説明

スパンレース不織布用ポリエステル繊維

【課題】
スパンレース法による不織布加工において、カード通過性に優れた摩擦特性、帯電防止性能を繊維に付与できるとともに、ジェット水流による交絡工程での交絡性、通過性に優れた吸水性と低起泡性を併せ持つ繊維処理剤を付与した繊維を提供する。
【解決手段】
(A)アルキル基の炭素数12〜18のアルキル燐酸エステル塩と、(B)アルキルエーテル型ノニオン、アルキルアミン型ノニオン、及び多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオンより選ばれた少なくとも1種からなるノニオン界面活性剤とからなり、(A)成分は、(A1)アルキル基の炭素数が12のアルキル燐酸エステル塩と、(A2)アルキル基の炭素数が18のアルキル燐酸エステル塩とを含む複数種のアルキル燐酸エステル塩からなり、(A1)成分と(A2)成分との重量比が、60:40〜80:20であり、かつ、(A)成分と(B)成分との重量比が、60:40〜80:20である繊維処理剤が付着しているスパンレース不織布用ポリエステル繊維である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水流法による不織布の製造に用いられるポリエステル繊維に関するものである。詳しくは、特に不織布製造時におけるレーヨン混によるカーディング工程での優れた制電性及び工程通過性を有し、更には高圧水流処理時の親水性、低起泡性に優れるスパンレース法による不織布の製造に好適なポリエステル繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルやポリアミドに代表される合成繊維は、強度、耐熱性、耐薬品性、ウォッシュアンドウェアー性など各種の特性に優れるため、衣料用途や産業資材用途に広く用いられている。その中でも、ポリエステル繊維は、近年不織布分野での役割期待も大きくなり、特にベビーおむつやおむつライナー、生理用品などの衛生材料分野や外食産業向けのカウンタークロス、ウェットティッシュなどの生活資材分野、台所用品の流し台の水切り袋などの非衛生材料分野や、湿布薬の基布や固定用シート、病院用手術衣、マスクなどのメディカル分野などの不織布用途に幅広く使用されてきている。中でも、従来コットンやレーヨンを主に使用してきた生活資材分野におけるドライワイパーやウェットワイパー用途には、低コスト化や嵩高を目的にポリエステル繊維が多く使用されるようになってきた。
【0003】
また、不織布の製造法としては、繊維状物をバインダーによって接合する方法(接着法)や、繊維状物のウェッブにニードルパンチを施して繊維相互を交絡させる方法(ニードルパンチ法)もあるが、繊維状物をジェット水流によって相互に交絡させる方法(スパンレース法)はニードルパンチ法と比較して繊維損傷が少ないので、強度、伸度、タフネス等の物理特性やドレープ性に優れ、衛生材料や生活資材等の各種分野への利用に好適な不織布を得ることができる。
【0004】
スパンレース法により不織布を製造する工程は、ウェッブを形成するカード工程とジェット高圧水流により繊維を交絡させるスパンレース工程とに大別される。ウェッブを形成するカード工程では、通常カードを通過しやすい摩擦特性、静電気を抑制させる事が要求される。一方、高圧水流により繊維を交絡させるスパンレース工程では、ジェット水流に対し繊維間を透水させる親水性が要求されると共に、ジェット水流に使用される循環水中に気泡やスカムが発生し難く、しかも高圧水流に使用する循環水を汚濁し難い等の物性を有することが要求される。また、スパンレース法により不織布を製造する工程は、通常、カードによるウェッブ形成工程と、高圧水流による交絡工程とが一連の連続した工程として行われるため、同加工法に使用されるポリエステル繊維はウェッブ製造工程において要求される特性と交絡工程において要求される特性を同時に有していることが必要とされる。これら要求特性を繊維に付与するため、繊維表面には、界面活性剤を配合した繊維表面処理剤が付着されている。
【0005】
ところで、繊維表面処理剤において界面活性剤の泡立ちを抑制させるためには、従来、鉱物油系やシリコーン系の消泡剤を添加させる手法が採用されていた。しかし、これら消泡剤は界面活性剤中に分散させて使用するため、この処理剤を上記のスパンレース法用途に使用すると循環水中で凝集してフィルター詰まりを起こしたり、高圧水流のノズル詰まりを起こす原因になるため、スパンレース法用途への活用は困難である。
【0006】
また、繊維に優れた平滑性を付与できるとともに水溶液の起泡性を低くするためのスパンレース不織布製造用繊維処理剤として、特定の二塩基酸とジオールとの化合物と特定のアルキルリン酸エステル塩(オクチルリン酸カリウム塩など)とを併用した繊維処理剤が提案されている(特許文献1)。しかし、この処理剤の処方でも泡立ち抑制効果は十分ではなかった。さらに、この特許文献1には、アルキル燐酸エステル塩のアルキル基の炭素数が10を越えると起泡し易くなるので、アルキル基の炭素数が6〜10のアルキル燐酸エステル塩が好ましいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−328272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、スパンレース法による不織布製造におけるカード工程においてカード機を通過しやすいような摩擦特性と帯電防止性能とを繊維に付与できるとともに、スパンレース工程(ジェット水流による交絡工程)において親水性に優れ且つ、泡立ちにくい繊維処理剤を付与した繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するために次の構成を有する。
【0010】
すなわち、本発明のスパンレース不織布用ポリエステル繊維は、(A)アルキル基の炭素数が12〜18であるアルキル燐酸エステル塩と、(B)アルキルエーテル型ノニオン、アルキルアミン型ノニオン、及び多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオンの群より選ばれた少なくとも1種のノニオン界面活性剤とからなり、(A)成分は、(A1)アルキル基の炭素数が12のアルキル燐酸エステル塩と、(A2)アルキル基の炭素数が18のアルキル燐酸エステル塩とを含む複数種のアルキル燐酸エステル塩からなり、(A1)成分と(A2)成分との重量比が、60:40〜80:20であり、かつ、(A)成分と(B)成分との重量比が、60:40〜80:20である繊維処理剤が付着していることを特徴とするものである。
【0011】
また、(A)成分及び(B)成分からなる繊維処理剤が繊維重量に対し0.1〜1.0wt%付着していることが好ましい。
【0012】
本発明のポリエステルスパンレース不織布製造用繊維処理剤は、(A)アルキル基の炭素数が12〜18であるアルキル燐酸エステル塩と、(B)アルキルエーテル型ノニオン、アルキルアミン型ノニオン、及び多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオンの群より選ばれた少なくとも1種のノニオン界面活性剤とからなり、(A)成分は、(A1)アルキル基の炭素数が12のアルキル燐酸エステル塩と、(A2)アルキル基の炭素数が18のアルキル燐酸エステル塩とを含む複数種のアルキル燐酸エステル塩からなり、(A1)成分と(A2)成分との重量比が、60:40〜80:20であり、かつ、(A)成分と(B)成分との重量比が、60:40〜80:20であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るポリエステル繊維は、スパンレース法により不織布を製造する場合、ウェッブの製造工程において、カードシリンダー等に巻き付いたりする懸念がなく、効率よく優れたウェッブを得ることができるとともに、ウェッブをジェット水流によって交絡させる工程において、不織布の交絡不足の懸念がなく、更には循環水が泡立って操業性(生産性)を低下させる懸念がない等の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明のポリエステル繊維を構成するポリエステルは、テレフタル酸とエチレングリコールあるいはブチレングリコールとの縮合反応によって生成される高分子重合体、および、セバシン酸、アジピン酸、トリメリット酸、イソフタル酸、パラオキシ安息香酸などとエチレングリコール、ブチレングリコールとの縮合体、ならびに他のポリエステル類を含むポリエステル重合体などを意味するが、特に限定されるものではない。これらポリエステルを常法により溶融紡糸し、延伸してスパンレース不織布用の繊維を製造すればよい。
【0016】
本発明のポリエステル繊維は、以下の(A)成分(特定のアルキル燐酸エステル塩)と(B)成分(特定の界面活性剤)とからなる繊維処理剤が付与されたものである。
【0017】
(A)成分のアルキル燐酸エステル塩としては、アルキル基の炭素数が12〜18であるアルキル燐酸エステルのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。このアルキル燐酸エステル塩は、脂肪族アルコールに、五酸化リンや塩化ホスホリン等のリン酸化剤を付加反応させて得られるアルキル燐酸エステルを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカリで中和することにより製造される。
【0018】
本発明では、アルキル燐酸エステル塩が、(A1)アルキル基の炭素数が12のアルキル燐酸エステル塩と、(A2)アルキル基の炭素数が18のアルキル燐酸エステル塩とを含む複数種のアルキル燐酸エステル塩からなることが必要である。
【0019】
アルキル燐酸エステル塩として(A1)アルキル基の炭素数が12のアルキル燐酸エステル塩のみを配合する場合では、抑泡効果が十分でなく、また、(A2)アルキル基の炭素数が18のアルキル燐酸エステル塩のみを配合する場合では、耐電防止性が十分でないので、(A1)成分と(A2)成分との併用が必要である。(A1)成分と(A2)成分との割合は、重量比で、60:40〜80:20である。(A1)成分が少なすぎ(A2)成分が多すぎの場合は耐電防止効果が十分でない。また(A1)成分が多すぎ(A2)成分が少なすぎの場合は抑泡効果が十分でない。
【0020】
(A)成分のアルキル燐酸エステル塩は、必須成分として(A1)成分と(A2)成分を含むものであるが、その他に、アルキル基の炭素数が14のアルキル燐酸エステル塩やアルキル基の炭素数が16のアルキル燐酸エステル塩を含有してもよい。これに対し、アルキル基の炭素数が12未満のアルキル燐酸エステル塩は、水に溶け易いことからスパンレース工程の循環水中での泡立ちが多くなる問題が生じ、また、アルキル基の炭素数が18を超えるアルキル燐酸エステル塩は、帯電防止性能が乏しくなり、カード工程での通過性不良の問題が生じるので、不適当である。
【0021】
また、(B)成分としては、アルキルエーテル型ノニオン、アルキルアミン型ノニオン、及び多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオンの群より選ばれたノニオン界面活性剤を1種または2種以上を用いる。(B)成分として用いることができるアルキルエーテル型ノニオンとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテルが好ましい。アルキルアミン型ノニオンとしては、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルが好ましい。更に、多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオンとしては、ポリオキシエチレンソルビタンラウレートが好ましい。
【0022】
本発明のポリエステル繊維に付着している繊維処理剤において、(A)成分と(B)成分とは、重量比で(A):(B)=60:40〜80:20の割合で含有されるが、(A):(B)=65:35〜75:25で含有することが好ましい。(A)成分の割合が上記範囲より少ないと消泡性が低下し、(A)成分の割合が上記範囲より多いと帯電防止性能が低下し、カード工程での通過性が低下する。
【0023】
上記した本発明の繊維処理剤は、スパンレース不織布用のポリエステル繊維に付与されるものであり、本発明の効果を阻害しない範囲ならば他の成分が配合されていてもよい。
【0024】
また、本発明の繊維処理剤をポリエステル繊維の表面に付与する際には、水等の溶媒で希釈した溶液、特に水溶液にして使用される。この水溶液中における繊維処理剤の濃度は、1〜10wt%程度であればよい。
【0025】
また、本発明のポリエステル繊維は、前記したポリエステル重合体から溶融紡糸法により製造されるポリエステル繊維であって、前記した繊維処理剤が繊維表面に付着しているものである。ポリエステル(A)成分及び(B)成分からなる繊維処理剤の付着量は、繊維重量に対し0.1〜1.0wt%であることが好ましい。0.1wt%未満であると静電気の発生や吸水性の悪化などの障害を生じ易い。また、1.0wt%を越えると、スパンレース工程での泡立ちが多くなり易い。油剤の付着量はさらに好ましくは0.15〜0.25wt%である。
【0026】
本発明のポリエステル繊維を製造するための製糸方法としては、前記したポリエステル重合体を溶融紡糸し、冷却し、紡糸油剤を付与して引き取り、延伸し、必要に応じて熱処理や捲縮付与や短繊維化を行う方法が例示される。また、繊維の形態は、特に限られるわけではないが、不織布用に好適な捲縮短繊維であることが好ましい。捲縮短繊維の場合、単糸繊度は2.2dtex以下であることが好ましく、捲縮数は10山/25mm以上が好ましく、捲縮度は12%以上が好ましく、また、繊維長は51mm以下が好ましく、38mm〜51mmが更に好ましい。また、そのポリエステル短繊維の断面形状は、丸、異型等いずれの形状でも差し支えない。
【0027】
本発明のポリエステル繊維は、スパンレース法不織布製造に供され、常法によりカード工程によりウェッブを形成し、スパンレース工程によりジェット高圧水流により繊維を交絡させ、スパンレース不織布が製造される。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例、比較例における各種特性は次の方法により求めた。
[カード通過性(1)]
処理綿3gを予備開繊し、サンプルローラーカードのラチス上に供給長さ50cm、横幅20cmで均一に並べ、紡速10m/分で原綿がフィードローラーへ供給されてから、ドッファ出より綿が全て出るまでの時間(秒)を測定した。温湿度条件は、25℃、40%RHであった。測定値から、下記基準で良(○)、否(×)を評価した。
○: 通過時間150秒以内
△: 通過時間151秒〜200秒
×: 通過時間201秒以上
【0029】
[カード通過性(2)]
処理綿3gを予備開繊し、サンプルローラーカードのラチス上に供給長さ50cm、横幅20cmで均一に並べ、紡速10m/分で紡出した際、ドッファ出より回収した原綿量(g)を測定した。温湿度条件は、25℃、40%RHであった。測定した原綿量から、供給量に対する回収量の割合(%)を算出し、下記基準で良(○)、否(×)を評価した。
○: 回収率96〜100%
△: 回収率90〜95%
×: 回収率89%以下
【0030】
[制電性]
温湿度25℃×40%RHの条件下で、サンプルローラーカードにて紡速10m/分で紡出した際に、ドッファ出のウェッブ表面に発生した静電気量(V)を春日電機社製デジタル静電気測定器にて測定した。測定値から、下記基準で良(○)、否(×)を評価した。
○: 0〜−100V
△: −101〜−300V
×: −301V以上
【0031】
[泡立ち性]
処理綿100gを500ccの水に10分間浸積させ、その絞り液300ccを500ccビーカーに入れ、ホモミキサーで6000rpm×5分間攪拌し、攪拌停止直後から5分経過後の泡高さ(mm)を測定した。測定値から、下記基準で良(○)、否(×)を評価した。
○ : 10mm以下
△ : 11mm〜20mm
× : 21mm以上
【0032】
[親水性]
処理綿をカードに通し、得られたウェッブ5gを3gのポリプロピレン製の網カゴに詰めサンプルを作成する。常温の純水1Lを1Lビーカーに入れ、サンプルを水面に落としてからビーカー底まで沈みきるまでの時間を測定した。測定値から、下記基準で良(○)、否(×)を評価した。
○: 10秒以下
△: 11〜15秒
×: 16秒以上
【0033】
(実施例1)
(A)成分として、ラウリル燐酸エステルカリウム塩42重量%、ステアリル燐酸エステルカリウム塩18重量%と、(B)成分として、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル25重量%、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート15重量%とを配合して繊維処理剤Aとし、その3%水溶液を調製した。
【0034】
通常のポリエチレンテレフタレートを用い、常法により溶融紡糸し、冷却し、紡糸油剤を付与して引速1100m/分で引き取った後に、速度150m/分、倍率3.8倍で延伸する方法によりポリエステルトウ(単糸繊度1.6dtex)とし、次いで、14山/25mm、15%の捲縮を付与した後、繊維処理剤Aの3%水溶液中を通過させることにより繊維処理剤Aを0.2重量%付与し、80℃で乾燥し、更に51mmにカットして処理ポリエステル原綿を製造した。得られた処理原綿について前記基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0035】
(実施例2)
(A)成分として、ラウリル燐酸エステルカリウム塩56重量%、ステアリル燐酸エステルカリウム塩24重量%と、(B)成分として、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル15重量%、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート5重量%とを配合して繊維処理剤Bとし、その3%水溶液を調製した。
【0036】
捲縮付与後のポリエステルトウに付与する繊維処理剤を、上記処理液Bに換えた以外は実施例1と同様にして処理ポリエステル原綿を製造した。得られた処理原綿について前基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0037】
(実施例3)
(A)成分として、ラウリル燐酸エステルカリウム塩50重量%、ステアリル燐酸エステルカリウム塩20重量%と、(B)成分として、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル20重量%、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート10重量%とを配合して繊維処理剤Cと、その3%水溶液を調製した。
【0038】
捲縮付与後のポリエステルトウに付与する繊維処理剤を、上記処理液Cに換えた以外は実施例1と同様にして処理ポリエステル原綿を製造した。得られた処理原綿について前記基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0039】
(実施例4)
(A)成分として、ラウリル燐酸エステルカリウム塩50重量%、ステアリル燐酸エステルカリウム塩20重量%と、(B)成分として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル10重量%、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル10重量%、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート10重量%とを配合して繊維処理剤Dとし、その3%水溶液を調製した。
【0040】
捲縮付与後のポリエステルトウに付与する繊維処理剤を、上記処理液Dに換えた以外は実施例1と同様にして処理ポリエステル原綿を製造した。得られた処理原綿について前記基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
(比較例1)
(A)成分として、ラウリル燐酸エステルカリウム塩35重量%、ステアリル燐酸エステルカリウム塩15重量%と、(B)成分として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル10重量%、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル30重量%、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート10重量%とを配合して繊維処理剤Eとし、その3%水溶液を調製した。
【0042】
捲縮付与後のポリエステルトウに付与する繊維処理剤を、上記処理液Eに換えた以外は実施例1と同様にして処理ポリエステル原綿を製造した。得られた処理原綿について前記基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0043】
(比較例2)
(A)成分として、ラウリル燐酸エステルカリウム塩63重量%、ステアリル燐酸エステルカリウム塩27重量%と、(B)成分として、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル10重量%とを配合して繊維処理剤Fとし、その3%水溶液を調製した。
捲縮付与後のポリエステルトウに付与する繊維処理剤を、上記処理液Fに換えた以外は実施例1と同様にして処理ポリエステル原綿を製造した。得られた処理原綿について前記基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
(比較例3)
(A)成分として、ステアリル燐酸エステルカリウム塩70重量%と、(B)成分として、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル20重量%、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート10重量%とを配合して繊維処理剤Gとし、その3%水溶液を調製した。
捲縮付与後のポリエステルトウに付与する繊維処理剤を、上記処理液Gに換えた以外は実施例1と同様にして処理ポリエステル原綿を製造した。得られた処理原綿について前記基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0045】
(比較例4)
(A)成分として、ラウリル燐酸エステルカリウム塩70重量%と、(B)成分として、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル20重量%、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート10重量%とを配合して繊維処理剤Hとし、その3%水溶液を調製した。
捲縮付与後のポリエステルトウに付与する繊維処理剤を、上記処理液Hに換えた以外は実施例1と同様にして処理ポリエステル原綿を製造した。得られた処理原綿について前記基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
(比較例5)
(A)成分として、オクチル燐酸エステルカリウム塩70重量%と、(B)成分として、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル20重量%、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート10重量%とを配合して繊維処理剤Iとし、その3%水溶液を調製した。
捲縮付与後のポリエステルトウに付与する繊維処理剤を、上記処理液Iに換えた以外は実施例1と同様にして処理ポリエステル原綿を製造した。得られた処理原綿について前記基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のポリエステル繊維は、スパンレース法によって不織布を製造する用途に適しており、不織布加工までの一連の工程で、効率よく不織布を製造することができる。また、得られる不織布は、レーヨンと比べ形態保持性に優れ、且つ安価な素材であることから、生活資材用ワイパーといった用途にも広く展開することができ、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルキル基の炭素数が12〜18であるアルキル燐酸エステル塩と、(B)アルキルエーテル型ノニオン、アルキルアミン型ノニオン、及び多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオンの群より選ばれた少なくとも1種のノニオン界面活性剤とからなり、
(A)成分は、(A1)アルキル基の炭素数が12のアルキル燐酸エステル塩と、(A2)アルキル基の炭素数が18のアルキル燐酸エステル塩とを含む複数種のアルキル燐酸エステル塩からなり、
(A1)成分と(A2)成分との重量比が、60:40〜80:20であり、かつ、
(A)成分と(B)成分との重量比が、60:40〜80:20である繊維処理剤
が付着していることを特徴とするスパンレース不織布用ポリエステル繊維。
【請求項2】
(A)成分及び(B)成分からなる繊維処理剤が繊維重量に対し0.1〜1.0wt%付着していることを特徴とする請求項1記載のスパンレース不織布用ポリエステル繊維。
【請求項3】
(A)アルキル基の炭素数が12〜18であるアルキル燐酸エステル塩と、(B)アルキルエーテル型ノニオン、アルキルアミン型ノニオン、及び多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオンの群より選ばれた少なくとも1種のノニオン界面活性剤とからなり、
(A)成分は、(A1)アルキル基の炭素数が12のアルキル燐酸エステル塩と、(A2)アルキル基の炭素数が18のアルキル燐酸エステル塩とを含む複数種のアルキル燐酸エステル塩からなり、
(A1)成分と(A2)成分との重量比が、60:40〜80:20であり、かつ、
(A)成分と(B)成分との重量比が、60:40〜80:20であることを特徴とするポリエステルスパンレース不織布製造用繊維処理剤。

【公開番号】特開2011−202301(P2011−202301A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69772(P2010−69772)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】