説明

スピンドルシャフトの保護

ハウジング(3)内にエアベアリング(6)を介して回転可能に取り付けられ、片持ち端部に粒子を噴出する塗装ベル(8)が設けられているスピンドルシャフト(4)を備え塗装スピンドルにおいて、前記スピンドルシャフト(4)の前記片持ち端部は、前記ハウジング(3)に接続されるとともに前記スピンドル(4)に向かって開口する少なくとも1つのチャンバ(22)によって取り囲まれており、該チャンバにはラジアルベアリング(6)のギャップから軸受エアが流入し、前記軸受エアは前記チャンバ(22)と前記スピンドルシャフト(4)との間に形成されるギャップを介して前記チャンバ(22)から流出することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部に記載のタイプの塗装スピンドル(painting spindle)の構成に関する。ここで、塗装スピンドルは、塗装に使用されるすべての塗装スピンドルを意味するが、このことは本発明との関連で使用される塗料以外の媒材を排除するものではない。簡略化のために、本発明の説明は、塗装スピンドルについて言及する。
【背景技術】
【0002】
今日において、このような塗装スピンドルが最も広く利用されている領域は、自動車ボディの塗装であるが、これに限らず、このスピンドルは適当および可能と考えられる他のすべての場合において使用可能である。塗装スピンドルの構造および機能に関して、スピンドルは、通常はロボットハンドまたはポータル(portal)内の工具としての移動手段(carrier means)に取り付けられる。前記移動手段は、塗装される対象物に対してスピンドルを移動させるのを可能にする。特に、塗装スピンドルは、その名が示すように、その端部に円錐形状に外側に拡張するベル(bell)が取り付けられるスピンドルからなる。スピンドルシャフトおよびベルは、例えば6,000〜130,000rpmで回転し、ベルの開口部は25ないし80mmの直径を有することができる。塗料は、スピンドルを介してベルの円錐形先端に供給され、遠心力によってベル内面に沿って移動して、その端部から外部に噴出される。これらの塗料滴を例えば自動車ボディなどの対象物に塗布するために、塗料粒子が静電的に帯電され、対象物がアースされる。通常、アース(塗装対象物)に対する静電帯電電位は、30,000ないし130,000ボルトの範囲である。ベルから出た塗料粒子は、対象物と塗料粒子との電位差によって塗装対象物に引き付けられる。ベルの回転のためにベルから放射方向に噴出することになる帯電塗料粒子を偏向させるために、高速のエアフローがベルの後方外側に供給される、このエアフローは、ほぼ軸方向に向けられていることから、ベルから対象物に向かって塗料粒子を偏向させるように強制する。静電帯電は、静電的に帯電されたスピンドルによって行われるのが一般的であり、これはスピンドルも帯電状態になることを意味する。あるいは、塗料粒子は、ベルから噴出された後に、塗装対象物までの途中で通過する部分の周囲の円形状に配置されたロッドアンテナ(rod antennas)によって帯電されてもよい。塗料粒子がアースされた塗装対象物に引き付けられるためには、帯電した塗料粒子の近傍にある他のすべての物が帯電塗料粒子と同電位でなければならない。このことは、例えば、スピンドルおよびその付属品やロボットハンドが塗料粒子と同電位であることを意味するとともに、塗装スピンドルと塗装対象物との間の電位差を維持するために、スピンドルおよびその付属品と装置の残りの部分との間に電気的絶縁部材が存在しなければならないことも意味する。
【0003】
シャフト径、回転速度および清潔さの要求から、今日においてはエアベアリングが優れた軸受け技術である。シャフトとスピンドルハウジング間の電位差を除去するとともにスパーク発生によるベアリング表面の損傷を防止するために、通常はスピンドルの後端部か又は塗装ベルの直後に配置される除電器(electric eliminator)が使用されている。スピンドルシャフトを駆動するために、要求される高速度用のエアタービンが今日において使用されている。これは、電気的絶縁の必要性に影響を及ぼすことなく、圧縮エアの形で必要なエネルギーを電気的帯電されたスピンドルユニットに伝達することを可能にする。能力要求の増加(毎分500−2000ccの塗料)に伴って、より大きなエネルギーをタービンに供給する必要が生じ、これは実際にはタービン内の圧力降下によって発生させるのが一般的である。これの1つの効果は、タービン内で空気が膨張することで温度が低下し、その結果としてスピンドルハウジングの温度も低下する。これは、環境空気中の水分が冷たい表面で凝縮する危険につながり、この凝縮は塗装仕上がりに悪影響を及ぼし得る。温度低下は、タービン内またはその近傍で氷結を引き起こすこともあり、その性能および機能を阻害する場合もある。このようなスピンドルの冷却問題を抑制するために、今日においては供給されるエアが予熱されていることが多く、その結果、本質的に所望の温度を得ることができ、氷結や凝縮の問題を回避できる。凝縮や氷結以外の空気使用に関する別の問題は、供給されるエネルギーや塗料が最終的に受容するエネルギーに関して効率が低いことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアタービンによって駆動される塗装スピンドルに関する問題の背景に対して、代替として電気モータによってスピンドルを駆動する試行もなされてきた。ここで言及される塗装スピンドルは、通常はロボットアームの外側端部に配置されるものであるから、塗装時における接触し易さ(access)や便利さを向上させるために、できるだけ小型で軽量に作製されなければならない。さらに、塗装スピンドルは、取り付け、保守、および取り扱いが容易でなければならない。
【0005】
今日における別の問題は、一方または両方のエアベアリングの位置でスピンドルシャフト上に塗料が蓄積することである。やがて、これは、ラジアルベアリングで作用するエアがベアリングギャップから自由に抜け出るのを妨げることになり、その結果、ベアリングの負荷能力や冷却作用に悪影響を及ぼし、塗装スピンドルの機能および寿命を明らかに低下させることになる。この問題に関する効果的な解決策は未だ見出されておらず、このことはここで言及されているタイプの塗装スピンドルにおいて注目されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、特許請求の範囲に記載の特徴を備えた本発明によって解決されるに至った。
【0007】
明確化のために、塗装スピンドルは、添付図面を参照してより詳細にその全体について後述されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、今日において公知技術であるロボットアームの外側端部に取り付けられた塗装スピンドル2を備えるロボット1を概略的に示す。
【0009】
図2,3には、回転シャフト4を収容する塗装スピンドルのスピンドルハウジングが示されており、これは非回転管5も収容している。回転シャフト4は、2つのラジアルエアベアリング6と、図示の例では2つのアキシャルエアベアリング7とによってハウジング3内に取り付けられ、塗装ベルとして知られていてシャフト4と共に回転する円錐台状のじょうご(funnel)8を一端部(図中の左端部)で支持している。図示されるように、ダクト5aを介して塗料をじょうご8に向かって導く静止管5が、回転シャフト4の端部であってベル8の内側で開口している。今日において、シャフト4は、6,000ないし130,000rpmで回転するのが一般的である。符号9は、スピンドルハウジング内に配置されたエアダクトを示す。このダクト9は、ベルの回転時にベルから噴出される塗料粒子を塗装される対象物(不図示)に向かって軸方向に沿って偏向させる高速のエアフロー10を生じさせる。対象物は接地電位を有し、塗料粒子と共にスピンドルは、対象物に対して30,000から130,000ボルトの範囲にある電圧電位を有する。これにより、塗装粒子は、塗装対象物に引き付けられることになる。
【0010】
シャフト4は、ステータ鉄11、ステータ巻き線12、およびシャフト4に固定されたロータ13からなる電気モータによって駆動される。ここまで説明されてきたことは、公知技術に属するものであって、更なる説明を必要としないものである。
【0011】
異なる電位レベル(30,000ないし130,000ボルト)間での必要な電気的分離を創設する安全変圧器とは別に、電気モータのエネルギー源として、塗装対象物から電気的に分離された例えばバッテリ、キャパシタ、燃料電池などの蓄電装置または発電装置を使用することもできる。
【0012】
<スピンドルシャフトへの塗装ベルの取り付け>
図3は、回転シャフト4とその内部に固定された塗料管5とを断面で示す。符号14は、スピンドルシャフト4の部分円錐状表面を示し、符号15はシャフトの内部ねじを示す。塗装ベル8もまた、前記部分円錐状表面14と係合する部分円錐状表面16を有するとともに、スピンドルシャフトのねじ15と螺合する外部ねじ17を有する。
【0013】
塗装ベル8が高回転速度でスピンドルシャフト4から偶発的に外れるのを防止するために、塗装ベル8のねじ部17には、本実施形態においては、図示するように6つの部分19に区画する軸方向溝18が設けられている。これにより、塗装ベルがシャフト4にきつく締め付けられたとき、ベル18のねじ付き部分19がそのねじ部およびシャフト4のねじ部15のねじ側面に対して径方向内側に曲がることになる。その結果、シャフト4が回転すると、前記部分19は、遠心力によって押し広げられて、塗装ベル8の部分19は径方向外側に向かう力を発生させることになる。この力はスピンドルシャフト4とベル8との間のねじ部にも伝達されて、前記部分円錐状表面14,16を互いに「固定する」ような軸方向力を生じさせる。
【0014】
ねじ付き部分19の遠心力による拡張は、シャフト4に塗装ベル8をより堅固に固定することになり、これにより動作中にベルが外れるのが防止される。また、ねじ付き部分19の弾力特性は、ねじ15,17によってではなく円錐状部16,14によって固定位置へと誘導するのを確実にするものであり、これにより塗装ベル8およびスピンドルシャフト4の両方の各円錐状部および各ねじ部の公差要求度を寛容にすることができる。
【0015】
<ステータの冷却>
スピンドルシャフト4の駆動源として電気モータ11,12,13(図2参照)が用いられる場合、摩擦によって生じる熱に加えて、モータのステータ鉄11、ステータ巻き線12およびロータ13に発熱が生じる。例えば過度の発熱やこれによる処理できない膨張によってスピンドルシャフト4の機能を損なわないように、スピンドル4を冷却すべく、生じる熱の大部分を放散させる必要がある。
【0016】
これは、高速のエアフロー10を形成するために装置に供給される圧縮エアによって過度の熱が取り去られることにより実行される。この圧縮エアまたはその一部は、図2に示す例では、モータのステータ巻き線12に通ずるハウジング3の1つ以上のダクト9を介して導入される。そして、図面では、ダクト20内のステータ巻き線12を貫通して流れる圧縮エアを矢印で示す。
【0017】
図4は、図2のステータのIV−IV線断面を示す。ここでは、ステータの巻き線が符号12で示される。これらの巻き線には、圧縮エア(高速エア)の通路となる貫通ダクト20がステータを貫通し、かつ、ロータ13から離れた側の巻き線13の表面に隣接して設けられている。ダクト20は、ステータの巻き線溝内の巻き線内部または巻き線ワイヤの間に配置されてもよい。このようにして、ステータの冷却およびロータの部分的冷却が効果的に実現される。しかし、冷却エアーがロータとステータの間から漏出しないようにするために、ステータは漏出防止ライニング21(図2,4参照)によって覆われている。
【0018】
高速エアフロー10は、図2のステータ巻き線12の端部での矢印で示すように、巻き線の両端部間でステータ鉄11内のダクト20から出る。
【0019】
<不確定な径方向負荷を生じさせない、スピンドルハウジングに対するスピンドルシャフトの回転の固定>
1つの問題は、スピンドルハウジング3内のベアリング6を損傷することなく、スピンドルシャフト4から塗装ベル8(図2,15−17参照)を取り外すことである。通常、ベル8はスピンドルシャフト4にねじ込まれているため、ベルの脱着にはトルクを掛ける必要があり、そのためにはスピンドルシャフトに逆トルクを作用させなければならない。この逆トルクは、今日においてはベルから離れた側の端部においてスピンドルシャフト内に設けられているトルクアーム(またはピン)によって提供されているのが一般的である。このピンは、手で使用されてもよいし、または、ステー(stay)としての止め部材(stop)によって使用されてもよい。この場合、脱着のためのトルクを掛けたとき、この作業の際にスピンドルシャフト4は径方向力を受けることになる。これにより、スピンドルシャフト4は制御できない(uncontrolled)軸受負荷を有するベアリング表面に対して制御できない方法で支持され、その結果、ベアリングを損傷してしまうことになる。
【0020】
図15−17は、ベル8を脱着するためのトルクが適用されたときに、ベアリング表面にスピンドルシャフト4によって制御できないような径方向の負荷が掛からないようにした構成を示す。この構成は、スピンドルハウジング3に対するスピンドルシャフト4の回転を防止しながら、径方向平面X−Y内でのスピンドルシャフト4の自由な移動を可能にすることによってスピンドルハウジング3に逆トルクが伝達される。
【0021】
前記構成は、スピンドルシャフト4の外径よりも僅かに大きい内径を有するリング形状の固定ワッシャ53を備える。固定ワッシャ53には、内側直径方向に対向する一対の第1駆動ピン54と、互いに外側直径方向に向いた一対の第2駆動ピン55が駆動ピン54に対して直角をなす位置に設けられている。スピンドルシャフト4の端部には、幾つかの溝56(図示する例では8つの溝)が設けられている。溝56は駆動ピン54を収容できるような寸法になっており、一方、第2駆動ピン55はスピンドルハウジング3の溝57内に収容されるようになっている。固定ワッシャ53は、駆動ピン55が溝57内で移動しながら駆動ピン54が溝56に係合および係合解除できるように(図16,17参照)、スピンドルシャフト4に対して軸方向に限定的に移動可能になっている。固定ワッシャ53の外側には、半円形に延伸するヨーク(yoke)が軸方向に配置されている(明瞭化のためにヨーク58は図16,17において断面にしていない)。ヨーク58も同様に、軸方向に限定的に移動可能である。ヨーク58の自由端は、固定ワッシャ53の外側に係合し、図示する例では第2駆動ピン55の上部に係合する。このヨーク58の補助を得て、固定ワッシャ53は、ばね59によってスピンドルハウジング3内で押圧されて駆動ピン54がスピンドルシャフトとの係合が解除されるような移動を保持する位置(図16参照)と、ばね59の作用に抗して駆動ピン54,55がスピンドルシャフトの溝56およびスピンドルハウジング3の溝57にそれぞれ係合するように押し下げられて保持される位置とに、軸方向に移動可能になっている。ヨーク58は、ばね60に抗して軸方向に移動できる作動手段61によって作動する。作動手段61には、ヨーク58に下に、より適切には図16,17に示すヒール部(heel)の下に係合する傾斜面またはくさび状面62が設けられている。作動手段61がばね60によって非案内位置に保持されるとき、固定ワッシャ53は、ばね59によって駆動ピンがスピンドルシャフトの溝から自由になる位置に案内される。ばね60の力に抗して作動手段61が押されることによって、ヒール部63は、スピンドルハウジングのステー64を中心としてヨーク58が回動すると同時に押し上げられることになる。これは、ステー64を支点とするレバーとしてヨーク58を作動させて固定ワッシャ53を押し下げることになり、これにより駆動ピン54が溝56に係合する。その結果、スピンドルシャフトは、スピンドルハウジングに対して回転するのを防止されるが、径方向には自由に移動することができる。作動手段61が外れる、すなわち押し出されると、ヨークは固定ワッシャと共にばね59の力によって案内されて前記溝との係合が解除される。作動手段61の外側に向いての移動が適当な方法で制限されるのは勿論のことである。
【0022】
<本発明における塗料による汚染からのラジアルベアリングの出口の保護>
前部および/または後部のラジアルエアベアリング6の機能を阻害することとなるスピンドルシャフト4上での塗料の蓄積を防止するため、ベアリングの直ぐ外側であってベアリングギャップに隣接してチャンバ22が配置されている。このチャンバ22は、全周にわたって延びており、かつ、ギャップ23を介してスピンドルシャフト4に向かって開口している。陽圧で作用して前記ベアリングギャップから出て前記チャンバ22に流れる軸受エアは、内部に所定の陽圧を形成して軸受エアとして作用して、その少ない一部が、スピンドルシャフト4と、チャンバ22および空間25間でスピンドルシャフト4の周囲に延在するリップ部との間の隙間から流れ出ることで、塗料がチャンバに侵入するのを防止でき、一方で、軸受エアの大部分は従来と同様(不図示)にチャンバから流出することで、ベアリング内に有害な逆圧が生じることを防止する。
【0023】
図6に示すように、チャンバ22の外側に追加の第2チャンバ26を設けることも考えられる。陽圧によってチャンバ26に保護エアが供給される。この保護エアは、一方ではチャンバ22に噴出し、他方では空間25に噴出する(チャンバ26に保護エアを供給するためのダクトは不図示)。
【0024】
スピンドルハウジングが延伸して塗装ベルを取り囲むとともに、塗装ベルの外周とスピンドルハウジングとの間に隙間が形成されている実施形態(図6参照)では、空間25内に所望の圧力を生じさせるのを可能にするために、別の追加のダクト(不図示)が空間25に連通していてもよい。
【0025】
<スピンドルシャフトの表面処理>
ラジアルエアベアリング6の一方または両方に隣接するスピンドルシャフト4(図2参照)上への塗料の付着または蓄積を防止するための、上述したのとは異なる方法または補完する方法は、スピンドルシャフト4についてその軸方向の範囲の少なくとも一部を表面コーティングで被覆することである。これにより、スピンドルシャフトへの塗料の付着を減少させることができる。そうしないと、ベアリング6からの軸受エアの流出に影響して、ベアリングの負荷能力や冷却効率を低下させることになる。表面コーティングの例として、テフロン(登録商標)が挙げられる。
【0026】
<高速エアフローの制御(図7,8,9)>
上述したように、高速エアフローは、塗装対象物に向けてベルから噴出された塗料粒子を静電力による作用と相俟って偏向させるために、塗装ベル8に向けて略軸方向に高速で供給される。対象物に向けて塗料粒子を偏向させる高速エアフローの機能は、その全てが有効なものではない。高速エアがベル8の外側に流出してベルの周囲の空気を引き込むことで、ベルの8の外側に乱流が発生する。この乱流は、塗料粒子を引き込む傾向があり、これにより塗料粒子が装置の外面に付着する可能性がある。この乱流は、図7において矢印27で示される。
【0027】
今日における塗装スピンドルで生じているその不都合を防止するため、ガイド羽根手段28(図8,9参照)が設けられる。ガイド羽根手段28は、塗装スピンドル2の外面に沿ってベル8に隣接して延びるとともに、装置からの高速エア10の出口9(図6も参照)に隣接している。図8の例で示されるガイド羽根手段は、高速エア10によって引かれる周囲の空気をベル8の上を流れる本質的に層流のエアフローになるようにガイドする。これにより、ベル8の外側近傍での乱流27(図7参照)が無くなる。ガイド羽根手段28は、全周にわたるか又は複数の部分に分割された環状に形成されることができる。符号29はガイド羽根手段28のための支持フランジを示し、この支持フランジの数は2つ以上であることが好ましい。支持フランジ29を有するガイド羽根手段28は、スピンドルハウジング3に対して軸方向に着脱可能であり、支持フランジ29は、スピンドルの取り付けねじ(不図示)との関連で存在するスピンドルハウジング上の凹部にしっかりとスナップ係合することができる。
【0028】
図9は、スピンドルハウジング3の一体拡張部としてのフィラ(filler)がベル8の周囲上を延伸して配置されている。このフィラによって、図8に示す実施形態に比べて、ハウジングからベルへの過渡部において、高速エアフローによって引かれる空気の流れをより一様なものにすることができる。図面において、符号31は塗装スピンドルの取付部品を示す。フィラ30は、ガイド羽根手段28の内面に沿った外面形状を有するのが好ましい。
【0029】
<アキシャルエアベアリングの構成>
その使用を容易にするのに非常に重要なことである、できるだけ短くて小型の塗装スピンドルとこれを含む塗装装置を実現するためには、通常は2つのアキシャルエアベアリングの位置決めが大変に重要なことである。
【0030】
これに関して、最適な解決策は、スピンドルシャフト4上のロータ13の各側面上であって前記ロータに隣接して2つのアキシャルエアベアリング7を配置することである。アキシャルエアベアリング7の構成はコンパクトであると同時に、ロータがアキシャルエアベアリングに軸方向に関する無理のない支持を提供することになる。スピンドルシャフト4を長くするといったアキシャルエアベアリングのための特別な構成や方法は、必要ではない。
【0031】
軸方向力が磁界(実施形態では不図示)によって対向方向に生じる単一作動型アキシャルベアリング(single-acting axial bearings)が使用可能である。アキシャルエアベアリングが機能しないときでも、スピンドルシャフトの回転を妨げないように、磁界によってシャフトが押し付けられる表面が摩擦表面として使用可能である。
【0032】
<塗装スピンドルのコーディング(cording)>
正規製品と共に海賊部品を使用する実態が増えてきている。これは、危険性を伴う場合があり、海賊部品が正規製品について要求される(寸法、材料選択等の)品質を満たしていないと、ひどい結果につながる。
【0033】
例えば本発明に係る構成の正規のスピンドルを交換したような海賊版として製造された塗装スピンドル2(図2参照)の使用を防止するため、製造された塗装スピンドルにコードを付すことが提案されている。このコードは、設備の制御装置によって読み取られて、正しいコードが付された塗装スピンドル2だけを正規構成に使用できるようにすることを可能にする。コードが無いか又はコードが不正な場合、これに応じて制御装置は例えば電気モータの電源を遮断することによって、その装置を使用できなくする。
【0034】
塗装スピンドルにコードを付すことによって、製品の信頼性や性能を向上させるために、装置の作動時におけるデータの追跡や収集も可能になり、かつ、このデータから基本情報を得ることも可能になる。このことは、構成に含まれる制御装置によって個々の塗装スピンドルを特定して、データを供給者側にあるスピンドル監視システムに送信することによって行うことができ、このようにして個々のスピンドルについての経時的データを収集することができる。
【0035】
<スピンドルの速度制御(図10,11,12参照)>
通常、電気モータで駆動されるタイプの塗装スピンドルは、図1に示すように、塗装ロボットのアームの外側端部に装着されて移動される。ロボットの迅速な動作順序と、それに関連するロボットに関するトルクおよび負荷の観点とから、塗装スピンドル2の重量を最小化する努力がなされている。
【0036】
図12において、符号32は周波数が可変である交流電流の電源を示す。電源32から供給される交流電流は安全変圧器33に伝送されて、そこで交流電流は例えば40ボルトの低電位の直流電流に変換される。そして、前記直流電流は、モータが速度制御されるために用いられる周波数に比例して重畳された(superposed)周波数を含むことになる。この周波数は、塗装スピンドルに組み込まれた制御電子機器34によって検出され、そこで直流電流は、重畳された交流電圧を用いて、塗装スピンドル(図2参照)の電気モータ(11,12,13)を所望の速度で回転させる所望の供給周波数に変換される。
【0037】
制御ユニット34の前に安全変圧器33を電源に接続する利点は、モータに求められるものよりもかなり高い周波数で作動するのを可能にできることである。これはまた、図11に示すように、ロボットアーム内に安全変圧器33を配置するため、望まれるように変圧器をコンパクト、すなわちより小さい体積でより軽量にできることを意味する。所望であれば、単一ユニットを形成するように変圧器33と制御ユニット34とを組み合わせてもよい。
【0038】
加速度、減速度、速度などについて所望の作動特性を得るために、電源とモータ制御部との間での情報交換は、光、音、無線通信によって伝送される情報、伝送されるエネルギーの情報、またはこれらの組み合わせ等を介して変圧器の一次側または二次側に接続されたユニットとの通信によって行われる。回転速度は、例えば、光学的に又は音インパルスによって読み取ることができ、これらは電気的絶縁の要求に影響することなく使用可能である。
【0039】
安全変圧器33には交流電圧が供給されるのが好ましく、その周波数は例えば12ないし9倍というような、スピンドルシャフト3の所望の加速度の倍数である。これにより、変圧器の物理的な大きさおよび重量を最小化することが可能になる。(図12において符号34で示す)制御電子機器に受け取られた交流電圧は、所望の速度でスピンドルシャフト4を駆動するために、所望の周波数を設定するように変圧器33に供給される周波数よりも低いファクタ(factor)である周波数を有する。電源32から安全変圧器33に供給される交流電流の周波数を変えることによって、スピンドルシャフト4の速度を変化させることができる。
【0040】
図10は、図12に示すのとは対照的に、ロボットの近傍に配置される制御電子機器35および電源ユニット32を有する一方で3つの安全変圧器33がロボットアーム内に配置されて、本実施形態ではモータの所望の周波数で作動するが、かなり重くなる構成を概略的に示す。
【0041】
図12は、制御電子機器34が塗装スピンドル2の現実のハウジング内に組み込まれている実施形態を示す。図面に示す電源32と、安全変圧器33とは、1つのユニットを形成するように組み合わされてもよい。
【0042】
<電気接続のための接続手段の使用>
電気モータで駆動される塗装スピンドルは、その機能のために、モータの作動のための電気的接続(通常は三相であるため3つの接続部、スピンドルに組み込まれた制御電子機器の場合には直流電流用に2つの接続部を必要とする。)と、冷却エアおよび高速エアのための接続とを必要とする。また、塗装スピンドルをロボットアームの端部に取り付けるためのボルトが必要である。3つの取付ボルトの場合、塗装スピンドルの修理や交換のときに、3つの電気的接続部、情報制御のための1つのケーブル、2つのエア接続部、および、3つのボルト接続部を取り扱う必要がある。
【0043】
これらの8つの手操作による別々の接続部は、ロボットアームについての塗装スピンドルの脱着に不必要な時間浪費の作業を伴うことになる。そのため、本発明では、接続部の数を減らすとともに、取付ボルトを電気的接続部としても機能させるか、エア接続部を電気接続部としても機能させるか、または、その組み合わせとして、取付ボルトおよび空気接続部の両方が電気的接続部として同時に機能するようにした。
【0044】
図13は、例えば3つの取付ボルト36(1つのみ図示)によって、例えばアームに固定された取付フランジ31を介してロボットアームの端部に取り付けられた塗装スピンドルを概略的に示す。取付フランジ31には、各ボルト用の凹部が設けられており、これらの凹部内にブロンズ製のナット38が収容されている。ナット38は、凹部37の壁部から電気的に絶縁されており、具体的には、絶縁物39によって取付フランジ31から絶縁されている。塗装スピンドルのハウジング3の肩部においてヘッド部40で支持されている取付ねじ36は、ハウジング3内を絶縁状態で延伸して、ブロンズ製ナット38にきつくねじ込まれている。電気ケーブル41(導電体の1つ)がナット38に電気的に接続されている。図面において、符号34は、例えば電気的導電ブリッジ42によって給電されるモータの制御電子機器を概略的に示す。前記ブリッジ42は、(図13において符号44で示されるものによって)塗装スピンドルのハウジング3から電気的に絶縁される一方、取付ボルト36のヘッド部40とねじ43とに電気的に導通した状態で固定されている。ねじ43は、例えば、制御電子機器34を貫通し、ねじ接続部を介してブリッジ42に電気的に導通した状態で固定されている。
【0045】
塗装スピンドル2の取付ボルトがここに説明されるように設計されていれば、ボルト36を緩めて外すだけで取付フランジ31に対する塗装スピンドルの着脱を簡単に行うことができることが容易に理解され、このときエア接続部(不図示)はスピンドルが取り付けられてときに密封状態に閉じられる平面からなる。
【0046】
図14は、エア接続部が塗装スピンドルのモータおよび制御電子機器用の電気的接続部をもどのように構成するかを示す。塗装スピンドル内のエア通路が、符号45で示される。図13との関連で説明したように、取付フランジ31には、この場合も同様に凹部37が設けられている。凹部37には、第1ブシュ39が嵌め込まれている。ブシュ39は、電気的導電性の第1スリーブ46を取り囲んで取付フランジから絶縁している。電気ケーブル47がこのスリーブ46に電気的に接続されている。
【0047】
同様に、第2の絶縁ブシュ48が塗装スピンドルのハウジング3内に配置されており、第2ブシュ48は、電気ケーブル50によって塗装スピンドルの制御電子機器34またはモータに電気的に接続される電気的導電性の第2スリーブ49を取り囲んでいる。
【0048】
エア通路45は、取付フランジ31に接続されるエア通路51と同様に、例えば、電気的非導電性のホースからなっており、図14に見られるように、ブシュ46,49を貫通する孔をそれぞれ部分的に通って延びている。ブシュ46,49内におけるホース51,45の各端部間において、ブシュの貫通孔はホースの内径に一致するより小さい直径を有しており、これによりブシュ自体がエア通路の一部を形成している。ブシュ46,49の導電性接触面間であって貫通孔の周りには、エア漏れを防止するためのシールリング52が配置されている。
【0049】
このことから、塗装スピンドルが取付フランジ31に取り付けられると直ちに、塗装スピンドルのエアおよび電気に関する同時接続が自動的に達成されることが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ロボットアームの先端に塗装スピンドルを保持するロボットを概略的に示す図。
【図2】本発明に係る塗装スピンドルの概略断面を示す図。
【図3A】シャフトに近接する側から見た塗装ベルの図。
【図3B】互いに分離された塗装ベルおよびスピンドルシャフトの縦断面を示す図。
【図4】ロータおよびステータだけの図2のIV−IV線断面を示す図。
【図5】図6と共に、2つの異なる実施形態のうちの一方を示す図。
【図6】図5と共に、2つの異なる実施形態のうちの他方を示す図。
【図7】使用時における塗装スピンドル外側での空気の乱流を概略的に示す図。
【図8】乱流を緩和するための設計を示す図。
【図9】乱流を緩和するための別の設計を示す図。
【図10】塗装スピンドルへの必要なエネルギーおよび制御情報の伝達を概略的に示す図。
【図11】安全変圧器の配置例を示す図。
【図12】塗装スピンドルにエネルギーおよび制御情報を伝達する別の設計を概略的に示す図。
【図13】組み合わされた取付ボルトと電気接続部とを示す図。
【図14】組み合わされた空気接続部と電気接続部とを示す図。
【図15】スピンドルシャフトの一端部の外側近傍での塗装スピンドルの断面を概略的に示す図。
【図16】図17と共に、スピンドルシャフトの回転固定手段の2つの異なる位置の一方を示す図。
【図17】図16と共に、スピンドルシャフトの回転固定手段の2つの異なる位置の他方を示す図。
【符号の説明】
【0051】
1…ロボット
2…塗装スピンドル
3…ハウジング
4…回転シャフトまたはスピンドルシャフト
5…非回転管、静止管または塗料管
5a…ダクト
6…ラジアルエアベアリング
7…アキシャルエアベアリング
8…じょうご又は塗装ベル
9…エアダクト
10…エアフロー
11…ステータ鉄(電気モータ)
12…ステータ巻き線(電気モータ)
13…ロータ(電気モータ)
14…部分円錐状表面
15…内部ねじ
16…部分円錐状表面
17…外部ねじ
18…軸方向溝
19…ねじ付き部分
20…貫通ダクト
21…漏出防止ライニング
22…チャンバ
23…ギャップ
25…空間
26…チャンバ
27…乱流
28…ガイド羽根手段
29…支持フランジ
30…フィラ
31…取付フランジ
32…電源
33…安全変圧器
34…制御ユニット(制御電子機器)
36…取付ボルト
37…凹部
38…ナット
39…絶縁物または第1ブシュ
40…ヘッド部
41…電気ケーブル
42…ブリッジ
43…ねじ
45…エア通路
46…第1スリーブ
48…第2ブシュ
49…第2スリーブ
50…電気ケーブル
51…ホース
52…シールリング
53…固定ワッシャ
54…第1駆動ピン
55…第2駆動ピン
56…溝
57…溝
58…ヨーク
59…ばね
60…ばね
61…作動手段
62…傾斜面またはくさび状面
63…ヒール部
64…ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(3)内にエアベアリング(6)を介して回転可能に取り付けられ、片持ち端部に粒子を噴出する塗装ベル(8)が設けられているスピンドルシャフト(4)を備え塗装スピンドルにおいて、
前記スピンドルシャフト(4)の前記片持ち端部は、前記ハウジング(3)に接続されるとともに前記スピンドル(4)に向かって開口する少なくとも1つのチャンバ(22)によって取り囲まれており、該チャンバにはラジアルベアリング(6)のギャップから軸受エアが流入し、前記エアは前記チャンバ(22)と前記スピンドルシャフト(4)との間に形成されるギャップを介して前記チャンバ(22)から流出することを特徴とする塗装スピンドル。
【請求項2】
前記軸受エアは、前記スピンドルシャフト(4)の外側にある空間(25)に別のダクトを介して流出もすることを特徴とする請求項1に記載の塗装スピンドル。
【請求項3】
軸方向に互いに隣接して配置された2つのチャンバ(22,26)を有し、そのうち外側のチャンバ(26)には保護エアが陽圧で供給され、該保護エアは一方では内側のチャンバ(22)に流出し、他方では前記空間(25)に流出することを特徴とする請求項2に記載の塗装スピンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2007−537865(P2007−537865A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527120(P2007−527120)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000729
【国際公開番号】WO2005/110615
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(503261144)リンド ファイナンス アンド ディベラップメント アクチボラゲット (8)
【Fターム(参考)】