説明

ステータ固定構造

【課題】取付先部材に対してステータを簡易な構造で、精度良く且つ容易に固定することができるステータ固定構造を提供する。
【解決手段】ステータ固定構造は、環状の外周面を有する検出ステータ32が固定されるケースと、ケースの台座部17に立設される少なくとも2以上のノックピン50と、環状の外周面を有し、この外周面上の複数個所でノックピン50に当接することにより周方向位置および径方向位置が決められた状態でケースに固定される検出ステータ32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ固定構造に係り、特に、レゾルバ用ステータをモータケース等の取付先部材に固定するためのステータ固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータのロータの回転位置を検出するためにレゾルバが用いられることがある。レゾルバは、モータロータのロータシャフトに固定されるレゾルバロータと、レゾルバロータの周囲に設けられるレゾルバステータとを備える。レゾルバステータは、モータを収容するモータケースに対して、例えばボルト締め等によって固定されるのが一般的である。
【0003】
これに関連する先行技術文献として例えば特開2006−94582号(特許文献1)には、省スペースを図るとともに優れた位置検出精度を得ることを目的としたレゾルバステータの固定構造が開示されている。この固定構造は、環状に延びて形成されたコアを有するレゾルバステータと、レゾルバステータが固定される取り付けリブを有するレゾルバケースとを備える。コアは、外周面を含み、取り付けリブには外周面から突出する凸部が形成されている。取り付けリブには、内周面に凹む切り欠き形成されている。これにより、レゾルバステータは、凸部が切り欠きに圧入されることによって取り付けリブに固定され、凸部は、切り欠きに対して、凸部が形成された位置の外周面の接線方向にのみ締め代を有する、と記載されている。
【0004】
また、例えば特開2003−244918号公報(特許文献2)には、ロータ本体に対する非磁性体プレートの取り付けや非磁性体プレートに対する磁性体片の取り付けを高精度且つ簡便に行える等を目的とした電動機の磁極位置検出装置が開示されている。この磁極位置検出装置は、複数の磁性体片をエンドプレートに設けられた位置決め溝に嵌合させて、各磁性体片に設けられた貫通孔とエンドプレートに設けられた貫通孔とを連通させ、エンドプレートに設けられた貫通孔とロータ本体に設けられたガイド孔とを挿通させた状態で、これら連通した孔に導電材料よりなるノックピンを挿通させることで、ロータ本体に対してエンドプレート及び各磁性体片が取り付けられる構造とされている。
【0005】
また、例えば特開2005−237105号公報(特許文献3)には、回転電機においてクランク軸の回転位置を検出するセンサを簡単に組み付けることでき且つ高精度に位置決めすることを目的とした回転電機が開示されている。この回転電機では、クランク軸に固設されたアウタロータの円環状ボス部に転流用マグネットとパルサーマグネットとを固定し、インナステータに組み付けたセンサケースに各マグネットに対応するホールICを設ける。センサケースに溝状の凹部を設け、クランクケースにノックピンを突設し、凹部にノックピンを突入させて、クランクケースに対してセンサケースを位置決めする。このように、検出素子をクランク軸に対して直接的に位置決めするため、クランク軸の回転位置の検出精度に影響を及ぼす組み付け公差が発生する箇所を最小限とすることができ、組み付け時の誤差発生箇所を最小限にすることができるため、ホールICのクランク軸に対する位置決めを高精度化することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−94582号公報
【特許文献2】特開2003−244918号公報
【特許文献3】特開2005−237105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のレゾルバステータの固定構造では、レゾルバステータに外周から径方向外側に突出する凸部が形成されるため、この凸部がモータから生じる磁束を拾うアンテナのように機能することによってレゾルバにて生成するロータ位置検出信号に対してノイズとなり、レゾルバの検出精度が悪化することが懸念される。また、レゾルバステータを固定するための取り付けリブの径方向内側部分は、レゾルバステータとの干渉を避けるために凹ませておく必要があり、その分、取り付けリブの形状が複雑になるという問題もある。
【0008】
また、特許文献2に記載の電動機の磁極位置検出装置では、それぞれ略円弧をなす複数の磁性体片に形成された貫通孔に各1本のノックピンを挿通することにより、各磁性体片をエンドプレートの位置決め溝に嵌合した状態でエンドプレートおよび各磁性体片をロータ本体に固定するものであるが、この場合には各磁性体片を位置決めするための凹状の溝をエンドプレートに形成しておく必要があり、必ずしも簡易な構造であるとはいえない。また、磁性体片の貫通孔、エンドプレートの貫通孔およびロータ本体の貫通孔を一列に連通させた状態にしてノックピンを挿通しなければならず、このような作業を各磁性体片について行う必要があり、組付け作業も容易ではない。
【0009】
さらに、特許文献3に記載の回転電機では、クランクケースに突設したノックピンをクランクケースの凹部に突入させてクランクケースに対してセンサケースを位置決めするものであるが、センサケースはインナステータに対して取り付けねじにより固定されるものであり、組付け作業が容易であるとはいえない。
【0010】
本発明の目的は、取付先部材に対してステータを簡易な構造で、精度良く且つ容易に固定することができるステータ固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るステータ固定構造は、環状の外周面を有するステータが固定される取付先部材と、前記取付先部材に立設される少なくとも2以上のピン部材と、環状の外周面を有し、前記外周面上の複数個所で前記ピン部材に当接することにより周方向位置および径方向位置が決められた状態で前記取付先部材に固定されるステータと、を備える。
【0012】
本発明に係るステータ固定構造において、前記ステータの外周面における前記ピン部材と当接する部分には、径方向に凹む切り欠き部が形成されていてもよい。
【0013】
また、本発明に係るステータ固定構造において、前記切り欠き部および前記ピン部材の少なくとも一方が前記切り欠き部の径方向および周方向に締め代を有してもよい。
【0014】
また、本発明に係るステータ固定構造において、前記ステータには、前記切り欠き部の径方向内側に応力緩和孔が形成されていてもよい。
【0015】
また、本発明に係るステータ固定構造において、前記切り欠き部は、前記ステータのヨーク部の外周部に形成されていてもよい。
【0016】
また、本発明に係るステータ固定構造において、前記ピン部材は3本以上設けられてもよい。
【0017】
さらに、本発明に係るステータ固定構造において、前記ステータは、モータのロータ回転位置を検出するレゾルバ用のステータであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るステータ固定構造によれば、取付先部材に対してステータを簡易な構造で、精度良く且つ容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態であるステータ固定構造を含むレゾルバの断面図である。
【図2】図1におけるA−A矢視図である。
【図3】図2におけるC−C拡大断面図であり、中実のノックピンを用いた例を示す図である。
【図4】中空のノックピンを用いた別の例を示す、図3と同様の図である。
【図5】外周に係止段部を有するノックピンを用いた更に別の例を示す、図3と同様の図である。
【図6】図2におけるB部の拡大図であり、(a)は略半円状の切り欠き部、(b)は略台形状の切り欠き部の例を示す図である。
【図7】ステータにおける切り欠き部の径方向内側部分に応力緩和孔を設けた例を示す図である。
【図8】ステータの外周面に切り欠き部を設けない例を示す、図6と同様の図ある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施の形態(以下、実施形態という)について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0021】
図1は本実施形態のステータ固定構造が適用されるレゾルバ10を示す軸方向断面図であり、図2は図1におけるA−A矢視図である。なお、本実施形態ではステータ固定構造がレゾルバ10に適用される例について説明するが、モータや発電機等の回転電機を構成するステータの固定構造として用いてもよい。
【0022】
図1に示すように、レゾルバ10は、モータ12に隣接して設けられている。モータ12は、略有底円筒状のハウジング14内に収容されている。ハウジング14の開口端部は、レゾルバ10を収容するケース(取付先部材)16によって閉じられている。ハウジング14およびケース16は、例えば、アルミダイキャスト製のものが好適に用いられる。
【0023】
モータ12は、モータステータ20と、モータロータ22とを備える。モータステータ20は、磁性鋼板を軸方向に積層してなる筒状をなし、内周部に径方向内方へ突出して形成された複数のティース24が周方向に均等配置で設けられている。そして、ティース24に周囲にはステータコイル26が巻装されている。
【0024】
モータロータ22は、略円柱状のロータコア22aと、ロータコア22aの中心孔部を貫通して固設されたロータシャフト22bとを含む。ロータコア22aは、モータステータ20の内側に所定のギャップを隔てて配置されている。また、ロータシャフト22bは、ケース16の中心部に配置される軸受18と、ハウジング14の図示しない底部の中心部に配置される図示しない軸受とを介して、モータ12のロータシャフト22bが回転可能に支持されている。
【0025】
レゾルバ10は、検出ロータ30と検出ステータ32とを備える。検出ロータ30は、例えば、略楕円状に打ち抜き加工された複数枚の磁性鋼板を軸方向に積層して、かしめ、溶接等により一体に連結して構成される。
【0026】
検出ロータ30の中心孔には、モータ12から延びるロータシャフト22bが挿通されている。また、検出ロータ30の中心孔の縁にはキー34が突設されており、このキー34が、ロータシャフト22b上に凹設されたキー溝36が嵌合することによって、ロータシャフト22bに対する検出ロータ30の周方向位置が決められている。検出ロータ30は、ロータシャフト22bの端部(図1中の左側)が挿通されて組み付けられるとき、軸方向の端面がロータシャフト22b上の突設された当り部(図示せず)に当接することによって、ロータシャフト22bに対する検出ロータ30の軸方向位置が決められている。
【0027】
なお、上記においては検出ロータ30の周方向位置がキー34とキー溝36との嵌合によって決められるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、検出ロータをロータシャフトに圧入、締り嵌め等することによってロータシャフトに対する検出ロータの周方向位置および/または軸方向位置が固定されてもよい。
【0028】
レゾルバ10の検出ステータ32は、検出ロータ30の周囲にギャップを介して設けられている。検出ステータ32は、例えば、略円環状に打ち抜き加工された磁性鋼板を軸方向に積層して、かしめ、溶接等により一体に連結して構成されるステータコア33を含む。
【0029】
ステータコア33は、円環状に連なるヨーク部38と、ヨーク部38の内周部に径方向内側へ向かって突出する複数のティース部39とを備える。ティース部39は、周方向に均等間隔で設けられている。これらのティース部39の周囲に検出コイル40が巻装されている。検出コイル40は、ステータコア33の軸方向両端面から外側にそれぞれ突出するコイルエンド部42を含む。
【0030】
図2に示すように、検出コイル40は、円環状の樹脂製カバー部材44によって覆われているのが好ましい。このカバー部材44は、検出ステータ32の内周面にティース部39の端面を露出された状態で全周にわたって検出コイル40を覆うように設けられている。なお、図2では、ティース部39および検出コイル40を見やすくするために、カバー部材44の一部を破断および除去した状態で示されている。また、図1においてはカバー部材の図示が省略されている。
【0031】
カバー部材44は、例えば、検出コイル40が巻装されたステータコア33を成形型内においてインサート成形を行うことにより形成されることができる。また、カバー部材44は、検出ステータ32の軸方向両側において検出コイル40のコイルエンド部42を覆っているのが好ましい。このように、カバー部材44によって検出コイル40を覆うことによって、モータ12のモータロータ22やステータコイル26を冷却するために用いられる冷却油がレゾルバ10の検出コイル40に掛からないようにして、冷却油に含まれる金属粉等の導電性異物が付着することによる検出コイル40の絶縁性能が低下するのを防止でき、レゾルバ10の検出精度を良好に維持することができる。
【0032】
上記のように構成されるレゾルバ10では、モータ12が駆動されてモータロータ22が回転すると、検出ロータ30がロータシャフト22bと共に回転する。このとき、略楕円状の外周面を有する検出ロータ30と検出ステータ32の内周面(すなわちティース部39の径方向内側端面)との間のギャップ長が変化する。そのため、検出コイル40に交流電流を流しておくと、その交流電流に上記ギャップ長の変化に応じた出力が重畳されることになる。モータロータ22の回転位置は、この出力が重畳した交流電流に基づいて検出することができる。
【0033】
次に、図1,2に加えて図3〜6を参照して、本実施形態のステータ固定構造について詳細に説明する。図3は、図2におけるC−C拡大断面図であり、中実のノックピンを用いた例を示す図である。図4は、中空のノックピンを用いた別の例を示す、図3と同様の図である。図5は、外周に係止段部を有するノックピンを用いた更に別の例を示す、図3と同様の図である。図6は、図2におけるB部の拡大図であり、(a)は略半円状の切り欠き部、(b)は略台形状の切り欠き部の例を示す図である。
【0034】
図1,2を参照すると、レゾルバ10を収容するケース16の内面には、台座部17が突設されている。台座部17は、例えば略台形状の横断面および端面を有する柱状をなしており、その端面は平坦面に形成されている。また、台座部17は、矢印Xで示す軸方向に延びており、その突出長さは台座部17上に検出ステータ32が取り付けられたときにカバー部材44(またはコイルエンド部42)がケース16の内面と接触しない程度に設定されている。
【0035】
また、台座部17は、図2に示すように、検出ステータ32の外周に沿う円周方向に間隔を置いて複数、設けられている。本実施形態では、3つの台座部17が設けられている例を示す。台座部17の周方向間隔は、等間隔でもよいし、不等間隔であってもよい。台座部17の周方向間隔を不等間隔に設定した場合、後述するステータ外周面に形成される切り欠き部との関係で検出ステータ32の取り付け向きが一義的に規定されるため、検出ステータ32の取り付ける向きが不揃いになるのを確実に防止できる利点がある。
【0036】
なお、本実施形態では、検出ステータ32を固定するための台座部17を周方向に飛び飛びに設けたが、これに限定されるものではなく、例えば円環状に連なって延びる台座部としてもよい。このようにすれば、台座部の端面と検出ステータのステータコアの軸方向端面外周部との接触面積が大きくなり、検出ステータ32の固定状態がより安定したものになるという利点がある。
【0037】
台座部17の端面には、ノックピン50が軸方向に沿って立設されている。ノックピン50は、検出ステータ32の外周面が当接することによりケース16に対して検出ステータ32を周方向位置および径方向位置が決められた状態で固定するための固定部材である。ノックピン50は、図3に示すように、台座部17の端面に軸方向に沿って穿設された有底のピン孔17aに圧入されることによって固定される。ノックピン50は、例えば金属製の丸棒部材で好適に構成されることができる。ノックピン50は、図3に示すように中実のピン部材であってもよいし、または、図4に示すように、中空のピン部材であってもよい。
【0038】
あるいは、図5に示すように、ノックピン50の端部51が拡径すること等によって係止段部52が形成されていてもよい。このような係止段部52を設けたノックピン50を用いれば、検出ステータ32のステータコア33の外周縁部に上記係止段部52が係止されることによって検出ステータ32の軸方向の固定をより確実なものにできるという利点がある。
【0039】
このように検出ステータ32をケース16に固定するためのノックピン50を検出ステータ32およびケース16とは別部材とすることによって、ステータ固定構造を簡易な構成とすることができる利点がある。具体的には、ケース16の突設した台座部17の端面を平坦面として形成すればよく、ケース16を製造するための鋳型、成形型等の製作が容易になる。また、ノックピン50をステータコア33に予め固定しておく必要がなく、検出ステータ32の製造も容易になる。さらに、ノックピン50に安価な市販品のものを用いれば、大きなコスト低減効果が得られる。
【0040】
本実施形態のステータ固定構造では、台座部17の数に対応する3本のノックピン50が用いられている。このように3本のノックピン50で検出ステータ32を固定することとしたことで、構成部品数を少なくして組付け作用を容易にしながら、検出ステータ32の径方向位置および周方向位置の位置決めを確実に行うことができる。ただし、ノックピン50(および台座部17)の数は、4以上としてもよいことは勿論である。また、2本のノックピン50としてもよいが、この場合には検出ステータ32の径方向にほぼ対向する位置でステータコア33の外周面にノックピン50が当接するように設けるのが良い。
【0041】
図2を再び参照すると、検出ステータ32を構成するステータコア33は環状の外周面を有しており、その外周面には径方向内側に凹む切り欠き部54が形成されている。切り欠き部54は、ステータコア33の略円柱状をなす外周面がノックピン50と当接することとなる部分であり、本実施形態ではノックピン50の数に対応して3つの切り欠き部54が設けられている。
【0042】
切り欠き部54は、検出ステータ32を構成するステータコア33の外周面上、すなわち、ステータコア33のヨーク部38の外周部に形成されている。このようにヨーク部38に切り欠き部54を形成することにより、ステータコア33内の磁気回路に与える影響を抑えて、レゾルバの検出精度を良好に維持することができる。
【0043】
また、図6(a)に示すように、切り欠き部54は、例えば、ノックピン50の外形状に沿って接触するように略半円状の縁部を有する切り欠きとして形成されている。これにより、周方向に分散配置された3箇所の切り欠き部54にノックピン50が当接または圧接して検出ステータ32が固定されたとき、ノックピン50が切り欠き部54に対して径方向および周方向に締め付ける締め代が生じ、その結果、切り欠き部54の縁部に対して径方向押圧力Frおよび周方向押圧力Fcが作用する。これらの押圧力Fr,Fcによって検出ステータ32が径方向位置および周方向位置が決められた状態でノックピン50が立設されているケース16に固定されることになる。
【0044】
なお、図4に示すような中空のノックピン50を用いた場合には、切り欠き部54との圧接によってノックピン50が変形しやすい構成とすることにより、ノックピン50と切り欠き部54との間の締め代を両者で分担してもよいし、あるいは、ノックピン50側に締め代を持たせてもよい。
【0045】
切り欠き部54の径方向内側への切り込み深さは、ノックピン50がステータコア33に及ぼす径方向押圧力Frが、検出精度に影響するような検出ステータ32の径方向応力歪みを生じさせないように考慮して設定されるのが好ましい。
【0046】
また、切り欠き部54の形状は、略半円形状に限定されるものではなく、例えば図6(b)に示すような台形状等の他の形状であってもよい。このような台形状の切り欠き部54とした場合、切り欠き部54の周方向両側の縁部がノックピン50の外周面に当接することによって検出ステータ32の周方向位置と径方向位置の両方を決めることが可能であるため、切り欠き部54の径方向内側の縁部ではほとんど締め代なしでノックピン50に接触するか、あるいは、非接触となるように隙間が空いてもよい。そうすれば、ノックピン50によりステータコア33に作用する径方向押圧力を小さく又はゼロにすることができ、レゾルバ10の検出精度を良好なものにすることができる。
【0047】
次に、本実施形態のステータ固定構造の組付けについて説明する。このステータ固定構造の組付けは、下記のような3つのパターンが考えられる。ただし、それら以外の組付け手順で組み立てられてもよいことは勿論である。
【0048】
第1には、ケース16の台座部17に3本のノックピン50をそれぞれ打ち込んで立設し、その後、切り欠き部54をノックピン50に位置合わせした状態で検出ステータ32を3本のノックピン50の内側領域に押し込む。このとき、ステータコア33の軸方向端面の外周部が台座部17の平坦な端面に当接するまで検出ステータ32を押し入れる。これにより、検出ステータ32は、3本のノックピン50によって周方向位置および径方向位置が決められた状態でケース16に固定される。また、ノックピン50と切り欠き部54との圧接によって生じる締め付け力および摩擦力によって検出ステータ32の軸方向位置(矢印X方向の位置)も決まった状態に保持される。
【0049】
第2には、まず2本のノックピン50をケース16の台座部17にそれぞれ打ち込んで立設し、その後、その2本のノックピン50に2箇所の切り欠き部54を位置合わせした状態で検出ステータ32を台座部17上に載置し、そして、3本目のノックピン50を残る1つの台座部17に打ち込んで立設する。これによっても、検出ステータ32が3本のノックピン50によって周方向位置および径方向位置が決められた状態でケース16に固定される。
【0050】
第3には、まず、3つの切り欠き部54を台座部17のピン孔17aと位置合わせした状態で検出ステータ32を3つの台座部17上に載置する。そして、3本のノックピン50を各台座部17のピン孔17aに同時に打ち込んで立設する。これによっても、検出ステータ32が3本のノックピン50によって周方向位置および径方向位置が決められた状態でケース16に固定される。
【0051】
上述したように本実施形態のステータ固定構造によれば、ケース16に立設される3本のノックピン50にステータコア33の外周面が当接することにより周方向位置および径方向位置が決められた状態で検出ステータ32をケース16に固定することができる。したがって、ケース16に対して検出ステータ32を簡易な構造で、精度良く且つ容易に固定することができる。
【0052】
また、検出ステータ32の組付け時に周方向位置が決められるため、組付け後の検出ステータ32の周方向位置調整が不要となり、組立工程の短縮および簡易化を図れる。
【0053】
さらに、ボルト締めによって検出ステータ32をケース16に固定しないものとしたので、検出ステータ32のステータコア33にボルト挿通用の貫通孔を形成する必要がない。したがって、その分、駄肉部の省略によりステータコア33を小径にしてレゾルバ10を小型化でき、かつ、材料費を削減することができる。
【0054】
さらに、ノックピン50によって切り欠き部54に径方向押圧力が作用する領域は全周領域から見て小さく限定されており、かつ、切り欠き部54の切り込み深さを適当に設定することで、レゾルバの検出精度に影響するようなステータコア33の径方向応力歪みが生じるのを抑制することもできる。
【0055】
なお、本発明に係るステータ固定構造は、上述した実施形態およびその変形例の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲で種々の変更や改良が可能である。
【0056】
例えば、図7に示すように、検出ステータ32を構成するステータコア33において、切り欠き部54の径方向内側部分に応力緩和孔56を形成してもよい。この応力緩和孔56は、例えば、少なくともノックピン50の直径以上にわたって周方向に延びる長孔として形成されるのが好ましい。このような応力緩和孔56を設けることで、ステータコア33の磁気回路となる部分の変形および応力歪みをより確実に抑制することができる。
【0057】
また、図8に示すように、検出ステータ32のステータコア33の外周面に切り欠き部を設けないこととしてもよい。この場合、ノックピン50との当接位置を示すマーク58をステータコア33の軸方向端面に付しておいて、組付け時にマーク58をノックピン50に合わせることによって検出ステータ32の周方向位置が決められてもよいし、あるいは、少なくとも1本のノックピン50をステータコア33の外周面33a上に溶接部60によって固定しておき、このように固定されたノックピン50が台座部17に打ち込まれることによって検出ステータ32の周方向位置が決められてもよい。
【0058】
さらに、上記実施形態においては、ケース16の台座部17に立設されるピン部材がケース16および検出ステータ32とは別部材のノックピンであるものとして説明したが、ケースまたは検出ステータと予め一体化されたピン部材が台座部上に立設されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 レゾルバ、12 モータ、14 ハウジング、16 ケース、17 台座部、17a ピン孔、18 軸受、20 モータステータ、22 モータロータ、22a ロータコア、22b ロータシャフト、24 ティース、26 ステータコイル、30 検出ロータ、32 検出ステータ、33 ステータコア、33a 外周面、34 キー、36 キー溝、38 ヨーク部、39 ティース部、40 検出コイル、42 コイルエンド部、44 カバー部材、50 ノックピン、51 端部、52 係止段部、54 切り欠き部、56 応力緩和孔、58 マーク、60 溶接部、Fc 周方向押圧力、Fr 径方向押圧力、X 矢印(軸方向)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の外周面を有するステータが固定される取付先部材と、
前記取付先部材に立設される少なくとも2以上のピン部材と、
環状の外周面を有し、前記外周面上の複数個所で前記ピン部材に当接することにより周方向位置および径方向位置が決められた状態で前記取付先部材に固定されるステータと、を備えるステータ固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のステータ固定構造において、
前記ステータの外周面における前記ピン部材と当接する部分には、径方向に凹む切り欠き部が形成されている、ステータ固定構造。
【請求項3】
請求項2に記載のステータ固定構造において、
前記切り欠き部および前記ピン部材の少なくとも一方が前記切り欠き部の径方向および周方向に締め代を有する、ステータ固定構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載のステータ固定構造において、
前記ステータには、前記切り欠き部の径方向内側に応力緩和孔が形成されている、ステータ固定構造。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1に記載のステータ固定構造において、
前記切り欠き部は、前記ステータのヨーク部の外周部に形成されている、ステータ固定構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1に記載のステータ固定構造において、
前記ピン部材は3本以上設けられる、ステータ固定構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1に記載のステータ固定構造において、
前記ステータは、モータのロータ回転位置を検出するレゾルバ用のステータである、ステータ固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate