説明

ステンシル用刷毛およびその製造方法

【課題】ステンシルされた着色面の着色は良好で、着色の微細なコントロールができ、インクの色変えが可能なステンシル用刷毛を提供する。
【解決手段】柄部にパッド部を設けてなるステンシル用刷毛であって、前記パッド部はラテックスを成形型を用いて発泡成形して得られた発泡成形体の発泡部と表皮部とからなり、前記パッド部の発泡部の断面形状は扇形で、前記扇形の円弧状の表面に前記表皮部が設けられ、前記発泡部の扇形の底部は柄部に固定されているステンシル用刷毛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンシル用刷毛およびその製造方法に関し、特にラテックスの発泡成形体の発泡部と表皮部を用いたステンシル用刷毛およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステンシルは、文字、図形または模様などを打ち抜いたステンシル型を、ステンシルしようとする紙、木、プラスチック等の上に固定し、ステンシル用刷毛にインクをつけ、ステンシル型の上からステンシル用刷毛で軽くたたくようにしてインクを刷り込んで着色し、ステンシル型をはずして、文字、図形または模様を複製することにより行なわれている。
【0003】
また、人体の皮膚にステンシルにより装飾するボディーペイントも行なわれている。
従来、ステンシルに用いられているステンシル用刷毛には、図5に示す様に、木、竹あるいはプラスチックからなる柄部21の先端にパッド部22を設けた刷毛が用いられていた。パッドに部は、発泡ポリウレタンなどの発泡プラスチックの発泡部のスポンジが用いられていた(特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案公報第3028503号公報
【特許文献2】登録実用新案公報第3054991号公報
【特許文献3】特開2002−103763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のステンシル用刷毛は、パッド部がスポンジで形成されているために、スポンジの表面は粗く網目状で、網目の孔は大きく、内部に深く入り込み孔が連通している。そのために、パッド部にインクをつけると、インクが網目の孔の中に吸い込まれ、パッド部の表面にインクが平らにつきにくいので、ステンシルされた着色面はザラザラした網目で気泡の目が出やすい欠点があった。また、スポンジは内部にインクを吸い込むので、ステンシルされた着色面に付着するインクの量が一定にならないので、着色の微細なコントロールができない。また、スポンジは内部にインクを吸い込むので、ステンシル用刷毛を他のインクに色変えして使用しようとすると、先のインクを十分に落とすことができないので、インクの色変えは不可能であった。
【0006】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、ステンシル用刷毛のパッド部にラテックスの発泡成形体の発泡部と表皮部を用いることにより、ステンシルされた着色面の着色が良好で、着色の微細なコントロールができ、インクの色変えが可能なステンシル用刷毛およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するステンシル用刷毛は、柄部にパッド部を設けてなるステンシル用刷毛であって、前記パッド部はラテックスを成形型を用いて発泡成形して得られた発泡成形体の発泡部と表皮部とからなり、前記パッド部の発泡部の断面形状は扇形で、前記扇形の円弧状の表面に前記表皮部が設けられ、前記発泡部の扇形の底部は柄部に固定されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記の課題を解決するステンシル用刷毛の製造方法は、柄部にパッド部を設けてなるステンシル用刷毛の製造方法であって、ラテックスを成形型を用いて発泡成形して得られた発泡成形体を扇形に切断して、前記扇形の本体は発泡部からなり、前記扇形の円弧の表面には表皮部が設けられている切断片を得る工程、前記切断片の扇形の発泡部の底部を柄部に固定して、前記柄部に前記発泡部と表皮部とからなるパッド部を設ける工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステンシルされた着色面の着色が良好で、着色の微細なコントロールができ、インクの色変えが可能なステンシル用刷毛およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のステンシル用刷毛の一実施態様を示す概略断面図である。
【図2】本発明のステンシル用刷毛のパッド部を示す概略図である。
【図3】本発明のステンシル用刷毛の製造方法の一実施態様を示す工程図である。
【図4】本発明における発泡成形体の切断片の一実施態様を示す概略図である。
【図5】従来のステンシル用刷毛を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、ステンシル用刷毛のパッド部に、ラテックスの発泡成形体の発泡部と表皮部を用い、特に前記表皮部をインクの付着面に用いることを特徴とする。
【0012】
すなわち、本発明に係るステンシル用刷毛は、柄部にパッド部を設けてなるステンシル用刷毛であって、前記パッド部はラテックスを成形型を用いて発泡成形して得られた発泡成形体の発泡部と表皮部とからなり、前記パッド部の発泡部の断面形状は扇形で、前記扇形の円弧状の表面に前記表皮部が設けられ、前記発泡部の扇形の底部は柄部に固定されていることを特徴とする。
【0013】
図1は、本発明のステンシル用刷毛の一実施態様を示す概略断面図である。同図1に示す様に、本発明のステンシル用刷毛は、柄部1の先端にインクを付着させるパッド部2を設けたものである。前記パッド部2は、ラテックスを成形型を用いて発泡成形して得られた発泡成形体の発泡部3と表皮部4とからなる。前記パッド部2の発泡部3の断面形状は扇形からなり、前記発泡部3の扇形の円弧状の表面に前記表皮部4が設けられている。前記発泡部3の扇形の底部5は柄部1に固定されている。
【0014】
図2は、本発明のステンシル用刷毛のパッド部を示す概略図である。パッド部2の発泡部3の形状は断面形状は扇形からなり、かつ正面、背面、左右側面の4面が全て扇形からなる。また、表皮部4は、上から見た平面の中央部が凸状で4隅が凹みになり、平面は弯曲した形状になっている。発泡部3のスポンジは、ステンシルのたたく力に対して緩衝作用をする。また、表皮部4は平面が弯曲した形状になっているので、表皮部のインクを付着する面および角度を変えることができる。
【0015】
本発明に係るステンシル用刷毛の製造方法は、柄部にパッド部を設けてなるステンシル用刷毛の製造方法であって、ラテックスを成形型を用いて発泡成形して得られた発泡成形体を扇形に切断して、前記扇形の本体は発泡部からなり、前記扇形の円弧の表面には表皮部が設けられている切断片を得る工程、前記切断片の扇形の発泡部の底部を柄部に固定して、前記柄部に前記発泡部と表皮部とからなるパッド部を設ける工程を有することを特徴とする。
【0016】
図3は、本発明のステンシル用刷毛の製造方法の一実施態様を示す工程図である。同図3に示す様に、本発明のステンシル用刷毛の製造方法は、まずラテックスを成形型を用いて発泡成形して得られた円柱状の発泡成形体11を用意する(図3(a)参照)。次に、前記円柱状の発泡成形体11を円柱の軸方向に対して垂直方向(AA線方向)に輪切にして円板状の発泡成形体12を得る(図3(b)参照)。円柱状の発泡成形体11は、円柱状の成形型を用いて、原料のラテックスを発泡成形して得られたものである。発泡成形体11の表面は、発泡成形により発泡したラテックスが成形型と接触して形成された表皮部4で被覆されている。発泡成形体11の本体部分は、輪切にした円板状の発泡成形体12の発泡部3に示す様に、発泡したラテックスの発泡部からなる。
【0017】
次に、前記円板状の発泡成形体12を扇形になる様に切断して、対向する2面の形状が扇形の切断片14を得る(図3(c)参照)。切断片の扇形の本体は発泡部3からなり、扇形の円弧の表面には表皮部4が設けられている。
【0018】
次に、前記切断片14の発泡部3の扇形の底部15を柄部1に固定する。柄部1は中空で、中央部の孔と、その周囲に複数の切り目7が設けられている。切断片14の発泡部3の底部15を指で押さえて、切り目7を開いて柄部1の孔に押し込んだ後、リング17を柄部1の下部から嵌め込んで、切り目7の部分に挿着して切断片14の発泡部3を固定してステンシル用刷毛を得る(図3(d),(e)参照)。なお、発泡部の固定には、リング17と接着剤を併用してもよい。
【0019】
本発明において、発泡成形体の原料のラテックスは、天然ゴム、生ゴム、合成ゴムのラテックスが用いられる。成形型を用いた発泡成形は、特に制限はなく、通常の発泡成形が用いられる。
【0020】
柄部には、特に制限はなく、例えばプラスチック、木、竹等が用いられる。
パッド部は、発泡成形体の切断片の発泡部と、発泡部の表面の一部分に設けられた表皮部とからなる。
【0021】
発泡部はラテックスのスポンジ状の構造からなり、そのスポンジ状の構造は従来の発泡ポリウレタンなどのスポンジよりも孔が小さく、柔らかく弾性を有する。そのために、発泡部はステンシルを行なう場合のパッド部のクッションの作用をする。
【0022】
表皮部は、発泡成形により発泡したラテックスが成形型と接触して形成された皮膜からなり、発泡部の表面を薄く被覆している。表皮部の表面は成形型の表面と同様に平面であり、平面の中に微細な孔および小さな凹凸が存在し、各孔はスポンジの様に連結しないで独立していて、かつ孔の深さは浅く表皮部の内部に留まっている。表皮部と発泡部の界面は接着しているが、表皮部と発泡部の組織は分かれており、表皮部の組織は発泡部と比較して緻密であり、表皮部の孔は発泡部のスポンジに連結している様なことはない。また、表皮部は弾性がある。表皮部の厚さは、0.5mm以下が好ましい。
【0023】
図4は、本発明における発泡成形体の切断片の一実施態様を示す概略図である。図4(a)は正面図(背面図は同一)、図4(b)は右側面図(左側面図は同一)、図4(c)は底面図である。ラテックスの発泡成形体の切断片14は、図4(a)に示す様に、正面図および背面図の2面の断面形状だけが扇形で、扇形の本体は発泡部3からなり、扇形の円弧18の表面には表皮部4が設けられている。この状態では、切断片の表皮部4の表面は、二次元的に扇形の円弧の形状になっている。
【0024】
切断片を柄部に押し込んで固定するために、図4(a)の正面図および背面図の切断片の底部15のCの位置(図の紙面の上下方向)を2つの指で押さえて、図4(b)のP線方向に押すと、発泡部3のCの位置が収縮して、正面図、背面図、右側面図、左側面図の4面全ての断面形状が扇形となる。表皮部4の表面は、図2に示す様に、三次元的に扇形の円弧の形状に変形する。なお、図4(a)、(c)の点線で示す形状は、Cの位置をP線方向に押して形成された変形した状態を示す。
【0025】
切断片の底部を指で押さえて柄部に押し込んで固定する場合、切断片の底部の固定する位置を変えることにより、表皮部の表面の三次元的に扇形の円弧の形状を変えることができる。切断片の底部の固定する位置が、頂点16に近いと扇形の円弧のカーブは緩やかになり、頂点から遠くなると扇形の円弧のカーブは急になる。
【0026】
表皮部4の表面は、三次元的に扇形の円弧の形状で、平面が弯曲した形状なので、紙等に接触する表皮部の面および角度を変えてステンシルを行うことができる。また表皮部に付着したインクは発泡部に移行することはなく、発泡部にインクが付着することを防止できる。
【0027】
本発明のパッド部の表皮部の表面にインクを付着してステンシルを行なう場合、表皮部の表面は成形型の表面と同様の平面であり、表皮部の微細な孔が発泡部のスポンジに連結しないで、独立しているので、ステンシルされた着色面の着色はなめらかで気泡の跡はなく均一で良好であり、着色の微細なコントロールができる。また、インクの色変えをする場合には、柔らかい紙で表皮部の前のインクを拭き取ることにより、容易に新しいインクを使用することができる。
【実施例1】
【0028】
図3に示す方法により、ステンシル用刷毛を製造した実施例を示す。
天然ゴムのラテックスを成形型を用いて発泡成形して得られた円柱状の発泡成形体11を、輪切にして直径60mm、厚さ23mmの円板状の発泡成形体12を得た。円板状の発泡成形体の本体の発泡部はラテックスのスポンジからなり、発泡部3の周面は表皮部4で被覆されている。
【0029】
次に、前記円板状の発泡成形体12の円面を切断線19に沿って8等分に切断して、2辺の長さが30mm、厚さ23mmの扇形の切断片14を得る。切断片の扇形の本体は発泡部からなり、扇形の円弧の表面には表皮部が設けられている。前記切断片からパッド部が形成される。
【0030】
次に、前記切断片14の発泡部3の扇形の底部15を柄部1に固定する。先端部に複数の切り目7が設けられている柄部1の孔に、切り目7を開いて、前記切断片14の発泡部3の底部15を指で押さえて押し込む。次に、リング17を柄部1の下部から嵌め込んで、切り目7の部分に挿着して切断片14の発泡部3を固定してパッド部を形成してステンシル用刷毛を得る。
【0031】
このステンシル用刷毛を用いてステンシルを行なった。紙の上に星模様を打ち抜いたステンシル型紙を固定し、パッド部の表皮部に赤色インクをつけて、ステンシル型紙の上から軽くたたいてステンシルを行なった。得られた色模様は、着色面の赤色の着色はなめらかで、気泡の跡はなく均一であった。また、パッド部の発泡部のスポンジの緩衝作用により、たたく力の衝撃が吸収され、手に響くことがなく、疲れることがなかった。
【0032】
次に、パッド部の表皮部についている赤色インクを、柔らかい紙で拭き取った後、表皮部に青色インクをつけて、ステンシルを行なった。得られた色模様は、青色で赤色の混じりはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のステンシル用刷毛は、着色面の着色が良好なので、紙、木、プラスチック、人体の皮膚等のステンシルに利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 柄部
2 パッド部
3 発泡部
4 表皮部
5 底部
7 切り目
11 円柱状の発泡成形体
12 円板状の発泡成形体
14 切断片
15 底部
16 頂点
17 リング
18 円弧
19 切断線
21 柄部
22 パッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部にパッド部を設けてなるステンシル用刷毛であって、前記パッド部はラテックスを成形型を用いて発泡成形して得られた発泡成形体の発泡部と表皮部とからなり、前記パッド部の発泡部の断面形状は扇形で、前記扇形の円弧状の表面に前記表皮部が設けられ、前記発泡部の扇形の底部は柄部に固定されていることを特徴とするステンシル用刷毛。
【請求項2】
前記表皮部にインクを付着してステンシルを行なう請求項1記載のステンシル用刷毛。
【請求項3】
柄部にパッド部を設けてなるステンシル用刷毛の製造方法であって、ラテックスを成形型を用いて発泡成形して得られた発泡成形体を扇形に切断して、前記扇形の本体は発泡部からなり、前記扇形の円弧の表面には表皮部が設けられている切断片を得る工程、前記切断片の扇形の発泡部の底部を柄部に固定して、前記柄部に前記発泡部と表皮部とからなるパッド部を設ける工程を有することを特徴とするステンシル用刷毛の製造方法。
【請求項4】
前記切断片を得る工程は、発泡成形して得られた円柱状の発泡成形体を輪切にして円板状の発泡成形体を得た後、前記円板状の発泡成形体を2面の断面形状が扇形になるように切断して、前記扇形の本体は発泡部からなり、前記扇形の円弧の表面には表皮部が設けられている切断片を得ることを特徴とする請求項3記載のステンシル用刷毛の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−104569(P2011−104569A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265465(P2009−265465)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(592093567)株式会社ツキネコ (2)
【Fターム(参考)】