説明

ステントデリバリーカテーテル

【課題】 安全に使用でき、かつ、最適な放出荷重を簡単に設計されるステントデリバリーカテーテルを提供する。
【解決手段】 ステントデリバリーカテーテル69では、アウターチューブ19における内層11Nにて、ルーメン12に向く面が、アウターチューブ19の補強層11Mの金属素線の形を写し込むことで、凸凹になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントを搬送するステントデリバリーカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、一般に、血管または他の生体内管腔が、狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するものである。詳説すると、ステントは、狭窄または閉塞部位を拡張し、その管腔サイズを維持するために、そこに留置する医療用具である。
【0003】
ステントには、例えば、1本の線状の金属もしくは高分子材料からなるコイル状のタイプ、金属チューブをレーザーによって切り抜いて加工したタイプ、線状の部材をレーザーによって溶接して組み立てたタイプ、または、複数の線状金属を織って作ったタイプがある。
【0004】
また、これらのステントは、そのステントをマウントしたバルーンによって拡張されるもの(バルーンエクスパンダブルタイプ)と、外部からの拡張を抑制する部材を取り除くことによって自ら拡張していくもの(セルフエクスパンダブルタイプ)とに分類される。
【0005】
例えば、セルフエクスパンダブルタイプは、一般に、管内カテーテルの先端付近に取り付けられ、その上からシース等を被せられて使用される。詳説すると、カテーテルが、患者の体管腔内の治療部位へ進められ、治療部位にてシース等が取り除かれ、これに伴って、ステントが自己拡張することで留置される。近年、尿管、胆管、または下肢動脈の形成術に対して、これらのステントが多く用いられるようになってきている。
【0006】
セルフエクスパンダブルステントが、目標とする病変部にまで搬送される場合、一般的には、そのステントはデリバリーカテーテルの中に挿入される(なお、ステントを装着したデリバリーカテーテルを、ステントデリバリーカテーテルと称する場合もあるし、デリバリーカテーテル自体をステントデリバリーカテーテルと称する場合もある)。
【0007】
このような挿入の場合には、ステントはデリバリーカテーテルのアウターチューブの内径以下に縮径(クリンピング)される。そして、このようなステントは、デリバリーカテーテルで病変部にまで搬送後、アウターチューブから乖離して病変部に配置される。詳説すると、術者が手元側からアウターチューブを引くことで、アウターチューブ内のインナーシャフトが、ステントをアウターチューブから押し出し、そのステントは病変部に留置される。
【0008】
ところで、ステントデリバリーカテーテルでは、アウターチューブとステントとが静的に固定されているために、術者が手元側からアウターチューブを引く場合に、大きな抵抗が生じる(なお、術者が手元側からアウターチューブを引く力を、放出荷重と称する)。
【0009】
そして、ステントデリバリーカテーテルの設計において、放出荷重が過度に低く設計されると、ステントのデリバリー中に、抵抗でアウターチューブからステントが抜け、意図しない部位にステントが留置されかねない。
【0010】
逆に、放出荷重が過度に高く設計されると、ステントのデリバリー中に、アウターチューブからステントが抜け落ちにくいが、治療したい病変部位にステントデリバリーカテーテルの先端が到達した後、アウターチューブが引けず、ステントが留置できない。
【0011】
そこで、特許文献1のように、放出荷重を調整したステントデリバリーカテーテルが開発されている。この特許文献1のステントデリバリーカテーテルでは、アウターチューブの内壁面に、親水性被覆が施こされることで、放出荷重が調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2003−510134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載のステントデリバリーカテーテルでは、親水性皮膜をコーティングすることが煩わしいだけでなく、ステントが親水性被覆に接触することで、その親水性被覆が剥がれ、剥がれた被覆が体内に残留しかねない。
【0014】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、安全に使用でき、かつ、最適な放出荷重を簡単に設計されるステントデリバリーカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ステントデリバリーカテーテルは、中空のアウターシャフトと、そのアウターシャフトの中空に挿入するインナーシャフトとを含むとともに、アウターシャフトにて中空を囲む内壁面に、ステントを取り付ける。アウターシャフトに含まれるアウターチューブは、内壁面になる第1層と、この第1層を被う第2層とを含む複層型チューブである。そして、第2層は、凹凸を有する層であり、第1層は、第2層の凹凸の形を写し込むことで、内壁面を粗面とする。
【0016】
なお、第1層の厚みは、第2層の厚みに対して、10%を超え100%未満であると好ましい。
【0017】
また、アウターチューブでは、第1層は樹脂層で、第2層は金属製の素線で形成される層であると好ましい。
【0018】
また、アウターチューブの長手方向において、筒状の上記ステントにおける両端の一方である遠位端は、アウターチューブの両端の一方である遠位端に対して一致する、または、アウターチューブに隠れるように、アウターチューブの遠位端から乖離しており、アウターチューブの長手方向において、インナーシャフトのインナーチューブにおける両端の一方である遠位端は、アウターチューブの遠位端に対して一致する、または、アウターチューブから露出するように、アウターチューブの遠位端から乖離すると好ましい。
【0019】
また、ステントが、ニッケルおよびチタンを含む形状記憶合金製であると好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のステントデリバリーカテーテルは、安全に使用でき、かつ、最適な放出荷重が簡単に設計される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図2】は、ステントデリバリーカテーテルの横断面図である。
【図3】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図4】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図5】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図6】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【図7】は、ステントデリバリーカテーテルに対する評価に用いた装置の説明図である。
【図8】は、ステントデリバリーカテーテルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、断面図以外でも、便宜上、ハッチングを付す場合もある。
【0023】
図1は、ステントデリバリーカテーテル69の一例を示し、図2は、図1のステントデリバリーカテーテル69の横断面図{ステントデリバリーカテーテル69の長手に対して交差(直交等)する断面}を示す。
【0024】
ステントデリバリーカテーテル69は、ステント39を血管の病変部(狭窄部)に搬送するためのものであり、管腔内に挿入可能に細長く、かつ可撓性を有する(なお、ステントデリバリーカテーテル69から、ステント39を取り除いたものを、デリバリーカテーテルと称する場合もあるし、ステントデリバリーカテーテルと称する場合もある)。
【0025】
ステントデリバリーカテーテル69は、ステント39と、アウターシャフト19と、インナーシャフト29とを含む(別表現すると、ステントデリバリーカテーテル69は、ステント39と、アウターシャフト19およびインナーシャフト29を有するデリバリーカテーテルとを含む)。
【0026】
ステント39は、図6に示すように、環状の略波形構成要素[環状要素]32が一方向となる軸方向に連続することによって形成されており、略波形構成要素32は、伸長するストラット31をつなげることで形成される。
【0027】
図6に示すようなステント39では、外径ODおよび軸方向長さLDは、病変部管腔の内径および長さに合わせて、適宜選択されるものであり、治療目的とする管腔に応じて異なる。例えば、浅大腿動脈用のステント39では、外径ODは、6.0mm以上10.0mm以下程度、軸方向長さLDは、30mm以上200mm以下程度に設定される。
【0028】
また、このステント39は、例えば、ニッケルチタン合金のパイプにレーザーカットを施したものを、拡径して熱処理して形成される(要は、ステント39は、ニッケルおよびチタンを含む形状記憶合金で製造されている)。
【0029】
アウターシャフト19は、ステント39を縮径状態にして収容するアウターチューブ11を含む。なお、ステント39は、血管の狭窄部を拡張させて治療するセルフエクスパンダブルステントであり、アウターチューブ11のルーメン[中空]12による規制が解除されると、ステント39の内径は、アウターチューブ11の外径以上に拡径し、その拡張後の外径が確定される。
【0030】
また、アウターチューブ11は、挿入する管腔(血管等)に追従する程度の柔軟性、耐キンク性、および、ステントデリバリーカテーテル69を手技中に引っ張った場合に伸びない程度の引っ張り強度を有する部材で形成される。
【0031】
また、アウターチューブ11が移動させられる場合に、アウターチューブ11の内側の層は、層の内周面に接触しているステント39との移動抵抗(摺動抵抗)を減少させ、アウターチューブ11の移動操作を、容易に行えるような滑性を有する。
【0032】
以上のような特性を満たす観点から、アウターチューブ11は、外層(外層管)11Tおよび内層(内層管)11Nが樹脂材料で形成されており、外層11Tと内層11Nとの間に、金属素線の層(補強層)11Mを埋め込んだ3層の樹脂−金属複合チューブ[複層型チューブ]で形成されていると好ましい。
【0033】
外層[第3層]11Tは、補強層11Mを被う層であり、例えば、ポリエチレン、フッ素樹脂{ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等}、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、または、シリコーン等の各種弾性樹脂材料で形成される。
【0034】
補強層[第2層]11Mは、外層11Tに被われた層で、金属素線で形成される(編まれる)層である。そして、金属素線が、編組構造またはコイル構造になることで、補強層11Mは、金属素線と金属素線同士の隙間とによって生じる凹凸を有する(要は、補強層11Mにて、金属素線は凸になり、金属素線同士の隙間は凹になる)。また、補強層11Mは、アウターチューブ11の長手において、一方の端から他方の端までで形成されていると好ましい(なお、ステントデリバリーカテーテル69において、術者の手元に近い側を近位端、近位端に対して反対側を遠位端と称する)。
【0035】
なお、金属素線の材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン(Ni−Ti)合金、タングステン、金、または、白金の各種金属材料が挙げられる。
【0036】
内層[第1層]11Nは、補強層11Mに被われた層であり、例えば、フッ素樹脂{ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等}、または、ポリエチレン等の低摩擦材料で形成される。
【0037】
なお、アウターチューブ11は、3層の複合型チューブに限定されるものではなく、1層のチューブで形成されていてもよい。このような1層のアウターチューブ11の材料としては、例えば、フッ素樹脂{ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等}、または、ポリエチレンのような低摩擦材料が挙げられる(ただし、アウターチューブ11の内壁面11Nfは、後述のように凹凸を含む粗面になっている)。
【0038】
インナーシャフト29は、アウターシャフト19のルーメン12に収められるものであり、インナーチューブ21、プッシャーマーカー23、コアワイヤー25、および先端チップ27を含む。
【0039】
インナーチューブ21は、中空(ルーメン22;図2参照。図1では、便宜上、不図示)を有するチューブであり、アウターシャフト19のアウターチューブ11のルーメン12内に、少なくとも一部が挿入される。そして、インナーチューブ21に形成されたルーメンには、不図示のガイドワイヤーが挿入され、アウターシャフト19を病変部にまで導く。
【0040】
なお、インナーチューブ21は、挿入される管腔(アウターチューブ11のルーメン12)に追従する程度の柔軟性、耐キンク性、およびカテーテルを手技中に引っ張った場合に伸びない程度の引っ張り強度を有する。
【0041】
例えば、例えばポリエチレン、フッ素樹脂{ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、または、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等}、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、または、シリコーン等の各種弾性樹脂材料が、インナーチューブ21の材料として挙げられる。
【0042】
プッシャーマーカー23は、インナーチューブ21の周囲に装着(接着または溶着)されつつ、アウターチューブ11のルーメン12に収まり、インナーチューブ21の移動に応じて、ステント39をアウターチューブ11から押し出す。
【0043】
なお、プッシャーマーカー23の材料としては、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金、タングステン、タンタル、金、白金、イリジウム、パラジウムから成る群から選択される1以上の材料が挙げられる。また、例えば、強度、加工性、または経済性の理由からみると、ステンレス鋼が、プッシャーマーカー23の材料として好ましい。
【0044】
コアワイヤー25は、インナーチューブ21に平行に並びつつ、つながり、さらに、プッシャーマーカー23につなげられる。詳説すると、コアワイヤー25における側面の一部が、インナーチューブ21につながり、コアワイヤー25における端部が、近位端側に向いたプッシャーマーカー23の一面につながる(要は、コアワイヤー25は、インナーチューブ21およびプッシャーマーカー23に対して、部分的に、接着または溶着される)。
【0045】
このようになっていると、インナーチューブ21およびコアワイヤー25につなげられた操作部41を介した術者の力が、損失することなく、インナーチューブ21およびコアワイヤー25(すなわちインナーシャフト29)に伝わる。そのため、このインナーシャフト29を搭載するステントデリバリーカテーテル69は、より安全で効率的に、ステント39を配置させられる。
【0046】
また、コアワイヤー25の材料としては、ステンレス鋼またはニッケルチタン合金等の材料が挙げられる。なお、強度、加工性、または経済性の理由からみると、ステンレス鋼が、コアワイヤー25の材料として好ましい。
【0047】
先端チップ27は、インナーチューブ21の先端に、接着または溶着される。この先端チップ27によって、病変部(狭窄部)をステントデリバリーカテーテル69が通過し易くなる。また、先端チップ27は造影性を有していることが好ましい。このようになっていると、ステントデリバリーカテーテル69の先端が把握される。また、インナーシャフト29の近位端に装着された操作部41を用いた術者の操作によって、アウターチューブ11の先端(遠位端)付近に対するステント39の相対的な位置が把握される。
【0048】
以上のようなステントデリバリーカテーテル69は、ルーメン12を含むアウターシャフト19と、そのアウターシャフト19のルーメン12に挿入するインナーシャフト29とを含むとともに、アウターシャフト19にてルーメン12を囲む内壁面11Nfに、ステント39を取り付ける(なお、ステント39は、筒状で、アウターシャフト19とインナーシャフト29との間に介在する)。
【0049】
アウターシャフト19に含まれるアウターチューブ11は、内壁面11Nfになる内層11Nと、この内層11Nを被う補強層11Mとを含む複層型チューブである。そして、補強層11Mは、凹凸を有する層であり、内層11Nは、補強層11Mの凹凸の形を写し込むことで、内壁面11Nfを粗面とする。
【0050】
このようにアウターチューブ11の内壁面11Nfが、粗面になっていると、その内壁面11Nfとステント39の外側面との接触面積が最適化しやすくなる。
【0051】
例えば、アウターチューブ11の内層11Nの厚みを変化させることで、凸凹の補強層11Mの形を写し込まれた内層11の内壁面11Nfの凹凸が変化し(詳説すると、内壁面11Nfにおける窪んだ面積と突起した面積との比率が変わって)、ステント39がアウターシャフト19に適切に保持されつつも、インナーシャフト29のプッシャーマーカー23によって押し出されやすくなり得る(要は、放出荷重が最適になりやすい)。
【0052】
すなわち、補強層11Mに接触する内層11の内壁面11Nfは、内層11Nの厚みによって、ステント39をアウターシャフト19に適切に保持しつつも、インナーシャフト29のプッシャーマーカー23によって押し出されやすい凹凸面になる。
【0053】
例えば、内層11の厚みが、補強層11Mの厚みに対して、10%を超え100%未満であると、内層11の内壁面11Nfに、適切な凹凸面が生じやすい(なお、凸部分は、補強層11Mにおける金属素線に重なる内層11の一部分であり、凹部分は、補強層11Mにおける金属素線に重ならない内層11の一部分である)。
【0054】
なお、内層11の厚みが、補強層11Mの厚みに対して、10%以下であれば、ステントデリバリーカテーテル69でステント39をデリバリーする場合に、病変部に到達する前に、ステント39が展開してしまい、そのステント39が病変部に到達できない場合が生じやすい。
【0055】
一方で、内層11の厚みが、補強層11Mの厚みに対して、100%以上であれば、ステントデリバリーカテーテル69でステント39をデリバリーする場合に、ステント39は病変部に到達するものの、ステント39がアウターシャフト19から放出されない場合が生じやすい。
【実施例】
【0056】
以下に、ステントデリバリーカテーテルの一部部材に関する具体例を列挙した実施例1と比較例1・2について説明するとともに、評価を行った。ただし、ステントデリバリーカテーテル69は、この例に制限されるものではない。
【0057】
[実施例1]
アウターチューブ11は、ポリアミドエラストマー製の外層11Tと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の内層11と、幅100μm、厚さ25μmのステンレス鋼の平線を編組構造にすることで形成される補強層11Mとを含む。なお、内層11の厚みは15μmである(すなわち、内層11の厚みは、補強層11Mの厚みに対して、60%である)。
【0058】
インナーチューブ21は、ポリアミドエラストマーで形成される。
【0059】
ステント39は、セルフエクスパンダブルタイプである。このステントは、φ2.2mmのニッケルチタン合金のパイプをレーザーカットし、φ6mmまで拡張させて熱処理を施したものである。なお、ステント39の外径ODは、φ6mm、軸方向の長さLDは30mmとした。
【0060】
[比較例1]
インナーチューブ21およびステント39は、実施例1のインナーチューブ21およびステント39はと同一である。アウターチューブ11は、実施例1のアウターチューブ11と同一の材料で形成されるものの、内層11の厚みは2.5μmである(すなわち、内層11の厚みは、補強層11Mの厚みに対して、10%である)。
【0061】
[比較例2]
インナーチューブ21およびステント39は、実施例1のインナーチューブ21およびステント39はと同一である。アウターチューブ11は、実施例1のアウターチューブ11と同一の材料で形成されるものの、内層11の厚みは25μmである(すなわち、内層11の厚みは、補強層11Mの厚みに対して、100%である)。
【0062】
[評価]
実施例1と比較例1・2とに関して、図7に示すように、37℃±2℃の温浴81に浸された下肢模擬血管82の模擬病変部位にまで、ステントが展開されることなくデリバリーできるか否かを評価した。また、ステントがデリバリーカテーテルから放出される場合に、操作部にかかる荷重(放出荷重)の測定が行われた。
【0063】
なお、仮想病変部位にまで、ステントをデリバリーできたステントデリバリーカテーテルでは、アウターシャフトが、スライダー83によって、習動距離80mm、習動速度10mm/secで近位端側に引っ張られ、その場合に生じるステント放出荷重が、20(N)フォースゲージ84(日本電産シンポ株式会社製)を用いて測定される。
【0064】
[評価結果]
評価結果は以下の通りである。なお、“○”は、ステントが展開することなく仮想病変部にまでデリバリーされた場合を意味し、“×”は、ステントが展開して、仮想病変部に到達できなかった場合を意味する。また、“−”は、ステントが展開してしまい、放出荷重が測定できなかった場合を意味し、“NO”はステントがアウターシャフトから放出されなかった場合を意味する。
【0065】
デリバリー成否 放出荷重(N)
実施例1 ○ 4.0
比較例1 × −
比較例2 ○ NO
【0066】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、図3に示すように、アウターシャフト19の長手方向において、筒状のステント39における両端の一方である遠位端が、アウターチューブ11の両端の一端である遠位端に一致してもよい。
【0068】
なお、上述の図1では、アウターシャフト19の長手方向において、ステント39の遠位端は、アウターシャフト19に隠れるように、アウターチューブ11の遠位端から乖離している。ただし、図1・図3では、アウターシャフト19の長手方向において、インナーチューブ21における両端の一方である遠位端(例えば、先端チップ27の先端)は、アウターシャフト19から露出するように、アウターシャフト19の遠位端から乖離する。
【0069】
また、図4に示すように、アウターシャフト19の長手方向において、ステント39の遠位端は、アウターシャフト19に隠れるように、アウターシャフト19の遠位端から乖離しつつ、アウターシャフト19の長手方向において、インナーチューブ21の遠位端は、アウターチューブ11の遠位端に一致してもよい。
【0070】
また、図5に示すように、アウターシャフト19の長手方向において、ステント39の遠位端は、アウターシャフト19の遠位端に一致しつつ、アウターシャフト19の長手方向において、インナーチューブ21の遠位端が、アウターチューブ11の遠位端に一致してもよい。
【0071】
要は、アウターチューブ11の長手方向において、ステント39の遠位端は、アウターチューブ11の遠位端に対して一致する、または、アウターチューブ11に隠れるように、アウターチューブ11の遠位端から乖離しており、アウターチューブ11の長手方向において、インナーチューブ21の遠位端は、アウターチューブ11の遠位端に対して一致する、または、アウターチューブ11から露出するように、アウターチューブ11の遠位端から乖離する。
【0072】
また、アウターチューブ11の内壁面11Nfは、補強層11Mの凹凸に起因せずに粗面になっていてもよい。例えば、図8に示すように、内壁面11Nfの粗面は、補強層11Mの凹凸に起因せずに、内層11の内壁面11Nfを形成する樹脂そのものの凸凹に起因してもよい。
【符号の説明】
【0073】
11 アウターチューブ
11N 内層[第1層]
11M 補強層[第2層]
11T 外層
12 ルーメン[中空]
19 アウターシャフト
21 インナーチューブ
23 プッシャーマーカー
25 コアワイヤー
27 先端チップ
29 インナーシャフト
31 ストラット
32 略波形構成要素
39 ステント
69 ステントデリバリーカテーテル
81 温浴
82 模擬血管
83 スライダー
84 フォースゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のアウターシャフトと、そのアウターシャフトの中空に挿入するインナーシャフトとを含むとともに、上記アウターシャフトにて上記中空を囲む内壁面に、ステントを取り付けるステントデリバリーカテーテルにあって、
上記アウターシャフトに含まれるアウターチューブは、上記内壁面になる第1層と、この第1層を被う第2層とを含む複層型チューブであり、
上記第2層は、凹凸を有する層であり、
上記第1層は、上記第2層の凹凸の形を写し込むことで、上記内壁面を粗面とするステントデリバリーカテーテル。
【請求項2】
上記第1層の厚みは、上記第2層の厚みに対して、10%を超え100%未満である請求項1に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項3】
上記アウターチューブでは、上記第1層は樹脂層で、上記第2層は金属製の素線で形成される層である請求項1または2に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項4】
上記アウターチューブの長手方向において、筒状の上記ステントにおける両端の一方である遠位端は、上記アウターチューブの両端の一方である遠位端に対して一致する、または、上記アウターチューブに隠れるように、上記アウターチューブの遠位端から乖離しており、
上記アウターチューブの長手方向において、上記インナーシャフトのインナーチューブにおける両端の一方である遠位端は、上記アウターチューブの遠位端に対して一致する、または、上記アウターチューブから露出するように、上記アウターチューブの遠位端から乖離する請求項1〜3のいずれか1項に記載のステントデリバリーカテーテル。
【請求項5】
上記ステントが、ニッケルおよびチタンを含む形状記憶合金製である請求項1〜4のいずれか1項に記載のステントデリバリーカテーテル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−20067(P2012−20067A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162122(P2010−162122)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】