説明

ステロイド修飾したチャコトリオースおよびソラトリオース

本発明は、ステロイド修飾されたチャコトリオースおよびその合成;および、ステロイド修飾されたチャコトリオースおよびソラトリオースの合成に有用な中間体化合物に関する。さらに、本発明は、ステロイド修飾されたソラトリオースの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカロイドグリコシドの化学的合成、特に、ステロイド修飾チャコトリオースおよびソラトリオースの合成に関する。さらに、本発明は、ステロイド修飾チャコトリオースおよびソラトリオースの製造に有用な中間体化合物と新規ステロイド修飾チャコトリオースに関する。
【背景技術】
【0002】
アグリコンソラソジンは、合成コルチゾンおよびプロゲステロンのための源である。ソラソジンおよびそのグリコシドは、商業的かつ臨床的に多大の関心を有する。これらは、種々のステロイド薬の合成のための出発製品として広く使用されている。
【0003】
ある種の天然に産する共役ソラソジングリコシドが強力な抗新生物特性を有することがさらに十分に立証されている。チャコトリオースタイプのトリグリコシドソラマルジン(22R,5R)-スピロ-5-エン-3β-イル-α-L-ラムノピラノシル-(1->4 glu)-β-D-グルコ-ピラノースは、特に興味深い。このトリグリコシドの構造は、以下の通りである:
【0004】
【化1】

【0005】
特に興味深いもう1つの天然産の共役ソラソジングリコシドは、ソラトリオースタイプのトリグリコシドソラソニン、すなわち、(22R,25R)-スピロ-5-エン-3β-イル-L-ラムノピラノシル-(1->2 gal)-O-p-D-グルコピラノシル-(1->3 gal)-β-D-ガラクトピラノースである。このトリグリコシドの構造は、以下の通りである:
【0006】
【化2】

【0007】
上記したトリグリコシドは、慣用的には、植物源からの抽出によって得られている。BEC(Drug Future,1988,vol.13.8,pages 714-716)と一般的に称されるS.sodomaeumの商業的に利用可能な抽出物は、ソラマルジン、ソラソニンおよびそれらの異性体ジグリコシドの粗製の混合物である。BECを製造するための抽出法は、大体積の酢酸中のS.sodomaeumのフルーツを均質化し、モスリンを介して液体を濾去し、続いて、グリコシドをアンモニアで沈殿させる工程を含む(Drugs of today(1990),Vol.26 No.1,p.55-58,cancer letters(1991),Vol.59,p.183-192)。ソラソジングリコシド混合物の収率は、非常に低い(ほぼ、1%)。さらに、個々のプロセス工程は、スケールアップに関するGMPに定義されず、収率、組成および生成物の品質が定義される。
【0008】
抗新生成物的に活性なトリグリセリド、例えば、ソラマルジンおよびソラソニン;および、ほとんどまたは全く不純物なしの高収率で提供するコスト有効的なプロセスについての大きな需要が存在する。
【0009】
その他のステロイド環システムとは反対に、ソラソジンのステロイド骨格は、非常に不安定な窒素含有環を含有する。このことは、その他のアルカロイド、とりわけ、トマチジン、デミシシジンまたはソラニジンのステロイド環システムに当てはまる。これら、アグリコンは、ステロイド骨格を無傷に保ちながら、化学的に容易に修飾することができない。アグリコンソラソジンが容易に入手可能であることから、従来技術は、出発物質としてアグリコンを使用する、ソラマルジンまたはソラソニンの合成を開示していない。
【0010】
本発明の基礎をなす問題は、ステロイド修飾チャコトリオースおよびソラトリオース、例えば、ソラマルジンおよびソラソニンまたはその類縁体を高収率で製造するためのコスト有効的な方法を提供することができる。
【0011】
このような化合物は、細胞毒活性を示し、抗癌剤として使用することができる。さらに、このような化合物は、抗細菌、抗真菌または抗ウイルス活性を示す。
【発明の開示】
【0012】
したがって、本発明は、一般式(Ia)で表されるステロイド修飾チャコトリオースまたは一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラトリオース:
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、R1は、3位にヒドロキシル基を有し、かつ、さらなる未保護のヒドロキシル基を有さないステロイドまたはその誘導体を表し;各R2は、独立に、直鎖または分岐C1-14アルキル;または、場合によっては、1つ以上のハロゲン原子またはC1-4アルキル基で置換されていてもよいC5-12アリールまたはヘテロアリール基;あるいは、ヒドロキシル基
表す。]
の製造方法を提供する。
【0015】
本方法は、一般式式(IIa)または(IIb):
【0016】
【化4】

【0017】
[式中、R3は、ハロゲン原子、エチルスルフィドまたはフェニルスルフィド基を表し;各R4は、独立に、ベンゾイル、置換されたベンゾイルを表し;それによって、置換基が、C1-4アルキル基、ハロゲン原子およびNO2、アセチルまたはピボリル保護基から選択される。]
で表される化合物を、一般式(III):
HO-R1
式(III)
[式中、R1は、上記定義した通りである。]
で表される化合物と反応させて、一般式(IVa)または(IVb):
【0018】
【化5】

【0019】
[式中、R1およびR4は、上記定義した通りである。]
で表される化合物を生成する工程を含む。
上記一般式(IVa)および(IVb)の化合物は、当分野公知のいずれかの適当な方法により、一般式(Ia)で表される所望されるステロイド修飾チャコトリオースまたは一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラトリオースに変換することができる。特に好ましい処理法を以下に詳細に記載する。
【0020】
さらに、本出願は、上記定義した一般式(Ia)で表されるステロイド修飾チャコトリオースを提供し、R1は、トマチジン-3-イル、デミシジン-3-イル基、ソラニジン-3-イルまたはソラソジン-3-イル基を表す。
【0021】
本出願のさらなる目的は、上記定義した一般式(Ia)で表されるステロイド修飾チャコトリオースの合成に有用な中間体化合物:すなわち:
上記定義した一般式(IVa)または(IVb)で表される化合物;
一般式(Va)または(Vb):
【0022】
【化6】

【0023】
[式中、R1は、上記定義した通りである。]
で表される化合物;
一般式(VIa)または(VIb):
【0024】
【化7】

【0025】
[式中、R1は、上記定義した通りであり、R5は、ピバロイル保護基を表し、R6は、ベンジリデン、4-ニトロベンジリデン、4-メトキシベンジリデンおよびイソプロピリデンからなる群より選択されるケタールまたはアセタールタイプの保護基を表す。]
で表される化合物;
一般式(VIIIa)または(VIIIb):
【0026】
【化8】

【0027】
[式中、R1、R2、R4、R5およびR6は、上記定義した通りである。]
で表される化合物;
一般式(IXb):
【0028】
【化9】

【0029】
[式中、R1、R2、R4およびR6は、上記定義した通りである。]
で表される化合物の提供である。
本出願のさらなる実施態様は、特許請求の範囲の従属請求項に記載する。
【0030】
発明の詳細な説明
以下にて、好ましい実施態様を参考にして、本発明をさらに詳細に説明しよう。
ステロイド残基構成置換基R1は、α-グリコシディックヒドロキシ基として役割を果たす3-位のヒドロキシル基を有するステロイドまたはその誘導体であり、これは、上記定義した式(II)で表される化合物にステロイド残基を結合する。ステロイド残基は、さらなる未保護ヒドロキシル基を有せず、好ましくは、逐次反応工程を受けないために、さらなるヒドロキシル基を有しない。本発明の好ましい実施態様にて、R1は、トマチジン-3-イル、デミシジン-3-イル、ソラニジン-3-イルおよびソラソジン-3-イル基から選択される。
【0031】
これらのステロイド基は、全て、不安定な窒素含有環を含有し、したがって、慣用的な方法により化学的に修飾することができない。さらに、上記ステロイド基は、全て、細胞毒性、抗細菌性、抗真菌性および抗ウイルス性化合物のための置換基を表す。
【0032】
上記一般式(Ia)および(Ib)にて、各R2は、独立に、直鎖または分岐C1-14アルキル基;または、場合によっては、1つ以上のハロゲン原子またはC1-4アルキル基で置換されていてもよいC5-12アリールまたはヘテロアリール基;あるいは、ヒドロキシル基を表す。好ましい実施態様にて、R2は、メチル、エチルおよびプロピルから選択されるC1-14アルキル基;フェニル、p-メチルフェニルおよびp-クロロフェニルから選択されるアリール基;または、ピリジニル、ピリミジニル、フラニル、ピロリル、チオフェニル、インドリル、ピラゾリルおよびイミダゾリルメチルから選択されるヘテロアリール基を表し;メチル、エチルおよびプロピルがさらに好ましい。
【0033】
特に好ましい実施態様にて、R2は、メチル基を表す。
一般式(Ia)を有するステロイド修飾チャコトリオースを製造するための本発明の方法は、一般式(IIa):
【0034】
【化10】

【0035】
で表される化合物を、一般式(III):
HO-R1
式(III)
で表される化合物と反応させて、一般式(IVa):
【0036】
【化11】

【0037】
で表される化合物を生成する工程を含む。
上記一般式(IIa)にて、R3は、ハロゲン原子、エチルスルフィドまたはフェニルスルフィド基を表す。好ましくは、R3は、臭素原子または塩素原子を表す。最も好ましくは、R3は、臭素原子である。さらに、一般式(IIa)および(IVa)にて、各R4は、独立に、ベンゾイル、置換されたベンゾイルを表し、それによって、置換基が、C1-4アルキル基、ハロゲン原子およびNO2、アセチルまたはピボリル保護基から選択され、好ましくは、ベンゾイルまたはp-トルオイル保護基を表し、最も好ましくは、ベンゾイル保護基を表す。
【0038】
上記工程は、好ましくは、不活性有機溶剤、例えば、ジクロロメタン、テトラヒドロフランまたはジクロロエタン中で行われる。好ましい溶剤は、ジクロロメタンである。
好ましくは、反応は、促進剤の存在で行われる。炭水化物化学で使用されるいずれの慣用的な促進剤も使用することができる。特に好ましい促進剤としては、銀トリフレート、ボロントリフルオライドジエチルエーテラート(-10℃)、トリメチルシリルトリフレートブロマイド、N-ヨードスクシンイミドおよびジメチルチオメチルスルホニウムトリフレートが挙げられる。最も好ましい促進剤は、銀トリフレートである。
【0039】
反応は、好ましくは、無水条件下、水を減ずる手段、例えば、4Åmolシーブの存在で行うのがよい。
好ましい実施態様にて、反応は、低温、例えば、0℃以下、さらに好ましくは、-10℃以下で行われる。最も好ましい反応温度は、-20℃である。
【0040】
続いて、一般式(IVa)で表される上記得られた化合物は、以降に記載するように、さらに、修飾することもできる。
本出願の方法の好ましい実施態様にて、一般式(IVa)で表される化合物は、置換基R4を除去することによって脱保護すると、一般式(Va):
【0041】
【化12】

【0042】
[式中、R1は、上記定義した通りである。]
で表される化合物が得られる。
保護基の化学にて慣用的に使用される適当な脱保護条件であれば、いずれをも、使用することができる。脱保護は、好ましくは、不活性有機溶剤、例えば、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフラン中、1〜4個の炭素原子を有するアルカリ金属アルコキシドおよびC1-4アルコールの存在、または、水、アルカリ金属水酸化物およびC1-4アルコールの存在で行われる。特に好ましい実施態様にて、脱保護は、ジクロロメタン中、メタノールおよびナトリウムメトキシドの存在で行われる。
【0043】
一般式(Va)で表されるかくして得られた化合物は、アミン塩基の存在で、ピボリルクロライドを使用し、3-OHおよび6-OH位にて選択的に保護することができ、一般式(VIa):
【0044】
【化13】

【0045】
[式中、R1は、上記定義した通りであり、R5は、ピボリル基を表す。]
で表される化合物を生成する。適したアミン塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、コリジンまたはルチジンが挙げられる。好ましいアミン塩基は、ピリジンである。
【0046】
反応は、不活性有機溶剤中で行われる。適した溶剤の例としては、テトラヒドロフラン、ジクロロエタンまたはジメチルホルムアミドが挙げられる。
式(VIa)で表される化合物は、一般式(VIIa):
【0047】
【化14】

【0048】
で表される化合物を、式(IVa)で表される化合物の製造について上記したのと実質的に同一の条件下で反応させることができる。一般式(VIIa)にて、R2、R3およびR4は、上記定義した通りである。
【0049】
一般式(VIIIa):
【0050】
【化15】

【0051】
[式中、R1、R2、R4およびR5は、上記定義した通りである。]
で表される生成化合物は、式(Va)で表される化合物の製造について上記したのと実質的に同一の条件下で、続いて、脱保護されて、一般式(Ia)で表される化合物を生成する。好ましい実施態様にて、この脱保護工程は、テトラヒドロフラン中、水、水酸化ナトリウムおよびメタノールの存在で行われる。
【0052】
もう1つの実施態様にて、本発明は、一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラトリオースを製造するための方法を提供する。一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラトリオースを製造するための方法の好ましい実施態様に従えば、ガラクトースを反応させて、一般式(IIb):
【0053】
【化16】

【0054】
[式中、R3およびR4は、上記定義した通りである。]
で表される化合物を生成する。
式(IIb)で表される化合物の製造は、無水酢酸、塩化アセチル、塩化ベンゾイル、無水安息香酸またはピボリルクロライドのいずれかを使用して、塩基、例えば、ピリジン、トリエチルアミンまたはコリジンの存在で行うことができ、完全にエステル化したガラクトースを与える。エステル化された-D-ガラクトピラノースは、氷酢酸中、臭化水素または塩化水素で処理して、一般式(IIb)で表される上記化合物を生成する。
【0055】
特に好ましい実施態様にて、ガラクトースは、有機塩基、例えば、ピリジンに懸濁させ、0℃まで冷却し、この溶液に、無水酢酸、無水安息香酸または酸クロライドのいずれかを滴下する。添加が完了したら、溶液を+25℃(室温)まで温め、約16時間攪拌する。アルコールの添加により、反応をクエンチする。溶液は、有機溶剤、例えば、t-ブチルメチルエーテルもしくはジクロロメタンまたはトルエンで希釈し、冷1N HCl、水、炭酸水素ナトリウム飽和溶液、水およびブラインで洗浄し、ついで、生成物は、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下、濃縮乾固する。生成物は、さらに精製することなく使用することができるか、または、それは、再結晶することができる。
【0056】
乾燥溶剤、例えば、ジクロロメタン中で十分に完全にエステル化したガラクトピラノースを、不活性雰囲気下で、0℃まで冷却する。この溶液に、典型的には、30%HBr含有氷酢酸中の臭化水素を加える。溶液を+25℃(室温)まで温め、ほぼ16時間攪拌する。溶液を、有機溶剤、例えば、ジクロロメタンで希釈し、ついで、氷冷却水、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液およびブラインで素早く洗浄する。生成物は、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で、溶剤を除去する。生成物は、ペトロール(40-60)およびジエチルエーテルから結晶化させる。
【0057】
さらに、一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラトリオースを製造するための方法は、上記定義した一般式(IIb)で表される化合物を、上記定義した一般式(III)で表される化合物と反応させて、一般式(IVb):
【0058】
【化17】

【0059】
[式中、R3およびR4は、上記定義した通りである。]
で表される化合物を生成する工程を含む。
式(IVb)で表される化合物を製造するための工程は、好ましくは、上記式(IVa)で表される化合物を製造するための反応と実質的に同一の条件下で行う。
【0060】
あるいは、反応は、式(III)で表される化合物を、中間体(A):
【0061】
【化18】

【0062】
[式中、R4は、上記定義した通りであり;R7は、いずれかのアルキルまたはアリール残基、例えば、直鎖または分岐C1-14アルキル基;または、場合によっては、1つ以上のC1-4アルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり;これによって、C1-14アルキル基は、好ましくは、メチル、エチルおよびプロピルから選択され;フェニル基は、好ましくは、フェニル、p-メチルフェニルおよびp-クロロフェニルから選択される。]
と反応させることによって行うことができる。反応は、適当な溶剤、例えば、ジクロロメタン、または、ジクロロメタンとエーテル、例えば、ジエチルエーテルとの組み合わせ中で行うことができる。反応は、好ましくは、上記定義した通りの促進剤、例えば、無水トリフリック酸(triflic anhydride);および、立体的に阻害された塩基、例えば、2,6-ルチジン、2,4,6-コリジンまたは2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルピリジン、好ましくは、2,6-ジ-t-ブチルピリジンの存在で、低温(-10℃より下、好ましくは、-20℃より下)で行われる。
【0063】
この実施態様にて、中間体(A)は、中間体(B):
【0064】
【化19】

【0065】
[式中、R4およびR7は、上記定義した通りである。]
を酸化することによって得られ、対応するスルホキシド(すなわち、中間体(A))を生成する。中間体(B)の酸化は、適当な酸化手段、例えば、m-クロロ過安息香酸を使用して、行うことができる。反応は、溶剤、例えば、ジクロロメタン中、低温(-20℃、好ましくは、-40℃)で行うのがよい。
【0066】
中間体(B)は、式(IIb)で表される化合物を、適当な溶剤、例えば、エタノールまたはメタノール中、アルキルまたはアリールチオール(R7-SH)のアルカリ金属塩、例えば、R7-SHのカリウムまたはナトリウム塩で処理することによって形成することができる。
【0067】
続いて、一般式(IVb)で表される先に得た化合物は、置換基R4を除去することによって脱保護され、一般式(Vb):
【0068】
【化20】

【0069】
[式中、R1は、上記定義した通りである。]
で表される化合物が得られる。
保護基の化学にて慣用的に使用されるいずれの適した脱保護条件も使用することができる。特に、脱保護は、好ましくは、式(Va)で表される化合物の製造について上記したようにして行われる。
【0070】
かくして得られる一般式(Va)で表される化合物は、標準条件を使用するケタールまたはアセタール保護基で4-OHおよび6-OH位で選択的に保護することができ、一般式(VIb):
【0071】
【化21】

【0072】
[式中、R6は、ベンジリデン、4-ニトロベンジリデン、4-メトキシベンジリデンまたはイソプロピリデンから選択されるケタールまたはアセタールタイプの保護基を表す。]
で表される化合物を生成する。好ましい実施態様にて、R7は、ベンジリデン保護基を表す。
【0073】
反応は、好ましくは、双極性非プロトン性溶剤、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)またはアセトン中、2,2-ジアルキルオキシプロパン、または、場合によっては、置換されたジアルキルオキシベンジリデン、例えば、好ましくは、ベンズアルデヒドジメチルアセタールを使用して、酸触媒、例えば、p-トルエンスルホン酸またはカンファースルホン酸の存在で行われる。
【0074】
適した反応温度範囲は、周囲温度から高温までである。好ましくは、反応は、25℃の温度で行われる。
式(VIb)で表される化合物は、ついで、式(IVa)で表される化合物の製造について上記したのと実質的に同一条件下、一般式(VIIb):
【0075】
【化22】

【0076】
で表される化合物と反応させることができる。一般式(VIIb)にて、R3およびR4は、上記定義した通りである。ガラクトースのさらに反応性の3-位での選択的なグリコシレーションは、減圧、例えば、0℃以下、さらに好ましくは、-10℃以下で達成される。最も好ましくは、反応は、約-20℃で行われる。
【0077】
一般式(VIIIb):
【0078】
【化23】

【0079】
[式中、R1、R4およびR6は、上記定義した通りである。]
で表される生成化合物は、(IVa)で表される化合物の製造について上記したのと実質的に同一条件下、上記定義した式(VIIa)で表される化合物と逐次反応させて、一般式(IXb)
【0080】
【化24】

【0081】
[式中、R1、R2、R4およびR6は、上記定義した通りである。]
で表される化合物を生成する。
続いて、式(IXb)で表される化合物は、脱保護されて、式(Ib)で表される化合物を生成する。例えば、エステルタイプの保護基R4は、式(Va)で表される化合物の製造について上記したのと実質的に同一条件下、pH10〜11で除去することができる。反応は、ついで、ドライアイスの添加によって中和することができる。他方、R6は、パラジウム担持炭素上接触水素化を使用し、適当な溶剤、例えば、エタノールまたはメタノール中、水素によって除去することができる。R4の除去とR6の除去とは、逆であることを理解する必要がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Ia)で表されるステロイド修飾チャコトリオースまたは一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラトリオース:
【化1】

[式中、R1は、3位にヒドロキシル基を有し、かつ、さらなる未保護のヒドロキシル基を有さないステロイドまたはその誘導体を表し;各R2は、独立に、直鎖または分岐C1-14アルキル基;または、場合によっては、1つ以上のハロゲン原子またはC1-4アルキル基で置換されていてもよいC5-12アリールまたはヘテロアリール基;あるいは、ヒドロキシル基を表す。]
の製造方法であって、
該方法が、一般式(IIa)または(IIb):
【化2】

[式中、R3は、ハロゲン原子、エチルスルフィドまたはフェニルスルフィド基を表し;各R4は、独立に、ベンゾイル、置換されたベンゾイルを表し;それによって、置換基が、C1-4アルキル基、ハロゲン原子およびNO2、アセチルまたはピボリル保護基から選択される。]
で表される化合物を、一般式(III):
HO-R1
式(III)
[式中、R1は、上記定義した通りである。]
で表される化合物と反応させて、一般式(IVa)または(IVb):
【化3】

[式中、R1およびR4は、上記定義した通りである。]
で表される化合物を生成する工程を含む方法。
【請求項2】
請求項1に定義した、それぞれ、一般式(IVa)または(IVb)で表される化合物を脱保護して、一般式(Va)または(Vb):
【化4】

[式中、R1は、請求項1で定義した通りである。]
で表される化合物を生成する工程を、さらに、含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(Ia)で表されるステロイド修飾チャコトリオースを製造するための請求項1または2に記載の方法であって、
請求項2に定義した一般式(Va)で表される化合物を、アミン塩基の存在で、ピボリルクロライドと反応させて、一般式(VIa):
【化5】

[式中、R1は、請求項1で定義した通りであり、R5は、ピボリル保護基を表す。]
で表される化合物を生成する工程を、さらに、含む方法。
【請求項4】
一般式(Ia)で表されるステロイド修飾チャコトリオースを製造するための請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、
請求項3に定義した一般式(VIa)で表される化合物を、一般式(VIIa):
【化6】

[式中、R2、R3およびR4は、請求項1で定義した通りである。]
で表される化合物と反応させて、一般式(VIIIa):
【化7】

[式中、R1、R2およびR4は、請求項1で定義した通りであり、R5は、請求項3で定義した通りである。]
で表される化合物を生成する工程を、さらに、含む方法。
【請求項5】
一般式(Ia)で表されるステロイド修飾チャコトリオースを製造するための請求項1〜4のいずれかに記載の方法であって、
請求項4で定義した一般式(VIIIa)で表される化合物を脱保護して、一般式(Ia)で表される化合物を生成する工程を、さらに、含む方法。
【請求項6】
一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラトリオースを製造するための請求項1または2に記載の方法であって、請求項2で定義した式(Vb)で表される化合物の4-および6-位のOH基を、標準条件を使用して、ケタールまたはアセタール保護タイプの保護基で選択的に保護して、一般式(VIb):
【化8】

[式中、R1は、請求項1で定義した通りであり、R6は、ベンジリデン、4-ニトロベンジリデン、4-メトキシベンジリデンおよびイソプロピリデンからなる群より選択されるケタールまたはアセタールタイプの保護基を表す。]
で表される化合物を生成する工程を、さらに、含む方法。
【請求項7】
一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラトリオースを製造するための請求項1、2または6のいずれかに記載の方法であって、請求項6で定義した式(VIB)で表される化合物を、一般式(VIIb):
【化9】

[式中、R3およびR4は、請求項1で定義した通りである。]
で表される化合物と反応させて、一般式(VIIIb):
【化10】

[式中、R1およびR4は、請求項1で定義した通りであり、R6は、請求項6で定義した通りである。]
で表される化合物を生成する工程を、さらに、含む方法。
【請求項8】
一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラトリオースを製造するための請求項1、2、6または7のいずれかに記載の方法であって、請求項7で定義した式(VIIIb)で表される化合物を、請求項4で定義した式(VIIb)で表される化合物と反応させて、式(IXb):
【化11】

[式中、R1、R2およびR4は、請求項1で定義した通りであり、R6は、請求項6で定義した通りである。]
で表される化合物を生成する工程を、さらに、含む方法。
【請求項9】
一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラトリオースを製造するための請求項1、2、6、7または8のいずれかに記載の方法であって、請求項8で定義した式(IXb)で表される化合物を脱保護して、式(Ib)で表される化合物を生成する工程を、さらに、含む方法。
【請求項10】
R1が、トマチジン-3-イル、デミシジン-3-イル、ソラニジン-3-イルおよびソラソジン-3-イル基を表す、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
R2が、メチル基を表す、請求項1〜10のいずれかにに記載の方法。
【請求項12】
式(IIa)、(IIb)、(VIIa)および/または(VIIb)で表される化合物中のR3が、臭素原子を表す、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
反応が、促進剤の存在で行われる、請求項1、4、7または8のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
促進剤が、銀トリフレート、ボロントリフルオライドジエチルエーテラート、トリメチルシリルトリフレートブロマイド、N-ヨードスクシンイミドおよびジメチルチオメチルスルホニウムトリフレートからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
促進剤が、銀トリフレートである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
反応が、4Åmolシーブの存在で、無水条件下で行われる、請求項1、4、7または8のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
脱保護が、C1-4アルコールおよび1〜4個の炭素原子を有するアルカリ金属アルコキシドの存在で、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフラン中で行われる、請求項2または5に記載の方法。
【請求項18】
脱保護が、メタノールおよびナトリウムメトキシドの存在で、ジクロロメタン中で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
脱保護が、水、アルカリ金属水酸化物およびC1-4アルコールの存在で、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフラン中で行われる、請求項2または5に記載の方法。
【請求項20】
脱保護が、テトラヒドロフラン中で行われ、アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウムであり、アルコールが、メタノールである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
一般式(Ib)で表されるステロイド修飾ソラタリオースを製造するための請求項1に記載の方法であり、R4が、ベンゾイルまたはp-トルオリル保護基を表す方法。
【請求項22】
一般式(IIa)または(IIb)で表される化合物と一般式(III)で表される化合物との反応が、立体的に阻害された非求核性塩基の存在で行われる、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
立体的に阻害された非求核性塩基が、2,6-ルチジン、2,4,6-コリジンまたは2,6-t-ジブチル-4-メチルピリジンから選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1または11で定義した一般式(Ia)で表されるステロイド修飾チャコトリオースであり、R1が、トマチジン-3-イルまたはデミシジン-3-イル基を表すチャコトリオース。
【請求項25】
請求項4、10または11のいずれかで定義した一般式(VIIIa)で表される化合物;請求項7、10または11のいずれかで定義した一般式(VIIIb)で表される化合物;請求項3、10または11のいずれかで定義した一般式(VIa)で表される化合物;請求項6、10または11のいずれかで定義した一般式(VIb)で表される化合物;請求項2、10または11のいずれかで定義した一般式(Va)または(Vb)で表される化合物;請求項1、10または11のいずれかで定義した一般式(IVa)または(IVb)で表される化合物;または、請求項8、10または11のいずれかで定義した一般式(IXb)で表される化合物。

【公表番号】特表2009−513526(P2009−513526A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518155(P2006−518155)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007537
【国際公開番号】WO2005/005454
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(504068694)グライコメッド・サイエンシーズ・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】