説明

ステープル留め支持構造物

【課題】改良された外科用ステープラーのための支持構造物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの親水性ポリマーを備える外科用ステープラーのための支持構造物、およびこのような構造物を調製するための方法に関する。上記少なくとも1つの親水性ポリマーは、メタクリル酸、アクリル酸、n−ビニルピロリドン、スルホプロピルアクリル酸カリウム、スルホプロピルメタクリル酸カリウム、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、生体適合性水溶性ビニルモノマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーから形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2004年8月17日に出願された米国仮出願第60/602,199号への優先権の利益を主張しており、その全体の開示は、参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(背景)
1.技術分野
本開示は、外科用ステープル留め器具と組合せた使用のための支持構造に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の背景
ステープルは、伝統的に、例えば、内臓または気管のような種々の身体構造物を接続または吻合するとき、縫合することを置換するために用いられている。これらのステープルを付与するために採用されるステープル留めデバイスは、一般に、患者中の組織の幅のあるセグメントを同時に切断およびシールするように設計されており、それ故、このような手順の時間およびリスクを甚大に低減する。
【0004】
直線状の外科用ステープル留めデバイスは、外科医によって、外科用ファスナー、例えば、ステープルの1つ以上の直線状の列、または2部分ファスナーを、身体組織のセグメントを一緒に接続する目的のために身体組織に逐次的または同時に付与するために採用されている。このようなデバイスは、一般に、一対の顎または指様構造物を含み、それらの間に接続されるべき身体組織が配置される。ステープル留めデバイスが作動そして/または「発射される」とき、発射バーが長軸方向に動き、そして顎の1つ中のステープル駆動部材と接触し、外科用ステープルは、身体組織を通り、そして対向する顎中のアンビル中に/それに対して押し付け、それによって、これらステープルを閉鎖して型押しする。組織が除去されるべきである場合、ナイフブレードが、ステープルの列/ライン間を切断するために提供され得る。このような器具の例は、特許文献1、2および3に記載され、その各々の全体は本明細書中に参考として援用される。
【0005】
環状外科用ステープラー、例えば、Model「EEA(登録商標)」のような、端と端とを接した吻合ステープラー器具は、Tyco Health−Care Group、LP、Norwalk、CTの事業部United States Surgicalから市販され入手可能であり、そしてGeenらによる特許文献4に開示されている。一般に、端と端とを接した吻合ステープラーは、代表的には、ステープルのアレイを、患者の腸またはその他の管状器官の接近したセクション中に配置する。得られる吻合は、多くの「B」形状のステープルを含む腸の反転したセクションを含み、腸の接近したセクション間の固定した連結を維持する。
【0006】
大部分の手順には、患者の組織と直接接触するステープルを用いた裸のステープルの使用が、一般に受容可能である。組織の一体性は、通常、治癒が生じる前に、組織を裂くこと、およびシールを損なうことからステープルを防ぐことために供される。しかし、いくつかの外科的手術では、外科用支持体、例えば、メッシュが、外科医によって、患者にともなう組織欠陥、特に腹腔壁、胸部壁、横隔膜およびその他の身体の腱膜領域中に生じるような組織欠陥を架橋、修復および/または補強するために採用され得る。外科用支持体の例は、特許文献5、6、7、8、9、10、11および12に開示されており、それらの開示はこの参照によって本明細書中に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,354,628号明細書
【特許文献2】米国特許第5,014,899号明細書
【特許文献3】米国特許第5,040,715号明細書
【特許文献4】米国特許第5,392,979号明細書
【特許文献5】米国特許第3,054,406号明細書
【特許文献6】米国特許第3,124,136号明細書
【特許文献7】米国特許第4,347,847号明細書
【特許文献8】米国特許第4,655,221号明細書
【特許文献9】米国特許第4,838,884号明細書
【特許文献10】米国特許第5,002,551号明細書
【特許文献11】米国特許第6,503,257号明細書
【特許文献12】国際公開第WO 03/105698A2号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ステープルが、外科用支持体(すなわち、補強材料)を利用する外科的手術で利用されるとき、ステープルの脚は、代表的には、補強材料の層を通り、カートリッジの顎から、次いで、アンビルの顎に遭遇する前に患者の組織を通って通される。代替の手順では、ステープルの脚は、代表的には、アンビルの顎に遭遇する前に、補強材料の第1の層を通ってカートリッジの顎から、次いで、患者の組織を通り、そして最後に補強材料の第2の層を通って通される。その場にあるステープルとともに、ステープル留めされた組織は、補強材料の層間にクランプ留めされる。上記に記載の外科用支持体は、直線状外科用ステープラーとともに、または環状外科用ステープラーとともに用いられ得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要旨)
本出願は、一部、外科用ステープル留め器具と組み合わせる使用のための形態とされ、そして適合される支持構造物に関する。この支持構造物は、(ポリ)−ヒドロキシエチルメタクリレートのような親水性ポリマーから作製される。特定の実施形態では、これら支持構造物は、鋳型を親水性ポリマーを形成し得るモノマーで充填する工程、およびこの鋳型内で組成物を少なくとも部分的に重合する工程によって調製される。
【0010】
上記構造支持物は、環状ステープラーのステープルカートリッジアセンブリの最遠位面に取り付け可能そして/または連結可能である環状リングのような形態とされ得る。その他の実施形態では、上記構造支持物は、直線状ステープラーのステープルカートリッジアセンブリの最遠位面に取り付け可能そして/または連結可能である環状リングのような形態とされ得る。
より特定すれば、本願発明は以下の項目に関し得る。
(項目1)
医療用デバイスであって:
少なくとも1つの親水性ポリマーから作製される支持構造物であって、外科用ステープラーと組み合わせる使用のために適合かつ形態とされる支持構造物を備える、医療用デバイス。
(項目2)
上記少なくとも1つの親水性ポリマーが、メタクリル酸、アクリル酸、n−ビニルピロリドン、スルホプロピルアクリル酸カリウム、スルホプロピルメタクリル酸カリウム、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、生体適合性水溶性ビニルモノマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、項目1に記載の医療デバイス。
(項目3)
上記少なくとも1つの親水性ポリマーが、ポリヒドロキシエチルメタクリレートである、項目1に記載の医療デバイス。
(項目4)
上記支持構造物が、開始剤、架橋剤、可塑剤、生物学的薬剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのさらなる成分をさらに含む、項目1に記載の医療デバイス。
(項目5)
上記支持構造物が、約0.1〜約5mmの範囲の厚みを有する、項目1に記載の医療デバイス。
(項目6)
上記支持構造物が、ほぼ矩形の形状を有する、項目1に記載の医療デバイス。
(項目7)
上記支持構造物が、ほぼ環状の形状を有する、項目1に記載の医療デバイス。
(項目8)
上記支持構造物が、上記支持構造物上にポリマーのホスホリピドをさらに含む、項目1に記載の医療デバイス。
(項目9)
上記支持構造物が、少なくとも1つの医療で有用な物質をさらに含む、項目1に記載の医療デバイス。
(項目10)
上記支持構造物が、薬物、酵素、成長因子、ペプチド、タンパク質、色素、診断薬、止血剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1に記載の医療デバイス。
(項目11)
上記支持構造物が、接着被覆をさらに備える、項目1に記載の医療デバイス。
(項目12)
上記支持構造物が、繊維状補強要素をさらに備える、項目1に記載の医療デバイス。
(項目13)
上記繊維状補強要素が、織られた、編まれた、または不織の構造を備える、項目12に記載の医療デバイス。
(項目14)
上記支持構造物が、生物学的接着剤、封止剤、止血剤、創傷閉鎖材料およびそれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含むリザーバーをさらに備える、項目1に記載の医療デバイス。
(項目15)
外科用ステープラーのための支持構造物を調製する方法であって:
鋳型中に少なくとも1つの親水性ポリマーを含む組成物を導入する工程;
上記鋳型中で上記組成物を少なくとも部分的に重合する工程;および
上記鋳型から支持構造物を取り出す工程、を包含する、方法。
(項目16)
上記鋳型中で上記組成物を少なくとも部分的に重合する工程が、γ線照射、UV照射、または従来の化学物質で開始されるフリーラジカル重合を用いることを包含する、項目15に記載の方法。
(項目17)
メタクリル酸、アクリル酸、n−ビニルピロリドン、スルホプロピルアクリル酸カリウム、スルホプロピルメタクリル酸カリウム、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、生体適合性水溶性ビニルモノマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む組成物が、鋳型中に導入される、項目15に記載の方法。
(項目18)
ポリヒドロキシエチルメタクリレートを含む組成物が、鋳型中に導入される、項目15に記載の方法。
(項目19)
開始剤、架橋剤、可塑剤、生物学的薬剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含む組成物が鋳型中に導入される、項目15に記載の方法。
(項目20)
少なくとも1つの医療で有用な物質を含む組成物が鋳型中に導入される、項目15に記載の方法。
(項目21)
上記少なくとも1つの医療で有用な物質が、薬物、酵素、成長因子、ペプチド、タンパク質、色素、診断薬、止血剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目20に記載の方法。
(項目22)
繊維状補強要素を上記鋳型中に導入する工程をさらに包含する、項目15に記載の方法。
(項目23)
上記組成物が、ほぼ矩形の鋳型中に導入される、項目15に記載の方法。
(項目24)
上記組成物が、ほぼ環状の鋳型中に導入される、項目15に記載の方法。
(項目25)
外科用ステープラーの組織接触面に隣接して少なくとも1つのポリマーから作製される支持構造物を位置決めする工程;および
上記支持構造物および組織を通してステープルを駆動するように上記外科用ステープラーを発射する工程であって、それによって、上記支持構造物が、上記ステープルによって上記組織に固定される工程、を包含する、方法。
(項目26)
上記支持構造物が、外科用ステープラーのアンビルに隣接して位置決めされる、項目25に記載の方法。
(項目27)
上記支持構造物が、外科用ステープラーのステープルカートリッジに隣接して位置決めされる、項目25に記載の方法。
(項目28)
上記少なくとも1つの親水性ポリマーが、メタクリル酸、アクリル酸、n−ビニルピロリドン、スルホプロピルアクリル酸カリウム、スルホプロピルメタクリル酸カリウム、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、生体適合性水溶性ビニルモノマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、項目25に記載の方法。
(項目29)
上記少なくとも1つの親水性ポリマーが、ヒドロキシエチルメタクリレートを含む、項目25に記載の方法。
(項目30)
上記支持構造物が、繊維状補強要素をさらに備える、項目25に記載の方法。
(項目31)
上記支持構造物が、生物学的接着剤、封止剤、止血剤、創傷閉鎖材料およびそれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含むリザーバーをさらに備える、項目25に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
例示のみにより、本開示の好ましい実施形態が、添付の図面を参照して説明される。
【図1】図1は、本開示による支持構造物の平面図である。図1Aは、図1の支持構造物の線A−Aに沿ってとった断面側面図である。図1Bは、図1の支持構造物の代替の実施形態の、線A−Aに沿って観察されるであろう断面側面図である。図1Cは、図1の支持構造物の代替の実施形態の、線A−Aに沿って観察されるであろう断面側面図である。
【図2】図2は、本開示の1つの実施形態による支持構造物を装備した直線状ステープラーの種々の図を示す。
【図3】図3は、本開示の1つの実施形態による支持構造物を装備した直線状ステープラーの種々の図を示す。
【図4】図4は、本開示の1つの実施形態による支持構造物を装備した直線状ステープラーの種々の図を示す。
【図5】図5は、本開示による支持構造物の代替の実施形態の平面図である。図5Aは、図5に示される支持構造物の線A−Aに沿ってとった断面側面図である。図5Bは、図5に示される支持構造物の代替の実施形態の線A−Aに沿って観察されるであろう断面側面図である。図5Cは、図5に示される支持構造物の代替の実施形態の線A−Aに沿って観察されるであろう断面側面図である。図5Dは、図5に示される支持構造物の代替の実施形態の線A−Aに沿って観察されるであろう断面側面図である。
【図6】図6は、本開示による、アンビルとステープル留め装置のステープルカートリッジとの間で、支持構造物の配置を示す環状の円形のステープル留め装置の遠位端の、一部が除かれた拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明の外科用ステープラーのための支持構造物は、親水性の生体適合材料から作製される。適切な親水性生体適合材料の例は、以下のモノマーの1つ以上から形成されるポリマーを含む:メタクリル酸、アクリル酸、n−ビニルピロリドン、スルホプロピルアクリル酸カリウム、スルホプロピルメタクリル酸カリウム、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ヒドロキシエチルメタクリレートまたは類似の生体適合性の水溶性ビニルモノマー。特に有用な実施形態では、この支持構造物は、(ポリ)−ヒドロキシエチルメタクリレートから形成される。
【0013】
これら支持構造物は、当業者の範囲内の技法を用いて調製される。例えば、上記支持構造物は、鋳型を、モノマーそして、所望または必要であれば、架橋剤、可塑剤および/または生物学的薬剤を含む組成物で充填すること、およびこの組成物を上記鋳型内で重合することにより形成され得る。特定の開始剤、架橋剤などの選択は、モノマーの特定の選択によって決定される。
【0014】
ポリ−(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)から作製される支持構造物は、60Coγ線、UV照射、または従来の化学的に開始された(AIBN、BPO、酸化還元など)フリーラジカルを用いて合成され得る。代表的な調製方法では、HEMAモノマーを含む組成物は、開始剤としてのAIBNおよび架橋剤としてのジメチルアクリレート(DEGDMA)を含む組成物か、ガラス鋳型中に注がれ、そして約65℃で1.5時間の間重合される。得られる支持構造物は、水で繰り返し洗浄され、そして減圧して乾燥される。別の調製方法では、PHEMA支持構造物は、化学的開始剤および架橋剤の必要性なくして照射重合(600mC供給源、295〜1180rad/分、0.05〜1Mrad)を用い、そして同じ洗浄/乾燥措置を用いて調製され得る。なおその他の実施形態では、重合はまた、種々の濃度の水性モノマー溶液を用いて実施され得、変化した機械的および物理的性質(異なる組織、ステープル、手順などのために仕立てられたフィルム)の支持材料を与える。
【0015】
このPHEMA支持構造物の平衡水含量(EWC)、膨潤、および機械的性質は、架橋密度(照射条件またはDEOGMA濃度)によって制御される。この支持構造物の厚みは、鋳型中で重合されたモノマー組成物の容量によって制御される。この支持構造物の適切な厚みは、約0.1〜約5mmの範囲内である。
【0016】
この支持構造物は任意の形状であり得、そして、通常、外科用ステープラーによって付与されるステープルラインに対応し、そしてその少なくとも一部分を覆うような形態である。適切な形状は、矩形の細片(例えば、直線状ステープラーのため)および環状リング(例えば、環状ステープラーのため)を含む。この支持構造物の断面形状は、例えば、ほぼ、矩形、円形、卵形、三角、弧状などのような任意の断面プロフィールを有する。
【0017】
本発明の支持構造物はまた、フィルム形成の後、表面改変され得る。例えば、PHEMA支持構造物は、改善された血液適合性および組織相互作用のために、γ線照射グラフト化を用いて、ポリマーのホスホリピドで改変され得る。
【0018】
別の実施形態では、この支持構造物の表面は、ナノ−メソ−マイクロスケールでパターン化またはテンプレート化され得、組織/支持物界面で優先的な組織相互作用を収容する。このような構造またはパターンは、手術後の組織接着および余分なコラーゲン沈着を防ぐか、または最小にするが、創傷治癒のための所望の機械的および生物物理学的な支持を与える。
【0019】
上記支持構造物が作製される組成物はまた、薬物、酵素、成長因子、ペプチド、タンパク質、色素、診断薬もしくは止血剤または狭窄の予防で用いられる任意のその他の薬剤のような、1つ以上の医療および/または手術で有用物質を含み得る。適切な医療および/または手術で有用な物質の非制限的な例は:抗生物質、抗生物剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗微生物タンパク質/ペプチド(全体およびフラグメント)、酵素、遺伝子治療剤、ウイルス粒子、化学療法剤、抗炎症剤、NSAIDS、ステロイド、テロメラーゼインヒビター、成長因子(TGFファミリー、インターロイキンスーパーファミリー、線維芽細胞由来GF、マクロファージ由来GFなど)、細胞外マトリックス分子(ラミニン、トロンボスポンジン、コラーゲン、フィブロネクチン、合成ECMなど)、細胞接着分子、多糖類(ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、スルホン化デキストラン、硫酸ヘパリン、キトサンなど)およびその他を含む。これらの試薬は、当業者の範囲内の技法を用いて、上記支持構造物を作製するために用いられる組成物中にインサイチュで取り込まれ得るか、または重合された支持体構造上に負荷される。例えば、医療および/または手術で有用な物質は自由に混合または負荷され、電気的またはイオン結合により結合され、共有結合により固定され、キレート化され、または変化する寸法、形状形態および分散/懸濁能力の粒子、ミセル、凝集物、もしくはナノ−メソ−マイクロ固体中にカプセル化され得る。
【0020】
最初に図1を詳細に参照して、直線状のステープラーとの使用のために意図された本開示による支持構造物60はほぼ矩形の形状を有し、そして親水性の生体適合物質から作製される。この支持細片60は、第1の表面65および第2の表面66を含み、これらの一方が、この細片60がステープル留め装置のステープルカートリッジまたはアンビルいずれに接着されるかに依存して、ステープル留めされる組織と接触する。図1Aで観察されるように、この支持構造物60は、ほぼ矩形の断面を有する。
【0021】
ここで、図2〜4を参照して、本開示による細片の形態にある支持構造物は、一般に60、61として示される。外科用ステープルデバイス20の端部35は、それらの間に組織を受容するための開放位置と、それらの間で組織をステープル留めするための閉鎖位置との間を移動可能である第1および第2の組織クランプ留め部材を有する。この第1の組織クランプ留め部材は、その中にマウントされる移動可能なカートリッジ45を有する。第2の組織クランプ留め部材は移動可能なアンビルであり、これは、上記第1の組織クランプ留め部材と対向している。ステープルカートリッジ45は、その中に収容される複数のステープル49を含む。移動可能なアンビル40は、図2の開放位置から移動可能なステープルカートリッジ(図示せず)に隣接する閉鎖位置まで移動する。このステープラーの作動の間に、ステープル49は、支持細片60および61を通って移動可能なステープルカートリッジ45から駆動され、そしてアンビル40に対して堅い「B」形状(図示せず)に形成される。移動可能なステープルカートリッジ45からのステープル49の射出はまた、第2の組織クランプ留め表面41から第2の支持細片61を放出し、そして「U」形状ステープル49を「B」形状に形成する。この「U」形状ステープル49は、それらを、第2の組織クランプ留め表面41に取り付けられた第2の支持細片61を通り、そしてアンビル40内のステープルポケット42に対して駆動することにより「B」形状に形成される。ステープル49のワイヤがステープルポケット42中に駆動されるとき、ステープルワイヤの端部は、「B」形状にカールして取り巻き、そしてカートリッジ45から支持構造物60を取り外し、そしてまた、アンビル40から支持構造物61を離脱する。外科用ステープル留めデバイス20および移動可能なステープルカートリッジ45は、一般に、周知であり、そして、例えば、米国特許第4,354,628号、同第5,014,899号、および同第5,040,715号に記載されている。
【0022】
その他の実施形態では、本開示に従って作製された支持構造物100は、図5に示されるようなリング様構造を有し得、そして吻合を実施するために一般に採用されるタイプのような環状ステープラーと組み合わせる使用のために意図されている。断面では、支持構造物100は、図5Aで観察されるようなほぼ矩形の形態を有し得るか、または図5Bで観察されるようなテーパー状の断面形状を有し得る。
【0023】
最初に図6を詳細に参照して、本開示の実施形態によるリングの形状にある外科用ステープル留め支持構造物は、一般に100として示される。リング100は、外側端部エッジ104、内側端部エッジ106、上面108および下面110によって規定される環状リング102を含む。リング100の内側端部エッジ106は、中央開口部112を規定する。上面108または下面110の1つが、このリング100がステープル留め装置のステープルカートリッジまたはアンビルのいずれに付着するかに依存してステープル留めされる組織と接触する。
【0024】
図6で観察されるように、リング100は、円形のステープル留め装置10と協働する。ステープル留め装置10は、その端部に作動可能に連結されたステープルカートリッジアセンブリ14、およびこのステープルカートリッジアセンブリ14の遠位端に移動可能に係合するような形態およびそのように適合されたアンビルアセンブリ16を有する細長い首部12を含む。ステープルカートリッジアセンブリ14は、その遠位端からステープルの環状アレイ(図示せず)を発射するような形態およびそのように適合されている。好ましくは、ステープルカートリッジアセンブリ14は、その中に、ステープルを有するステープルスロット18の複数の環状の列を含む。アンビルアセンブリ16は、ステープルカートリッジアセンブリ14内に離脱可能にマウントされるよう適合されているシャフト22、およびシャフト22上にマウントされ、そしてステープルカートリッジアセンブリ14の遠位端に向かって位置決めされるように配向されているアンビル24を含む。アンビル24は、ステープル形成カップ19の環状アレイとともに提供され、環状の列の数およびステープルスロット18の数に一致し、このカップは、ステープルを、それらがステープルカートリッジアセンブリ14から発射されるとき、例えば、B形状に成形するような形態であり、そしてそのように適合されている。
【0025】
リング100は、アンビルアセンブリ16またはステープルカートリッジアセンブリ14のいずれかに離脱可能に取り付けられる。あるいは、アンビルアセンブリ16およびステープルカートリッジアセンブリ14は、両方とも、それらの上に配置された補強リング100を有し得、ステープル留め装置10の作動および/または発射に際し、組織/支持物「サンドイッチ」を提供する。
【0026】
リング100の円形ステープル留め装置10への取り付けは、リング100がステープル留め装置10から滑ることを防ぐために十分確実であるべきであるが、ステープル留めデバイス10が作動された後、なお補強リング100のステープル留めデバイス10からの分離を阻害するようには強くない。このような離脱可能な取り付けは、同一人に譲渡された米国特許第5,542,594号に記載されるような複数のピンを採用することにより有利に行われ得、その全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。接着剤、例えば、離脱可能な接着剤が、離脱可能な取り付けを達成するために採用され得ることがさらに企図される。あるいは、複数の長軸方向に間隔を置いた複数のクリップ(ここでは示さず)がまた、リング100をステープル留め装置10に固定するための手段として採用され得る。ピンおよび/またはクリップの正確な数および位置、または接着剤のスポットまたはラインの連続性の量または配置は、リング100がステープル留め装置10に離脱可能に取り付けられる限り、重要ではない。勿論、上記支持構造物を作製するために選択された親水性ポリマーが、有利には、特定程度の接着性質を有し得、それ故、任意の補助的取り付け手段の必要性を避けることが理解されるべきである。
【0027】
外科用グレードのメッシュのような繊維状の補強要素が、本開示による支持構造に組み込まれ得ることが企図される。例えば、図1Bでは、細片60は、その中にメッシュ62を含んで示され、そして図5Cでは、リング100は、その中にメッシュ162を含んで示される。適切な繊維状補強要素は、例えば、DuPont de Nemours&Co.によって所有される登録商標である「TEFLON」のような生体適合性の吸収不能(すなわち、永久的)材料、または生体適合性の吸収可能な材料から作製され得る。これら生体適合性材料は、織られ、編まれるかまたは織られない。生体吸収性材料は、グリコリド、グリコール酸、ラクチド、乳酸、p−ジオキサノン、α−カプロラクトンおよびトリメチレンカーボネートからなる群から選択される1つ以上のモノマーから得られる、ホモポリマー、コポリマーまたはブレンドから形成されたものを含む。非吸収性材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどのようなポリマーから製作されるものを含む。さらなる非吸収性材料は、制限されないで、ステンレス鋼、チタンなどを含む。
【0028】
本開示に従う支持構造物の代替の実施形態では、所定量の生物学的接着剤またはその他の有用な物質をその中に保持するリザーバーが提供される。例えば、図1で観察されるように、細片60は、リザーバー63を含む。別の例として、図5Dで観察されるように、リング100は、リザーバー163を含む。生物学的接着剤は、リザーバー内に保持されているとして記載されているけれども、リザーバー、その中に任意のタイプの創傷閉鎖材料「W」を保持し得ることが想定される。創傷閉鎖材料「W」は、接着剤、止血剤、および封止剤の1つまたはそれらの組み合わせを含み得ることが想定される。上記リザーバー内に保持され得る外科用生体適合性創傷閉鎖材料は、その機能が、器官、組織または構造物を取り付けまたは保持することである接着剤、液体漏失を防ぐための封止剤、および出血を止めるかまたは防ぐ止血剤を含む。採用され得る接着剤の例は、タンパク質由来のアルデヒドを基礎にした接着材料、例えば、Cryolife,Inc.によって商標名BioGlue(登録商標)の下で販売される、市販され入手可能なアルブミン/グルタルアルデヒド材料、およびTyco Healthcare Group,LPおよびEthicon Endosurgery,Inc.によって商標名Indermil(登録商標)およびDerma Bond(登録商標)の下でそれぞれ販売されるシアノアクリレートを基礎にした材料を含む。採用され得る封止剤の例は、フィブリン封止剤、ならびにコラーゲンを基礎にした、および合成ポリマーを基礎にした組織封止剤を含む。市販され入手可能な封止剤は、Cohesion TechnologiesおよびBaxter International,Inc.によって、商標名CoSeal(登録商標)の下で販売される、合成のポリエチレングリコールを基礎にしたヒドロゲル材料である。採用され得る止血剤材料の例は、フィブリンを基礎にした、コラーゲンを基礎にした、酸化再生セルロースを基礎にした、そしてゼラチンを基礎にした局所止血剤を含む。市販され入手可能な止血剤材料の例は、Tyco Healthcare Group,LPにより商標名CoStasis(登録商標)の下で販売され、Baxter International,Inc.によって、商標名Tisseel(登録商標)の下で販売されるフィブリノーゲン−トロンビンの組み合わせ材料である。本明細書における止血剤は、収れん薬、例えば、硫酸アルミニウム、および凝固剤を含む。
【0029】
上記の開示は、ほぼ2つの特定のタイプのステープル留め装置に関しているが、本開示による支持構造物は、任意のタイプのステープル留め装置および任意のタイプの組織のスイープル留めと組み合わせて利用され得ることが理解されるべきである。さらに、上記支持構造物は、特定の実施形態および特定の構造および手順の詳細と組み合わせて本明細書中に開示されているけれども、変更、改変または等価物が当業者によって用いられ得ることは明りょうである。従って、上記の記載は、制限するものと解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の単なる例示である。当業者は、本開示の範囲および思想内のその他の改変を想定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイスであって:
支持構造物を備え、該支持構造物が水溶性ビニルモノマーを含む少なくとも1つの親水性ポリマーから作製され、そして繊維状補強要素を含み、該支持構造物が、外科用ステープラーに離脱可能に取り付けられている医療用デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの親水性ポリマーが、メタクリル酸、アクリル酸、n−ビニルピロリドン、スルホプロピルアクリル酸カリウム、スルホプロピルメタクリル酸カリウム、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのモノマーを含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つの親水性ポリマーが、ポリヒドロキシエチルメタクリレートである、請求項1または2のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記支持構造物が、開始剤、架橋剤、可塑剤、生物学的薬剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのさらなる成分をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記支持構造物が、約0.1mm〜約5mmの範囲の厚みを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
前記支持構造物が、約0.1mm〜約5mmの範囲の厚みを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
前記支持構造物が、ほぼ環状の形状を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記支持構造物がさらに、該支持構造物の表面上にポリマーのホスホリピドをさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
前記支持構造物がさらに、少なくとも1つの医療で有用な物質を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
前記支持構造物がさらに、薬物、酵素、成長因子、ペプチド、タンパク質、色素、診断薬、止血剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの医療で有用な物質を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
前記支持構造物がさらに、接着被覆をを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
前記繊維状補強要素が、編まれた、または不織の構造を備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
前記支持構造物がさらに、生物学的接着剤、封止剤、止血剤、創傷閉鎖材料およびそれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含むリザーバーを備える、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医療用デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−20140(P2012−20140A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−174861(P2011−174861)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【分割の表示】特願2007−527981(P2007−527981)の分割
【原出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(500329892)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (94)
【Fターム(参考)】