説明

スパウト付き収容体

【課題】バリア性に優れ、安価に製造することが可能なスパウト付き収容体を提供する。
【解決手段】スパウト付き収容体1は、シート状の部材3a,3bを重ね、周囲を溶着することで収容物を収容する収容部4を備えており、重ねた状態のシート状部材の間に介在され、収容部4に収容された収容物を通過させる連通孔12aを具備したスパウト10を有する。そして、収容部4に収容された収容物の連通孔12aへの移動を阻止するように、シート状部材3a,3b同士を対になるように溶着した溶着部20,20を形成し、溶着部間にシート状部材が密着することによる自封式の逆止弁を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有する合成樹脂製のシートを重ねた収容体に関し、詳細には、収容物を注出する注出口(スパウトと称される)が溶着されたスパウト付き収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製のシート(プラスチックフイルム)を重ねて溶着(熱溶着)すると共に、これにスパウトを溶着(熱溶着)したスパウト付き収容体が知られている。このようなスパウト付き収容体は、内部に液体や半流動体などの収容物を充填し、スパウトを介して内容物が注出されるようになっており、安価であると共に、軽量で取扱性に優れるため、医療分野、化粧品やサニタリー用品などの日用品分野、事務用品分野等、様々な分野で使用されている。
【0003】
一般的に、上記したようなスパウト付き収容体は、スパウトを合成樹脂製のシート間に熱溶着し易くし、かつ、収容物のガスバリア性や遮光性(以下、バリア性と称する)を高めるために、複合材料を用いることが知られている。例えば、基材としてエチレンを重合した熱可塑性樹脂(ポリエチレン)を用い、その外層側にガスバリア性に優れた材料、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、アルミ箔などを積層したシート状の複合材料によって収容体を形成している。
【0004】
ところで、一般的なスパウト付き収容体では、スパウトを開封する前であっても、収容物が、溶着されたスパウトと接触する構造となっている。このため、スパウト自体についても、例えば、特許文献1に開示されているように、バリア性を高める工夫が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−213455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した公知技術は、スパウトをインジェクション成形する際に、収容物が通過する円筒部(口部)の内壁に、バリア性に優れた遮断体を一体的に挿着する構造となっているが、成形時において遮断体表面に樹脂が流れ込む可能性があり、製造が難しいと共に、完全な遮断効果が得られないという問題がある。また、上記した公知文献には、スパウト自体を、バリア性に優れた層を有する多層構造で形成することも紹介されているが、コストが高くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、バリア性に優れ、安価に製造することが可能なスパウト付き収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、シート状の部材を重ね、周囲を溶着することで収容物を収容する収容部を備えており、前記重ねた状態のシート状部材の間に介在され、前記収容部に収容された収容物を通過させる連通孔を具備したスパウトを有するスパウト付き収容体において、前記収容部に収容された収容物の連通孔への移動を阻止するように、前記シート状部材同士を対になるように溶着した溶着部を形成し、前記溶着部間にシート状部材が密着することによる自封式の逆止弁を形成したことを特徴とする。
【0009】
上記した構造のスパウト付き収容体によれば、収容部に収容されている収容物は、対になった溶着部による自封式の逆止弁によって、スパウトの連通孔への移動が阻止されるようになる。すなわち、シート状の部材に自封式の逆止弁が形成されるように、対となる溶着部を、例えばスパウトの溶着工程時に同時に形成することでスパウト部分についてのバリア性を維持することが可能になることから、スパウト自体をバリア性の高い材料で形成する必要がなくなり、コストの低減が図れるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バリア性に優れ、安価に製造することが可能なスパウト付き収容体が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るスパウト付き収容体の第1の実施形態を示した正面図。
【図2】図1の主要部を拡大して示す図。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図。
【図4】スパウト付き収容体に収容物を収容した状態を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係るスパウト付き収容体の実施形態について説明する。
図1から図3は、本発明の第1の実施形態を示す図であり、図1は、スパウト付き収容体を示した正面図、図2は、図1の主要部を拡大して示す図、そして、図3は、図1のA−A線に沿った断面図である。
【0013】
本実施形態に係るスパウト付き収容体1は、例えば、図1に示すような形態で構成される。スパウト付き収容体1は、シート状の部材3a,3bを重ね合わせ、斜線で示す周囲をヒートバー等によって熱溶着すると共に、所定の箇所にプラスチック等によって成形されたスパウト10を熱溶着(周囲領域に介在)することで作成される。
【0014】
前記シート状の部材3a,3bは、柔軟性を有する合成樹脂製のシート(プラスチックフイルム)、例えば、溶着し易いように、ポリエチレンやポリプロピレンなどによって構成されており、公知のように、その表面側に、収容物に対するバリア性を高めるように、ナイロン、アルミホイルなどを積層した、いわゆる複合層で構成されている。
【0015】
前記シート状の部材3a,3bを、図に示す斜線領域をヒートバーによって熱溶着することで、液体や半流動体のような収容物が収容される収容部4を有するスパウト付き収容体1が形成される。この場合、スパウト付き収容体1は、側壁や底壁を形成して自立体として構成されていても良いし、単に、シート状の部材3a,3bの周縁部を溶着した非自立体として構成されていても良い。すなわち、溶着する部分や、袋体を構成するシート状の部材の配置等については、使用用途などに応じて適宜変形することができ、特に限定されることはない。
【0016】
前記シート状の部材3a,3bを溶着する際、その上縁部5には、スパウト10が介在されて溶着工程がなされる。本実施形態のスパウト10は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂(特にバリア性を有する素材で形成する必要はない)によって一体形成されており、その本体10Aには、シート状の部材3a,3bが溶着し易いように断面舟形状にされた溶着部11が一体形成され、この溶着部11を挟持するようにして、前記シート状の部材3a,3bが溶着される。
【0017】
また、本実施形態の本体10Aには、前記収容部4に向けて突出するように筒状体12が一体形成されている。この筒状体12には、図3に示すように、収容部に収容された収容物を通過させる連通孔12aが形成されており、収容物は、収容部4の外部に突出する口部15に対して嵌入される着脱可能な栓体16を開封することで注出することが可能となっている。この場合、栓体16は、口部15に対して切断可能に連結されており、最初の使用時において、栓体16を口部15から切り離すことで口部15の開口部15aを露出させることが可能となっている。そして、開口部15aを露出させた状態で収容物を注出した後は、図3に示すように、栓体16を開口部15aに嵌入することで、開口部15aを再び閉塞できるように構成されている。
【0018】
前記筒状体12は、溶着部11に溶着されるシート状の部材3a,3bが、更に下方側で後述する溶着部20を形成するに際して、未溶着領域が生じ難いよう構成されており、図3に示すように、その上端は、溶着部11の表面との間で大きな段差が生じないよう構成されている。
【0019】
前記筒状体12の形状については、特に限定されることはないが、両面側(シート状部材3a,3bに対向する部分)に、溶着部11と共に一体となってシート状部材3a,3bが溶着されることから、断面形状が楕円状に形成されていることが好ましい。
【0020】
そして、前記筒状体12の下方には、スパウト10を介して収容物を収容した際、その流入経路(本実施形態では、筒状体12に形成される連通孔12a)に沿ってシート状部材3a,3b同士を対になるように溶着した溶着部20,20が形成されている。この溶着部20,20は、それぞれ下方に沿って線状に延出するように延びており、このような溶着部分を形成しておくことで、収容物の流通経路(連通孔12aに対する収容物の移動)が制限され、自封式の逆止弁を構成することが可能となる。すなわち、スパウト10を介して収容部4内に収容物を収容して行くと、収容物は、筒状体12を介して収容部4内に充填されて行くが、次第に収容部4内の内圧が高まることで、収容物の流入部分となる溶着部20,20間の狭い領域(符号21で示し、逆止弁として機能する密着部分と称する)が相互に密着するようになり、収容物が矢印方向に流出できない逆止弁として機能するようになる。
【0021】
この場合、密着部分21の密着力については、例えば、溶着部20,20の長さ、或いは、溶着部20,20間の距離(収容物が通過する距離)によって容易に調整することができる。
【0022】
上記した溶着部20,20は、スパウト10(断面舟形状の溶着部11)に対するシート状の部材3a,3bを溶着する際に、一体的に形成することが可能となっている。すなわち、スパウト10の溶着工程時において、同時、もしくは連続する溶着工程によって、一度に形成することが可能となっており、これにより、スパウト自体に、予め逆止弁構造を形成しておく必要がなくなる。
【0023】
また、本実施形態では、前記溶着部20,20は、筒状体12を囲むように形成されている。具体的には、図1及び図2に示すように、上縁部5における溶着領域において、スパウト10が溶着される両サイドから前記溶着部20,20に向けて連続的に溶着される溶着部20a,20aを形成し、これにより、収容部4に収容された収容物を、前記逆止弁として機能する密着部分21によって筒状体12の連通孔12a内に移動できないようにすると共に、筒状体12の表面に対しても接触できない状態が維持できるようにしている。
【0024】
そして、本実施形態では、前記自封式の逆止弁を構成する溶着部20,20が、容易に形成できるように、筒状体12の形状に工夫を施している。具体的には、断面が楕円形状に形成された前記筒状体12には、収容部4に向けて次第に肉厚が減少するように傾斜した傾斜脚部13が形成されている。傾斜脚部13の表面である傾斜部(面)13aは、筒状体12のシート状の部材3a,3bに対向する両側に形成されており、これにより、図3に示すように、シート状の部材3a,3bを溶着部11と共に傾斜部13aに沿って容易に溶着できるようになり、さらには、その下方に位置する溶着部20,20、及び溶着部20a,20aについても、例えば、同一のヒートバーを用いて一体的に溶着することも可能となる。なお、溶着部20a,20aについては、製袋加工時においてシールしても良い。
【0025】
上記したような傾斜脚部13については、例えば、形成された筒状体12の表面の上端位置Pから、下方に向かいながら中心に向けて切削することで容易に形成することが可能である。すなわち、このような切削加工を施すことで、図2に示すように、半楕円形状に切り欠かれた一対の傾斜脚部13を形成することが可能である。或いは、このような傾斜脚部13を成型によって一体形成しても良い。
【0026】
次に、上記した実施形態におけるスパウト付き収容体1の作用について説明する。
【0027】
上記した構造のスパウト付き収容体1によれば、シート状の部材3a,3bを互いに対向し、その間にスパウト10を介在して溶着部11を溶着する際、筒状体12に対しても溶着を施すと同時に自封式の逆止弁構造となる溶着部20,20、及び筒状体12を収容物に対してシールする溶着部20a,20aを容易に溶着形成することが可能になる。このように、単なる溶着工程で逆止弁構造を形成して、収容部4に収容された収容物をスパウト10に接触しないように構成できるため、予めスパウト自体にバリア性を確保する手段を形成しておく必要がなくなり、コストを低減することが可能となる。特に、本実施形態では、スパウト10の筒状体12に、収容部4に向けて次第に肉厚が減少するように傾斜した傾斜脚部13を形成しているため、溶着工程時に溶着部20,20を容易に形成することが可能となる。
【0028】
そして、図4に示すように、収容部4に収容物を収容して内圧が高まると、対になるように溶着された溶着部20,20間に形成される自封式の逆止弁(逆止弁として機能する密着部分21)によって、収容物は、スパウト10の連通孔12aに移動(接触)することはなく、更には、溶着部20a,20aによって、筒状体12に接触することもない。この結果、スパウト自体をバリア性の高い素材で形成しなくても、収容物に対するバリア性を十分確保することが可能となる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0030】
例えば、上記したスパウト10の取着位置や、それに伴う溶着部20の形成位置等については、収容体の角部に配設する等、種々変形することが可能である。また、スパウト10の構成についても、図5に例示するように、適宜変形することが可能である。
【0031】
図5に示した第2実施形態は、スパウト10に形成される筒状体12を、単なる円筒形状にした例を示している。このような構成のスパウトにおいても、筒状体12の連通孔12aの下方に、シート状の部材3a,3bが密着することによる自封式の逆止弁が形成されるように、対の溶着部20,20を形成しておくと共に、スパウト10の両サイドから、対となる溶着部20,20と連結されるように、筒状体12を囲む溶着部20a,20aを形成しておけば良い。或いは、上記のような溶着部20a,20aを形成することなく、単に、逆止弁を形成する溶着部20,20を、そのまま上縁部5に対して連続溶着し、そのままスパウト10をシールするように構成しても良い。
【0032】
また、上記した実施形態では、スパウト10に、収容部4に向けて突出する筒状体12を形成したが、このような筒状体12を形成しない構成であっても良い。このようなスパウトでは、スパウトの両サイドから、収容物が通過する領域に向けて次第に幅が狭くなるような溶着部を形成しておけば良い。すなわち、スパウト10に形成される連通孔の部分に、収容物が移動しないような状態で、自封式の逆止弁構造となる溶着部が形成できれば、スパウトの構成については適宜変形することが可能である。
【0033】
また、スパウト10に取着される栓体については、開口部15aに嵌入される構成以外にも、例えば、スクリュー式に着脱される構造であっても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 袋体
3a,3b シート状の部材
4 収容部
10 スパウト
11 溶着部
12 筒状体
12a 連通孔
13 傾斜脚部
13a 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の部材を重ね、周囲を溶着することで収容物を収容する収容部を備えており、前記重ねた状態のシート状部材の間に介在され、前記収容部に収容された収容物を通過させる連通孔を具備したスパウトを有するスパウト付き収容体において、
前記収容部に収容された収容物の連通孔への移動を阻止するように、前記シート状部材同士を対になるように溶着した溶着部を形成し、前記溶着部間にシート状部材が密着することによる自封式の逆止弁を形成したことを特徴とするスパウト付き収容体。
【請求項2】
前記スパウトは、前記連通孔が形成されると共に、前記収容部に突出する筒状体を備えており、
前記対となる溶着部は、前記筒状体を囲むように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスパウト付き収容体。
【請求項3】
前記筒状体には、前記収容部に向けて次第に肉厚が減少するように傾斜した傾斜脚部が形成されており、
前記シート状部材を前記傾斜脚部に沿って溶着すると共に、その下方に前記溶着部を形成することで、前記自封式の逆止弁を形成したことを特徴とする請求項2に記載のスパウト付き収容体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−208657(P2010−208657A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56659(P2009−56659)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000228408)日本キム株式会社 (37)
【Fターム(参考)】