説明

ステータ及び回転電機

【課題】ステータにおいて、ステータコイルでの磁束密度を変えることなくステータコイル全体でのインダクタンスを十分に低減でき、かつ、コイル分割によるインダクタンスの低減効果を十分に高くできる構成を実現することである。
【解決手段】ステータ12は、複数のティース26を有するステータコア18と、複数のティース26に巻装されたステータコイル20とを含む。各相のステータコイル20は、互いに相互インダクタンスを生じないように4つに分離されたコイル要素28,30,32,34を電気的に直列に接続することにより構成する。各コイル要素28,30,32,34は、複数のティース26に集中巻きで巻装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のティースを有するステータコアと、複数のティースに巻装されたステータコイルであって、少なくとも1相のステータコイルは、複数に分離されたステータコイル要素を電気的に直列に接続することにより構成されるステータコイルとを備えるステータ及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バルブ開閉用のステッピングモータ等の電動機等の回転電機が知られている。例えば、特許文献1には、排ガス中の窒素酸化物量濃度を下げるためのEGRバルブの制御用として、ステッピングモータを使用することが記載されている。このステッピングモータは、高速応答性と高分解能とを保持しながら大流量制御を可能とすることを目的とするとされている。このステッピングモータは、2のアキシャルコイルを備えるもので、ステータの軸方向に2のボビンが設けられており、各ボビンにアキシャルコイルが形成されている。各アキシャルコイル同士は直列接続されている。
【0003】
この構成では、アキシャルコイルが2に分割されており、アキシャルコイル全体のインダクタンスLは分割数をnとして、1/n2に比例するので、2分割であるn=2の場合に簡単にインダクタンスだけを1/4に激減させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−73484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1に記載された構成では、アキシャルコイルを分割することにより、アキシャルコイル全体での総巻き数や、磁束密度を変えることなく、インダクタンスをある程度低減できる可能性はある。このため、トルクをある程度大きくでき、かつある程度高速応答性のよいステッピングモータを実現できる可能性はある。
【0006】
ただし、このようなアキシャルコイルを備えるステータでは、ステータの径方向内側で、径方向外側に向かうほど磁束密度が小さくなる。すなわち、ステータの径方向内側では、中心軸から径方向外側に向かうにしたがって磁路の断面積が大きくなるため、ステータの径方向内側で径方向外側部分での磁束密度が小さくなる。このため、ステータの径方向内側にロータを対向配置する回転電機では、ステータとロータとの対向部分での磁気抵抗が大きくなり、ステータコイル全体でのインダクタンスは本来ある程度低くなっている。このため、特許文献1に記載された構成では、コイル分割によるインダクタンスの低減効果を十分に高くできない可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、ステータ及び回転電機において、ステータコイルでの磁束密度を変えることなくステータコイル全体でのインダクタンスを十分に低減でき、かつ、コイル分割によるインダクタンスの低減効果を十分に高くできる構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るステータは、複数のティースを有するステータコアと、複数のティースに巻装されたステータコイルとを備えるステータにおいて、ステータコイルの少なくとも1相のステータコイルは、互いに相互インダクタンスを生じないように4つに分離されたステータコイル要素を電気的に直列に接続することにより構成され、各ステータコイル要素は、複数のティースに集中巻きで巻装されることにより、1相当たりのティースを4磁極としていることを特徴とするステータである。
【0009】
本発明に係るステータによれば、1相のステータコイルで、1のコイルを4のステータコイル要素に分割したのと同様になる。ここで、分割数をnとした場合に、1のコイルを分割しないと仮定した場合に対して、各コイル要素の巻き数が1/nとなり、磁気抵抗がn倍となるため、コイルのインダクタンスを1/n2と十分に小さくできる。これに対して、本発明では、分割数nを4とするので、分割数nを2とした場合に比べてコイルのインダクタンスを1/4と十分に小さくできる。しかも、1相でコイルを分割しないと仮定した場合に対して、コイルの半径とコイルを流れる電流量とは変わらないので、磁束密度自体はコイルの分割の有無にかかわらず変わらない。このため、コイルの分割数nを2とした場合に対して、磁束密度を変えずにインダクタンスだけを大幅に低下させることができる。したがって、高トルクで、かつ、高速応答性の高い回転電機を実現できる。しかも、上記の特許文献1に記載された構成と異なり、複数のステータコイル要素をステータの複数のティースに集中巻きで巻装している。このため、ステータコイルの磁束密度の低い部分にロータを対向させることがなく、1相分のステータコイルを分割配置しないと仮定した場合には、ステータとロータとの対向部分での磁気抵抗が低くなり、インダクタンスは大きくなる。このため、本発明によれば、コイル分割によるインダクタンスの低減効果を十分に高くできる。
【0010】
本発明に係る回転電機は、本発明に係るステータと、ステータの径方向に対向配置されたロータとを備える回転電機であって、少なくとも1相のステータコイルを構成する複数のステータコイル要素は、ステータコアの90度ずつ位相がずれた位置に設けられた複数のティースにそれぞれ巻装されていることを特徴とする回転電機である。
【0011】
本発明に係る回転電機において、好ましくは、少なくとも1相のステータコイルを巻装する複数のティースは、ステータコアの互いに周方向に90度位相が異なる2のティースにより構成する第1ティース組と、周方向にずれた別の位置でステータコアの互いに周方向に90度位相が異なる2のティースにより構成する第2ティース組とにより構成され、少なくとも1相のステータコイルを構成する複数のステータコイル要素は、第1ティース組に互いに逆の巻き方向に巻装された2の第1ステータコイル要素と、第2ティース組に互いに逆の巻き方向に巻装された2の第2ステータコイル要素とにより構成されている。
【0012】
上記構成によれば、1のステータコイル要素から別のステータコイル要素へロータを介して通る磁束が2系統になるのにもかかわらず、2系統の磁束が混在することによる不都合を有効に防止でき、回転電機の高性能化を図れる。
【0013】
本発明に係る回転電機において、好ましくは、ロータは、全周にわたって設けられた基部と、基部のステータと対向する周面の周方向複数個所に径方向に突出するように設けられた突極部と、各突極部と基部との連結部に設けられ、各突極部から周方向片側に設けられる別の突極部に対して、周方向他側に設けられる別の突極部に対してよりも磁束を誘導しやすくするガイド部とを有する。
【0014】
上記構成によれば、1のステータコイル要素から別のステータコイル要素へロータを介して通る磁束が2系統になるのにもかかわらず、2系統の磁束が混在することによる不都合をより有効に防止でき、回転電機のさらなる高性能化を図れる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るステータ及び回転電機によれば、ステータコイルでの磁束密度を変えることなくステータコイル全体でのインダクタンスを十分に低減でき、かつ、コイル分割によるインダクタンスの低減効果を十分に高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施の形態のステータを備える回転電機の概略図である。
【図2】図1の回転電機において、ステータに1相のみのステータコイルを設けて磁束の流れを説明するための図である。
【図3】図1の回転電機を構成する1相のステータコイルの回路を示す図である。
【図4】図1の回転電機を構成する1相のステータコイルに関する駆動部を示す回路図である。
【図5】本発明から外れる比較例のステータを備える回転電機において、図2に対応する図である。
【図6】図5の回転電機を構成する1相のステータコイルの回路を示す図である。
【図7】図5の回転電機を構成する1相のステータコイルに関して、駆動部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、図1から図4を用いて本発明に係る実施の形態の1例を説明する。本実施の形態のステータを備える回転電機は、スイッチトリラクタンスモータ(SRモータ)である集中巻き型モータである。なお、回転電機は、モータとして使用する構成に限定するものではなく、発電機として、または、その両方の機能を有するものとして使用する構成とすることもできる。
【0018】
図1に示すように、回転電機10は、ハウジングである図示しないモータケースの内面に固定したステータ12と、ステータ12の径方向内側に対向配置されたロータ14と、ロータ14に固定された回転軸16とを備える。なお、以下の説明では、回転電機10を3相のSRモータとする場合を説明するが、本発明はこれに限定するものではなく、2相、または4相等の複数相の電流で駆動する、種々の回転電機とすることもできる。
【0019】
ステータ12は、けい素電磁鋼板等の磁性鋼板の積層体または圧粉磁心等により構成するもので、略円筒状のステータコア18と、複数相のステータコイル20,22,24とを備える。ステータコア18は、内周面の周方向複数個所に、径方向内側に突出するように設けられたティース26を含む。
【0020】
ステータコイル20,22,24は、3相のステータコイルであり、複数のティース26に巻装されている。図2に示すように、1相のステータコイル20を代表して説明すると、ステータコア18に位相が90度ずれた位置に設けられた4個所のティース26に、ステータコイル20を構成するコイル要素28,30,32,34が巻装されている。他の相のステータコイル22,24(図1)の構成も、図2の1相のステータコイル20の構成と配置位置がずれるだけで同様である。図3に示すように、1相のステータコイル20,22,24(22,24については図1参照)は、4つに分離されたステータコイル要素である、第1コイル要素28,30及び第2コイル要素32,34を電気的に直列に接続することにより構成されている。図2に示すように、各コイル要素28,30,32,34は、ステータコア18の90度ずつ位相がずれた位置に設けられた、4つのティース26のそれぞれに集中巻きで巻装されている。これにより、1相当たりのティース26が、ステータ12に90度ずつ位相がずれて配置された4磁極とされている。
【0021】
また、各相に対応する複数のティース26は、それぞれ2ずつで1組とする第1ティース組36と第2ティース組38とにより構成されている。この場合、第1ティース組36は、ステータコア18の互いに周方向に90度位相が異なる、図2の矢印a、b位置に設けられた2のティース26により構成する。また、第2ティース組38は、第1ティース組36に対し180度、周方向にずれた別の位置でステータコア18の互いに周方向に90度位相が異なる、図2の矢印c、d位置に設けられた2のティース26により構成する。図1に示すように、各相同士で、複数のティース26は、ステータコア18の30度ずつ位相がずれた位置に設けられている。
【0022】
また、図2に示すように、各相のステータコイル20,22,24(22,24については図1参照)を構成する複数のステータコイル要素は、図2の矢印a、b位置の第1ティース組36に互いにステータ12の径方向に関して逆の巻き方向に巻装された2の第1コイル要素28,30と、図2の矢印c、d位置の第2ティース組38に互いにステータ12の径方向に関して逆の巻き方向に巻装された2の第2コイル要素32,34とにより構成されている。このような各相分の各コイル要素28,30,32,34は、互いに相互インダクタンスを生じないように4つに分離された状態で配置され、互いに電気的に直列に接続されることにより構成されている。また、各相で、互いにステータ12の直径方向に対向する2のコイル要素28,32(または30,34)同士のステータ12の径方向に関する巻き方向を同じとし、同じ方向に電流を流した場合に互いに近づく向きまたは互いに離れる向きに磁束が発生するようにしている。なお、各コイル要素28,30,32,34の直列に接続する順は、図3に示す例に限定するものではなく、種々の順とすることができる。
【0023】
また、図1に示す回転軸16は、図示しないモータケースに軸受により回転可能に支持されている。ロータ14は、回転軸16に固定されて一体化されている。ロータ14は、磁性材料により構成され、回転軸16寄りの中心側に全周にわたって設けられた基部40と、基部40のステータ12と対向する外周面の周方向複数個所(図示の例では8箇所)に径方向外側に突出するように設けられた突極部42とを備える。
【0024】
また、ロータ14は、各突極部42と基部40との連結部に設けられ、各突極部42から図1の時計方向側である、周方向片側に設けられる別の突極部42に対して、図1の反時計方向側である、周方向他側に設けられる別の突極部42に対してよりも磁束を誘導しやすくするガイド部である溝部44を有する。溝部44は、周方向に隣り合う2ずつの突極部42同士の連結部に、それぞれ周方向の同方向(図1の反時計方向)に凸状または凹状に湾曲するように形成されており、溝部44により隣り合う2ずつの突極部42の根元部同士を分離している。これにより、例えば、図2に矢印P1,P2,P3,P4で示すように、2の第1コイル要素28,30同士(または2の第2コイル要素32,34同士)で、1のコイル要素28(または32)からロータ14を介して別のコイル要素30(または34)に磁束が通る場合に、磁束がティース26に関して同じティース組36(または38)の間だけに流れやすくなり、別のティース組38(または36)側には流れにくくなる。なお、ガイド部は、このような溝部44に限定するものではなく、各突極部42から周方向片側に設けられる別の突極部42に対して、周方向他側に設けられる別の突極部42に対してよりも磁束を誘導しやすくする機能を有するものであれば、種々の構造を採用できる。
【0025】
このような回転電機10は、図4に一部を示す駆動部により駆動される。図4では、回転電機10の1相分のステータコイル20に電流を流す部分を示している。すなわち、1相のステータコイル20を構成するコイル要素28,30,32,34は、それぞれトランジスタ、IGBT等のスイッチング素子46,48を介して図示しない直流電源に接続されている。したがって、図4の回路の図示しない左右方向片側にも図4と同様の構成が、残りの相のステータコイル22,24(図1参照)に対応して接続されている。図示しない制御部により、スイッチング素子46,48のスイッチングを制御することにより、順次選択された各相のステータコイル20,22,24に直流電流が供給されるようにしている。また、ステータコイル20,22,24の両端には、スイッチング素子46,48のオンオフ切換時に生成される逆起電力を還流させるためのダイオード50,52が設けられている。
【0026】
回転電機10(図1)の駆動時には、制御部からの制御信号に基づいて、ある相のステータコイル20(または22,24のいずれか(以下、図4の説明で同様とする。))に接続されたスイッチング素子46,48がオンされると、直流電源から、ある相のステータコイル20に直流電流が供給され、このステータコイル20により例えば、図2に示すような磁界が生成される。磁界は、磁界が生成されたティース26に磁路を生成し、磁路を短くするように磁界が生成されたティース26近傍に位置する突極部42を吸引する。この場合、例えば、図2に示すように、ある相に対応して磁極部となる、ティース26の、ステータ12に関する径方向内端がN極またはS極に磁化される。この結果、ロータ14がある角度分回転する。この状態で、制御部は、磁路を生成したティース26の隣に位置するティース26に磁界を生成するように、スイッチング素子46,48(図4)のオンオフを切り換える。これを順次3相分で繰り返すことで、ロータ14が回転駆動される。
【0027】
このようなステータ12及び回転電機10によれば、1相のステータコイル20,22,24で、1のコイルを4のコイル要素28,30,32,34に分割したのと同様になる。ここで、分割数をnとした場合に、1のコイルを分割しないと仮定した場合に対して、各コイル要素28,30,32,34の巻き数が1/nとなり、磁気抵抗がn倍となるため、コイルのインダクタンスを1/n2と十分に小さくできる。これに対して、本実施の形態では、分割数nを4とするので、分割数nを2とした場合に比べてコイルのインダクタンスを1/4と十分に小さくできる。しかも、1相でコイルを分割しないと仮定した場合に対して、コイルの半径とコイルを流れる電流量とは変わらないので、磁束密度自体はコイルの分割の有無にかかわらず変わらない。このため、コイルの分割数nを2とした場合に対して、磁束密度を変えずにインダクタンスだけを大幅に低下させることができる。したがって、高トルクで、かつ、高速応答性の高い回転電機10を実現できる。
【0028】
しかも、上記の特許文献1に記載された構成と異なり、複数のコイル要素28,30,32,34をステータ12の複数のティース26に集中巻きで巻装している。このため、ステータコイル20,22,24の磁束密度の低い部分にロータ14を対向させることがなく、1相分のステータコイル20を分割配置しないと仮定した場合には、ステータ12とロータ14との対向部分での磁気抵抗が低くなり、インダクタンスは大きくなる。このため、本実施の形態によれば、コイル分割によるインダクタンス低減効果を十分に高くできる。この結果、ステータコイル20,22,24での磁束密度を変えることなくステータコイル20,22,24全体でのインダクタンスを十分に低減でき、かつ、コイル分割によるインダクタンスの低減効果を十分に高くできる。
【0029】
また、図2に示すように、各相の複数のコイル要素28,30,32,34は、ステータコア18の90度ずつ位相がずれた位置に設けられた複数のティース26にそれぞれ巻装されているので、1のコイル要素から別のコイル要素へロータ14を介して通る磁束が2系統になるのにもかかわらず、2系統の磁束が混在することによる不都合を有効に防止でき、回転電機10の高性能化を図れる。
【0030】
さらに、各相でステータコイル20(または22,24のいずれか)を巻装する複数のティース26は、ステータコア18の互いに周方向に90度位相が異なる2のティース26により構成する第1ティース組36と、周方向にずれた別の位置でステータコア18の互いに周方向に90度位相が異なる2のティース26により構成する第2ティース組38とにより構成している。また、各相でステータコイル20(または22,24のいずれか)を構成する複数のコイル要素は、第1ティース組36に互いに逆の巻き方向に巻装された2の第1コイル要素28,30と、第2ティース組38に互いに逆の巻き方向に巻装された2の第2コイル要素32,34とにより構成している。このため、1のコイル要素28(または32)から別のコイル要素30(または34)へロータ14を介して通る磁束が2系統になるのにもかかわらず、2系統の磁束が混在することによる不都合をより有効に防止でき、回転電機10のさらなる高性能化を図れる。
【0031】
これに対して、図5から図7は、本発明から外れる比較例を示している。図5は、比較例のステータ12を備える回転電機において、図2に対応する図である。図6は、図5の回転電機を構成する1相のステータコイル54の回路を示す図である。図7は、図5の回転電機を構成する1相のステータコイル54に関して、駆動部を示す回路図である。
【0032】
図5に示す比較例の回転電機は、3相のステータコイル54(図5ではステータコイルとティースとについて1相分のみを示している。)を備えるもので、各相のステータコイル54は、ステータ12の径方向反対側2個所位置に設けられたティース26に巻装された第1コイル要素58及び第2コイル要素60により構成されている。また、ロータ14は、ステータ12と対向する外周面の周方向複数個所に径方向に突出するように設けられた突極部42を含む。図6に示すように、2のコイル要素58,60は、1のコイルを2のコイル要素58,60に分割されるように構成され、互いに電気的に直列に接続されている。また、2のコイル要素58,60は、2のティース26に、コイル要素58,60同士で互いにステータ12の径方向に関して逆巻きに巻装されている。このような回転電機は、図7に示すような駆動部により駆動される。なお、駆動部の構成は、各相でコイル要素の数が4から2に変化した以外は、上記の図4を用いて説明した駆動部の場合と同様であるので、図4の要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
このように各相のステータコイル54が2つのコイル要素58,60を直列に接続することにより構成される比較例の場合には、上記の本実施の形態の回転電機の場合に比べて、インダクタンスの低下度合が小さい。すなわち、比較例では、ステータコイル20が4つのコイル要素28,30,32,34を直列に接続することにより構成される、本実施の形態に比べて高速応答性が低くなる。次にこれを1相のステータコイル20,54(図3、図6)の比較で説明する。
【0034】
まず、図5から図7の比較例の場合を説明すると、1相のステータコイル54のインダクタンスLは次式で表される。
L=L1+L2=N2/R ・・・(1)
ここで、L1、L2は、それぞれ第1コイル要素58及び第2コイル要素60のインダクタンスであり、Nは各コイル要素58,60の巻き数であり、Rは磁気抵抗である。
【0035】
また、磁気抵抗Rは、次式で表される。
R=d/(μ・S) ・・・(2)
ここで、dは、各コイル要素58,60での磁路長の和であり、μは各コイル要素58,60内での透磁率である。また、Sは磁路断面積である。
【0036】
次に、図1から図4に示した本実施の形態の場合、1相のステータコイル20でコイル要素28,30,32,34の数が比較例に比べて2倍になるので、磁路長が2倍となり、磁気抵抗R´も2倍となる(R´=2R)。また、それぞれ2ずつで1組とした第1コイル要素28,30と第2コイル要素32,34とのインダクタンスを、それぞれL1´、L2´とすると、各相でステータコイルのインダクタンスの合計L´は、次式となる。
L´=L1´+L2´ ・・・(3)
【0037】
また、本実施の形態で、第1コイル要素28,30及び第2コイル要素32,34は、比較例の第1コイル要素58及び第2コイル要素60に対してそれぞれ2つにコイル要素を分割したのと同様であるので、各コイル要素28,30,32,34で巻き数N´は、比較例に対して半分になる(N´=0.5N)。このため、インダクタンスL´は次式で表される。
L´=2(N´2/R´)=2{(0.5N)2/(2R)}=L/4 ・・・(4)
【0038】
(4)式から明らかなように、本実施の形態では、比較例に対してインダクタンスを1/4に大幅に低下させることができる。このように、比較例のステータでは、1相当たりの磁極部となるティース26を2つとしていたが、本実施の形態では、1相あたりの磁極部となるティース26を4つとしている。また、本実施の形態では、1相当たりで、比較例の巻き数Nの1ずつのコイルに対して、巻き数N/2の2つずつのコイルに分離するのと同じとなり、相互インダクタンスが発生しないようにコイル要素28,30,32,34を配置することで、それぞれの自己インダクタンスのみで回路のインダクタンスを考えることができる。そして1閉回路あたりのインダクタンスL´について、本実施の形態では、比較例に比べてコイル巻き数が半分になり、磁気抵抗が2倍になることで、本実施の形態のインダクタンスL´は比較例のインダクタンスLに比べて1/4と十分に小さくできる。この結果、電気的時定数が小さくなるため、回転電機10の回転数に対応する入力周波数が高くなる、すなわち回転数が上昇しても、電流値の減少量を低く抑えることができる。したがって、高回転域でも高トルクを維持した回転電機10の運転が可能になり、しかも効率向上を図れる。このため、本実施の形態によれば、ステータコイル20,22,24での磁束密度を変えることなくステータコイル20,22,24全体でのインダクタンスを十分に低減でき、かつ、コイル分割によるインダクタンスの低減効果を十分に高くできる。
【符号の説明】
【0039】
10 回転電機、12 ステータ、14 ロータ、16 回転軸、18 ステータコア、20,22,24 ステータコイル、26 ティース、28,30 第1コイル要素、32,34 第2コイル要素、36 第1ティース組、38 第2ティース組、40 基部、42 突極部、44 溝部、46,48 スイッチング素子、50,52 ダイオード、54 ステータコイル、58 第1コイル要素、60 第2コイル要素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティースを有するステータコアと、
複数のティースに巻装されたステータコイルとを備えるステータにおいて、
ステータコイルの少なくとも1相のステータコイルは、互いに相互インダクタンスを生じないように4つに分離されたステータコイル要素を電気的に直列に接続することにより構成され、
各ステータコイル要素は、複数のティースに集中巻きで巻装されることにより、1相当たりのティースを4磁極としていることを特徴とするステータ。
【請求項2】
請求項1に記載のステータと、
ステータの径方向に対向配置されたロータとを備える回転電機であって、
少なくとも1相のステータコイルを構成する複数のステータコイル要素は、ステータコアの90度ずつ位相がずれた位置に設けられた複数のティースにそれぞれ巻装されていることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機において、
少なくとも1相のステータコイルを巻装する複数のティースは、ステータコアの互いに周方向に90度位相が異なる2のティースにより構成する第1ティース組と、周方向にずれた別の位置でステータコアの互いに周方向に90度位相が異なる2のティースにより構成する第2ティース組とにより構成され、
少なくとも1相のステータコイルを構成する複数のステータコイル要素は、第1ティース組に互いに逆の巻き方向に巻装された2の第1ステータコイル要素と、第2ティース組に互いに逆の巻き方向に巻装された2の第2ステータコイル要素とにより構成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機において、
ロータは、全周にわたって設けられた基部と、基部のステータと対向する周面の周方向複数個所に径方向に突出するように設けられた突極部と、各突極部と基部との連結部に設けられ、各突極部から周方向片側に設けられる別の突極部に対して、周方向他側に設けられる別の突極部に対してよりも磁束を誘導しやすくするガイド部とを有することを特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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