説明

スピンドルカバー、及び、スピンドルとスピンドルカバーとの組合せ

【課題】スピンドルカバーの取付作業性を改善し、しかも、構造が簡単で且つ確実な取り付けを実現すると共に、コストの点でも大幅な低減を図ることのできるスピンドルカバーを提供する。
【解決手段】バルブや各種操作器具の操作ハンドル101の中心部から出没自在に突設されたスピンドル102を被覆保護するスピンドルカバー1において、スピンドル102の外側に設置されてスピンドル102を被覆する筒状のカバー本体2を有し、カバー本体2は、一端部が閉鎖され、他端部にはスピンドル取付部4を備えており、スピンドル取付部4は、円周方向に配列され、スピンドル102のネジ溝に弾性的に係合する複数の係止片7を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブや各種操作器具の操作ハンドルの中心部から出没自在に突設されたスピンドルを被覆保護するためのスピンドルカバー、及び、スピンドルとスピンドルカバーとの組合せに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図6に示すように、浮屋根タンクのルーフドレインバルブとして使用されるゲートバルブ(仕切り弁)100は、操作ハンドル101を回転させると、操作ハンドル101の中心部に位置するスピンドル102が操作ハンドル101の中心部より出没する構成とされる。
【0003】
このようなバルブにおいては、バルブが屋外に設置されていることから、長期間の使用により、スピンドルが錆び付いたり、シール部に隙間ができてゴミが侵入し、破損することがある。最悪の場合には、バルブ可動部が固着し、バルブの操作が不可となる。そのために、スピンドル全体をスピンドルカバーにて被覆保護することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、スピンドルをカバーすることのできる大きさとされる透明の筒状のカバー本体を備え、このカバー本体の基端部に取り付けた接続部を、操作ハンドルをバルブに固定しているスリーブナットにネジ止めにより固定し、一方、カバー本体の上部開口部には蓋を圧入嵌着した構成とされるスピンドルカバーが開示されている。
【特許文献1】特開平7−243554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のスピンドルカバーは、複雑な構造とされる。そのために、スピンドルカバーをバルブに取り付けるには手間が掛かり、作業性の点で問題がある。又、構造が複雑であることから、製造コストの点でも問題がある。
【0006】
このような問題は、ゲートバルブのみならず、操作ハンドルの中心部からスピンドルが出没自在とされたその他のバルブや、各種操作器具においても存在している。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上述のような従来のスピンドルカバーが有していた問題を解決するものであり、スピンドルカバーの取付作業性を改善し、しかも、構造が簡単で且つ確実な取り付けを実現すると共に、コストの点でも大幅な低減を図ることのできるスピンドルカバー、及び、スピンドルとスピンドルカバーとの組合せを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は本発明に係るスピンドルカバーにて達成される。要約すれば、本発明は、その一態様によれば、バルブや各種操作器具の操作ハンドルの中心部から出没自在に突設されたスピンドルを被覆保護するスピンドルカバーにおいて、
前記スピンドルの外側に設置されて前記スピンドルを被覆する筒状のカバー本体を有し、
前記カバー本体は、一端部が閉鎖され、少なくとも、他端部或いは他端部に近接してスピンドル取付部を備えており、
前記スピンドル取付部は、円周方向に配列され、前記スピンドルのネジ溝に弾性的に係合する複数の係止片を有することを特徴とするスピンドルカバーが提供される。
【0009】
また、本発明の他の態様によれば、バルブや各種操作器具の操作ハンドルの中心部から出没自在に突設されたスピンドルと、前記スピンドルを被覆保護するスピンドルカバーとの組合せであって、
前記スピンドルは、軸線方向に沿ってネジ溝が形成されており、
前記スピンドルカバーは、前記スピンドルの外側に設置されて前記スピンドルを被覆する筒状のカバー本体を有し、
前記カバー本体は、一端部が閉鎖され、少なくとも、他端部或いは他端部に近接してスピンドル取付部を備えており、
前記スピンドル取付部は、円周方向に配列され、前記スピンドルのネジ溝に弾性的に係合する複数の係止片を有することを特徴とするスピンドルとスピンドルカバーとの組合せが提供される。
【0010】
上記各本発明の一実施態様によれば、前記スピンドル取付部は、弾性を有する、中心に開口部が形成された薄板にて形成され、前記開口部から半径方向外方へと所定長さのスリットが形成され、それによって、円周方向に均等に分割された前記複数の係止片が形成される。
【0011】
本発明の他の実施態様によれば、一端部が閉鎖され、前記スピンドル取付部を備えた前記カバー本体は、薄板状の弾性を有する透明の合成樹脂にて作製される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスピンドルカバーは、押し込むだけで簡単に取り付けができると共に取り付け後の抜け防止を図ることができ、利便性が高い。また、取り付け後は、係止片の弾性力により固定状態を継続して維持することができる。
【0013】
このように、本発明によれば、スピンドルカバーの取付作業性を改善し、しかも、構造が簡単で且つ確実な取り付けを実現すると共に、コストの点でも大幅な低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るスピンドルカバー、及び、スピンドルとスピンドルカバーとの組合せについて図面を参照して更に詳しく説明する。
【0015】
実施例1
図1に、本発明に係るスピンドルカバー1を、図6に示すようなゲートバルブ100において操作ハンドル101の中心部に位置して出没自在とされるスピンドル102の外側に設置した状態を示す。図2(a)、(b)に、本発明のスピンドルカバーの一実施例を示す。
【0016】
図1及び図2(a)、(b)を参照すると、本実施例によると、スピンドルカバー1は、筒状のカバー本体2を有している。カバー本体2の一端部、即ち、図2(a)にて上方端は閉鎖端(蓋部)3とされ、他端部、即ち、図2(a)にて下方端は、スピンドル102への取付部4とされる。カバー本体2は、スピンドル102に取り付けた際に、内部のスピンドル102を視認し得るように、少なくとも一部、或いは、全体が透明であることが望ましい。
【0017】
また、スピンドル取付部4は、カバー本体2の下方端であるとしたが、図2(a)に一点鎖線にて示すように、他端部に近接した位置、即ち、下方端より内方へと、即ち、図2(a)にて上方へと幾分移動した位置に設けても良い。
【0018】
また、スピンドル102が長いバルブに使用するスピンドルカバー1の場合は、カバー本体2自体も長くなる。この場合には、図2(a)に二点鎖線にて示すように、カバー本体2の中間部近傍にもスピンドル取付部4を設けることができる。このように、スピンドル取付部4を、カバー本体2の下方端部、更には、中間部にも設けることにより、スピンドルカバー1をスピンドル102に装着した際に、スピンドルカバー1が安定する。
【0019】
図2(b)に示すように、スピンドル取付部4は、弾性を有する厚さ(t)の薄板にて形成され、中心に開口部5が形成される。又、開口部5から半径方向外方へと、所定長さ(h)及び幅(w)のスリット6が形成され、それによって、円周方向に均等に分割されて配列された2つ以上の、即ち、複数の係止片7が形成される。
【0020】
本実施例では、カバー本体2、蓋部3、スピンドル取付部4から成るスピンドルカバー全体を厚さ(t)の薄板状の透明の合成樹脂である塩化ビニル樹脂にて一体に作製した。しかしこれに限定されるものではなく、カバー本体2、蓋部3、スピンドル取付部4をそれぞれ異なる材質のもので、また、異なる厚さのもので作製しても良い。また、使用する材料としては、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの透明の合成樹脂でもよく、場合によっては、不透明な塩化ビニル樹脂などでも良い。又、必要に応じて、一部、或いは、全部を金属薄板で作製することも可能である。
【0021】
ここで、本実施例におけるスピンドルカバー1の具体的寸法の一例を示せば、次の通りである。ただ、本発明のスピンドルカバー1は、これに限定されるものではない。
【0022】
尚、本実施例にて、スピンドル102の軸線方向に形成されたネジの形状、寸法は、ネジ溝径20mm、ネジ山径25mmの一条ネジであった。
【0023】
・カバー本体、蓋部
材質:塩化ビニル樹脂
肉厚(t): 1mm
外径(D): 60mm
長さ(L): 150mm
・スピンドル取付部
材質:塩化ビニル樹脂
肉厚(t): 1mm
開口部の径(スリットの内径)(d):16mm
スリットの幅(w): 1mm
スリットの切り込み長さ(h):17mm
係止片の数: 8個
【0024】
次に、上記構成の本実施例のスピンドルカバー1のスピンドル102への取り付け作業及び動作について説明する。
【0025】
本実施例のスピンドルカバー1は、図3に一点鎖線にて示すように、スピンドル取付部4がスピンドル102の上端102aに対向するようにして、その開口部5をスピンドル上端102aに適合して押し付ける。
【0026】
これによって、スピンドル取付部4の係止片7は、スピンドル102のネジ山102bにより上方(カバー本体内方)へと変形され、係止片7の内周先端部7aがスピンドル102のネジ溝102c内に突入し、所定の弾性力を以て弾性的に係合する。
【0027】
つまり、本実施例のスピンドルカバー1は、スピンドル102の上方から押し込むと、取付部4の開口部5を画成する係止片7の先端部7aが押し開かれて、係止片7の先端部7aがスピンドルネジ溝102cの方向とは逆方向にて、即ち、カバー挿入方向とは逆方向に向いた状態にてスピンドルネジ溝102cに入り込む。そのため、スピンドルカバー1がスピンドル102から容易に抜け落ちることはない。
【0028】
このように、本実施例のスピンドルカバー1によると、係止片7の先端7aが押し開かれた状態にてスピンドルネジ溝102cに鋭角に且つ弾発的に入り込むこととなり、抜ける方向への動きを防ぐことができる。
【0029】
次いで、スピンドルカバー1は、図3に示すように、カバー本体2がスピンドル102の外側に位置して、カバー本体2の下方端(底部)1aが操作ハンドル101のスリーブナット103に当接するまで押入される。
【0030】
ここで、更にスピンドルカバー1を所定方向、即ち、スピンドルのネジ方向とは反対方向に回転させると、係止片7の先端部7aがスピンドルネジ溝102cに沿ってスリーブナット103側に動く。これによって、スピンドルカバー1をスリーブナット103の上面103aに確実に且つ所定の力にて接触固定させるができる。従って、スピンドルカバー1の下端部1aとスリーブナット上面103aとの間に隙間が生じることがなく、この部分から水等の侵入を防止することができる。
【0031】
この状態では、係止片7の先端部7aは、図3に実線で示すように、スピンドルネジ溝102cに入り込むことで抜け防止の効果を発揮する。また、係止片7の弾性力で固定状態を継続して維持することができる。
【0032】
従って、スピンドルカバー1は、操作ハンドル101より上方に、より詳しくは、スリーブナット上面103aより上方に突出したスピンドル102部分を完全に被覆し、保護することができる。
【0033】
ここで、図4に示すように、操作ハンドル101を回転することにより、スピンドル102が下方に移動する際には、スピンドルカバー1自体は、その底部1aがスリーブナット103に当接することにより下方への移動は阻止されている。そのため、係止片先端部7aがスピンドル102のネジ山102bの下方への移動により弾性変形し、スピンドル102の下方への移動を可能とする。スピンドル102が下方に移動しても、スピンドル102の上端102aがスリーブナット103の上面103aから完全に操作ハンドル101内へと、即ち、スリーブナット103内へと移動してしまうことはない。従って、スピンドルカバー1は、その係止片7がスピンドル102のネジ溝102cに係合した状態とされ、スピンドル102から外れることはなく、スピンドル102を被覆した状態に維持される。又、この状態では、スピンドルカバー1は、係止片7の先端部7aがスピンドルネジ溝102cに係合して、しかも、スリーブナット103側にスピンドルネジ山102bにより付勢された状態とされるので、スピンドルカバー1をスリーブナット103の上面103aに確実に且つ所定の力にて接触固定している。
【0034】
一方、図5に示すように、操作ハンドル101を回転することにより、スピンドル102が上方に移動する際には、係止片先端部7aは、スピンドル102のネジ山102bに係合した状態にて、上方へと移動される。従って、作業者は、操作ハンドル101の操作が終了した時点にて、スピンドルカバー1を下方へと押し付けるか、或いは、回転する。これによって、図3に示す状態となり、スピンドル102を被覆した状態とされ、スピンドルカバー1の底部1aがスリーブナット103の上面103aに接触固定され、係止片7の弾性力で固定状態を継続して維持できる。
【0035】
ここで、上述のように、更にスピンドルカバー1を回転させると、係止片7の先端部7aがスピンドルネジ溝103bに沿ってスリーブナット103側に動くことでスピンドルカバー1をスリーブナット103の上面103aに確実に且つ所定の力にて接触固定させるができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るスピンドルカバーをスピンドルに設置した状態を示すスピンドルカバーの斜視図である。
【図2】本発明に係るスピンドルカバーの一実施例を示しており、図2(a)は、縦断面図であり、図2(b)は、図2(a)の線A−Aに取った断面図である。
【図3】本発明に係るスピンドルカバーをスピンドルに設置した状態を示すスピンドルカバーとスピンドルの縦断面図である。
【図4】本発明に係るスピンドルカバーをスピンドルに設置した状態で、スピンドルを下方に移動させた時の状態を示す断面図である。
【図5】本発明に係るスピンドルカバーをスピンドルに設置した状態で、スピンドルを上方に移動させた時の状態を示す断面図である。。
【図6】ゲートバルブを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 スピンドルカバー
2 カバー本体
3 蓋部
4 スピンドル取付部
5 開口部
6 スリット
7 係止片
100 ゲートバルブ
101 操作ハンドル
102 スピンドル
102a スピンドル上端
102b スピンドルネジ山
102c スピンドルネジ溝
103 スリーブナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブや各種操作器具の操作ハンドルの中心部から出没自在に突設されたスピンドルを被覆保護するスピンドルカバーにおいて、
前記スピンドルの外側に設置されて前記スピンドルを被覆する筒状のカバー本体を有し、
前記カバー本体は、一端部が閉鎖され、少なくとも、他端部或いは他端部に近接してスピンドル取付部を備えており、
前記スピンドル取付部は、円周方向に配列され、前記スピンドルのネジ溝に弾性的に係合する複数の係止片を有することを特徴とするスピンドルカバー。
【請求項2】
前記スピンドル取付部は、中心に開口部が形成された弾性を有する薄板にて形成され、前記開口部から半径方向外方へと所定長さのスリットが形成され、それによって、円周方向に均等に分割された前記複数の係止片が形成されることを特徴とする請求項1に記載のスピンドルカバー。
【請求項3】
一端部が閉鎖され、前記スピンドル取付部を備えた前記カバー本体は、薄板状の弾性を有する透明の合成樹脂にて一体に作製されることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピンドルカバー。
【請求項4】
バルブや各種操作器具の操作ハンドルの中心部から出没自在に突設されたスピンドルと、前記スピンドルを被覆保護するスピンドルカバーとの組合せであって、
前記スピンドルは、軸線方向に沿ってネジ溝が形成されており、
前記スピンドルカバーは、前記スピンドルの外側に設置されて前記スピンドルを被覆する筒状のカバー本体を有し、
前記カバー本体は、一端部が閉鎖され、少なくとも、他端部或いは他端部に近接してスピンドル取付部を備えており、
前記スピンドル取付部は、円周方向に配列され、前記スピンドルのネジ溝に弾性的に係合する複数の係止片を有することを特徴とするスピンドルとスピンドルカバーとの組合せ。
【請求項5】
前記スピンドル取付部は、中心に開口部が形成された弾性を有する薄板にて形成され、前記開口部から半径方向外方へと所定長さのスリットが形成され、それによって、円周方向に均等に分割された前記複数の係止片が形成されることを特徴とする請求項4に記載のスピンドルとスピンドルカバーとの組合せ。
【請求項6】
一端部が閉鎖され、前記スピンドル取付部を備えた前記カバー本体は、薄板状の弾性を有する透明の合成樹脂にて一体に作製されることを特徴とする請求項4又は5に記載のスピンドルとスピンドルカバーとの組合せ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−275890(P2009−275890A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130209(P2008−130209)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】