説明

ストッパ、および作業工具

【課題】穴あけ作業を行う作業工具に取り付けられる工具ビットの長さ種類に対応するストッパを提供する。
【解決手段】複数種類の長さのドリルビットが選択的に取り付けられて穴あけ作業を行うハンマドリルに取り付けられ、ドリルビットが所定の穴あけ深さ以上に被加工材へ侵入することを規制するストッパポール1は、ドリルビットの長軸方向に延出するようにハンマドリルに取り付けられ、ドリルビットの長さ種類に応じて、複数の長さに設定可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴あけ作業を行う作業工具に取り付けられる穴あけ深さを規定するストッパ、およびストッパを有する作業工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されているように、作業工具として、装着された工具ビットを回転させることによって、被加工材に対して穴あけ作業を行う作業工具が知られている。この作業工具には、操作性や安定性向上のためにユーザが握るサイドハンドルを装着することができる。そして、このサイドハンドルには、工具ビットによる加工深さを規定する金属製のストッパポールが固定されており、このストッパポールが工具ビットの前進を制限することにより加工深さを規定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−264532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業工具を用いて被加工材に穴あけ作業を行う場合において、ユーザが作業工具に作用させた力を被加工材に効率よく伝達させるためには、工具ビットは短い方が好ましい。また一方で、短い工具ビットでは届かない被加工材の領域、例えば、作業工具本体が近づけない領域であって、短い工具ビットでは穴あけ不能な領域や、天井などのユーザから被加工材までの距離が長い領域などに穴あけ作業を行う場合においては、工具ビットは長い方が好ましい。作業工具に取り付けられる工具ビットの長さが複数種類ある場合、いずれ長さ種類の工具ビットで形成される穴であっても、穴の深さは同じ精度で管理する必要がある。そこで、本発明は、上記に鑑み、複数種類の長さの工具ビットのうち、いずれの工具ビットを用いて穴あけ作業を行う場合であっても、穴あけ深さを管理できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るストッパの好ましい形態によれば、複数種類の長さの工具ビットを選択的に取り付けて穴あけ作業を行う作業工具に対して、取り付けられた工具ビットが所定の穴あけ深さ以上に被加工材へ侵入することを規制するストッパが取り付けられる。このストッパは、工具ビットの長軸方向に延出するように作業工具に取り付けられ、作業工具に取り付けられる工具ビットの長さ種類に応じて、複数の長さに設定可能とされている。換言すると、いずれの長さの工具ビットが取り付けられた場合であっても、取り付けられた工具ビットに応じた所定の穴あけ深さを設定するために、ストッパは複数の長さに可変とされている。このとき、工具ビットの長軸方向において、ストッパの先端は、工具ビットが取り付けられる基端よりも工具ビットの先端側であって、かつ工具ビットの先端よりも基端側に位置するように、作業工具に取り付けられている。なお、ストッパが「作業工具に取り付けられ」とは、ストッパが作業工具本体に直接的に取り付けられる態様と、ストッパが作業工具に取り付けられるサイドハンドルなどの構成部材を介して間接的に取り付けられる態様を好適に包含する。
【0006】
本発明によれば、ストッパは、工具ビットの長さ種類に応じて、複数の長さに設定可能であるため、いずれの長さの工具ビットに対しても、穴あけ深さである工具ビットの先端からストッパの先端までの距離を設定することができ、穴あけ深さを精度よく管理することができる。
【0007】
本発明に係るストッパの好ましい形態によれば、ストッパは、複数のストッパ構成部材で構成されており、複数のストッパ構成部材を互いに着脱することでストッパの長さを複数の長さに設定可能とされている。
【0008】
本形態によれば、ストッパは着脱可能な複数のストッパ構成部材で構成されているため、複数のストッパ構成部材を着脱するだけの簡単な構成で、ストッパの全長を変えることができる。これにより、工具ビットの長さ種類に応じて、ストッパを複数の長さに設定することができる。
【0009】
本発明に係るストッパの更なる形態によれば、隣接する2つのストッパ構成部材のうちの一方のストッパ構成部材は、他方のストッパ構成部材と篏合する篏合部を有している。この篏合部は、他方のストッパ構成部材と篏合する篏合穴部と、一方のストッパ構成部材の長軸方向に交差する交差方向に向かって、篏合穴部を形成する壁面から突出して設けられた凸部と、凸部を交差方向において篏合穴部の内側に向かって付勢する付勢部材を有している。そして、他方のストッパは、篏合穴部と篏合したときに凸部と係合する係合凹部を有している。「篏合穴部を形成する壁面から突出して設けられた凸部」とは、篏合穴部を形成する壁面と一体として形成された凸状部分であってもよく、また、篏合穴部を形成する壁面とは別体の凸状部材であってもよい。
【0010】
本形態によれば、隣接する2つのストッパ構成部材が篏合した際に、係合凹部と凸部が係合するとともに、凸部が係合凹部に向かって付勢されるため、2つのストッパ構成部材を容易に篏脱させることができる。これにより、ストッパの全長を変えることができる。その結果、工具ビットの長さ種類に応じて、ストッパを複数の長さに設定することができる。
【0011】
本発明に係るストッパの更なる形態によれば、ストッパは、互いに摺動する複数の摺動部材で構成されており、テレスコープ式にストッパの長さを複数の長さに設定可能とされている。「テレスコープ式」とは、換言すると、望遠鏡式とも言うことができ、伸縮自在な伸縮式の構成を好適に包含する。
【0012】
本形態によれば、複数の摺動部材を摺動させるだけで、ストッパの全長を変えることができる。その結果、工具ビットの長さ種類に応じて、ストッパを複数の長さに設定することができる。
【0013】
本発明に係る作業工具の好ましい形態によれば、作業工具は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のストッパを有している。
【0014】
本形態によれば、作業工具は、取り付けられる工具ビットの長さ種類に応じて、複数の長さに設定可能とされたストッパを有しているため、いずれの長さの工具ビットに対しても、穴あけ深さである工具ビットの先端からストッパの先端までの距離を設定することができ、穴あけ深さを精度よく管理することができる。
【0015】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、ストッパを取り付ける取り付け部において、ストッパの長軸方向における取り付け位置が可変とされている。「ストッパを取り付ける取り付け部」の態様としては、ストッパを作業工具本体に直接的に取り付ける場合における、作業工具本体に取り付けられる部分や、ストッパを作業工具に取り付けられるサイドハンドルなどの構成部材を介して間接的に取り付ける場合における、その構成部材などが該当する。
【0016】
本形態によれば、工具ビットの長さ種類に応じて、ストッパを複数の長さに設定できるとともに、取り付け部においてストッパにおける取り付け位置を変えることができるため、穴あけ深さである工具ビットの先端からストッパの先端までの距離を容易に複数段階に設定することができる。
【0017】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、工具ビットの長軸方向における周方向の全周を覆う集塵用の集塵部材が装着される構成とされている。
【0018】
穴あけ深さを管理する場合においては、例えば、工具ビットに直接印を付けるなどにより、ユーザが被加工材への工具ビットの貫入距離を目視することで穴あけ深さを管理することは可能である。しかしながら、作業工具に対して、工具フードの長軸方向における周方向の全周を覆う集塵部材が装着される場合には、ユーザは直接工具ビットを目視することはできず、工具ビットの貫入距離、すなわち穴あけ深さを精度よく管理することが困難である。そのため、本形態のようにストッパを取り付けることで穴あけ深さを管理することができる。そして、ストッパを設けることは、とりわけ工具ビットの全周を覆う集塵部材が装着される作業工具に対して有用性が高い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数種類の長さの工具ビットのうち、いずれの工具ビットを用いて穴あけ作業を行う場合であっても、穴あけ深さを管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るハンマドリルに短いハンマビットを取り付けた状態の全体構造を示す部分断面図である。
【図2】図1のハンマドリル態様の平面図である。
【図3】図1のハンマドリルに装着されたサイドハンドルを示す正面図である。
【図4】メインポールと延長ポールを連結させたストッパポールを示す外観図である。
【図5】ストッパポールのメインポールを示す外観図である。
【図6】ストッパポールの延長ポールを示す断面図である。
【図7】図4のストッパポールのメインポールと延長ポールの連結部分の拡大断面図である。
【図8】図1のハンマドリルに、長いハンマビットを取り付けた状態を示す部分断面図である。
【図9】図8のハンマドリル態様の平面図である。
【図10】本発明の実施形態における変形例のストッパポールを示す部分断面図である。
【図11】図10のストッパポールの全長を伸ばした状態を示す部分断面図である。
【図12】図11のストッパポールのメインポールと延長ポールの連結部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態につき、図1〜図7を参照しつつ、詳細に説明する。本実施の形態では、作業工具の一例として、ドリルビットの回転によって被加工材に穴あけ加工を行うハンマドリルを用いて説明する。図1は、ハンマドリル100の側面図の部分断面図であり、図2は、ハンマドリル100のドリルビットが取り付けられる先端部分の平面図である。図1に示すように、ハンマドリル100は、本体部110を主体として構成されている。また、ハンマドリル100には、それぞれ着脱可能な、ドリルビット200、集塵装置300、およびサイドハンドル400が装着される。以下においては、図1の左側をハンマドリル100の前側、右側をハンマドリル100の後側として、図1の左右方向をハンマドリル100の前後方向とし、図1の上下方向をハンマドリル100の上下方向として説明する。
【0022】
本体部110は、ハンマドリル100の前側のツールホルダ10と、外側を覆うハウジング20と、ハンマドリル100の後側でユーザが把持するハンドル30を主体として構成されている。
【0023】
ツールホルダ10は、ドリルビット200を着脱可能に保持している。このツールホルダ10は、複数種類のドリルビット200、例えば、複数種類の太さのドリルビット200や複数種類の長さのドリルビット200を保持することができる。図1は、長さ種類に関して、短いドリルビット200を装着したハンマビット100を示している。なお、ドリルビット200が本発明の「工具ビット」に対応した実施構成例である。
【0024】
ハウジング20は、ほぼ対称形の1対のハウジングを合わせて結合しており、内側にモータ50、運動変換機構60、動力伝達機構70、および打撃要素80を収容している。
【0025】
モータ50は、回転軸51がハンマドリル100の上下方向に延在するようにハウジング20内に配置されている。回転軸51の上端には、駆動ギア52が設けられている。また、回転軸51の上方には、運動変換機構60、動力伝達機構70、および打撃要素80が配置されている。
【0026】
運動変換機構60は、モータ50の回転出力をハンマドリル100の前後方向への運動に変換する機構である。すなわち、運動変換機構60は、第1被動ギア61、クランク軸62、クランク板63、クランクアーム64、ピストン65、およびシリンダ66を主体として構成されている。第1被動ギア61は、駆動ギア52と係合し、モータ50の回転出力が伝達される。クランク軸62は、第1被動ギア61と一体となって回転するよう構成されている。クランク板63は、クランク軸62に取り付けられており、クランク板63には、クランクアーム64が連結されている。クランクアーム64の先端は、ピストン65と連結されている。そして、ピストン65は、シリンダ66内をハンマドリル100の前後方向に往復移動するよう構成されている。これにより、第1被動ギア61にモータ50の回転出力が伝達されると、第1被動ギア61とともに、クランク軸62とクランク板63が回転することで、クランクアーム64とピストン65が前後方向に移動するクランク機構が構成されている。
【0027】
動力伝達機構70は、運動変換機構60の前側に配置されている。すなわち、動力伝達機構70は、第2被動ギア71、中間軸72、駆動べベルギア73、および被動べベルギア74を主体として構成されている。第2被動ギア71は、駆動ギア52と係合し、モータ50の回転出力が伝達される。中間軸72は、第2被動ギア71と一体となって回転するよう構成されている。中間軸72の先端には、駆動べベルギア73が設けられている。そして、被動べベルギア74は、駆動べベルギア73と係合しており、中間軸72の回転が被動べベルギア74に伝達されて回転する。なお、被動べベルギア74は、ツールホルダ10の回転軸と同軸上に配置され、ツールホルダ10の後方でツールホルダ10と結合されている。
【0028】
打撃機構80は、運動変換機構60の上方であって、ツールホルダ10の後方に配置されている。打撃機構80は、運動変換機構60によってモータ50の回転出力から変換されたハンマドリル100の前後方向への出力を、ドリルビット200に衝撃力として伝達する機構である。すなわち、打撃機構80は、ストライカ81とインパクトボルト82を主体として構成されている。ストライカ81は、シリンダ66内に摺動可能に配置された打撃子である。インパクトボルト82は、ストライカ81の前方に配置され、ストライカ81が前後方向に往復移動する際に、ストライカ81と衝突する構成となっている。また、インパクトボルト82は、その前側に取り付けられたドリルビット200の後端と当接するように構成されており、ストライカ81が衝突した衝撃力をドリルビット200に伝達する。なお、ストライカ81の後方のピストン65との間で、シリンダ66に囲まれた空間には、空気室83が形成されている。空気室83は、ピストン65の摺動動作による空気室83内の空気の圧力変動によって、ストライカ81を前後方向に移動させるよう構成されている。
【0029】
ハンドル30には、トリガ31が配置されており、トリガ31を操作することによって、外部の電源から、電源コード32を介してモータ50に通電される。
【0030】
集塵装置300は、図1、図2に示すように、ハンマドリル100の本体部110の前側に着脱可能に設けられている。集塵装置300は、取付け部301と、集塵フード302と、図示しない吸引装置が接続する接続口303を主体として構成されている。取付け部301には、ドリルビット200が挿通する貫通穴が形成されている。そして、取付け部301は、貫通穴にドリルビット200を挿通させた状態で、ハウジング20の前端部に篏合して装着される。集塵フード302は、取付け部301からドリルビット200の長軸方向にドリルビット200の先端に向けて延在し、ドリルビット200の全周を覆うように構成されている。この集塵フード302は蛇腹状に伸縮自在に構成されている。接続口303は、取付け部301に連接して形成され、前方は集塵フード302に連通するとともに、後方は開口し、開口には図示しない吸引装置が接続される。なお、集塵フード302が本発明の「集塵部材」に対応する実施構成例である。
【0031】
次に、図3を参照して、サイドハンドル400について説明する。サイドハンドル400は、ハンマドリル100の前側に着脱可能に設けられている。サイドハンドル400は、取付リング部401、ハンドル部402、カバー部材403、およびボルト404を主体として構成されている。取付リング部401は、金属板製のリング状部材であり、本体部110のハウジング20の外周面を外側から把持する。ユーザに把持されるハンドル部402は、ボルト404が螺合可能に構成されている。カバー部材403は、ハンドル部402に固定され、取付リング部401の側面を保持している。ハンマドリル100の前側を取付リング部401に挿入して、ハンドル部402をハンドル部402の長軸周りに回転させることで、ハンドル部402とボルト404との螺合によって、取付リング部401とカバー部材403がハンドル部402に緊結される。これにより、ハウジング20が取付リング部401に固定されて、サイドハンドル400がハンマドリル100に装着される。図1においては、サイドハンドル400の長軸方向がハンマドリル100の上下方向に一致しているが、サイドハンドル400をハウジング20に対してドリルビット200の長軸周りに回転させることで、サイドハンドル400を任意の方向に装着可能である。
【0032】
カバー部材403の側部には、さらに、後述するストッパポール1を装着するポール取付部405が形成されている。ポール取付部405には、貫通孔406、保持爪407、および付勢バネ408が配置されている。貫通孔406は、サイドハンドル400をハンマドリル100に装着したときに、ドリルビット200の長軸方向と一致する孔である。保持爪407は、貫通孔406の側方に上下方向に移動可能に配置されている。付勢バネ408は、保持爪407と連接して配置されており、保持爪407は、付勢バネ408によって、貫通孔406の中心部に向かって付勢されている。なお、ポール取付部405が本発明の「取り付け部」に対応する実施構成例である。
【0033】
以上の通り構成されたハンマドリル100は、ユーザによってトリガ31が操作されると外部の電源から電源コード32を介してモータ50に電力を供給し、モータ50が駆動される。モータ50の回転出力は、動力伝達機構70によって適宜減速された上でツールホルダ10に保持されたドリルビット200に伝達され、ドリルビット200に回転力を発生させる。この回転力によって、被加工材を穴あけ加工するドリル動作が行われる。一方、モータ50の回転出力は、運動変換機構60によってハンマドリル100の前後方向の運動に変換され、ピストン65に伝達される。ピストン65が前後方向に摺動することで、空気室83内の空気が空気バネとして作用し、ストライカ81を摺動させる。そして、ストライカ81がインパクトボルト82に衝突し、その衝撃力がドリルビット200に伝達されて、ドリルビット200がハンマドリル100の前後方向への打撃力を発生する。この打撃力によって、被加工材を加工するハンマ動作が行われる。すなわち、ドリルビット200を被加工材に押し付けた状態で、ハンマドリル100にドリル動作とハンマ動作を行わせて、被加工材を穴あけ加工する。なお、被加工材を穴あけ加工する際には、図示しない切替スイッチを操作することにより、ハンマ動作を行わず、ドリル動作のみで穴あけ加工してもよい。
【0034】
このとき、被加工材を加工して発生した粉塵が、集塵フード302により集塵され、集塵装置300に接続された吸引装置によって吸塵される。集塵フード302は蛇腹状に伸縮自在に構成されており、ドリルビット200の被加工材への貫入に伴って、集塵フード302が被加工材に当接して収縮される。
【0035】
ところで、被加工材に穴あけ加工をする場合においては、穴あけ深さを精度よく管理することが必要である。そのため、例えば、ドリルビット200に直接印を付けるなどにより、ユーザが印の位置を確認することで、ドリルビット200被加工材への貫入量を目視によって穴あけ深さを管理することは可能である。しかしながら、ドリルビット200の全周を覆うような集塵フード302が装着されている場合には、ドリルビット200に付した印をユーザが目視することはできない。そのため、本実施の形態では、ハンマドリル100に対して、ドリルビット200が所定の穴あけ深さ以上に被加工材へ侵入することを規制するストッパポール1が装着されている。これにより、被加工材の穴あけ深さを精度よく管理することができる。
【0036】
このストッパポール1について図4〜7を参照して説明する。図4に示すように、ストッパポール1は、メインポール2と延長ポール3の2つのポール構成部材で構成されている。このストッパポール1が本発明の「ストッパ」に対応した実施構成例であり、メインポール2と延長ポール3の2つのポール構成部材が、本発明の「ストッパ構成部材」に対応した実施構成例である。
【0037】
図5に示すように、メインポール2は、断面が六角形形状の金属製の棒状部材である。メインポール2は、長軸方向の一側面に、長軸方向に直交する方向に形成された複数の係合溝4を有している。さらに、メインポール2の先端部には、周方向の全周にわたって形成された凹部5を有している。この凹部5が、本発明の「係合凹部」に対応した実施構成例である。
【0038】
図6に示すように、延長ポール3は、中心部の断面が円形状であり、中心部から径方向に突出した、長軸方向に延在する4つのリブを有する樹脂製の棒状部材である。延長ポール3は、一端にメインポール2と篏合するメインポール篏合部6が設けられている。メインポール篏合部6は、篏合穴7と、スチールボール8と、板バネ9を有している。篏合穴7は、メインポール篏合部6を形成する壁で囲まれて構成されており、一端が開口する長軸方向に延在する穴である。また、長軸方向における、開口と反対側には、篏合穴7と外部を連通させる外部連通穴7´が径方向に延在して設けられている。スチールボール8は、その一部が延長ポール3の径方向に篏合穴7の内壁から篏合穴7の中心に向かって突出して、径方向に移動可能に配置されている。板バネ9は、スチールボール8が配置された部分の外側を延長ポール3の周方向を囲むように配置されており、スチールボール8を篏合穴7の内部に向かって付勢している。このメインポール篏合部6が本発明の「篏合部」に対応し、篏合穴7が本発明の「篏合穴部」に対応し、板バネ9が本発明の「付勢部材」に対応する実施構成例である。また、スチールボール8の篏合穴7の内壁から突出した部分が、本発明の「篏合穴部を形成する壁面から突出して設けられた凸部」に対応した実施構成例である。
【0039】
メインポール2と延長ポール3は、図4に示すように、長軸方向に連接させることができる。具体的には、図7に示すように、延長ポール3のメインポール篏合部6にメインポール2の先端を篏合させる。すなわち、メインポール2の先端を延長ポール3の篏合穴7に挿入させて、メインポール2と延長ポール3を長軸方向に連接させる。このとき、メインポール2の凹部5と延長ポール3のスチールボール8が係合し、さらに、スチールボール8は板バネ9によって付勢されているため、板バネ9の付勢力によってメインポール2と延長ポール3が抜けることを防止している。
【0040】
以上の通り、ストッパポール1は、複数の長さに設定可能に構成されている。すなわち、ストッパポール1はメインポール2のみのストッパポール1の全長が短い態様と、メインポール2と延長ポール3を長軸方向に連接させたストッパポール1の全長が長い態様を取り得る。
【0041】
このストッパポール1は、メインポール2の係合溝4が設けられた長軸方向の任意の位置がサイドハンドル400のポール取付部405に取り付けられる。具体的には、係合爪407を付勢バネ408の付勢力に抗して上方に移動させた状態で、メインポール2をポール取付部405の貫通孔406に挿通させる。その後、係合爪407を元の位置に戻すと係合溝4に係合し、付勢バネ408の付勢力によりメインポール2をポール取付部405に固定する。このとき、係合溝4は、メインポール2の側面に長軸方向に直交する方向に複数形成されているため、任意の係合溝4を選択して係合爪407と係合させることで、ポール取付部405に対して、メインポール2の長軸方向の任意の位置を取り付けることができる。その結果、ストッパポール1は、長軸方向における取り付け位置が可変とされる。そして、サイドハンドル400がハンマドリル100に装着されることにより、ストッパポール1はサイドハンドル400を介してハンマドリル100に取り付けられる。これにより、ストッパポール1は、ドリルビット200の長軸方向に延出するようにハンマドリル100に取り付けられる。
【0042】
次に、ストッパポール1とドリルビット200の関係について説明する。図1、図2に示すように、ハンマドリル100に短いドリルビット200を装着した場合には、メインポール2のみのストッパポール1がハンマドリル100に取り付けられる。このとき、ストッパポール1の長軸方向の取り付け位置を変えることによって、ストッパポール1の先端とドリルビット200の先端の距離、換言すると、取り付け位置からストッパポール1の先端までの有効長さを変えることができ、被加工材における穴あけ深さを設定することができる。そして、ドリルビット200を被加工材に押し当てて穴あけ加工する際には、ドリルビット200が被加工材に侵入するが、ハンマドリル100に取り付けられたストッパポール1の先端が被加工材に当接することで、それ以上ドリルビット200が被加工材に侵入するのを規制する。これにより、設定された深さの穴を被加工材に形成することができ、穴あけ深さを精度よく管理することができる。
【0043】
一方、図8、図9に示すように、ハンマドリル100に長いドリルビット200を装着した場合には、メインポール2と延長ポール3が連接された全長が長いストッパポール1がハンマドリル100に取り付けられる。長いドリルビット200を用いることは、例えば、ハンマドリル100本体が近づけない領域であって、短いドリルビット200では穴あけ不能な領域に穴を開ける場合や、天井などのユーザから被加工材までの距離が長い領域などに穴を開ける場合に特に有用である。長いドリルビット200を用いる場合であっても、短いドリルビット200を用いる場合と同様に穴あけ深さを精度よく管理する必要がある。本実施の形態においては、長いドリルビット200が装着された場合には、全長が長いストッパポール1がハンマドリル100に取り付けられるため、短いドリルビット200で穴あけ加工する場合と同様に穴あけ深さを精度よく管理することができる。
【0044】
また、ハンマドリル100に長いドリルビット200を装着した場合においても、短いドリルビット200を装着した場合と同様に、ストッパポール1の長軸方向の取り付け位置を変えることによって、ストッパポール1の先端とドリルビット200の先端の距離、すなわち、取り付け位置からストッパポール1の先端までの有効長さを変えることができる。また、ハンマドリル100に長いドリルビット200を装着した場合であっても、穴あけ深さに応じて、メインポール2のみの短いストッパポール1をハンマドリル100に取り付けてもよい。
【0045】
以上の本実施の形態によれば、ストッパポール1は、ハンマドリル100に取り付けられたドリルビット200の長さ種類に応じて、複数の長さに設定可能とされている。すなわち、ストッパポール1の全長を変えるとともに、ストッパポール1の長軸方向の取り付け位置を変えることで、取り付け位置からストッパポール1の先端までの有効長さを変えることができ、これにより、被加工材における穴あけ深さを設定することができる。したがって、いずれの長さのドリルビット200に対しても、ドリルビット200の長さ種類に応じて、穴あけ深さを精度よく管理することができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、メインポール2と延長ポール3を篏合させるだけの簡単な構成でストッパポール1の全長を変えることができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、篏合穴7は、外部と連通する外部連通穴7´が設けられているため、メインポール2を篏合穴7に挿脱する際に、外部連結穴7´から篏合穴7に溜まった粉塵等を外部に排出することができる。さらに、メインポール2を篏合穴7に挿脱する際に、篏合穴7の空気を外部に逃がしたり、外部から篏合穴7に空気を流入させたりすることができ、メインポール2と延長ポール3の篏合をスムーズに行うことができる。
【0048】
以上の本実施の形態では、延長ポール3にメインポール篏合部6を形成したが、メインポール2に延長ポールが篏合する篏合部を形成してもよい。また、いずれの場合においても、篏合部に形成される篏合穴7は、全周が壁に囲まれた穴形状に限らず、一部が壁に囲まれていない溝形状であってもよい。また、メインポール篏合部6の樹脂の弾性を利用してスチールボール8を付勢してもよく、その場合には板バネ9が設けられていなくてもよい。また、凹部5は、メインポール2の周方向の全周にわたって形成されていたが、スチールボール8と係合する周方向の一部にのみ設けられていてもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、スチールボール8を、その一部が延長ポール3の径方向に篏合穴7の内壁から篏合穴7の中心に向かって突出するように配置していたが、これには限られず、スチールボール8と板バネ9が配置されておらず、篏合穴7の内壁が篏合穴7の中心に向かって突出する部分を備えていてもよい。この突出する部分が樹脂で形成されていることで、樹脂の弾性を利用して、凹部5と係合するように構成してもよい。このように、樹脂の突出する部分を有する構成であっても、メインポール2と延長ポール3が抜けることを防止してもよい。なお、この突出する部分は、樹脂製には限られず、弾性を有する材料で形成されていればよい。この突出する部分が、本発明の「篏合穴部を形成する壁面から突出して設けられた凸部」に対応した実施構成例である。
【0050】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同じ構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0051】
図10〜図12に変形例に係るストッパポール1aを示す。図10は、全長が短い態様のストッパポール1aを示す図であり、図11は、全長が長い態様のストッパポール1aを示す図である。また、ストッパポール1a以外の構成は、本実施の形態と同様である。
【0052】
ストッパポール1aは、メインポール2aと延長ポール3aの2つのポール構成部材により構成されている。このストッパポール1aが本発明の「ストッパ」に対応した実施構成例であり、メインポール2a、延長ポール3aの2つのポール構成部材が本発明の「ストッパ構成部材」に対応した実施構成例である。
【0053】
メインポール2aは、断面が円形状の金属製であり、内部に中空部分7aを有する棒状部材である。メインポール2aの側面には、ポール取付部405に形成された係合爪407と係合する係合溝4aが複数形成されている。また、メインポール2aの先端部には、延長ポール篏合部6aが設けられている。
【0054】
図12に示すように、延長ポール篏合部6aには、スチールボール8aと、スライド部材9aが配置されている。スチールボール8aは、メインポール2aの径方向に移動可能に配置されている。スライド部材9aは、メインポール2aの径方向におけるスチールボール8aの外側に配置されており、凹溝と、付勢バネを備えている。スライド部材9aは、付勢バネによってメインポール2aの長軸方向における延長ポール3aが突出する側に付勢されて保持されている。そして、スライド部材9aをスライドさせたときに、凹溝はスチールボール8aと係合するよう構成されている。
【0055】
延長ポール3aは、断面が円形状の金属製の棒状部材である。延長ポール3aの外径はメインポール2aの中空部分の内径とほぼ等しく構成されている。延長ポール3aの側面には、凹部5aが長軸方向に3か所形成されている。
【0056】
このメインポール2aと延長ポール3aは、スライド部材9aを付勢バネの付勢力に抗してスライドさせて、スライド部材9aの凹溝とスチールボール8aを係合させることで、メインポール2aと延長ポール3aを互いに摺動させることができる。また、スチールボール8aが延長ポール3aの任意の位置の凹部5aと係合したときに、スライド部材9aを元の位置に戻すと、メインポール2aの径方向におけるスチールボール8aの移動が規制されて、メインポール2aと延長ポール3aの摺動が規制される。これにより、延長ポール3aがメインポール2aから抜けてしまうことを防止できるとともに、ストッパポール1aを凹部5aとスチールボール8aが係合する位置でその長さに保持することができる。
【0057】
以上の通り、メインポール2aと延長ポール3aは、互いに摺動することができるよう構成されている。このとき、スチールボール8aが、3か所の凹部5aの内のそれぞれと係合することにより、ストッパポール1aは、伸縮自在にストッパポール1aの全長を3段階に変えることができる。この2つのポール構成部材を伸縮自在に互いに摺動させる態様が本発明の「テレスコープ式」に対応した実施構成例である。
【0058】
このストッパポール1aは、サイドハンドル400のポール取付部405に対して、メインポール2aをポール取付部405の貫通孔406に挿通して、係合溝4aと係合爪407を係合させることで、付勢バネ408の付勢力によりポール取付部405に固定される。ここで、係合溝4aは、メインポール2aの側面に複数形成されているため、任意の係合溝4aを選択して係合爪407と係合させることで、ポール取付部405に対して、メインポール2aの長軸方向の任意の位置に取り付けることができる。その結果、ストッパポール1aは、長軸方向の取り付け位置が可変とされる。
【0059】
以上の変形例の構成によれば、ストッパポール1aは、ハンマドリル100に取り付けられたドリルビット200の長さ種類に応じて、複数の長さに設定可能とされている。すなわち、ストッパポール1aにおいて、スチールボール8aが係合する凹部5aを変えることで、ストッパポール1aの全長を変えるとともに、ストッパポール1aの長軸方向の取り付け位置を変えることで、取り付け位置からストッパポール1aの先端までの有効長さを変えることができる。これにより、被加工材における穴あけ深さを設定することができる。したがって、いずれの長さのドリルビット200に対しても、ドリルビット200の長さ種類に応じて、穴あけ深さを精度よく管理することができる。
【0060】
以上においては、ストッパポール1,1aは、サイドハンドル400に取り付けられた上で、ハンマドリル100にサイドハンドル400を介して取り付けられていたが、ハンマドリル100の本体部110にストッパポール1,1aの取り付け部が形成されており、ストッパポール1,1aがハンマドリル100に直接取り付けられてもよい。
【0061】
また、以上においては、ストッパポール1,1aは、2つのストッパ構成部材であるメインポール2,2aと延長ポール3,3aによって構成されていたが、3つ以上のストッパ構成部材が連接して、ストッパポール1,1aの全長を変える構成であってもよい。
【0062】
また、以上においては、スチールボール8,8aと係合する凹部5,5aは、設けられていなくてもよい。この場合であって、スチールボール8,8aを付勢する付勢部材が設けられていることで、延長ポール3,3aがメインポール2,2aから抜けてしまうことを防止することは可能である。
【0063】
また、以上においては、モータ50の回転軸51が、ドリルビット200の長軸と交差する方向に延在するように、モータ50が配置されていたが、回転軸51とドリルビット200の長軸が平行であるハンマドリル100に本発明を適用することもできる。また、ハンマ動作を行わない、ドリル作業のみを行う作業工具に本発明を適用することもできる。
【0064】
また、以上においては、ストッパは、複数のストッパ構成部材を互いに着脱する構成、あるいは、テレスコープ式の構成について説明したが、上記以外にも、複数のストッパ構成部材の端部が互いにピン結合されており、結合部分を互いに折り畳むことでストッパを複数の長さに設定可能とされていてもよい。
【0065】
上記発明の趣旨に鑑み、下記のごとき態様が構成可能である。
(態様1)
「複数種類の長さの工具ビットを選択的に取り付けて穴あけ作業を行う作業工具に取り付けられるとともに、前記作業工具に取り付けられた前記工具ビットが所定の穴あけ深さ以上に被加工材へ侵入することを規制するストッパであって、
前記作業工具に取り付けられる前記工具ビットの長さ種類に応じて、当該工具ビットの先端からの距離を可変とされていることを特徴とするストッパ」
【符号の説明】
【0066】
1,1a ストッパポール(ストッパ)
2,2a メインポール(ストッパ構成部材)
3,3a 延長ポール(ストッパ構成部材)
4,4a 係合溝
5,5a 凹部(係合凹部)
6 メインポール篏合部
7 篏合穴(篏合穴部)
7a 中空部分
8,8a スチールボール
9 板バネ(付勢部材)
10 ツールホルダ
20 ハウジング
30 ハンドル
50 モータ
51 回転軸
52 駆動ギア
60 運動変換機構
61 第1被動ギア
62 クランク軸
63 クランク板
64 クランクアーム
65 ピストン
66 シリンダ
70 動力伝達機構
80 打撃要素
100 ハンマドリル
110 本体部
120 バッテリ
200 ドリルビット
300 集塵装置
301 取付部
302 集塵フード
303 接続部
400 サイドハンドル
405 ポール取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の長さの工具ビットを選択的に取り付けて穴あけ作業を行う作業工具に取り付けられるとともに、前記作業工具に取り付けられた前記工具ビットが所定の穴あけ深さ以上に被加工材へ侵入することを規制するストッパであって、
前記工具ビットの長軸方向に延出するように前記作業工具に取り付けられ、前記作業工具に取り付けられる前記工具ビットの長さ種類に応じて、複数の長さに設定可能とされていることを特徴とするストッパ。
【請求項2】
請求項1に記載のストッパであって、
前記ストッパは、複数のストッパ構成部材によって構成されており、前記複数のストッパ構成部材を互いに着脱することで前記ストッパの長さを複数の長さに設定可能とされていることを特徴とするストッパ。
【請求項3】
請求項2に記載のストッパであって、
隣接する2つの前記ストッパ構成部材のうちの一方のストッパ構成部材は、他方のストッパ構成部材と篏合する篏合部を有しており、
前記篏合部は、前記他方のストッパ構成部材と篏合する篏合穴部と、前記一方のストッパ構成部材の長軸方向に交差するに交差方向に向かって、前記篏合穴部を形成する壁面から突出して設けられた凸部と、前記凸部を前記交差方向において前記篏合穴部の内側に向かって付勢する付勢部材を有し、
前記他方のストッパ構成部材は、前記篏合穴部と篏合したときに前記凸部と係合する係合凹部を有していることを特徴とするストッパ。
【請求項4】
請求項1に記載のストッパであって、
前記ストッパは、互いに摺動する複数の摺動部材によって構成されており、テレスコープ式に前記ストッパの複数の長さに設定可能とされていることを特徴とするストッパ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のストッパを有することを特徴とする作業工具。
【請求項6】
請求項5に記載の作業工具であって、
前記ストッパを取り付ける取り付け部において、前記ストッパの前記長軸方向における取り付け位置が可変とされていることを特徴とする作業工具。
【請求項7】
請求項5または6に記載の作業工具であって、
前記工具ビットの前記長軸方向における周方向の全周を覆う集塵用の集塵部材が装着されることを特徴とする作業工具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate