説明

ステント及びそれを備えたステントシステム、並びに、ステント製造方法

【課題】薄肉に形成した場合であっても、拡張時に、曲部の捲り上がりを抑えることができると共にラジアルフォースを高めることができ、且つ、リコイルを低く抑えることができるステント及びそれを備えたステントシステム、並びに、ステント製造方法を提供する。
【解決手段】ステントシステム10は、シャフト12に設けられバルーン16にマウントされたステント18を備える。ステント18は、第1曲部110を有する加工円筒体100を変質させて製造される。詳細には、加工円筒体100の第1曲部110の外周部位110aにレーザ光Lを照射して焼鈍し、第1曲部110の内周部位110bにレーザ光Lを照射して焼鈍する。これにより、第1曲部46の中間部位46cの強度が外周部位46a及び内周部位46bの強度よりも高く設定されたステント18が完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体器官内の狭窄部の処置等に使用されるステント及びそれを備えたステントシステム、並びに、前記ステントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、心筋梗塞や狭心症の治療では、冠動脈の病変部(狭窄部)を押し広げ、その内腔を保持するためにステントが広汎に用いられており、他の血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等の生体器官に形成された狭窄部の改善についても同様に用いられることがある。
【0003】
一般的に、ステントには、自己拡張型ステントとバルーン拡張型ステントがある。バルーン拡張型ステントは、カテーテルのバルーンの周囲にマウントされた状態で所望の狭窄部に配置され、該バルーンを拡張することにより拡張されて管腔内壁に密着・保持される。
【0004】
このようなバルーン拡張型ステントとして、波線状環状体を軸線方向に複数配列して構成することにより、半径方向外側に拡張可能とするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−86463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステントは、バルーンの周囲にマウントされた際の外径を極力小さくして狭窄部への挿入を容易にし、且つ狭窄部の内腔を極力広くするために薄肉にすることが望ましい。しかしながら、ステントを薄肉にすると、強度が低下するため、前記狭窄部が収縮しようとする力に対する抵抗力(ラジアルフォース)が低下する。その結果、処置後の再狭窄が生じることもある。また、ステントを薄肉にすると、拡張時に波線状環状体の一部(曲部)が捲り上がるといった問題も発生し得る。
【0007】
このような問題の対策として、ステントを高強度材料で構成して薄肉にすることも考えられるが、この場合、降伏応力が高くなるため、拡張時にステントを十分に塑性変形させることができないことがある。そして、極端な場合、拡張時に弾性変形領域内でしかステントを変形させることができないことも考えられ、再狭窄を誘発するおそれがある。
【0008】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、薄肉に形成した場合であっても、拡張時に、曲部の捲り上がりを抑えることができると共にラジアルフォースを高めることができ、且つ、一度拡張したステントが自ら収縮する、いわゆるリコイルと言われる現象を低く抑えることができるステント及びそれを備えたステントシステム、並びに、ステント製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1で特定される発明は、曲部を有する線状部を備えた円筒体により形成され、前記円筒体の半径方向外側に拡張可能なステントであって、前記曲部は、外周部位と内周部位の間に位置する中間部位の強度が、前記外周部位及び前記内周部位の強度よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項1で特定される発明によれば、曲部の中間部位の強度を外周部位及び内周部位の強度よりも高く設定しているので、前記曲部の全体を前記外周部位又は前記内周部位の強度に設定した場合と比較して、前記曲部の強度を高めることができる。これにより、ステントを薄肉に形成した場合であっても、拡張時に、前記曲部の捲り上がりを抑えることができると共にラジアルフォースを高めることができる。また、ステントを拡張させた際に、歪み(変形量)の少ない中間部位の強度を高くすると共に、歪み(変形量)の多い外周部位及び内周部位の強度を低くしているので、前記中間部位が弾性変形領域内であっても該外周部位及び該内周部位を確実に塑性変形させることができる。これにより、リコイルを低く抑えられる。
【0011】
本願の請求項2で特定される発明は、請求項1記載のステントにおいて、前記線状部が、直線部を有しており、前記直線部は、その延在方向及び前記円筒体の半径方向と直交する方向の両端部の間に位置する中間部位の強度が、前記両端部の強度よりも高く設定されていることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項2で特定される発明によれば、直線部の中間部位の強度をその両端部の強度よりも高く設定しているので、ラジアルフォースを一層高めることができると共に、リコイルを一層低く抑えられる。
【0013】
本願の請求項3で特定される発明は、請求項1又は2記載のステントにおいて、前記円筒体は、複数の前記曲部を有する環状体が軸線方向に複数接続されることにより形成されていることを特徴とする。
【0014】
本願の請求項3で特定される発明によれば、複数の曲部を有する環状体が軸線方向に複数接続して円筒体となっているので、ステントをその半径方向外側に確実に拡張させることができる。
【0015】
本願の請求項4で特定される発明は、チューブ状のシャフトと、前記シャフトに設けられた拡張可能なバルーンと、前記バルーンにマウントされたステントと、を備えるステントシステムであって、前記ステントは、請求項1〜3のいずれか1項に記載のステントであることを特徴とする。
【0016】
本願の請求項4で特定される発明によれば、上述した請求項1〜3に記載した効果と同様の効果を奏する。
【0017】
本願の請求項5で特定される発明は、曲部を有する線状部を備えた金属製の円筒体を変質させることで、半径方向外側に拡張可能なステントを製造するステント製造方法であって、前記曲部の外周部位を焼鈍する第1焼鈍工程と、前記曲部のうち前記外周部位との間で中間部位を挟むように位置する内周部位を焼鈍する第2焼鈍工程と、を行うことを特徴とする。
【0018】
本願の請求項5で特定される発明によれば、第1焼鈍工程と第2焼鈍工程により曲部の外周部位と内周部位の歪みが取り除かれるので、該外周部位及び該内周部位が軟化する。これにより、前記外周部位と前記内周部位の間に位置する中間部位の強度を焼鈍された前記外周部位及び前記内周部位の強度よりも高くすることができる。そのため、上述した請求項1に記載した効果と同様の効果を奏する。
【0019】
本願の請求項6で特定される発明は、請求項5記載のステント製造方法において、前記円筒体は、時効硬化性を有しており、前記第1焼鈍工程の前に、前記円筒体に対して時効処理を行うことを特徴とする。
【0020】
本願の請求項6で特定される発明によれば、時効処理を行うことにより、円筒体に微細な析出物が現出するので、円筒体全体の強度を高めることができる。その後、曲部の外周部位及び内周部位の強度を低下させているので、該曲部の中間部位の強度を前記外周部位及び前記内周部位の強度よりも一層高くすることができる。
【0021】
本願の請求項7で特定される発明は、請求項5記載のステント製造方法において、前記円筒体は、時効硬化性を有しており、前記第1焼鈍工程では、前記外周部位を焼鈍した際に生じる熱により前記中間部位の一部位を時効硬化させ、前記第2焼鈍工程では、前記内周部位を焼鈍した際に生じる熱により前記中間部位の他の部位を時効硬化させることを特徴とする。
【0022】
本願の請求項7で特定される発明によれば、曲部の外周部位及び内周部位を焼鈍する際に生じる熱を利用して該曲部の中間部位を時効硬化させているので、焼鈍を行う前に時効処理を行う場合と比較して、サイクルタイムを短縮することができる。
【0023】
本願の請求項8で特定される発明は、請求項5〜7のいずれか1項に記載のステント製造方法において、前記線状部は直線部を有しており、前記直線部のうち、その延在方向及び前記円筒体の半径方向と直交する方向の一方の端部を焼鈍する第3焼鈍工程と、前記直線部のうち、その延在方向及び前記円筒体の半径方向と直交する方向の他方の端部を焼鈍する第4焼鈍工程と、を行うことを特徴とする。
【0024】
本願の請求項8で特定される発明によれば、第3焼鈍工程と第4焼鈍工程により直線部の両端部の歪みが取り除かれるので該両端部が軟化する。これにより、前記直線部の中間部位の強度を該両端部の強度よりも高くすることができる。そのため、上述した請求項2に記載した効果と同様の効果を奏する。
【0025】
本願の請求項9で特定される発明は、請求項8記載のステント製造方法において、前記第1〜第4焼鈍工程は、レーザ光を用いて焼鈍を行うことを特徴とする。
【0026】
本願の請求項9で特定される発明によれば、曲部の外周部位及び内周部位、並びに、直線部の両端部に対して確実且つ容易に焼鈍を行うことが可能になる。
【0027】
本願の請求項10で特定される発明は、曲部を有する線状部を備えた金属製の円筒体を変質させることで、半径方向外側に拡張可能なステントを製造するステント製造方法であって、前記円筒体は、焼入硬化性を有しており、前記円筒体を焼鈍する焼鈍工程と、前記曲部の外周部位と内周部位の間に位置する中間部位を加熱することにより、該中間部位の結晶構造をマルテンサイト変態させることを特徴とする。
【0028】
本願の請求項10で特定される発明によれば、円筒体を焼鈍した後に、曲部の中間部位を加熱してその結晶構造をマルテンサイト変態させているので、該中間部位の強度を前記曲部の外周部位及び内周部位の強度よりも高くすることができる。これにより、上述した請求項1に記載した効果と同様の効果を奏する。
【0029】
本願の請求項11で特定される発明は、請求項10記載のステント製造方法において、前記線状部は直線部を有しており、前記焼鈍工程の後に、前記直線部のうち、その延在方向及び前記円筒体の半径方向と直交する方向の両端部の間に位置する中間部位を加熱することにより、該中間部位の結晶構造をマルテンサイト変態させることを特徴とする。
【0030】
本願の請求項11で特定される発明によれば、円筒体を焼鈍した後に、直線部の中間部位を加熱してその結晶構造をマルテンサイト変態させているので、該中間部位の強度を前記直線部の両端部の強度よりも高くすることができる。これにより、上述した請求項2に記載した効果と同様の効果を奏する。
【0031】
本願の請求項12で特定される発明は、前記曲部の中間部位と前記直線部の中間部位の加熱は、レーザ光を用いて行われることを特徴とする。
【0032】
本願の請求項12で特定される発明によれば、曲部の中間部位と、直線部の中間部位の加熱を確実且つ容易に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、曲部の中間部位の強度を外周部位及び内周部位の強度よりも高くすることができるので、ステントを薄肉に形成した場合であっても、前記曲部の捲り上がりを抑えることができると共にラジアルフォースを高めることができる。また、拡張時に、前記外周部位と前記内周部位を確実に塑性変形させることができるので、リコイルを低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係るステントシステムの全体構成図である。
【図2】図1に示すステントシステムを構成するステントとその周辺の拡大側面図である。
【図3】図2に示すステントの一部省略拡大図である。
【図4】図2に示すステントの第1環状体の線状パターンを示す斜視図である。
【図5】本実施の形態に係るステントの第1及び第3製造方法を説明するための工程図である。
【図6】加工円筒体の側面図である。
【図7】加工円筒体の第1環状体に対して第1回目のレーザ照射を行っている状態を示す説明斜視図である。
【図8】図8Aは第1製造方法における第1直線部に対する第1回目のレーザ照射のレーザ条件を説明するための断面図であり、図8Bは第1製造方法における第1曲部に対する第1回目のレーザ照射のレーザ条件を説明するための断面図である。
【図9】加工円筒体の第1環状体に対して第2回目のレーザ照射を行っている状態を示す説明斜視図である。
【図10】本実施の形態に係るステントの第2製造方法を説明するための工程図である。
【図11】図11Aは第3製造方法における第1直線部に対する第1回目のレーザ照射のレーザ条件を説明するための断面図であり、図11Bは第3製造方法における第1曲部に対する第1回目のレーザ照射のレーザ条件を説明するための断面図である。
【図12】本実施の形態に係るステントの第4製造方法を説明するための工程図である。
【図13】第4製造方法において、第1環状体に対してレーザ照射を行っている状態を示す説明斜視図である。
【図14】図14Aは第4製造方法における第1直線部に対するレーザ照射のレーザ条件を説明するための断面図であり、図14Bは第4製造方法における第1曲部に対するレーザ照射のレーザ条件を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るステント及びそれを備えたステントシステムについて、好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
本発明に係るステントシステムは、長尺なシャフトを生体器官、例えば、冠動脈に挿通させ、その先端側に設けられたバルーンを病変部(狭窄部)で拡張させることで該狭窄部を押し広げて治療する、いわゆるバルーンカテーテルを有しており、バルーンの周囲にマウントされたステントを所望の狭窄部に留置するためのステントデリバリー用として使用される。勿論、本発明は、このような冠動脈用以外のもの、例えば、他の血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等の生体器官内に形成された病変部の改善のためにも適用可能である。
【0037】
本実施の形態に係るステントシステム10は、図1に示すように、細径で長尺なシャフト12と、前記シャフト12の基端側に設けられたハブ14と、前記シャフト12の先端側に設けられたバルーン16と、前記バルーン16にマウントされたステント18とを備える。なお、図1において、シャフト12の右側を「基端(後端)」側、シャフト12の左側を「先端」側と呼ぶ。
【0038】
シャフト12は、円筒状に形成されると共に摺動性の高い樹脂等で構成されており、術者がその基端側を把持又は操作しながら血管等の生体器官内へと円滑に挿通させることができるように適度な可撓性と適度な強度を有している。また、詳細な図示は省略するが、シャフト12には、ステントシステム10を冠動脈の狭窄部に導くためのガイドワイヤ20が挿通するガイドワイヤルーメンと、バルーン16内に拡張用流体を導くためのバルーンルーメンとが形成されている。
【0039】
バルーン16は、シャフト12の先端よりもやや基端側よりの位置に前記シャフト12に対して液密に接合されている。また、バルーン16は、内圧の変化により折り畳み及び拡張が可能であり、図2に示すように、前記バルーンルーメンを介して内部に注入される拡張用流体により筒状(円筒状)に拡張可能な筒部16bと、前記筒部16bの先端側で漸次縮径する先端テーパ部16aと、前記筒部16bの基端側で漸次縮径する基端テーパ部16cとを有する。
【0040】
ステント18は、バルーン16の拡張力により拡張(塑性変形)する、いわゆるバルーン拡張型ステントであり、バルーン16の筒部16b上に装着される。ステント18を構成する材料としては、生体適合性を有する金属が好ましく、例えば、ステンレス鋼等の鉄ベース合金、タンタル(タンタル合金)、プラチナ(プラチナ合金)、金(金合金)、コバルトベース合金、コバルトクロム合金、チタン合金、ニオブ合金等が挙げられる。
【0041】
ステント18は、第1〜第8環状体22a、22b、22c、22d、22e、22f、22g、22hをその軸線方向に配列し、第1環状体22aと第2環状体22b、第2環状体22bと第3環状体22c、第3環状体22cと第4環状体22d、第4環状体22dと第5環状体22e、第5環状体22eと第6環状体22f、第6環状体22fと第7環状体22g、及び、第7環状体22gと第8環状体22hのそれぞれを複数の接続部24…24で接続することにより円筒状に形成されている。なお、図1では、ステント18形状をメッシュ状に簡略化して表示している。
【0042】
第1環状体22aは、複数の線状パターン26を環状に連ねることにより形成されている。これと同様に、第2環状体22bは複数の線状パターン28を、第3環状体22cは複数の線状パターン30を、第4環状体22dは複数の線状パターン32を、第5環状体22eは複数の線状パターン34を、第6環状体22fは複数の線状パターン36を、第7環状体22gは複数の線状パターン38を、第8環状体22hは複数の線状パターン40をそれぞれ連ねることにより形成されている。
【0043】
図3及び図4に示すように、線状パターン26は、略同一幅の金属線(線状部)42でM字に近似された形状に形成されている。なお、図3では、便宜上、1つの線状パターン26を太線で表示している。
【0044】
金属線42は、断面長方形状の薄肉に形成されており、その幅は、例えば、100[μm]程度に設定され、その厚みは、例えば、1[μm]〜100[μm]の間に設定される。なお、金属線42の幅及び厚みは、適宜変更可能である。
【0045】
線状パターン26は、一方向に延びた第1直線部44の一端に連なる第1曲部46と、前記第1曲部46に連なり緩やかに曲がりながらステント18の他方の側に延伸する延伸部48と、前記延伸部48の他端に連なる第2曲部50と、前記第2曲部50に連なりステント18の一方の側に延伸する第2直線部52と、前記第2直線部52の一端に連なる第3曲部54と、前記第3曲部54に連なりステント18の他方の側に延伸する第3直線部56と、前記第3直線部56の他端に連なる第4曲部58とを有する。なお、第4曲部58は、隣り合う線状パターン26の第1直線部44の他端に連なっている。
【0046】
第1直線部44は、その延在方向及びステント18の半径方向と直交する方向(第1直線部44の幅方向)の両端部44a、44bの間に位置する中間部位44cの強度が、前記両端部44a、44bの強度よりも高く設定されている。
【0047】
第1曲部46は、その外周部位46aと内周部位46bの間に位置する中間部位46cの強度が、前記外周部位46a及び前記内周部位46bの強度よりも高く設定されている。
【0048】
延伸部48は、直線状に近似することができ、その延在方向及びステント18の半径方向と直交する方向(延伸部48の幅方向)の両端部48a、48bの間に位置する中間部位48cの強度が、前記両端部48a、48bの強度よりも高く設定されている。なお、延伸部48は、直線状であってもよい。
【0049】
第2曲部50は、その外周部位50aと内周部位50bの間に位置する中間部位50cの強度が、前記外周部位50a及び前記内周部位50bの強度よりも高く設定されている。
【0050】
第2直線部52は、その延在方向及びステント18の半径方向と直交する方向(第2直線部52の幅方向)の両端部52a、52bの間に位置する中間部位52cの強度が、前記両端部52a、52bの強度よりも高く設定されている。
【0051】
第3曲部54は、その外周部位54aと内周部位54bの間に位置する中間部位54cの強度が、前記外周部位54a及び前記内周部位54bの強度よりも高く設定されている。
【0052】
第3直線部56は、その延在方向及びステント18の半径方向と直交する方向(第3直線部56の幅方向)の両端部56a、56bの間に位置する中間部位56cの強度が、前記両端部56a、56bの強度よりも高く設定されている。
【0053】
第4曲部58は、その外周部位58aと内周部位58bの間に位置する中間部位58cの強度が、前記外周部位58a及び前記内周部位58bの強度よりも高く設定されている。
【0054】
以上のように構成される線状パターン26において、第1直線部44、延伸部48、第2直線部52、及び、第3直線部56の長さは、任意に設定可能である。
【0055】
線状パターン28、30、32、34、36、38、40は、上述した線状パターン26と同一構成であるため、その詳細な説明を省略する。
【0056】
次に、以上のように構成されたステント18の4つの製造方法(第1製造方法、第2製造方法、第3製造方法、及び、第4製造方法)について説明する。
【0057】
(第1製造方法)
先ず、本実施の形態に係るステント18の第1製造方法について、図5〜図9を参照しながら説明する。
【0058】
第1製造方法では、先ず、所定寸法の金属チューブを作製する(図5のステップS1)。なお、金属チューブは、例えば、図示しない金属素材に対して引抜加工を施すことにより長尺な金属チューブを成形し、その長尺な金属チューブを所定の長さに切断することにより作製すればよい。この場合、金属チューブは、加工硬化している。金属チューブ(金属素材)の材料としては、例えば、上述したステント18を構成する材料と同様のものでよい。
【0059】
次に、図6に示すように、金属チューブの周面を所定形状に成形して加工円筒体(円筒体)100を作製する(ステップS2)。具体的には、例えば、化学薬品を利用したエッチング方法、機械研磨方法、又は、レーザ加工方法等により金属チューブの周面の不要な部分を除去することにより、上述したステント18の形状に対応した形状を有する加工円筒体100を作製する。
【0060】
すなわち、加工円筒体100は、第1〜第8環状体102a、102b、102c、102d、102e、102f、102g、102hをその軸線方向に配列し、第1環状体102aと第2環状体102b、第2環状体102bと第3環状体102c、第3環状体102cと第4環状体102d、第4環状体102dと第5環状体102e、第5環状体102eと第6環状体102f、第6環状体102fと第7環状体102g、及び、第7環状体102gと第8環状体102hのそれぞれを複数の接続部24…24で接続したような形状となっている。
【0061】
その後、加工円筒体100を図示しないロボット等のアームに把持させる。そして、前記ロボットにて加工円筒体100の位置を制御しながら第1環状体102aに対して第1回目のレーザ照射を行う(ステップS3)。
【0062】
この工程では、図7に示すように、第1環状体102aの複数の線状パターン106のそれぞれにおいて、第1直線部108の一方の端部108a、第1曲部110の外周部位110a、延伸部112の他方の端部112b、第2曲部114の内周部位114b、第2直線部116の一方の端部116a、第3曲部118の外周部位118a、第3直線部120の他方の端部120b、及び、第4曲部122の内周部位122bを通るようにレーザ光Lを照射する。
【0063】
レーザ光Lは、レーザ出力やスポット径等のレーザ条件を設定可能なレーザ装置200から出力されると共に、加工円筒体100(線状パターン106)の外周面に照射される。そして、例えば、レーザ光Lを第1直線部108の一方の端部108aに照射する場合、レーザ光Lのスポット径d1は、該端部108aの幅W1の略半分に設定され、レーザ出力は、該端部108aが焼鈍されるような温度となるように設定され、前記ロボットは、該端部108aの幅方向の中央にレーザ光Lの中心軸が位置するように加工円筒体100の位置を制御する(図8A参照)。
【0064】
これにより、レーザ光Lの熱を第1直線部108の一方の端部108a全体に拡散させることができるので、該端部108aを確実に焼鈍することができる。
【0065】
なお、延伸部112の他方の端部112b、第2直線部116の一方の端部116a、及び、第3直線部120の他方の端部120bにレーザ光Lを照射する場合も、第1直線部108の一方の端部108aに対するレーザ照射方法と同様に行う。
【0066】
これにより、延伸部112の他方の端部112b、第2直線部116の一方の端部116a、及び、第3直線部120の他方の端部120bを確実に焼鈍することができる。
【0067】
また、例えば、レーザ光Lを第1曲部110の外周部位110aに照射する場合、レーザ光Lのスポット径d2は、該外周部位110aの幅W2の略半分に設定され、レーザ出力は、該外周部位110aが焼鈍されるような温度となるように設定され、前記ロボットは、該外周部位110aの幅方向の略中央にレーザ光Lの中心軸が位置するように加工円筒体100の位置を制御する(図8B参照)。
【0068】
これにより、レーザ光Lの熱を該外周部位110aに拡散させることができるので、該外周部位110aを確実に焼鈍することができる。
【0069】
なお、第2曲部114の内周部位114b、第3曲部118の外周部位118a、及び、第4曲部122の内周部位122bにレーザ光Lを照射する場合も、第1曲部110の外周部位110aに対するレーザ照射方法と同様に行う。
【0070】
これにより、第1曲部110の外周部位110a、第2曲部114の内周部位114b、第3曲部118の外周部位118a、及び、第4曲部122の内周部位122bを確実に焼鈍することができる。
【0071】
前記のように、第1環状体102aに対して第1回目のレーザ照射を行うと、第1直線部108の一方の端部108aが端部44aに、第1曲部110の外周部位110aが外周部位46aに、延伸部112の他方の端部112bが端部48bに、第2曲部114の内周部位114bが内周部位50bに、第2直線部116の一方の端部116aが端部52aに、第3曲部118の外周部位118aが外周部位54aに、第3直線部120の他方の端部120bが端部56bに、第4曲部122の内周部位122bが内周部位58bになる(図9参照)。
【0072】
続いて、前記ロボットにて加工円筒体100の位置を制御しながら第1環状体102aに対して第2回目のレーザ照射を行う(ステップS4)。
【0073】
この工程では、図9に示すように、第1環状体102aの複数の線状パターン106のそれぞれにおいて、第1直線部108の他方の端部108b、第1曲部110の内周部位110b、延伸部112の一方の端部112a、第2曲部114の外周部位114a、第2直線部116の他方の端部116b、第3曲部118の内周部位118b、第3直線部120の一方の端部120a、第4曲部122の外周部位122aを通るようにレーザ光Lを照射する。
【0074】
レーザ光Lは、加工円筒体100(線状パターン106)の外周面に照射される。第1直線部108の他方の端部108b、延伸部112の一方の端部112a、第2直線部116の他方の端部116b、及び、第3直線部120の一方の端部120aにレーザ光Lを照射する場合、上述した第1直線部108の一方の端部108aに対するレーザ照射方法と同様に行う。
【0075】
また、第1曲部110の内周部位110b、第2曲部114の外周部位114a、第3曲部118の内周部位118b、及び、第4曲部122の外周部位122aにレーザ光Lを照射する場合、上述した第1曲部110の外周部位110aに対するレーザ照射方法と同様に行う。
【0076】
これにより、第1直線部108の他方の端部108b、第1曲部110の内周部位110b、延伸部112の一方の端部112a、第2曲部114の外周部位114a、第2直線部116の他方の端部116b、第3曲部118の内周部位118b、第3直線部120の一方の端部120a、第4曲部122の外周部位122aを確実に焼鈍することができる。
【0077】
前記のように、第1環状体102aに対して第2回目のレーザ照射を行うと、第1直線部108の他方の端部108bが端部44bに、第1曲部110の内周部位110bが内周部位46bに、延伸部112の一方の端部112aが端部48aに、第2曲部114の外周部位114aが外周部位50aに、第2直線部116の他方の端部116bが端部52bに、第3曲部118の内周部位118bが内周部位54bに、第3直線部120の一方の端部120aが端部56aに、第4曲部122の外周部位122aが外周部位58aになる。その結果、第1環状体102aが第1環状体22aになる。
【0078】
その後、第2〜第8環状体102b〜102hのそれぞれに対して第1回目及び第2回目のレーザ照射を行う(ステップS5)。これにより、第2環状体102bが第2環状体22bに、第3環状体102cが第3環状体22cに、第4環状体102dが第4環状体22dに、第5環状体102eが第5環状体22eに、第6環状体102fが第6環状体22fに、第7環状体102gが第7環状体22gに、第8環状体102hが第8環状体22hになる。その結果、本実施の形態に係るステント18が完成する。
【0079】
以上のようなステント18の製造方法では、第1回目のレーザ照射と第2回目のレーザ照射の順番を逆にしてもよいことは勿論である。このことは、後述する第2及び第3製造方法においても同様である。また、焼鈍に際して、レーザ光以外の熱源を利用してもよい。このことは、後述する第2〜第4製造方法においても同様である。
【0080】
(第2製造方法)
次に、本実施の形態に係るステント18の第2製造方法について、図10を参照しながら説明する。なお、本製造方法の説明において、第1製造方法の説明と重複する内容についてはその詳細な説明を省略する。後述する第3及び第4製造方法においても同様である。
【0081】
第2製造方法では、ステップS11及びステップS12において、上述した第1製造方法のステップS1及びステップS2と同様に、所定寸法の金属チューブを作製して、該金属チューブの周面を所定形状に成形して加工円筒体100を作製する。このとき、金属チューブ(金属素材)の材料は、時効硬化性を有する材料であって、例えば、コバルトベース合金の1つであるSPRON、SUS630等の析出硬化系ステンレス鋼等が用いられる。
【0082】
その後、加工円筒体100に対して時効処理を行う(ステップS13)。これにより、加工円筒体100の全体に微細な析出物が現出するので、加工円筒体100全体の強度を高めることができる。
【0083】
続いて、ステップS14〜ステップS16において、上述した第1製造方法のステップS3〜ステップS5と同様に、第1〜第8環状体102a〜102hのそれぞれにおいて、第1回目及び第2回目のレーザ照射を行う。これにより、本実施形態に係るステント18が完成する。
【0084】
(第3製造方法)
次に、本実施の形態に係るステント18の第3製造方法について、図5及び図11を参照しながら説明する。
【0085】
第3製造方法では、上述した第1製造方法のステップS1〜ステップS5を行う。しかしながら、金属チューブ(金属素材)の材料は、第2製造方法で説明した金属チューブの材料と同様のものが用いられ、ステップS3及びステップS4において、レーザ条件が異なっている。
【0086】
本製造方法では、ステップS3において、例えば、レーザ光Lを第1直線部108の一方の端部108aに照射する場合、レーザ光Lのスポット径d3は、上述した第1製造方法でのスポット径d1よりも大きく、例えば、該端部108aの幅W1と同じ大きさに設定されている(図11A参照)。
【0087】
これにより、レーザ光Lの熱を第1直線部108の中間部位108cに伝達させることができるので、第1直線部108の一方の端部108aを焼鈍すると共に該中間部位108cの一部位を確実に時効硬化させることができる。
【0088】
なお、延伸部112の他方の端部112b、第2直線部116の一方の端部116a、及び、第3直線部120の他方の端部120bにレーザ光Lを照射する場合も、第1直線部108の一方の端部108aに対するレーザ照射方法と同様に行う。
【0089】
これにより、延伸部112の他方の端部112b、第2直線部116の一方の端部116a、及び、第3直線部120の他方の端部120bを焼鈍すると共に、延伸部112の中間部位112cの一部位、第2直線部116の中間部位116cの一部位、及び、第3直線部120の中間部位120cの一部位を確実に時効硬化させることができる。
【0090】
また、例えば、レーザ光Lを第1曲部110の外周部位110aに照射する場合、レーザ光Lのスポット径d4は、上述した第1製造方法でのスポット径d2よりも大きく、例えば、該外周部位110aの幅と同じ大きさに設定されている(図11B参照)。
【0091】
これにより、レーザ光Lの熱を第1曲部110の中間部位110cに伝達させることできるので、第1曲部110の外周部位110aを焼鈍すると共に、該中間部位110cの一部位を確実に時効硬化させることができる。
【0092】
なお、第2曲部114の内周部位114b、第3曲部118の外周部位118a、及び、第4曲部122の内周部位122bにレーザ光Lを照射する場合も、第1曲部110の外周部位110aに対するレーザ照射方法と同様に行う。
【0093】
これにより、第2曲部114の内周部位114b、第3曲部118の外周部位118a、及び、第4曲部122の内周部位122bを焼鈍すると共に、第2曲部114の中間部位114cの一部位、第3曲部118の中間部位118cの一部位、及び、第4曲部122の中間部位122cの一部位を確実に時効硬化させることができる。
【0094】
ステップS4では、第1直線部108の他方の端部108b、延伸部112の一方の端部112a、第2直線部116の他方の端部116b、及び、第3直線部120の一方の端部120aにレーザ光Lを照射する場合、第1直線部108の一方の端部108aに対するレーザ照射方法と同様に行う。
【0095】
また、第1曲部110の内周部位110b、第2曲部114の外周部位114a、第3曲部118の内周部位118b、及び、第4曲部122の外周部位122aにレーザ光Lを照射する場合、第1曲部110の外周部位110aに対するレーザ照射方法と同様に行う。
【0096】
これにより、第1直線部108の他の端部108b、第1曲部110の内周部位110b、延伸部112の一方の端部112a、第2曲部114の外周部位114a、第2直線部116の他の端部116b、第3曲部118の内周部位118b、第3直線部120の一方の端部120a、第4曲部122の外周部位122aを焼鈍することができる。
【0097】
また、第1直線部108の中間部位108cの他の部位、第1曲部110の中間部位110cの他の部位、延伸部112の中間部位112cの他の部位、第2曲部114の中間部位114cの他の部位、第2直線部116の中間部位116cの他の部位、第3曲部118の中間部位118cの他の部位、第3直線部120の中間部位120cの他の部位、第4曲部122の中間部位122cの他の部位を確実に時効硬化させることができる。その結果、本実施の形態に係るステント18が完成する。
【0098】
本製造方法では、レーザ光Lの熱を利用して、焼鈍と時効処理を同時に行うことができるので、サイクルタイムを短縮することができる。
【0099】
(第4製造方法)
次に、本実施の形態に係るステント18の第4製造方法について、図12及び図13を参照しながら説明する。
【0100】
第4製造方法では、図12のステップS21及びステップS22において、上述した第1製造方法のステップS1及びステップS2と同様に、所定寸法の金属チューブを作製して、該金属チューブの周面を所定形状に成形して加工円筒体100を作製する。このとき、金属チューブ(金属素材)の材料は、焼入硬化性を有する材料であって、例えば、炭素鋼、合金鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼等が用いられる。
【0101】
次に、前記加工円筒体100に対して焼鈍処理を行う(ステップS23)。これにより、引抜加工によって加工硬化した加工円筒体100の歪みが取り除かれるので、該加工円筒体100が軟化する。
【0102】
そして、第1直線部108の一方の端部108aが端部44aに、他方の端部108bが端部44bに、第1曲部110の外周部位110aが外周部位46aに、内周部位110bが内周部位46bに、延伸部112の一方の端部112aが端部48aに、他方の端部112bが端部48bに、第2曲部114の外周部位114aが外周部位50aに、内周部位114bが内周部位50bに、第2直線部116の一方の端部116aが端部52aに、他方の端部116bが端部52bに、第3曲部118の外周部位118aが外周部位54aに、内周部位118bが内周部位54bに、第3直線部120の一方の端部120aが端部56aに、他方の端部120bが端部56bに、第4曲部122の外周部位122aが外周部位58aに、内周部位122bが内周部位58bになる。
【0103】
続いて、第1環状体102aに対してレーザ照射を行う(ステップS24)。この工程では、図13に示すように、第1環状体102aの複数の線状パターン106のそれぞれにおいて、第1直線部108の中間部位108c、第1曲部110の中間部位110c、延伸部112の中間部位112c、第2曲部114の中間部位114c、第2直線部116の中間部位116c、第3曲部118の中間部位118c、第3直線部120の中間部位120c、及び、第4曲部122の中間部位122cを通るようにレーザ光Lを照射する。
【0104】
例えば、レーザ光Lを第1直線部108の中間部位108cに照射する場合、レーザ光Lのスポット径d5は、中間部位108cの幅W3の略半分に設定され、レーザ出力は、該中間部位108cの結晶構造をマルテンサイト変態させることが可能な温度となるように設定され、前記ロボットは、該中間部位108cの幅方向の中央(中立面)にレーザ光Lの中心軸が位置するように加工円筒体100の位置を制御する(図14A参照)。
【0105】
これにより、レーザ光Lの熱を第1直線部108の中間部位108c全体に拡散させることができるので、該中間部位108cの結晶構造をマルテンサイト変態可能な温度にすることができる。また、前記中間部位108cがレーザ光Lによって熱せられると、その熱が端部108aと端部108bに伝達するため、該中間部位108cが急冷されることとなる。これにより、該中間部位108cの結晶構造を確実にマルテンサイト変態させることができる。
【0106】
なお、延伸部112の中間部位112c、第2直線部116の中間部位116c、及び、第3直線部120の中間部位120cにレーザ光Lを照射する場合も、第1直線部108の中間部位108cに対するレーザ照射方法と同様に行う。
【0107】
これにより、延伸部112の中間部位112c、第2直線部116の中間部位116c、及び、第3直線部120の中間部位120cの結晶構造を確実にマルテンサイト変態させることができる。
【0108】
また、例えば、レーザ光Lを第1曲部110の中間部位110cに照射する場合、レーザ光Lのスポット径d6は、該中間部位110cの幅W4の略半分に設定され、レーザ出力は、該中間部位110cの結晶構造をマルテンサイト変態させることが可能な温度となるように設定され、前記ロボットは、該中間部位110cの幅方向の中央(中立面)にレーザ光Lの中心軸が位置するように加工円筒体100の位置を制御する(図14B参照)。
【0109】
これにより、レーザ光Lの熱を第1曲部110の中間部位110c全体に拡散させることができるので、該中間部位110c全体の結晶構造をマルテンサイト変態可能な温度にすることができる。また、前記中間部位110cがレーザ光Lによって熱せられると、その熱が外周部位110aと内周部位110bに伝達するため、該中間部位110cが急冷されることとなる。これにより、該中間部位110cの結晶構造を確実にマルテンサイト変態させることができる。
【0110】
なお、第2曲部114の中間部位114c、第3曲部118の中間部位118c、及び、第4曲部122の中間部位122cにレーザ光Lを照射する場合も、第1曲部110の中間部位110cに対するレーザ照射方法と同様に行う。
【0111】
これにより、第2曲部114の中間部位114c、第3曲部118の中間部位118c、及び、第4曲部122の中間部位122cの結晶構造を確実にマルテンサイト変態させることができる。
【0112】
前記のように、第1環状体102aに対してレーザ照射を行うと、第1直線部108の中間部位108cが中間部位44cに、第1曲部110の中間部位110cが中間部位46cに、延伸部112の中間部位112cが中間部位48cに、第2曲部114の中間部位114cが中間部位50cに、第2直線部116の中間部位116cが中間部位52cに、第3曲部118の中間部位118cが中間部位54cに、第3直線部120の中間部位120cが中間部位56cに、第4曲部122の中間部位122cが中間部位58cになる。
【0113】
その後、第2〜第8環状体102b〜102hのそれぞれに対して上述したレーザ照射を行う(ステップS25)。その結果、本実施の形態に係るステント18が完成する。
【0114】
次に、以上のように構成される本実施の形態に係るステント18の作用について説明する。
【0115】
先ず、例えば、上述した第1〜第4製造方法のいずれか1つで製造されたステント18は、その半径方向内方に収縮(塑性変形)させることにより、収縮された状態のバルーン16の筒部16b上にマウントされる。
【0116】
そして、冠動脈内等に発生した狭窄部(病変部)の形態を、血管内造影法や血管内超音波診断法により特定する。
【0117】
次に、例えばセルジンガー法によって大腿部等から経皮的に血管内にガイドワイヤ20を先行して導入すると共に、該ガイドワイヤ20をシャフト12の先端開口部からガイドワイヤルーメンを挿通させて、ステントシステム10を血管内へと挿入する。このとき、ステントシステム10は、バルーン16が収縮あるいは折り畳まれた形態で挿入される。
【0118】
そして、X線造影下で、ガイドワイヤ20を目的とする狭窄部へ進め、その狭窄部を通過させて留置すると共に、ステントシステム10をガイドワイヤ20に沿って冠動脈内に進行させる。
【0119】
ステントシステム10の進行によって、該ステントシステム10のバルーン16が狭窄部に到達する。この段階で、ハブ14側からシャフト12のバルーンルーメン内へと拡張用流体(例えば、造影剤)を圧送することで、バルーン16が拡張することとなる。
【0120】
バルーン16の拡張によって、狭窄部が押し広げられると共にステント18も拡張し、ステント18は狭窄部内壁に密着・固定されることとなる。
【0121】
そして、本実施の形態に係るステント18は、第1〜第8環状体22a〜22hのそれぞれにおいて、第1曲部46の中間部位46cの強度をその外周部位46a及び内周部位46bの強度よりも高く設定しているので、第1曲部46の全体を前記外周部位46a又は前記内周部位46bの強度に設定した場合と比較して、前記第1曲部46の強度を高めることできる。これにより、ステント18を薄肉に形成した場合であっても、拡張時に、第1曲部46が捲り上がることを抑えることができると共にラジアルフォースを高めることができる。また、拡張時に歪み(変形量)の少ない中間部位46cの強度を高くすると共に、歪み(変形量)の多い外周部位46a及び内周部位46bの強度を低くしているので、前記中間部位46cが弾性変形領域内であっても該外周部位46a及び該内周部位46bを確実に塑性変形させることができる。これにより、リコイルを低く抑えられる。
【0122】
また、本実施の形態に係るステント18は、第1〜第8環状体22a〜22hのそれぞれにおいて、第2曲部50の中間部位50cの強度をその外周部位50a及び内周部位50bの強度よりも高く、第3曲部54の中間部位54cの強度をその外周部位54a及び内周部位54bの強度よりも高く、第4曲部58の中間部位58cの強度をその外周部位58a及び内周部位58bの強度よりも高く設定しているので、ラジアルフォースを一層高めることができると共に、リコイルを一層低く抑えることができる。
【0123】
本実施の形態に係るステント18は、第1直線部44の中間部位44cの強度をその両端部44a、44bの強度よりも高く、延伸部48の中間部位48cの強度をその両端部48a、48bの強度よりも高く、第2直線部52の中間部位52cの強度をその両端部52a、52bの強度よりも高く、第3直線部56の中間部位56cの強度をその両端部56a、56bの強度よりも高く設定しているので、ラジアルフォースをさらに高めることができると共に、リコイルもさらに低く抑えることができる。
【0124】
本実施の形態に係るステント18は、上述した構成に限定されない。例えば、線状パターン26において、第1直線部44の中間部位44cの強度をその両端部44a、44bの強度と同一に設定すると共に、延伸部48、第2直線部52、及び、第3直線部56の強度も第1直線部44の強度と同様に設定してもよい。つまり、線状パターン26において、第1〜第3直線部44、52、56及び延伸部48のうち少なくともいずれか1つを上述したような強度に設定してもよい。
【0125】
本実施の形態に係るステント18は、例えば、第1曲部46と第1直線部44の境界部近傍、及び/又は、第1曲部46と延伸部48の境界部近傍において、金属線42の幅全体に渡って前記第1曲部46の中間部位46cの強度と同じ強度を有する高強度部を形成してもよい。これにより、ステント18のラジアルフォースをさらに高めることができる。
【0126】
なお、高強度部は、第2曲部50と延伸部48の境界部の近傍、第2曲部50と第2直線部52の境界部の近傍、第3曲部54と第2直線部52の境界部の近傍、第3曲部54と第3直線部56の境界部の近傍、第4曲部58と第3直線部56の境界部の近傍、及び/又は、第4曲部58と第1直線部44の境界部の近傍に設けられていてもよい。前記高強度部は、ステントのデザインや特性によって、任意に設けることができる。
【0127】
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成及び製造方法を採り得ることは勿論である。
【0128】
本発明に係るステントは、曲部を有していればよく、例えば、所定の金属線を網目状に形成して筒状にしたものや、金属線を螺旋状に巻回して筒状にしたものであってもよい。
【符号の説明】
【0129】
10…ステントシステム 12…シャフト
14…ハブ 16…バルーン
18…ステント 22a…第1環状体
22b…第2環状体 22c…第3環状体
22d…第4環状体 22e…第5環状体
22f…第6環状体 22g…第7環状体
22h…第8環状体 24…接続部
26〜40…線状パターン 42…金属線(線状部)
44…第1直線部 44a…一方の端部
44b…他方の端部 44c…中間部位
46…第1曲部 46a…外周部位
46b…内周部位 46c…中間部位
100…加工円筒体(円筒体) L…レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲部を有する線状部を備えた円筒体により形成され、前記円筒体の半径方向外側に拡張可能なステントであって、
前記曲部は、外周部位と内周部位の間に位置する中間部位の強度が、前記外周部位及び前記内周部位の強度よりも高く設定されていることを特徴とするステント。
【請求項2】
請求項1記載のステントにおいて、
前記線状部は、直線部を有しており、
前記直線部は、その延在方向及び前記円筒体の半径方向と直交する方向の両端部の間に位置する中間部位の強度が、前記両端部の強度よりも高く設定されていることを特徴とするステント。
【請求項3】
請求項1又は2記載のステントにおいて、
前記円筒体は、複数の前記曲部を有する環状体が軸線方向に複数接続されることにより形成されていることを特徴とするステント。
【請求項4】
チューブ状のシャフトと、
前記シャフトに設けられた拡張可能なバルーンと、
前記バルーンにマウントされたステントと、を備えるステントシステムであって、
前記ステントは、請求項1〜3のいずれか1項に記載のステントであることを特徴とするステントシステム。
【請求項5】
曲部を有する線状部を備えた金属製の円筒体を変質させることで、半径方向外側に拡張可能なステントを製造するステント製造方法であって、
前記曲部の外周部位を焼鈍する第1焼鈍工程と、
前記曲部のうち前記外周部位との間で中間部位を挟むように位置する内周部位を焼鈍する第2焼鈍工程と、を行うことを特徴とするステント製造方法。
【請求項6】
請求項5記載のステント製造方法において、
前記円筒体は、時効硬化性を有しており、
前記第1焼鈍工程の前に、前記円筒体に対して時効処理を行うことを特徴とするステント製造方法。
【請求項7】
請求項5記載のステント製造方法において、
前記円筒体は、時効硬化性を有しており、
前記第1焼鈍工程では、前記外周部位を焼鈍した際に生じる熱により前記中間部位の一部位を時効硬化させ、
前記第2焼鈍工程では、前記内周部位を焼鈍した際に生じる熱により前記中間部位の他の部位を時効硬化させることを特徴とするステント製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のステント製造方法において、
前記線状部は直線部を有しており、
前記直線部のうち、その延在方向及び前記円筒体の半径方向と直交する方向の一方の端部を焼鈍する第3焼鈍工程と、
前記直線部のうち、その延在方向及び前記円筒体の半径方向と直交する方向の他方の端部を焼鈍する第4焼鈍工程と、を行うことを特徴とするステント製造方法。
【請求項9】
請求項8記載のステント製造方法において、
前記第1〜第4焼鈍工程は、レーザ光を用いて焼鈍を行うことを特徴とするステント製造方法。
【請求項10】
曲部を有する線状部を備えた金属製の円筒体を変質させることで、半径方向外側に拡張可能なステントを製造するステント製造方法であって、
前記円筒体は、焼入硬化性を有しており、
前記円筒体を焼鈍する焼鈍工程と、
前記曲部の外周部位と内周部位の間に位置する中間部位を加熱することにより、該中間部位の結晶構造をマルテンサイト変態させることを特徴とするステント製造方法。
【請求項11】
請求項10記載のステント製造方法において、
前記線状部は直線部を有しており、
前記焼鈍工程の後に、前記直線部のうち、その延在方向及び前記円筒体の半径方向と直交する方向の両端部の間に位置する中間部位を加熱することにより、該中間部位の結晶構造をマルテンサイト変態させることを特徴とするステント製造方法。
【請求項12】
請求項11記載のステント製造方法において、
前記曲部の中間部位と前記直線部の中間部位の加熱は、レーザ光を用いて行われることを特徴とするステント製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−70875(P2012−70875A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217293(P2010−217293)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】