説明

ストレッチ織物およびその製造方法

【課題】ポリアミド系繊維のタッチとポリエステル系繊維の寸法安定性を兼ね備えたポリアミド/ポリエステル複合繊維織物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】鞘成分がポリアミド系ポリマ、芯成分がポリエステル系ポリマからなる芯鞘構造の複合繊維を少なくともその一部に用いた紡績糸をタテ糸および/またはヨコ糸に用いた織物において、上記紡績糸を用いた方向の洗濯収縮率が±2.5%以下であることを特徴とするポリアミド/ポリエステル複合繊維織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトな風合いを有し、かつストレッチ性を兼ね備え、寸法安定性に優れた複合繊維織物およびその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
伸縮性繊維を用い、伸縮性を持たせた布帛を一般にストレッチ素材という。ストレッチ素材に用いる伸縮性繊維には一般に次の二つがある。
【0003】
一つ目は仮撚加工糸である。これは合繊の仮撚り加工糸の伸縮力を利用したもので、一般にナイロン加工糸の方がポリエステル加工糸よりも伸縮性に富むが、ポリエステル系繊維でもポリトリメチルテレフタレート繊維やポリブチレンテレフタレートの様にストレッチ性に富む繊維も使用される。
【0004】
二つ目はポリウレタン繊維である。これはゴムのような伸縮性に富む糸であり、弾性糸、スパンデックスともいう。ポリウレタンは単独で使われることよりも、他の繊維素材と複合して使われることが多い。ポリウレタンは乾式紡糸法で紡糸されるタイプが主であるが、溶融紡糸法によるものもあり、用途の広がりに応じて特徴をうたった多くのタイプが開発されている。
【0005】
ストレッチ織物生地とは緯(ヨコ)方向や経(タテ)方向に または両方に伸びる織物生地のことを言う。ストレッチがあることによって人間の皮膚に合わせて衣服も伸び縮みすることができる。ストレッチ素材はそういった皮膚の動きに合わせて衣服が伸縮するので、着用快適性が得られる。
【0006】
他方、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維などの合成繊維は、優れた強さ、イージーケア性などの面から広い分野で使われている。特にポリアミド系繊維はその強度、しなやかさ、およびコーティング品では移行昇華が起こらないため、スキー、スノーボードウエア等スポーツアウターに好んで用いられている。しかしながら、ポリアミド系繊維の性質としてポリエステル系繊維に比べて寸法安定性が悪く、特に洗濯後の収縮が欠点として上げられる。例えば、ナイロン/ポリエステル芯鞘複合原綿を用い、紡績糸とした後、織物とし、染色工程で芯成分であるポリエステルを溶出し、軽量感のある織物とすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、同織物は軽量感を達成することに主眼をおいており、優れた寸法安定性を発現できるものではない。
【0007】
また、芯成分にポリビニルアルコール、鞘成分に熱可塑性ポリマからなる複合糸を用いた農業用シートが提案されているが(例えば、特許文献2参照)、これは保温性と寸法安定性に主眼をおいたものであり、染色性を加味しておらず衣料用には不適なものである。その他、スルホン化芳香族ジカルボン酸変性ポリエステル等の変性ポリエステルを芯部に、ポリアミドを鞘部に配置したフィラメントの芯部をカチオン染料で染色する方法が多数提案されている(例えば、特許文献3から6参照)。しかしながら、これらは発色性や堅牢度を向上させることに主眼をおいており、優れた寸法安定性を発現できるものではない。
【0008】
衣服として織物を使用する場合、ストレッチ性を付与することは着用快適性を得るため重要であり、かつ非ストレッチ方向は特に水系洗濯等による寸法安定性を付与することが望ましい。しかしながら従来は軽量ナイロン織物に関することや、芯成分をカチオンで染めることによる発色性や堅牢度向上についてのみ、もしくはストレッチ性を付与する事に言及しており、ポリアミド系繊維を用いて寸法安定性とストレッチを両立した織物は得られていない。
【0009】
その他、ポリエステル及びポリアミドが芯鞘構造又はサイドバイサイド構造に配された複合繊維と蛋白質繊維とからなる糸を含む複合織編物が提案されている(特許文献7参照)。該発明では主としてウールとの混紡にて洗濯収縮を抑制する事が提案されているが、紡績糸の製造方法に主眼が置かれており、優れた寸法安定性を実現できるものではない。
【0010】
その他、塩基性染料可染性ポリエステルとナイロン成分を主体とした複合繊維を含む不織布が提案されている(特許文献8参照)。同発明はナイロンの風合いとポリエステル成分による寸法安定性を得ることを目的としており、織物については記載されておらず、織物としての特性を得るための製造方法に関する記載はない。
【特許文献1】特開2003−301351号公報
【特許文献2】特開2001−352841号公報
【特許文献3】特開H03−193982号公報
【特許文献4】特開H07−300724号公報
【特許文献5】特開H09−250029号公報
【特許文献6】特開2000−80575号公報
【特許文献7】特許2752367号公報
【特許文献8】特開平07−279019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述のような従来技術では得ることのできなかった、寸法安定性に優れ、かつポリアミド系繊維が有しているタッチとしっとり感のある独特な風合いを有し、さらにストレッチ性に優れた複合繊維織物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した目的を達成するため本発明は、次の構成を採用する。すなわち、
(1) 芯鞘構造の複合繊維を少なくともその一部に用いた紡績糸をタテ糸またはヨコ糸に用い、かつ該紡績糸と相対する方向に仮撚加工糸もしくはポリウレタン混用繊維を用いた織物において、該仮撚加工糸もしくはポリウレタン混用繊維を用いた方向の織物の伸長率が8%以上20%以下あることを特徴とするストレッチ織物。
(2) 該紡績糸の鞘成分がポリアミド系ポリマ、芯成分がポリエステル系ポリマからなることを特徴とする上記(1)に記載のストレッチ織物。
(3) 紡績糸を用いた方向の洗濯収縮率が±2.5%以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のストレッチ織物。
(4) 該複合繊維の芯成分/鞘成分の複合割合(重量%)が5/95〜80/20の範囲にあることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のストレッチ織物。
(5) 該複合繊維の単繊維繊度が1.7dtex以下であり、かつ該単繊維を少なくとも一部に用いた紡績糸の繊度が50S以上20S以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のストレッチ織物。
(6) 鞘成分がポリアミド系ポリマ、芯成分がポリエステル系ポリマからなる芯鞘構造の複合繊維を少なくともその一部に用いた紡績糸または芯鞘構造フィラメント糸をタテ糸またはヨコ糸に用い、該紡績糸と相対する方向に仮撚加工糸もしくはポリウレタン混用繊維を用いた織物の製造方法であって、150〜190℃で20〜360秒間、空気中あるいは不活性気体中で熱処理した後に、染色することを特徴とするストレッチ織物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来技術では得られなかった、ソフトさと寸法安定性を兼ね備え、かつストレッチ性に優れた織物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、さらに詳しく本発明について説明する。
【0015】
本発明の織物にはタテ糸もしくはヨコ糸に芯鞘複合繊維をその一部に用いた紡績糸を用いる。芯鞘複合繊維に用いるポリマは特に制限はないが、好ましくは鞘成分にポリアミド系ポリマ、芯成分にポリエステル系ポリマを用いることが好ましい。
【0016】
鞘部を構成するポリアミド系ポリマとしては、ポリヘキサメチレナジパミド(ナイロン66)やポリε−カプラミド(ナイロン6)からなるポリアミドが好適であるが、セバシン酸、イソフタル酸、パラキシレンギアミドなどを構成成分とするポリアミドあるいはこれらの共重合ポリアミド等を用いてもよい。
【0017】
また、芯部を構成するポリエステル系ポリマとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられ、これらをチップや溶融ポリマとしてブレンドしたものや、これらを主成分とする共重合ポリエステルとしてもよい。
【0018】
また、ポリエステル系ポリマを、例えばスルフォン化芳香族ジカルボン酸変性ポリエステルとし、スルフォン基を有する化合物がポリエステルの連鎖または末端の一部に含まれた変性されたポリエステルを用いてもよい。より具体的には、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリブチレンテレフタレート、あるいはこれらを主成分とする共重合ポリエステルなどにスルフォン化芳香族ジカルボン酸、あるいはその塩を共重合させてなる変性されたポリエステルなどを用いることが好ましいものである。
【0019】
スルフォン化芳香族ジカルボン酸の代表的なものとしては、5−ナトリウムスルフォイソフタル酸ジメチル等が挙げられ、本発明でも好ましいものとして使用することができる。その共重合量は、テレフタル酸に対し3.0モル〜10モル重量%の範囲であることが好ましい。この共重合量が低すぎると所望の効果が十分に得られ難い場合があり、逆に多すぎると変性ポリエステルの結晶構造が乱れて機械的特性の大幅な低下を招くことになる場合がある。
【0020】
鞘部と芯部の複合割合(重量%)は、寸法安定性および風合い面から重要である。その芯鞘複合割合は、芯:鞘=5:95〜80:20の範囲であるのが好ましい。より好ましくは、芯:鞘=25:75〜50:50の範囲内である。
【0021】
芯鞘複合割合は紡績および製織、染色工程の通過性に影響し、芯比率が80%を越えると鞘の割合が下がるため、工程中で鞘割れが起こる可能性がある。また芯成分が5%未満であると鞘成分であるポリアミド系ポリマの影響が強くなり、本発明の目的とする寸法安定性が得られない場合がある。
【0022】
複合繊維の繊維断面形状は、特に限定されるものではないが、同心円状の芯鞘複合形態が代表的であり生産上好ましいが、芯鞘が相対的に偏心しているものや、全体が三角形状、もしくは四角形状などの多角形状や楕円形状のものなどであってもよい。また、芯が、単一の芯でなく多芯状のものであってもよく、芯成分が鞘成分に完全に囲まれていることが重要であり、芯成分が外側に露出していると特に染色工程で芯成分と鞘成分が剥離する可能性があり好ましくない。
【0023】
本発明では上記構成の原綿を用い、紡績糸として使用する。形態安定性を最大限に発揮させるには上述の原綿を100%で使用することが、本発明の本来のねらいを実現する上で効果的であるが、その目的に応じ天然繊維、再生繊維、他の合性繊維等の原綿と混紡してもよい。その場合、形態安定性を保つため、本発明の短繊維を50重量%以上使用することが好ましい。
【0024】
本発明では、上記紡績糸を用いて織物を作成する。織物設計の観点からは、該紡績糸をタテ糸のみあるいはヨコ糸のみに使用する。相対する方向には伸縮性を織物に付与するため仮撚加工糸もしくはポリウレタン混用繊維を用いる。組み合わせる伸縮性繊維の素材に特に規定は無いが、本発明のストレッチ織物を衣料用途に用いる場合染色することが必要である。この場合、染色堅牢度に問題のない、もしくは問題のでにくい組み合わせにすることが好ましい。
【0025】
具体的には仮撚加工糸であればポリアミド系繊維を用いることが好ましい。ポリアミド系繊維にも一般的にポリヘキサメチレナジパミド(ナイロン66)やポリε−カプラミド(ナイロン6)があり、本発明でも好ましく用いられる。ただし染色温度の関係より紡績糸に用いるポリアミド種と同様のものを用いることが好ましい。
【0026】
またポリエステル系繊維を用いる場合も、ポリエステル系ポリマとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等や、これらを用いたチップや溶融ポリマとしてブレンドしたもの、あるいはこれらを主成分とする共重合ポリエステルが好ましく用いられるが、紡績糸の鞘成分であるポリアミドとの染料相性により、紡績糸の芯成分であるポリエステルと同様スルフォン化芳香族ジカルボン酸変性ポリエステルとし、スルフォン基を有する化合物がポリエステルの連鎖または末端の一部に含まれた変性されたポリエステルとすることが好ましい。
【0027】
本発明に用いる仮撚加工糸において、仮撚り方法としては、フリクション方式、ベルトニップ方式、ピン方式等、一般的な仮撚方法を用いればよい。しかしながら好ましくは最も捲縮力を与えられるピンタイプの仮撚機を用いて製造された仮撚加工糸を用いることが好ましい。
【0028】
一方ポリウレタン系繊維を用いる場合、単独で用いたり、他繊維と合撚したりポリウレタン繊維を他繊維でカバリングしたりして用いることが好ましい。ポリウレタン繊維と組み合わされる他繊維の素材は限定されないが、染色堅牢度の点より前述ポリアミド系繊維やポリエステル系繊維が好ましい。また綿やレーヨン等のセルロース系繊維と組み合わせても良い。
【0029】
ストレッチ性を発揮すべく、以下に織物設計について説明する。従来からポリアミド系繊維を用いた紡績糸織物は多数存在したが、紡績糸を構成する原綿の熱水収縮率が高かったため、染色加工時に過度の収縮が発生してしまい、ひいては自由度の少ない織物となるためストレッチ性を発現させることが出来なかった。本発明では芯鞘複合繊維を少なくともその一部に用いた紡績糸として用いることで、芯もしくは鞘を構成するポリマが、原綿収縮を抑制し、同時に紡績糸の沸水収縮率を抑制している。紡績糸の沸騰水収縮率は6%以下が好ましい。また紡績糸の繊度は細くすることが好ましい。本発明では紡績糸の繊度を20S以下、このましくは40S以下とする事がより好ましい。20Sを超えてしまうとナイロンのソフト風合いが感じがたく、かつストレッチ規格であるため地厚感が発生する場合がある。また織物構造においてタテ糸の剛性が高くなりすぎるためクリンプ構造が発現しにくい場合がある。ただし繊度が過度に細いと織物の引き裂き強力が低下してしまうこと、また製織性が悪化する場合があることより50S以上が好ましい。
【0030】
本発明の紡績糸を実現するためには紡績糸を構成する原綿の繊度を1.7dtex以下とすることが好ましい。1.7dtexを超えると紡績糸の構成本数が不足するため弱糸が発生したり、ひいては製織時に糸切れが発生したりする場合がある。また原綿の繊度は0.8dtex以上が好ましい。0.8dtexを下回ると紡績性の悪化や、紡績糸品位においてスラブ、ネップが発生する場合がある。本発明では、ストレッチ織物を一般衣料に用いる場合、ヨコストレッチ性を求められる事が多いため、紡績糸をタテ糸に用いることが好ましい。その場合、経糸の繊度を細くすることで布帛を薄くすることが出来、かつナイロン加工糸でも収縮を与えられる。
【0031】
織物の伸長率は8%から20%が好ましい。6%以下では衣服としたときのストレッチ性が体感できない。また20%以上では過度の伸長性を持っているため、“笑い”が生ずる可能性がある。さらに好ましくは織物の伸長率は10%から15%の範囲が好ましい。 “笑い”を防止するため伸長回復率は70%以上が好ましい。さらに好ましくは伸長回復率80%以上が良い。
【0032】
製織工程は、通常の紡績糸織物同様の工程で行えばよい。使用できる織機は、特に限定されず、エアジェット織機、レピア織機などの革新織機にも十分対応が可能である。
【0033】
本発明により得られた織物は、まず繊維に付着している糊・油剤や汚れを除去するために精練工程を通す。精練工程は、オープンソーパー、ソフサー、ウインス等の公知の装置を用いて行われるが、紡績糸として用いた場合、充分な膨らみを持たせるためにソフサーを用いることが好ましい。またその後必要に応じて液流リラックスを使用するとよりストレッチ性を得ることが出来る。
【0034】
次に、中間セットとして染色を行う前にテンター等公知の装置を用い150〜190℃で、20〜360秒間、空気中あるいは、不活性気体中で熱処理することが重要である。染色時の過度の収縮と織物の組織変化を抑えることができる。150℃未満の温度では繊維に与える熱量が低く、十分な染色性を与えることができない。また、190℃を越えると、過度の収縮が発生するため風合いが極めて堅くなり好ましくない。また熱処理時間が20秒未満では繊維が十分に加熱されず、熱セットできないため好ましくない。逆に熱処理時間が360秒を越えると、生産性が低くなってしまい好ましくない。好ましい温度、時間は170〜185℃、30〜60秒である。
【0035】
背景技術の欄で述べたように、ポリエステル系繊維は乾熱セットを行うと、熱固定されるため寸法安定性が良好であるが、ポリアミド系繊維はセット性が低いことと吸湿性のため寸法安定性が劣っている。本発明では芯成分のポリエステルを上記した条件にて熱セットすることで、上記紡績糸を用いた方向の洗濯収縮率が±2.5%以下、すなわち−2.5〜+2.5%の範囲内の良好な寸法安定性を実現することができる。この洗濯収縮率は、好ましくは±1.5%以下である。
【0036】
続けて染色加工を施す。染色条件は芯であるポリエステルを染める場合と、鞘であるポリアミドを染める場合とで染料・温度等異なるが、一般的染色条件で行えばよい。
【0037】
ただし、染料に関しては、鞘のポリアミド系ポリマを染める場合、酸性染料、芯のポリエステル系ポリマを染める場合、カチオン可染ポリエステルを用いた場合はカチオン染料で染めることが好ましい。芯にポリエステル等分散染料で染まるポリエステルを用いた場合、鞘のポリアミド系ポリマを汚染してしまい、堅牢度が悪化するおそれがあるためソーピングすることが好ましい。
【0038】
その後中間セットと同様の装置を用い、仕上げセットを行う。仕上げセットは140℃から170℃の温度範囲で行えばよい。樹脂加工は必要に応じて行えばよく、かつ公知の樹脂を適用することができる。
【0039】
本発明により得られたストレッチ織物は、一般衣料用スポーツアウターやパンツ地、その他カジュアルシャツ地等に好適に用いられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。実施例での評価方法を次に示す。
[洗濯収縮率(%)]
40cm×40cmの布帛に、JIS L1042に基づいて、布帛内部にマーキング(20cm×20cm)した。さらに、JIS L1060(織物及び編物のプリ−ツ性試験方法)C法に基づいて、撹拌形洗濯機および60〜70℃のタンブル乾燥により洗濯し、この洗濯を10回繰り返した後に上記紡績糸またはフィラメント糸を用いた方向のマ−キング間距離L1を測定し、洗濯前のマーキング間距離L0に対する収縮した長さの割合を%で求めた。
【0041】
洗濯収縮率(%)=[(L1−L0)/L0]×100
[伸長率(%)]JISのL1096A−1に準ずる。
[回復率(%)]JISのL1096A法に準ずる。
【0042】
[実施例1]
芯成分に5−ナトリウムスルフォイソフタル酸ジメチルを8.0モル%共重合したポリ
エステルを用い、鞘成分にナイロン66を用いて、芯鞘複合割合(重量%)を芯:鞘=30:70として、紡糸速度1300m/分で紡糸した後、3.0倍で通常の延伸を行い、捲縮付与後、カットして、単繊維繊度1.7dtex、繊維長38mmの同芯の複合繊維からなる複合繊維原綿を得た。続いて、この複合繊維原綿100%を用いて、通常の紡績方式で1.90Sの粗糸を作り、精紡ドラフト約21倍、撚数6.33t/cm(16.1t/インチ)、綿番手40Sの複合紡績糸を製造した。この紡績糸をタテ糸に使用し、ヨコ糸に78T−12Fのナイロン66仮撚加工糸を用い、織上密度タテ34.8本/cm(88本/インチ)×ヨコ32.3本/cm(82本/インチ)、織物組織を斜子織とし、エアジェットルームにて製織した。
【0043】
こうして得られた生機を染色加工において、精練、リラックスを行った後、テンターを用い180℃にて2分間、空気中で熱処理を行い、中間セットとした。その後通常のナイロン染色120℃、45分で染色を行い、再びテンターを用い160℃、2分間の熱処理を行い仕上げセットとした。仕上げ後の密度は、タテ45.3本/cm(115本/インチ)×ヨコ37.0本/cm(94本/インチ)であった。
【0044】
[実施例2]
芯成分に5−ナトリウムスルフォイソフタル酸ジメチルを8.0モル%共重合したポリエステルと鞘成分にナイロン66を芯鞘複合割合(重量%)50:50とした以外は、実施例1と同様にして紡績、製織、染色工程、条件にて布帛を作成した。得られた織物は実施例1の織物に比べると芯成分のポリエステル割合が高いため、若干固い織物であったが、依然ナイロンの風合いを持った良品であった。
【0045】
[実施例3]
実施例2と同様の織物において、染色のみ芯成分を染めるためカチオン染料を用い、染色120℃、45分で行った。得られた織物は実施例2と同様、実施例1の織物に比べると芯成分のポリエステル割合が高いため、若干固い織物であったが、依然ナイロンの風合いを持った良品であった。
【0046】
[実施例4]
緯糸にスパンデックス44dtexを3.5倍にドラフトを掛け、さらに綿糸(30S)と800T/mの撚りを施し、経糸に実施例と同様の糸を用いて織上密度タテ34.8本/cm(88本/インチ)×ヨコ32.3本/cm(82本/インチ)、エアジェットルームにて製織した。また染色加工工程は実施例1と同様の工程を用いている。仕上げ後の密度はタテ47.2cm/本(120本/インチ)×ヨコ37.0cm(94本/インチ)であった。得られた織物はナイロンの風合いを持った良品であった。
【0047】
[比較例1]
ナイロン66を100%、すなわち芯鞘複合とはせず、紡糸速度1300m/分で紡糸した後3.0倍で通常の延伸を行い、捲縮付与後カットして、単繊維繊度1.7dte×繊維長38mmの原綿を得た。紡績、製織工程、条件を実施例1と同様に設定し生機を得た。
【0048】
上記生機を染色加工において、精練、リラックス後、通常のナイロン染色条件にて加工した。仕上後の密度はタテ45.3本/cm(115本/インチ)×ヨコ37.4本/cm(95本/インチ)であった。
【0049】
得られた織物はナイロンの風合いを持った良品であったが、寸法安定性が非常に悪い織物であった。
【0050】
以上の5点の紡績糸織物について洗濯収縮率を評価した結果を表1に示す。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘構造の複合繊維を少なくともその一部に用いた紡績糸をタテ糸またはヨコ糸に用い、かつ該紡績糸と相対する方向に仮撚加工糸もしくはポリウレタン混用繊維を用いた織物において、該仮撚加工糸もしくはポリウレタン混用繊維を用いた方向の織物の伸長率が8%以上20%以下あることを特徴とするストレッチ織物。
【請求項2】
該紡績糸の鞘成分がポリアミド系ポリマ、芯成分がポリエステル系ポリマからなることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ織物。
【請求項3】
紡績糸を用いた方向の洗濯収縮率が±2.5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のストレッチ織物。
【請求項4】
該複合繊維の芯成分/鞘成分の複合割合(重量%)が5/95〜80/20の範囲にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のストレッチ織物。
【請求項5】
該複合繊維の単繊維繊度が1.7dtex以下であり、かつ該単繊維を少なくとも一部に用いた紡績糸の繊度が50S以上20S以下であることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載のストレッチ織物。
【請求項6】
鞘成分がポリアミド系ポリマ、芯成分がポリエステル系ポリマからなる芯鞘構造の複合繊維を少なくともその一部に用いた紡績糸または芯鞘構造フィラメント糸をタテ糸またはヨコ糸に用い、該紡績糸と相対する方向に仮撚加工糸もしくはポリウレタン混用繊維を用いた織物の製造方法であって、150〜190℃で20〜360秒間、空気中あるいは不活性気体中で熱処理した後に、染色することを特徴とするストレッチ織物の製造方法。

【公開番号】特開2007−308812(P2007−308812A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136142(P2006−136142)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】