説明

ストライクゾーン提示システム

【課題】野球の試合において主審が好適にストライクまたはボールの判定を行える新たなストライクゾーン提示システムを提供することを目的とする。
【解決手段】ストライクゾーン提示システムは、撮像手段と目標固定物登録手段と高低基準登録手段と内外角基準登録手段と提示制御手段とを備えるシースルー型のヘッドマウントディスプレイを含む。撮像手段は外界像を撮像し、目標固定物登録手段は、外界像に含まれるホームベースを目標固定物として登録する。高低基準登録手段は、ストライクゾーンの上下方向の基準となる高低データを個々の打者に対応して登録し、内外角基準登録手段は、目標固定物に対応し、ストライクゾーンの横方向の基準となる内外角データを登録する。提示制御手段は、目標固定物がホームベースに一致する状態で、打席に入っている打者に対応した高低データと、内外角データとにしたがったストライクゾーンを示す基準画像600を提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シースルー型のヘッドマウントディスプレイを用いたストライクゾーン提示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
野球のストライク判定を自動化する技術が提案されている。例えば、バックスクリーン側に、中心線から均等に振り分け対になるように複数台のカメラを設置し、その映像信号を映像メモリーに記憶させ、コンピュータで対の映像データを比較しストライクを検出するストライク自動判定装置が提案されている。このストライク自動判定装置では、打者により異なる高低のストライクゾーンは予め測定しコンピュータに自動判定用のデータとして入力しておくとされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、利用者の頭部に装着され、利用者に画像を提示するヘッドマウントディスプレイに関する技術が提案され、このヘッドマウントディスプレイを用いたシステムも提案されている。例えば、画像を表示する透光型の液晶表示パネルを有し、これが目の直前にくるように頭部に装着されるめがね部を持つヘッドマウント型のAV装置と、各作業過程の作業対象物を象って予め作成された各種アニメーション画像を記憶する記憶部と、各作業過程の順番にしたがって、AV装置を装着する装着者によって液晶表示パネルを通して視認される作業対象物そのものに対して、記憶部に記憶された対応するアニメーション画像が重なるように、そのアニメーション画像を液晶表示パネルに表示するアニメーション表示処理機能とを備え、各作業過程の順番にしたがって、アニメーション画像を液晶表示パネルに表示することにより、作業対象物に対して行われるべき作業内容を装着者に示すようにした作業誘導システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。なお、特許文献2には、AV装置がヘッドトラッカを内蔵した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−290037号公報
【特許文献2】特開2004−21931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、野球の試合において、投手の投球に対するストライクまたはボールの判定は、本塁審判、すなわち主審によって行われるが、しばしば、この判定が問題となることがある。また、個々の主審によって、微妙にストライクゾーンが変化することがある。例えば、低めを厳しく判定する主審もいれば、そうでない主審も存在する。
【0006】
本発明は、野球の試合において主審が好適にストライクまたはボールの判定を行える新たなストライクゾーン提示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題に鑑みなされた本発明の一側面は、野球の主審に、ストライクゾーンを示す基準画像を提示可能なシースルー型のヘッドマウントディスプレイを用いたストライクゾーン提示システムであって、前記ヘッドマウントディスプレイは、外界像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって撮像された前記外界像から、前記外界像に含まれるホームベースを目標固定物として登録する目標固定物登録手段と、ストライクゾーンの上下方向における基準となる高低データを個々の打者に対応して登録する高低基準登録手段と、前記目標固定物登録手段によって登録された前記目標固定物に対応し、ストライクゾーンの横方向における基準となる内外角データを登録する内外角基準登録手段と、前記目標固定物登録手段によって登録された前記目標固定物がホームベースに一致する状態で、前記高低基準登録手段によって打席に入っている前記打者に対応して登録された前記高低データと、前記内外角基準登録手段によって登録された前記内外角データとにしたがった前記基準画像を提示するように制御する提示制御手段とを備えることを特徴とするストライクゾーン提示システムである。
【0008】
これによれば、主審に対し、打席に入っている打者に対応したストライクゾーンを示す基準画像を好適に提示することができる。なお、主審とは、野球の試合の審判のうち、投手の投球について、ストライクまたはボールの判定を行う本塁審判を意味する。
【0009】
このストライクゾーン提示システムは、次のような構成とすることもできる。すなわち、前記撮像手段は、ホームベースに焦点を合わせて前記外界像を撮像し、前記提示制御手段は、前記外界像を撮像した際の焦点距離に等しい距離に焦点を合わせた前記基準画像を提示するように制御することを特徴としてもよい。これによれば、主審に対し、ホームベース上で焦点が合う好適な基準画像を提示することができる。
【0010】
また、前記主審の姿勢を検出する検出手段を備え、前記提示制御手段は、前記検出手段によって前記主審の姿勢が特定の姿勢であることが検出された場合、前記基準画像を提示するように制御することを特徴としてもよい。これによれば、主審に対し、好適なタイミングで基準画像を提示することができる。
【0011】
また、前記高低基準登録手段によって登録された前記高低データを調整する調整手段を備え、前記高低基準登録手段は、前記調整手段によって調整された前記高低データを、個々の打者に対応して更新登録可能であることを特徴としてもよい。これによれば、高低データを調整し、更新登録することができる。
【0012】
また、前記提示制御手段は、前記高低基準登録手段によって登録された前記高低データにしたがった前記基準画像の一部を構成する高低基準を提示可能で、前記調整手段は、前記提示制御手段によって前記高低基準が提示された場合、前記高低データを調整することを特徴としてもよい。これによれば、登録された高低データにしたがった高低基準が提示された場合、高低データの調整がなされるようすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、野球の試合において主審が好適にストライクまたはボールの判定を行える新たなストライクゾーン提示システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ヘッドマウントディスプレイを示す図である。
【図2】ストライクゾーンを示す基準画像が提示された状態を示す図である。
【図3】制御ボックスの機能ブロックを示す図である。
【図4】画像提示部の構成を示す図である。
【図5】事前処理のフローチャートを示す図である。
【図6】内外角データによって示されるAラインおよびBラインが提示された状態を示す図である。
【図7】調整処理のフローチャートを示す図である。
【図8】内外角データによって示されるAラインおよびBラインと高低データによって示されるCラインおよびDラインとが提示された状態を示す図である。
【図9】判定時処理のフローチャートを示す図である。
【図10】ストライクゾーンを示す他の基準画像が提示された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略しまたは他の構成などに置換してもよい。また、他の構成を含むようにしてもよい。
【0016】
(ストライクゾーン提示システム)
ストライクゾーン提示システムは、図1に示すヘッドマウントディスプレイ(以下、「HMD」ともいう。)100を用いたシステムである。ストライクゾーン提示システムは、野球の審判のうち本塁(ホームベース)で、投手の投球に対するストライクまたはボールの判定を行う審判、換言すれば、主審によって利用される。ストライクゾーン提示システムは、HMD100は、制御ボックス200とヘッドマウントディスプレイ本体(以下、「HMD本体」ともいう。)300とを備える。
【0017】
制御ボックス200は、ストライクゾーン提示システムが利用されるとき、利用者としての主審の腰などに取り付けられる。制御ボックス200の詳細については後述する。
【0018】
HMD本体300は、例えば眼鏡のフレームに類似した形状のフレーム310を有し、主審の頭部に装着される。フレーム310は、この形状に限定されず、主審の頭部に装着可能な他の構造とすることもできる。例えば、主審が装着するマスク状のフレームとし、マスクを兼用するようにしてもよい。
【0019】
主審の左眼の前方には、画像提示部320が配置されている。画像提示部320は、フレーム310の所定の位置に取り付けられている。なお、図1に示されるHMD100は、主審の左眼の前方に一つの画像提示部320が配置された構成を有するが、主審の右眼の前方にも他の画像提示部320が配置された構成としてもよい。
【0020】
画像提示部320は、信号ケーブル400によって制御ボックス200に接続され、制御ボックス200と画像提示部320とは通信することができる。画像提示部320では、制御ボックス200から送信される画像信号にしたがった所定の画像を表す画像光が出射される。具体的にストライクゾーン提示システムでは、打席に入っている打者に対応したストライクゾーンを示す基準画像600が、図2に示すように提示される。なお、図2では、基準画像600は、その外縁が破線で示され、かつ破線で囲まれた範囲が網掛けされた状態で示されている。ここで、基準画像600を形成する線の線種および囲まれた範囲は、視認性を考慮し決定すればよく、いずれの線種および状態とすることも可能である。例えば実線として、実線で囲まれた範囲を薄い(淡い)色などで着色してもよい。
【0021】
画像提示部320から出射された画像光は、ハーフミラー330で主審の左眼方向に反射し、主審の左眼の眼球700(図4参照)に直接照射される。これによって、主審は基準画像600を視認する。HMD100はシースルー型のヘッドマウントディスプレイである。HMD100において主審は、画像提示部320から提示される基準画像600を視認しながら、ハーフミラー330を介して外界像を視認することができる。具体的に、主審は、投手、打者、ボールおよびホームベースなどを視認することができる。
【0022】
画像提示部320は、取得した画像信号に応じた画像光を2次元方向に走査し、その走査された画像光を主審の左眼の眼球700に導き網膜上にコンテンツ画像を形成する網膜走査型のディスプレイを用いて構成することができる。また、この他、液晶ディスプレイ、有機EL(Organic Electroluminescence)ディスプレイその他の装置を用いた構成とすることもできる。なお、画像提示部320は、提示される所定の画像の焦点距離を調節可能な光学系を備えている。
【0023】
HMD100は、外界像を撮像するための撮像手段として、例えば所定のオートフォーカス機能を備えたCCDカメラ500を備えている。ストライクゾーン提示システムでは、ホームベースに焦点を合わせ、ホームベースを含む外界像が撮像される。CCDカメラ500は、画像提示部320の上面に設置されている。CCDカメラ500は、信号ケーブル400によって制御ボックス200に接続され、制御ボックス200とCCDカメラ500とは通信することができる。
【0024】
(制御ボックス)
制御ボックス200は、図3に示すようにCPU202とプログラムROM204とフラッシュROM206とRAM208とを備える。CPU202は、HMD100で実行される各種の処理の制御を司る。プログラムROM204は、HMD100で実行される各種の処理のためのプログラムを記憶する。フラッシュROM206は、不揮発性のメモリによって構成され、各種のデータを記憶する。例えば、フラッシュROM206には、後述する図8に示すCラインおよびDラインのための高低データと、図6および図8に示すAラインおよびBラインのための内外角データとが記憶される。高低データおよび内外角データの詳細については後述する。RAM208は、CPU202が所定の処理を実行するとき作業領域として利用される。
【0025】
制御ボックス200は、CCDカメラ接続インターフェース210とHMD接続インターフェース212と外部装置接続インターフェース214と周辺インターフェース216とを備える。なお、以下、CCDカメラ接続インターフェース210などを、「CCDカメラ接続I/F210」などともいう。
【0026】
CCDカメラ接続I/F210は、CCDカメラ500を接続するためのインターフェースである。CCDカメラ接続I/F210には、CCDカメラコントローラ2102とCCDカメラ用VRAM(Video RAM)2104とが搭載されている。CCDカメラコントローラ2102は、CCDカメラ500による外界像の撮像および撮像された外界像のCCDカメラ用VRAM2104への記憶などを、CPU202からの指令に基づき制御する。CCDカメラ用VRAM2104は、CCDカメラ500によって撮像された外界像を記憶する。
【0027】
HMD接続I/F212は、HMD本体300、詳細には画像提示部320を接続するためのインターフェースである。HMD接続I/F212には、HMDコントローラ2122とHMD用VRAM(Video RAM)2124とが搭載されている。HMDコントローラ2122は、画像提示部320との間の各種データを含む信号の入出力(送受信)などを、CPU202からの指令に基づき制御する。HMD用VRAM2124は、画像提示部320に出力される所定の画像、例えば基準画像600を記憶する。所定の画像は、CPU202がこの所定の画像を示す所定のデータを対象として、再生処理を実行して生成され、HMD用VRAM2124に記憶される。
【0028】
外部装置接続I/F214は、外部装置を接続するためのインターフェースであり、例えばパーソナルコンピュータが接続される。外部装置からは、例えば高低データが入力される。
【0029】
周辺I/F216は、所定の周辺装置を接続するためのインターフェースであり、例えば電源スイッチ2162と電源ランプ2164とが接続されている。電源スイッチ2162は、制御ボックス200と画像提示部320とへの電源の供給をオン・オフするためのスイッチである。電源ランプ2164は、制御ボックス200と画像提示部320とへの電源の供給がオンのとき点灯し、オフのとき消灯する。なお、制御ボックス200と画像提示部320は、バッテリーからの電源によって駆動する。
【0030】
制御ボックス200はヘッドトラッカ218を備える。ヘッドトラッカ218は、HMD本体300を装着した主審の頭部の動きを検出する。ヘッドトラッカ218は、画像提示部320の上面にCCDカメラ500とともに設置されている。ヘッドトラッカ218は、信号ケーブル400を介して制御ボックス200のバスラインに接続されている。制御ボックス200は操作部220を備える。主審は、操作部220を介して所定の情報を入力することができる。
【0031】
制御ボックス200では、CPU202が、フラッシュROM206、CCDカメラ500から入力された外界像および操作部220を介して入力された情報などを用い、RAM208上でプログラムROM204に記憶された所定のプログラムを実行する。これによって、所定の機能が実行され、所定の機能手段が実現される。
【0032】
(画像提示部)
画像提示部320は、図4に示すように走査画像光生成部3321と、コリメート光学系3322と、水平走査部3323と、垂直走査部3324と、リレー光学系3325、リレー光学系3326と、ピント調節機構3500とを備える。
【0033】
走査画像光生成部3321は、HMDコントローラ2122が出力する画像信号を、ドットクロック毎に読み出し、読み出した画像信号に応じて強度変調して走査画像光を生成する装置である。走査画像光生成部3321は、信号処理回路3411、光源部3412、光合成部3413を有している。
【0034】
信号処理回路3411は、HMD接続I/F212と接続している。信号処理回路3411は、HMDコントローラ2122から入力された画像信号に基づいて、走査画像光を生成するための要素となるB(青)、G(緑)、R(赤)の各画像信号3414a〜3414cを生成し、光源部3412に出力する。また、信号処理回路3411は、後述する水平走査部3323の水平走査制御回路3323bと接続している。信号処理回路3411は、HMDコントローラ2122から入力された画像信号に基づいて水平駆動信号3415を生成し、この水平駆動信号3415を水平走査制御回路3323bに出力する。さらに、信号処理回路3411は、後述する垂直走査制御回路3324bと接続している。信号処理回路3411は、HMDコントローラ2122から入力された画像信号に基づいて垂直駆動信号3416を生成し、この垂直駆動信号3416を垂直走査制御回路3324bに出力する。
【0035】
光源部3412は、Bレーザドライバ3412a、Gレーザドライバ3412b、Rレーザドライバ3412c、Bレーザ3412d、Gレーザ3412e、Rレーザ3412fから構成されている。Bレーザドライバ3412aは、信号処理回路3411からドットクロック毎に出力されたB(青)の画像信号3414aに基づき、Bレーザ3412dを駆動させる。Bレーザ3412dは、B(青)の画像信号3414aに基づき、強度変調された青色のレーザ光を出射する。Gレーザ3412eおよびRレーザ3412fも、同様に、それぞれ強度変調された、緑色のレーザ光、赤色のレーザ光を出射する。
【0036】
各レーザ3412d〜3412fには、半導体レーザや、高調波発生機能付固体レーザが含まれる。なお、半導体レーザを用いる場合には、駆動電流を直接変調して、レーザ光の強度変調を行う。また、高調波発生機能付固体レーザを用いる場合には、各レーザ3412d〜3412fそれぞれに、外部変調器を備えてレーザ光の強度変調を行う。なお、高調波発生の効率は高くなく、さらに外部変調器での損失も加わるため、高調波発生機能付固体レーザの消費電力は大きくなるため、各レーザ3412d〜3412fに半導体レーザを用いることが好ましい。
【0037】
光合成部3413は、コリメート光学系3413a〜3413cと、ダイクロイックミラー3413d〜3413fと、結合光学系3413gとから構成されている。コリメート光学系3413a〜3413cは、それぞれ、各レーザ3412d〜3412fの前方に配設されている。コリメート光学系3413a〜3413cは、各レーザ3412d〜3412fが出射したレーザ光を、平行光化する。ダイクロイックミラー3413d〜3413fは、それぞれ、コリメート光学系3413a〜3413cの前方に配設されている。ダイクロイックミラー3413d〜3413fは、各コリメート光学系3413a〜3413cが平行化した各レーザ光を、所定の範囲の波長のレーザ光のみを選択的に、反射または透過する。
【0038】
結合光学系3413gは、ダイクロイックミラー3413dの前方に配設されている。ダイクロイックミラー3413dを透過した青色のレーザ光および、ダイクロイックミラー3413e、3413fでそれぞれ反射された、緑色のレーザ光、赤色のレーザ光が、結合光学系3413gに入射する。結合光学系3413gは、各3原色のレーザ光を集光させて、光ファイバ3327に入射させる。なお、青色のレーザ光、緑色のレーザ光、赤色の各レーザ光の強度を均等にすると、白色を表現することができる。
【0039】
水平走査部3323および垂直走査部3324は、光ファイバ3327に入射されたレーザ光を、画像として照射するために、当該レーザ光を水平方向と垂直方向に走査して走査画像光を生成する。
【0040】
水平走査部3323は、共振型偏向素子3323aと、水平走査制御回路3323bと、水平走査角検出回路3323cとから構成されている。光ファイバ3327に入射されたレーザ光は、コリメート光学系3322で平行光化され、共振型偏向素子3323aに入射される。共振型偏向素子3323aは、水平走査制御回路3323bで揺動される反射面3323dを有する。共振型偏向素子3323aは、入射されたレーザ光を、揺動する反射面3323dで反射させて水平方向に走査する。水平走査制御回路3323bは、信号処理回路3411から出力される水平駆動信号3415に基づいて、共振型偏向素子3323aの反射面3323dを揺動させる駆動信号を発生する。水平走査角検出回路3323cは、共振型偏向素子3323aから出力される変位信号に基づいて、共振型偏向素子3323aの反射面3323dの揺動範囲および揺動周波数などの揺動状態を検出し、当該揺動状態を示す信号を、HMDコントローラ2122に出力する。
【0041】
垂直走査部3324は、偏向素子3324aと、垂直走査制御回路3324bと、垂直走査角検出回路3324cとから構成されている。偏向素子3324aは、垂直走査制御回路3324bで揺動される反射面3324dを有する。偏向素子3324aは、入射されたレーザ光を、揺動する反射面3324dで反射させて垂直方向に走査し、2次元的に走査された画像光として、リレー光学系3326に出射する。垂直走査制御回路3324bは、信号処理回路3411から出力される垂直駆動信号3416に基づいて、偏向素子3324aの反射面3324dを揺動させる駆動信号を発生する。垂直走査角検出回路3324cは、偏向素子3324aから出力される変位信号に基づいて、偏向素子3324aの反射面3324dの揺動範囲および揺動周波数などの揺動状態を検出し、当該揺動状態を示す信号を、HMDコントローラ2122に出力する。
【0042】
リレー光学系3325は、共振型偏向素子3323aと偏向素子3324aの間に配設されている。リレー光学系3325は、共振型偏向素子3323aの反射面3323dで水平方向に走査されたレーザ光を、偏向素子3324aの反射面3324dに入射させる。
【0043】
信号処理回路3411は、HMDコントローラ2122から入力された画像信号に基づいて、水平駆動信号3415と垂直駆動信号3416とを、それぞれ水平走査制御回路3323bと垂直走査制御回路3324bとに出力し、反射面3323d、3324dの走査角を制御する。
【0044】
こうして変更された反射面3323d,3324dの走査角度は、水平走査角検出回路3323cおよび垂直走査角検出回路3324cによって検出信号として検出され、当該検出信号がHMDコントローラ2122に入力され、水平駆動信号3415および垂直駆動信号3416にフィードバックされる。
【0045】
リレー光学系3326は、正の屈折力を持つレンズ系3326a,3326bを有している。偏向素子3324aから出射された画像光は、レンズ系3326aによって、それぞれの画像光が、その走査画像光の中心線を相互に略平行にされ、かつそれぞれ収束画像光に変換される。収束画像光は、レンズ系3326bによってそれぞれほぼ平行な走査画像光となるとともに、これらの走査画像光の中心線がユーザの瞳孔Eaに収束するように集光される。
【0046】
ピント調節機構3500は、HMDコントローラ2122から入力された制御信号に基づいて、CCDカメラ500でホームベースを含む外界像が撮像されたときの焦点距離に等しい距離に焦点が合った基準画像600となるように、偏向素子3324aから出射される基準画像600を表す画像光の焦点を調節する。これによって、ホームベースに焦点が合った基準画像600が主審に提示される。ピント調節機構3500は、例えば、レンズ系3326a,3326b間の距離を変更するアクチュエータなどによって構成できる。
【0047】
なお、本実施形態では、光ファイバ3327から入射されたレーザ光を、水平走査部3323で水平方向に走査した後、垂直走査部3324によって垂直方向に走査することとしたが、水平走査部3323と垂直走査部3324の配置を入れ替え、垂直走査部3324に垂直方向に走査した後、水平走査部3323で水平方向に走査するように構成してもよい。
【0048】
(事前処理)
ストライクゾーン提示システムでは、野球の試合開始前に、図5に示す事前処理が実行される。事前処理は、CPU202がRAM208上でプログラムROM204に記憶されている事前処理プログラムを実行することで行われる。例えば主審は、事前処理の開始を操作部220を操作して指示する。開始の指示に応じてこの処理を開始したCPU202は、試合に出場する選手、より具体的には、ベンチ入りする各チームの選手それぞれに関する高低データを、フラッシュROM206に登録する(S100)。高低データは、選手に対応付けて所定のデータベースに登録される。高低データは、主審が外部装置接続I/F214に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置または制御ボックス200が備える操作部220を操作して入力される。なお、高低データの入力は、主審以外のユーザが行ってもよい。
【0049】
高低データは、ストライクゾーンの高低、換言すれば、上下方向における基準となるデータである。公認野球規約によればストライクゾーンは、「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間」と定められている。
【0050】
S100が終了した後、主審は、制御ボックス200を例えば腰に取り付け、HMD本体300を頭部に装着する。主審は、HMD本体300を装着などした状態で、試合中に位置するホームベースの後方に移動する。次に、主審は、腰を屈めてストライクまたはボールの判定をする際の姿勢をとり、操作部220を操作し外界像の撮像を指示する。主審が外界像の撮像を指示した場合、CPU202は、CCDカメラコントローラ2102に指令し、CCDカメラ500を介してホームベースを含む外界像を撮像する。撮像は、ホームベースに焦点が合わされた状態で行われる。CPU202は、焦点距離をCCDカメラコントローラ2102から取得し、取得した焦点距離をフラッシュROM206に登録(記憶)する。
【0051】
また、CPU202は、撮像されCCDカメラ用VRAM2104に記憶されている外界像を対象として、画像処理、具体的にはスキャン処理し、外界像に含まれているホームベースを抽出する。CPU202は、抽出されたホームベースを目標固定物としてフラッシュROM206に登録する(S102)。S102でCPU202は、目標固定物とともに、ヘッドトラッカ218によって検出される主審が構えたときの位置情報、詳細には主審の視線の高さについても登録する。なお、視線の高さは、図4に示す主審の左眼の眼球700の高さに一致する。
【0052】
S102を実行した後、CPU202は、ヘッドトラッカ218の検出結果に基づいて、S102で登録されたホームベースを示す目標固定物(ホームベースを示す画像)と、主審が視認している実際のホームベースとを一致させる。つづけて、CPU202は、HMDコントローラ2122に指令し、図6に示すように目標固定物と実際のホームベースとを一致させた状態で鉛直方向のAラインおよびBラインを提示する(S104)。S104でのAラインおよびBラインの提示に際し、主審は、目標固定物と実際のホームベースとが一致した状態で、操作部220を操作してカーソル800を移動させ、カーソル800によってホームベースの投手寄りの角部aおよび角部bを選択(クリック)する。CPU202は、選択された角部aを起点としてAラインを提示し、角部bを起点としてBラインを提示する。
【0053】
また、S104でCPU202は、HMDコントローラ2122を介してピント調節機構3500を制御し、フラッシュROM206に登録された焦点距離に等しい距離に焦点が合ったAラインおよびBラインが提示されるようにする。この場合、主審は、ホームベースの位置に視線を合わせたとき、焦点があったAラインおよびBラインと外界像とが重なった図6に示すような像を視認する。
【0054】
次にCPU202は、主審が操作部220を操作し、提示されているAラインおよび/またはBラインの位置を左右方向に移動させるための指示を入力しているかについて判断する(S106)。判断の結果、調整操作をするための指示が入力されている場合(S106:Yes)、CPU202は処理をS108に移行する。
【0055】
主審は、図6に示すように目標固定物と実際のホームベースとが一致された状態で、S104で提示されたAラインが角部aを起点としているか否かと、Bラインが角部bを起点としているか否かとを判断する。AラインおよびBラインの少なくともいずれかが、ずれていると判断される場合、主審は、操作部220を操作し、ずれていると判断されるAラインおよび/またはBラインをカーソル800で選択し、Aラインが角部aを起点とし、Bラインが角部bを起点とするように左右方向の調整を行う。このような場合、CPU202は、S106の判断を肯定し(S106:Yes)、S108で操作部220を介した操作に応じてAラインおよび/またはBラインを左右方向に移動させ、左右位置の調整を行う。なお、CPU202はS108を実行した後、処理をS106に戻す。
【0056】
これに対し、Aラインが角部aを起点とし、Bラインが角部bを起点としていると判断される場合、主審は調整操作を行わず、Aラインの位置およびBラインの位置を確定させるための指示を、操作部220を操作して入力する。CPU202は、この確定させるための指示が入力された場合、S106の判断を否定し(S106:No)、処理をS110に移行する。
【0057】
S110でCPU202は、左右方向の位置に関し確定の指示が入力されたAラインおよびBラインにしたがい、これらAラインおよびBラインを示す内外角データをフラッシュROM206に登録する。その後、CPU202は、この処理を終了する。内外角データは、S108で目標固定物と実際のホームベースとが一致された状態で調整し、S106で確定されたAラインおよびBラインを示すデータである。したがって、内外角データは、目標固定物に対応し、ストライクゾーンの横方向(内角、外角)における基準となるデータである。
【0058】
(調整処理)
図7に示す調整処理は、例えば試合開始時または再開される前、換言すれば、「プレイ」の宣告前に実行される。調整処理は、CPU202がRAM208上でプログラムROM204に記憶されている調整処理プログラムを実行することで行われる。主審は、調整処理の開始を操作部220を操作して指示する。開始の指示に応じてこの処理を開始したCPU202は、主審がストライクまたはボールの判定をする際の姿勢に構えたことを検出する(S200)。CPU202は、図5に示す事前処理のS102でフラッシュROM206に登録された位置情報と、ヘッドトラッカ218によって検出される位置情報とを比較する。そして、CPU202は、これらが一致すると判断される場合、主審が構えたことを検出する。
【0059】
ストライクまたはボールの判定をする際の姿勢に構えた主審は、構えた状態で操作部220を操作し、打席に入る打者の高低データを選択する。CPU202は、フラッシュROM206から、主審によって選択された打者に対応して登録された高低データと、内外角データとをRAM208上に読み出す(S202)。つづけて、CPU202は、HMDコントローラ2122に指令し、図6に示すように、内外角データにしたがった鉛直方向のAラインおよびBラインを提示する(S204)。
【0060】
S204の提示に際し、CPU202は、内外角データを対象として再生処理を実行し、これらを示す画像を生成し、HMD用VRAM2124に記憶する。また、CPU202は、ヘッドトラッカ218の検出結果に基づいて、図5の事前処理のS102で登録されたホームベースを示す目標固定物と、主審が視認している実際のホームベースとを一致させる。これによって、主審の姿勢のばらつき、具体的には、図5の事前処理で外界像が撮像された際の姿勢(視線)と、現在の姿勢(視線)との相違が修正され、Aラインが角部aを起点とし、Bラインが角部bを起点として提示される。なお、図8は、ホームベースを示す目標固定物と、主審が視認している実際のホームベースとが一致した状態を示している。
【0061】
また、CPU202は、HMDコントローラ2122に指令し、主審が構えた位置を基準とした高低データにしたがった水平方向のCラインおよびDラインを提示する(S206)。S206の提示に際しCPU202は、高低データを対象として再生処理を実行し、これらを示す画像を生成し、HMD用VRAM2124に記憶する。S204およびS206において、CPU202は、HMDコントローラ2122を介してピント調節機構3500を制御し、図5に示す事前処理でフラッシュROM206に登録された焦点距離に等しい距離に焦点が合ったAライン〜Dラインが提示されるようにする。この場合、主審は、ホームベースの位置に視線を合わせたとき、焦点があったAライン〜Dラインと外界像とが重なった図8に示すような像を視認する。
【0062】
次にCPU202は、主審が操作部220を操作し、提示されているCラインおよび/またはDラインの位置を上下方向に移動させるための指示を入力しているかについて判断する(S208)。判断の結果、調整操作をするための指示が入力されている場合(S208:Yes)、CPU202は処理をS210に移行する。
【0063】
主審は、図8に示すような像を視認している状態で、Cラインが公認野球規約に定められた上限の位置に提示され、Dラインが公認野球規約に定められた下限の位置に提示されているか否かを判断する。CラインおよびDラインの少なくともいずれかが、ずれていると判断される場合、主審は、操作部220を操作し、ずれていると判断されるCラインおよび/またはDラインをカーソル800で選択し、Cラインが上限の位置となり、Dラインが下限の位置となるように上下方向の調整を行う。このような場合、CPU202は、S208の判断を肯定し(S208:Yes)、S210で操作部220を介した操作に応じてCラインおよび/またはDラインを上下方向に移動させ、上下位置の調整を行う。
【0064】
S210を実行した後、CPU202は、S202で主審によって選択された打者に対応付けて、フラッシュROM206に登録されている高低データを、確定の指示が入力されたCラインおよびDラインにしたがった高低データに更新する(S212)。なお、CPU202はS212を実行した後、処理をS208に戻す。
【0065】
これに対し、Cラインが上限の位置であり、Dラインが下限の位置であると判断される場合、主審は調整操作を行わず、Cラインの位置およびDラインの位置を確定させるための指示を操作部220を操作して入力する。CPU202は、この確定させるための指示が入力された場合、S208の判断を否定し(S208:No)、この処理を終了する。
【0066】
なお、処理の終了に際し、CPU202は、Aライン〜Dラインの提示を停止する。また、CPU202は、上下方向の位置に関し確定の指示が入力されたCラインおよびDラインにしたがい、これらCラインおよびDラインを示す高低データをRAM208上の所定領域に登録(記憶)する。
【0067】
(判定時処理)
図9に示す判定時処理は、打者が打席に入った後に「プレイ」がかかり、試合が再開されたときに実行される。判定時処理は、CPU202がRAM208上でプログラムROM204に記憶されている判定時処理プログラムを実行することで行われる。この処理は、主審が操作部220を操作し、判定時処理の開始を指示した場合に開始される。開始の指示に応じてこの処理を開始したCPU202は、主審がストライクまたはボールの判定をする際の姿勢で構えているか、換言すれば、図5に示す事前処理のS102でフラッシュROM206に登録された位置情報に一致したと判断される姿勢で構えているかについて判断する(S300)。CPU202は、図5に示す事前処理のS102でフラッシュROM206に登録された位置情報と、ヘッドトラッカ218によって検出される位置情報とを比較してS300の判断を行う。
【0068】
判断の結果、主審がストライクまたはボールの判定をする際の姿勢に構えていないと判断される場合(S300:No)、CPU202は、基準画像600を提示することなく(S302)、処理をS300に戻す。すなわち、主審が構えていないと判断される場合(S300:No)、CPU202は、主審がストライクまたはボールの判定をする際の姿勢をとるまで待機する。
【0069】
これに対し、主審がストライクまたはボールの判定をする際の姿勢に構えていると判断される場合(S300:Yes)、CPU202は、HMDコントローラ2122に指令し、フラッシュROM206に登録されている内外角データによって示されるAラインおよびBラインと、図7に示す調整処理の終了に際し、RAM208の所定領域に登録(記憶)された高低データによって示されるCラインおよびDラインとによって形成された四角形状の基準画像600を提示する(S304)。
【0070】
S304の提示に際し、CPU202は、内外角データと高低データとを対象として再生処理を実行し、基準画像600を生成し、HMD用VRAM2124に記憶する。また、CPU202は、HMDコントローラ2122を介してピント調節機構3500を制御し、図5に示す調整処理でフラッシュROM206に登録された焦点距離に等しい距離に焦点が合った基準画像600が提示されるようにする。この場合、主審は、ホームベースの位置に視線を合わせたとき、焦点があった基準画像600と外界像とが重なった図2に示すような像を視認する。
【0071】
さらに、S304の提示に際し、CPU202は、ヘッドトラッカ218を制御し、基準画像600とともに提示されている図5に示す事前処理のS102で登録されたホームベースを示す目標固定物と、主審が視認している実際のホームベースとを一致させる。これによって、主審の姿勢のばらつき、具体的には、図5の事前処理で外界像が撮像された際の姿勢(視線)と、現在の姿勢(視線)との相違が修正され、一定の位置に基準画像600が提示される。図2は、ホームベースを示す目標固定物と、主審が視認している実際のホームベースとが一致した状態を示している。ここで、目標固定物は、基準画像600をホームベースに合わせた状態で提示するために用いられるものである。そのため、主審は目標固定物を必ずしも視認する必要がない。したがって、目標固定物が提示されない構成としてもよい。
【0072】
S304を実行した後、CPU202は、ヘッドトラッカ218によって主審が屈めた腰を伸ばすなどして所定の姿勢をとったことが検出された場合、CPU202は、基準画像600の提示を停止し、処理をS300に戻す。その後、CPU202は、上記S300〜S304の処理を繰り返し実行する。打席に入っていた打者が変更になるなどした場合、主審は、操作部220を操作し、図7に示す調整処理の開始を指示する。これにともない、CPU202は、この処理を終了し、再度、図7に示す調整処理の実行を開始する。
【0073】
(変形例)
本実施形態の構成は、次のようにすることもできる。
【0074】
(1)上記では図5に示す事前処理のS100でベンチ入りする各チームの選手それぞれに関する高低データを、フラッシュROM206に登録する構成を例に説明した。この他、打者が打席に入る際に主審が操作部220を操作し、打席に入る打者に対応してCラインおよびDラインを調整する構成としてもよい。この場合、例えば図5のS100は省略される。また、図7のS202では、打者に対応付けられていない高低データが、内外角データとともにフラッシュROM206から読み出される。
【0075】
(2)上記では図7に示す調整処理のS202で、主審が操作部220を操作し、打席に入る打者の高低データを選択した場合、フラッシュROM206から、主審によって選択された打者に対応して登録された高低データが読み出される構成を例に説明した。この他、HMD100に無線通信機能を設けるとともに、ベンチ入りする各チームの選手それぞれに関する高低データを登録したサーバ装置を設け、無線通信機能を用いて、打席に入った打者の高低データを、サーバ装置から自動で取得する構成としてもよい。このような構成によれば、打席に入った打者の高低データを自動で取得し、図9の判定時処理のS304で基準画像600を提示することができる。この場合、例えば図5のS100は省略される。
【0076】
(3)上記では図9に示す判定時処理において、例えば基準画像600が提示されている場合、CCDカメラ500で外界像を撮像(録画)するような構成としてもよい。これによれば、ストライクまたはボールの判定が問題となった場合、主審は録画を確認し、適切な判定を行うことができる。この際、スロー再生が可能な構成とするとさらに好適である。CCDカメラ500は、静止画および動画を撮像できるタイプのものが採用される。
【0077】
(4)上記では図9に示す判定時処理において、基準画像600とともに、ストライク、ボールおよびアウトカウントが提示される構成を採用してもよい。主審は、提示されるこれら情報に基づき現在の状況を好適に理解することができる。なお、HMD100に無線通信機能を設け、ストライク、ボールおよびアウトカウントを示すデータを所定の場所から送信し取得するような構成とするとよい。
【0078】
(5)上記では図9に示す判定時処理のS304を実行した後、CPU202は、ヘッドトラッカ218によって主審が屈めた腰を伸ばすなどして所定の姿勢をとったことが検出された場合、CPU202は、基準画像600の提示を停止し、再度、S300が肯定された場合(S300:Yes)、S304を実行する構成を例に説明した。この他、一度、S300が肯定され(S300:Yes)、基準画像600が提示された後、打席に入っていた打者が変更になるなどして、主審が操作部220を操作し、図7に示す調整処理の開始を指示するまで、この提示が継続されるような構成としてもよい。
【0079】
(6)上記ではストライクゾーンを示す基準画像600が、図2に示すように二次元的に表された構成を例に説明した。この他、基準画像600は、図10に示すように三次元的に表した基準画像610としてもよい。
【0080】
この場合も、基準画像610を形成するCラインおよびDラインは、上記と同様に高低データによって示され、AラインおよびBラインは、内外角データによって示される。基準画像610における奥行きを示す画像部分は、例えば次のように求められたデータによって示される。すなわち、CPU202は、図5に示す事前処理のS106で、CCDカメラ500によって撮像された外界像をスキャンして抽出され、目標固定物として登録されたホームベースを示す画像を解析する。そして、CPU202は、解析によって抽出された所定のパラメータを用いた演算によって、奥行きを示す画像部分を示すデータを取得する。
【0081】
なお、主審の左右両眼の前方に画像提示部320を配置した構成のHMD本体を備えるHMDとした場合、このような演算によって求められたパラメータに対応した量の視差を有する基準画像610を左右両眼に提示することによって、主審は好適な立体感を認識することができる。ホームベースを示す画像を、あらかじめフラッシュROM206に登録(記憶)しておき、登録された画像を選択し、選択された画像に基づき奥行きを示す画像部分を決定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
100 HMD
200 制御ボックス
202 CPU
204 プログラムROM
206 フラッシュROM
208 RAM
210 CCDカメラ接続I/F
2102 CCDカメラコントローラ
2104 CCDカメラ用VRAM
212 HMD接続I/F
2122 HMDコントローラ
2124 HMD用VRAM
218 ヘッドトラッカ
300 HMD本体
320 画像提示部
500 CCDカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野球の主審に、ストライクゾーンを示す基準画像を提示可能なシースルー型のヘッドマウントディスプレイを用いたストライクゾーン提示システムであって、
前記ヘッドマウントディスプレイは、
外界像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された前記外界像から、前記外界像に含まれるホームベースを目標固定物として登録する目標固定物登録手段と、
ストライクゾーンの上下方向における基準となる高低データを個々の打者に対応して登録する高低基準登録手段と、
前記目標固定物登録手段によって登録された前記目標固定物に対応し、ストライクゾーンの横方向における基準となる内外角データを登録する内外角基準登録手段と、
前記目標固定物登録手段によって登録された前記目標固定物がホームベースに一致する状態で、前記高低基準登録手段によって打席に入っている前記打者に対応して登録された前記高低データと、前記内外角基準登録手段によって登録された前記内外角データとにしたがった前記基準画像を提示するように制御する提示制御手段とを備えることを特徴とするストライクゾーン提示システム。
【請求項2】
前記撮像手段は、ホームベースに焦点を合わせて前記外界像を撮像し、
前記提示制御手段は、前記外界像を撮像した際の焦点距離に等しい距離に焦点を合わせた前記基準画像を提示するように制御することを特徴とする請求項1に記載のストライクゾーン提示システム。
【請求項3】
前記主審の姿勢を検出する検出手段を備え、
前記提示制御手段は、前記検出手段によって前記主審の姿勢が特定の姿勢であることが検出された場合、前記基準画像を提示するように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のストライクゾーン提示システム。
【請求項4】
前記高低基準登録手段によって登録された前記高低データを調整する調整手段を備え、
前記高低基準登録手段は、前記調整手段によって調整された前記高低データを、個々の打者に対応して更新登録可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のストライクゾーン提示システム。
【請求項5】
前記提示制御手段は、前記高低基準登録手段によって登録された前記高低データにしたがった前記基準画像の一部を構成する高低基準を提示可能で、
前記調整手段は、前記提示制御手段によって前記高低基準が提示された場合、前記高低データを調整することを特徴とする請求項4に記載のストライクゾーン提示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−161111(P2011−161111A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29566(P2010−29566)
【出願日】平成22年2月13日(2010.2.13)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】