説明

ストレーナ及びその製造方法

【課題】ストレーナを通過する流体の流量を従来に増して多く確保することが可能なプリーツ状円筒体をなす濾過円筒体を備えたストレーナを提供する。
【解決手段】流路中に配置されて濾過作用により流体から異物除去を行うストレーナ10を、濾過材を周方向に沿って内径側と外径側とに交互に折り曲げて、全体としてプリーツ18が周方向に連なった形態のプリーツ状円筒体となした濾過円筒体12と、濾過円筒体12の軸方向各端のシール部材14,16とで構成する。そして軸方向の一端のシール部材14を濾過円筒体12のプリーツ18の径方向外側の空間を埋めて閉鎖し、プリーツ18の径方向内側の空間は流体の軸方向の通過用として開放する状態に一端をシールするものとなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体の流路中に配置されて濾過作用により流体から異物除去を行うストレーナ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の流路中に配置されて濾過作用により流体から異物除去を行うストレーナが各種分野で広く用いられている。
例えば水栓器具を設置するに際して、水栓器具自体若しくは水栓器具に給水を行う配管内の流路中に、かかるストレーナを配置し、給水から砂やごみ等の異物を除去することが行われている。
【0003】
従来、かかるストレーナとして目皿状のものを用い、これを流路を横切る状態に配置することが行われているが、この目皿状のストレーナは濾過面積が少なく、そのため給水中に混入していた砂やごみ等の異物が、目皿状のストレーナの給水の通過孔に噛み込んで部分的に目詰まりを起こすと、もともと多くない濾過面積が更に少なくなるとともに、給水がストレーナを通過する際の流路面積が少なくなり、十分な流量を確保することが難しくなってしまう。
【0004】
特に水栓器具の設置後の初期においては、工事の際に発生した砂やごみ等の異物を多く混入したまま給水がストレーナを通過することが多く、この場合一時的に多くの砂やごみ等の異物がストレーナに噛み込んでしまって、流路面積が大きく減少してしまうといったことが起こり得る。
【0005】
一方かかるストレーナとして、図13に示しているようにシート状の濾過材を周方向に沿って内径側と外径側とに交互に折り曲げて、全体としてプリーツ200が周方向に連なった形態のプリーツ状円筒体と成した濾過円筒体202の軸方向各端を、シール部材206,206でシールした形態のものが従来公知である。
この種形態のストレーナについては例えば下記特許文献1に開示されている。
この形態のストレーナの場合、濾過材自体は給水等の流体との接触面積即ち濾過面積を多く確保することができ、従って濾過円筒体202の部分においては流量を多く確保することが可能である。
【0006】
しかしながらこのストレーナにおいては、軸方向の一端のリング状のシール部材204がプリーツ200の径方向の内端から外端にかけて濾過円筒体202即ちプリーツ状円筒体の軸方向の各端面に嵌着されており、かかるリング状のシール部材204の個所においては、流体の通過可能な部分がシール部材204の中心部の小径の円孔208の部分に限られてしまうため、全体としてみるとこの図13に示すストレーナにおいては、十分な流量を確保することが難しいといった問題がある。
【0007】
尚、シート状の濾過材を周方向に沿って内径側と外径側とに交互に折り曲げ、全体としてプリーツ状円筒体となしたものについては、上記の他に下記特許文献2,3にも開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開昭64−34403号公報
【特許文献2】特開平11−267412号公報
【特許文献3】特開平2002−282614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情を背景とし、ストレーナを通過する流体の流量を従来に増して多く確保することが可能なプリーツ状円筒体をなす濾過円筒体を備えたストレーナを提供することを目的としてなされたものである。
また他の目的は、かかるストレーナを容易に製造できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して請求項1はストレーナに関するもので、このストレーナは、流体の流路中に配置されて濾過作用により該流体から異物除去を行うストレーナであって、(イ)シート状の濾過材を周方向に沿って内径側と外径側とに交互に折り曲げて、全体としてプリーツが周方向に連なった形態のプリーツ状円筒体となした濾過円筒体と、(ロ)該濾過円筒体の軸方向各端のシール部材と、を有し、且つ少なくとも一端のシール部材は、前記濾過円筒体の前記プリーツの径方向外側の空間を埋めて閉鎖し、該プリーツの径方向内側の空間は前記流体の軸方向の通過用として開放する状態に該一端をシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記各端のシール部材のうちの他端のシール部材は、前記濾過円筒体の前記プリーツの径方向外側の空間を埋めて閉鎖し、該プリーツの径方向内側の空間は前記流体の軸方向の通過用として開放する状態に該他端をシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0012】
請求項3のものは、請求項1において、前記各端のシール部材のうちの他端の前記シール部材は、前記濾過円筒体の径方向内側且つ軸方向端面の全体を埋めて閉鎖する状態に該他端をシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0013】
請求項4のものは、請求項3において、前記他端のシール部材は、前記プリーツの径方向外側の空間を埋めて閉鎖する状態に該他端をシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0014】
請求項5のものは、請求項3において、前記他端のシール部材は、前記プリーツの径方向外側の空間を流体の軸方向の通過用として開放する状態に該他端をシールするものとなしてあることを特徴とする。
【0015】
請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、前記濾過円筒体の前記プリーツが周方向に沿って複数のプリーツ群に分けられ、同一プリーツ群に属する各プリーツは径方向において同一方向の向きとされているとともに、各プリーツ群ごとにプリーツの径方向の向きが同一若しくは異なった向きとされていることを特徴とする。
【0016】
請求項7は、ストレーナの製造方法に関するもので、この製造方法は、請求項1〜6の何れかのストレーナの製造方法であって、前記濾過円筒体における前記プリーツの径方向外側の空間の断面形状に対応した断面形状の成形部を有する成形型を用い、前記一端のシール部材の成形空間を残して該成形部により該プリーツの径方向外側の空間を埋めた状態で、流動状態のシール材料を該成形空間に充填し固化させて、前記一端のシール部材を成形することを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0017】
以上のように請求項1のものは、プリーツ状円筒体をなす濾過円筒体を備えたストレーナにおいて、少なくとも濾過円筒体の軸方向の一端をシールするシール部材を、濾過円筒体のプリーツの径方向外側の空間を埋めて閉鎖し、プリーツの径方向内側の空間は流体の軸方向の通過用として開放する状態に濾過円筒体の一端をシールするようになしたもので、この請求項1によれば、濾過円筒体の一端をシールするシール部材が、プリーツの径方向内側の空間を流体の通過用として開放していることから、かかる請求項1のストレーナにおいては、流体がストレーナを通過する際の流量を多く確保することが可能である。
【0018】
本発明では、濾過円筒体の他端をシールするシール部材についても、プリーツの径方向外側の空間を埋めて閉鎖し、プリーツの径方向内側の空間を流体の軸方向の通過用として開放する状態に、他端をシールするようになしておくことができる(請求項2)。
【0019】
一方において本発明では、他端のシール部材を、濾過円筒体の径方向内側且つ軸方向端面の全体を埋めて閉鎖する状態に他端をシールするようになしておくこともできる(請求項3)。
この請求項3のストレーナは、流路が直角に折れ曲った個所に配置され、流路から異物除去するストレーナに適用して好適である。
この場合、流体がストレーナを径方向に通過して軸方向の一端から軸方向に流出し、若しくは軸方向一端から流体がストレーナ内部に流入し、そして濾過円筒体を径方向に通過して、外側に流出するように配置しておくことで、ストレーナを通過する流体の流量を多く確保することが可能である。
【0020】
この請求項3のストレーナにおいては、他端のシール部材を、プリーツの径方向外側の空間をも埋めて閉鎖するものとなしておくこともできるが(請求項4)、請求項5に従ってその他端のシール部材を、プリーツの径方向外側の空間を流体の軸方向の通過用として開放する状態に他端をシールするようになしておくことができる。
この場合には、ストレーナを軸方向に直線状をなす流路に配置し、流体を軸方向の一端からストレーナ内部に流入させた上で、濾過円筒体を径方向外側に通過させ、そして軸方向の他端から流出させるようにして或いはその逆に流体を流通させることで濾過作用を行わせることが可能であり、この場合においてもストレーナ全体を通過する流体の流量を多く確保することが可能である。
【0021】
本発明では、濾過円筒体のプリーツを周方向に沿って複数のプリーツ群に分け、同一のプリーツ群に属する各プリーツは径方向において同一方向の向きとなし、また各プリーツ群ごとにプリーツの径方向向きを同一若しくは異なった向きとなしておくことができる(請求項6)。
この請求項6によれば、上記軸方向の一端のシール部材を容易に成形することができる。
【0022】
次に請求項7は、請求項1〜6の何れかのストレーナの製造方法であって、この製造方法では、濾過円筒体の一端のシール部材を成形するに際し、プリーツの径方向外側の空間の断面形状に対応した断面形状の成形部を有する成形型を用い、上記一端のシール部材の成形空間を残して、その成形部によりプリーツの径方向外側の空間を埋めた状態で、流動状態のシール材料を成形空間に充填及び固化させて、一端のシール部材を成形するものである。
【0023】
この製造方法によって、軸方向の一端でプリーツの径方向の外側空間を埋めるシール部材を成形することができる。
特に請求項6に従って濾過円筒体のプリーツを周方向に沿って複数のプリーツ群に分け、同一プリーツ群に属するプリーツを径方向において同一方向の向きとなし、また各プリーツ群ごとにプリーツの径方向の向きを同一若しくは異なった向きとなした場合、この請求項7の製造方法によれば容易に軸方向の一端のシール部材を成形でき、かかるシール部材を備えたストレーナを容易に製造することができる。
【0024】
周方向に連なったプリーツのそれぞれが、濾過円筒体の軸心を中心として径方向に放射状に設けられている場合、即ち各プリーツの全てが径方向において異なった向きをなしている場合、軸方向の一端のシール部材を成形するのに困難を伴うが、周方向に連なったプリーツを請求項6に従って構成した場合、シール部材の成形型の径方向の分割数を少なくでき、型締め及びシール部材の成形後における脱型を容易に行うことができ、ひいてはシール部材を容易に成形することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び図2において、10は本実施形態のストレーナで、濾過材から成る濾過円筒体12と、軸方向各端のシール部材14,16とから成っている。
濾過円筒体12は、小孔から成る流体の通過孔を多数分散して有するシート状の濾過材を周方向に沿って内径側と外径側とに交互に折り曲げ、全体としてプリーツ18が周方向に連なった形態のプリーツ状円筒体となしてあり、流体がこの濾過円筒体12を径方向に通過する際に、流体のみを通過孔を通じて通過させ、砂やごみその他の異物を不通過として濾過作用によりこれを流体から除去する。
【0026】
この実施形態では、濾過円筒体12における各プリーツ18が、その軸心を中心として径方向に放射状に形成されており、従って各プリーツ18は、全てが互いに径方向において別々の向きをなしている。
尚この濾過円筒体12において、濾過材としては金属メッシュや多数の通過小孔を打ち抜いた金属板その他様々なものを用いることが可能である。
【0027】
一方、ストレーナ10における軸方向の一端のシール部材14は、外周形状が濾過円筒体12におけるプリーツ18の径方向の外端より僅かに大径の円形状をなしている。
このシール部材14は、その軸心に向って径方向内方に突出する多数の断面山形状の充填部20を有し、それらが周方向に連なって形成されている。
【0028】
シール部材14は、図2(C)に詳しく示しているように、これら充填部20が濾過円筒体12における各プリーツ18の径方向外側の空間、即ち隣接するプリーツ18の山部と山部との間の谷部空間に充填されて同空間を埋め、これを閉鎖する状態に、濾過円筒体12の軸方向の一端に固着されている。
従って濾過円筒体12における軸方向の一端においては、各プリーツ18の径方向内側の空間、詳しくは各プリーツ18それぞれの山部の内側空間は開放されたままであり、従って流体はそのプリーツ18の内側空間を軸方向に通過可能である。
【0029】
本実施形態では、軸方向の他端のシール部材16もまた、一端のシール部材14と同形状をなしており、且つ同じシール構造で濾過円筒体12の他端をシールしている。
尚、シール部材14の材質はここでは樹脂製とされているが、これをゴムその他の材質となすことも可能である。
【0030】
上記実施形態では、軸方向の他端のシール部材16が、一端のシール部材14と同一の構成とされているが、図3に示しているようにこの軸方向の他端のシール部材16は、濾過円筒体12における各プリーツ18の径方向外側の空間、即ち隣接するプリーツ18と18との各山部の間の谷部空間を埋めるのみならず、濾過円筒体12の径方向内側の端面全体を埋めて閉鎖し、同他端をシールするものとなしておくことができる。
【0031】
図4は、上記ストレーナ10の使用例を示したものである。
図示のようにこの使用例は、直角に折れ曲った流路22の折れ曲り部にストレーナ10を配置した例である。
この例では、上流側の流路(図中実線若しくは2点鎖線で示す流路)22Aを図中下向きに流れてきた流体が、ストレーナ10を径方向外側から内側に通過し、その後ストレーナ10の軸方向の一端から下流側の流路22Bに図中左向きに流出する。
ストレーナ10は、その際に濾過円筒体12の濾過作用によって流体から砂やごみ等の異物を濾過し、流体からこれを除去作用する。
【0032】
尚これとは反対に、流体をストレーナ10の一端開口からその内部に流入させ、その後流体を濾過円筒体12を径方向に通過して図中上向きに流出させるようになすこともできる。
その場合においても、ストレーナ10は同様の濾過作用によって流体から異物を除去作用する。
尚この図4に示す使用例において、ストレーナ10として図1,図2に示すストレーナ及び図3に示すストレーナの何れも使用可能である(但し図1,図2に示すストレーナ10を用いる場合には、流路22Aを2点鎖線で示す流路とする)。
【0033】
図5は、図1及び図2に示すストレーナ10の使用例を示している。
この例は、上流側の流路22Aから直角に折れ曲った流路22Bに、更に円筒部24の上端にて構成された弁座26を乗り越えて円筒部24の内側の流路22Cに流体が流れる流路22上に、流体の流通を制御する制御弁28を設け、この制御弁28を弁座26に着座させて(閉弁させて)流体の流通を遮断し、またこれを弁座26から図中上向きに離間させて(開弁させて)流体を流通可能となし且つ開弁量に応じて流体の流量を制御するようになしたもので、その弁座26の上流側の流路22Bにストレーナ10が配置されている。
【0034】
詳しくは、円筒部24と内面形状が円形の壁部29との間の円筒状の空間に、ストレーナ10を円筒部24に対し外嵌状態に、また壁部29に対し内嵌状態に組み込んで、かかるストレーナ10にて濾過作用を行うようになした例である。
【0035】
こうした場合、従来にあっては通常流路22Aに且つこれを横切るように目皿状のストレーナを設置して、そこで異物除去を行うようにするが、その場合、ストレーナにおける濾過面積を十分大きく取ることができず、従って目皿状のストレーナに異物が噛み込んで部分的に目詰まりすると、ストレーナを通過する流体の流量が大きく減少してしまう。
【0036】
しかるに図5に示すように円筒部24と壁部29との間に形成されている円筒状の空間を利用して、そこに同じく円筒状をなすストレーナ10を組み込み、そこで濾過作用によって異物除去を行うようにすることで、円筒状の空間を有効に活用することができるとともに、ストレーナ10と流体との間、詳しくは濾過材と流体との接触面積つまり濾過面積を大きく確保することができ、また部分的に濾過材が目詰まりを起こすようなことがあっても、十分な流量で流体がストレーナ10を通過できるようになすことができる。
【0037】
以上のように本実施形態によれば、濾過円筒体12の一端をシールするシール部材14が、プリーツ18の径方向内側の空間を流体の通過用として開放していることから、かかる本実施形態のストレーナ10によれば、流体がストレーナ10を通過する際の流量を多く確保することができる。
【0038】
図6は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、軸方向の他端のシール部材16を、濾過円筒体12の径方向内側且つ軸方向端面の全体を埋めて閉鎖し、且つプリーツ18の径方向外側の空間を、流体の軸方向の通過用として開放する状態にその他端をシールするものとなしたものである。
【0039】
この実施形態のストレーナ10は、直線状をなす流路22に配置して使用することができる。
この場合、上流側の流路22Aから図中下向きに流れてきた流体は、ストレーナ10の上端の開口を通じて内側に流入し、そして濾過円筒体12を径方向外側に通過して流れた上、濾過円筒体12の各プリーツ18の径方向外側空間、即ち周方向に隣接する各プリーツ18の山部と山部との間の谷部空間を通って、下流側の流路22Bに図中下向きに軸方向に流出することができる。
【0040】
そして流体がこのストレーナ10を軸方向に通過する過程で、流体に混入している砂やごみ等の異物がストレーナ10の濾過作用にて除去される。
尚、流体の流れが図6中下から上向きに流れる場合においても同様である。
このときには流体が上記とは逆方向にストレーナ10を通過して、図中上向きに流出することとなる。
【0041】
図7及び図8は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例は、濾過円筒体12における各プリーツ18を、周方向に沿って図中上半分のプリーツ群18-1と、下半分のプリーツ群18-2と分け、上半分のプリーツ群18-1に属する各プリーツを全て図中上下の同一方向、即ち径方向の同一方向の向きとなし、また下半分のプリーツ群18-2に属する各プリーツ18もまた、全て同一の上下方向、即ち径方向の同一方向の向きとなしたものである。
即ちこの実施形態では、全てのプリーツ18が何れも図中上下方向の同一方向の向きとされている。
【0042】
尚この実施形態において、軸方向の一端のシール部材14,他端のシール部材16の何れも、図1に示したものと同様に各プリーツ18の径方向外側の空間を埋めてシールし、プリーツ18の径方向内側の空間を流体の軸方向の通過用として開放する状態に一端と他端とをシールするものとなしてある。
【0043】
この実施形態では、各プリーツ18の横断面形状が図中上下方向に長い矩形状となしてあるが、径方向の内方側に進むに連れて幅の細くなる断面山形状となしておくことも可能であるし、またそれ以外にも他の様々な断面形状で形成しておくことが可能である。
【0044】
図9〜図11は、図7及び図8に示すストレーナ10の製造方法、詳しくは一端のシール部14の成形方法の一例を示している。
図9において、30は成形型で、プリーツ状円筒体から成る濾過円筒体12の内側に挿入されるコア型32と、外側の外型34とを有している。
外型34は、図10にも示しているようにプリーツ18の径方向外側の空間の断面形状に対応した断面形状の成形部36を有しており、またコア型32は、プリーツ18の径方向内側の空間の断面形状に対応した断面形状の成形部38を有している。
【0045】
また外型34の成形部36は、濾過円筒体12の軸長よりも短く、濾過円筒体12の上端と下端とにおいて、シール部材14と16とを成形するための成形空間40,42を成形している。
更に外型34は、図10に示しているように一対の分割型34-1と34-2とに図中上下に分割可能な2分割構造とされている。
更に成形型30は、図9に示すように上型44と下型46とを有しており、その下型46にコア型32が一体に構成されている。
【0046】
この例の製造方法では、濾過円筒体12を成形型30にセットした状態で、成形空間40,42にシール材料、ここでは樹脂材料を流動状態で充填し、そしてこれを固化させることで一端のシール部材14と、他端のシール部材16とを成形し、且つこれを濾過円筒体12に一体に固着状態とする。
そして図11に示しているように外型34を分割型34-1と34-2とに図中上下に2分割することで、成形品即ちストレーナ10を脱型することができる。
図7及び図8に示すストレーナ10はこのようにして簡単に製造することができる。
【0047】
尚、図1に示す実施形態のストレーナ10もまた、上記と同様の方法にて製造することができる。
詳しくはシール部材14,16を上記と同様の方法にて成形することができる。
但しこの場合には、図12に示しているように外型34をプリーツ18の数だけ径方向の分割構造としなければならず、シール部14,16の成形に多くの困難を伴う。
しかるに図7,図8のストレーナ10にあっては、単に外型34を2分割構造とするだけで、簡単にシール部14,16を成形することができる。
【0048】
尚、図3に示すストレーナ10の他端のシール部16を成形するには、図9に示すコア型32の成形部38を、外型34の成形部36と同じ高さまでのものとしておくことで、シール部16を容易に成形することができる(但しこの場合にはストレーナ10が上記で説明したのとは上下逆向きの状態で成形されることになる)。
【0049】
図7,図8に示すストレーナ10は、プリーツ18が上プリーツ群18-1と下プリーツ群18-2とに2つに分けられ、且つ何れのプリーツも同一方向の向きとされているが、各プリーツを周方向に沿って3つないしそれ以上のプリーツ群に分け、同一プリーツ群に属するプリーツについては何れも径方向に同一の方向の向きとなし、また異なるプリーツ群の間ではプリーツの向きを径方向において異なる向きとなしておくことも可能である。
この場合には、外型34を径方向に3ないしそれ以上の分割構造とすることで、図9〜図11に示したのとほぼ同様の成形方法で容易にシール部14,16を成形することができる。
【0050】
また図9に示す外型34の成形部36及びコア型32の成形部38の高さを適宜変えることによって、図6に示すストレーナ10の他端のシール部材16を成形することも可能である。
【0051】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において、種々変更を加えた形態・態様で構成・実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態のストレーナを示した斜視図である。
【図2】同実施形態のストレーナを側面図,側面断面図,横断面図で示した図である。
【図3】本発明の他の実施形態のストレーナを示した図である。
【図4】ストレーナの使用例を示した図である。
【図5】図4とは異なるストレーナの使用例を示した図である。
【図6】本発明の他の実施形態を使用例とともに示した図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態を示した斜視図である。
【図8】同実施形態を側面図,側面断面図,横断面図で示した図である。
【図9】図7及び図8に示す実施形態の製造方法の要部工程を示した図である。
【図10】図9におけるイ−イ断面図,ロ−ロ断面図,ハ−ハ断面図である。
【図11】同製造方法の他の要部工程を示した図である。
【図12】図1及び図2に示す実施形態の製造方法の要部工程を示した図である。
【図13】従来のストレーナの一例を示した図である。
【符号の説明】
【0053】
10 ストレーナ
12 濾過円筒体
14,16 シール部材
18 プリーツ
18-1 上プリーツ群
18-2 下プリーツ群
22,22A,22B,22C 流路
30 成形型
36,38 成形部
40,42 成形空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路中に配置されて濾過作用により該流体から異物除去を行うストレーナであって、
(イ)シート状の濾過材を周方向に沿って内径側と外径側とに交互に折り曲げて、全体としてプリーツが周方向に連なった形態のプリーツ状円筒体となした濾過円筒体と、(ロ)該濾過円筒体の軸方向各端のシール部材と、を有し、
且つ少なくとも一端のシール部材は、前記濾過円筒体の前記プリーツの径方向外側の空間を埋めて閉鎖し、該プリーツの径方向内側の空間は前記流体の軸方向の通過用として開放する状態に該一端をシールするものとなしてあることを特徴とするストレーナ。
【請求項2】
請求項1において、前記各端のシール部材のうちの他端のシール部材は、前記濾過円筒体の前記プリーツの径方向外側の空間を埋めて閉鎖し、該プリーツの径方向内側の空間は前記流体の軸方向の通過用として開放する状態に該他端をシールするものとなしてあることを特徴とするストレーナ。
【請求項3】
請求項1において、前記各端のシール部材のうちの他端の前記シール部材は、前記濾過円筒体の径方向内側且つ軸方向端面の全体を埋めて閉鎖する状態に該他端をシールするものとなしてあることを特徴とするストレーナ。
【請求項4】
請求項3において、前記他端のシール部材は、前記プリーツの径方向外側の空間を埋めて閉鎖する状態に該他端をシールするものとなしてあることを特徴とするストレーナ。
【請求項5】
請求項3において、前記他端のシール部材は、前記プリーツの径方向外側の空間を流体の軸方向の通過用として開放する状態に該他端をシールするものとなしてあることを特徴とするストレーナ。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかにおいて、前記濾過円筒体の前記プリーツが周方向に沿って複数のプリーツ群に分けられ、同一プリーツ群に属する各プリーツは径方向において同一方向の向きとされているとともに、各プリーツ群ごとにプリーツの径方向の向きが同一若しくは異なった向きとされていることを特徴とするストレーナ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかのストレーナの製造方法であって、
前記濾過円筒体における前記プリーツの径方向外側の空間の断面形状に対応した断面形状の成形部を有する成形型を用い、前記一端のシール部材の成形空間を残して該成形部により該プリーツの径方向外側の空間を埋めた状態で、流動状態のシール材料を該成形空間に充填し固化させて、前記一端のシール部材を成形することを特徴とするストレーナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−136733(P2009−136733A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314014(P2007−314014)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】