説明

スパイラル型分離膜エレメント及びその製造方法

【課題】エレメントの変形や高圧の負荷に対しても、中心管の周囲の封止部のシール性を十分維持して、所定の性能が発現できるスパイラル型分離膜エレメント、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管2の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型膜エレメントにおいて、前記中心管2の外周面と前記分離膜の内周側端部との間に介在する接着樹脂により内周側封止部が形成されていると共に、少なくともその内周側封止部によって前記中心管2に外挿された環状板1が前記分離膜の端辺の内周側に固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えるスパイラル型分離膜エレメント、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過、気体分離、脱ガス等に用いられる流体分離エレメントとして、例えば、供給側流体を分離膜表面へ導く供給側流路材、供給側流体を分離する分離膜、分離膜を透過し供給側流体から分離された透過側流体を中心管へと導く透過側流路材からなるユニットを、中心管の周りに巻き付けたスパイラル型分離膜エレメントが知られている。
【0003】
図4はスパイラル型分離膜エレメントの一部切り欠き斜視図である。図4に示すスパイラル型分離膜エレメントは、透過側流路材5の両面に分離膜6を重ね合わせて3辺を接着することにより封筒状膜3を形成し、その封筒状膜3の開口部を中心管2に取り付け、供給側流路材4と共に中心管2の外周面に巻き回すことにより製造される。
【0004】
図4に示すように、供給側流体51はスパイラル型分離膜エレメントの一方の端面側から供給される。供給された供給側流体51は供給側流路材4に沿って流れ、スパイラル型分離膜エレメントの他方の端面側から濃縮流体53として排出される。供給側流体51が供給側流路材4に沿って流れる過程で、分離膜6を透過した透過側流体52が透過側流路材5に沿って中心管2の内部に流れ込み、中心管2の端部から排出される。このようなスパイラル型分離膜エレメントは、透過側流路材5を挟んで封筒状に形成された分離膜6および供給側流路材4からなる1組または複数組の素材(ユニット)群を有する。
【0005】
図5は複数組の素材群を有するスパイラル型分離膜エレメントの軸方向の断面図、図6は図5のスパイラル型分離膜エレメントのA−A断面図、図7は図5のスパイラル型分離膜エレメントの端面を示す要部図である。スパイラル型分離膜エレメントの製造の際には、透過側流路材5を介して背中合わせとなる各2枚の分離膜6の両端を接着剤で接着しながら、図6および図7に示すように、中心管2の外周面に渦巻き状に巻き付ける。そして、図5に示すように、中心管2に巻き回された素材群の両端面に環状のシールキャリア8を取り付ける。
【0006】
上記スパイラル型分離膜エレメントは、図6および図7に示すように、中心管2の外周面には封筒状膜3の先端16が接することとなり、封筒状膜3の先端16の両側に三角形の隙間が生じる。また、中心管2近傍では巻き回しの曲率半径が小さく透過側流路材5の反発力大きく、このため中心管2近傍の透過側流路材5と中心管2あるいは封筒状膜3の先端16との間に隙間が生じる。
【0007】
以上様々な要因により、中心管2近傍では中心管2、透過側流路材5と封筒状膜3先端16の密着性低く、気密性(シール性)が十分に保てない。このため、中心管2、透過側流路材5と封筒状膜3先端16の間の気密性を向上させるため、中心管2の外周面を取り囲む端部に接着樹脂を塗布することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
一方、スパイラル型分離膜エレメントの用途や使用条件により、加熱/冷却あるいは加圧/減圧が繰り返えされる事があるが、この場合スパイラル型分離膜エレメントの各部に応力が繰り返しかかる事になる。また、濁質分を含むあるいは高粘度の供給側流体を処理する場合、供給側流路材4を供給側流体が流れる際、大きな圧力損失が発生しスパイラル型分離膜エレメントの軸方向に変形させる力が働く。
【0009】
しかしながら、上記のような中心管2の外周面の接着樹脂は、隙間の開口端に蓋をしているだけの状態であり、エレメント使用時の応力変形により、隙間の開口端部の接着面の剥離が生じ易い。また、スパイラル型分離膜エレメントの使用条件によっては高圧力での運転となるため、開口部に蓋をしている接着樹脂の陥没変形/破損が生じ易い。これらの結果、供給側流体の一部が接着面の剥離部分を通って中心管の内部に流入し、これにより透過側流体が汚染され、スパイラル型分離膜エレメントの所定性能が発現できなくなるという問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開平11−165048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、エレメントの変形や高圧の負荷に対しても、中心管の周囲の封止部のシール性を十分維持して、所定の性能が発現できるスパイラル型分離膜エレメント、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明のスパイラル型膜エレメントは、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型膜エレメントにおいて、前記中心管の外周面と前記分離膜の内周側端部との間に介在する接着樹脂により内周側封止部が形成されていると共に、少なくともその内周側封止部によって前記中心管に外挿された環状板が前記分離膜の端辺の内周側に固着されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のスパイラル型膜エレメントによると、中心管の外周面と分離膜の内周側端部との隙間の中に樹脂が充填されているため、圧力・温度の繰り返し変化あるいは供給側流体の圧力損失でスパイラル型分離膜エレメントが変形する事があっても、接着樹脂の剥離が起こらない。また、高圧が付与された場合でも環状板が保護材となって、陥没変形/破損が生じることがない。従って、エレメント使用時に受ける圧力・温度の繰り返し変化あるいは供給側流体の圧力損失でスパイラル型分離膜エレメントが変形する、あるいは、開口部に蓋をしている接着樹脂に高圧がかかることがあっても、所定性能が発現可能となる。つまり、エレメントの変形や高圧の負荷に対しても、中心管の周囲の封止部のシール性を十分維持して、所定の性能が発現できるスパイラル型分離膜エレメントとなる。
【0014】
上記において、前記中心管の外寸をMとするとき、前記環状板の内寸Aが、M×1.0〜M×1.1の範囲にあり、外寸Bが、M×1.3〜M×2.0の範囲にあることが好ましい。ここで、中心管又は環状板の外寸とは、円形の場合には外径を指し、環状板の内寸とは、円形の場合には内径を指すが、円形以外の形状の場合は、同一面積の円形に近似して同様に算出する。
【0015】
環状板の内寸AがMの1.1倍よりも大きくなると、内周側封止部を保護する効果が小さくなる傾向がある。また、環状板の外寸BがMの1.3倍より小さくなると、内周側封止部を保護する効果が小さくなる傾向があり、また、Mの2.0倍を越えると、供給側流路を塞いでしまうため、偏流が発生して所定性能を発現しにくくなる傾向がある。
【0016】
一方、本発明の製造方法は、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とを積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回して円筒状巻回体を形成する工程と、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部を形成する工程とを有するスパイラル型膜エレメントの製造方法において、前記中心管に外挿した環状板を前記分離膜の端辺側に押し付けることにより、前記中心管の外周面と前記分離膜の内周側端部との間に接着樹脂を進入させる工程と、その接着樹脂により前記環状板を固着しつつ前記中心管の外周面と前記分離膜の内周側端部との間に内周側封止部を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明の製造方法によると、中心管に外挿した環状板を分離膜の端辺側に押し付けるため、中心管の外周面と分離膜の内周側端部との間に接着樹脂を進入させることができ、圧力・温度の繰り返し変化あるいは供給側流体の圧力損失でスパイラル型分離膜エレメントが変形する事があっても、接着樹脂の剥離が起こらない構造となる。また、接着樹脂により環状板を固着するため、高圧が付与された場合でも環状板が保護材となって、接着樹脂に陥没変形/破損が生じることがない。従って、エレメントの変形や高圧の負荷に対しても、中心管の周囲の封止部のシール性を十分維持して、所定の性能が発現できるスパイラル型分離膜エレメントを製造することができる。
【0018】
上記において、前記接着樹脂が初期粘度が2Pa・s〜60Pa・sであり、かつ、5分後の粘度が100Pa・s以上となる2液混合接着剤であることが好ましい。接着樹脂が初期粘度がこの範囲であると、環状板の押し付けにより、中心管の外周面と分離膜の内周側端部との間に接着樹脂を容易に進入させることができ、5分後の粘度がこの範囲であると、環状板の固着が外力による変形を受けにくくなり、内周側封止部のシール性をより確実に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のスパイラル型分離膜エレメントの一例を示す軸方向の断面図である。図2は図1のスパイラル型分離膜エレメントの端面を示す要部図である。図3は図1のスパイラル型分離膜エレメントのB−B断面図である。
本発明のスパイラル型分離膜エレメントは、図1〜図3に示すように、分離膜6、供給側流路材4、及び透過側流路材7が、積層状態で有孔の中心管2の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備える。また、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられ、封止部には、両端封止部7と外周側封止部も含まれる。
【0020】
透過側流路材5を介して対向する分離膜6の軸方向の両端は両端封止部7により封止され、図2に示すように、スパイラル状に配置された複数の両端封止部7の間には、供給側流路材4が介在する。また、透過側流路材5を介して対向する分離膜6の外周側端部は、軸方向に沿って形成された外周側封止部により封止されている。
【0021】
上記の円筒状巻回体は、分離膜6と供給側流路材4と透過側流路材5とを積層状態で有孔の中心管2の周囲にスパイラル状に巻回して円筒状巻回体を形成する工程と、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部を形成する工程とによって製造することができる。本実施形態では、複数の分離膜6の各々を略中央で屈曲させて、供給側流路材4を挟み込み、複数の分離膜6同士の間に透過側流路材5を介在させて積層する場合の例を示す。
【0022】
この実施形態では、まず、分離膜6を二つ折りにした間に供給側流路材4を配置したものと透過側流路材5とを積み重ね、供給流体と透過流体の混合を防ぐ封止部を形成するための接着剤を、透過側流路材5の軸方向両端部及び巻回終端部に塗布した分離膜ユニットを準備する。
【0023】
分離膜6としては、逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜などが好適に使用できるが、これに限定されるものではない。透過側流路材5を介して背中合わせとなる各2枚の分離膜6の両端部は、接着剤で互いに接着されることにより、複数の封筒状膜3が形成される。封筒状膜3の内部は、中心管2(集水管)の内部に連通している。
【0024】
供給側流路材4には、ネット状材料、編物状材料等が使用できる。透過側流路材5にはネット状、編み物状材料等が使用できる。有孔の中心管2は、管の周囲に開孔を有するものであればよく、従来のものが何れも使用できる。
【0025】
両端封止部7と外周側封止部を形成するための接着剤としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等、従来公知のいずれの接着剤も使用することができる。また、ホットメルト接着剤、熱融着型粘着テープ、熱融着性シートなどを用いて形成することも可能である。
【0026】
次に、上記の分離膜ユニットの複数を積層し、有孔の中心管2の周囲にスパイラル状に巻回した後、接着剤などを熱により硬化等させることで、円筒状巻回体を得るが、本発明では、その形成工程の際又は形成工程の後に、中心管の外周部に内周側封止部17を形成する。なお、円筒状巻回体は、軸方向長さを調整するために、必要に応じて両端部にトリミング等を行うことも可能である。
【0027】
本発明の製造方法は、中心管2に外挿した環状板1を分離膜6の端辺側に押し付けることにより、中心管2の外周面と分離膜6の内周側端部16との間に接着樹脂を進入させる工程と、その接着樹脂により環状板1を固着しつつ、中心管2の外周面と分離膜6の内周側端部16との間に内周側封止部17を形成する工程とを有する。
【0028】
手順としては、中心管2と、透過側流路材5と封筒状膜3先端との間に生じた隙間に対してまず接着樹脂を塗布し、隙間開口部に樹脂で蓋をする、続いて、環状板1にて接着樹脂を隙間に押し込むと同時に、環状板1を中心管2の外周面を取り囲む端部に貼り付ける。
【0029】
この接着樹脂としてはウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を用いることができ、好ましくは、接着樹脂は隙間の中に充填された時点の形状を保持する物が好ましい。さらに詳しくは、接着樹脂が揺変性の接着剤、あるいはホットメルト樹脂であることが好ましい。特に、前述の理由から、初期粘度が2Pa・s〜60Pa・sであり、5分後粘度が100Pa・s以上となる2液混合接着剤であることがより好ましい。
【0030】
環状板1は、樹脂、金属、セラミックス等いずれでも良いが、スパイラル型分離膜エレメントの使用雰囲気に対して耐性のあるものを使用するのが好ましい。環状板1の寸法については、中心管2の外寸をMとするとき、環状板1の内寸Aが、M×1.0〜M×1.1の範囲にあり、外寸Bが、M×1.3〜M×2.0の範囲にあることが、前述の理由から好ましい。
【0031】
また、製造上好ましい理由は次の通りである。環状板1の内寸Aが中心管2の外寸Mよりも小さくなると、環状板1を装着することが物理的に不可能となる。また、外寸Mの1.1倍よりも大きくなると、中心管2の外周界面に生じた隙間に接着樹脂を押し込めなくなり、発明の目的を達成できなくなる。環状板1の外寸Bが外寸Mの1.3倍より小さくなると、全ての隙間に樹脂を押し込めなくなる。また、外寸Mの2.0倍を越えると、供給側流路を塞ぎ偏流が発生し易くなる。
【0032】
また、環状板1の厚みは0.3mm〜5.0mmの範囲にあることが好ましい。0.3mmより薄いと、高圧に対する保護効果小さくなる傾向がある。5.0mmより厚いと、シールキャリア等の部品取り付けスペースが確保できなくなる傾向がある。
【0033】
上記のような環状板1の押し付けによって、中心管2の外周面と分離膜6の内周側端部16との間に接着樹脂を進入させることができるが、本発明では、環状板1からの距離が2〜10mmの位置まで接着樹脂を進入させることが好ましい。これによって、より確実に、エレメントの変形や高圧の負荷に対しても、中心管の周囲の封止部のシール性を十分維持することができる。
【0034】
分離膜ユニットを積層する際の数量は、必要とされる透過流量に応じて決まるものであり、1層以上であればよいが、操作性を考慮すると100層程度が上限である。但し、本発明では、エレメントの変形や高圧の負荷に対しても、中心管の周囲の封止部のシール性を十分維持する観点から、中心管2の外周長さ10mmあたり、1〜4層を積層する場合に本発明が特に有効となる。なお、分離膜ユニットUの積層数量が大きいほど、各分離膜ユニットの巻回回数が少なくなる。
【0035】
本発明のスパイラル型膜エレメントは、通常、外装材により拘束されて拡径しない構造になっているが、外装材は、円筒状巻回体の表面に単数又は複数のシートを巻回することができる。外装材としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ガラス繊維布等が使用できる。
【0036】
本発明のスパイラル膜エレメントには、図1に示すように、中心管2に巻き回された円筒状巻回体の両端にはシールキャリア8が取り付けられている。更に変形(テレスコープ等)を防止するための有孔の端部材や、シール材、補強材などを必要に応じて設けることができる。
【0037】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、2つの環状板が分離膜の軸方向両側の端辺の内周側に固着されている例を示したが、本発明における環状板は、軸方向両側の少なくとも何れかに設けられていればよい。
【0038】
(2)前述の実施形態では、環状板の外形が円形である例を示したが、本発明では、環状板の外形は、中心管の外周に形成された内周側封止部を覆う部分が存在する限り、特に限定されない。例えば多角形や星形などでもよく、またテレスコープ防止部材と一体化されたような形状でもよい。
【0039】
(3)前述の実施形態では、本発明の製造方法により本発明のスパイラル膜エレメントを製造する場合の例を示したが、本発明のスパイラル膜エレメントは他の方法で製造したものでもよく、予め環状板以外の治具等で、接着樹脂を内周側封止部に充填した後、環状板を接着樹脂で固着するなどしてもよい。
【0040】
(4)前述の実施形態では、複数の分離膜を用いて、各々を略中央で屈曲させたものを積層する例を示したが、本発明では、連続した分離膜を用いて、交互に複数屈曲させる際に、透過側流路材と供給側流路材とを介在させることにより、外周側封止部を省略したスパイラル型分離膜エレメントとしてもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0042】
実施例1
スパイラル型分離膜エレメントの製造工程において、中心管の外周近傍に発生した長さ5mm、幅2mmの隙間に対して、揺変性ウレタン樹脂(フーラー社製、UR−3501)を3g塗布し、環状板(厚み0.7mm、内径39.3mm、外径56.0mm、材質ABS樹脂)を押し付け貼り付けた。なお、中心管外径は38.5mmである。隙間の中への樹脂充填深さは、7mmであった。
【0043】
比較例1
環状板を使用せずに、中心管外周近傍に発生した同じ形状の隙間に対して、揺変性ウレタン樹脂を同量塗布して、そのまま硬化させたこと以外は、実施例1と同じ条件でスパイラル型分離膜エレメントを作製した。その結果、隙間の中への樹脂充填深さは、1mmであった。
【0044】
以上の結果より、実施例1では比較例1の7倍の深さまで樹脂が充填されており、圧力・温度変化あるいはスパイラル型分離膜エレメントの変形、あるいは、高圧に対する耐性が向上し、信頼性の高いスパイラル型分離膜エレメントが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のスパイラル型分離膜エレメントの一例を示す軸方向の断面図
【図2】図1に示すスパイラル型分離膜エレメントの端面を示す要部図
【図3】図1に示すスパイラル型分離膜エレメントのB−B断面図
【図4】従来のスパイラル型分離膜エレメントを示す一部切り欠き斜視図
【図5】従来のスパイラル型分離膜エレメントを示す軸方向の断面図
【図6】図5のスパイラル型分離膜エレメントのA−A断面図
【図7】図5のスパイラル型分離膜エレメントの端面を示す要部図
【符号の説明】
【0046】
1 環状板
2 中心管
3 封筒状膜
4 供給側流路材
5 透過側流路材
6 分離膜
7 両端封止部
8 シールキャリア
16 膜の内周側端部(膜先端)
17 膜の内周側封止部
51 供給側流体
52 透過側流体
53 濃縮流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型膜エレメントにおいて、
前記中心管の外周面と前記分離膜の内周側端部との間に介在する接着樹脂により内周側封止部が形成されていると共に、少なくともその内周側封止部によって前記中心管に外挿された環状板が前記分離膜の端辺の内周側に固着されていることを特徴とするスパイラル型分離膜エレメント。
【請求項2】
前記中心管の外寸をMとするとき、前記環状板の内寸Aが、M×1.0〜M×1.1の範囲にあり、外寸Bが、M×1.3〜M×2.0の範囲にある請求項1記載のスパイラル型分離膜エレメント。
【請求項3】
分離膜と供給側流路材と透過側流路材とを積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回して円筒状巻回体を形成する工程と、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部を形成する工程とを有するスパイラル型膜エレメントの製造方法において、
前記中心管に外挿した環状板を前記分離膜の端辺側に押し付けることにより、前記中心管の外周面と前記分離膜の内周側端部との間に接着樹脂を進入させる工程と、その接着樹脂により前記環状板を固着しつつ前記中心管の外周面と前記分離膜の内周側端部との間に内周側封止部を形成する工程とを有することを特徴とするスパイラル型分離膜エレメントの製造方法。
【請求項4】
前記接着樹脂が初期粘度が2Pa・s〜60Pa・sであり、かつ、5分後の粘度が100Pa・s以上となる2液混合接着剤である請求項3に記載のスパイラル型分離膜エレメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−326376(P2006−326376A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149036(P2005−149036)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】