スティック型容器
【課題】容器を手探りの状態でも、片手で簡単に開口部を認識して開閉操作ができ、開封操作までの一連の動作をスムーズに行なえ、所望の内容物を取り出せる容器を提供する。
【解決手段】内容物を収容する容器本体2と、前記内容物を取り出す開口9を有する蓋体1と、が係合された縦長状のスティック型容器10であって、前記蓋体1に形成された前記開口9を、スライド自在なスライドカバー3により覆い、かつ該カバー3と対向する位置にクリップ4を形成した。スライドカバー3は、該カバー3に形成されたスライド凸レール17が、前記開口9の左右に形成されたスライド凹レール32に係合して、前記スライドカバー3の裏面と、前記スライド枠15の表面とに、複数の凹凸部材を形成し、前記開口9が所定の開口面積を形成する位置において前記凹凸部材が順次係合して、開口面積を多段階に調節可能な多段スライド機構を有するスティック型容器。
【解決手段】内容物を収容する容器本体2と、前記内容物を取り出す開口9を有する蓋体1と、が係合された縦長状のスティック型容器10であって、前記蓋体1に形成された前記開口9を、スライド自在なスライドカバー3により覆い、かつ該カバー3と対向する位置にクリップ4を形成した。スライドカバー3は、該カバー3に形成されたスライド凸レール17が、前記開口9の左右に形成されたスライド凹レール32に係合して、前記スライドカバー3の裏面と、前記スライド枠15の表面とに、複数の凹凸部材を形成し、前記開口9が所定の開口面積を形成する位置において前記凹凸部材が順次係合して、開口面積を多段階に調節可能な多段スライド機構を有するスティック型容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を直接目視しない手探りの状態であっても、片手で簡単に容器の開口部を認識して開閉操作をすることができ、かつ容器をつかみ、開封操作までの一連の動作を自然かつスムーズに行うことを可能とし、さらには所望量の内容物を選択的に簡単に取り出し可能な、可所望量の内容物を選択的に取り出し可能なスティック型容器に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼用粒菓や錠菓等の粒状物を小出しに使用する携帯型の振出し容器としては、例えば特許文献1に示すような、カード型のケースに設けた小出し用の穴を開閉自在のキャップによって開閉するようにしたものが、従来から知られている。しかし、この種のケースは、開封のためのキャップが、ケースの側辺に形成されているため、手探りの状態でキャップを操作する際に、キャップの位置を容易に認識することができず、ケースを何度も持ち変える必要がある場合が多い。例えば、図14に示すように、ヒンジを介して回動するキャップBがカードケースAの表面Cの左上側辺に形成されている場合、表面Cを上側にして持ち、かつ、キャップBが左上に位置するように持つことができれば、キャップBを親指の先端で矢印の方向へと回動することにより、簡単に開封することができる。
【0003】
しかし、キャップBが右下に位置するように持ってしまうと、その後、ケースAを水平に180度回転させて、キャップBが左上の位置になるよう持ち直す必要がある。
また、ケースAの裏面を上側にして持ってしまうと、カードAを表面へとひっくり返して反転させる必要がある。また、反転させた際に、キャップBが右下に位置した場合、さらに180度水平に回転させて、キャップBが左上の位置になるように再度持ち替える動作が必要である。このように、上記例では、手探りの状態でケースを掴んだ際に、正しい位置でケースAを持つ確率、すなわちキャップBを認識することができる確率は4回に1回の割合である。
【0004】
この種の携帯型の振り出し容器は、主に、シャツのポケットや上着の内ポケットに携帯し、使用時は、片手で容器を取り出しつつ持ちながら開閉封操作を行なう場合が多い。しかしながら、容器を持った瞬間にキャップの位置を認識することができず取り出した容器を、何度も持ち替えながらキャップの位置を手探りする必要があるため、消費者にとっては開封操作にストレスを感じてしまうことが多々生じていた。
【0005】
【特許文献1】特開2005−187077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの課題を解決し、容器を直接目視しない手探りの状態であっても、片手で簡単に容器の開口部を認識して開閉操作をすることができ、かつ容器をつかみ、開封操作までの一連の動作を自然かつスムーズに行うことを可能とし、さらには、所望量の内容物を選択的に簡単に取り出し可能な、スティック型容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の請求項1は、内容物を収容する容器本体と、前記内容物を取り出す開口を有する蓋体と、が係合してなる、縦長形状のスティック型容器であって、前記蓋体に形成された前記開口を、スライド自在なスライドカバーにより覆い、かつ該スライドカバーと対向する位置にクリップを形成したことを特徴とする、スティック型容器である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記開口を覆うスライド自在なスライドカバーは、該スライドカバーに形成されたスライド凸レールが、前記開口の左右側に形成されたスライド凹レールに係合して、前記スライドカバーを前記開口部へとスライド自在に形成するとともに、前記スライドカバーの裏面と、前記スライド枠の表面とに、複数の凹凸部材を形成し、前記開口が所定の開口面積を形成する位置において前記凹凸部材が順次係合することにより、開口面積を多段階に調節可能な多段スライド機構を有することを特徴とする、スティック型容器である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記容器本体は、該容器本体の下方から上方へと広がるテーパーを有することを特徴とする、スティック型容器である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記蓋体は、該蓋体の上方から下方へと広がるテーパーを有することを特徴とする、スティック型容器である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記容器本体の内径は、容器に収容する内容物の外径の120%〜150%の範囲であることを特徴とする、スティック型容器である。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記スライドカバーの少なくとも一部に、凹凸形状からなる操作部を形成したことを特徴とする、スティック型容器である。
【0013】
請求項7記載の発明は、前記容器本体もしくは前記蓋体は、半透明もしくは透明の部材からなり、前記容器内の内容物を目視可能としたことを特徴とする、スティック型容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1は、内容物を収容する容器本体と、前記内容物を取り出す開口を有する蓋体と、が係合してなる、縦長形状のスティック型容器であって、前記蓋体に形成された前記開口を、スライド自在なスライドカバーにより覆い、かつ該スライドカバーと対向する位置にクリップを形成したことを特徴とするから、蓋体3の開口9の対向位置に形成されたクリップにより、容器をシャツのポケットや上着の内ポケットに、掛けることが可能であるとともに、クリップ部分をポケットなどに掛けた状態から、消費者が容器をつかみ、片手で持った際に、人差し指の関節部分でクリップをグリップしつつ、親指の腹部分が自然とスライドカバーに触れるような形状となっているため、その後のスライド操作がスムーズに行なえる効果がある。また、スライドカバーがクリップと反対側に形成されているため、容器をつかみポケットから取り出した際にも、ポケットとクリップとが接触する箇所と反対位置(対向する位置)にスライドカバーが形成されているため、スライドカバーがポケットと接して開封してしまうようなことがない。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、前記開口を覆うスライド自在なスライドカバーは、該スライドカバーに形成されたスライド凸レールが、前記開口の左右側に形成されたスライド凹レールに係合して、前記スライドカバーを前記開口部へとスライド自在に形成するとともに、前記スライドカバーの裏面と、前記スライド枠の表面とに、複数の凹凸部材を形成し、前記開口が所定の開口面積を形成する位置において前記凹凸部材が順次係合することにより、開口面積を多段階に調節可能な多段スライド機構を有することを特徴とするから、多段スライド機構のスライド操作により、所望量の内容物を選択的に取り出すことが可能である。また、容器の外観を損なうことなく、簡単な構成により、スライドカバーの開口量を調節することが可能である。または、スライドカバーを容器に強固に係合することが可能であり、スライドカバーが容器から脱落してしまうようなことがない。よって、長期間安定したスライド操作を維持することが可能である。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、前記容器本体は、該容器本体の下方から上方へと広がるテーパーを有することを特徴とするから、容器本体上方の大きな開口部から、縦方向へと内容物を充填しやすく、下方に向かって容器本体の内径が狭まっており、内容物が縦方向へとブロッキングすることなく、順次整列する効果がある。
【0017】
また、請求項4記載の発明は、前記蓋体は、該蓋体の上方から下方へと広がるテーパーを有することを特徴とするから、内容物を取出す際に、上方に向かって蓋体の内径が狭まっており、内容物が開口に近づくにつれて整列する効果がある。
【0018】
また、請求項5記載の発明は、前記容器本体の内径は、容器に収容する内容物の外径の120%〜150%の範囲であることを特徴とするから、内容物が容器本体の内部においてブロッキングすることなく、縦方向にきれいに整列する効果がある。
【0019】
また、請求項6記載の発明は、前記スライドカバーの少なくとも一部に、凹凸形状からなる操作部を形成したことを特徴とするから、容器を目視することなく、手探りの状態でも簡単にスライドカバーの操作部を認識することが可能である。また、スライドカバーをスライドさせる際の指のすべり防止としての作用を奏することが可能である。
【0020】
また、請求項7記載の発明は、前記容器本体もしくは前記蓋体は、半透明もしくは透明の部材からなり、前記容器内の内容物を目視可能としたことを特徴とするから、内容物の量や、整列状態を視認することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る容器10は、図1に示すように、縦長形状の容器本体2と、該容器本体2に係合する蓋体1と、該蓋体1にスライド自在に係合されたスライドカバー3とで構成されている。そして、前記蓋体1の正面には、内容物を取り出すための開口9が形成され、該開口9と対向する後方位置には、ポケットP等に容器を掛止するためのクリップ4が形成されている。
【0022】
前記蓋体1へとスライド自在に係合されたスライドカバー3は、図2に示すように、多段階にスライドを停止して開口9面積を調節可能な多段スライド機構を形成しており、簡単なスライド操作により、所望量の内容物Bを選択的に取り出すことが可能である。図2(a)は閉封時を、図2(b)は1個取出し時を、図2(c)は2個取出し時をそれぞれ示す。さらには、蓋体3の開口9の対向する位置にクリップ4が形成されており、図3に示すように、シャツのポケットPや上着の内ポケットPに、掛けることが可能であるとともに、スライドカバーがクリップ4と反対側に形成されているため、容器10をつかみポケットPから取り出した際にも、ポケットPとクリップ4とが当接する箇所と反対位置(対向する位置)にスライドカバー3が形成されているため、スライドカバー3がポケットPと接して開封してしまうようなことがない。また、クリップ4部分をポケットPなどに掛けた状態から、消費者が容器10をつかみ、片手で持った際に、図4に示すように、自然と人差し指50の関節部分でクリップ4をグリップしつつ、親指60の腹部分が自然とスライドカバー3に触れるような形状となっているため、その後のスライド操作がスムーズに行なえる効果がある。
【0023】
以下に、本発明の容器10の構成と多段スライド機構について説明する。
先ず、本発明の容器10は、図5に示すように、容器本体2の上方に、スライドカバー3とクリップ4とが形成された蓋体1が縦方向に係合して縦長形状の容器10を形成している。図5(a)は左側面図を、図5(b)は正面図を、図5(c)は右側面図を、図5(d)は上面図を、図5(e)は下面図をそれぞれ示す。
図5(b)正面図に示すように、蓋体1の正面には、内容物を取り出すための開口9(図中点線部分)が形成され、該開口9を上下にスライド自在に形成されたスライドカバー3により覆っている。そして、図5(a)(c)の各側面図および図5(d)(e)に示すように、開口9を覆うスライドカバー3と対向する位置(反対位置)に、クリップ4が形成されている。特に、開口9を含むスライドカバー3とスライドカバー3が上下に移動する範囲(スライド枠)との、対向する位置において、クリップ4が形成されており、クリップ4側の作用(引っ掛け箇所)と、内容物の取り出し箇所とが、対向に位置しているため、互いの作用が干渉されることがない。
【0024】
容器10は、図6に示すように、大きく分けて3つのパーツ(蓋体1、容器本体2、スライドカバー3)の組み合わせにより構成されており、特に、蓋体1は、該蓋体1とスライドカバー3とクリップ4との主要構成が一つの蓋体に結集されており、内容物の種類によって、容器本体2のみを付け替えることにより、様々な用途に適宜対応可能である。
以下に、これら3つのパーツ(蓋体1、容器本体2、スライドカバー3)各々について、その構成を説明する。
【0025】
まず、蓋体1の構成について説明する。
図7に示すように、蓋体1は、下方に開口部Hを有する円筒形状の部材からなり、上方から下方へと緩やかに広がるテーパーを有する。蓋体1の正面の略上方には、内容物を取り出すための略四角形状の開口9が形成されている。この開口9の大きさは、例えば内容物がタブレット等の円形状かつ扁平な形状からなる内容物である場合、タブレットが縦に2つ以上取り出し可能な大きさを有する。図7に示す例においては、タブレットが最大で2つ取り出し可能な開口9を有する。開口9の周囲は、図示しないスライドカバー3が上下にスライドする範囲にわたって蓋体1の一部を窪ませたスライド枠15が形成されており、該スライド枠15の左右の側辺は、スライド方向に沿って縦方向に形成された凸形状のレール17を介して、さらに外側に凹形状のスライド凹レール19が縦方向に形成されている。このスライド凹レール19に、後述する、スライドカバー3の左右に形成されたスライド凸レール32が係合して、スライド凹レール19に沿って、スライドカバー3がスライドする。前記スライド枠15の前記開口9の下方には、蓋体3表面の円筒形状に沿った略四半円長の溝からなる、複数のロック溝18が形成されており、後述する、スライドカバー3のロック突起34が、このロック溝18に係合して、開口9を覆うスライドカバー3のスライドを停止させて、開口面積を調節する多段スライド機構を構成することが可能である。
【0026】
このように、開口9と、スライド枠15と、ロック溝18と、スライド凹レール19とからなる、多段スライド機構は、蓋体1の正面に形成されている。
一方、蓋体1の裏面(対向位置)には、蓋体1の天面から一体に、クリップ4が形成されており、また、蓋体1の天面は、正面から裏面にかけて傾斜面Sを形成している。
そして、蓋体1の裏面に形成されたクリップ4は、蓋体1の天面の傾斜Sとなめらかに連設しつつ連続して形成されている。クリップ4は、その上端部分が蓋体1の天面の一端部分と連設しており、クリップ4の下方にかけて外方へと湾曲した形状を有しており、クリップ4の下端部分は、内方へと凸形状を有する掛止部13が形成されている。
掛止部13と、図示しない容器本体2と、は接しておらず、わずかに隙間を残しており、クリップ4下端の隙間から、ポケットPの縁へと、掛止することが可能である。
【0027】
次に、前記蓋体1の正面に形成された前記開口9をスライド自在に覆うスライドカバー3について説明する。
スライドカバー3は蓋体1の正面形状に沿った湾曲形状を有し、スライドカバー3の表面には、図8(a)に示すように、凸形状の突起からなるスライド操作部33が縦方向にかけて複数(3個)形成されている。一方、スライドカバー3の裏面は、図8(b)に示すように、左右両側にそれぞれ縦方向の直線溝からなるロック溝31が形成され、該ロック溝31のさらに外方にはスライド凸レール32が形成されている。また、スライドカバー3の裏面の中央下方部分には、凸形状の突起からなるロック突起34(凹凸部材)が形成されている。このロック突起34が、図示しない前記蓋体3のロック溝18に順次係合することにより、スライドカバー3を停止させて開口9の開口面積を調節することが可能である。
【0028】
次に、内容物を収容する容器本体2について説明する。
容器本体2は、図9(a)に示すように、上方に開口部Hを有する縦長形状の筒部材からなり、開口部Hの直下の、容器本体2の外周部分には、図示しない蓋体3を打栓して係合するための凸リング21が形成されている。特に、容器本体2は、図9(b)に示すように、上方に向かって緩やかなテーパーを形成しており、容器本体2の内径(m、M)が、内容物の外径の1.2倍〜1.5倍の範囲で上方へと広がったテーパーを有する形状を成している。例えば、内容物の外径が1cmで、容器本体2の高さhが10cmであるならば、容器本体2の下方内径mを1.2cmとし、かつ上方へと広がるテーパー角度θを1°〜2°の範囲内とすることにより、容器本体2の開口部Hの上方内径Mが、約1.4cm〜1.6cmの開口部Hを形成する。このように、上方に向かって内径Mを大とすることにより、後述する、複数の内容物が積み重なった状態で、容器10が振動しても、内容物が縦方向に立ってしまい通路を塞ぐブロッキングを防止することが可能である。また、内容物を充填する際に、容器本体2上方の大きな開口部Hから、多数の内容物を一気に充填することが可能であり、充填効率や速度が高いという効果がある。
【0029】
このように、本発明の容器10は、大きく分けて、容器本体2と、該容器本体2に係合する蓋体1と、該蓋体1にスライド自在に係合するスライドカバー3と、の3つのパーツからなり、以下に、これらのパーツを組み合わせて本発明の容器10を形成する方法およびその構成について説明する。
【0030】
まず、図10に示すように、スライドカバー3の裏面の左右両側に形成されたスライド凸レール32を、蓋体1の正面に形成されたスライド枠15の左右両側に形成されたスライド凹レール19へと係合する。このとき、蓋体1の開口9は、スライド枠15の内側に形成されており、スライドカバー3の裏面が、開口9の周囲のスライド枠15に当接するため、スライドカバー3と開口9とに隙間が形成されることなく、開口9を密閉することが可能である。よって、容器10の防湿性の向上が図れる効果がある。
【0031】
そして、蓋体1の下方内周にわたって形成された凹リング12へと、容器本体2の上方外周に形成された凸リング21を係合して、図11に示すように、本発明の容器10を形成することが可能である。特に、前記容器本体2や前記蓋体1は、半透明もしくは透明の部材であっても良く、これにより、容器10内の内容物Bを目視することが可能である。また、蓋体1と容器本体2との係合部分は、凸リング21と凹リング12との打栓に限らず、凸ネジと凹ネジとで螺着して蓋体1と容器本体2とを係合しても良い。
【0032】
次に、このようにして形成された容器10の多段スライド機構の構成と所望個数の内容物を取り出す操作について説明する。
前述のとおり、蓋体1のスライド枠15には、縦方向に3段のロック溝18が形成されており、該ロック溝18にスライドカバー3の内側下方に形成されたロック突起34が、順次ロック溝18に係合して、蓋体1の開口面積を調節することが可能である。例えば、図12(a)に示すように、開口9部分を完全にスライドカバー3により覆う位置において、スライドカバー3のロック突起34と、スライド枠15の1段目のロック溝18とが係合して、開口を閉封する。そして、所望個数の内容物を取り出すときには、蓋体をわずかに下方へと傾けると内容物が蓋体1の天面部分に集結するとともに、図12(b)に示すように、内容物Bを1個取り出し可能な開口9を形成するスライド位置までスライドカバー3をスライドさせると、スライドカバー3のロック突起34と、スライド枠15の2段目のロック溝18'とが係合して、内容物を1個取り出し可能な開口を形成し、この状態で、容器10をわずかに回転させて開口9を下方へと向けることにより、開口量に応じた1個の内容物を取り出しが可能である。そして、図12(c)に示すように、内容物Bを2個取り出し可能な開口9を形成するスライド位置までスライドカバー3をスライドさせると、スライドカバー3のロック突起34と、スライド枠15の3段目のロック溝18"とが係合して、内容物Bを2個取り出し可能な開口9を形成し、容器10を回転させて開口9を下方に向けることにより、開口量に応じた2個の内容物(B、B')を取り出し可能である。このように、スライドカバー3のロック突起34と、蓋体1に形成された複数段のロック溝(18、18'、18")とが、所定位置において係合して、所望個数の内容物を取り出し可能とする多段スライド機構を形成することが可能である。
【0033】
特に、前記蓋体1の天面の内側は、開口9の上縁と同じ高さを成しており、内容物Bを開口9から取出す際に、内容物Bが蓋体1の天面の内側に当接しつつ開口9方向へとスライドして開口9から取出すことが可能であり、蓋体1の天面の内側が内容物Bを取り出す際のガイド的な役割を備えるものである。また、蓋体1のロック溝18と、スライドカバー3のロック突起34との、凹凸部材(18,34)が互いに係合するときに、カチッと言うロック音を発するとともに、スライドカバー3がわずかに上下運動するため、スライドカバー3が所定位置にロックしたことを耳と指との感覚で感じ取ることが可能である。また、上記例では、スライドカバー3のロック突起34がスライドカバー3の中央(湾曲面の頂点)部分に形成されている場合を示したが、スライドカバー3をスライド操作するとき、通常、親指の腹部分でスライドカバー3の中央部分を、下方に押しながらスライド動作を行うため、親指の直下に位置するロック突起34を下方へと押し付けてしまうこととなり、スライドやロックがスムーズに行えない恐れがある。この場合、図13に示すように、ロック突起34を、スライドカバー3の左右方へとわずかにずらして形成することにより、指による下方向へと力を直に受けることなく、凹凸部材(18,34)がスムーズに係合して滑らかにロックすることが可能である。
【0034】
以上のように、本発明の容器10は、蓋体1の開口9と、クリップ4とがそれぞれ対向する位置に形成されているから、容器10を持ち上げてクリップ4の掛止を外し、容器10をつかみスライド操作を行う、一連の操作を、スムーズかつ自然に行うことが可能であり、さらには、所望個数の内容物を簡単なスライド操作により取り出すことが可能である。または、スライド枠15の内側に開口9が形成されているため、開口9周囲の密閉性が高く、防湿性に優れるため、容器10内の内容物が時化ることなく、また、容器10の振動に伴い、内容物Bが自然に整列して容器内で傾くことなく、内容物をスムーズに取り出すことが可能である。また、スライドカバー7を含むスライド機構は、容器の外面に形成されているため、容器の内周に突起等を形成することなく、内容物がスムーズに移動することが可能である。また、スライドカバーを閉じたとき、容器が略一体形状となり、ポケットPに収納しやすく持ち運びに便利な、携帯性の良い容器を提供することができる。
【0035】
また、容器本体2と、蓋体1とが別パーツ、かつ、容器本体2が下方から上方へと広がるテーパーを成すから、内容物Bを充填する際にも、容器本体上方の大きな開口部から、多数の内容物を一気に充填することが可能であるとともに、内容物が容器本体の内部においてブロッキングを起こすことなく、縦方向に整列しやすく、充填効率や速度が高いという効果がある。
【0036】
スライドカバー3に形成される凸形状の部材からなる操作部33は、凸形状を有する部材であればその形状は限定されず、例えば、凸形状のドットや、凹形状の窪みでも良い。
【0037】
また、蓋体1に形成されるロック溝18と、スライドカバーに形成されるロック突起34は、蓋体1にロック突起34およびスライドカバー3にロック溝18と逆に形成しても良く、また、複数のロック溝18にロック突起が順次係合する多段スライド機構は、複数のロック突起34がロック溝18に順次係合して多段スライド機構を形成しても良い。
【0038】
本発明の容器10は、上記例では円筒形状のものを示したが、これに限らず、内容物の形状に合わせた、容器形状であっても良い。例えば、三角形状や、四角形状などの多角形状のみならず、楕円形状など様々な形状が考えられる。同様に、内容物もタブレットに限られることなく、球状や多角形状やラグビーボール形状などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の容器を示す図である。
【図2】スライドカバーの(a)閉封時(b)1段開封時(c)2段開封時を示す説明図である。
【図3】本発明の容器を操作する際の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の容器を操作する際の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の容器を示す図である。(a)容器の左側面図である。(b)容器の正面図である。(c)容器の右側面図である。(d)容器の上面図である。(e)容器の下面図である。
【図6】本発明の容器を構成するパーツを示す説明図である。
【図7】本発明の容器の蓋体を示す図である。
【図8】本発明の容器のスライドカバーを示す図である。(a)スライドカバーの表面を示す図である。(b)スライドカバーの裏面を示す図である。
【図9】本発明の容器の容器本体を示す図である。(a)容器本体の斜視図である。(b)容器本体の断面図である。
【図10】(a)蓋体にスライドカバーを取り付ける際の一例を示す一部切断図である。スライドカバーの斜視図である。(b)蓋体にスライドカバーを取り付けた際の一例を示す一部切断図である。
【図11】本発明の容器を示す説明図である。
【図12】本発明の容器の多段スライド機構の一例を示す(a)閉封時、(b)1段開封時、(c)2段開封時、をそれぞれ示す説明図である。
【図13】本発明の容器の別の例を示す説明図である。
【図14】従来の携帯容器の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 蓋体
2 容器本体
3 スライドカバー
4 クリップ
9 開口
10 容器(スティック型容器)
12 凹リング
13 掛止部
15 スライド枠
17 凸形状のレール
18 ロック溝(1段目のロック溝)
18'2段目のロック溝
18"3段目のロック溝
19 スライド凹レール
21 凸リング
31 ロック溝
32 スライド凸レール
33 スライド操作部
34 ロック突起
50 人差し指
60 親指
S 傾斜
B 内容物
H 開口部
P ポケット
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を直接目視しない手探りの状態であっても、片手で簡単に容器の開口部を認識して開閉操作をすることができ、かつ容器をつかみ、開封操作までの一連の動作を自然かつスムーズに行うことを可能とし、さらには所望量の内容物を選択的に簡単に取り出し可能な、可所望量の内容物を選択的に取り出し可能なスティック型容器に関する。
【背景技術】
【0002】
清涼用粒菓や錠菓等の粒状物を小出しに使用する携帯型の振出し容器としては、例えば特許文献1に示すような、カード型のケースに設けた小出し用の穴を開閉自在のキャップによって開閉するようにしたものが、従来から知られている。しかし、この種のケースは、開封のためのキャップが、ケースの側辺に形成されているため、手探りの状態でキャップを操作する際に、キャップの位置を容易に認識することができず、ケースを何度も持ち変える必要がある場合が多い。例えば、図14に示すように、ヒンジを介して回動するキャップBがカードケースAの表面Cの左上側辺に形成されている場合、表面Cを上側にして持ち、かつ、キャップBが左上に位置するように持つことができれば、キャップBを親指の先端で矢印の方向へと回動することにより、簡単に開封することができる。
【0003】
しかし、キャップBが右下に位置するように持ってしまうと、その後、ケースAを水平に180度回転させて、キャップBが左上の位置になるよう持ち直す必要がある。
また、ケースAの裏面を上側にして持ってしまうと、カードAを表面へとひっくり返して反転させる必要がある。また、反転させた際に、キャップBが右下に位置した場合、さらに180度水平に回転させて、キャップBが左上の位置になるように再度持ち替える動作が必要である。このように、上記例では、手探りの状態でケースを掴んだ際に、正しい位置でケースAを持つ確率、すなわちキャップBを認識することができる確率は4回に1回の割合である。
【0004】
この種の携帯型の振り出し容器は、主に、シャツのポケットや上着の内ポケットに携帯し、使用時は、片手で容器を取り出しつつ持ちながら開閉封操作を行なう場合が多い。しかしながら、容器を持った瞬間にキャップの位置を認識することができず取り出した容器を、何度も持ち替えながらキャップの位置を手探りする必要があるため、消費者にとっては開封操作にストレスを感じてしまうことが多々生じていた。
【0005】
【特許文献1】特開2005−187077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの課題を解決し、容器を直接目視しない手探りの状態であっても、片手で簡単に容器の開口部を認識して開閉操作をすることができ、かつ容器をつかみ、開封操作までの一連の動作を自然かつスムーズに行うことを可能とし、さらには、所望量の内容物を選択的に簡単に取り出し可能な、スティック型容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の請求項1は、内容物を収容する容器本体と、前記内容物を取り出す開口を有する蓋体と、が係合してなる、縦長形状のスティック型容器であって、前記蓋体に形成された前記開口を、スライド自在なスライドカバーにより覆い、かつ該スライドカバーと対向する位置にクリップを形成したことを特徴とする、スティック型容器である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記開口を覆うスライド自在なスライドカバーは、該スライドカバーに形成されたスライド凸レールが、前記開口の左右側に形成されたスライド凹レールに係合して、前記スライドカバーを前記開口部へとスライド自在に形成するとともに、前記スライドカバーの裏面と、前記スライド枠の表面とに、複数の凹凸部材を形成し、前記開口が所定の開口面積を形成する位置において前記凹凸部材が順次係合することにより、開口面積を多段階に調節可能な多段スライド機構を有することを特徴とする、スティック型容器である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記容器本体は、該容器本体の下方から上方へと広がるテーパーを有することを特徴とする、スティック型容器である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記蓋体は、該蓋体の上方から下方へと広がるテーパーを有することを特徴とする、スティック型容器である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記容器本体の内径は、容器に収容する内容物の外径の120%〜150%の範囲であることを特徴とする、スティック型容器である。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記スライドカバーの少なくとも一部に、凹凸形状からなる操作部を形成したことを特徴とする、スティック型容器である。
【0013】
請求項7記載の発明は、前記容器本体もしくは前記蓋体は、半透明もしくは透明の部材からなり、前記容器内の内容物を目視可能としたことを特徴とする、スティック型容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1は、内容物を収容する容器本体と、前記内容物を取り出す開口を有する蓋体と、が係合してなる、縦長形状のスティック型容器であって、前記蓋体に形成された前記開口を、スライド自在なスライドカバーにより覆い、かつ該スライドカバーと対向する位置にクリップを形成したことを特徴とするから、蓋体3の開口9の対向位置に形成されたクリップにより、容器をシャツのポケットや上着の内ポケットに、掛けることが可能であるとともに、クリップ部分をポケットなどに掛けた状態から、消費者が容器をつかみ、片手で持った際に、人差し指の関節部分でクリップをグリップしつつ、親指の腹部分が自然とスライドカバーに触れるような形状となっているため、その後のスライド操作がスムーズに行なえる効果がある。また、スライドカバーがクリップと反対側に形成されているため、容器をつかみポケットから取り出した際にも、ポケットとクリップとが接触する箇所と反対位置(対向する位置)にスライドカバーが形成されているため、スライドカバーがポケットと接して開封してしまうようなことがない。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、前記開口を覆うスライド自在なスライドカバーは、該スライドカバーに形成されたスライド凸レールが、前記開口の左右側に形成されたスライド凹レールに係合して、前記スライドカバーを前記開口部へとスライド自在に形成するとともに、前記スライドカバーの裏面と、前記スライド枠の表面とに、複数の凹凸部材を形成し、前記開口が所定の開口面積を形成する位置において前記凹凸部材が順次係合することにより、開口面積を多段階に調節可能な多段スライド機構を有することを特徴とするから、多段スライド機構のスライド操作により、所望量の内容物を選択的に取り出すことが可能である。また、容器の外観を損なうことなく、簡単な構成により、スライドカバーの開口量を調節することが可能である。または、スライドカバーを容器に強固に係合することが可能であり、スライドカバーが容器から脱落してしまうようなことがない。よって、長期間安定したスライド操作を維持することが可能である。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、前記容器本体は、該容器本体の下方から上方へと広がるテーパーを有することを特徴とするから、容器本体上方の大きな開口部から、縦方向へと内容物を充填しやすく、下方に向かって容器本体の内径が狭まっており、内容物が縦方向へとブロッキングすることなく、順次整列する効果がある。
【0017】
また、請求項4記載の発明は、前記蓋体は、該蓋体の上方から下方へと広がるテーパーを有することを特徴とするから、内容物を取出す際に、上方に向かって蓋体の内径が狭まっており、内容物が開口に近づくにつれて整列する効果がある。
【0018】
また、請求項5記載の発明は、前記容器本体の内径は、容器に収容する内容物の外径の120%〜150%の範囲であることを特徴とするから、内容物が容器本体の内部においてブロッキングすることなく、縦方向にきれいに整列する効果がある。
【0019】
また、請求項6記載の発明は、前記スライドカバーの少なくとも一部に、凹凸形状からなる操作部を形成したことを特徴とするから、容器を目視することなく、手探りの状態でも簡単にスライドカバーの操作部を認識することが可能である。また、スライドカバーをスライドさせる際の指のすべり防止としての作用を奏することが可能である。
【0020】
また、請求項7記載の発明は、前記容器本体もしくは前記蓋体は、半透明もしくは透明の部材からなり、前記容器内の内容物を目視可能としたことを特徴とするから、内容物の量や、整列状態を視認することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る容器10は、図1に示すように、縦長形状の容器本体2と、該容器本体2に係合する蓋体1と、該蓋体1にスライド自在に係合されたスライドカバー3とで構成されている。そして、前記蓋体1の正面には、内容物を取り出すための開口9が形成され、該開口9と対向する後方位置には、ポケットP等に容器を掛止するためのクリップ4が形成されている。
【0022】
前記蓋体1へとスライド自在に係合されたスライドカバー3は、図2に示すように、多段階にスライドを停止して開口9面積を調節可能な多段スライド機構を形成しており、簡単なスライド操作により、所望量の内容物Bを選択的に取り出すことが可能である。図2(a)は閉封時を、図2(b)は1個取出し時を、図2(c)は2個取出し時をそれぞれ示す。さらには、蓋体3の開口9の対向する位置にクリップ4が形成されており、図3に示すように、シャツのポケットPや上着の内ポケットPに、掛けることが可能であるとともに、スライドカバーがクリップ4と反対側に形成されているため、容器10をつかみポケットPから取り出した際にも、ポケットPとクリップ4とが当接する箇所と反対位置(対向する位置)にスライドカバー3が形成されているため、スライドカバー3がポケットPと接して開封してしまうようなことがない。また、クリップ4部分をポケットPなどに掛けた状態から、消費者が容器10をつかみ、片手で持った際に、図4に示すように、自然と人差し指50の関節部分でクリップ4をグリップしつつ、親指60の腹部分が自然とスライドカバー3に触れるような形状となっているため、その後のスライド操作がスムーズに行なえる効果がある。
【0023】
以下に、本発明の容器10の構成と多段スライド機構について説明する。
先ず、本発明の容器10は、図5に示すように、容器本体2の上方に、スライドカバー3とクリップ4とが形成された蓋体1が縦方向に係合して縦長形状の容器10を形成している。図5(a)は左側面図を、図5(b)は正面図を、図5(c)は右側面図を、図5(d)は上面図を、図5(e)は下面図をそれぞれ示す。
図5(b)正面図に示すように、蓋体1の正面には、内容物を取り出すための開口9(図中点線部分)が形成され、該開口9を上下にスライド自在に形成されたスライドカバー3により覆っている。そして、図5(a)(c)の各側面図および図5(d)(e)に示すように、開口9を覆うスライドカバー3と対向する位置(反対位置)に、クリップ4が形成されている。特に、開口9を含むスライドカバー3とスライドカバー3が上下に移動する範囲(スライド枠)との、対向する位置において、クリップ4が形成されており、クリップ4側の作用(引っ掛け箇所)と、内容物の取り出し箇所とが、対向に位置しているため、互いの作用が干渉されることがない。
【0024】
容器10は、図6に示すように、大きく分けて3つのパーツ(蓋体1、容器本体2、スライドカバー3)の組み合わせにより構成されており、特に、蓋体1は、該蓋体1とスライドカバー3とクリップ4との主要構成が一つの蓋体に結集されており、内容物の種類によって、容器本体2のみを付け替えることにより、様々な用途に適宜対応可能である。
以下に、これら3つのパーツ(蓋体1、容器本体2、スライドカバー3)各々について、その構成を説明する。
【0025】
まず、蓋体1の構成について説明する。
図7に示すように、蓋体1は、下方に開口部Hを有する円筒形状の部材からなり、上方から下方へと緩やかに広がるテーパーを有する。蓋体1の正面の略上方には、内容物を取り出すための略四角形状の開口9が形成されている。この開口9の大きさは、例えば内容物がタブレット等の円形状かつ扁平な形状からなる内容物である場合、タブレットが縦に2つ以上取り出し可能な大きさを有する。図7に示す例においては、タブレットが最大で2つ取り出し可能な開口9を有する。開口9の周囲は、図示しないスライドカバー3が上下にスライドする範囲にわたって蓋体1の一部を窪ませたスライド枠15が形成されており、該スライド枠15の左右の側辺は、スライド方向に沿って縦方向に形成された凸形状のレール17を介して、さらに外側に凹形状のスライド凹レール19が縦方向に形成されている。このスライド凹レール19に、後述する、スライドカバー3の左右に形成されたスライド凸レール32が係合して、スライド凹レール19に沿って、スライドカバー3がスライドする。前記スライド枠15の前記開口9の下方には、蓋体3表面の円筒形状に沿った略四半円長の溝からなる、複数のロック溝18が形成されており、後述する、スライドカバー3のロック突起34が、このロック溝18に係合して、開口9を覆うスライドカバー3のスライドを停止させて、開口面積を調節する多段スライド機構を構成することが可能である。
【0026】
このように、開口9と、スライド枠15と、ロック溝18と、スライド凹レール19とからなる、多段スライド機構は、蓋体1の正面に形成されている。
一方、蓋体1の裏面(対向位置)には、蓋体1の天面から一体に、クリップ4が形成されており、また、蓋体1の天面は、正面から裏面にかけて傾斜面Sを形成している。
そして、蓋体1の裏面に形成されたクリップ4は、蓋体1の天面の傾斜Sとなめらかに連設しつつ連続して形成されている。クリップ4は、その上端部分が蓋体1の天面の一端部分と連設しており、クリップ4の下方にかけて外方へと湾曲した形状を有しており、クリップ4の下端部分は、内方へと凸形状を有する掛止部13が形成されている。
掛止部13と、図示しない容器本体2と、は接しておらず、わずかに隙間を残しており、クリップ4下端の隙間から、ポケットPの縁へと、掛止することが可能である。
【0027】
次に、前記蓋体1の正面に形成された前記開口9をスライド自在に覆うスライドカバー3について説明する。
スライドカバー3は蓋体1の正面形状に沿った湾曲形状を有し、スライドカバー3の表面には、図8(a)に示すように、凸形状の突起からなるスライド操作部33が縦方向にかけて複数(3個)形成されている。一方、スライドカバー3の裏面は、図8(b)に示すように、左右両側にそれぞれ縦方向の直線溝からなるロック溝31が形成され、該ロック溝31のさらに外方にはスライド凸レール32が形成されている。また、スライドカバー3の裏面の中央下方部分には、凸形状の突起からなるロック突起34(凹凸部材)が形成されている。このロック突起34が、図示しない前記蓋体3のロック溝18に順次係合することにより、スライドカバー3を停止させて開口9の開口面積を調節することが可能である。
【0028】
次に、内容物を収容する容器本体2について説明する。
容器本体2は、図9(a)に示すように、上方に開口部Hを有する縦長形状の筒部材からなり、開口部Hの直下の、容器本体2の外周部分には、図示しない蓋体3を打栓して係合するための凸リング21が形成されている。特に、容器本体2は、図9(b)に示すように、上方に向かって緩やかなテーパーを形成しており、容器本体2の内径(m、M)が、内容物の外径の1.2倍〜1.5倍の範囲で上方へと広がったテーパーを有する形状を成している。例えば、内容物の外径が1cmで、容器本体2の高さhが10cmであるならば、容器本体2の下方内径mを1.2cmとし、かつ上方へと広がるテーパー角度θを1°〜2°の範囲内とすることにより、容器本体2の開口部Hの上方内径Mが、約1.4cm〜1.6cmの開口部Hを形成する。このように、上方に向かって内径Mを大とすることにより、後述する、複数の内容物が積み重なった状態で、容器10が振動しても、内容物が縦方向に立ってしまい通路を塞ぐブロッキングを防止することが可能である。また、内容物を充填する際に、容器本体2上方の大きな開口部Hから、多数の内容物を一気に充填することが可能であり、充填効率や速度が高いという効果がある。
【0029】
このように、本発明の容器10は、大きく分けて、容器本体2と、該容器本体2に係合する蓋体1と、該蓋体1にスライド自在に係合するスライドカバー3と、の3つのパーツからなり、以下に、これらのパーツを組み合わせて本発明の容器10を形成する方法およびその構成について説明する。
【0030】
まず、図10に示すように、スライドカバー3の裏面の左右両側に形成されたスライド凸レール32を、蓋体1の正面に形成されたスライド枠15の左右両側に形成されたスライド凹レール19へと係合する。このとき、蓋体1の開口9は、スライド枠15の内側に形成されており、スライドカバー3の裏面が、開口9の周囲のスライド枠15に当接するため、スライドカバー3と開口9とに隙間が形成されることなく、開口9を密閉することが可能である。よって、容器10の防湿性の向上が図れる効果がある。
【0031】
そして、蓋体1の下方内周にわたって形成された凹リング12へと、容器本体2の上方外周に形成された凸リング21を係合して、図11に示すように、本発明の容器10を形成することが可能である。特に、前記容器本体2や前記蓋体1は、半透明もしくは透明の部材であっても良く、これにより、容器10内の内容物Bを目視することが可能である。また、蓋体1と容器本体2との係合部分は、凸リング21と凹リング12との打栓に限らず、凸ネジと凹ネジとで螺着して蓋体1と容器本体2とを係合しても良い。
【0032】
次に、このようにして形成された容器10の多段スライド機構の構成と所望個数の内容物を取り出す操作について説明する。
前述のとおり、蓋体1のスライド枠15には、縦方向に3段のロック溝18が形成されており、該ロック溝18にスライドカバー3の内側下方に形成されたロック突起34が、順次ロック溝18に係合して、蓋体1の開口面積を調節することが可能である。例えば、図12(a)に示すように、開口9部分を完全にスライドカバー3により覆う位置において、スライドカバー3のロック突起34と、スライド枠15の1段目のロック溝18とが係合して、開口を閉封する。そして、所望個数の内容物を取り出すときには、蓋体をわずかに下方へと傾けると内容物が蓋体1の天面部分に集結するとともに、図12(b)に示すように、内容物Bを1個取り出し可能な開口9を形成するスライド位置までスライドカバー3をスライドさせると、スライドカバー3のロック突起34と、スライド枠15の2段目のロック溝18'とが係合して、内容物を1個取り出し可能な開口を形成し、この状態で、容器10をわずかに回転させて開口9を下方へと向けることにより、開口量に応じた1個の内容物を取り出しが可能である。そして、図12(c)に示すように、内容物Bを2個取り出し可能な開口9を形成するスライド位置までスライドカバー3をスライドさせると、スライドカバー3のロック突起34と、スライド枠15の3段目のロック溝18"とが係合して、内容物Bを2個取り出し可能な開口9を形成し、容器10を回転させて開口9を下方に向けることにより、開口量に応じた2個の内容物(B、B')を取り出し可能である。このように、スライドカバー3のロック突起34と、蓋体1に形成された複数段のロック溝(18、18'、18")とが、所定位置において係合して、所望個数の内容物を取り出し可能とする多段スライド機構を形成することが可能である。
【0033】
特に、前記蓋体1の天面の内側は、開口9の上縁と同じ高さを成しており、内容物Bを開口9から取出す際に、内容物Bが蓋体1の天面の内側に当接しつつ開口9方向へとスライドして開口9から取出すことが可能であり、蓋体1の天面の内側が内容物Bを取り出す際のガイド的な役割を備えるものである。また、蓋体1のロック溝18と、スライドカバー3のロック突起34との、凹凸部材(18,34)が互いに係合するときに、カチッと言うロック音を発するとともに、スライドカバー3がわずかに上下運動するため、スライドカバー3が所定位置にロックしたことを耳と指との感覚で感じ取ることが可能である。また、上記例では、スライドカバー3のロック突起34がスライドカバー3の中央(湾曲面の頂点)部分に形成されている場合を示したが、スライドカバー3をスライド操作するとき、通常、親指の腹部分でスライドカバー3の中央部分を、下方に押しながらスライド動作を行うため、親指の直下に位置するロック突起34を下方へと押し付けてしまうこととなり、スライドやロックがスムーズに行えない恐れがある。この場合、図13に示すように、ロック突起34を、スライドカバー3の左右方へとわずかにずらして形成することにより、指による下方向へと力を直に受けることなく、凹凸部材(18,34)がスムーズに係合して滑らかにロックすることが可能である。
【0034】
以上のように、本発明の容器10は、蓋体1の開口9と、クリップ4とがそれぞれ対向する位置に形成されているから、容器10を持ち上げてクリップ4の掛止を外し、容器10をつかみスライド操作を行う、一連の操作を、スムーズかつ自然に行うことが可能であり、さらには、所望個数の内容物を簡単なスライド操作により取り出すことが可能である。または、スライド枠15の内側に開口9が形成されているため、開口9周囲の密閉性が高く、防湿性に優れるため、容器10内の内容物が時化ることなく、また、容器10の振動に伴い、内容物Bが自然に整列して容器内で傾くことなく、内容物をスムーズに取り出すことが可能である。また、スライドカバー7を含むスライド機構は、容器の外面に形成されているため、容器の内周に突起等を形成することなく、内容物がスムーズに移動することが可能である。また、スライドカバーを閉じたとき、容器が略一体形状となり、ポケットPに収納しやすく持ち運びに便利な、携帯性の良い容器を提供することができる。
【0035】
また、容器本体2と、蓋体1とが別パーツ、かつ、容器本体2が下方から上方へと広がるテーパーを成すから、内容物Bを充填する際にも、容器本体上方の大きな開口部から、多数の内容物を一気に充填することが可能であるとともに、内容物が容器本体の内部においてブロッキングを起こすことなく、縦方向に整列しやすく、充填効率や速度が高いという効果がある。
【0036】
スライドカバー3に形成される凸形状の部材からなる操作部33は、凸形状を有する部材であればその形状は限定されず、例えば、凸形状のドットや、凹形状の窪みでも良い。
【0037】
また、蓋体1に形成されるロック溝18と、スライドカバーに形成されるロック突起34は、蓋体1にロック突起34およびスライドカバー3にロック溝18と逆に形成しても良く、また、複数のロック溝18にロック突起が順次係合する多段スライド機構は、複数のロック突起34がロック溝18に順次係合して多段スライド機構を形成しても良い。
【0038】
本発明の容器10は、上記例では円筒形状のものを示したが、これに限らず、内容物の形状に合わせた、容器形状であっても良い。例えば、三角形状や、四角形状などの多角形状のみならず、楕円形状など様々な形状が考えられる。同様に、内容物もタブレットに限られることなく、球状や多角形状やラグビーボール形状などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の容器を示す図である。
【図2】スライドカバーの(a)閉封時(b)1段開封時(c)2段開封時を示す説明図である。
【図3】本発明の容器を操作する際の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の容器を操作する際の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の容器を示す図である。(a)容器の左側面図である。(b)容器の正面図である。(c)容器の右側面図である。(d)容器の上面図である。(e)容器の下面図である。
【図6】本発明の容器を構成するパーツを示す説明図である。
【図7】本発明の容器の蓋体を示す図である。
【図8】本発明の容器のスライドカバーを示す図である。(a)スライドカバーの表面を示す図である。(b)スライドカバーの裏面を示す図である。
【図9】本発明の容器の容器本体を示す図である。(a)容器本体の斜視図である。(b)容器本体の断面図である。
【図10】(a)蓋体にスライドカバーを取り付ける際の一例を示す一部切断図である。スライドカバーの斜視図である。(b)蓋体にスライドカバーを取り付けた際の一例を示す一部切断図である。
【図11】本発明の容器を示す説明図である。
【図12】本発明の容器の多段スライド機構の一例を示す(a)閉封時、(b)1段開封時、(c)2段開封時、をそれぞれ示す説明図である。
【図13】本発明の容器の別の例を示す説明図である。
【図14】従来の携帯容器の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 蓋体
2 容器本体
3 スライドカバー
4 クリップ
9 開口
10 容器(スティック型容器)
12 凹リング
13 掛止部
15 スライド枠
17 凸形状のレール
18 ロック溝(1段目のロック溝)
18'2段目のロック溝
18"3段目のロック溝
19 スライド凹レール
21 凸リング
31 ロック溝
32 スライド凸レール
33 スライド操作部
34 ロック突起
50 人差し指
60 親指
S 傾斜
B 内容物
H 開口部
P ポケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体と、前記内容物を取り出す開口を有する蓋体と、が係合してなる、縦長形状のスティック型容器であって、前記蓋体に形成された前記開口を、スライド自在なスライドカバーにより覆い、かつ該スライドカバーと対向する位置にクリップを形成したことを特徴とする、スティック型容器。
【請求項2】
前記開口を覆うスライド自在なスライドカバーは、該スライドカバーに形成されたスライド凸レールが、前記開口の左右側に形成されたスライド凹レールに係合して、前記スライドカバーを前記開口部へとスライド自在に形成するとともに、前記スライドカバーの裏面と、前記スライド枠の表面とに、複数の凹凸部材を形成し、前記開口が所定の開口面積を形成する位置において前記凹凸部材が順次係合することにより、開口面積を多段階に調節可能な多段スライド機構を有することを特徴とする、請求項1記載のスティック型容器。
【請求項3】
前記容器本体は、該容器本体の下方から上方へと広がるテーパーを有することを特徴とする、請求項1乃至2記載のスティック型容器。
【請求項4】
前記蓋体は、該蓋体の上方から下方へと広がるテーパーを有することを特徴とする、請求項1乃至3記載のスティック型容器。
【請求項5】
前記容器本体の内径は、容器に収容する内容物の外径の120%〜150%の範囲であることを特徴とする、請求項1乃至4記載のスティック型容器。
【請求項6】
前記スライドカバーの少なくとも一部に、凹凸形状からなる操作部を形成したことを特徴とする、請求項1乃至5記載のスティック型容器。
【請求項7】
前記容器本体もしくは前記蓋体は、半透明もしくは透明の部材からなり、前記容器内の内容物を目視可能としたことを特徴とする、請求項1乃至6記載のスティック型容器。
【請求項1】
内容物を収容する容器本体と、前記内容物を取り出す開口を有する蓋体と、が係合してなる、縦長形状のスティック型容器であって、前記蓋体に形成された前記開口を、スライド自在なスライドカバーにより覆い、かつ該スライドカバーと対向する位置にクリップを形成したことを特徴とする、スティック型容器。
【請求項2】
前記開口を覆うスライド自在なスライドカバーは、該スライドカバーに形成されたスライド凸レールが、前記開口の左右側に形成されたスライド凹レールに係合して、前記スライドカバーを前記開口部へとスライド自在に形成するとともに、前記スライドカバーの裏面と、前記スライド枠の表面とに、複数の凹凸部材を形成し、前記開口が所定の開口面積を形成する位置において前記凹凸部材が順次係合することにより、開口面積を多段階に調節可能な多段スライド機構を有することを特徴とする、請求項1記載のスティック型容器。
【請求項3】
前記容器本体は、該容器本体の下方から上方へと広がるテーパーを有することを特徴とする、請求項1乃至2記載のスティック型容器。
【請求項4】
前記蓋体は、該蓋体の上方から下方へと広がるテーパーを有することを特徴とする、請求項1乃至3記載のスティック型容器。
【請求項5】
前記容器本体の内径は、容器に収容する内容物の外径の120%〜150%の範囲であることを特徴とする、請求項1乃至4記載のスティック型容器。
【請求項6】
前記スライドカバーの少なくとも一部に、凹凸形状からなる操作部を形成したことを特徴とする、請求項1乃至5記載のスティック型容器。
【請求項7】
前記容器本体もしくは前記蓋体は、半透明もしくは透明の部材からなり、前記容器内の内容物を目視可能としたことを特徴とする、請求項1乃至6記載のスティック型容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−320640(P2007−320640A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155461(P2006−155461)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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