説明

ステアリング装置

【課題】座屈部が破断したとしても、転舵輪の操舵を継続させること。
【解決手段】第2ロッド22は、座屈部31を備えるとともに、座屈部31には溝32が形成されている。また、第2ロッド22は、タイロッド20における座屈部31を跨いだ両側を接続するとともにタイロッド20に加わる荷重に対して弾性変形可能な接続部41,42を備えている。そして、タイロッド20に所定荷重以上の荷重が加わった際に、応力集中部に集中して応力が加わることで座屈部31が破断する。さらに、各接続部41,42はタイロッド20に荷重が加わると弾性変形するため、各接続部41,42に加わった荷重が弾性変形することで吸収され、応力が局部的に集中し難く破断しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置は、ステアリングホイールが固定されたステアリングシャフトがラックアンドピニオン機構を介してラック軸に連結されている。ステアリング操作に伴うステアリングシャフトの回転は、ラックアンドピニオン機構によりラック軸の往復直線運動に変換される。ステアリングシャフトの回転に伴うラック軸の往復直線運動が、ラック軸の両端に連結されたタイロッドを介してナックルに伝達されることにより、転舵輪の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0003】
ところで、例えば、転舵輪が縁石に衝突して、転舵輪に過大な荷重が加わり、その荷重によりラックアンドピニオン機構が破損してしまうことを回避するため、タイロッドの一部を座屈させるようにしたものが、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1のロッドユニットは、インナーボールジョイントから延びる第1ロッドと、アウターボールジョイントから延びる第2ロッドと、第1ロッドと第2ロッドとを同軸に接続する座屈部材とから構成されるタイロッドを備えている。座屈部材は、鋼製の長尺部材であるとともに、略円筒形状に形成されている。座屈部材の中間部分には、座屈部としての楕円筒部が形成されている。楕円筒部は、横断面形状が外郭楕円形をなしている。そして、タイロッドに過大な荷重が加わった際には、楕円筒部が座屈する。楕円筒部が座屈することで過大な荷重がラックアンドピニオン機構に伝わることが防止され、ラックアンドピニオン機構が破損してしまうことを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−137660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のロッドユニットでは、楕円筒部が耐え得ることが可能な荷重以上の過大な荷重(所定荷重以上の荷重)がタイロッドに加わると、楕円筒部が一気に破断してしまう場合がある。楕円筒部が破断してしまうと、破断した側のタイロッドを介する転舵輪の操舵ができなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、座屈部が破断したとしても、転舵輪の操舵を継続させることができるステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ステアリング操作に伴うステアリングシャフトの回転を、ラックアンドピニオン機構によりラック軸の往復直線運動に変換し、前記ラック軸の往復直線運動を、ラック軸の両端に連結されたタイロッドを介してナックルに伝達させることにより、前記ナックルに組み付けられた転舵輪の舵角を変更するステアリング装置において、前記タイロッドは、前記タイロッドに荷重が加わることで局部的に集中して応力が加わる応力集中部を有する座屈部と、前記タイロッドにおける前記座屈部を跨いだ両側を接続するとともに前記タイロッドに加わる荷重に対して弾性変形可能な接続部と、を備え、前記接続部は、前記座屈部が前記応力集中部から破断した状態において、前記タイロッドにおける前記座屈部の両側を接続していることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、例えば、転舵輪が縁石に衝突して、転舵輪に過大な荷重が加わり、タイロッドに所定荷重以上の荷重が加わった際に、応力集中部に集中して応力が加わることで座屈部が破断する。よって、タイロッドに加わった荷重がラックアンドピニオン機構に伝達することが防止されるため、ラックアンドピニオン機構が破損してしまうことを回避することができる。さらに、接続部はタイロッドに荷重が加わると弾性変形する。接続部に加わった荷重は、接続部が弾性変形することで吸収されるため、応力が局部的に集中し難くなる。よって、座屈部が破断したとしても、接続部はタイロッドに加わる荷重によって破断することなく、タイロッドにおける座屈部よりも両側を接続部により接続することができる。その結果、座屈部が破断したとしても、転舵輪の操舵を継続させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のステアリング装置において、前記座屈部の座屈し難い方向と前記接続部の座屈し難い方向とが直交していることを要旨とする。
上記構成によれば、座屈部が破断する前の状態では、座屈部の座屈し難い方向及び接続部の座屈し難い方向に沿った荷重がタイロッドに加わったとしても、座屈部及び接続部によりタイロッド自体の剛性が保たれるため、タイロッド自体の強度(剛性)を高くすることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のステアリング装置において、前記座屈部と前記接続部とを連結する連結部が設けられていることを要旨とする。
上記構成によれば、座屈部と接続部とが連結部により連結されているため、タイロッド自体の強度(剛性)をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、座屈部が破断したとしても、転舵輪の操舵を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は実施形態におけるステアリング装置の概略構成図、(b)はタイロッドの断面図。
【図2】座屈部及び接続部周辺の平面図。
【図3】図2におけるA−A線断面図。
【図4】座屈部が座屈した状態を示す断面図。
【図5】座屈部が破断した状態を示す断面図。
【図6】連結部による座屈部と接続部との連結が解除された状態を示す平面図。
【図7】図6におけるB−B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1(a)に示すように、ステアリング装置1において、ステアリングホイール2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラムシャフト6、インターミディエイトシャフト7、及びピニオンシャフト8を連結してなる。また、ラック軸5の両端には、インナーボールジョイント15を介してタイロッド20の一端がそれぞれ回動自在に連結されている。タイロッド20の他端は、アウターボールジョイント16を介して転舵輪10が組み付けられたナックル11に連結されている。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動がタイロッド20を介してナックル11に伝達されることにより、転舵輪10の舵角、即ち車両の進行方向が変更される。
【0014】
図1(b)に示すように、インナーボールジョイント15において、ラック軸5の端部に連結される有底筒状をなす第1ハウジング15a内には樹脂シート15bが収容されている。また、第1ハウジング15a内において、樹脂シート15bの内側には第1ボールスタッド15sの第1球頭部15cが樹脂シート15bに対して摺動可能に支持されている。なお、第1ハウジング15aの底部15dには、ラック軸5の端部に連結される連結部15eが設けられている。
【0015】
第1ボールスタッド15sにおいて、第1球頭部15cには第1ロッド21がアウターボールジョイント16側に向けて延びるように設けられている。第1ロッド21は円柱状をなすとともに、第1ロッド21の先端部211(アウターボールジョイント16側の端部)の外周面には雄ねじ21aが形成されている。
【0016】
アウターボールジョイント16において、有底筒状をなす第2ハウジング16a内には樹脂シート16bが収容されている。そして、第2ハウジング16a内において、樹脂シート16bの内側には第2ボールスタッド16sの第2球頭部16cが摺動可能に支持されている。第2ボールスタッド16sにおいて、第2球頭部16cにはスタッド軸16eが一体に設けられている。また、第2ハウジング16aの開口側には筒状のカバー16fが設けられている。
【0017】
第2ハウジング16aには、第2ハウジング16aからインナーボールジョイント15側に向けて延びる第2ロッド22が一体に設けられている。第2ロッド22は、四角柱状をなしている。第2ロッド22の先端部221(インナーボールジョイント15側の端部)には、第1ロッド21の雄ねじ21aが螺合可能な雌ねじ22aが形成されている。そして、第1ロッド21の雄ねじ21aが第2ロッド22の雌ねじ22aに螺合されることで、第1ロッド21と第2ロッド22とが同一軸線L1上に接続される。よって、本実施形態では、第1ロッド21及び第2ロッド22によりタイロッド20が構成されている。
【0018】
タイロッド20(第1ロッド21及び第2ロッド22)は車両の左右方向(図1(b)における矢印X1の方向)に沿って軸線L1が延びるように設けられている。なお、タイロッド20の軸線L1に沿った方向をタイロッド20の軸方向とする。また、第2ロッド22において、車両の前後方向(図1(b)の紙面垂直方向)に沿った方向を第2ロッド22の幅方向とするとともに、車両の上下方向(図1(b)における矢印Y1の方向)に沿った方向を第2ロッド22の厚み方向とする。
【0019】
第2ロッド22における軸方向の中央よりも第2ハウジング16a寄りには座屈部31が設けられている。座屈部31は、その厚みが第2ロッド22の先端部221(第1ロッド21側)及び基端部222(第2ハウジング16a側)の厚みよりも薄くなっている。図2に示すように、座屈部31は、その幅が第2ロッド22の先端部221及び基端部222の幅と同じになっている。図3に示すように、座屈部31は、座屈部31の幅が座屈部31の厚みよりも長くなるように形成されている。
【0020】
図2に示すように、座屈部31の上面31aには、第2ロッド22の軸方向に直交し、且つ幅方向[車両の前後方向(図2における矢印Z1の方向)]に沿って延びる溝32が形成されている。溝32は、第2ロッド22の幅方向全体に亘って延びるように形成され、第2ロッド22の幅方向の一端側の後側面22bから幅方向の他端側の前側面22cまで延びるように直線状に形成されている。
【0021】
第2ロッド22の後側面22b及び前側面22cには、一対の接続部41,42が一体成形されている。各接続部41,42は薄板の金属より形成されている。接続部41の一端41aは第2ロッド22の基端部222における後側面22bに接続されるとともに、他端41bは第2ロッド22の先端部221における後側面22bに接続されている。また、接続部42の一端42aは第2ロッド22の基端部222における前側面22cに接続されるとともに、他端42bは第2ロッド22の先端部221における前側面22cに接続されている。そして、各接続部41,42は、座屈部31を跨ぐように第2ロッド22の後側面22b及び前側面22cに接続されている。各接続部41,42は、車両の後方側、又は車両の前方側に向けて膨らむように弧状に湾曲している。
【0022】
図3に示すように、各接続部41,42は、各接続部41,42の長手方向(一端41a,42aから他端41b,42bへの方向)と直交する幅方向(いわゆる直角方向)が、車両の上下方向に沿うように設けられている。言い換えると、各接続部41,42は、その幅方向が、座屈部31の幅方向に対して直交する方向へ延びるように設けられている。各接続部41,42の一端41a,42aから他端41b,42bまでの長さは、各接続部41,42の幅よりも長くなっている。
【0023】
図2に示すように、第2ロッド22の後側面22b及び前側面22cには、座屈部31と各接続部41,42とを連結する連結部51,52が設けられている。各連結部51,52の一端51a,52aは、車両の前後方向に延びるとともに溝32を通過する直線L2上に位置するように第2ロッド22の後側面22b及び前側面22cに連結されている。また、各連結部51,52の他端51b,52bは、各接続部41,42における座屈部31と対向する面41c,42cに連結されている。
【0024】
図3に示すように、座屈部31は、座屈部31の幅方向の長さが座屈部31の厚みよりも長くなるように形成されているため、車両の上下方向に沿った圧縮荷重が座屈部31に加わると撓み易く(座屈し易く)、車両の前後方向に沿った圧縮荷重が座屈部31に加わると、車両の上下方向に沿った荷重が加わった場合に比べて撓み難い(座屈し難い)。すなわち、座屈部31は、その幅方向(車両の前後方向)の剛性が厚み方向(車両の上下方向)よりも高くなっている。
【0025】
一方、各接続部41,42は、板厚が薄く、各接続部41,42の一端41a,42aから他端41b,42bまでの長さが各接続部41,42の幅よりも長くなっている。よって、各接続部41,42は、車両の前後方向に沿った圧縮荷重がタイロッド20に加わると撓み易く(座屈し易く)、車両の上下方向に沿った圧縮荷重がタイロッド20に加わると、車両の前後方向に沿った圧縮荷重が加わった場合に比べて撓み難い(座屈し難い)。すなわち、各接続部41,42は、その幅方向(車両の上下方向)の剛性が厚み方向(車両の前後方向)よりも高くなっている。よって、本実施形態では、座屈部31の座屈し難い方向と、各接続部41,42の座屈し難い方向とが直交している。
【0026】
そして、車両の前後方向に剛性が高い座屈部31と、車両の上下方向に剛性が高い各接続部41,42とが、連結部51,52により連結されている。よって、例えば、車両の前後方向に沿った圧縮荷重がタイロッド20に加わると、各接続部41,42は撓み易いが、座屈部31の幅方向の剛性が高いため、タイロッド20全体として、車両の前後方向に加わる荷重に対して耐え得る構成になっている。また、例えば、車両の上下方向に沿った圧縮荷重がタイロッド20に加わると、座屈部31は撓み易いが、各接続部41,42の幅方向の剛性が高いため、タイロッド20全体として、車両の上下方向に加わる荷重に対して耐え得る構成になっている。
【0027】
また、座屈部31には、車両の前後方向に沿って延びる溝32が形成されているため、車両の左右方向に沿った圧縮荷重が座屈部31に加わった場合、図4に示すように、座屈部31における溝32を挟んだ両側の部位31c,31d同士が互いに接近するように変位する。その結果、座屈部31の下面31bにおける溝32に対向する応力集中部311bに集中して応力が加わるため、座屈部31は、応力集中部311bから座屈し易い。
【0028】
また、各接続部41,42は、一端41a,42a及び他端41b,42bを基点にして座屈部31に対して接離する方向へ弾性変形し易くなっているため、車両の左右方向に沿った圧縮荷重がタイロッド20に加わると、各接続部41,42が座屈部31に対して離間する方向へ弾性変形する。各接続部41,42に加わった荷重は、各接続部41,42の弾性変形により吸収され、応力が局部的に集中し難くなるため、車両の左右方向に沿った圧縮荷重がタイロッド20に加わったとしても、各接続部41,42は破断しない。
【0029】
次に、本実施形態の作用について説明する。
車両が走行している際に、転舵輪10が縁石等に衝突して、転舵輪10に過大な荷重が加わると、この荷重がタイロッド20に伝達して、タイロッド20に対して車両の上下方向、左右方向及び前後方向に荷重が加わることになる。このとき、各接続部41,42が、車両の上下方向において剛性を有しているため、タイロッド20に対して加わる車両の上下方向への荷重に対して耐え得る。また、座屈部31が、車両の前後方向において剛性を有しているため、タイロッド20に対して加わる車両の前後方向への荷重に対して耐え得る。
【0030】
また、図4に示すように、タイロッド20に対して加わった車両の左右方向への荷重により、座屈部31は、応力集中部311bから座屈し、座屈部31全体が車両の下方向に落ち込む。そして、タイロッド20の所定荷重以上の荷重が加わると、応力集中部311bに応力がさらに集中して加わり、図5に示すように、座屈部31が、応力集中部311bから破断する。このとき、各接続部41,42は、座屈部31に対して離間する方向へ弾性変形することで、各接続部41,42に加わった荷重が吸収され、応力が局部的に集中し難くなるため、各接続部41,42は破断しない。
【0031】
続いて、図7に示すように、座屈部31全体が車両の下方向に落ち込むように破断することにより、連結部51,52の一端51a,52aと第2ロッド22の後側面22b及び前側面22cとの連結部位が切り離される。その結果、連結部51,52による座屈部31と各接続部41,42との連結が解除される。そして、図6に示すように、各接続部41,42は、連結部51,52の一端51a,52aと第2ロッド22の後側面22b及び前側面22cとの連結部位が切り離されたことで、座屈部31から離間する方向へ弾性変形する。
【0032】
座屈部31が破断することにより、タイロッド20に加わった荷重がラックアンドピニオン機構4に伝達し難くなり、ラックアンドピニオン機構4が破損してしまうことが回避される。また、座屈部31が破断しても、切り離された部位同士が、接続部41,42により接続されている。その結果、座屈部31が破断しても、転舵輪10の操舵を継続させることができる。
【0033】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)第2ロッド22は、座屈部31を備えるとともに、座屈部31には溝32が形成されている。また、第2ロッド22は、タイロッド20における座屈部31を跨いだ両側を接続するとともにタイロッド20に加わる荷重に対して弾性変形可能な接続部41,42を備えている。よって、例えば、転舵輪10が縁石に衝突して、転舵輪10に過大な荷重が加わり、タイロッド20に所定荷重以上の荷重が加わった際に、応力集中部311bに集中して応力が加わることで座屈部31が破断する。よって、タイロッド20に加わった荷重がラックアンドピニオン機構4に伝達することが防止されるため、ラックアンドピニオン機構4が破損してしまうことを回避することができる。さらに、各接続部41,42はタイロッド20に荷重が加わると弾性変形するため、各接続部41,42に加わった荷重が弾性変形することで吸収され、応力が局部的に集中し難くなる。よって、座屈部31が破断したとしても、各接続部41,42はタイロッド20に加わる荷重によって破断することなく、切り離された第2ロッド22における座屈部31よりも両側を、各接続部41,42により接続することができる。その結果、座屈部31が破断したとしても、転舵輪10の操舵を継続させることができる。
【0034】
(2)座屈部31は、その幅方向(車両の前後方向)の剛性が厚み方向よりも高くなっているとともに、各接続部41,42は、その幅方向(車両の上下方向)の剛性が厚み方向よりも高くなっている。つまり、座屈部31の座屈し難い方向と、各接続部41,42の座屈し難い方向とが直交している。よって、座屈部31が破断する前の状態では、座屈部31の座屈し難い方向及び各接続部41,42の座屈し難い方向に沿った荷重がタイロッド20に加わったとしても、座屈部31及び各接続部41,42によりタイロッド20自体の剛性が保たれるため、タイロッド20自体の強度(剛性)を高くすることができる。
【0035】
(3)座屈部31と各接続部41,42とを連結する連結部51,52が設けられている。よって、座屈部31が破断する前の状態では、座屈部31と各接続部41,42とが各連結部51,52により連結されているため、タイロッド20自体の強度(剛性)をさらに高めることができる。
【0036】
(4)各接続部41,42は弾性変形可能になっている。よって、座屈部31が破断した状態において、ステアリング操作の際に、各接続部41,42が弾性変形することで、運転者に違和感を与えることができる。運転者はこの違和感により座屈部31が破断したことを認知することができる。
【0037】
(5)座屈部31が破断した状態で、車両が走行していると、座屈部31が振動することで、図5に示す破断面311同士が当接し、破断面311同士が当接する度に当たり音が発生する。この当たり音により、運転者は座屈部31が破断したことを認知することができる。
【0038】
(6)座屈部31が破断した状態では、各連結部51,52による座屈部31と各接続部41,42との連結が解除されるようになっている。よって、座屈部31が破断した後、各接続部41,42が座屈部31の動きに拘束されてしまうことを回避することができ、座屈部31が破断した状態において、ステアリング装置の際に、各接続部41,42が弾性変形し易くなる。その結果、運転者に違和感を与え易くすることができ、運転者がこの違和感により座屈部31が破断したことを認知し易くすることができる。
【0039】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態において、各連結部51,52を削除してもよい。
・上記実施形態において、各接続部41,42のうちのどちらか一方を削除してもよい。
【0040】
・上記実施形態において、座屈部31の座屈し難い方向と、各接続部41,42の座屈し難い方向とが直交していなくてもよく、例えば、座屈部31の座屈し難い方向と、各接続部41,42の座屈し難い方向とが交差していてもよい。
【0041】
・上記実施形態において、各接続部41,42は薄板状をなしていたが、これに限らず、例えば、コイルばねであってもよい。
・上記実施形態において、第2ロッド22及び各接続部41,42は一体成形されていたが、これに限らず、第2ロッド22と各接続部41,42とをそれぞれ別体に成形し、第2ロッド22に対して各接続部41,42を接続させてもよい。
【0042】
・上記実施形態において、座屈部31に溝32を形成することで、座屈部31の下面31bにおける溝32に対向する部位を応力集中部311bとして機能させたが、これに限らず、例えば、応力集中部として、座屈部31の一部に楕円筒形状の楕円筒部を形成してもよい。また、座屈部31の形状や、材質などを適宜変更することにより、応力集中部を形成してもよい。
【0043】
・上記実施形態において、第2ロッド22は四角柱状であったが、これに限らず、例えば、円柱状であってもよい。
・上記実施形態において、ステアリング装置1は、パワーステアリング装置に具体化してもよく、その形式は、油圧式でも電動式であってもよい。
【0044】
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のステアリング装置において、前記接続部は、前記座屈部に対して一対設けられていることを特徴とするステアリング装置。
【0045】
(ロ)請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(イ)のいずれか一項に記載のステアリング装置において、前記座屈部には溝が形成されるとともに、前記タイロッドに荷重が加わることで、前記座屈部における前記溝を挟んだ両側が接近するように変位して、前記座屈部における前記溝と対向する部位に前記応力集中部が形成されることを特徴とするステアリング装置。
【符号の説明】
【0046】
1…ステアリング装置、3…ステアリングシャフト、4…ラックアンドピニオン機構、5…ラック軸、10…転舵輪、11…ナックル、20…タイロッド、31…座屈部、311b…応力集中部、32…溝、41,42…接続部、51,52…連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング操作に伴うステアリングシャフトの回転を、ラックアンドピニオン機構によりラック軸の往復直線運動に変換し、前記ラック軸の往復直線運動を、ラック軸の両端に連結されたタイロッドを介してナックルに伝達させることにより、前記ナックルに組み付けられた転舵輪の舵角を変更するステアリング装置において、
前記タイロッドは、前記タイロッドに荷重が加わることで局部的に集中して応力が加わる応力集中部を有する座屈部と、
前記タイロッドにおける前記座屈部を跨いだ両側を接続するとともに前記タイロッドに加わる荷重に対して弾性変形可能な接続部と、を備え、
前記接続部は、前記座屈部が前記応力集中部から破断した状態において、前記タイロッドにおける前記座屈部の両側を接続していることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のステアリング装置において、
前記座屈部の座屈し難い方向と前記接続部の座屈し難い方向とが直交していることを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のステアリング装置において、
前記座屈部と前記接続部とを連結する連結部が設けられていることを特徴とするステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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