの追加の工程の終了時の重合体鎖の分子量は、M工程2=94.62%/100%×238637g/モル=225798g/モルと計算される。
【0123】
図1は、重合体鎖の分子量M(PS)に対する、各工程ごとの、微分スチレン含有量を表わす。
【0124】
図2は全転化率cTTLに対する、各工程ごとの、微分スチレン含有量を表わす。図1および2のプロフィールは各々、上記の分析から導き出された、表3のデータをプロットしたものである。
【0125】
【表3】

【0126】
試料配合物
「380ccバンバリーミキサー」の中で、下記の表4および5に列挙された成分を混ぜ合わせ調合することによって、重合体配合物を調製した。配合物を160℃、160〜220バール、周囲雰囲気(空気)で加硫した。張力特性のために、配合物を、160℃で、t95(95%の「加硫転化率」に硬化するために必要な時間としてのASTM D5289−07によるt95。t95は約10〜22分の範囲内にある。)分間、加硫した。他のすべての特性のために、配合物を、160℃で、t95+5分間、加硫した。量は、すべて、phrゴム(ここで、ゴム=スチレンブタジエン共重合体の量+(存在する場合)ポリブタジエンの量、両成分=100質量単位)を基準とした。当技術分野において知られているように、「phr」は「ゴム100部あたりの部」をいう。
【0127】
【表4】

【0128】
【表5】

【0129】
シリカ充填配合物の特性を、下記の表6および7に示す。2つの比較(UE23−A1およびTG−06−B1)の結果も示す。
【0130】
カーボンブラック充填配合物の特性を、下記の表8A、8Bおよび9に示す。2つの比較(SE SLR−4601(UE23−A1)およびSE SLR−4400(TG06−B1)の結果も示す。
【0131】
表6および7に示すように、本発明の配合物は、より良好な引裂き抵抗(ASTM D624−00(引裂き強さ)、引張強さ)、より良好なウェットグリップ性能(0℃におけるより低い反発弾性および/または0℃におけるより高いtanδ;タイヤの優れたウェットグリップ挙動を示すために使用される試験)、より良好な耐摩耗性(DIN摩耗)、同様のころがり抵抗におけるすべての特性(60℃における反発弾性および/または60℃におけるtanδ;タイヤのころがり抵抗を示すために使用される試験)、シリカ充填標準コンパウンドにおける商用の比較ゴムに匹敵するすべての特性を示す。
【0132】
表8A、8Bおよび9に示すように、本発明の配合物は、より良好な引張性能(引張強さ)、ウェットグリップ性能(0℃におけるより高いtanδ)、およびより良好な耐摩耗性(DIN摩耗)、同様のころがり抵抗におけるすべての特性(60℃における反発、60℃におけるtanδ、および/または発熱性(HBU);タイヤのころがり抵抗を示すために用いられる試験)、カーボンブラック充填標準コンパウンドにおける商用の比較ゴムに匹敵するすべての特性を示す。
【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
【表8】

【0136】
【表9】

【0137】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンおよび1,3−ブタジエンに由来する単量体単位を含む重合体を重合する方法であって、該方法は、
A)重合に使用されるスチレンの全量および溶媒を含む反応器に、重合に使用されるブタジエンの全量の60質量%未満を加える工程、
B)反応器に少なくとも1種の開始剤を加え、時間tの間、反応を進行させる工程、
C)反応器に残りの量のブタジエンを2回以上に分けて追加する工程
を含み、
ブタジエンの各々の追加について、次に追加されるブタジエンの量は、直前に追加されたブタジエンの量以下であり、
ブタジエンの各々の追加について、ブタジエンはtncの時間をかけて追加され、そして各々の追加の後、tnrの時間、反応を進行させる(ただし、nはブタジエンの追加の数であり、そして各々の追加について、nは独立して1以上である。)、方法。
【請求項2】
工程Bにおいて、時間tが1分〜30分の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各々の追加についてのtncが、独立に、1分〜45分の範囲内である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各々の追加についてのtnrが、独立に、0〜45分の範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程Cにおいて、残りの量のブタジエンが3回に分けて追加される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ビニル剤が工程に加えられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ビニル剤がテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(n−1)rは1分より長く、nは2以上であり、そして時間t(n−1)rの間、カップリング剤が反応器に加えられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
カップリング剤が、四塩化スズ、四塩化ケイ素およびケイ素アルコキシドからなる群から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
nrが1分より長く、nが3以上であり、そして時間tnrの間、変性剤が反応器に加えられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
変性剤が、アミン、アミド、チオグリコール、ケイ素アルコキシドおよびシラン−スルフィド変性剤からなる群から選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法によって形成された重合体。
【請求項13】
重合体が、重合した単量体の全質量を基準として、42〜62質量%の重合したスチレン含有量を有する、請求項12に記載の重合体。
【請求項14】
重合体が、重合したブタジエンの全質量を基準として、3〜50質量%の重合した1,2−ブタジエン含有量を有する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の重合体。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の重合体を含む組成物。
【請求項16】
スチレンと1,3−ブタジエンに由来する単量体単位を含む重合体を含む組成物であって、該重合体はカップリングしていない重合体鎖を含み、各々のカップリングしていない重合体鎖は、スチレン含有量が重合体鎖の末端領域よりも重合体鎖の中央領域において高く、そして重合体鎖の中央領域と重合体鎖の両末端領域におけるスチレン含有量の差が、重合体鎖中の重合したスチレンの全モル数を基準として、1モル%より大きい、好ましくは5モル%より大きい、より好ましくは10モル%より大きい、組成物。
【請求項17】
(最終的な重合体の質量を基準として)重合体の10〜49質量%、好ましくは15〜35質量%がカップリングしている、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の組成物から形成された少なくとも1つの部品を含む物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−519994(P2011−519994A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507541(P2011−507541)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/041483
【国際公開番号】WO2009/134665
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510288530)スティロン ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【Fターム(参考)】