説明

スパイラル型逆浸透膜エレメント、その製造方法およびその使用方法

【課題】 封止樹脂を十分に含浸し得る構造の多孔性支持体を用いることにより膜リーフ端部に於ける封止樹脂の含浸性を改善し、微小リークを効果的に防止可能なスパイラル型逆浸透膜エレメント、その製造方法及びその使用方法を提供する。
【解決手段】 分離膜1と供給側流路材2と透過側流路材3とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型逆浸透膜エレメントであって、前記透過側流路材3を介して対向する分離膜は、多孔性支持体上にスキン層を有する構造であり、前記分離膜1の縁部には封止樹脂により封止された封止部が設けられており、前記封止樹脂は、多孔性支持体に於いて少なくともスキン層の近傍まで含浸されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に浮遊及び溶存している成分を分離するスパイラル型逆浸透膜エレメントに関し、より詳しくは、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部を接着剤により形成する際に、微小リークを低減できるスパイラル型逆浸透膜エレメント及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、逆浸透ろ過、限外ろ過、精密ろ過等に用いられる流体分離エレメントとして、例えば、供給側流体を分離膜表面へ導く供給側流路材、供給側流体を分離する分離膜、分離膜を透過し供給側流体から分離された透過側流体を中心管へと導く透過側流路材からなるユニットを有孔の中心管の周りに巻き付けたスパイラル型膜エレメントが知られている。
【0003】
このようなスパイラル型膜エレメントは、一般的に分離膜を二つ折りにした間に供給側流路材を配置したものと、透過側流路材とを積み重ね、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐ封止部を形成するため接着剤を分離膜周辺部(3辺)に塗布して分離膜ユニットを作製し、このユニットの単数または複数を中心管の周囲にスパイラル状に巻きつけて、更に分離膜周辺部を封止することによって製造される。
【0004】
封止方法については、例えば下記特許文献1には、ホットメルトタイプのテープ状接着剤を用いて封止し、仮固定した上で電磁波を照射することにより分離膜周辺部を接着する方法が開示されている。しかしこの方法では、分離膜内部に接着剤が十分に含浸しないため、透過側流路と供給側流路を完全に分離することができず、原水が透過側に流れるのを十分に防ぐことができない。即ち、図5に示すように、分離膜101への接着剤102の含浸が不十分な部分に多孔質層101bが残ることにより、分離膜101の外面に沿って流れるべき原液の一部が、この多孔質層101bを通り、水平方向に分離膜101の内部に流入し、透過側へ混入する。
【0005】
また、多量の接着剤を用いることで原水が透過することを防ぐ方法もある。しかし、接着剤の量を必要以上に多くすると接着剤の厚みにムラができ、シワが発生し易いなど、膜リーフを中空管に巻きつけるときの障害になることも問題であった。
【特許文献1】特開平7−204471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、接着剤等の封止樹脂を十分に含浸し得る構造の不織布層を用いること等により膜リーフ端部に於ける封止樹脂の含浸性を改善し、微小リークを効果的に防止可能なスパイラル型逆浸透膜エレメント、その製造方法及びその使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、スパイラル型逆浸透膜エレメント、その製造方法及びその使用方法について鋭意検討した。その結果、下記の構成を採用することにより前記の目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、前記の課題を解決する為に、本発明に係るスパイラル型逆浸透膜エレメントは、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型逆浸透膜エレメントであって、前記透過側流路材を介して対向する分離膜は、不織布層上に多孔性支持体及びスキン層が順次積層された構造を有し、前記分離膜の縁部には封止樹脂により封止された封止部が設けられており、前記封止樹脂は、多孔性支持体に於いて少なくともスキン層の近傍まで含浸されていることを特徴とする。
【0009】
前記の構成によれば、封止樹脂が少なくともスキン層の近傍まで含浸されているので、封止部のシール効果を向上させ、これにより供給側流路から透過側流路に原流体が微小リークするのを効果的に防止できる。その結果、分離対象物質(例えば、粒子や塩等)の阻止率を向上させスパイラル型逆浸透膜エレメントとしての分離性能の向上が図れる。
【0010】
また、前記分離膜に、濃度32,000ppmのNaCl水溶液を供給側流体として5.5MPaの操作圧力で供給し、かつ透過水の回収率を8〜12%と設定した場合に、前記封止部近傍に於ける透過水の電気伝導率が、それ以外の領域に於ける透過水の電気伝導率に対し2倍以下であることが好ましい。
【0011】
前記の構成によれば、前記条件下でNaCl水溶液の分離操作を行うと、封止部近傍に於ける透過水の電気伝導率が、それ以外の領域に於ける透過水の電気伝導率に対し2倍以下となる。よって、前記構成とすることにより、NaCl水溶液を良好な塩阻止率でNaClと透過水とに分離することが可能なスパイラル型逆浸透膜エレメントを提供できる。
【0012】
前記不織布層の平均孔径は8〜12μmであり、かつ平均孔径と最大孔径の比(最大孔径/平均孔径)は1〜4であることが好ましい。
【0013】
不織布層の平均孔径を前記範囲内とすることにより、封止樹脂が不織布層に含浸するのを容易にし、かつ毛管作用効果も最適なものにする。その結果、封止樹脂が少なくともスキン層の近傍まで含浸した分離膜が得られる。また、平均孔径と最大孔径の比を1〜4とすることにより、不織布層の面内に於ける封止樹脂の含浸性を均一にすることができ、ムラの発生を低減することができる。
【0014】
また、前記不織布層には前記多孔性支持体を構成するポリマーが含浸されており、該ポリマーの含浸量は3〜6g/mであることが好ましい。
【0015】
前記構成のように含浸量3〜6g/mのポリマーが不織布層のスキン層側に含有されていると、封止樹脂を含浸させる際にポリマーとの接触により含浸が促進されるので、不織布層に封止樹脂が十分に含浸された分離膜が得られる。
【0016】
また、前記多孔性支持体の厚さは30〜60μmであることが好ましい。
【0017】
前記構成であると、封止樹脂の含浸に対する抵抗を低減すると共に、膜欠陥が増大するのを防止することができる。
【0018】
また、前記不織布層の外側面、及び不織布層が複数層からなる場合には各層間に封止樹脂の含浸を阻害するバリア部が設けられていないことが好ましい。
【0019】
不織布層の外側面や、不織布層が複数層からなる場合には各層間に、封止樹脂の含浸の障害となるバリア部が存在すると、該不織布層に対する封止樹脂の含浸の障壁となる。しかし、前記構成のようにバリア部が設けられない構成であると、少なくともスキン層の近傍まで封止樹脂を十分に含浸させた分離膜を実現することができる。
【0020】
また、前記分離膜は、前記封止部のスキン層側に於ける面の画像データをしきい値230で二値化処理した場合に、処理後の画像データの黒レベルが60%以上となるまで前記ポリマーを前記多孔性支持体に含浸したものであることが好ましい。
【0021】
前記構成のように、封止部のスキン層側に於ける面の画像データに於いて、二値化処理後の黒レベルが60%以上となる様にポリマーをスキン層に含浸させると、封止樹脂の不織布層に対する含浸性を良好なものにすることができる。その結果、供給側流路から透過側流路への原流体の微小リークを一層防止することができる。
【0022】
また、前記分離膜は、前記封止部の不織布層側に於ける面のヘイズ値が20%以上になるまで前記ポリマーを前記多孔性支持体に含浸したものであることが好ましい。
【0023】
前記構成のように、封止部のスキン層側に於ける面のヘイズ値が20%以上となる様にポリマーをスキン層に含浸させると、封止樹脂の不織布層に対する含浸性を良好なものにすることができる。その結果、供給側流路から透過側流路への原流体の微小リークを一層防止することができる。
【0024】
前記の課題を解決する為に、本発明に係るスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法は、多孔性支持体上にスキン層を有する分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法であって、前記多孔性支持体上にスキン層を製膜して分離膜を形成する工程と、前記分離膜と供給側流路材と透過側流路材とを積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回して円筒状巻回体を形成する工程と、前記供給側流体と透過側流体の混合を防ぐため、透過側流路材を介して対向する分離膜の縁部に、多孔性支持体側から封止樹脂を塗布し、かつ封止樹脂を少なくともスキン層の近傍まで含浸させて封止する工程とを有することを特徴とする。
【0025】
前記の方法によれば、多孔性支持体側から封止樹脂を塗布し、かつ封止樹脂を少なくともスキン層の近傍にまで含浸させて封止する工程を含むので、分離膜に於ける供給側流路から透過側流路に原流体が微小リークするのを効果的に防止した分離膜を備えるスパイラル型逆浸透膜エレメントが得られる。即ち、前記の方法によれば、微小リークを効果的に防止し、分離対象物質の阻止率を向上させたスパイラル型逆浸透膜エレメントを製造することができる。
【0026】
また、前記分離膜の形成工程の前に、2以上の反応性のアミノ基を有する多官能性アミノ化合物を含む溶液を調製する工程と、2以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハライド化合物を含む溶液を調製する工程とを行い、前記分離膜の形成工程は、前記多官能性アミノ化合物と多官能性酸ハライド化合物とを界面重合させ前記スキン層としてのポリアミド層を形成する工程であることが好ましい。
【0027】
また、前記封止樹脂として、その粘度が10〜40Pa・sの範囲内のものを使用することが好ましい。
【0028】
前記方法であると、多孔性支持体に封止樹脂を塗布したときに、液だれによって塗布した領域以外の領域に含浸するのを防止できる。また、多孔性支持体に対する封止樹脂の含浸性も良好となり、少なくともスキン層の近傍まで封止樹脂を到達させることが可能となる。その結果、微小リークを効果的に防止し、分離性能に優れたスパイラル型逆浸透膜エレメントを歩留まり良く製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、前記に説明した手段により、以下の効果を奏する。
【0030】
即ち、本発明によれば、封止樹脂を分離膜に於けるスキン層の少なくとも近傍にまで含浸させることにより、封止部のシール性を向上させる。その結果、供給側流路から透過側流路に原流体が微小リークするのを効果的に防止することができ、分離対象物質の阻止率を向上させて分離性能を良好なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1(a)〜1(c)は、本発明のスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法の一例を示す工程図である。図2は、本発明のスパイラル型逆浸透膜エレメントの一例を示す部分破断した斜視図である。尚、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にする為に拡大または縮小等して図示した部分がある。以上のことは、以下の図面に対しても同様である。
【0032】
本発明のスパイラル型逆浸透膜エレメントは、図1〜図2に示すように、分離膜1、供給側流路材2、及び透過側流路材3が、積層状態で有孔の中心管5の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体Rを備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられている。封止部には、両端封止部11と外周側封止部12が含まれる。
【0033】
図2に示すように、透過側流路材3を介して対向する分離膜1の両端は両端封止部11により封止され、スパイラル状に配置された複数の両端封止部11の間には、供給側流路材2が介在する。また、透過側流路材3を介して対向する分離膜1の外周側端部は、軸方向に沿った外周側封止部12により封止されている。
【0034】
上記の円筒状巻回体Rは、分離膜1と供給側流路材2と透過側流路材3とを積層状態で有孔の中心管5の周囲にスパイラル状に巻回して円筒状巻回体Rを形成する工程と、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部を形成する工程とによって製造することができる。具体的には、例えば図1に示す実施形態により製造することができる。図1(a)は分離膜ユニットUの平面図であり、図1(b)は分離膜ユニットUの正面図であり、図1(c)は分離膜ユニットUを積層して巻回する前の状態を示す正面図である。
【0035】
まず、図1(a)及び1(b)に示すように、分離膜1を二つ折りにした間に供給側流路材2を配置したものと透過側流路材3とを積み重ね、供給流体と透過流体の混合を防ぐ封止部11、12を形成するための接着剤4、6を、透過側流路材3の軸方向両端部及び巻回終端部に塗布した分離膜ユニットUを準備する。このとき、分離膜1の折り目部分に保護テープを貼り付けてもよい。
【0036】
分離膜1は、不織布層上に多孔性支持体及びスキン層(緻密層)が順次積層された構造である。不織布層の構成材料としては特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。具体的には、例えばポリエステル、ポリオレフィン等を例示できる。また、前記不織布層は、単層からなることが好ましい。ただし、複数層からなる不織布層も本発明では適用可能である。この場合、各層の表面は、カレンダーロール等で熱や圧力を加えられていないことが好ましい。例えば、熱加工されると、各層の表面孔が溶融することで収縮し、熱溶融した表層部分が緻密な層となって封止樹脂の含浸を阻害する障壁(バリア部)となるからである。
【0037】
前記不織布層の平均孔径は8〜12μmであることが好ましく、9〜10μmであることがより好ましい。前記範囲内であると、封止樹脂を少なくともスキン層の近傍まで含浸させることが可能になるからである。平均孔径が8μmより小さい場合、封止樹脂は付着濡れの状態となって不織布層への含浸が困難となる傾向がある。その一方、平均孔径が12μmより大きい場合、封止樹脂が不織布層に含浸する際の毛管作用効果が小さくなり、含浸が不十分となる傾向がある。
【0038】
また、不織布層に於ける平均孔径と最大孔径の比(最大孔径/平均孔径)は1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。前記範囲内であると、不織布層の面内に於ける封止樹脂の含浸性を均一にすることができ、ムラの発生を低減することができる。
【0039】
不織布層の厚さ(複数層の場合は、全厚)は特に限定されるものではないが、80〜120μmであることが望ましく、90〜110μmであることがさらに望ましい。この範囲内であると、封止樹脂の含浸抵抗を最適にできるからである。不織布層の厚さが80μmより小さいと実用的な強度が得られなくなる一方、120μmを超えると実用上十分な膜面積をエレメント内に保持できなくなるという傾向がある。
【0040】
前記多孔性支持体は微多孔性であり、スキン層を支持する。また、多孔性支持体の構成材料としては、従来公知のものを採用することができる。具体的には、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン等が例示できる。化学的、機械的、熱的に安定性の観点からは、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンからなる多孔質層が好ましい。
【0041】
また多孔性支持体の厚さとしては、30〜60μmの範囲内であることが好ましく、30〜40μmの範囲内であることがより好ましい。多孔性支持体の厚さが30μmより小さいと多孔性支持体の欠陥低減が現実的でなくなる一方、60μmより大きいと封止樹脂の含浸性が低下する傾向があるからである。
【0042】
前記不織布層の多孔性支持体と接する側には、該多孔性支持体を構成するポリマーが含浸されていることが好ましい。これにより、封止樹脂が不織布層に含浸していく過程で封止樹脂とポリマーが接触すると、凝集により封止樹脂の含浸を促進することができる。ここで、ポリマーの含有量は、3〜6g/mの範囲内にあることが好ましい。含有量が3g/mより少ないと、封止樹脂の含浸が促進されないという不都合がある。その一方、6g/mより多いと、製膜時に欠陥が多発し易いという不都合がある。
【0043】
尚、ポリマーの含浸の程度は、次に述べる方法によっても評価することができる。即ち、含浸の程度は、スキン層1a側の面の画像データを二値化処理した場合に、処理後の画像データの黒レベルが60%以上となるのが好ましい。画像データの黒レベル部分はポリマーが含浸している状態を示しており、該黒レベルが60%以上であると微小リークを十分に防止できるからである。二値化処理は、スキン層1a側の画像データをスキャナで取り込み、しきい値を230に設定して行う。画像データがカラー画像データを含む場合には、グレースケールに階調変換した後に二値化処理を施す。尚、二値化処理の方法としては、前記方法の他にディザ法、誤差拡散法、誤差拡散法等が例示できる。
【0044】
またポリマーの含浸は、スキン層1a側の面のヘイズ値が20%以上となる程度であることが好ましい。ヘイズ値が20%以上であると、ポリマーが不織布に十分に含浸していることを示すからであり、その結果として封止樹脂の含浸性が良好になるからである。本発明のヘイズ値は、JIS K7136に準拠して測定した値である。即ち、不織布層側の面にテープ(日東電工製NO.31B)を貼り付けた後にこれを剥がし、剥がしたテープの光透過度をヘイズメーターで測定した。
【0045】
封止部を構成する封止樹脂4、6は、例えば図3に示すように、少なくともスキン層1aの近傍まで一定程度均一に含浸されていればよい。スキン層1aの近傍まで含浸していないとき、或いは一部含浸しているがムラとなっているときは、微小リークが発生し、スパイラル型逆浸透膜エレメントとしての分離性能が低下するからである。
【0046】
封止樹脂4,6としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。具体的には、例えばウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ホットメルト接着剤等、従来公知のいずれの接着剤も使用することができる。
【0047】
前記スキン層1aは、流体に含まれる分離対象物質に対し透過性を示さない分離機能を有する。スキン層1aを構成する材料としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。具体的には、例えば、PE、PP、PET、ナイロン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルアルコール(PVA)、PMMA、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が例示できる。
【0048】
前記スキン層1aの厚さは、0.05〜2μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜1μmの範囲内であることがより好ましい。
【0049】
供給側流路材2には、ネット状材料、メッシュ状材料、溝付シート、波形シート等が使用できる。透過側流路材3にはネット状材料、編み物状材料、メッシュ状材料、溝付シート、波形シート等が使用できる。有孔の中心管5は、管の周囲に開孔を有するものであればよく、従来のものが何れも使用できる。
【0050】
次に、本発明のスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法について、スキン層1aとしてポリアミドスキン層を備えた逆浸透膜エレメントを例にして説明する。
【0051】
先ず、2以上の反応性のアミノ基を有する多官能性アミノ化合物を含有する製膜溶液(水溶液)Aを調製する。
【0052】
2以上の反応性のアミノ基を有する多官能性アミノ化合物としては特に限定されず、芳香族、脂肪族、または脂環式の多官能アミンがあげられる。前記多官能アミンは単独で用いてもよく、混合物としてもよい。
【0053】
前記芳香族多官能アミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノアニソール、アミドール、キシリレンジアミンなどがあげられる。
【0054】
前記脂肪族多官能アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリス(2−アミノエチル)アミンなどがあげられる。
【0055】
前記脂環式多官能アミンとしては、例えば、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロへキサン、1,4−ジアミノシクロへキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、4−アミノメチルピペラジンなどがあげられる。
【0056】
前記製膜溶液Aに使用する溶媒としては、該多官能性アミノ化合物をよく溶解し、かつ用いる多孔性支持体を溶解しない極性溶媒であればよい。その様な極性溶媒としては、例えば水などを例示できる。
【0057】
前記多官能アミンを含有する水溶液Aは、製膜を容易にし、あるいは得られる複合逆浸透膜の性能を向上させるために、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの重合体や、ソルビトール、グリセリンなどのような多価アルコールを水などに含有させることもできる。
【0058】
また、特開平2−187135号に記載のテトラアルキルアンモニウムハライドやトリアルキルアンモニウムと有機酸とによる塩なども、製膜を容易にするため、アミン水溶液の微多孔性支持体への吸収性をよくするため、縮合反応を促進するため等の点で好適に用いられる。
【0059】
また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)などの界面活性剤を水溶液Aに含有させることもできる。これらの界面活性剤は、アミン水溶液の微多孔性支持体への濡れ性を改善するのに効果がある。
【0060】
さらに、上記界面での縮重合反応を促進させるために、界面反応にて生成するハロゲン化水素を除去し得る水酸化ナトリウムやリン酸三ナトリウムを用い、あるいは触媒として、アシル化触媒などを水溶液Aに含有させることも有益である。
【0061】
また、透過流束を高めるために、特開平8−224452号記載の溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm1/2の化合物を水溶液Aに添加することもできる。
【0062】
前記製膜溶液Aに含まれる多官能性アミノ化合物の濃度は、特に限定されるものではないが、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0063】
前記製膜溶液Aの調製とは別に、2以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハライド化合物を含有する製膜溶液Bを調製する。
【0064】
前記多官能性酸ハライド化合物としては特に限定されず、例えば、芳香族、脂肪族、脂環式等の多官能性酸ハロゲン化物が挙げられ、好ましくは芳香族多官能性酸ハロゲン化物等が例示できる。これらの多官能性酸ハロゲン化物は単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。
【0065】
前記芳香族多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ビフェニルジカルボン酸クロライド、ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライド等が例示できる。これらの化合物の中で、単環式芳香族化合物が特に好ましい。
【0066】
前記脂肪族多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、プロパントリカルボン酸クロライド、ブタントリカルボン酸クロライド、ペンタントリカルボン酸クロライド、グルタリルハライド、アジポイルハライド等が例示できる。
【0067】
前記脂環式多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、シクロプロパントリカルボン酸クロライド、シクロブタンテトラカルボン酸クロライド、シクロペンタントリカルボン酸クロライド、シクロペンタンテトラカルボン酸クロライド、シクロヘキサントリカルボン酸クロライド、テトラハイドロフランテトラカルボン酸クロライド、シクロペンタンジカルボン酸クロライド、シクロブタンジカルボン酸クロライド、シクロヘキサンジカルボン酸クロライド、テトラハイドロフランジカルボン酸クロライド等が例示できる。
【0068】
前記製膜溶液Bに使用する溶媒としては、該多官能性酸ハライド化合物をよく溶解し、かつ用いる極性溶媒と混和しないものであればよい。例えば、炭素数5〜10の脂肪族及び脂環式炭化水素が用いられ、具体的にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタンなどを例示できる。
【0069】
前記製膜溶液Bにおいて、該多官能性酸ハライド化合物の濃度は特に限定されるものではないが、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%である。
【0070】
続いて、多孔性支持体にスキン層を形成する。即ち、多孔性支持体上に、多官能アミン成分を含有する製膜溶液Aを塗布等により被覆した後、余分な水溶液を除去して第1の層を形成する。次いで、多官能性酸ハライド化合物を含有する製膜溶液Bを第1の層上に塗布等により被覆した後、余分な溶液を除去して第2の層を形成する。このとき接触により生じた界面で多官能性アミノ化合物と多官能性酸ハライド化合物とを界面重合をさせる。本発明においては、通常約20〜180℃、好ましくは約50〜150℃、さらに好ましくは約80〜130℃で、約1〜10分間、好ましくは約2〜8分間乾燥させて、架橋ポリアミドからなるポリアミドスキン層(スキン層)を多孔性支持体上に形成させる。
【0071】
次に、分離膜と供給側流路材と透過側流路材とを積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回して円筒状巻回体を形成する。
【0072】
さらに、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐため、透過側流路材を介して対向する分離膜の縁部に、多孔性支持体側から封止樹脂を塗布し、かつ封止樹脂を少なくともスキン層の近傍にまで含浸させて封止する。塗布方法としては特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用できる。塗布量は、封止したい領域の面積及び多孔性支持体の厚さに応じて適宜設定される。具体的には、例えば0.2〜1g/cmの範囲内であることが好ましい。前記範囲内であると、分離膜に於ける封止部だけが他の部分と比べて厚くなるのを防止でき、ムラやシワの発生を抑制することができる。
【0073】
前記封止樹脂の含浸時に於ける粘度は、10〜40Pa・s(東機産業株式会社製BH形粘度計、6番ローター使用、20回転時)の範囲内であることが好ましい。これにより、多孔性支持体に封止樹脂を塗布したときに、液だれによって塗布した領域以外の領域に含浸するのを防止できる。また、多孔性支持体に対する封止樹脂の含浸性も良好となり、少なくともスキン層の近傍まで封止樹脂を到達させることが可能となる。また、封止樹脂の垂れ性は、0〜60mmであることが好ましく、0〜50mmであることがより好ましい。垂れ性が前記範囲内であると、多孔性支持体に封止樹脂を塗布したときに、液だれによって塗布した領域以外の領域で含浸するのを防止することができる。垂れ性は、1.5gの封止樹脂を撹拌後3分で盛った状態から垂直にした際のものを意味する。
【0074】
これにより、本実施の形態に係るスパイラル型逆浸透膜エレメントを得ることができる。本発明の製造方法によれば、封止樹脂の含浸性に優れた多孔性支持体を用いることにより、特殊な封止樹脂の採用を不要にする。よって、コストの上昇を抑制しつつ微小リークを効果的に防止し、分離性能に優れたスパイラル型逆浸透膜エレメントを製造することができる。
【0075】
本発明のスパイラル型逆浸透膜エレメントは、例えばNaCl水溶液を供給側流体として分離操作を行うと、以下の様な分離性能を示す。即ち、濃度32,000ppmのNaCl水溶液を5.5MPaの操作圧力で分離膜に供給する。このとき、透過水の回収率は8〜12%の範囲内となるように設定する。そうすると、封止部近傍に於ける透過水の電気伝導率は、それ以外の領域に於ける透過水の電気伝導率に対し2倍以下とすることができる。これは、本発明の分離膜が極めて良好な塩阻止率を示すことを表している。換言すれば、NaClを十分に分離し、極めて純度の高い透過水が得られる。
【0076】
よって、本発明のスパイラル型逆浸透膜エレメントを用いると、かん水、海水等の脱塩による淡水化や、超純水の製造等に好適に使用できる。また染色排水や電着塗料排水等の公害発生原因である産業排水等から、その中に含まれる汚染源若しくは有効物質を除去回収する場合にも使用でき、排水のクローズ化に寄与することができる。この他に、食品工業等の分野において、有効成分の濃縮や、上水・下水等の有害成分の除去などの水処理にも使用することができる。尚、封止部近傍とは、図1(a)に於いては、領域Xを表す。領域Xは、封止部からの離隔距離が0〜50mmの範囲である。また、それ以外の領域とは同図(a)に示す領域Yを表す。
【0077】
以上の説明に於いては、本発明の最も好適な実施態様について説明した。しかし、本発明は当該実施態様に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一の範囲で種々の変更が可能である。
【0078】
即ち、前記の実施態様に於いては、図1に示すように、供給側流路材2を挟みこむように二つ折りにした分離膜1の上に、透過側流路材3を重ねて、接着剤4,6を塗布する例で説明した。しかし、本発明では、透過側流路材3の上に二つ折りにした分離膜1を重ねその上に接着剤4,6を塗布することも可能である。また、二つ折りにした分離膜1の代わりに、2枚の分離膜1を用いて供給側流路材2を挟み、巻回開始側にも封止部を設けるようにしてもよい。更に、連続した分離膜1を用いて、外周側封止部12を不要にしてもよい。
【0079】
また、前記の実施態様に於いては、図1に示すように、複数の分離膜ユニットUを使用して、複数の膜リーフを備えるスパイラル膜エレメントを製造する例を示したが、本発明では、1組の分離膜ユニットUを使用して、1枚の膜リーフを備えるスパイラル膜エレメントを製造してもよい。
【実施例】
【0080】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0081】
(実施例1)
PSF(ポリスルフォン)18.3重量部をDMFに溶解させて製膜溶液を調製した。次に、平均孔径が9.4μmであり、平均孔径と最大孔径の比が2.9である単層構造の不織布層に、前記製膜溶液をキャスティングし、その後乾燥させた。これにより、不織布層上にポリスルフォン層(多孔性支持体)が形成されたポリスルフォン系限外ろ過膜を得た。尚、ポリスルフォン層の厚さは30μmとした。また、ポリスルフォンの不織布層に対する含浸量は4.2g/mであった。
【0082】
次に、MPD(m−フェニレンジアミン)3.0重量部、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)0.15重量部を水に溶解させて製膜溶液Aを調製した。また、TMC(トリメシン酸クロライド)0.12重量部をイソオクタン溶液に溶解させて製膜溶液Bを調製した。
【0083】
続いて、微多孔性支持体のポリスルフォン層側に製膜溶液Aを塗布し、余分な溶液を除去して塗布層Aを形成した。さらに塗布層A上に製膜溶液Bを塗布し、余分な溶液を除去して塗布層Bを形成した。これにより、塗布層Aと塗布層Bの界面で界面重合をさせ、ポリスルフォン層上にポリアミドスキン層(スキン層)を形成して、複合逆浸透膜を形成した。
【0084】
次に、この複合逆浸透膜を、粘度20Pa・s、垂れ性25mmのポリウレタン(封止樹脂)を用いて封止しながら中心管に巻きつけた。これにより、本実施例1に係るスパイラル型逆浸透膜エレメントを作製した。
【0085】
続いて、スパイラル型逆浸透膜エレメントを用いて、NaCl濃度が32,000ppmのNaCl水溶液の分離操作を行った。運転条件として、運転圧力を5.5MPaとし、回収率を10%とした。さらに、エレメント内部に於いて、封止部分から所定距離毎に透過水の電気伝導率を測定した。その結果を、電気伝導率と封止部からの距離との関係を示すグラフを用いて図4に示す。
【0086】
また、封止部のスキン層側に於ける面の画像データをしきい値230で二値化処理し、処理後の画像データの黒レベルを測定したところ99.5%であった。
【0087】
さらに、封止部の不織布層側に於ける面のヘイズ値を、JIS K7136に準拠して測定した。即ち、不織布層側の面にテープ(日東電工製NO.31B)を貼り付けた後にこれを剥がし、剥がしたテープの光透過度をヘイズメーターで測定した。その結果、ヘイズ値は40%であった。
【0088】
(実施例2)
平均孔径が10.2μmであり、2層構造を持つが互いの層が抄紙段階で融合される為に各層間に抵抗となるバリア層が存在しない不織布を用いて、前記実施例1と同様に行うことにより複合逆浸透膜を得た。次にこの複合逆浸透膜を、粘度25Pa・s、垂れ性35mmのポリウレタン(封止樹脂)を用いて封止しながら中心管に巻いた。これにより、本実施例2に係るスパイラル型逆浸透膜エレメントを作製した。
【0089】
続いて、前記実施例1と同様にしてNaCl水溶液の分離操作を行い、透過水の電気伝導率を測定した。その結果を、電気伝導率と距離との関係を示すグラフを用いて図4に示す。
【0090】
また前記実施例1と同様にして、封止部のスキン層側に於ける面の画像データの黒レベルを測定したところ90.5%であった。
【0091】
さらに前記実施例1と同様にして、封止部の不織布層側に於ける面のヘイズ値を測定したところ30%であった。
【0092】
(比較例1)
平均孔径が10.2μmであり、平均孔径と最大孔径の比が5.3である熱融着張り合わせ2層構造の不織布を用い、これに実施例1と同様の方法で複合逆浸透膜を得た。次にこの複合逆浸透膜を粘度22Pa・s、垂れ性35mmのポリウレタン(封止樹脂)を用いて封止を用いて封止しながら中心管に巻いた。これにより、比較例1に係るスパイラル型逆浸透膜エレメントを作製した。
【0093】
続いて、前記実施例1と同様にしてNaCl水溶液の分離操作を行い、透過水の電気伝導率を測定した。その結果を、電気伝導率と距離との関係を示すグラフを用いて図4に示す。
【0094】
また前記実施例1と同様にして、封止部のスキン層側に於ける面の画像データの黒レベルを測定したところ3.0%であった。
【0095】
さらに前記実施例1と同様にして、封止部の不織布層側に於ける面のヘイズ値を測定したところ5%であった。
【0096】
(比較例2)
平均孔径が9.4μmであり、平均孔径と最大孔径の比が2.9である1層構造の不織布を用い、これに美施例1と同様の方法で複合逆浸透膜を得た。次にこの複合逆浸透膜を、粘度45Pa・s、垂れ性80mmのポリウレタン(封止樹脂)を用いて封止しながら中心管に巻いた。これにより、比較例2に係るスパイラル型逆浸透膜エレメントを作製した。
【0097】
続いて、前記実施例1と同様にしてNaCl水溶液の分離操作を行い、透過水の電気伝導率を測定した。その結果を、電気伝導率と距離との関係を示すグラフを用いて図4に示す。
【0098】
また前記実施例1と同様にして、封止部のスキン層側に於ける面の画像データの黒レベルを測定したところ20%であった。
【0099】
さらに前記実施例1と同様にして、封止部の不織布層側に於ける面のヘイズ値を測定したところ35%であった。
【0100】
(結果)
図4に示すグラフから明らかな様に、実施例1及び2に係るスパイラル型逆浸透膜エレメントの場合、封止部分近傍(封止部分からの距離が0〜5cmの範囲内)の透過水の電気伝導率は、内部(封止部分からの距離が5〜90cmの範囲内)の透過水の電気伝導率の2倍以内であり、良好な塩阻止率を示していることが分かる。その一方、比較例1及び2に係るスパイラル型逆浸透膜エレメントの場合、封止部分近傍の透過水の電気伝導率は、内部の透過水の電気伝導率と比較して2倍を超えており、塩阻止率が高く分離性能が劣っていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明のスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明のスパイラル型逆浸透膜エレメントの一例を示す部分破断した斜視図である。
【図3】本発明のスパイラル型逆浸透膜エレメントにおける各部の流動状態を示す説明図である。
【図4】本発明のスパイラル型逆浸透膜エレメントに於ける透過水の電気伝導率と距離との関係を示すグラフである。
【図5】従来のスパイラル型膜エレメントにおける微小リークの状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0102】
1 分離膜
2 供給側流路材
3 透過側流路材
4 接着剤
5 中心管
6 接着剤
11 両端封止部
12 外周側封止部
R 円筒状巻回体
U 分離膜ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型逆浸透膜エレメントであって、
前記透過側流路材を介して対向する分離膜は、不織布層上に多孔性支持体及びスキン層が順次積層された構造を有し、
前記分離膜の縁部には封止樹脂により封止された封止部が設けられており、
前記封止樹脂は、多孔性支持体に於いて少なくともスキン層の近傍まで含浸されていることを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメント。
【請求項2】
請求項1に記載のスパイラル型逆浸透膜エレメントであって、
前記分離膜に、濃度32,000ppmのNaCl水溶液を供給側流体として5.5MPaの操作圧力で供給し、かつ透過水の回収率を8〜12%と設定した場合に、
前記封止部近傍に於ける透過水の電気伝導率が、それ以外の領域に於ける透過水の電気伝導率に対し2倍以下であることを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメント。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスパイラル型逆浸透膜エレメントであって、
前記不織布層の平均孔径は8〜12μmであり、かつ平均孔径と最大孔径の比(最大孔径/平均孔径)は1〜4であることを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメント。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のスパイラル型逆浸透膜エレメントであって、
前記不織布層には前記多孔性支持体を構成するポリマーが含浸されており、該ポリマーの含浸量は3〜6g/mであることを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメント。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のスパイラル型逆浸透膜エレメントであって、
前記多孔性支持体の厚さは30〜60μmであることを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメント。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のスパイラル型逆浸透膜エレメントであって、
前記不織布層の外側面、及び不織布層が複数層からなる場合には各層間に封止樹脂の含浸を阻害するバリア部が設けられていないことを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメント。
【請求項7】
請求項4に記載のスパイラル型逆浸透膜エレメントであって、
前記分離膜は、前記封止部のスキン層側に於ける面の画像データをしきい値230で二値化処理した場合に、処理後の画像データの黒レベルが60%以上となるまで前記ポリマーを前記多孔性支持体に含浸したものであることを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメント。
【請求項8】
請求項4に記載のスパイラル型逆浸透膜エレメントであって、
前記分離膜は、前記封止部の不織布層側に於ける面のヘイズ値が20%以上になるまで前記ポリマーを前記多孔性支持体に含浸したものであることを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメント。
【請求項9】
多孔性支持体上にスキン層を有する分離膜と供給側流路材と透過側流路材とが積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回された円筒状巻回体を備えると共に、供給側流体と透過側流体の混合を防ぐための封止部が設けられているスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法であって、
前記多孔性支持体上にスキン層を製膜して分離膜を形成する工程と、
前記分離膜と供給側流路材と透過側流路材とを積層状態で有孔の中心管の周囲にスパイラル状に巻回して円筒状巻回体を形成する工程と、
前記供給側流体と透過側流体の混合を防ぐため、透過側流路材を介して対向する分離膜の縁部に、多孔性支持体側から封止樹脂を塗布し、かつ封止樹脂を少なくともスキン層の近傍まで含浸させて封止する工程とを有することを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法であって、
前記分離膜の形成工程の前に、2以上の反応性のアミノ基を有する多官能性アミノ化合物を含む溶液を調製する工程と、
2以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハライド化合物を含む溶液を調製する工程とを行い、
前記分離膜の形成工程は、前記多官能性アミノ化合物と多官能性酸ハライド化合物とを界面重合させて前記スキン層としてのポリアミド層を形成する工程であることを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載のスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法であって、
前記封止樹脂として、含浸の際の粘度が10〜40Pa・sの範囲内のものを使用することを特徴とするスパイラル型逆浸透膜エレメントの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−68644(P2006−68644A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255779(P2004−255779)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】