説明

ステッピングモーター制御装置、電動日射遮蔽装置及びステッピングモーター制御方法

【課題】ステッピングモーターの動作を安定させ、かつ消費電力を低減し得るステッピングモーター制御装置を提供する。
【解決手段】ステッピングモーターを駆動する駆動部と、駆動部を制御する制御装置とを備えたステッピングモーター制御装置において、制御装置は、ステッピングモーターの動作時に、ステッピングモーターの複数の線相に駆動電流Ia〜Idを順次供給して、ローターコアを回転させる第一の制御装置と、ステッピングモーターの停止時には該ステッピングモーターの停止相に励磁電流を供給せず、ステッピングモーターの再動作時に駆動電流Ia〜Idの供給に先立ってローターコアを停止位置に復帰させる再動作開始電流Isを停止相に供給する第二の制御装置とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステッピングモーターの動作を制御する制御装置に関するものであり、特にステッピングモーターの駆動力で日射遮蔽材を駆動する電動ブラインドに使用するステッピングモーター制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動横型ブラインドは、ヘッドボックス内に配設されるモーターの駆動力で駆動軸を回転させて、スラットを昇降操作するようになっている。このような電動横型ブラインドの一種類として、ステッピングモーターの駆動力でスラットの回動角度を制御可能としたものがある。
【0003】
スラットの回動角度を正確に制御するためには、出力軸の回転角度を細かく制御することができるステッピングモーターが有利であるからである。
図12は、スラットを回動操作するためのステッピングモーターの従来の制御動作を示す。例えば4相のステッピングモーターでは、通常動作時にA相〜D相のコイルにパルス状の駆動電流Ia〜Idが順次供給されて、ローターコアが例えば正転方向に回転される。また、D相→C相→B相→A相の順でパルス状の駆動電流Id〜Iaが順次供給されると、ローターコアが逆転方向に回転される。
【0004】
このようなステッピングモーターの出力軸の回転は、ギヤボックスを介して角度調節軸に伝達され、角度調節軸の回転に基づいてラダーコードを介してスラットが回動される。
スラットを所望角度まで回動した後、例えばD相に駆動電流Idを供給した後にステッピングモーターを停止させるとき、駆動電流Idの1/10程度の励磁電流IxがD相のコイルに供給される。
【0005】
すると、ローターコアはD相に供給される励磁電流Ixでその回転が阻止されて停止状態が維持される。
励磁電流Ixを供給しない場合には、ステッピングモーターの出力軸がギヤボックスのバックラッシュ分逆回転する可能性があり、ローターコアが停止位置からずれてしまう。すると、ステッピングモーターの再動作時に、停止相の次相のA相から順に駆動電流Ia〜Idを供給しても、モーターの動作が脱調状態となり、モーターの動作障害やスラットの回動角度の位置ずれが発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−25977号公報
【特許文献2】特開平6−200682号公報
【特許文献3】特開平8−177342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような電動横型ブラインドでは、スラットを回動操作しないとき、ステッピングモーターに励磁電流Ixを供給し続ける必要がある。従って、ステッピングモーターの動作を制御する制御装置及びステッピングモーターでの消費電力が増大する。
【0008】
特許文献1には、ステッピングモーターでスラットを回動する電動ブラインドが開示されている。この電動ブラインドでは、ステッピングモーターの停止時に励磁電流を供給する必要があるため、消費電力が増大する。
【0009】
特許文献2には、スラットを回動するステッピングモーターの停止時に、ステッピングモーターの出力軸の無用な回転を阻止する電磁ブレーキを備えた電動ブラインドが開示されている。しかし、ヘッドボックス内においてステッピングモーターの近傍に電磁ブレーキを併設する必要があるため、ヘッドボックス内に電磁ブレーキを収容するスペースを確保する必要があるとともに、部品コストも上昇する。
【0010】
特許文献3には、モータ体の停止時には無励磁のモータ体とギヤヘッドの停止トルクのみで、モータ体及びスラットの回動角度の位置決めを行うようにした電動ブラインドが開示されている。
【0011】
しかし、モータ体の出力軸は、ギヤヘッドのバックラッシュ分回転する可能性があるので、スラットの回動角度を正確に制御することはできない。
この発明の目的は、ステッピングモーターの動作を安定させ、かつ消費電力を低減し得るステッピングモーター制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1では、ステッピングモーターを駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御装置とを備えたステッピングモーター制御装置において、前記制御装置は、前記ステッピングモーターの動作時に、前記ステッピングモーターの複数の線相に駆動電流を順次供給して、ローターコアを回転させる第一の制御装置と、前記ステッピングモーターの停止時には該ステッピングモーターの停止相に励磁電流を供給せず、前記ステッピングモーターの再動作時に前記駆動電流の供給に先立って前記ローターコアを停止位置に復帰させる再動作開始電流を前記停止相に供給する第二の制御装置とを備えた。
【0013】
請求項2では、前記第二の制御装置は、前記再動作開始電流の供給の停止から前記駆動電流が供給されるまでの間、前記停止相に励磁電流を供給する。
請求項3では、ステッピングモーターの駆動力をギヤボックスを介して駆動軸に伝達し、前記駆動軸で遮蔽材を駆動する電動日射遮蔽装置において、ステッピングモーターを駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記ステッピングモーターの動作時に、前記ステッピングモーターの複数の線相に駆動電流を順次供給して、ローターコアを回転させる第一の制御装置と、前記ステッピングモーターの停止時には該ステッピングモーターの停止相に励磁電流を供給せず、前記ステッピングモーターの再動作時に前記駆動電流の供給に先立って前記ローターコアを停止位置に復帰させる再動作開始電流を前記停止相に供給する第二の制御装置とを備えた。
【0014】
請求項4では、ステッピングモーターの動作時に、前記ステッピングモーターの複数の線相に駆動電流を順次供給して、ローターコアを回転させ、前記ステッピングモーターの停止時には該ステッピングモーターの停止相に励磁電流を供給せず、前記ステッピングモーターの再動作時に前記駆動電流の供給に先立って前記ローターコアを停止位置に復帰させる再動作開始電流を前記停止相に供給する。
【0015】
請求項5では、前記再動作開始電流の供給の停止から前記駆動電流が供給されるまでの間、前記停止相に励磁電流を供給する。
請求項6では、前記駆動電流の供給を停止するとき、各線相に供給する駆動電流の時間幅と周期を順次長くした。
【0016】
請求項7では、前記再動作開始電流を供給する時間幅を、前記駆動電流の時間幅より長くした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ステッピングモーターの動作を安定させ、かつ消費電力を低減し得るステッピングモーター制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電動横型ブラインドを示す正面図である。
【図2】電動横型ブラインドの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】ギヤボックスを示す側面図である。
【図4】ステッピングモーターを示す概要図である。
【図5】ステッピングモーターの動作を示す概要図である。
【図6】ステッピングモーターの動作を示す概要図である。
【図7】ステッピングモーターの動作を示す概要図である。
【図8】ステッピングモーターに供給する駆動電流を示すタイミング波形図である。
【図9】ステッピングモーターに供給する駆動電流を示すタイミング波形図である。
【図10】マイクロコンピューター部の動作を示すフローチャートである。
【図11】マイクロコンピューター部の動作を示すフローチャートである。
【図12】従来のステッピングモーターの制御動作を示すタイミング波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。図1に示す電動横型ブラインドは、ヘッドボックス1から吊下支持される複数本のラダーコード2に多数段のスラット(遮蔽材)3が支持され、ラダーコード2の下端にはボトムレール4が吊下支持されている。
【0020】
前記スラット3には、前記ラダーコード2による支持位置近傍で昇降テープ5が挿通され、その昇降テープ5の下端には前記ボトムレール4が吊下支持されている。
前記ラダーコード2の上端は前記ヘッドボックス1内に配設されるラダーコード吊下げ装置6に取着され、前記昇降テープ5の上端はヘッドボックス1内に配設される昇降テープ巻取り装置7に巻き取り可能に支持されている。前記ラダーコード吊下げ装置6には六角棒状の角度調節軸8が相対回転不能に挿通されている。
【0021】
前記ヘッドボックス1の一端部にはステッピングモーター9が取着され、そのステッピングモーター9の出力軸の回転は、ギヤボックス10を介して前記角度調節軸8に伝達される。そして、角度調節軸8が正逆方向に回転されると、ラダーコード吊下げ装置6及びラダーコード2を介して各スラット3が回動される。
【0022】
前記ギヤボックス10は、図3に示すように、ステッピングモーター9の出力軸11とギヤボックス10の出力軸12との間に複数の減速歯車13が介在され、その出力軸12が図1に示す接続具13を介して前記角度調節軸8に連結されている。そして、ステッピングモーター9の出力軸11の回転がギヤボックス10で減速されて角度調節軸8に伝達される。
【0023】
前記ヘッドボックス1の長手方向中央部には昇降モーター14が配設され、その昇降モーター14の両側からヘッドボックス1の長手方向に延設される六角棒状の昇降軸15が前記昇降テープ巻取り装置7に相対回転不能に挿通されている。前記昇降モーター14は、ボトムレール4及びスラット3を昇降するために充分なトルクを発生する交流モーターあるいは直流モーターで構成される。
【0024】
そして、昇降モーター14の作動により昇降軸15が回転されると、昇降テープ巻取り装置7により昇降テープ5が巻き取られあるいは巻き戻されて、スラット3及びボトムレール4が昇降される。
【0025】
前記ヘッドボックス1内には、制御基板16が前記昇降モーター14に隣接して配設されている。この制御基板16は、この電動横型ブラインドの近傍に設置される操作スイッチやリモコンから出力される操作信号あるいは中央制御装置から出力される指令信号を受信し、あらかじめ設定されたプログラムに基づいて動作する。
【0026】
前記ヘッドボックス1の一端部には電源部17が配設される。この電源部17は電源コード18を介して供給される交流100Vの商用電源に基づいて、所要の交流電源電圧及び直流電源電圧を生成して、前記制御基板16、前記昇降モーター14及びステッピングモーター9等に供給する。
【0027】
前記制御基板16は、前記ヘッドボックス1の一端から延設される通信コード19を介して、隣接して連装される電動横型ブラインド、連装される電動横型ブラインドを一括して制御する中央制御装置(図示しない)、後記接点スイッチ24あるいは通信スイッチ26等に接続される。
【0028】
前記ラダーコード2の吊下げ位置近傍において、前記ヘッドボックス1の下面には下方へ突出する上限スイッチ20が設けられ、スラット3が上限まで引き上げられて上限スイッチ20に当接したとき、検出信号を出力するようになっている。
【0029】
次に、上記電動横型ブラインドの電気的構成を図2に従って説明する。前記制御基板16に搭載されるマイクロコンピューター部21は、前記電源部17からの電源の供給に基づいて、あらかじめ設定されたプログラムに従って動作する。また、マイクロコンピューター部21にはタイマー22が内蔵されている。
【0030】
前記マイクロコンピューター部21に接続された接点入力部23は、操作スイッチとして接点スイッチ24が使用される場合にその接点スイッチ24から出力信号が入力され、その出力信号を前記マイクロコンピューター部21に出力する。
【0031】
指令信号入力部25は、前記操作スイッチとして通信スイッチ26が使用される場合にその通信スイッチ26から指令信号が入力され、その指令信号を前記マイクロコンピューター部21に出力する。また、応答信号出力部27は前記通信スイッチ26の指令信号に対するマイクロコンピューター部21の応答信号を通信スイッチ26に出力する。
【0032】
前記通信スイッチ26は、マイクロコンピューター部28と、指令信号出力部29、応答信号入力部30、機器番号設定スイッチ31、キー入力部32、EEPROM33を備える。
【0033】
前記マイクロコンピューター部28は、あらかじめ設定されたプログラムに基づいて動作する。指令信号出力部29は、マイクロコンピューター部28から出力される指令信号を前記指令信号入力部25に出力する。
【0034】
応答信号入力部30は、前記応答信号出力部27から出力される応答信号を受信してマイクロコンピューター部28に入力する。
機器番号設定スイッチ31は、多数の電動横型ブラインドを一括して操作する場合に、この通信スイッチ26で一括操作する電動横型ブラインドのアドレスや、通信スイッチ26自身のアドレスを設定可能としたディップスイッチで構成される。
【0035】
キー入力部32は、電動横型ブラインドを昇降操作するための各種キーが設けられる。EEPROM33は、スラット3の昇降位置及び回動角度の現在位置等を前記ヘッドボックス1内のマイクロコンピューター部21から読み出して一時的に格納する場合に使用される。
【0036】
前記ヘッドボックス1内の機器番号及び種類設定部34は、当該電動横型ブラインドのアドレスや種類を設定可能としたディップスイッチで構成される。
前記スラット3の昇降操作及び角度調節操作はリモコン36の操作によっても行われる。リモコン36から出力される赤外線信号は、ヘッドボックス1に取着されるリモコン受光部37で受信し、その受信信号はリモコン信号入力部35で指令信号に変換してマイクロコンピューター部21に入力される。
【0037】
EEPROM39は、スラット3の昇降位置及び回動角度の現在位置等を一時的に格納する場合に使用される。
障害物スイッチ40は、前記昇降テープ巻取り装置7に設けられ、スラット3の下降操作時にボトムレール4の下降動作が障害物により妨げられているか否かを前記昇降テープ5に弛みが生じたか否かで検出するものであり、その検出信号が障害物検知部41を介してマイクロコンピューター部21に出力される。
【0038】
前記上限スイッチ20の検出信号は、上限検知部38を介してマイクロコンピューター部21に出力される。
昇降高さ認識用エンコーダー42は、前記昇降モーター14に内蔵され、昇降モーター14の出力軸の回転にともなってパルス信号を生成し、そのパルス信号を昇降高さ検知部43に出力する。
【0039】
昇降高さ検知部43は、そのパルス信号をカウントしたカウント値をマイクロコンピューター部21に出力する。そして、マイクロコンピューター部21は、そのカウント値に基づいて前記スラット3の昇降高さを認識可能となっている。
【0040】
マイクロコンピューター部21には、伝送路信号送信部44及び伝送路信号受信部45が接続され、連装される電動横型ブラインドあるいは中央制御装置に対し、伝送路信号送信部44及び伝送路信号受信部45を介して制御信号の送受信動作が行われる。
【0041】
マイクロコンピューター部21には、前記ステッピングモーター9を駆動する駆動部46と、前記昇降モーター14を駆動する駆動部47が接続されている。そして、ステッピングモーター9及び昇降モーター14の動作はマイクロコンピューター部21により駆動部46,47を介して制御されるようになっている。
【0042】
また、マイクロコンピューター部21には前記ステッピングモーター9の回転角に基づいてスラット3の回動角度を検出する基準リミット部48が接続されている。
図4は、前記ステッピングモーター9の概要を示す。このステッピングモーター9は、永久磁石で構成されるローターコア51の周囲に電磁石で構成されるステーター52が配設されている。ローターコア51の外周面には周方向にN極とS極が交互に24極配設され、ステーター52はローターコア51の中心に向かって等間隔に突出するポール部53にA相〜D相の4相のコイル54a〜54dが順次巻装されて24極の電磁石が構成される。
【0043】
このようなステッピングモーター9では、マイクロコンピューター部21の制御動作により、図8に示すように、ステーター52の各相のコイル54a〜54dにA相→B相→C相→D相の順でパルス状の駆動電流Ia〜Idが順次供給されると、ローターコア51が図4に示す矢印A方向に回転され、出力軸11が同方向に回転される。また、ステーター52の各相のコイルにD相→C相→B相→A相の順でパルス状の駆動電流Id〜Iaが順次供給されると、ローターコア51が矢印B方向に回転され、出力軸11が同方向に回転される。
【0044】
このような動作により、24極のステッピングモーター9は駆動電流Ia〜Idを制御することにより、出力軸11の回転方向と回転角度を制御可能であり、回転角度の最小間隔は15度である。そして、ステッピングモーター9を使用した電動横型ブラインドでは、ステッピングモーター9の動作に基づいてギヤボックス10を介して前記角度調節軸8が回転され、スラット3が回動される。
【0045】
また、各相のコイル54a〜54dにパルス状の駆動電流Ia〜Idが順次供給されている状態からステッピングモーター9の動作を停止させるとき、パルス信号として供給される駆動電流Ia〜Idの時間幅を順次増大させるとともに、周期を順次長くして出力軸11の回転速度を緩やかに減速するスローストップ動作が行われる。
【0046】
図8に示すように、例えばD相に駆動電流Idが供給された後に駆動電流の供給を停止しようとするとき、通常動作時には1msの時間幅と4msの周期fで供給されている駆動電流Ia〜Idの時間幅が1.1msで周期f1が約4.4msとなる。
【0047】
次いで、駆動電流Ia〜Idの時間幅及び周期が順次長くなり、時間幅が2msで周期f2が8msとなる状態を経て、最終的に時間幅が10msで周期fnが約40msとなる。
【0048】
また、D相に最後の駆動電流Idが供給された後、D相に駆動電流Idの1/10程度の電流値で励磁電流Iyが供給されて、停止直後のローターコア51の位置ずれが阻止される。この励磁電流Iyが供給される時間幅は、この実施形態では約1秒間である。
【0049】
D相に駆動電流Idが供給された後に駆動電流の供給を停止したとき、その後の再動作時には、図9に示すように、まずD相に前記駆動電流Idと同一電流値で3倍の時間幅の再動作開始電流Isが供給される。
【0050】
そして、再動作開始電流Isの供給が停止された後は、次にA相に駆動電流Iaが供給されるまでの間、駆動電流Iaの1/10程度の電流値の励磁電流IxがD相に供給される。
【0051】
次に、上記のように構成された電動横型ブラインドのステッピングモーター制御装置の作用を説明する。
図10は、通常の角度調節動作からステッピングモーター9が停止する場合のステッピングモーター制御装置の動作を示す。角度調節動作時には、図8に示すように、ステッピングモーター9のステーター52の各相のコイル54a〜54dにA相→B相→C相→D相の順でパルス状の駆動電流Ia〜Idが順次供給されると、ステッピングモーター9の出力軸11が正方向へ回動される。そして、出力軸11の回転にともなってラダーコード2を介してスラット3が一方へ回動される。
【0052】
また、ステーター52の各相のコイル54a〜54dにD相→C相→B相→A相の順でパルス状の駆動電流Id〜Iaが順次供給されると、ステッピングモーター9の出力軸11が逆方向へ回動され、その出力軸11の回転にともなってラダーコード2を介してスラット3が他方へ回動される。
【0053】
このような角度調節操作時に、マイクロコンピューター部21はステッピングモーター9を停止させるための信号を待つ状態となる(ステップ1,2)。この信号は、接点スイッチ24、通信スイッチ26、リモコン36あるいは中央制御装置のいずれかから出力される停止操作信号あるいは停止指令信号と、スラット3がほぼ垂直方向まで回動されたときに、前記基準リミット部48から出力される検出信号である。
【0054】
そして、停止操作信号あるいは停止指令信号のいずれかが入力されるとステッピングモーター9を停止させて(ステップ3)、ステップ5に移行する。また、基準リミット部48から出力される検出信号が入力された場合にも、ステッピングモーター9を停止させて(ステップ4)、ステップ5に移行する。
【0055】
ステップ5では、マイクロコンピューター部21はステッピングモーター9が停止した位置のモーター線相、すなわちA相〜D相のいずれの相に駆動電流Ia〜Idを供給した後に停止したかをEEPROM33に記憶する。図5は、D相に駆動電流Idが供給された後に出力軸11の回転が停止した状態を示す。そして、ステッピングモーター9に励磁電流を供給することなく動作を終了する(ステップ6)。
【0056】
図11は、スラットの開閉動作及び昇降動作が停止されている状態から、動作を再開する場合のマイクロコンピューター部21の動作を示す。
スラット3の開閉動作及び昇降動作が停止されている状態では、接点スイッチ24、通信スイッチ26、リモコン36あるいは中央制御装置のいずれかからスラットの開閉動作あるいは昇降動作のための操作信号あるいは指令信号を待つ状態となる(ステップ11,12)。
【0057】
ここで、スラット3を開閉操作するための信号が入力されると、ステップ13に移行してステッピングモーター9の停止時のモーター線相に図8に示す再動作開始電流Isが供給される。
【0058】
上記のように、ステッピングモーター9の停止相が例えば図5に示すD相であるとき、駆動電流Idの供給が停止され、かつ励磁電流が供給されないと、ローターコア51は図6に示すようにギヤボックス10のバックラッシュ分だけ駆動電流による駆動方向とは逆方向あるいは同方向に回転することがあり、たとえば矢印B方向に回転することがある。
【0059】
ステップ13でD相に再動作開始電流Isが供給されると、コイル54dが励磁されて、ローターコア51が図6に示す状態から矢印A方向に回転されて、図7に示すようにローターコア51が前回動作での停止位置まで回転される。
【0060】
次いで、D相に励磁電流Ixが供給されて出力軸11が停止位置に保持され(ステップ14)、停止相の次の線相から駆動電流Ia〜Idの供給が再開されて(ステップ15)、出力軸11が回転駆動される。
【0061】
ステップ11,12で、スラットの開閉動作及び昇降動作のための操作信号あるいは指令信号が入力されると、ステップ16に移行して、ステッピングモーター9の停止相に再動作開始電流Isが供給され、出力軸11が前回動作での停止位置まで回転される。
【0062】
次いで、停止相に励磁電流Ixが供給されて出力軸11が停止位置に保持され(ステップ17)、続いて昇降動作のための操作信号あるいは指令信号に基づいて昇降モーター14が駆動されてスラット3が昇降される(ステップ18)。
【0063】
次いで、昇降操作を停止するための信号の待つ状態となる(ステップ19〜21)。そして、停止信号が入力され、あるいは上限スイッチ20からの検出信号が入力され、あるいはスラット3の昇降高さが許容限界に達したとき、ステップ22に移行して昇降モーター14の作動が停止され、スラット3の昇降動作が停止される。
【0064】
次いで、励磁電流Ixの供給が停止され(ステップ23)、停止相の次の線相から駆動電流Ia〜Idの供給が再開されて(ステップ24)、出力軸11が回転駆動されてスラット3が回動される。
【0065】
上記のように構成された電動横型ブラインドでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)スラット3を開閉駆動するステッピングモーター9を停止させているとき、励磁電流を供給しないので、待機時に消費する電力を低減することができる。スラット3の開閉操作を行う時間が1日のうち5分でそれ以外の時間が待機時間であるとき、この実施形態のステッピングモーター9に対し、その待機時間に励磁電流を供給し続けるとその消費電力は約12Wとなる。しかし、同条件のスラット開閉操作を行ったとき、この実施形態では待機時には励磁電流を供給せず、再動作開始時にステッピングモーター9に供給する再動作開始電流Isと励磁電流Ixによる消費電力は0.001Wとなる。従って、待機時の消費電力を低減することができる。
(2)再動作開始時に、前回動作時の停止相に再動作開始電流Isを供給してローターコア51を前回動作の停止位置に復帰させることができるので、脱調を発生することなくステッピングモーター9を再動作させてスラット3を回動することができる。
(3)前回動作時の停止相に再動作開始電流Isを供給した後、次相に駆動電流を供給するまでの間、停止相に励磁電流Ixを供給するので、次相に駆動電流が供給されるまでローターコア51の無用な回転を阻止することができる。
(4)ステッピングモーター9の回動角を正確に制御することにより、スラット3の回動角度を細かくかつ正確に制御することができる。
(5)ステッピングモーター9の動作を停止させるとき、スローストップ制御により各相に最後に供給される駆動電流Ia〜Idの周波数を低下させて出力軸11の回転速度を緩やかに減速することができる。従って、ステッピングモーター9の停止時の衝撃を緩和し、ローターコア51の位置ずれの発生を抑制することができる。
(6)再動作開始電流Isの時間幅を駆動電流Ia〜Idの時間幅の3倍程度としたので、ローターコア51を前回動作の停止位置に確実に復帰させることができる。
【0066】
上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
・ステッピングモーターを使用した電動横型ブラインド以外の日射遮蔽装置の制御装置に実施することもできる。
【符号の説明】
【0067】
9…ステッピングモーター、21…第一の制御装置・第二の制御装置(マイクロコンピューター部)、51…ローターコア、Ia〜Id…駆動電流、Is…再動作開始電流、Ix…励磁電流。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモーターを駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御装置と
を備えたステッピングモーター制御装置において、
前記制御装置は、
前記ステッピングモーターの動作時に、前記ステッピングモーターの複数の線相に駆動電流を順次供給して、ローターコアを回転させる第一の制御装置と、
前記ステッピングモーターの停止時には該ステッピングモーターの停止相に励磁電流を供給せず、前記ステッピングモーターの再動作時に前記駆動電流の供給に先立って前記ローターコアを停止位置に復帰させる再動作開始電流を前記停止相に供給する第二の制御装置と
を備えたことを特徴とするステッピングモーター制御装置。
【請求項2】
前記第二の制御装置は、前記再動作開始電流の供給の停止から前記駆動電流が供給されるまでの間、前記停止相に励磁電流を供給することを特徴とする請求項1記載のステッピングモーター制御装置。
【請求項3】
ステッピングモーターの駆動力をギヤボックスを介して駆動軸に伝達し、前記駆動軸で遮蔽材を駆動する電動日射遮蔽装置において、
ステッピングモーターを駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記ステッピングモーターの動作時に、前記ステッピングモーターの複数の線相に駆動電流を順次供給して、ローターコアを回転させる第一の制御装置と、
前記ステッピングモーターの停止時には該ステッピングモーターの停止相に励磁電流を供給せず、前記ステッピングモーターの再動作時に前記駆動電流の供給に先立って前記ローターコアを停止位置に復帰させる再動作開始電流を前記停止相に供給する第二の制御装置と
を備えたことを特徴とする電動日射遮蔽装置。
【請求項4】
ステッピングモーターの動作時に、前記ステッピングモーターの複数の線相に駆動電流を順次供給して、ローターコアを回転させ、前記ステッピングモーターの停止時には該ステッピングモーターの停止相に励磁電流を供給せず、前記ステッピングモーターの再動作時に前記駆動電流の供給に先立って前記ローターコアを停止位置に復帰させる再動作開始電流を前記停止相に供給することを特徴とするステッピングモーター制御方法。
【請求項5】
前記再動作開始電流の供給の停止から前記駆動電流が供給されるまでの間、前記停止相に励磁電流を供給することを特徴とする請求項4記載のステッピングモーター制御方法。
【請求項6】
前記駆動電流の供給を停止するとき、各線相に供給する駆動電流の周期と時間幅を順次長くすることを特徴とする請求項4又は5記載のステッピングモーター制御方法。
【請求項7】
前記再動作開始電流を供給する時間幅を、前記駆動電流の時間幅より長くすることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載のステッピングモーター制御方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−57221(P2013−57221A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197530(P2011−197530)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000250672)立川ブラインド工業株式会社 (224)
【出願人】(508207790)有限会社 和晃 (9)
【Fターム(参考)】