説明

スパウト付き収容体

【課題】内容物注出時に外気などが入り込むことを防止して再封止が可能であると共に、注出量の調整ができ、コストの低減が図れるスパウト付き収容体を提供する。
【解決手段】内容物60を収容する収容部5と、シート状部材3a、3bに介在されて、注出可能とするスパウト20を有する。スパウト20の溶着部21には、収容部5内に突出する板状部22が一体形成されており、重ねたシート状部材3a,3bの一側の溶着領域から収容部側に向けてシート状部材3a,3b同士を溶着することで、収容部5を、内容物60の充填領域5Aと板状部22が配される密閉領域5Bとに分けるようにし、溶着領域又はスパウト20には、密閉領域5Bに移動した内容物60を注出可能な注出部31が形成されており、密閉領域5Bから板状部22を介して、注出部31に内容物60を案内する流路31aを備え、流路31aと注出部31との間に貯留領域50を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状部材を重ねて溶着することにより内容物を収容する収容部を形成すると共に、内容物を注出可能にするスパウトを溶着したスパウト付き収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば合成樹脂製のシート(プラスチックフイルムなど)を重ねて溶着(熱溶着)すると共に、これにスパウトと称される注出口を溶着(熱溶着)したスパウト付き収容体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなスパウト付き収容体は、内部(収容部)に液体や半流動体などの内容物を充填し、スパウトを介して内容物が注出されるようになっており、医療分野、食品分野、日用品分野等、様々な分野で使用されている。
【0003】
また、上記したスパウト付きの収容体では、内容物を取り出した後、再封止できるように、キャップのような栓体を設けることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−291549号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなスパウト付き収容体を利用するに際し、特定の分野では、スパウトを介して内容物を取り出す際に、収容部内に外気などが入り込むのを防止したいことがある。これは、外気が入り込むことで内容物と反応し、内容物の性質が変化してしまう可能性があるためである。
【0006】
従来のような栓体を有するスパウトでは、使用時において、キャップのような栓体を外し、そのまま内容物を注出した後、再び栓体を取着しても、栓体を開封して注出操作をする際に、必然的に外気が収容部に入り込んでしまう。
【0007】
また、キャップのような栓体を設けることは、スパウトの成型に要するコストが比較的高くなってしまうと共に、単に栓体をあけて内容物を注出するだけでは、注出量を調整することが難しい。すなわち、栓体をあけると、内容物が一気に流れ出るようになっていることから、僅かな注出量とするような調整が難しくなる。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、内容物注出時に外気などが入り込むことを防止して再封止が可能であると共に、注出量の調整ができ、さらにコストの低減が図れるスパウト付き収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明は、シート状部材を重ねて周囲を溶着した溶着領域の内側に形成され、内容物を収容する収容部と、前記重ねたシート状部材に介在されて溶着される溶着部を具備し、内容物を注出可能とするスパウトと、を有するスパウト付き収容体であって、前記スパウトの溶着部には、前記収容部内に突出する板状部が一体形成されており、前記重ねたシート状部材の一側の溶着領域から収容部側に向けてシート状部材同士を溶着することで、内容物を充填した際、前記収容部を、内容物の充填領域と前記板状部が配される密閉領域とに分けるようにし、前記溶着領域又はスパウトには、前記密閉領域に移動した内容物を注出可能な注出部が形成されており、前記密閉領域から前記板状部を介して、前記注出部に内容物を案内する流路を備え、前記流路と前記注出部との間に貯留領域を設けたことを特徴とする。
【0010】
上記した構造のスパウト付き収容体によれば、重ねたシート状部材の一側の溶着領域から収容部側に向けてシート状部材同士を溶着することで、内容物が収容される収容部を、内容物が充填される充填領域と、スパウトの溶着部に一体形成される板状部が配される密閉領域とに分ける。充填領域と密閉領域との境界は、内容物の充填表面によって規定され、この表面が、密閉領域との間で区分けが成される充填ラインとなる。このような充填ラインは、例えば、重ねたシート状部材を、溶着領域から収容部に向けてライン状に溶着することで、その溶着ラインの延長線上に沿って現れるようになる。そして、内容物を収容部に対して一定量(又は規定量)まで充填した後は、その充填を行った部分を溶着することで、スパウトの板状部が存在する部分を、空気が存在しない(或いは殆ど存在しない)ように密閉することが可能となる。この場合、充填ラインは、重ねたシート状部材に所定の溶着を施した状態で、内容物を充填することで形成され、この充填ラインは、自立体容器の場合、その表面が略円錐形状となって現れ、その位置まで充填することで、板状部が存在する密閉領域を形成することが可能となる(一定量を超えて内容物を充填すると、シート状部材同士が離反するように広がり、密閉領域を形成することはできない。ただし、内容物を注出させて一定量(規定量)になった時点で充填ラインが発生する)。
【0011】
そして、収容部に外圧を作用させて(或いは収容体本体を傾けて)、充填領域に充填されている内容物の内圧を高めると、内容物は充填ラインを超えて密閉領域に移動するようになる。密閉領域に移動した内容物は、内容物を案内する流路を経て貯留領域に流入し、そのまま重ねたシート状部材の溶着領域又はスパウトに形成されている注出部から注出することが可能となる。なお、注出部からの注出量(流出量)は、流路の幅の寸法を変化させたり、充填領域に対する押圧力を変化させることで調整することが可能である。また、流路と注出部との間に貯留領域を設けたことで、貯留領域に、所望の量の内容物を貯留しておくことが可能となり、内容物の注出量の調整が可能となる。すなわち、必要に応じて、貯留領域に内容物を飽和させることができ、貯留領域の容積に応じた内容物の注出操作が行えるようになる。そして、収容部に対する外圧がなくなる(収容部内の内圧が低下する)と、前記密閉領域における重ねたシート状部材は、そこに存在している板状部に対して密着されるようになり、それまで内容物が通過していた流路が封止され、外部から気体や液体などが収容部内に流入することを防止することが可能となる。
【0012】
なお、上記した充填ラインについては、重ねたシート状部材を、溶着領域から収容部に向けて溶着する際の溶着態様によって適宜変形することができる。例えば、側面視した際、収容部が矩形形状のものであれば、一側の溶着領域から、所定の角度(θ)上昇傾斜するように、重ねたシート状部材を溶着する(シールラインを形成する)ことで、充填ラインは上端側の溶着領域に指向し、充填量を多く確保することが可能となる。すなわち、重ねたシート状部材を溶着する方法については、内容物が収容される収容部を、内容物が充填される充填領域と、スパウトの溶着部に一体形成される板状部が配される密閉領域とに分けるように形成されたものであれば良く、内容物の充填量、収容体の大きさ、形状などによって適宜変形することが可能である。
【0013】
また、上記した構成において、注出部と貯留領域との間に、注出流路を形成しておくことが好ましい。
【0014】
前記注出流路を形成しておくことで、貯留領域を介して内容物を注出する際、注出流路部分において、シート状部材の密着領域を確保すること(広げること)が可能となる。また、内容物を注出した後、シート状部材の密着性が高まり、外気等の流入を効果的に防止することが可能となる。
【0015】
前記注出流路は、前記スパウトの溶着部に設けることが好ましい。
このように、注出流路をスパウトの溶着部に設けることで、内容物を注出した後、注出流路内に残留した内容物は、収容部側が負圧になることで貯留領域に戻りやすくなり、内容物が垂れること(液ダレすること)がない上、外気等の流入を効果的に防止することが可能となる。
【0016】
また、前記スパウトの溶着部には、前記注出流路を閉塞可能な栓部が、ヒンジを介して回動可能に設けられることが好ましい。
前記栓部を形成しておくことで、内容物を注出した後、栓部を回動することで、容易に注出流路を閉塞することが可能となり、収容体が倒れても、内容物の注出を防止することが可能となる。また、外気等の流入を効果的に防止することが可能となる。
【0017】
上記した構成において、前記板状部には、流路内に位置する突起部を形成しておくことが好ましい。
【0018】
このように、板状部に、流路内に配置されるように突起部を形成しておくことで、内容物が流路を通過する際、流路の形状が維持されると共に、流路部分での折れや曲がりが防止されることから、流路が閉塞されるようなことがなく、注出量の減少を防止することが可能となる。
【0019】
また、上記した構成では、注出部を、前記流路の延出方向が溶着領域と交わる部分以外に形成しておくことが好ましい。
【0020】
注出部をこのような位置に形成することで、貯留領域に流入する内容物が、注出部から外部に注出しにくくなり、貯留領域を効果的に飽和状態にすることが可能となる。すなわち、注出部が、流路の延出方向上に形成されていると、貯留領域に流れ込む内容物がそのまま外部に注出してしまい、貯留領域に内容物を飽和させ難くなるが、そのような位置に注出部を形成しないようにすることで、貯留領域に所望の量を貯留しておくことが可能となる。なお、注出部の位置は、貯留領域のいずれかの位置に形成されることとなるが、前記流路の延出方向に対して、直交する方向上に形成しておくことが好ましい。
【0021】
また、前記板状部の表面については、粗面化しておくことが好ましい。
このように板状部の表面を粗面化しておくことで、シート状部材の裏面が密着した際、僅かな間隙を確保することができ、その部分に内容物を毛細管現象によって滞留させておくことが可能となる。すなわち、内容物が、板状部が存在する領域に滞留することで、外気や液体などの収容部への流入を確実に防止することができ、シール効果を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、内容物注出時に外気などが入り込むことを防止して再封止が可能であると共に、注出量の調整ができ、さらにコストの低減が図れるスパウト付き収容体が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るスパウト付き収容体の第1の実施形態を示す図であり、溶着部分を斜線で示した側面図。
【図2】図1に示すスパウト付き収容体に用いられているスパウトの構造を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図。
【図3】図1に示すスパウト付き収容体のカットラインをカットした状態を示す図。
【図4】図3に示すスパウト付き収容体を90度傾けた状態を示す図。
【図5】図4に示すスパウト付き収容体を90度傾けた状態を示す図。
【図6】本発明に係るスパウト付き収容体の第2の実施形態を示す側面図。
【図7】本発明に係るスパウト付き収容体の第3の実施形態を示す側面図。
【図8】本発明に係るスパウト付き収容体の第4の実施形態を示す側面図。
【図9】図8に示すスパウト付き収容体の変形例を示す側面図。
【図10】本発明に係るスパウト付き収容体の第5の実施形態を示す側面図。
【図11】本発明に係るスパウト付き収容体の第6の実施形態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1及び図2は、本発明に係るスパウト付き収容体の第1の実施形態を示す図であり、図1は、溶着部分を斜線で示したスパウト付き収容体の側面図、図2は、図1に示すスパウト付き収容体に用いられているスパウトの構造を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【0025】
本実施形態に係るスパウト付き収容体1は、例えば、図1に示すような形態で構成することができ、矩形のシート状部材3a,3bを重ね合わせ、斜線で示す周辺部分をヒートバー等によって熱溶着することによって、その収容体本体が形成される。
【0026】
前記シート状部材3a,3bは、柔軟性を有する合成樹脂製のシート(プラスチックフイルム)、例えば、溶着し易いように、ポリエチレンやポリプロピレンなどによって構成されており、公知のように、その表面側に、収容物に対するバリア性(ガスバリア性および遮光性)を高めるように、ナイロン、アルミホイルなどを積層した、いわゆる複合層で構成されることが好ましい。
【0027】
上記したように、前記シート状部材3a,3bを、図に示す斜線領域でヒートバーによって熱溶着することにより、液体や半流動体のような内容物が収容される収容部5を有する収容体本体が形成される。具体的に本実施形態では、重ね合わされたシート状部材3a,3b同士を、上端部10、側縁部11,12、及び下端部13で熱溶着することにより、内容物60を収容するための収容部5を画定する収容体本体が形成される。なお、本実施形態では、下端部13を溶着するに際して、底壁13aが溶着されており、スパウト付き収容体は、自立体として構成されている。
【0028】
前記上端部10には、後述するスパウト20が介在されて溶着される。本実施形態では、スパウト20は、上端部10の略中央部に介在されて取着されており、スパウト20を溶着した上端部10の部分に、後述するような注出部を形成して内容物60が注出できるよう構成されている。
【0029】
ここで、本発明における「スパウト」とは、シート状部材に介在されて溶着される溶着部を備えており、収容部5に収容された内容物60を注出可能にすると共に、シール効果を有するように構成されたものであれば良く、本発明では、溶着部に一体化される板状部が、そのような機能を果たすように構成されている。なお、スパウトを構成する溶着部の形状、及び板状部の形状などについては、特定のものに限定されることはない。
【0030】
前記シート状部材3a,3bには、重ねたシート状部材3a,3bの一側の溶着領域(本実施形態では、側縁部11としている)から収容部5側に向けて、シート状部材を溶着することで、前記収容部5に内容物60が充填された際、充填領域5Aと、内容物が充填されることのない密閉領域5Bとに分ける充填ライン30が形成される。この密閉領域5Bは、内容物60が充填された後、充填を行った部分を溶着して(例えば、上端部10のスパウト20の右側の部分を未溶着としておき、この部分から内容物60を充填した後、その部分を溶着する)収容部5を閉じた空間にした際、空気が存在しない(或いは、殆ど存在しない)領域であり、シート状部材が、後述するスパウト20の板状部22に対して密着する部分となる。また、充填ライン30は、図1では、便宜上、直線状に示してあるが、自立体容器の場合、略円錐状の表面によって規定される。なお、この充填ライン30を超えて内容物を充填すると、上記した密閉領域5Bを形成することができなくなる。
【0031】
上記した充填ライン30は、重ねたシート状部材3a,3bを、例えば、溶着領域(側縁部11)から収容部5に向けてライン状に溶着することで、その溶着ラインの延長線上に沿って形成することが可能である。図1では、そのような溶着部分(シールライン)を符号15で示しており、このように、重ねたシート状部材をライン状に溶着することで、その延長線上に、充填ライン30を形成することが可能となる。すなわち、シールライン15を形成することで、重ねたシート状部材3a,3bの離反が制限され、それにより、充填量を制限した状態で密閉領域5Bを形成することが可能となる。
【0032】
前記シールライン15については、充填ライン30が、図1に示すように、側縁部11側から上昇傾斜するように形成されることが好ましい。このような充填ライン30については、シールライン15を、側縁部11から所定の角度(θ)上昇傾斜するように溶着することで形成することが可能であり、このように、充填ライン30を、上端側の溶着領域(上端部10)に指向させることで、可能な限り、密閉領域5Bを形成した状態で充填量を多く確保することが可能となる。
【0033】
本実施形態では、収容体本体の大きさを、高さ(側縁部11,12の長さ)200mm、幅(上端部10、下端部13の長さ)100mmとしており、このような収容体本体の大きさであれば、前記シールライン15を、高さが中間位置である100mmの位置で、前記角度(θ)を40度に設定することで、充填ライン30が図に示すように形成されるようになり、その充填量が最大となるように確保することが可能となる。具体的には、上述した収容体本体の大きさであれば、上昇角度を40度に設定した際、150cc〜180cc程度の容量を確保することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、シールライン15を途中で湾曲させて、再び側縁部11に向かうようにしている(湾曲した部分を符号15aで、側縁部11に向かう部分を符号15bで示してある)。シールライン15を、このように形成することで、密閉領域5Bを確実に閉じた状態にすることができ、また、後述するスパウト20の板状部22に対する密着性を向上することが可能となる。
【0035】
なお、シールライン15(15a,15b)については、重ねたシート状部材3a,3bを線状となるように溶着して形成したが、この領域A全体を溶着しても、同様な充填ライン30が形成されるようになる。すなわち、密閉領域5Bを形成可能とする充填ラインが形成されれば、重ねたシート状部材の溶着態様については、線状、面状、スポット状(或いはこれらの組み合わせ)にするなど、適宜変形することが可能である。
【0036】
前記スパウト20は、シート部材3a,3bに介在されて溶着が成される溶着部21と、この溶着部21に一体形成され、前記収容部5(詳細には、密閉領域5B)に突出する板状部22とを備えている。スパウト20は、樹脂、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィンによって一体成型することが可能であり、前記溶着部21については、肉厚が2.0mm〜2.5mm程度、板状部22については、肉厚が0.2mm〜0.25mm程度となるように形成されている。
【0037】
この場合、板状部22については、上部のみが溶着部21と一体化されており、密閉領域5B内に位置する部分が自由に可動するため、その部分におけるシート状部材3a,3bとの間で密着性の向上が図れて気密性が保たれると共に、充填領域5Aに充填された内容物の内圧が高まった際には、シート状部材3a,3bとの間で内容物が沿って流れる流路を確保する機能を有する。すなわち、充填ライン30を越えて、密閉領域5B内に移動した内容物は、板状部22の表面に沿って移動することが可能となっている。
【0038】
また、図2(c)に示すように、本実施形態の板状部22は、溶着部21に対して湾曲部21aを介して均一幅となるように形成されているが、溶着部21と板状部22の間は、テーパによって面一状に構成されていても良い。すなわち、板状部については、溶着部から先端側に移行するに連れて、次第に細幅化するような構成であっても良い。
【0039】
板状部22をこのようなテーパ状に形成しても同一の作用効果を奏することが可能であると共に、スパウトを成型する際に、湾曲部21aが存在しないことから、ヒケや不良が生じ難くなり、成型が容易になって生産性を向上することが可能となる。また、板状部22については、密閉領域5B内に配置されるように構成されていれば良く、具体的には、本実施形態の板状部22は、溶着部21がシート状部材3a、3bに溶着された際、上端部10の略中央部に配置されている。
【0040】
前記シート状部材3a,3bの溶着領域には、内容物を注出可能な注出部31が形成されている。本実施形態では、上端部10の側縁部11側に、上下方向に沿うように形成されており、この部分から、充填領域5Aから密閉領域5Bに移動し、更に、後述する貯留領域に流れ込んだ内容物が注出できるようになっている。また、注出部31の先端にはカットライン32が形成されており、カットライン32をカットすることで注出部が開口され、注出操作が容易に行えるようになっている。
【0041】
前記密閉領域5Bには、板状部22に沿って移動する内容物を案内する流路31aが形成されており、さらに、流路31aと前記注出部31との間には、貯留領域50が形成されている。この貯留領域50は、内容物の注出量を制御する機能を備えており、注出部31から連続的に内容物を注出できることに加え、さらに所望の量(貯留領域50の容積)だけを注出できるようにする機能を備えている。具体的に、本実施形態の貯留領域50は、シート状部材3a,3bを溶着するに際して、前記シールライン15bの側縁部11側から上端部10に向けて傾斜しながら上昇するシール壁(貯留壁)15cを形成すると共に、上端部10から前記スパウト20の溶着部21と隣接して、下方に延出するようなシール壁(貯留壁)10cを形成することで、側縁部11との間に設けられている。この場合、シール壁15cの先端と、シール壁10cの先端は、図1に示すように、未溶着とされており、この未溶着部分が、前記板状部22と隣接して形成される流路31aとなっている。
【0042】
前記貯留領域50については、スパウト20を上端部10の略中央部に介在させた状態でシート状部材3a,3bの周囲領域を溶着する際に形成することが可能であり、その容量については、内容物の種類、使用態様に応じて適宜変形することが可能である。例えば、内容物として、醤油などを考慮した場合、小出しに注出できるように、その容量については、1.5cc〜2.5ccとなるように設定されている。
【0043】
上記した構成において、注出部31は、貯留領域50のいずれかの部分に形成することが可能であるが、少なくとも、前記流路31aの延出方向Dと、溶着領域が交わる部分以外に形成しておくことが好ましい。すなわち、注出部31を、延出方向Dに沿って形成すると、流路31aを介して貯留領域50に流入する内容物60は、そのまま注出部から外部に注出し易くなってしまい、貯留領域50を内容物60で飽和状態にし難くなってしまう(必要な注出量が確保され難い)。なお、注出部31の位置は、貯留領域50のいずれかの位置に形成されることとなるが、前記流路の延出方向に対して、直交する方向上に形成しておくことが好ましい。
【0044】
上記したように、本実施形態では、貯留領域50は、シール壁10cとシール壁15c、及び側縁部11によって形成されており、延出方向Dと交差するように、上下方向に広がる形状となっている。このため、注出部31は、貯留領域50を効果的に飽和状態にできるように、延出方向Dと直交する方向上、具体的には、上端部10の位置に形成されている。貯留領域50には、上記したように微量(例えば、本実施形態では1.5cc〜2.5cc)の内容物が貯留され、後述するように、貯留領域50に外圧を加えることで、そこに貯留されている内容物の注出(微量注出)が可能となる。
【0045】
なお、前記注出部31と前記貯留領域50との間には、注出流路33を形成しておくことが好ましい。このような注出流路33は、貯留領域50の寸法を変更することで注出量を規制すると共に、そのような注出流路33を形成しておくことで、貯留領域50を介して内容物を注出する際、注出流路部分において、シート状部材の密着領域を確保すること(広げること)が可能となる。すなわち、内容物を注出した後のシート状部材同士の密着性が高まり、外気等の流入を効果的に防止することが可能となる。上記した大きさの収容本体となっている本実施形態の注出流路33は、貯留領域50から注出部31に至るまでの長さが、15mm〜25mmとされている。すなわち、注出流路33の長さを、この程度確保しておくことで、内容物が注出した後、注出流路33が密着する領域が効果的に確保され、これにより、外気や液体等が貯留領域50(収容体の内部)に浸入することを効果的に防止することができる。
【0046】
また、本実施形態のスパウト付き収容体1は、スパウト20に一体形成される板状部22に、前記流路31a内に位置するように突起部22aが一体形成されている。この場合、突起部22aは、流路31aから突出して貯留領域50内に位置していても良いし、突出することなく、流路31aの中間部分で終端していても良い。
【0047】
このように、板状部22に流路31a内に位置する突起部22aを形成することにより、内容物が流路31aを通過する際、流路31aの形状が維持されると共に、流路部分で折れや曲がりが防止されることから、流路31aが閉塞されるようなことがなく、流出量の減少を防止する(一定の注出量を維持する)ことが可能となる。また、突起部22aが存在することで、流路31a部分で保水面が増加して保水効果を高めることが可能となり、この部分でシール効果を高めて外気等の流入を効果的に防止することが可能となる。
【0048】
以上のように構成されるスパウト付き収容体1を製造する場合には、まず、前述したように、シート状部材3a,3bを重ね、シールライン15、シール壁10c,15c、側縁部11,12、及び下端部13を熱溶着すると共に、上端部10にスパウト20を介在して、溶着部21にシート状部材3a,3bを溶着する。
【0049】
なお、周囲領域を熱溶着する際には、充填領域5Aが開口されるように、周囲領域の一部(例えば、上端部10の一部)を未溶着状態にしておく。この未溶着部分は、収容部5の充填領域5A内に所定の内容物60を充填する部分となり、内容物の充填作業が終了した段階(一定量まで内容物を充填した段階;充填ライン30まで充填した段階)で、その部分を熱溶着することで、密閉領域5Bが形成された内容物60が収容されたスパウト付き収容体1が完成する。
【0050】
内容物60が収容されたスパウト付き収容体1から内容物60を注出する際には、まず、カットライン32をカットする。カットライン32は、突出する注出部31の先端を摘んで引き裂くことで容易にカットすることが可能であり、これにより、注出部31(注出流路33)が開口する。
【0051】
内容物60の注出に際しては、連続的に注出する場合と、微量注出する場合がある。連続的に内容物を注出する場合、図3に示ように、カットラインをカットした後、容器本体を、図5に示す位置にして、収容部5(充填領域5A)に外圧を作用させる。これにより、充填領域5Aの内圧が高まり、内容物は充填ライン30を超えて密閉領域5Bに移動する。このとき、密閉領域5Bのシート状部材3a,3bは、内圧が高まることで相互に離反すると共に板状部22の表面との間においても離反作用を受け、内容物が移動可能な流路が確保される。内容物は、板状部22及び突起部22aに沿って流路31aを介して貯留領域50へ移動し、そのまま注出流路33から注出される。この場合、押圧する部分については、充填領域5Aの部分に加えて貯留領域50の部分を押圧しても注出することが可能である。
【0052】
また、内容物を微量注出する場合、図3に示す状態から図4に示す状態とし、充填領域5Aを加圧することで、内容物を貯留領域50に貯留させる。この際、上記したように、注出部31の位置が、流路31aの延出方向に沿った位置に形成されていないことから、貯留領域50に内容物を飽和状態にすることが可能となる。そして、この状態で、図5に示す状態に傾け、貯留領域50を押圧することで内容物の微量の注出が可能となる。
【0053】
連続注出又は微量注出が終了した後、スパウト付き収容体1を水平に戻す(挟圧力を解除する)ことにより、内容物60の注出は停止する。この際、内容物60は、充填領域5A側に戻ると共に、広がった状態にあった密閉領域5Bでは減圧作用を受け、シート状部材3a,3bは板状部22に引き寄せられて両者の間を閉塞させる。すなわち、シート状部材3a,3bが板状部22の表面に密着することでシールが形成され、この結果、充填領域5A内に、外気や液体等、他物が侵入することが防止される(内容物60と外気が反応するようなことはない)。なお、上記した注出流路33の部分では、貯留領域50側が負圧になることで、その部分のシート状部材が密着するように閉塞され、注出流路部分においてもシール効果が得られるようになる。また、本実施形態におけるスパウトの構成では、シール壁10c,15cと板状部22との間に多少の隙間G(図1参照)が生じているが、この隙間Gの周辺領域や流路31a内にも、内容物が滞留してシールが形成されるようになり、充填領域5A内に外気や液体等が侵入することが効果的に防止される。
【0054】
上記したような注出操作を段階的に繰り返すと、最初に形成されていた充填ライン30は、内容物の減少に伴って、図1に示すように、30a,30b、30c,30d…と減少して行く。すなわち、次第に密閉領域5Bの領域が増えて行くが、上記したように、密閉領域では、板状部22が存在することで、シール状態が確保されているため、内容物が減少しても、そのシール効果はそのまま維持される。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、内容物の注出量の調整(連続注出、微量注出)が可能なスパウト付き収容体1を低コストで製造することが可能となる。すなわち、板状部22が形成されたスパウト20をシート状部材3a,3bに介在して溶着を施すと共に、製袋工程時に、所定の領域にシールライン15、及びシール壁10c、15cを形成するだけで良いことから、注出操作時に収容部内に外気や液体等が入り込むことのないスパウト付き収容体の構造が簡略化され、かつ、そのようなスパウト付き収容体を低コストで製造することが可能となる。
【0056】
特に、上記した構成によれば、スパウト20は、溶着部21と板状部22を有する簡単な構造であり、再封止をするための特別な構造を備えていないため、スパウトの成型に要するコストを削減することが可能となる。また、スパウト20は、収容体本体の内側に位置しており、シート状部材3a,3bで構成される収容体本体は、外側に突出する部分が無いため、取扱い性も向上する。
【0057】
なお、上記したスパウト20の板状部22については、その表面を粗面化しておくことが好ましい。例えば、シボ加工を施す等、その表面を粗面化しておくことで、シート状部材3a,3bとの間で保水性を保つことが可能となる。すなわち、表面を粗面化しておくことで、シート状部材との間に毛細管力が働き、両者の間に内容物を保持しておくことが可能となり、流路31a部分からの外気の流入を確実に防止して、充填領域に存在している内容物の気密性を確実に維持することが可能となる。
【0058】
次に、図6を参照して、本発明に係るスパウト付き収容体の第2の実施形態について説明する。図6はスパウト付き収容体の側面図であり、以下に説明する実施形態では、前記実施形態と同一の構成部材については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0059】
本実施形態のスパウト付き収容体1における注出流路33は、上端部10に対し、側縁部11側に傾斜して形成されていることを特徴とする。この注出流路33は、前記側縁部11及び前記上端部10を溶着する際、貯留領域50から上方に向けて側縁部11側に傾斜した、未溶着部とすることで形成され、第一実施形態と同様、カットライン32をカットすることで内容物が注出可能となっている。
【0060】
このように構成される注出流路33は、内容物60を注出する際、注出流路33が傾斜して形成されていることから、収容体本体を大きく傾ける必要がなくなり、内容物60の注出をより円滑に行うことが可能となる。なお、注出流路33の傾斜角度及び形成される位置に関しては、図に示す位置に限定されることはなく、上端部10のいずれかの位置(上端部10と側縁部11の角のコーナー部を含む)に形成されていれば良い。
【0061】
図7は、本発明に係るスパウト付き収容体の第3の実施形態を示す側面図である。
【0062】
本実施形態のスパウト付き収容体1における注出流路33は、側縁部11とシール壁15cの間に形成され、注出部31は側縁部11の略中央部に形成されていることを特徴とする。前記注出流路33は、前記側縁部11と前記シール壁15cの間において、シール壁15c側に湾曲するように形成されており、前記注出流路33と、前記側縁部11が交差する部分に、注出部31が形成されている。また、側縁部11には注出部31を開口するように、上記した実施形態と同様、カットライン32が形成されており、カットライン32をカットすることで内容物60が注出可能となっている。
前記注出流路33を湾曲するように形成したことで、流路長さを確保することができ、内容物60が注出した後、注出流路33が密着する領域が効果的に確保され、外気や液体等が貯水領域50に浸入することを効果的に防止することが可能となる。また、注出部31を側縁部11に形成したことで、収容体本体を90度傾けるだけで内容物の注出が可能となり、取り扱い性が向上する。
【0063】
図8は、本発明に係るスパウト付き収容体の第4の実施形態を示す側面図である。
【0064】
本実施形態のスパウト20Aの溶着部21Aは、前記実施形態と比較して、側縁部11方向へ延長して形成されると共に、上記した実施形態と同様、スパウト20Aは、板状部22が密閉領域5Bの略中央部に位置するように、上端部10に介在され、取着されている。
前記溶着部21Aの貯留領域50側の下面には、貯留領域50に開口する開口部21Bが形成されると共に、前記溶着部21Aの側縁部11側の端面には、開口した注出部31Aが形成されており、前記開口部21Bと前記注出部31Aとの間に、注出流路33Aが前記溶着部21Aと一体形成されている。
【0065】
前記溶着部21Aの端面には、注出流路33A、すなわち、開口した注出部31Aを閉塞可能な栓部40が、ヒンジ40aを介して回動可能に設けられている。前記栓部40は、ヒンジ40aを介して、注出部31Aを閉塞しており、栓部40が位置する部分のシート状部材3a、3bは未溶着部10Aとされている。そして、未溶着部10Aには、カットライン32が形成されており、この部分をカットすることで、栓部40によって閉塞された注出部31Aが露出する。
【0066】
前記栓部40は、前記ヒンジ部40aをはさみ等で切断することで、一体形成されていた溶着部21Aから分離することができ、注出部31Aから取り外し(開栓)可能となる。前記栓部40を開栓すると、内容物60は、上述した実施形態と同様、貯留領域50から開口部21Bを経て、溶着部21Aに設けた注出流路33Aへ注出し、注出部31Aから注出される。なお、前記注出部31Aから注出した内容物60は、収容部側の負圧によって注出流路33Aへ戻るため、注出部31Aに残留することなく、注出部31Aの端部から液ダレし難い構成となる。また、内容物60が充填領域5A側に戻ると共に、密閉領域5Bではシート状部材が密着するため、外気や液体が貯留領域50に浸入することを効果的に防止することが可能となる。
【0067】
さらに、前記栓部40で前記注出流路33Aを閉塞することで、内容物60が注出することを防止することが可能となる。すなわち、内容物60が残っている状態で収容体本体が倒れると、内容物60が注出部31Aから注出してしまう可能性があるが、栓部40で注出領域33Aを閉塞することで、注出を防止することが可能となる。また、外気や液体等が貯留領域50に浸入することを効果的に防止することが可能となる。
【0068】
図9は、図8に示すスパウト付き収容体の変形例を示す側面図である。
【0069】
本実施形態のスパウト付き収容体における注出流路33Aは、前記実施形態同様、溶着部21Aに設けられているものの、前記実施形態とは異なり、開口部21Bから上端部10方向(垂直方向)に形成されることを特徴とする。この注出流路33Aには、前記実施形態同様、ヒンジ部40aを介して回動可能な栓部40を設けており、注出部31Aを閉塞している。また、栓部40が位置する部分のシート状部材は未溶着部10Aとされ、上端部10から側縁部11に延びるカットライン32をカットすることで、栓部40によって閉塞された注出部31Aが露出し、内容物60が注出可能となっている。
【0070】
このように構成される注出流路33Aは、内容物60を注出する際、収容体本体を180度回転した状態から、内容物60を注出することを可能とする。なお、注出流路33Aは、溶着部21Aの様々な領域に形成することが可能である。また、前記溶着部21Aは、側縁部11や上端部10の端面部分まで延出しても良く、注出流路33Aの形成位置を変更することで、様々な方向から内容物を注出することが可能である。
【0071】
図10は、本発明に係るスパウト付き収容体の第5の実施形態を示す側面図である。
【0072】
本実施形態のスパウト付き収容体における貯留領域50Aは、前記実施形態と比較して、下端部13方向へ延出して形成されており、前記実施形態よりも、貯留量が多くなるよう(5.5cc〜6.5cc程度)、シールライン15、15c及び側縁部11を溶着することで形成されることを特徴とする。前記シールライン15は、図に示すように、側縁部11の下端部13側から、収容部の略中央部に向けて、上昇傾斜するようライン状に溶着して形成される。また、シールライン15cは、シール壁10cが位置するのと略同一の位置に向けて、シールライン15の途中から、上端部10方向(垂直方向)へ溶着することで形成され、湾曲したシールライン15a、及び、側縁部11に向かうシールライン15bについては、前記実施形態同様に形成されている。
【0073】
本実施形態において、溶着部21Aには図9に示した構成と同様、上下方向に延びる注出流路33Aが形成されており、ヒンジ部40aを介して回動可能な栓部40により閉塞される。栓部40によって、貯留領域50Aを閉塞した状態で充填領域5Aを押圧すると、内容物60が板状部22および突起部22aに沿って流路31aを介して貯留領域50Aへ移動し、貯留領域50Aを飽和状態にすることが可能となっている。従って、充填領域5Aの内容物60が減少し、収容体本体の自立性の維持が困難になった際、貯留領域50Aを飽和状態にすることで、上端部から下端部に亘る内容物60で自立性が保持され、収容体本体が中折れ等することを防止でき、長く自立することが可能となる。具体的に、本実施形態では、貯留領域50Aを飽和状態とすることで、充填領域5Aの残容量が30%程度になるまで、自立性を保持することが可能となる。なお、貯留領域50Aに貯留された内容物は、その部分を直接押圧することで、微量(充填領域50Aに貯留されている容量)の注出が可能となる。この場合、内容物60を注出した後の貯留領域50Aは、栓部40により閉塞された状態で充填領域5Aを押圧すると、上記したように、内容物60が貯留領域50Aへ移動し、繰り返し飽和状態を維持することが可能となる。
【0074】
図11は、本発明に係るスパウト付き収容体の第6の実施形態を示す側面図である。
【0075】
本実施形態は、収容部5に、シール壁17を形成し、前記シール壁17と側縁部12との間に第2の貯留領域50Bを形成したことを特徴とする。前記シール壁17は、収容部5において、板状部22と側縁部12の間の略中央部に、一端が密閉領域5Bの上端側で開口し、他端が充填領域5Aの下端側で開口するように直線状に溶着されている。また、シール壁17の上端部は、側縁部11側方向に屈曲されており、板状部22とシール壁17の略中央部まで延出するシール壁17aを形成している。充填ライン30Aは、前記実施形態同様に、シールライン15の延長線上に沿って現れ、内容物60は、屈曲形成されたシールライン17aまで充填可能としている。
【0076】
本実施形態において、貯留領域50A及び注出流路33Aは、図10に示す実施形態同様に構成されている。前記注出流路33Aを栓部40で閉塞した状態で、充填領域5Aを押圧すると、内容物60が貯留領域50A及び第2の貯留領域50Bへ移動する。貯留領域50Aは、図10に示した構成同様、内容物60が板状部22及び突起部22aに沿って流路31aを介して移動することで飽和状態となる。また、第2の貯留領域50Bは、内容物60がシールライン17に設けた下端側の開口部から移動することで貯留領域となる。この場合、図に示すように充填領域5Aの容量が第2の貯留領域50Bより大きいため、充填領域5Aの内容物が減少しても、両者の内圧を一定化する機能が働き、第2の貯留領域50Bの充填ラインはある程度高く維持される。
【0077】
このように形成される第2の貯留領域50Bは、収容体本体の上端部から下端部に亘って内容物60が貯留されることで、中折れ等することが防止でき、収容体本体の自立性を保持することを可能とする。従って、収容部内の内容物が減少し、さらに、貯留領域50Aによる自立性の保持が困難になる場合(本実施形態においては容量の30%程度以下の残量)があっても、注出流路33Aを栓部40で閉栓した後、充填領域5Aを押圧し、第2の貯留領域50Bに内容物60を貯留することで、自立性を保持させることが可能となる。このため、貯留領域50Aについては、図1に示した貯留領域50と同様に構成しても良い。
【0078】
なお、充填領域5Aを押圧して注出する連続注出時において、充填領域5A及び貯留領域50Aからの注出だけでなく、第2の貯留領域50Bから貯留された内容物の移動が起こる場合がある。この際、注出流路33Aを栓部40で閉塞した後、充填領域5Aを押圧することで、第2の貯留領域50Bを再び貯留状態にすることが可能となり、上述した通り自立性も保持される。さらに、貯留領域50A及び充填領域5Aに充填されている内容物60のほぼ全てを注出した後、第2の貯留領域50Bを直接押圧すると、内容物60は板状部22及び突起部22aに沿って流路31aへ移動するため、全ての内容物の注出が可能となっている。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0080】
例えば、スパウトの溶着部の形状については、適宜変形することができ、注出部の構成についても、別途口栓を付ける等、適宜、変形することが可能である。
【0081】
板状部22の形状については、矩形以外にも、略楕円形状にする等、適宜、変形することが可能である。例えば、略楕円形状にすることで、シート状部材との間で起伏が生じ易くなり、保水面を増加させることが可能となる。
【0082】
また、板状部の表面に段差を形成しておくことで、シート状部材と板状部表面との間の接触面が増加し、保水性を向上することが可能となる。この場合、段差は、板状部の表面よりも高くなるように形成しておき、その表面を平坦状にする等、適宜、変形することが可能である。
【0083】
前記段差の形状や配置箇所については、特に限定されることはなく、例えば、規則正しい凹凸状にする等、適宜、変形することが可能である。また、段差と板状部の表面との境界については、切り立ったエッジにしても良いが、テーパ状にしておくことで、板状部との間で保水面を増やすことが可能となる。なお、表面部については、上述したように、粗面化しておくことで、保水効果をより高めることが可能となる。
【0084】
さらに、上記したシート状部材3a,3bの収容部領域の溶着態様については、内容物が収容される収容部を、内容物が充填される充填領域5Aと、スパウト20の溶着部に一体形成される板状部22が配される密閉領域5Bとに分けるように形成されたものであれば良く、内容物の充填量(形成される充填ラインの位置)、収容体の大きさ、形状などによって、適宜変形することが可能である。
なお、上記した実施形態における特徴については、実施形態に限定することなく、適宜適用することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 スパウト付き収容体
3a,3b シート状部材
5 収容部
5A 充填領域
5B 密閉領域
15 シールライン
20、20A スパウト
21、21A 溶着部
22 板状部
30、30A 充填ライン
31、31A 注出部
31a 流路
32 カットライン
33、33A 注出流路
40 栓部
50、50A、50B 貯留領域
60 内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を重ねて周囲を溶着した溶着領域の内側に形成され、内容物を収容する収容部と、前記重ねたシート状部材に介在されて溶着される溶着部を具備し、内容物を注出可能とするスパウトと、を有するスパウト付き収容体であって、
前記スパウトの溶着部には、前記収容部内に突出する板状部が一体形成され、
前記重ねたシート状部材の一側の溶着領域から収容部側に向けてシート状部材同士を溶着することで、内容物を充填した際、前記収容部を、内容物の充填領域と前記板状部が配される密閉領域とに分けるようにし、
前記溶着領域又はスパウトには、前記密閉領域に移動した内容物を注出可能な注出部が形成されており、
前記密閉領域から前記板状部を介して、前記注出部に内容物を案内する流路を備え、
前記流路と前記注出部との間に貯留領域を設けたことを特徴とするスパウト付き収容体。
【請求項2】
前記注出部と貯留領域との間に、注出流路を形成したことを特徴とする請求項1に記載のスパウト付き収容体。
【請求項3】
前記注出流路は、前記スパウトの溶着部に設けたことを特徴とする請求項2に記載のスパウト付き収容体。
【請求項4】
前記スパウトの溶着部には、前記注出流路を閉塞可能な栓部が、ヒンジを介して回動可能に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のスパウト付き収容体。
【請求項5】
前記板状部には、前記流路内に位置する突起部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のスパウト付き収容体。
【請求項6】
前記注出部は、前記流路の延出方向が、前記溶着領域と交わる部分以外に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のスパウト付き収容体。
【請求項7】
前記内容物を充填した際の充填ラインが、前記一側の溶着領域から上昇傾斜するように、前記重ねたシート状部材同士を溶着したことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のスパウト付き収容体。
【請求項8】
前記板状部の表面を粗面化したことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のスパウト付き収容体。
【請求項9】
前記貯留領域は、前記収容部の上端部から下端部に亘って形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のスパウト付き収容体。
【請求項10】
前記収容部に、一端が前記密閉領域の上端側で開口し、他端が前記充填領域の下端側で開口する、第2貯留領域を形成したことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のスパウト付き収容体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−76759(P2012−76759A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221346(P2010−221346)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000228408)日本キム株式会社 (37)
【Fターム(参考)】