説明

ステアリング装置

【課題】ステアリング装置のステアリングコラムの車両後方部に圧入されるコンビスイッチブラケットが、環境温度の変化や寸法精度の影響を受けて回転方向の相対位相がずれたり、軸方向の相対位置がずれたりするのを防止する。
【解決手段】ステアリング装置のステアリングコラム12とコンビスイッチブラケット13との嵌合部において、ステアリングコラム12に貫通孔12bを設け、コンビスイッチブラケット13に加締め部13bを設け、互いに係合させる相対移動阻止手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングコラムの端部にコンビスイッチ用のブラケットを備えるステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用ステアリング装置において、ステアリングコラムに軸受を介してステアリングシャフトが回転自在に支持してあり、ステアリングシャフトの車両後方部にステアリングホイールが装着してある。また、ステアリングコラムの車両後方部にはターンシグナルスイッチやワイパースイッチが取り付けられたコンビスイッチがコンビスイッチブラケットを介して装着されるようになっている。
【0003】
特許文献1には、ステアリングコラムの車両後方部に軸受が装着してあり、この軸受を介してステアリングシャフトが回転自在に支持してあるステアリング装置が開示されている。このステアリングコラムにコンビスイッチブラケットのスリーブがステアリングコラムの車両後方部に圧入されている。それによってスリーブの先端部が軸受の外輪に当接し、軸受をステアリングコラムの軸方向に位置決めするとともに、軸受がステアリングコラムから脱落することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−308112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、ステアリングコラムの車両後方部に圧入されるコンビスイッチブラケットのスリーブが、環境温度の変化や寸法精度の影響を受けて回転方向の相対位相がずれてしまったり、軸方向の相対位置がずれてしまったりする問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明に係るステアリング装置は、ステアリングシャフトを軸受を介して支持するステアリングコラムと、前記ステアリングコラムの車両後方部にコンビスイッチブラケットを介して固定されるコンビスイッチとを備えるステアリング装置において、前記コンビスイッチブラケットは前記ステアリングコラムと圧入嵌合されており、前記嵌合部には相対移動阻止手段を設けていることを特徴とする。
【0007】
さらに本発明に係るステアリング装置は、前記コンビスイッチブラケットは、コンビスイッチブラケットの加締め部の車両後方側に円周方向平行に切り欠きを有し、ステアリングコラムの長角孔と同位相で圧入された後に、内周方向に加締め部を長角孔へ張り出して加締め成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、環境温度の変化の影響を受けたとしても、あるいは部品の寸法精度の管理を厳しくしなくても、ステアリングコラムとコンビスイッチブラケットとの回転方向の相対位相がずれてしまったり、軸方向の相対位置がずれてしまうことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るステアリング装置の模式的斜視図である。
【図2】本発明の第1実施の形態に係るステアリング装置の分解側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るステアリングコラムとコンビスイッチブラケットとの要部断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るステアリングコラムとコンビスイッチブラケットとの組立前を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るステアリング装置を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1実施の形態に係るステアリング装置の模式的斜視図である。図2は、本発明の第1実施の形態に係るステアリング装置の分解側面図である。図3はステアリングコラムとコンビスイッチブラケットとの要部断面図であり、図4はステアリングコラムとコンビスイッチブラケットとの組立前を示した斜視図である。
【0012】
図1および図2に示すように、ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト9の後端部に支持固定されており、このステアリングシャフト9は、アルミダイキャスト製のステアリングコラム12およびその車両前方側に固定された電動パワーステアリング装置2を挿通した状態で、回転自在に支持されている。尚、図示の例は、電動モータ3を補助動力源としてステアリングホイール1を操作する為に要する力の低減を図る、電動パワーステアリング装置2を組み込んでいる。
【0013】
ステアリングシャフト9の前端には、自在継手を介して伸縮可能な中間シャフト4が連結してある。この中間シャフト4の下端には、別の自在継手を介して、ラック・ピニオン式のステアリングギヤ5のピニオン軸7が連結してあり、ステアリングギヤ5には、タイロッド6等を介して車輪が連結してあり、これにより、車輪が操舵できるようになっている。
【0014】
図1および図2に示すように、ステアリングコラム12の車両後方部位には、ターンシグナルスイッチ10やワイパースイッチ11などで構成されるコンビスイッチ100が設けられている。
【0015】
図2に示すように、ステアリングコラム12の車両前方側には電動パワーステアリング装置2が配置されている。電動パワーステアリング装置2のハウジング部から車両後方側へ向けて円筒部2aが突出しており、円筒部2aの外周面とステアリングコラム12の車両前方端の内周面とが圧入嵌合して固定されている。円筒部2aとステアリングコラム12とは、既知のクランプ機構によって軸方向位置を調整可能に連結されていてもよい。
【0016】
図2に示すように、ステアリングコラム12の車両後方端の外周面には、略円筒形状で機械構造用炭素鋼などで形成されたコンビスイッチブラケット13の内周面が圧入嵌合して固定されている。
【0017】
コンビスイッチ100はターンシグナルスイッチ10やワイパースイッチ11などで構成されており、断面が円形状の内周面を有する円筒部101が車両前方側へ向けて突出して形成されている。前記円筒部101の内周面とコンビスイッチブラケット13の車両後方端部の外周面とが圧入嵌合して、コンビスイッチブラケット13とコンビスイッチ100とが相対回転不能にかつ軸方向に相対移動不能に固定される。
【0018】
図3を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。図3はステアリングコラム12とコンビスイッチブラケット13との要部断面図である。図4はステアリングコラム12とコンビスイッチブラケット13との組立前を示した斜視図であるが、コンビスイッチブラケット13は便宜上、形状を解りやすくする為に、加締め部13bが加締め成形後の形状で示してある。4ヶ所の加締部は、組立前は円筒状を成している。
【0019】
ステアリングシャフト9(図3では図示せず)を回転自在に支持するように、ステアリングコラム12の車両後方側には中ぐり加工された内周面の加工端に軸受14が配置され、軸受14の内輪はステアリングシャフト9に嵌合されている。ステアリングコラム12の軸受14嵌合部よりも先端側には複数の長角孔12bがステアリングコラム12の円周方向に等配に配置されている。
【0020】
コンビスイッチブラケット13は、圧入部13aとスイッチ嵌合部13cの外径差を有するキャップ形状であって、圧入端面13eまでステアリングコラム12が圧入されている。ステアリングコラム12にコンビスイッチブラケット13を圧入嵌合させる際には、コンビスイッチブラケット13の加締め部13bの中心とステアリングコラム12の長角孔12bの中心が概略合致するように配置した後に圧入を開始する。ここで、加締め部13bよりも車両後方側に設けた切り欠き部13dによって加締め部13bと外周部をあらかじめ分断しておくことで、加締め成形を容易として成形によるひずみが外周部に伝播することを防止している。また、コンビスイッチブラケット13の車両後方側端面を押圧することで、その圧入部13a内周がステアリングコラム12の車両後方側外周に圧入され、ステアリングコラム12の車両後方側端面がコンビスイッチブラケット13の圧入端面13eに当接することで圧入嵌合が完了する。
【0021】
加締め成形は、図示していないポンチにより加締め部13bを長角孔12b内に押し込む。加締め部13bの長手方向幅は長角孔12bの長手方向幅よりもあらかじめ少し小さく設定されていて、加締め成形されることで加締め部13bはコンビスイッチブラケット13の内面に張り出しされるため、軸受14が抜けることを防止する。また、加締め部13bがコンビスイッチブラケット13の内面に張り出しされるため、コンビスイッチブラケット13が回転することを防止する。これにより、加締め部13bはコンビスイッチブラケット13とステアリングコラム12の相対移動防止手段として機能する。
【0022】
特許請求の範囲の相対移動阻止手段は、本実施の形態のステアリングコラム12の長角孔12bおよびコンビスイッチブラケット13の加締め部13bに対応する。
【0023】
本実施の形態によれば、ステアリングコラム12とコンビスイッチブラケット13を圧入嵌合させ、さらにステアリングコラム12の長角孔12bにコンビスイッチブラケット13の加締め部13bがコンビスイッチブラケット13の内面に張り出すように加締めている。そのため、通常運転時にコンビスイッチ100からコンビスイッチブラケット13へ回転方向や軸方向の荷重が入力されたとしても、ステアリングコラム12とコンビスイッチブラケット13との回転方向の相対位相や軸方向の相対位置が変化することを防止することができ、コンビスイッチブラケット13の抜け出しを防止することができる。
【0024】
特に本実施形態の場合、ステアリングコラム12はアルミニウムで形成され、コンビスイッチブラケット13は機械構造用炭素鋼などで形成されており、互いに熱膨張係数の異なる材料同士が嵌合しているので、環境温度の変化によって嵌合部の保持力が変化したとしても互いの相対位置が変化することがなくなるし、嵌合部の寸法制度を厳しく管理する必要もなくなる。
【0025】
ステアリングコラム12およびコンビスイッチブラケット13の材料は、本実施形態に材料に限定されること無くどのような材料にしてもよい。例えば、ステアリングコラムの材料はマグネシウムや樹脂などでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ステアリング装置として各種車両の操舵部分に利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 ステアリングホイール
2 電動パワーステアリング装置
3 モータ
9 ステアリングシャフト
12 ステアリングコラム
12a 内周面加工端
12b 長角孔
13 コンビスイッチブラケット
13a 圧入部
13b 加締め部
13c スイッチ嵌合部
13d 切り欠き部
13e 圧入端面
14 軸受
100 コンビスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングシャフトを軸受を介して支持するステアリングコラムと、
前記ステアリングコラムの車両後方部にコンビスイッチブラケットを介して固定されるコンビスイッチとを備えるステアリング装置において、
前記コンビスイッチブラケットは前記ステアリングコラムと圧入嵌合されており、
前記嵌合部には相対移動阻止手段を設けていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
前記コンビスイッチブラケットは、
コンビスイッチブラケットの加締め部の車両後方側に円周方向平行に切り欠きを有し、
ステアリングコラムの長角孔と同位相で圧入された後に、
内周方向に加締め部を長角孔へ張り出して加締め成形することを特徴とする請求項1に記載のステアリング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−91711(P2012−91711A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241656(P2010−241656)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】