説明

スパッタ除去装置

【課題】小型で安価で多数個を設置することができる簡便なスパッタ除去装置を提供することを課題とする。
【解決手段】支柱12にガイド溝13を設け、このガイド溝13で回転筒14を回す。この回転筒14には正面刃15と側面刃16が付属されている。円筒ノズル32を下げると、回転筒14が下がりながら回転する。この回転により、スパッタ34が刃15、16で切削される。
【効果】スパッタ除去装置10は、モータを使用することなく、正面刃15や側面刃16を回転させることができる。そのため、スパッタ除去装置10は、小型で軽量であり、安価に製造することができる。結果、多数個を溶接現場に任意に配置することができ、溶接作業者は手近のスパッタ除去装置により、スパッタを除去することができ、溶接作業の能率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接トーチに付着したスパッタを除去する装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
MIG溶接トーチは、消耗電極を円筒ノズルで囲い、この円筒ノズルからイナートガスを噴射し、このイナートガスで溶接ボンドを外気から遮断し、溶接部の酸化を防止することができるトーチである。
【0003】
溶接作業中に、スパッタが飛散するが、このスパッタの一部がイナートガスの噴流に逆らって円筒ノズルに到達し、付着することがある。円筒ノズルの内周面に付着すると、イナートガスの噴射速度や噴射パターンが変化するため、所定の溶接が行えなくなり、溶接欠陥が発生する。
【0004】
対策として、スパッタを除去する装置を準備することが知られている(例えば、特許文献1(第2図、第4図)参照。)。
【0005】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図5は従来のアーク溶接用ノズルクリーナの正面図であり、このノズルクリーナ100は、モータ101で切刃102を回転させることを特徴とする。円筒ノズル103の内周面にスパッタ104が付着しているが、円筒ノズル103を回転中の切刃102へ被せると、切刃102でスパッタ104を削除することができる。
【0006】
しかし、モータ101が必須であるため、電気代が必要となる。
また、電気代を節約するには、使用するときにだけモータ101に通電する必要があり、スイッチ操作が不可欠となる。このスイッチ操作を溶接作業者に委ねると、溶接作業に支障がでる。スイッチを切り忘れると、電気代が嵩む。
さらには、ノズルクリーナ100は、比較的大型の装置であるため、設置基数が限られ、溶接作業者は溶接現場からノズルクリーナ100まで移動する必要があり、この点からも溶接作業に支障がでる。
【0007】
以上の諸問題を解決し得るスパッタ除去装置が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−245979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、小型で安価で多数個を設置することができる簡便なスパッタ除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、溶接トーチの先端の円筒ノズルの内周面に付着するスパッタを除去するスパッタ除去装置において、
支柱に設けられるガイド溝と、前記支柱に回転可能に嵌合される回転筒と、この回転筒に設けられ前記スパッタを除去する刃部と、前記回転筒を前記ガイド溝の待機位置まで付勢する弾発手段と、からなり、
前記回転筒を押圧すると、回転筒が前記ガイド溝に沿って回転し、前記刃部が前記スパッタを切削可能としたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、刃部は、回転筒の上端面に設けられる正面刃と、回転筒の外周面に設けられる側刃とからなることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、回転筒は径外方へ延びるフランジを一体的に備えており、このフランジの上方にて回転筒の外周面に回転可能に円板が嵌められ、この円板とフランジとの間に軸受が設けられ、円板の上面で前記円筒ノズルの先端を受けさせるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、刃部を備えている回転筒に下向きの力を加えると、回転筒はガイド溝に沿って旋回しながら下降する。溶接トーチの先端の円筒ノズルを下向きにして、回転筒に押し付けると、回転筒が回転し、刃部が円筒ノズルに付着しているスパッタを切削する。
刃部をモータで回転させる必要がない。モータが不要であるため、スパッタ除去装置は、小型、軽量で安価となる。このようなスパッタ除去装置は、手軽に必要個数を配置することができ、溶接作業者は手近のスパッタ除去装置により、スパッタを除去することができ、溶接作業の能率が向上する。
【0014】
請求項2に係る発明よれば、正面刃で1次切削したのち、側面刃で2次切削を実施することができる。側面刃による2次切削を実施することにより、1次切削のみより、良好な切削が行える。
【0015】
請求項3に係る発明では、円板の上面で円筒ノズルの先端を受けさせるようにした。側面刃による切削を繰り返して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るスパッタ除去装置の断面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明の支柱と回転筒との分解斜視図である。
【図4】本発明に係るスパッタ除去装置の作用説明図である。
【図5】従来のアーク溶接用ノズルクリーナの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0018】
先ず、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、スパッタ除去装置10は、ベース11と、このベース11の上面中央から上へ垂直に延ばした支柱12と、この支柱12の外周面に刻まれたガイド溝13と、支柱12に上下移動自在に且つ回転自在に嵌合された回転筒14と、この回転筒14の上端面に刻まれた正面刃15と、回転筒14の上部外周面に刻まれた側面刃16と、回転筒14の下部から延ばされガイド溝13に嵌る突起17と、回転筒14の外周面から一体的に張り出し形成されたフランジ18と、このフランジ18の下面とベース11との間に配置されフランジ18を押し上げる、弾発手段としての戻しばね19と、フランジ18の上面に載せた軸受21と、この軸受21に載せた円板22と、この円板22の内周面と回転筒14の外周面との間に配置したシール部材23とからなる。
【0019】
支柱12の外周面上部にダストシール24を設け、回転筒14と支柱12との間の隙間に異物が入らないようにする。
また、支柱12は、想像線で示す溶接トーチ30の電極31を納めることができるように中空であることが望ましい。
回転筒14の外径は、溶接トーチ30の円筒ノズル32の内径より小さく設定する。
【0020】
突起17は、回転筒14にねじ込んだビス又はボルトが好ましい。ビス又はボルトであれば、簡単に回転筒14に脱着することができる。
軸受21は、スラスト玉軸受が、安価で入手容易である。
シール部材23は、スパッタ34の削りかすが軸受21へ侵入することを防止する役割を果たし、安価で入手が容易なOリングが好適である。
【0021】
側面刃16は、図2に示すように、複数個(例えば8個)が等ピッチで回転筒14の外周に設けられている。
そして、図3に示すように、突起17をガイド溝13に嵌めることにより、支柱12に回転自在に且つ昇降自在に回転筒14を取り付けることができる
【0022】
以上の構成からなるスパッタ除去装置の作用を次に説明する。
図4(a)に示すように、スパッタ34が、円筒ノズル32の内周面33に付着している溶接トーチ30を、下向きにして回転筒14に押し込む。すると、先ず、正面刃15がスパッタ34に当たり、回転筒14が回転し始める。この回転により、正面刃15も回転し、スパッタ34を切削する(1次切削に相当)。切削が進むと回転筒14の下端が円板22に到達する。
【0023】
以降、円筒ノズル32と回転筒14とは一緒に上下する。すると、図4(b)に示すように、回転しない円筒ノズル32に対して、回転筒14が回転し、側面刃16でスパッタの残存部分35を切削することができる(2次切削に相当)。
【0024】
図4(a)では、円板22は回転するが、図4(b)では、円板22は回転しない。そのため、円筒ノズル32が円板22により摩耗する心配はない。
図4(b)に示す2次切削は、円筒ノズル32を昇降させることで、複数回実施することができる。したがって、スパッタ34(特に残存部分35)を綺麗に削除することができる。
【0025】
図1で説明した本発明のスパッタ除去装置10は、モータを使用することなく、正面刃15や側面刃16を回転させることができる。そのため、スパッタ除去装置10は、小型で軽量であり、安価に製造することができる。結果、多数個を溶接現場に任意に配置することができ、溶接作業者は手近のスパッタ除去装置により、スパッタを除去することができ、溶接作業の能率が向上する。
【0026】
尚、溶接トーチは、MIG溶接トーチの他、プラズマ溶接トーチ、炭酸ガスアーク溶接トーチ、TIG溶接トーチであってもよく、円筒ノズルを有し、この円筒ノズルの内周面にスパッタが付着する虞があるトーチであれば、種類は問わない。
また、弾発手段としての戻しばねは、圧縮コイルばねが好適であるが、トーションばねなど他の手段であってもよく、種類は問わない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のスパッタ除去装置は、MIG溶接トーチのスパッタ除去作業に好適である。
【符号の説明】
【0028】
10…スパッタ除去装置、12…支柱、13…ガイド溝、14…回転筒、15…正面刃、16…側面刃、17…突起、18…フランジ、19…弾発手段(戻しばね)、21…軸受、22…円板、30…溶接トーチ、32…円筒ノズル、33…内周面、34…スパッタ、35…スパッタの残存部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチの先端の円筒ノズルの内周面に付着するスパッタを除去するスパッタ除去装置において、
支柱に設けられるガイド溝と、前記支柱に回転可能に嵌合される回転筒と、この回転筒に設けられ前記スパッタを除去する刃部と、前記回転筒を前記ガイド溝の待機位置まで付勢する弾発手段と、からなり、
前記回転筒を押圧すると、回転筒が前記ガイド溝に沿って回転し、前記刃部が前記スパッタを切削可能としたことを特徴とするスパッタ除去装置。
【請求項2】
前記刃部は、前記回転筒の上端面に設けられる正面刃と、前記回転筒の外周面に設けられる側刃とからなることを特徴とする請求項1記載のスパッタ除去装置。
【請求項3】
前記回転筒は径外方へ延びるフランジを一体的に備えており、このフランジの上方にて前記回転筒の外周面に回転可能に円板が嵌められ、この円板と前記フランジとの間に軸受が設けられ、
前記円板の上面で前記円筒ノズルの先端を受けさせるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスパッタ除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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