説明

スパッタリング装置

【課題】基板表面の損傷を抑えつつ、成膜速度を向上させることのできるスパッタリング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】スパッタリング装置は、対になる部材が空間をあけて対向するよう配置され、空間に磁場を発生させる磁場発生部1(1a,1b)と、対になる部材の側方に、空間と対面するよう被成膜部材6を配置可能な被成膜部材保持部と、空間内に配置され、被成膜部材6に向けて傾斜したターゲット面2aを有するターゲット部材2と、ターゲット部材2に接続され、ターゲット部材2へ電圧を印加する電力供給部3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置に関し、特に、有機エレクトロルミネセンス(有機EL)などの有機素子を備えた基板上に金属膜、または金属化合物などを成膜するためのスパッタリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なスパッタリング装置として、2極スパッタリング装置及びマグネトロンスパッタリング装置がある。
2極スパッタリング装置は、ターゲットを陰極、薄膜を形成する基材・基板を陽極とし、陰極及び陽極は対向して配置されることを特徴とする。2極スパッタリング装置では、電極間に電圧を印加してガスをプラズマ化させる。プラズマ化したガスは電場により加速されターゲット表面に衝突し、ターゲット物質をたたき出す。たたき出されたターゲット物質が基材・基板に堆積して膜を形成する。
【0003】
マグネトロンスパッタリング装置は、ターゲットの裏面に磁石を設置して磁場を発生させることを特徴とする。マグネトロンスパッタリング装置では、2極スパッタリング装置と同様にガスをプラズマ化させる。プラズマ化されたガスはターゲット表面に衝突し、二次電子をたたき出す。この二次電子は磁場に捕捉され、磁力線に沿って螺旋状に運動し、ガスのプラズマ化を促進する。これにより、マグネトロンスパッタリング装置は、2極スパッタリング装置よりも早い成膜速度が得られる。
【0004】
他のスパッタリング装置として、対向ターゲット型スパッタリング装置がある。対向ターゲット型スパッタリング装置は、ターゲットを対向させて配置し、ターゲットの裏側にそれぞれ磁石を設置することを特徴とする。ターゲットの裏側に設置された磁石間には、図12に示すような電場に沿った向きにミラー型磁場が形成される。プラズマ化されたガスや二次電子は、磁場に補足されるため、対向ターゲット型スパッタリング装置では、ターゲット間に高密度プラズマ領域を形成することができる。それによって、成膜速度を速くすることができる。また、対向ターゲット型スパッタリング装置では、基材・基板が磁場・電場の外(側方)に配置され、磁場から飛び出した粒子を基材・基板上に堆積させる。それによって、基材・基板表面の損傷を抑制することができる。
【0005】
また、対向ターゲット型スパッタリング装置として、図13に示すような磁石を部分的に配置してカスプ磁場(部分的に発生させた磁場)を形成させるものもある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−59657号公報(請求項1及び図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
2極スパッタリング装置の構造は簡単であるが、不活性ガスをイオン化するグロー放電を起こすためのガス導入量が多く必要であり、その導入ガスが障害となって成膜速度が遅くなる。2極スパッタリング装置及びマグネトロンスパッタリング装置は、基材・基板がプラズマに曝される上、直接的に粒子が基板に堆積する。それにより、基材・基板が損傷を受けるという問題がある。特に、表面に有機EL素子などの有機層が形成された基板などでは、ソフトマテリアルである有機層の損傷が大きくなる。
【0008】
対向ターゲット型スパッタリング装置、特に特許文献1のような磁石を部分的に配置した対向ターゲット型スパッタリング装置では、ターゲットの周辺にも強い磁場が形成されるため、その磁場中で加速された高エネルギーの粒子などが基材・基板へと衝突し、基材・基板を損傷させる。そのため、特許文献1のように、ターゲット近傍と基材・基板との間にプラズマ抑制板などを設ける保護対策が必要となる。また、特許文献1に記載の方法では、横に飛んでくる粒子を捕獲して基材・基板に堆積させるため成膜速度が遅いという問題もある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板表面の損傷を抑えつつ、成膜速度を向上させることのできるスパッタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、対になる部材が空間をあけて対向するよう配置され、前記空間に磁場を発生させる磁場発生部と、前記対になる部材の側方に、前記空間と対面するよう被成膜部材を配置可能な被成膜部材保持部と、前記空間内に配置され、前記被成膜部材に向けて傾斜したターゲット面を有するターゲット部材と、前記ターゲット部材に接続され、前記ターゲット部材へ電圧を印加する電力供給部と、を備えるスパッタリング装置を提供する。
【0011】
上記発明によれば、ターゲット部材に電圧を印加することでプラズマが形成される。ターゲット部材は、磁場発生部により発生させた磁場中に配置されるため、磁場内に高密度プラズマ領域が形成され、一定レベルの成膜速度を維持できる。また、被成膜部材をプラズマからシールドする部材を設ける必要がない。ターゲットは被成膜部材に対して角度を持った面に配置されているため、ターゲットと被成膜部材とを対向させて成膜する場合と比較して、直接被成膜部材に流入する粒子の量を低減することができる。また、プラズマ(電子、正負イオン)による被成膜部材表面の損傷を抑制することができる。
【0012】
上記発明の一態様において、前記磁場発生部の前記空間側の面に、ターゲットと同じ材質からなる部材またはスパッタされない材質からなる部材からなる表層部が設けられることが好ましい。
【0013】
上記構成のスパッタリング装置では、電場によって加速された粒子が磁場発生部の空間側の面に衝突する。上記発明の一態様によれば、磁場発生部の空間側の面に、ターゲットと同じ材質からなる部材を配置することで、被成膜部材表面に形成される膜に他の物質が混入されることを防止できる。また、界発生部の空間側の面に、スパッタされない材質からなる部材を配置すると、電場によって加速された粒子が該面に衝突した場合であっても、ターゲット物質がたたき出されることはない。そのため、被成膜部材表面に形成される膜に他の物質が混入されることを防止できる。
【0014】
上記発明の一態様において、前記磁場発生部の前記空間と反対側に磁気回路形成部を更に備えることが好ましい。
上記構成とすることで、空間内に磁場を閉じ込めることができる。それにより、空間中の磁場強度が増し、プラズマの閉じ込めが改善されることで製膜速度を速めることができる。
【0015】
上記発明の一態様において、前記ターゲット部材の所定位置を覆うようシールド部材が配置されることが好ましい。
所定位置、例えば、ターゲット部材の被成膜部材に向いていない面や、電場が集中するような形状をした部分をシールド部材で覆うことで、余分な放電の回避や、それに伴う余分な粒子の放出を回避することができる。
【0016】
上記発明の一態様において、前記磁場発生部が永久磁石からなり、前記永久磁石が、前記ターゲット部材を配置する前記空間に磁場を発生させるよう対向配置された対になる主永久磁石と、前記ターゲット部材の内部に配置され、前記主永久磁石で発生させた磁場に沿った向きの磁場を発生させる対になる副永久磁石と、を備え、前記主永久磁石と前記副永久磁石とが異なる極性の磁極が対向配置され、前記主永久磁石と前記副永久磁石との間に磁場を発生させるよう構成されて良い。
上記構成とすることで、空間内の磁場が強くなるため、成膜速度を速くすることができる。
【0017】
上記発明の一態様において、前記磁場発生部が磁場コイルであって良い。
上記構成とすることで、磁場強さを自在に調整することができるため、より空間内に磁気を閉じ込めることができるようになる。それによって、成膜速度を速くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ターゲットを磁場発生部によって発生させた磁場内に配置することで、基板表面の損傷を抑えつつ、成膜速度を向上させることのできるスパッタリング装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係るスパッタリング装置の断面構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係るターゲット部材の斜視図である。
【図3】ターゲット部材の変形例の断面構成を示す概略図である。
【図4】ターゲット部材の変形例の断面構成を示す概略図である。
【図5】第1実施形態に係るスパッタリング装置の平面図である。
【図6】第2実施形態に係るスパッタリング装置の断面構成を示す模式図である。
【図7】第2実施形態に係るスパッタリング装置の平面図である。
【図8】第2実施形態に係るスパッタリング装置の変形例の平面図である。
【図9】第3実施形態に係るスパッタリング装置の断面構成を示す模式図である。
【図10】第4実施形態に係るスパッタリング装置の断面構成を示す模式図である。
【図11】第5実施形態に係るスパッタリング装置の断面構成を示す模式図である。
【図12】ミラー型磁場を説明する図である。
【図13】カスプ型磁場を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るスパッタリング装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
〔第1実施形態〕
図1に、第1実施形態に係るスパッタリング装置の断面構成の模式図を示す。スパッタリング装置は、真空チャンバ(不図示)と、真空チャンバ内に設けられる磁場発生部1、被成膜部材保持部(不図示)、及びターゲット部材2と、ターゲット部材2に電圧を印加するための電力供給部3とを備えている。
【0022】
真空チャンバは、排気手段を備え、内部を10−3Pa以下程度の真空に維持することができる箱体とされる。真空チャンバは、ガス導入手段を備え、アルゴンやヘリウムなどのスパッタガスを所定圧力で内部に供給することができる。化合物膜を成膜する場合などは、供給されるスパッタガスは、酸素などの活性ガスを単独、または混合して用いてもよい。
【0023】
磁場発生部1は、対になる部材が空間をあけて対向するよう配置された構成とされ、対になる部材の間の空間に磁場を発生させることができる。本実施形態における磁場発生部1は、互いに異なる磁極が向き合うように配置された2つの永久磁石1a,永久磁石1bから構成される。永久磁石1a及び永久磁石1bの形状及び大きさは、被成膜部材の形状及び大きさに応じて適宜設定される。磁場発生部1の空間側の面には、接地部材4が接続されている。接地部材4が接続された永久磁石1a及び永久磁石1bの互いに向かい合う面側には、該面をそれぞれ覆うように表層部5が設けられることが好ましい。表層部5は、ターゲットと同じ材質からなる部材またはスパッタされない材質からなる部材から構成されている。スパッタされない材質からなる部材とは、磁場によって加速されたガスイオンが衝突してもターゲット粒子がたたき出されない材質からなる部材であり、具体的な例として、セラミックスなどが用いられる。
【0024】
被成膜部材保持部は、真空チャンバ内の永久磁石1a及び永久磁石1bの側方に配置され、上記空間と対面するように被成膜部材6を保持することができる。
【0025】
永久磁石1a及び永久磁石1bの互いに向いあう面の反対側(裏側)には、磁気回路形成部7が設けられていると良い。磁気回路形成部7は、各端部がそれぞれ永久磁石1a及び永久磁石1bの裏面に接続され、形成された磁場を被成膜部材の反対側から囲うように配置されている。磁気回路形成部7は、軟鉄などからなる。
【0026】
ターゲット部材2は、永久磁石1a及び永久磁石1bの間の空間内に配置されている。ターゲット部材2は、被成膜部材6に対して傾斜したターゲット面2aを有する。ターゲット面2aはターゲット物質からなる。ターゲット物質は、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金及びこれらの等価物とすることができる。または、ターゲット物質は、ITO(Indium−Tin Oxide)、IZO(Indium−Zinc Oxide)、IO(Indium Oxide)、ZnO、TZO(Tin−Zinc Oxide)、AZO、GZO、または、これらの等価物からなることができる。
図2に、本実施形態に係るターゲット部材2の斜視図を示す。例えば、ターゲット部材2は略三角形状とされ、底面が被成膜部材6の被成膜面に略平行になるよう配置されている。ターゲット面2aは底面を挟む他の2面とされ、底面に対してそれぞれ角度θの傾きを有する。
【0027】
ターゲット部材2は、所定位置がシールド部材(8a,8b)で囲われていると良い。所定位置とは、電場が集中し易い部分や被成膜部材に面していない部分などとされる。シールド部材(8a,8b)は、それぞれ接地部材4に接続されている。シールド部材(8a,8b)は、比較的反応性が低い導電性の金属、例えばステンレスなどが用いられる。例えば、図1では、ターゲット部材2の底面(被成膜部材の被成膜面に略平行な面)がシールド部材8aでシールドされている。また、ターゲット部材2の底面に向いあう頂点付近が、シールド部材8bでシールドされている。
【0028】
電力供給部4は、真空チャンバの外に配置された電源(パワーサプライ)とされる。電源はターゲット部材2に電気的に接続され、ターゲット物質に電圧を印加することができる。電力供給部4は、交流(RF)、直流(DC)、負のパルス(DCパルス)、バイポーラパルスまたはこれらを組み合わせた電力を供給するものとされる。
例えば、パワーサプライとしてバイポーラパルスを用いた場合、ターゲットへの正電圧パルスフェーズで一度電子が引きつけられるため、二次電子が出る。電子の数が多いと、電子がプラズマ化されていないガスにぶつかる確率が上がるため、放電し易くなる。これにより、低いガス圧であっても一定レベルの成膜速度を維持することが可能となる。
例えば、パワーサプライは、プラズマを発生させるための交流と、アルゴンとの電位差を取るための直流とを組み合わせて使用しても良い。
【0029】
なお、ターゲット部材2の構成は、上記に限定されるものではない。図3及び図4に、ターゲット部材の変形例の断面構成を概略図で示す。図3及び図4に示すターゲット部材は、ターゲット面2aと、ターゲット面2aを保持するターゲット保持部10と、冷却機構11とから構成されている。
【0030】
図3において、ターゲット部材2は略三角形状とされている。ターゲット面2aは、ターゲット部材2の底面(被成膜部材の被成膜面)を挟む2つの面とされる。ターゲット面2aはそれぞれ底面に対して角度θだけ傾斜されている。ターゲット面2aの各外端部は、取り外し可能にターゲット保持部10で保持されている。よって、ターゲットが少なくなった場合、ターゲット面2aだけを交換することができる。ターゲット部材2の底面側に。底面を覆うようにシールド部材8が配置されている。ターゲット部材2の最も被成膜部材6の近くに位置する頂点(底面に向いあう頂点)部分には、シールド部材9が配置されている。ターゲット部材2の内部には、冷却機構11が設けられていても良い。冷却機構11は、ターゲット面2aの裏側に配置された冷却路などとされ、冷媒の流れを通じてターゲット部材2を冷却することができる。
【0031】
図4に示すターゲット部材は、ターゲット面の形状以外は、図3で示したターゲット部材と同様の構成とされる。図4において、ターゲット部材は略半楕円形状とされている。ターゲット面2bは、底面に対して角度θだけ傾斜する曲面とされる。
【0032】
図5に、長い被成膜部材6を配置したスパッタリング装置の平面図を示す。細長い被成膜部材6に成膜する場合、被成膜部材6の長さに合わせて永久磁石(1a,1b)も長いものを使用する。所定長さを超える永久磁石(1a,1b)を使用した場合、成膜時に永久磁石1aと永久磁石1bとの間の空間に生じるプラズマの長手方向両端部は、図5に示すように、永久磁石1a側のプラズマが矢印X方向へ、永久磁石1b側のプラズマが矢印Y方向へとずれる。これは、E×B効果(プラズマ電位による電場E、磁石による磁場B)によるものであり、被成膜部材上により均一な薄膜を成膜する上で好ましくない現象である。よって、所定長さを超える永久磁石を使用する場合、被成膜部材6よりも長い永久磁石(1a,1b)を使用するなど、プラズマの長手方向端部を成膜に使用しないよう考慮すると良い。所定長さは、一般的にプラズマを発生させる条件に依存するが、通常<10cm程度である。
【0033】
次に、本実施形態に係るスパッタリング装置を用いた成膜方法について説明する。
まず、真空チャンバ内に、被成膜部材を搬入し、被成膜部材保持部によって保持させる。その際、被成膜部材の薄膜を形成したい面(被成膜面)を、磁場発生部によって形成される磁場に対面するように配置する。次に、真空チャンバ内を排気し、所定の真空度、例えば、10−3Pa以下となるまで減圧する。(要求する膜の純度に応じて減圧レベルを設定する)
【0034】
次に、真空チャンバ内に所定圧力で、スパッタガスを導入する。スパッタガスの導入量は適宜設定される。ターゲット部材2に所定の電圧(例えば、数10〜数100V)を印加し、スパッタガスをプラズマ化させる。これによって発生したガスイオンは、永久磁石1aと永久磁石1bとの間で形成された被成膜部材6の面方向に沿った磁場に捕捉され、加速される。捕捉されたガスイオンは永久磁石1aや永久磁石1bで反射されながら移動する。これによって、プラズマが磁場の中に閉じ込められ、高密度プラズマ領域を形成する。その過程において、加速されたガスイオンがターゲット面2aに衝突し、ターゲット面2aからターゲットイオンをたたき出す。ターゲット面2aは傾斜しているため、ターゲットイオンは、被成膜部材6の被成膜面に向かってたたき出される。そのため、一定レベルの成膜速度を維持することができる。
【0035】
ターゲット部材2への電圧の印加にはパワーサプライ3を用いるため、印加する電圧値を適宜調整することで所望の濃度のプラズマを発生させることができる。あるいは、印加する電圧値を適宜調整することで成膜速度を上げることができる。
【0036】
永久磁石1aや永久磁石1bの空間(磁場)側の面にはガスイオンが衝突するが、表面層を設けることで、被成膜部材6に形成される薄膜の純度を確保することができる。
【0037】
ターゲット部材2の底面及び被成膜部材6側にある頂点部分にシールド部材(8a,8b)を配置することにより、余分なターゲットイオンの放出を抑制することができる。
【0038】
永久磁石1a及び永久磁石1bの背面には、磁気回路形成部7が設けられているため、永久磁石1aと永久磁石1bとの間の空間で形成された磁場を空間内に閉じ込めることができる。
【0039】
〔第2実施形態〕
本実施形態に係るスパッタリング装置は、磁場発生部が異なる以外は、第1実施形態と同様の構成とされる。図6に、本実施形態に係るスパッタリング装置の断面構成の模式図を示す。なお、図6では、第1実施形態と同様の構成について、簡略化または省略した記載とした。
【0040】
本実施形態における磁場発生部11は、4つの永久磁石(11a,11b,11c,11d)から構成されている。永久磁石11a及び永久磁石11bは、互いに異なる磁極が向き合うように空間をあけて配置されている。永久磁石11c及び永久磁石11dは、互いに異なる磁極が向き合うように空間をあけて配置されている。永久磁石11a及び永久磁石11cは、互いに異なる磁極を空間側に向けて、且つ、空間に対して同じ側に間隔をあけて並んで配置されている。永久磁石11b及び永久磁石11dは、互いに異なる磁極を空間側に向けて、且つ、空間に対して同じ側に間隔をあけて並んで配置されている。永久磁石(11a,11b,11c,11d)の形状及び大きさは、被成膜部材の形状及び大きさに応じて適宜設定される。永久磁石11aと永久磁石11b、及び永久磁石11cと永久磁石11dの互いに向かい合う面側には、接地部材14が接続されている。永久磁石(11a,11b,11c,11d)の接地部材14が接続された面側には、該面を覆うように表層部15が設けられることが好ましい。表層部15は、ターゲットと同じ材質からなる部材またはスパッタされない材質からなる部材から構成されている。
【0041】
上記構成のスパッタリング装置では、空間内にカスプ型磁場が形成される。詳細には、永久磁石11a及び永久磁石11b、永久磁石11c及び永久磁石11dによって、各永久磁石の間の空間に、被成膜部材の被成膜面に略平行な磁場が形成される。また、永久磁石11a及び永久磁石11c、永久磁石11b及び永久磁石11dによって、上記空間内に被成膜面に略垂直な磁場が形成される。
【0042】
図7に、本実施形態に係るスパッタリング装置の平面図を示す。図7では、空間に対して同じ側に位置する永久磁石は間隔をあけて配置されている。このような場合であっても、永久磁石で形成される磁場の端部が、隣り合う永久磁石で形成される磁場の端部と重なりあうため、所定の磁場以上となるように調整しておけば、永久磁石と永久磁石との間に位置する被成膜部材16に成膜することができる。
【0043】
図8に、図7に示したスパッタリング装置の変形例の平面図を示す。被成膜部材が細長い場合、図7で示した磁場発生部11を、被成膜部材16の長手方向に複数並べて配置しても良い。
【0044】
〔第3実施形態〕
本実施形態に係るスパッタリング装置は、磁場発生部が異なる以外は、第1実施形態と同様の構成とされる。図9に、本実施形態に係るスパッタリング装置の断面構成の模式図を示す。なお、図9では、第1実施形態と同様の構成について、簡略化または省略した記載とした。
【0045】
本実施形態における磁場発生部21は、4つの永久磁石(21a,21b,21c,21d)から構成されている。永久磁石21a及び永久磁石21bは、互いに異なる磁極が向き合うように空間をあけて配置されている。永久磁石21c及び永久磁石21dは、互いに異なる磁極が向き合うように空間をあけて配置されている。永久磁石21a及び永久磁石21cは、互いに同じ磁極を空間側に向けて、且つ、空間に対して同じ側に間隔をあけて並んで配置されている。永久磁石21b及び永久磁石21dは、互いに異なる磁極を空間側に向けて、且つ、空間に対して同じ側に間隔をあけて並んで配置されている。永久磁石(21a,21b,21c,21d)の形状及び大きさは、被成膜部材の形状及び大きさに応じて適宜設定される。永久磁石21aと永久磁石21b永久、及び磁石21cと永久磁石21dの互いに向かい合う面側には、接地部材24が接続されている。永久磁石(21a,21b,21c,21d)の接地部材24が接続された面側には、磁場発生部を覆うように表層部25が設けられることが好ましい。表層部25は、ターゲットと同じ材質からなる部材またはスパッタされない材質からなる部材から構成されている。
【0046】
上記構成のスパッタリング装置では、ミラー型磁場が形成される。詳細には、永久磁石21a及び永久磁石21b、永久磁石21c及び永久磁石21dによって、各永久磁石の間の空間に、被成膜部材の被成膜面に略平行の磁場が形成される。また、永久磁石21a及び永久磁石21c、永久磁石21b及び永久磁石21dによって、上記空間内に被成膜面に略垂直な磁場が形成される。
【0047】
上記構成のスパッタリング装置では、電極の設置できる領域を増やすことにより、ターゲットを最適な位置へ配置することができる。これにより、被成膜部材へのダメージを減らすことができる。
【0048】
〔第4実施形態〕
本実施形態に係るスパッタリング装置は、磁場発生部が異なる以外は、第1実施形態と同様の構成とされる。図10に、本実施形態に係るスパッタリング装置の断面構成の模式図を示す。なお、図10では、第1実施形態と同様の構成について、簡略化または省略した記載とした。
【0049】
本実施形態における磁場発生部31は、磁場コイル(31a,31b)から構成されている。そのようにすることで、磁場強さを自在に調整することができるため、より空間内に磁気を閉じ込めることができるようになる。それによって、成膜速度を速くすることができる。
【0050】
〔第5実施形態〕
本実施形態に係るスパッタリング装置は、磁場発生部が異なる以外は、第1実施形態と同様の構成とされる。図11に、本実施形態に係るスパッタリング装置の断面構成の模式図を示す。なお、図11では、第1実施形態と同様の構成について、簡略化または省略した記載とした。
【0051】
本実施形態における磁場発生部11は、対になる主永久磁石(41a,41b)及び対になる副永久磁石(41c,41d)から構成されている。主永久磁石(41a,41b)は、互いに異なる磁極が向き合うように空間をあけて配置されている。副永久磁石(41c,41d)は、ターゲット部材42の内部に埋設されている。副永久磁石41cと副永久磁石41dとは、互いに異なる磁極が向き合うように間隔をあけて配置されている。副永久磁石41cは主永久磁石41aに近い側にあり、主永久磁石41aと副永久磁石41cとは、互いに異なる磁極を向けている。副永久磁石41dは主永久磁石41bに近い側にあり、主永久磁石41bと副永久磁石41dとは、互いに異なる磁極を向けている。
【0052】
上記構成のスパッタリング装置では、空間内の磁場が強くなるため、成膜速度を速くすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1,11,21,31,41 磁場発生部
2,12,22,32,42 ターゲット部材
2a ターゲット面
3 電力供給部
4,14,24,34 接地部材
5,15,25,35 表層部
6,16 被成膜部材
7,17,27 磁気回路形成部
8,8a,8b シールド部材
9 冷却機構
10 保持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対になる部材が空間をあけて対向するよう配置され、前記空間に磁場を発生させる磁場発生部と、
前記対になる部材の側方に、前記空間と対面するよう被成膜部材を配置可能な被成膜部材保持部と、
前記空間内に配置され、前記被成膜部材に向けて傾斜したターゲット面を有するターゲット部材と、
前記ターゲット部材に接続され、前記ターゲット部材へ電圧を印加する電力供給部と、
を備えるスパッタリング装置。
【請求項2】
前記磁場発生部の前記空間側の面に、ターゲットと同じ材質からなる部材またはスパッタされない材質からなる部材からなる表層部が設けられる請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記磁場発生部の前記空間と反対側に磁気回路形成部を更に備える請求項1及び請求項2に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記ターゲット部材の所定位置を覆うようシールド部材が配置される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記磁場発生部が永久磁石からなり、
前記永久磁石が、
前記ターゲット部材を配置する前記空間に磁場を発生させるよう対向配置された対になる主永久磁石と、
前記ターゲット部材の内部に配置され、前記主永久磁石で発生させた磁場に沿った向きの磁場を発生させる対になる副永久磁石と、
を備え、
前記主永久磁石と前記副永久磁石とが異なる極性の磁極が対向配置され、前記主永久磁石と前記副永久磁石との間に磁場を発生させるよう構成される請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記磁場発生部が磁場コイルである請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスパッタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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