説明

ステントを被覆する方法

【課題】植え込み可能な医療装置を被覆するための改善された方法を提供する。
【解決手段】植え込み可能な医療装置を被覆する方法は、被膜の中に含まれている治療剤の安定性を改善する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願に対するクロス・リファレンス〕
本特許出願は、2004年、7月27日に出願されている、先の米国仮特許出願第60/591,472号の恩典を主張している。
【0002】
〔発明の背景〕
〔発明の分野〕
本発明は種々のステントを被覆するための方法に関連しており、特に、治療剤によりステントを被覆するための方法に関連している。
【0003】
〔関連技術の論述〕
多くの個人が、心臓およびその他の主要な器官に灌流している血管の進行性の封鎖(blockage)により生じる循環系の疾患に罹っている。このような個人におけるさらに深刻な血管の封鎖は高血圧症、虚血性外傷、発作、または心筋梗塞を引き起こす場合が多い。冠動脈の血流を制限または遮断するアテローム性動脈硬化症の病変は虚血性の心臓病の主因である。経皮的で経内腔的な冠動脈血管形成術は、動脈を通る血流の増加を目的としている医療方法である。この経皮的で経内腔的な冠動脈血管形成術は、冠動脈血管の狭窄症のための有力な治療方法である。この方法の使用の増加は、冠動脈バイパス手術に比較した場合における、その比較的に高い成功率およびその最少の侵襲性に起因している。このような経皮的で経内腔的な冠動脈血管形成術に付随する制限は、処置の直後に生じる可能性のある血管の突然の閉鎖、および処置の後に漸進的に生じる再狭窄、である。加えて、再狭窄は伏在静脈のバイパス移植処置を受けている患者における慢性の問題である。このような急性の閉塞のメカニズムは幾つかの要因を含むと考えられ、結果的に動脈の閉鎖を伴う脈管の反動および/または新しく切開した血管における損傷した長さの部分に沿う血小板およびフィブリンの滞積により生じる可能性がある。
【0004】
上記のような経皮的で経内腔的な冠動脈血管形成の後の再狭窄は、脈管の損傷により開始されるさらに漸進的な過程、である。血栓症、炎症、成長因子およびサイトカインの放出、細胞増殖、細胞移動、および細胞外基質合成を含む複数の過程はそれぞれ、再狭窄の進行の原因になる。
【0005】
再狭窄の正確なメカニズムは完全に理解されていないが、この再狭窄の進行の一般的な様相は既に認識されている。正常な動脈壁内において、平滑筋細胞は、1日当たり約0.1%未満の、遅い速度で増殖する。このような血管壁部内の平滑筋細胞は、収縮性の器官(contractile apparatus)により占有される細胞質容積の80%〜90%により特徴付けられる収縮性の表現型で存在している。一方、小胞体、ゴルジ装置、および遊離リボゾームはわずかであり、その核周囲領域内に存在している。また、細胞外基質は平滑筋細胞を囲んでいて、これら平滑筋細胞をその収縮性の表現型の状態に維持するための要因と考えられているヘパリン様グリコシルアミノグリカンに富んでいる(キャンプベル(Campbell)およびキャンプベル(Campbell),1985年)。
【0006】
血管形成中の冠動脈内バルーン・カテーテルの、圧力による拡張時に、その血管壁部内の平滑筋細胞が傷ついて、血栓性および炎症性の応答が開始する。血小板、侵襲性マクロファージおよび/または白血球から放出されるか、あるいは、平滑筋細胞から直接的に放出される血小板由来増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、上皮増殖因子、トロンビン等のような種々の細胞由来型の増殖因子が、内側平滑筋細胞内における増殖性および遊走性の応答を引き起こす。これらの細胞は、その収縮性の表現型から少数の収縮性微細線維の束(contractile filament bundles)、広範囲にわたる粗面小胞体、ゴルジ装置、および遊離リボゾームのみにより特徴付けられる合成の表現型に変化する。増殖/移動は通常において損傷を受けてから1日〜2日以内に始まり、それから数日後に最高状態に到達する(キャンプベル(Campbell)およびキャンプベル(Campbell),1987年、クロウズ(Clowes)およびシュワルツ(Schwartz),1985年)
【0007】
娘細胞は、動脈平滑筋の内膜層に移動して増殖し続け、著しい量の細胞外基質タンパク質を分泌する。これらの増殖、移動、および細胞外基質の合成は、損傷した内皮層が修復されるまで継続し、この時点で、その増殖は、損傷を受けてから通常7日〜14日以内に、その脈管内膜内において減速する。このように新しく形成された組織は新内膜と呼ばれる。その後の3ヶ月〜6ヶ月にかけて生じるさらなる脈管の狭窄化は主に陰性または緊縮的な再造形による。
【0008】
上記の局所的な増殖および移動と同時に、炎症性の細胞が脈管の損傷部位に付着する。また、損傷を受けてから3日〜7日以内に、炎症性の細胞が脈管壁のさらに深い層に移動する。バルーンによる損傷またはステントの植え込みのいずれかを採用した動物体モデルにおいて、この炎症性の細胞は少なくとも30日間にわたりその脈管の損傷部位において存続可能である(タナカ(Tanaka)他、1993年、エデルマン(Edelman)他、1998年)。それゆえ、このような炎症性の細胞は存在して、再狭窄の急性および慢性の様相の両方に原因になる可能性がある。
【0009】
多数の物質が再狭窄において推定される抗増殖作用についてこれまで調べられており、実験的な動物体モデルにおいてある程度の活性を示している。これら動物体モデルにおける脈管内膜の過形成の程度を効果的に減少させることが分かった一部の物質は、ヘパリンおよびヘパリンフラグメント(heparin fragments)(クロウズ,A.W.(Clowes, A.W.)およびカルノブスキー,M.(Karnovsky, M.),ネイチャー(Nature),265巻,p.25〜26,1977年、ガイトン,J.R.(Guyton, J.R.)他,サーキュレーション・リサーチ(Circ. Res.),46巻,p.625〜634,1980年、クロウズ,A.W.(Clowes, A.W.)およびクロウズ,M.M.(Clowes, M.M.),ラボラトリー・インベスティゲーション(Lab. Invest.),52巻,p.611〜616,1985年,クロウズ,A.W.(Clowes, A.W.)およびクロウズ,M.M.(Clowes, M.M.),サーキュレーション・リサーチ(Circ. Res.),58巻,p.839〜845,1986年、マジェスキー(Majesky)他,サーキュレーション・リサーチ(Circ. Res.),61巻,p.296〜300,1987年,スノー(Snow)他,アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー(Am. J. Pathol.),137巻,p.313〜330,1990年,オカダ,T.(Okada, T.)他,ニューロサージャリ−(Neurosurgery),25巻,p.92〜98,1989年)、コルヒチン(クーリエ,J.W.(Currier, J.W.)他,サーキュレーション(Circ.),80巻,p.11〜66,1989年)、タクソール(ソロット,S.J.(Sollot, S.J.)他,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J. Clin. Invest.),95巻,p.1869〜1876,1995年)、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(パウエル,J.S.(Powell, J.S.)他,サイエンス(Science),245巻,p.186〜188,1989年)、アンギオペプチン(ランデルガン,C.F.(Lundergan, C.F.)他,アメリカン・ジャーナル・オブ・カージオロジー(Am. J. Cardiol.),17巻(増補B),p.132B〜136B,1991年)、シクロスポリンA(ジョナッソン,L.(Jonasson, L.)他,プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci.),85巻,p.2303,1988年)、ヤギ−抗ラビットPDGF抗体(goat-anti-rabbit PDGF antibody)(ファーンズ,G.A.A.(Ferns, G.A.A.)他,サイエンス(Science),253巻,p.1129〜1132,1991年)、テルビナフィン(ネメセック,G.M.(Nemecek, G.M.)他,ジャーナル・オブ・ファマコロジカル・エクスペリメンタル・テラピー(J. Pharmacol. Exp. Thera.),248巻,p.1167〜1174,1989年)、トラピジル(リウ,M.W.(Liu, M.W.)他,サーキュレーション(Circ.),81巻,p.1089〜1093,1990年)、トラニラスト(フクヤマ,J.(Fukuyama, J.)他,ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Eur. J. Pharmacol.),318巻,p327〜332,1996年)、インターフェロン−ガンマ(ハンソン,G.K.(Hansson, G.K.)およびホルム,J.(Holm, J.),サーキュレーション(Circ.),84巻,p.1266〜1272,1991年)、ラパマイシン(マークス,S.O.(Marx, S.O.)他,サーキュレーション・リサーチ(Circ. Res.),76巻,p.412〜417,1995年)、ステロイド(コルバーン,M.D.(Colburn, M.D.),他,ジャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー(J. Vasc. Surg.),15巻,p510〜518,1992年、さらにバーク,B.C.(Berk, B.C.)他,ジャーナル・オブ・アメリカン・カレッジ・オブ・カージオロジー(J. Am. Coll. Cardiol.),17巻,p.111B〜117B,1991年も参照されたい)、電離放射線(ワインバーガー,J.(Weinberger, J.)他,インターナショナル・ジャーナル・オブ・ラジエーション・オンコロジー・バイオロジー・フィジクス(Int. J. Rad. Onc. Biol. Phys.),36巻,p.767〜775,1996年)、融合毒素(fusion toxins)(ファーブ,A.(Farb, A.)他,サーキュレーション・リサーチ(Circ. Res.),80巻,p.542〜550,1997年)、アンチセンス・オリゴヌクレオチド(シモンズ,M.(Simons, M.)他,ネイチャー(Nature),359巻,p.67〜70,1992年)、および遺伝子ベクター(チャン,M.W.(Chang, M.W.)他,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベステイゲーション(J. Clin. Invest.),96巻,p.2260〜2268,1995年)を含む。生体外での平滑筋細胞における抗増殖性作用は、ヘパリンおよびヘパリン抱合体、タクソール、トラニラスト(tranilast)、コルヒチン、ACE阻害薬、融合毒素(fusion toxins)、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、ラパマイシンおよび電離放射線を含む上記物質の多くにおいてこれまでに示されている。したがって、平滑筋細胞阻害の多様なメカニズムを伴う物質は、脈管内膜の過形成の減少において治療の有用性を有する可能性がある。
【0010】
しかしながら、動物体のモデルとは対照的に、全身性の薬理学的手段により再狭窄を防ぐための人間の血管形成に関わる患者における試みは、今までのところは失敗している。アスピリン−ジピリダモール、チクロピジン(ticlopidine)、抗凝固療法(急性用のヘパリン、慢性用のワルファリン、ヒルジン、またはヒルログ(hirulog))、トロンボキサン・レセプタ拮抗作用、またはステロイドのいずれも再狭窄の防止に効果的ではなかったが、血小板阻害因子は、血管形成後の急性の再閉塞の防止に効果的であった(マク(Mak)およびトポル(Topol),1997年、ラング(Lang)他,1991年、ポプマ(Popma)他,1991年)。血小板GPIIb/IIIaレセプターである拮抗物質のレオプロ(Reopro)(登録商標)はまだ調査中であるが、血管形成およびステント処理の後の再狭窄における減少において決定的な結果を示していない。さらに、やはり再狭窄の予防に有効でなかった他の物質は、カルシウムチャネル拮抗物質、プロスタサイクリン模倣薬(prostacyclin mimetics)、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、セロトニン・レセプタ拮抗物質、および抗増殖性物質を含む。これらの物質は全身系的に投与する必要があるが、治療的に有効な投薬の達成は不可能と思われ、抗増殖性(または抗再狭窄性)を示す濃度は、これらの物質の既知の毒性濃度を超える可能性があるため、平滑筋の抑制を生じるために十分な量は達成不可能と思われる(マク(Mak)およびトポル(Topol),1997年、ラング(Lang)他,1991年、ポプマ(Popma)他,1991年)。
【0011】
食物用魚油サプリメントまたはコレステロール低下剤を利用して再狭窄を予防するための有効性を調べた別の臨床試験は、矛盾した、または否定的な結果を示すため、血管形成術後の再狭窄を予防するために臨床的に利用可能な薬理学的物質はいまだに全く存在していない(マク(Mak)およびトポル(Topol),1997年、フランクリン(Franklin)およびファクソン(Faxon),1993年、セルイス,P.W.(Serruys, P.W.)他,1993年)。最近の観察結果は、抗脂質/抗酸化性の物質であるプロブコールが再狭窄の予防に有用である可能性があるが、この作用は確認を要することを示唆している(ターディフ(Tardif)他,1997年、ヨコイ(Yokoi)他,1997年)。現在、このプロブコールは、米国において使用が認可されておらず、緊急の血管形成においては、30日間の予備治療期間によりその使用が妨げられている。加えて、電離放射線の適用は、ステントによる患者の体内における血管形成術後の再狭窄の減少または予防において相当な将来性を示している(テイルスタイン(Teirstein)他,1997年)。しかしながら、現在において、再狭窄に対する最も有効な治療方法は、反復血管形成術(repeat angioplasty)、アテローム切除法、または冠動脈バイパス移植法であり、この理由は、現在、いずれの治療剤も血管形成術後の再狭窄の予防のための使用について食品医薬品局の認可を得ていないからである。
【0012】
全身性の薬理学的治療と異なり、ステントは、再狭窄を著しく減少させることにおいて有効であることを立証している。一般的に、ステントは、バルーン拡張性でスロット付きの金属チューブ(通常的にステンレス・スチールであるがこれに限らない)であり、血管形成処理した冠動脈の内腔の中において拡張すると、その動脈壁部に対する剛性の支持骨格により構造的な支持を行なう。この支持は血管内腔の開通性の維持に役立つ。2種類の無作為化した臨床試験において、ステントは、最小の内腔部直径を増大させて、6ヶ月目における再狭窄の発生を排除はしないが減少することにより、経皮的で経内腔的な冠動脈の血管形成術後の血管造影による結果を高めている(セルイス(Serruys)他,1994年、フィッシュマン(Fischman)他,1994年)。
【0013】
加えて、ステントのヘパリン被覆はステント植え込み後における亜急性の血栓症を減少する付加的な有益性を有すると思われる(セルイス(Serruys)他、1996年)。したがって、ステントによる再狭窄した冠動脈の持続的な機械的拡張が、ある程度の再狭窄の予防手段になることが示されており、ヘパリンによってステントを被覆することは、損傷を受けた組織部位における薬物の局所的送達の実行可能性があり、臨床的な有用性もあることがわかっている。
【0014】
上述したように、ヘパリン被覆型のステントの使用は、局所的な薬物送達の実行可能性および臨床的な有用性を立証しているが、このような局所送達用の装置に特定の薬物または薬物の組み合わせ物を固定する方法は、この種の治療の効果においてある役割を果たす。例えば、その局所的な送達装置に薬物/薬物の組み合わせ物を固定するために利用する方法および材料は、その薬物/薬物の組み合わせ物の作用を妨げてはならない。加えて、利用される上記の方法および材料は、生体適合性であり、特定の薬物/薬物の組み合わせ物をその送達中および一定の期間にわたり局所的な送達装置に維持する必要がある。例えば、その局所的な送達装置の送達中に薬物/薬物の組み合わせ物が除去されることは、その装置の機能不全を潜在的に引き起こすことになる。
【0015】
したがって、例えば、アテローム性動脈硬化症により生物学的に誘発されるか、または、例えば、経皮的で経内腔的な冠動脈血管形成術によって機械的に誘発される、内膜の肥厚化を生じさせる血管の傷害の予防および治療のための薬物/薬物の組み合わせ物、およびこれに付随する局所的な送達装置に対する要望が存在している。加えて、送達および位置決め中に局所送達装置に薬物/薬物の組み合わせ物を保持すること、およびその薬物/薬物の組み合わせ物が一定期間にわたり治療用の投与量で放出されることを確実にすることが要望されている。
【0016】
さまざまなステント被膜および合成物が、内膜の肥厚化を生じさせる傷害の予防および治療のために提案されている。これらの被膜は、それら自体が、傷害を受けている内腔の壁部に対してステントが与える刺激を減少させることができるので、血栓症または再狭窄の傾向が減少できる。あるいは、この被膜は平滑筋組織の増殖または再狭窄を減少させる医薬品/治療剤または薬物を内腔に送達できる。この薬剤の送達のための機構は、バルク・ポリマーを通るか、またはそのポリマー構造の中に形成されている気孔を通る、あるいは生体分解性の被膜の侵食による、薬剤の拡散である。
【0017】
生体吸収性であると共に生体安定性である種々の合成物がステントのための被膜として報告されている。これらは一般的に、例えば、ラパマイシン、タクソール等の医薬品/治療剤または薬物を包むか、あるいは例えば、ヘパリン被覆型ステントのような、表面にそのような薬剤を結合させる、高分子の被膜である。これらの被膜は、浸漬、噴霧、またはスピン・コーティング法を含むがこれらに限らない多数の方法でステントに塗布(applied)される。
【0018】
適切な治療剤およびその治療剤を組み込む適切な被膜の選択は重要であるが、その薬剤の安定性を維持することも重要である。したがって、その治療剤を安定化させるためのステップを含む植え込み可能な医療装置を被覆するための方法を開発することに対する要望が存在している。
【0019】
〔発明の概要〕
本発明の方法は、治療剤と共に植え込み可能な医療装置を被覆することに付随する困難を解消するための手段を提供している。
【0020】
一例の態様によれば、本発明は、植え込み可能な医療装置を被覆するための方法に関連している。この方法は、プライマー被膜を植え込み可能な医療装置に塗布する工程であって、パリレン層の塗布、および、自己酸化開始因子を減少させるための、そのパリレン層のアニーリング、を含む、工程と、ポリマーおよび治療剤を含有する下部被膜溶液(basecoat solution)を調製して、その下部被膜溶液を、パリレンにより被覆されている上記の植え込み可能な医療装置に塗布する工程であって、この下部被膜溶液は酸素の存在および酸素に対するその下部被膜溶液の曝露を減少させるための方法を利用して調製および塗布される、工程と、少なくとも1種類のポリマーを含有する上部被膜溶液を調製して、その上部被膜溶液を上記下部被膜溶液により被覆されている植え込み可能な医療装置に塗布する工程であって、この上部被膜溶液は酸素の存在および酸素に対するその上部被膜溶液の曝露を減少させるための方法を利用して調製および塗布される、工程と、全ての被膜成分を再溶解する可能性を有する溶媒を塗布する工程と、自己酸化から上記治療剤を保護するための被膜の形態を形成する工程と、上記の被覆された医療装置を検査、包装、および滅菌する工程を含む、最終的に、その植え込み可能な医療装置を処理する、工程であって、自己酸化から上記治療剤を保護する工程、フリーラジカルの存在およびフリーラジカルに対する全ての材料の曝露を減少させる工程、ならびに酸素の存在および酸素に対する全ての材料の曝露を減少させる工程、を含む、工程と、を含む。
【0021】
本発明の方法は、上記治療剤のガラス転移温度を高めることにより、自己酸化からその治療剤を保護する工程と、フリーラジカルおよび自己酸化開始因子の存在および/またはこれらに対する種々の使用材料の曝露を減少させる工程、ならびに酸素の存在および/または酸素に対する種々の材料の曝露を減少させる工程、を含む、治療剤の安定性を高めるための多数のステップを含む。
【0022】
本発明の上記およびその他の特徴および利点は、以下の、添付図面において示されているような、本発明の好ましい実施形態の、さらに詳細な説明により、明らかになるであろう。
【0023】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
本発明は、ラパマイシン(rapamycin)等のような1種類以上の治療剤によってステントまたはその他の植え込み可能な医療装置を被覆するための方法に関連している。一例の方法が図1のフロー・チャートにおいて記載されている。この方法の第1の部分はプライマーの供給を含む。この例示的な実施形態において、その方法の第1のステップは、ステントの提供であり(ステップ100)、次に、被覆材料の提供があり(ステップ101)、その後に、その材料の表面の調製および処理がある(ステップ102)。このステップ102は、被覆されるステントから内毒素を除去するために浄化溶液を利用する工程を含む。この浄化溶液は多数の浄化溶液、例えば、種々のケイ酸塩を含む水酸化カリウム溶液等のような高いpH値の溶液を含むことができる。次のステップも、表面調製および処理のステップである(ステップ104)。このステップ104において、例えば、不飽和状態の有機シランの溶液等のような、シラン溶液を用いてプライマー層の堆積のためにステントの表面を調製する。次のステップは、プライマー自体の供給である(ステップ106)。この例示的な実施形態においては、パリレンが蒸着法によりステントに塗布される。パリレンが塗布されると、そのステントが包装されて計量される(ステップ108)。さらに、ステントが計量されると、これらは容器またはビンの中に置かれる。これらのビンは多数の適切な材料により形成できる。例示的な実施形態において、これらのビンはポリプロピレンにより形成されている。
【0024】
上記方法の第2の部分は下部被膜(ベースコート)の塗布を含む。この方法の第2の部分における第1のステップは、下部被膜の調製である(ステップ110)。この下部被膜は、任意の適切な生体適合性のポリマーおよび治療剤を含むことができる。これらの治療剤およびポリマーは相溶性を有していることが当然に好ましい。この例示的な実施形態において、上記下部被膜の溶液は、ポリエチレン・コ−ビニルアセテート、ポリブチルメタクリレート、およびシロリムス等のようなラパマイシンのいずれかを含有している。さらに、この溶液は標準的な反応器の中において調製される。次に、この溶液はデカンテーションによりその次のステップのためにさらに小さな容器に移される。この次のステップは、ステントの被覆である(ステップ112)。このステップにおいて、ステントは上記の下部被膜溶液により被覆される。これらのステントは任意の適切な様式で被覆できる。例示的な実施形態において、これらのステントは噴霧被覆技法を利用して被覆される。また、窒素が、上記下部被膜溶液のためのキャリヤ・ガスとして利用されている。このステップ112において、ステントの半分が被覆され、次に、ステップ114において空気乾燥される。半分だけ被覆されたステントが最低30分間にわたり約30〜約55%の相対湿度で乾燥される。その空気の温度はほぼ室温に維持される。その乾燥室内の空気は継続的に再循環している。この乾燥ステップ114の完了時に、そのステントの別の半分が被覆されて(ステップ116)、ステップ118において再び乾燥される。ステップ116およびステップ118は、ステップ112およびステップ114と同一である。もちろん、当業者は、上記の下部被膜が、上記の代わりに、一度に、ステントに塗布することも可能であることを、認識するであろう。
【0025】
さらに、上記方法の第3の部分は、上部被膜(トップコート)の塗布を含む。この方法の第3の部分における第1のステップは、上部被膜溶液の調製である(ステップ120)。この上部被膜の調製は、ポリブチルメタクリレートの溶液の調製を含む。この溶液を調製して噴霧用の容器の中に注ぐと、そのステントの半分が被覆される(ステップ122)。この方法の次のステップは別の被覆ステップである(ステップ124)。この被覆ステップにおいて、上部被膜により被覆されている上記ステントの半分が、トルエンにより噴霧される。このトルエンは、全ての被膜の成分を部分的に再溶解する可能性を有しており、その表面の仕上げ状態と治療剤の溶解特性と、を変えるであろう。もちろん、当業者は、トルエン以外の溶媒も、同じかまたは類似の効果を達成するために、使用可能であること、を容易に認識するであろう。このトルエン等のような溶媒の噴霧は、その上部被膜に研磨作用を及ぼし、高分子被膜からの治療剤の溶出の制御も容易にする。このステップ124が完了すると、ステントは、上記ステップ114および118における場合と同一の条件下において、空気乾燥される(ステップ126)。さらに、ステップ128、130および132は、ステントの別の半分についてであることを除いて、上記のステップ122、124および126と同一である。もちろん、当業者は、この上部被膜が、上記の代わりに、一度に、ステントに塗布することも可能であることを、認識するであろう。
【0026】
さらに、この例示的な方法の第4の最終部分は最終の処理を含む。この方法の第4の部分における第1のステップは、最終的な検査および被覆したステントの放出であり(ステップ134)、それぞれのステントは欠陥について検査される。ステントが種々のきびしい基準を満たしているかを確認するために、顕微鏡等のようなさまざまな検査技法が利用できる。この方法における次のステップは包装である(ステップ136)。ステントがトレーの中に置かれて、パウチの中にシールされる。この例示的な実施形態において、これらのトレーはPETGトレーである。ステントが包装されると、これらは冷蔵される(ステップ138)。これらのステントは約5℃〜約8℃の温度に維持される。また、さらに広い温度範囲も利用可能である。この方法の次のステップは、それぞれのステントのクリンプおよび包装である(ステップ140)。このステップにおいて、これらのステントは送達装置の上に位置決めされて、所望の寸法にクリンプされる。この送達装置の上に位置決めされると、その全体のシステムが包装されて滅菌のための場所に移される(ステップ142および144)。これらのシステムは、エチレンオキシドを利用して滅菌されるが、別の適切な滅菌処理も利用可能である。さらに、この方法の最終ステップは最終の包装(ステップ146)である。
【0027】
多数の方法の改良が、自己酸化に対処するために利用できる。自己酸化は、この場合において治療剤である燃料と、この場合においてはラジカルであるその燃料の点火装置と、最後に酸素または酸素を含有している化合物と、が存在する場合に、発生する。第1の方法の改良法は、活性な薬剤成分または治療剤、例えば、シロリムス(sirolimus)を、自己酸化から保護する工程を含む。有機分子が非晶質の固体の状態にある時に、その反応性を低減させる一つの方法は、そのガラス転移温度、Tg、を高めること、である。つまり、そのガラス転移温度が高くなるほど、室温においてさらに安定性のある治療剤が生じる。また、非晶質の物質はスポンジと同様に作用し、溶媒等のような、別の化合物を吸い上げる可能性がある。シロリムスは非晶質の治療剤である。したがって、非晶質の治療剤をさらに安定させるためには、そのガラス転移温度を高める必要があるが、溶媒はそのガラス転移温度を下げるので、残留している溶媒に対する曝露を最小化することが必要とされる。残留溶媒に対する曝露を減少させるか最小化するための方法は、外来の溶媒(extraneous solvents)を被膜から遠ざけて、例えば、薬剤および溶媒のビンを洗浄して、溶媒が実質的に存在しない環境の中にステントを保管し、例えば、新しく被覆したステントおよび/または溶液から遠ざける工程を含む。加えて、比較的に高いガラス転移温度は、被覆後の残留溶媒の除去を増加することにより達成できる。このことは、被覆後の残留溶媒の除去のための時間を増やすことを可能にすることと、真空条件および熱を供給して残留溶媒の除去を助長することと、短期間の水分の交換(湿度の存在)を可能にして残留溶媒の除去を助長することと、により、達成できる。湿度は可塑剤として作用し、さらに/または、加水分解反応を生じる可能性があるので、高い湿度に対する長期間の曝露を制御することが好ましい。例えば、仕上げされた製品の真空包装、および不活性ガス下における包装は、この問題に対処している。従って、例えば、低湿度およびスプレー・ヘッドの距離等のような、噴霧条件を変更することにより、その被覆形態を制御するか、または影響を及ぼすことができる。これらの改善を達成するために変更できる上記方法のステップは、図2において示されているようにステップ112,114,116,118,126,132,138、および146を含む。
【0028】
別の方法の改良は、フリーラジカル、および自己酸化の開始因子の存在および/またはこれらに対する曝露を減少させることを含む。このことは、被膜を、最小限の曝露を伴って、フリーラジカルに接触させる材料を利用すること、例えば、PETGトレーの代わりにポリプロピレンのビンを利用することができ、および不活性な材料により作られている、クリンプおよび包装の段階において役立つ工具を利用すること、により、達成できる。このことはまた、パリレンのラジカルを減少させるための、パリレンのアニーリングにより達成することも可能である。これらの改善を達成するために変更できる上記方法のステップは、図3において示されているように、ステップ106および136を含む。
【0029】
さらに別の方法の改良は、酸素の存在および/または酸素に対する曝露を減少させることを含む。このことは、原材料の改善された制御と、改善された被膜溶液の混合および取り扱いと、改善された被覆と、を有することにより、達成できる。原材料の改善された制御は、少量のヒドロペルオキシドを伴うTHF等のような、溶媒、を含む。また、改善された被膜溶液の混合および取り扱いは、溶存酸素を減少させるために不活性ガスで覆うこと(inert gas blanketing)と、全ての別の容器に移す(decanting)ステップの最小化と、を含む。改善された被覆は、高濃度窒素の環境内における噴霧と、真空オーブンと、アニールおよび真空包装後の不活性ガスによるパージと、さらに/または、進行中の製作品、および完成品の不活性ガス下における包装と、を含む。これらの改善を達成するために変更できる上記方法のステップは、図4において示されているように、工程101,110,112,116,120,136および146を含む。
【0030】
ステントが本明細書において詳細に論じられているが、上記薬物/薬物の組み合わせ物の局所的な送達は、多数の医療装置を利用して多様な状況を治療するために、あるいは、その装置の機能および/または寿命を向上させるために、利用できる。例えば、白内障の手術後の視力を回復させるために置かれる眼内レンズは、二次的な白内障の形成により損なわれる場合が多い。後者はレンズ表面上における細胞の過剰成長の結果である場合が多く、1種類以上の薬物をその装置と組み合わせることにより最小化できる可能性がある。装置の内部、上部およびその周囲における組織の内部成長または蛋白質性の物質の堆積により故障する場合の多い別の医療装置、例えば、水頭症用のシャント、透析グラフト、結腸瘻嚢取付け器具、耳排水管、ペースメーカおよび植え込み可能な除細動器用のリード線等もまた、上記のような装置−薬物の組み合わせの方法により恩恵を受けることができる。組織または器官の構造および機能を改善するために役立つ装置もまた、適切な1種類以上の物質と組み合わされると、種々の有益性を示すことができる。例えば、植え込まれた装置の安定性を向上させるための改善された整形外科装置の骨一体化(osteointegration)は、当該装置を骨−形態形成蛋白質等のような、物質と組み合わせることにより、潜在的に達成可能になる。同様に、別の外科装置、縫合糸、ステープル、吻合装置、椎間板、骨ピン、縫合アンカー、止血用バリア、クランプ、ねじ、プレート、クリップ、脈管インプラント、組織接着剤およびシール材、組織支持骨格部材、種々の包帯、骨置換材、内腔内装置、および脈管支持体もまた、上記のような薬物−装置の組み合わせ方法により患者における有益性を高めることができる。本質的に、任意の種類の医療装置が、当該装置または医薬品の1回の使用期間の全体にわたり、治療効果を高める薬物または薬物の組み合わせ物により何らかの様式で被覆できる。
【0031】
さまざまな医療装置に加えて、これらの装置における被膜は、治療剤および医薬品を送達するために、用いることができ、これらの治療剤および医薬品は、ビンカ・アルカロイド類(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン)、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン類(epidipodophyllotoxins)(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(すなわち、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、およびイダルビシン)、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシン等のような天然産物、酵素(L−アスパラギンを全身系的に代謝し、自己のアスパラギンを合成する機能をもたない細胞を奪うL−アスパラギナーゼ等)を含む抗増殖/抗有糸分裂剤、G(GP)IIb/IIIa抑制因子、およびビトロネクチン受容体拮抗物質等のような抗血小板剤、ナイトロジェン・マスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよびその類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン、およびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン、およびチオテパ)、スルホン酸アルキル類−ブスルファン(alkyl sulfonates-busulfan)、ニトロソ尿素類(カルムスチン(BCNU)およびその類似体、ストレプトゾシン)、トリアゼン−ダカルバジン(DTIC)(triazenes - dacarbazinine(DTIC))等のような抗増殖/抗有糸分裂アルキル化薬、葉酸類似体(メトトレキサート)、ピリミジン類似体(フルオロウラシル、フロクスウリジン、およびシタラビン)、プリン類似体および関連の抑制因子(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、および2−クロロデオキシアデノシン{クラドリビン})、白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン(mitotane)、アミノグルテチミド、ホルモン類(すなわち、エストロゲン)等のような抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗物質、抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩類およびその他のトロンビン抑制因子)、フィブリン溶解剤(組織プラスミノゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ等)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキマブ、抗遊走薬(antimigratory)、抗分泌薬(ブレベルジン(breveldin))、さらに、副腎皮質ステロイド(コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、6α−メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾン)、非ステロイド系薬(サリチル酸誘導体、すなわち、アスピリン、パラアミノフェノール誘導体、すなわち、アセトミノフェン)等のような抗炎症薬、インドールおよびインデン酢酸(インドメタシン、スリンダク、エトドラク)、ヘテロアリール酢酸(トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラク)、アリールプロピオン酸(イブプロフェンおよびその誘導体)、アントラニル酸(メフェナム酸、およびメクロフェナム酸)、エノール酸(ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、およびオキシフェンタトラゾン(oxyphenthatrazone))、ナブメトン、金化合物(オーラノフィン、金チオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム)、免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル)、血管形成剤、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、アンギオテンシン受容体遮断薬、酸化窒素供与体、アンチセンス・オリゴヌクレオチド類およびこれらの組み合わせ物、細胞周期抑制因子、mTOR抑制因子、および増殖因子受容体信号伝達キナーゼ抑制因子、レテノイド(retenoid)、サイクリン/CDK抑制因子、HMG補酵素レダクターゼ抑制因子(スタチン類)、およびプロテアーゼ抑制因子等を含む。
【0032】
上記において図示および説明されている内容は最も実用的で好ましい実施形態であると考えられる事例であるが、これらの説明および図示されている具体的な設計および方法からの種々の変形例が、当業者において、自然に考え出せるようになり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく使用できることは明らかである。本発明は、上記において説明および図示されている特定の構成に限定されず、添付の特許請求の範囲に含まれると考えられる全ての変更例に一致するものと、当然に、解釈されるべきである。
【0033】
〔実施の態様〕
(1)植え込み可能な医療装置を被覆する方法において、
(a)前記植え込み可能な医療装置の上にプライマー被膜を塗布する工程であって、パリレン層の塗布、および、自己酸化開始因子を減少させるための、前記パリレン層のアニーリング、を含む、工程と、
(b)ポリマーおよび治療剤を含有する下部被膜溶液を調製して、パリレンにより被覆されている前記植え込み可能な医療装置に、前記下部被膜溶液を塗布する工程であって、前記下部被膜溶液は、酸素の存在、および酸素に対する前記下部被膜溶液の曝露、を減少させるための方法を利用して、調製および塗布される、工程と、
(c)少なくとも1種類のポリマーを含有する上部被膜溶液を調製して、前記下部被膜溶液により被覆されている前記植え込み可能な医療装置に、前記上部被膜溶液を塗布する工程であって、前記上部被膜溶液は、酸素の存在、および酸素に対する前記上部被膜溶液の曝露、を減少させるための方法を利用して、調製および塗布される、工程と、
(d)前記被膜の成分を再溶解して、表面仕上げ、および前記治療剤の溶解特性、を変更する可能性を有する溶媒を塗布する工程と、
(e)前記治療剤のガラス転移温度を高めて、自己酸化から前記治療剤を保護するための被膜形態を作り出す工程と、
(f)被覆された前記医療装置の検査、包装、および滅菌を含む、前記植え込み可能な医療装置を最終的に処理する、工程であって、
自己酸化から前記治療剤を保護する工程、
ラジカルの存在、およびラジカルに対する全ての材料の曝露、を減少させる工程、ならびに、
酸素の存在、および酸素に対する全ての材料の曝露、を減少させる工程、
を含む、工程と、
を含む、方法。
(2)実施態様1に記載の方法において、
乾燥後に、溶媒に対する曝露を最小化することにより、比較的に高いガラス転移温度をもたらす工程、
をさらに含む、方法。
(3)実施態様1に記載の方法において、
前記医療装置を無溶媒の環境の中において保管する工程、
をさらに含む、方法。
(4)実施態様1に記載の方法において、
被覆後に、残留溶媒の除去のためにさらに多くの時間を割り当てることにより、前記残留溶媒の除去を増加する工程、
をさらに含む、方法。
(5)実施態様1に記載の方法において、
残留溶媒の除去を増進するために、真空と熱とを供給する工程、
をさらに含む、
方法。
【0034】
(6)実施態様1に記載の方法において、
短期間の水分交換を可能にすることにより、残留溶媒の除去を増加する工程、
をさらに含む、方法。
(7)実施態様1に記載の方法において、
前記最終的に処理する工程は、不活性ガスのもとで真空包装する工程、をさらに含む、方法。
(8)実施態様1に記載の方法において、
最小限のフリーラジカルを伴う材料を用いることにより、フリーラジカルおよび自己酸化開始因子の存在、またはフリーラジカルおよび自己酸化開始因子に対する曝露、を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
(9)実施態様8に記載の方法において、
不活性な材料により構成されている工具を用いる工程、
をさらに含む、方法。
(10)実施態様8に記載の方法において、
アニールされているプライマーを用いる、方法。
【0035】
(11)実施態様8に記載の方法において、
ラジカルまたはラジカル開始因子を伴わない原材料、および低いヒドロペルオキシド含有量を伴う溶媒、を用いることにより、酸素の存在、または酸素に対する曝露、を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
(12)実施態様11に記載の方法において、
前記被膜溶液および前記溶媒の移動を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
(13)実施態様12に記載の方法において、
溶存酸素を減少させるために、不活性ガスによって覆う工程、
をさらに含む、方法。
(14)実施態様13に記載の方法において、
高濃度窒素の環境内で処理することにより、酸素の量を減少させる工程、
をさらに含む、方法。
(15)実施態様14に記載の方法において、
不活性ガスのもとで包装する工程、
をさらに含む、方法。
【0036】
(16)実施態様1に記載の方法において、
前記溶媒は、トルエンである、方法。
(17)実施態様1に記載の方法において、
前記下部被膜は、前記医療装置に一度に塗布される、方法。
(18)実施態様1に記載の方法において、
前記下部被膜は、前記医療装置に増進的に塗布される、方法。
(19)実施態様1に記載の方法において、
前記上部被膜は、前記医療装置に一度に塗布される、方法。
(20)実施態様1に記載の方法において、
前記上部被膜は、前記医療装置に増進的に塗布される、方法。
【0037】
(21)医療装置を被覆する方法において、
植え込み可能な前記医療装置の上にプライマー被膜を塗布する工程と、
ポリマーおよび治療剤を含有している下部被膜溶液を調製して、前記植え込み可能な医療装置に、前記下部被膜溶液を塗布する工程と、
少なくとも1種類のポリマーを含有している上部被膜溶液を調製して、前記下部被膜溶液により被覆されている前記植え込み可能な医療装置に、前記上部被膜溶液を塗布する工程と、
前記上部被膜および前記下部被膜を部分的に再溶解するために溶媒を塗布すると共に、表面仕上げ、および前記治療剤の溶解特性、を変更する工程と、
被覆された前記医療装置の検査、包装、および滅菌を含む、前記植え込み可能な医療装置を最終的に処理する工程と、
を含む、方法。
(22)実施態様21に記載の方法において、
前記溶媒は、THF、およびトルエンである、方法。
(23)実施態様21に記載の方法において、
乾燥後に、前記溶媒に対する曝露を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
(24)実施態様23に記載の方法において、
フリーラジカルおよび自己酸化開始因子の存在、またはフリーラジカルおよび自己酸化開始因子に対する曝露、を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
(25)実施態様23に記載の方法において、
酸素の存在、または酸素に対する曝露、を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
【0038】
(26)実施態様21に記載の方法において、
前記下部被膜は、前記医療装置に一度に塗布される、方法。
(27)実施態様21に記載の方法において、
前記下部被膜は、前記医療装置に増進的に塗布される、方法。
(28)実施態様21に記載の方法において、
前記上部被膜は、前記医療装置に一度に塗布される、方法。
(29)実施態様21に記載の方法において、
前記上部被膜は、前記医療装置に増進的に塗布される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従ってステントを被覆するための方法の第1の例示的な実施形態のフロー・チャートである。
【図2】本発明に従ってステントを被覆するための方法の第2の例示的な実施形態のフロー・チャートである。
【図3】本発明に従ってステントを被覆するための方法の第3の例示的な実施形態のフロー・チャートである。
【図4】本発明に従ってステントを被覆するための方法の第4の例示的な実施形態のフロー・チャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能な医療装置を被覆する方法において、
(a)前記植え込み可能な医療装置の上にプライマー被膜を塗布する工程であって、パリレン層の塗布、および、自己酸化開始因子を減少させるための、前記パリレン層のアニーリング、を含む、工程と、
(b)ポリマーおよび治療剤を含有する下部被膜溶液を調製して、パリレンにより被覆されている前記植え込み可能な医療装置に、前記下部被膜溶液を塗布する工程であって、前記下部被膜溶液は、酸素の存在、および酸素に対する前記下部被膜溶液の曝露、を減少させるための方法を利用して、調製および塗布される、工程と、
(c)少なくとも1種類のポリマーを含有する上部被膜溶液を調製して、前記下部被膜溶液により被覆されている前記植え込み可能な医療装置に、前記上部被膜溶液を塗布する工程であって、前記上部被膜溶液は、酸素の存在、および酸素に対する前記上部被膜溶液の曝露、を減少させるための方法を利用して、調製および塗布される、工程と、
(d)前記被膜の成分を再溶解して、表面仕上げ、および前記治療剤の溶解特性、を変更する可能性を有する溶媒を塗布する工程と、
(e)前記治療剤のガラス転移温度を高めて、自己酸化から前記治療剤を保護するための被膜形態を作り出す工程と、
(f)被覆された前記医療装置の検査、包装、および滅菌を含む、前記植え込み可能な医療装置を最終的に処理する、工程であって、
自己酸化から前記治療剤を保護する工程、
ラジカルの存在、およびラジカルに対する全ての材料の曝露、を減少させる工程、ならびに、
酸素の存在、および酸素に対する全ての材料の曝露、を減少させる工程、
を含む、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
乾燥後に、溶媒に対する曝露を最小化することにより、比較的に高いガラス転移温度をもたらす工程、
をさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記医療装置を無溶媒の環境の中において保管する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、
被覆後に、残留溶媒の除去のためにさらに多くの時間を割り当てることにより、前記残留溶媒の除去を増加する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
残留溶媒の除去を増進するために、真空と熱とを供給する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、
短期間の水分交換を可能にすることにより、残留溶媒の除去を増加する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、
前記最終的に処理する工程は、不活性ガスのもとで真空包装する工程、をさらに含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、
最小限のフリーラジカルを伴う材料を用いることにより、フリーラジカルおよび自己酸化開始因子の存在、またはフリーラジカルおよび自己酸化開始因子に対する曝露、を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
不活性な材料により構成されている工具を用いる工程、
をさらに含む、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、
アニールされているプライマーを用いる、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法において、
ラジカルまたはラジカル開始因子を伴わない原材料、および低いヒドロペルオキシド含有量を伴う溶媒、を用いることにより、酸素の存在、または酸素に対する曝露、を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記被膜溶液および前記溶媒の移動を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、
溶存酸素を減少させるために、不活性ガスによって覆う工程、
をさらに含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
高濃度窒素の環境内で処理することにより、酸素の量を減少させる工程、
をさらに含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、
不活性ガスのもとで包装する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、
前記溶媒は、トルエンである、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、
前記下部被膜は、前記医療装置に一度に塗布される、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、
前記下部被膜は、前記医療装置に増進的に塗布される、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、
前記上部被膜は、前記医療装置に一度に塗布される、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法において、
前記上部被膜は、前記医療装置に増進的に塗布される、方法。
【請求項21】
医療装置を被覆する方法において、
植え込み可能な前記医療装置の上にプライマー被膜を塗布する工程と、
ポリマーおよび治療剤を含有している下部被膜溶液を調製して、前記植え込み可能な医療装置に、前記下部被膜溶液を塗布する工程と、
少なくとも1種類のポリマーを含有している上部被膜溶液を調製して、前記下部被膜溶液により被覆されている前記植え込み可能な医療装置に、前記上部被膜溶液を塗布する工程と、
前記上部被膜および前記下部被膜を部分的に再溶解するために溶媒を塗布すると共に、表面仕上げ、および前記治療剤の溶解特性、を変更する工程と、
被覆された前記医療装置の検査、包装、および滅菌を含む、前記植え込み可能な医療装置を最終的に処理する工程と、
を含む、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、
前記溶媒は、THF、およびトルエンである、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法において、
乾燥後に、前記溶媒に対する曝露を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、
フリーラジカルおよび自己酸化開始因子の存在、またはフリーラジカルおよび自己酸化開始因子に対する曝露、を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法において、
酸素の存在、または酸素に対する曝露、を最小化する工程、
をさらに含む、方法。
【請求項26】
請求項21に記載の方法において、
前記下部被膜は、前記医療装置に一度に塗布される、方法。
【請求項27】
請求項21に記載の方法において、
前記下部被膜は、前記医療装置に増進的に塗布される、方法。
【請求項28】
請求項21に記載の方法において、
前記上部被膜は、前記医療装置に一度に塗布される、方法。
【請求項29】
請求項21に記載の方法において、
前記上部被膜は、前記医療装置に増進的に塗布される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−508040(P2008−508040A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523717(P2007−523717)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/026450
【国際公開番号】WO2006/014931
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(597041828)コーディス・コーポレイション (206)
【氏名又は名称原語表記】Cordis Corporation
【Fターム(参考)】