ステビア抽出物の味質改善剤及び味質改善方法
【課題】ステビア抽出物の甘味の後引き感の改善などの効果を奏する味質改善剤、及び味質改善方法を提供する。
【解決手段】ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部を添加することで、ステビア抽出物の味質改善が図れる。
【解決手段】ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部を添加することで、ステビア抽出物の味質改善が図れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、特定割合のソーマチンを含有するステビア抽出物の味質改善剤、及び味質改善方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、飲食品、医薬品および医薬部外品に甘味を付与したり、それらの味を調節するために、高甘味度甘味料が広く用いられている。
なかでも近年の健康志向の高まりから、ノンカロリーや低カロリー、または低う蝕性の高甘味度甘味料が広く用いられるようになっている。
高甘味度甘味料には、アスパルテーム、スクラロース、ネオテーム、およびアセスルファムカリウムなどの合成甘味料、並びにステビア抽出物、羅漢果抽出物、およびソーマチンなどの天然甘味料があるが、近年の天然物志向から、ステビア抽出物などの天然甘味料が好まれるようになってきている。
しかしながら、これらの天然甘味料は、甘味質が砂糖と異なり、特にステビア抽出物は、甘味に雑味（甘味以外の味であって、苦味、渋味、酸味、および刺激味等をいう）があることや、甘味が長く口の中に残る（後味の残存）といった問題がある。
【０００３】
ステビア抽出物のこのような問題点を解決するために、従来からいくつかの提案がなされている。
例えば、ステビア抽出物の味質を改善するものとして、ルチン誘導体（特許文献１）、ローヤルゼリー（特許文献２）、キナ酸（特許文献３）、セロオリゴ糖（特許文献４）、柑橘類の果汁などに含まれるビセニン−２（特許文献５）、およびイヌリン（特許文献６）などが提案されている。
【０００４】
一方、ソーマチンは、それ自体甘味料として使用されるが、風味増強効果や苦味等のマスキング効果を有するため、例えばフレーバー増強剤としても使用される高甘味度甘味料である。
ソーマチンを用いた味質改善方法として、特許文献７には、ソーマチンに加えて、ステビア抽出物、甘草抽出物、羅漢果抽出物、及び甘茶抽出物などから選択される少なくとも１種を用いて、自然な甘味で風味良好なドレッシング類を調製する方法が記載されている。
また特許文献８は、ソーマチンと、甘草抽出物、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物の１種又は２種以上とを共存させる甘味組成物の製造法に関するもので、ステビア抽出物にソーマチンを共存させることにより、甘味が強く、しかも持続性のある甘味を得られることが記載されている。
さらに、特許文献９には、ステビア抽出物の主たる甘味成分であるレバウディオサイドＡと、ラカンカ抽出物の主たる甘味成分であるモグロシドＶとを、重量比で９５：５〜６０：４０の割合で含有する甘味料に、さらにソーマチンを、レバウディオサイドＡとモグロシドＶの合計量１００質量部に対して、０．０１〜３質量部の割合で含有する甘味料が記載され、当該甘味料はレバウディオサイドＡとモグロシドＶの甘味質の改善がされることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開平１０−１４６１６５号公報
【特許文献２】特開２０００−２８７６４２号公報
【特許文献３】特開２００１−３２１１１５号公報
【特許文献４】特開２００２−２２３７２１号公報
【特許文献５】特開２００６−２３８８２８号公報
【特許文献６】特開２００７−１９５４４９号公報
【特許文献７】特開２０００−１６６５０６号公報
【特許文献８】特開昭５３−１０４７７１号公報
【特許文献９】国際公開番号 WO２００９/０６３９２１
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
前述のように、従来からステビア抽出物の甘味質を改善して、砂糖（ショ糖）の甘味質にできるだけ近づけようとする試みが多く行われている。
しかしながら、ステビア抽出物が有する問題、特に甘味に雑味（苦味など）があること、甘味が長く口の中に残ること（後味の残存）といった問題を解消する方法としては、上記特許文献１〜６に記載された方法は、十分なものではなかった。
また、上記特許文献８にはステビア抽出物に対するソーマチンの有効量は記載されておらず、実施例では、ステビア抽出物２３％に対してソーマチン０．１％を配合した甘味組成物（ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを４．３×１０−３質量部）で、その効果が確認されているだけである。
さらに、特許文献９でも、ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを１×１０−４質量部よりも少ない割合で効果があることは確認されていない。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、ステビア抽出物１質量部に対して、ソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部という低濃度で添加することにより、ステビア抽出物の味質を顕著に改善できることを見出した。
【０００８】
すなわち、本発明は下記に掲げる特定割合のソーマチンを添加するステビア抽出物の味質改善剤、味質改善方法、及び高甘味度甘味料組成物に関するものである。
項１．ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部含有することを特徴とする、ステビア抽出物の味質改善剤。
項２．ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部添加することを特徴とする、ステビア抽出物の味質改善方法。
項３．ステビア抽出物と項１に記載のステビア抽出物の味質改善剤とを含有することを特徴とする、ステビア抽出物含有甘味料組成物。
項４.ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部含有する飲料。
項５．ステビア抽出物がレバウディオサイドＡである、項１に記載の味質改善剤。
項６．ステビア抽出物がレバウディオサイドＡである、項２に記載の味質改善方法。
【発明の効果】
【０００９】
ステビア抽出物に特定割合のソーマチンを添加することにより、ステビア抽出物の味質の改善、特に甘味の後引き感の改善や、ステビア抽出物が有する苦味などの雑味を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【００１０】
本発明は、特定割合のソーマチンを含有することを特徴とするステビア抽出物の味質改善剤、及びステビア抽出物にソーマチンを含有するステビア抽出物の味質改善剤を添加することを特徴とする、ステビア抽出物の味質改善方法、並びにステビア抽出物と、ソーマチンを含有するステビア抽出物の味質改善剤とを含有するステビア抽出物含有甘味料組成物に関するものである。
【００１１】
本発明のステビア抽出物の味質改善剤は、ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部含有することを特徴とする。
本発明に用いられるステビア抽出物は、南米原産のキク科多年生植物であるステビアレバウディアナ・ベルトニの葉や茎等から、水又は有機溶媒で抽出、精製されたものであり、ステビオサイド及びレバウディオサイドＡを、甘味の主成分として含有するものである。
さらに、ステビア抽出物には、α−グルコシルトランスフェラーゼ等を用いて、上記ステビア抽出物にグルコースやフルクトース等の糖を転移した酵素処理ステビアも含まれる。
また、本発明に用いられるソーマチンは、Marantaceae科（くずうこん科）に属する多年性植物ソーマトコッカスダニエリ（Thaumatococcus daniellii Bentham）の種子から得られた分子量約２１０００のタンパク質を主成分とする甘味物質である。ソーマチンは砂糖の３０００〜８０００倍と非常に強い甘味度を有する。
ソーマチンは、ソーマトコッカス・ダニエリの果実の仮種皮を水抽出し、精製することによって調製することができるが、簡便には、市販の製品を用いることもできる。かかる製品としては、サンスイート［商標］Ｔ（三栄源エフ・エフ・アイ（株）製）を挙げることができる。
【００１２】
本発明の味質改善剤は、ステビア抽出物に添加することにより、ステビア抽出物の味質が改善されたステビア抽出物含有甘味料組成物とすることができる。
この甘味料組成物は、ステビア抽出物とソーマチンが含有されていればよく、粉末状、顆粒状、固形状、液状といった剤型を問わず、また、一剤であるか二剤であるかも問わない。
この甘味料組成物は、ステビア抽出物とソーマチンとを粉体混合したものでもよく、またステビア抽出物の溶液をソーマチンの粉末に噴霧したものでもよく、逆にステビア抽出物の粉末にソーマチンの溶液を噴霧して得られたものでもよい。また、ステビア抽出物の溶液とソーマチンの溶液とを混合した後、乾燥させて得られたものでもよい。乾燥の方法にも特に制限はなく、スプレードライ、凍結乾燥など種々の方法を使用できる。
この甘味料組成物には、本発明の効果を阻害しない限度において、香料、色素、酸化防止剤、保存料、ビタミン類、カルシウム類、ミネラル類など、その他の食品・食品添加物類を含むこともできる。
この甘味料組成物によれば、ステビア抽出物の甘味の後引き感（不快な後味）の改善、コク感の増強、苦味などの雑味の軽減などが図れ、これらによりステビア抽出物の味質をショ糖の味質に近づけることができる。
【００１３】
本発明の味質改善剤をステビア抽出物に添加する場合に、ステビア抽出物に添加するソーマチンの量は、ステビア抽出物１質量部に対し、ソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部、好ましくは５×１０−５〜１×１０−４質量部である。
ステビア抽出物１質量部に対して、ソーマチンの添加量が２×１０−５質量部より少ないとステビア抽出物の味質改善効果が十分ではない。
【００１４】
本発明が適用される経口組成物は、経口摂取される製品（可食製品）並びに口腔内で利用される製品などであり、例えば、飲食品やシロップ剤等の医薬品、口内清涼剤、うがい剤、歯磨き等の医薬品部外品を挙げることができる。
飲食品としては、特に制限はされないが、好適には、柑橘果汁や野菜果汁等を含む果実飲料又は野菜ジュース、コーラやジンジャエール又はサイダー等の炭酸飲料、スポーツドリンク等の清涼飲料水、コーヒー、紅茶や抹茶等の茶系飲料、ココアや乳酸菌飲料等の乳飲料などの飲料一般；ヨーグルト、ゼリー、プディング及びムース等のデザート類；ケーキ、クラッカー、ビスケット、パイや饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子等の菓子類；米菓、スナック類；アイスクリームやシャーベット等の冷菓並びに氷菓；チューインガム、ハードキャンディ、ヌガーキャンデー、ゼリービーンズ、等を含む糖菓一般；果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類；バタークリーム、フラワーペーストやホイップクリーム等のクリーム類；イチゴジャムやマーマレード等のジャム；菓子パン等を含むパン；焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆ、砂糖代替甘味料等の調味料一般；蒲鉾等の練り製品、ソーセージ等の食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜並びに冷凍食品等を含む農畜水産加工品などを、広く例示することができるが、特に上記の各種飲料が好ましい。
【００１５】
これらの食品中にステビア抽出物は、通常０．０００１〜０．５質量％含有され、ソーマチンは、ステビア抽出物に対する上記割合で含有される。
食品に添加する際の両者の配合の時期や順序には特に制限はなく、必ずしも同一の食品中にステビア抽出物とソーマチンが添加されている必要もなく、異なる食品にそれぞれ別々に含まれる場合であっても、食する時点においてステビア抽出物とソーマチンが共存していれば足りる。
この例としては、ステビア抽出物を含有するヨーグルトに、別添のソーマチンを含有するソースをかけ、混ぜ合わせて食する場合などが挙げられる。
【００１６】
本発明のステビア抽出物の味質改善方法は、ステビア抽出物に、特定割合のソーマチンを添加することを特徴とする。
ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部添加配合することにより、ステビア抽出物の味質の改善、特に甘味の後引き感の低減や、ステビア抽出物が有する苦味などの雑味をマスキングすることができる。
【実施例】
【００１７】
以下、本発明を以下の実験例及び実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、以下の記載において、「＊」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製を、「※」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標をそれぞれ示す。
【００１８】
実験例１：ソーマチン添加によるステビア抽出物の味質改善効果
ステビア抽出物（注１）を３００ppm含有する水溶液に、表１の各濃度でソーマチン製剤（注２）を添加して、ステビア抽出物の味質改善効果を評価し、その結果を表１に併せ記載した。
【００１９】
【表１】
【００２０】
（注１）：レバウディオJ-100（守田化学工業株式会社、レバウディオサイドＡを９５％含有）
（注２）：＊ネオサンマルク※ ＡＧ（ソーマチン０．１５％含有）
【００２１】
ステビア抽出物１質量部に対して、ソーマチンを１×１０−５質量部含有する比較例１の水溶液では、ステビア抽出物の甘味の後引き改善や苦味のマスキング効果が認められなかったが、ソーマチンを２×１０−５質量部含有する実施例１の水溶液では、ステビア抽出物の苦味低減効果が認められ、ソーマチンを５×１０−５質量部含有する実施例２の水溶液では、ソーマチンを５×１０−４質量部含有する比較例２の水溶液と同様に、ステビア抽出物の甘味の後引き改善効果と苦味のマスキング効果が認められた。
【００２２】
実施例３
表２の処方に従い、水に上記１〜７を加えて溶解させる。次いで得られたシロップに炭酸水を加えて、容器に充填し、ステビア抽出物を含有する炭酸飲料を得た。
得られた炭酸飲料は、ステビア抽出物１質量部に対して、ソーマチンを９×１０−５質量より少ない割合で含有するものであるが、ステビア抽出物の甘味の後味が低減され、苦味もマスキングされたものであった。
【００２３】
【表２】
【産業上の利用可能性】
【００２４】
本発明により、ステビア抽出物の甘味の後引き感の改善や苦味のマスキングなどの味質改善が図れるので、ステビア抽出物の更なる使用が促進し、食品工業において特に有用である。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、特定割合のソーマチンを含有するステビア抽出物の味質改善剤、及び味質改善方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、飲食品、医薬品および医薬部外品に甘味を付与したり、それらの味を調節するために、高甘味度甘味料が広く用いられている。
なかでも近年の健康志向の高まりから、ノンカロリーや低カロリー、または低う蝕性の高甘味度甘味料が広く用いられるようになっている。
高甘味度甘味料には、アスパルテーム、スクラロース、ネオテーム、およびアセスルファムカリウムなどの合成甘味料、並びにステビア抽出物、羅漢果抽出物、およびソーマチンなどの天然甘味料があるが、近年の天然物志向から、ステビア抽出物などの天然甘味料が好まれるようになってきている。
しかしながら、これらの天然甘味料は、甘味質が砂糖と異なり、特にステビア抽出物は、甘味に雑味（甘味以外の味であって、苦味、渋味、酸味、および刺激味等をいう）があることや、甘味が長く口の中に残る（後味の残存）といった問題がある。
【０００３】
ステビア抽出物のこのような問題点を解決するために、従来からいくつかの提案がなされている。
例えば、ステビア抽出物の味質を改善するものとして、ルチン誘導体（特許文献１）、ローヤルゼリー（特許文献２）、キナ酸（特許文献３）、セロオリゴ糖（特許文献４）、柑橘類の果汁などに含まれるビセニン−２（特許文献５）、およびイヌリン（特許文献６）などが提案されている。
【０００４】
一方、ソーマチンは、それ自体甘味料として使用されるが、風味増強効果や苦味等のマスキング効果を有するため、例えばフレーバー増強剤としても使用される高甘味度甘味料である。
ソーマチンを用いた味質改善方法として、特許文献７には、ソーマチンに加えて、ステビア抽出物、甘草抽出物、羅漢果抽出物、及び甘茶抽出物などから選択される少なくとも１種を用いて、自然な甘味で風味良好なドレッシング類を調製する方法が記載されている。
また特許文献８は、ソーマチンと、甘草抽出物、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物の１種又は２種以上とを共存させる甘味組成物の製造法に関するもので、ステビア抽出物にソーマチンを共存させることにより、甘味が強く、しかも持続性のある甘味を得られることが記載されている。
さらに、特許文献９には、ステビア抽出物の主たる甘味成分であるレバウディオサイドＡと、ラカンカ抽出物の主たる甘味成分であるモグロシドＶとを、重量比で９５：５〜６０：４０の割合で含有する甘味料に、さらにソーマチンを、レバウディオサイドＡとモグロシドＶの合計量１００質量部に対して、０．０１〜３質量部の割合で含有する甘味料が記載され、当該甘味料はレバウディオサイドＡとモグロシドＶの甘味質の改善がされることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開平１０−１４６１６５号公報
【特許文献２】特開２０００−２８７６４２号公報
【特許文献３】特開２００１−３２１１１５号公報
【特許文献４】特開２００２−２２３７２１号公報
【特許文献５】特開２００６−２３８８２８号公報
【特許文献６】特開２００７−１９５４４９号公報
【特許文献７】特開２０００−１６６５０６号公報
【特許文献８】特開昭５３−１０４７７１号公報
【特許文献９】国際公開番号 WO２００９/０６３９２１
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
前述のように、従来からステビア抽出物の甘味質を改善して、砂糖（ショ糖）の甘味質にできるだけ近づけようとする試みが多く行われている。
しかしながら、ステビア抽出物が有する問題、特に甘味に雑味（苦味など）があること、甘味が長く口の中に残ること（後味の残存）といった問題を解消する方法としては、上記特許文献１〜６に記載された方法は、十分なものではなかった。
また、上記特許文献８にはステビア抽出物に対するソーマチンの有効量は記載されておらず、実施例では、ステビア抽出物２３％に対してソーマチン０．１％を配合した甘味組成物（ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを４．３×１０−３質量部）で、その効果が確認されているだけである。
さらに、特許文献９でも、ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを１×１０−４質量部よりも少ない割合で効果があることは確認されていない。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、ステビア抽出物１質量部に対して、ソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部という低濃度で添加することにより、ステビア抽出物の味質を顕著に改善できることを見出した。
【０００８】
すなわち、本発明は下記に掲げる特定割合のソーマチンを添加するステビア抽出物の味質改善剤、味質改善方法、及び高甘味度甘味料組成物に関するものである。
項１．ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部含有することを特徴とする、ステビア抽出物の味質改善剤。
項２．ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部添加することを特徴とする、ステビア抽出物の味質改善方法。
項３．ステビア抽出物と項１に記載のステビア抽出物の味質改善剤とを含有することを特徴とする、ステビア抽出物含有甘味料組成物。
項４.ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部含有する飲料。
項５．ステビア抽出物がレバウディオサイドＡである、項１に記載の味質改善剤。
項６．ステビア抽出物がレバウディオサイドＡである、項２に記載の味質改善方法。
【発明の効果】
【０００９】
ステビア抽出物に特定割合のソーマチンを添加することにより、ステビア抽出物の味質の改善、特に甘味の後引き感の改善や、ステビア抽出物が有する苦味などの雑味を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【００１０】
本発明は、特定割合のソーマチンを含有することを特徴とするステビア抽出物の味質改善剤、及びステビア抽出物にソーマチンを含有するステビア抽出物の味質改善剤を添加することを特徴とする、ステビア抽出物の味質改善方法、並びにステビア抽出物と、ソーマチンを含有するステビア抽出物の味質改善剤とを含有するステビア抽出物含有甘味料組成物に関するものである。
【００１１】
本発明のステビア抽出物の味質改善剤は、ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部含有することを特徴とする。
本発明に用いられるステビア抽出物は、南米原産のキク科多年生植物であるステビアレバウディアナ・ベルトニの葉や茎等から、水又は有機溶媒で抽出、精製されたものであり、ステビオサイド及びレバウディオサイドＡを、甘味の主成分として含有するものである。
さらに、ステビア抽出物には、α−グルコシルトランスフェラーゼ等を用いて、上記ステビア抽出物にグルコースやフルクトース等の糖を転移した酵素処理ステビアも含まれる。
また、本発明に用いられるソーマチンは、Marantaceae科（くずうこん科）に属する多年性植物ソーマトコッカスダニエリ（Thaumatococcus daniellii Bentham）の種子から得られた分子量約２１０００のタンパク質を主成分とする甘味物質である。ソーマチンは砂糖の３０００〜８０００倍と非常に強い甘味度を有する。
ソーマチンは、ソーマトコッカス・ダニエリの果実の仮種皮を水抽出し、精製することによって調製することができるが、簡便には、市販の製品を用いることもできる。かかる製品としては、サンスイート［商標］Ｔ（三栄源エフ・エフ・アイ（株）製）を挙げることができる。
【００１２】
本発明の味質改善剤は、ステビア抽出物に添加することにより、ステビア抽出物の味質が改善されたステビア抽出物含有甘味料組成物とすることができる。
この甘味料組成物は、ステビア抽出物とソーマチンが含有されていればよく、粉末状、顆粒状、固形状、液状といった剤型を問わず、また、一剤であるか二剤であるかも問わない。
この甘味料組成物は、ステビア抽出物とソーマチンとを粉体混合したものでもよく、またステビア抽出物の溶液をソーマチンの粉末に噴霧したものでもよく、逆にステビア抽出物の粉末にソーマチンの溶液を噴霧して得られたものでもよい。また、ステビア抽出物の溶液とソーマチンの溶液とを混合した後、乾燥させて得られたものでもよい。乾燥の方法にも特に制限はなく、スプレードライ、凍結乾燥など種々の方法を使用できる。
この甘味料組成物には、本発明の効果を阻害しない限度において、香料、色素、酸化防止剤、保存料、ビタミン類、カルシウム類、ミネラル類など、その他の食品・食品添加物類を含むこともできる。
この甘味料組成物によれば、ステビア抽出物の甘味の後引き感（不快な後味）の改善、コク感の増強、苦味などの雑味の軽減などが図れ、これらによりステビア抽出物の味質をショ糖の味質に近づけることができる。
【００１３】
本発明の味質改善剤をステビア抽出物に添加する場合に、ステビア抽出物に添加するソーマチンの量は、ステビア抽出物１質量部に対し、ソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部、好ましくは５×１０−５〜１×１０−４質量部である。
ステビア抽出物１質量部に対して、ソーマチンの添加量が２×１０−５質量部より少ないとステビア抽出物の味質改善効果が十分ではない。
【００１４】
本発明が適用される経口組成物は、経口摂取される製品（可食製品）並びに口腔内で利用される製品などであり、例えば、飲食品やシロップ剤等の医薬品、口内清涼剤、うがい剤、歯磨き等の医薬品部外品を挙げることができる。
飲食品としては、特に制限はされないが、好適には、柑橘果汁や野菜果汁等を含む果実飲料又は野菜ジュース、コーラやジンジャエール又はサイダー等の炭酸飲料、スポーツドリンク等の清涼飲料水、コーヒー、紅茶や抹茶等の茶系飲料、ココアや乳酸菌飲料等の乳飲料などの飲料一般；ヨーグルト、ゼリー、プディング及びムース等のデザート類；ケーキ、クラッカー、ビスケット、パイや饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子等の菓子類；米菓、スナック類；アイスクリームやシャーベット等の冷菓並びに氷菓；チューインガム、ハードキャンディ、ヌガーキャンデー、ゼリービーンズ、等を含む糖菓一般；果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類；バタークリーム、フラワーペーストやホイップクリーム等のクリーム類；イチゴジャムやマーマレード等のジャム；菓子パン等を含むパン；焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆ、砂糖代替甘味料等の調味料一般；蒲鉾等の練り製品、ソーセージ等の食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜並びに冷凍食品等を含む農畜水産加工品などを、広く例示することができるが、特に上記の各種飲料が好ましい。
【００１５】
これらの食品中にステビア抽出物は、通常０．０００１〜０．５質量％含有され、ソーマチンは、ステビア抽出物に対する上記割合で含有される。
食品に添加する際の両者の配合の時期や順序には特に制限はなく、必ずしも同一の食品中にステビア抽出物とソーマチンが添加されている必要もなく、異なる食品にそれぞれ別々に含まれる場合であっても、食する時点においてステビア抽出物とソーマチンが共存していれば足りる。
この例としては、ステビア抽出物を含有するヨーグルトに、別添のソーマチンを含有するソースをかけ、混ぜ合わせて食する場合などが挙げられる。
【００１６】
本発明のステビア抽出物の味質改善方法は、ステビア抽出物に、特定割合のソーマチンを添加することを特徴とする。
ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部添加配合することにより、ステビア抽出物の味質の改善、特に甘味の後引き感の低減や、ステビア抽出物が有する苦味などの雑味をマスキングすることができる。
【実施例】
【００１７】
以下、本発明を以下の実験例及び実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、以下の記載において、「＊」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製を、「※」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標をそれぞれ示す。
【００１８】
実験例１：ソーマチン添加によるステビア抽出物の味質改善効果
ステビア抽出物（注１）を３００ppm含有する水溶液に、表１の各濃度でソーマチン製剤（注２）を添加して、ステビア抽出物の味質改善効果を評価し、その結果を表１に併せ記載した。
【００１９】
【表１】
【００２０】
（注１）：レバウディオJ-100（守田化学工業株式会社、レバウディオサイドＡを９５％含有）
（注２）：＊ネオサンマルク※ ＡＧ（ソーマチン０．１５％含有）
【００２１】
ステビア抽出物１質量部に対して、ソーマチンを１×１０−５質量部含有する比較例１の水溶液では、ステビア抽出物の甘味の後引き改善や苦味のマスキング効果が認められなかったが、ソーマチンを２×１０−５質量部含有する実施例１の水溶液では、ステビア抽出物の苦味低減効果が認められ、ソーマチンを５×１０−５質量部含有する実施例２の水溶液では、ソーマチンを５×１０−４質量部含有する比較例２の水溶液と同様に、ステビア抽出物の甘味の後引き改善効果と苦味のマスキング効果が認められた。
【００２２】
実施例３
表２の処方に従い、水に上記１〜７を加えて溶解させる。次いで得られたシロップに炭酸水を加えて、容器に充填し、ステビア抽出物を含有する炭酸飲料を得た。
得られた炭酸飲料は、ステビア抽出物１質量部に対して、ソーマチンを９×１０−５質量より少ない割合で含有するものであるが、ステビア抽出物の甘味の後味が低減され、苦味もマスキングされたものであった。
【００２３】
【表２】
【産業上の利用可能性】
【００２４】
本発明により、ステビア抽出物の甘味の後引き感の改善や苦味のマスキングなどの味質改善が図れるので、ステビア抽出物の更なる使用が促進し、食品工業において特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部含有することを特徴とする、ステビア抽出物の味質改善剤。
【請求項２】
ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部添加することを特徴とする、ステビア抽出物の味質改善方法。
【請求項３】
ステビア抽出物と請求項１に記載のステビア抽出物の味質改善剤とを含有することを特徴とする、ステビア抽出物含有甘味料組成物。
【請求項４】
ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部含有する飲料。
【請求項１】
ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部含有することを特徴とする、ステビア抽出物の味質改善剤。
【請求項２】
ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部添加することを特徴とする、ステビア抽出物の味質改善方法。
【請求項３】
ステビア抽出物と請求項１に記載のステビア抽出物の味質改善剤とを含有することを特徴とする、ステビア抽出物含有甘味料組成物。
【請求項４】
ステビア抽出物１質量部に対してソーマチンを２×１０−５〜１×１０−４質量部含有する飲料。
【公開番号】特開２０１１−２４４４５（Ｐ２０１１−２４４４５Ａ）
【公開日】平成２３年２月１０日（２０１１．２．１０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−１７１４８６（Ｐ２００９−１７１４８６）
【出願日】平成２１年７月２２日（２００９．７．２２）
【出願人】（０００１７５２８３）三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年２月１０日（２０１１．２．１０）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年７月２２日（２００９．７．２２）
【出願人】（０００１７５２８３）三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Ｆターム（参考）】
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