説明

スピーカとそれを用いた電子機器

【課題】本発明は薄型タイプのスピーカとそれを用いた電子機器に関するもので、薄型化を図るとともにローリング現象を防止しギャップ不良を低減するスピーカを提供することを目的とする。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、磁気ギャップを介して水平方向、または略水平方向に配置した第二の板状磁石7、第一の板状磁石12と、前記磁気ギャップに可動自在に配置したボイスコイル10と、このボイスコイル10に結合した振動板9とを備え、前記第一の板状磁石12は、その板端に磁極を形成し、前記板状磁石7は、その厚み方向の両端に磁極を形成し、前記磁気ギャップにおけるボイスコイル10部分においては、このボイスコイル10部分に対して磁束が略直交する構成とするとともに、前記第二の板状磁石7の側面部と前記ボイスコイル10との間に磁性流体14を介在させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄型タイプのスピーカとそれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯機器などの電子機器においては薄型化が要求されるため、その本体内に内蔵させるスピーカも薄型化が要求されることになる。
【0003】
スピーカの薄型化を図るためには、その磁気回路を形成するための磁石を小型化することが当然のように行われているが、磁石を小さくすると磁力が小さくなり、その結果として音声出力も小さくなってしまうので、実際は磁石をあまり小さくはできない状態になっている(例えば、このような従来技術は下記特許文献1に記載されている。)。
【特許文献1】特開2005−51283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のごとく従来から、携帯機器などの電子機器に内蔵させるタイプのスピーカは薄型化が図られているが、音声出力が小さくなってしまうのを避けるべく、実際には磁石をあまり小さくはできないのが実態で、その結果として十分に満足できる薄型化が行なえていないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は薄型化が図れ、しかも音声出力を高めるようにするとともに、ローリング現象を防止しギャップ不良を低減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そしてこの目的を達成するために本発明は、磁気ギャップを介して水平方向、または略水平方向に配置した第一、第二の板状磁石と、前記磁気ギャップに可動自在に配置したボイスコイルと、このボイスコイルに結合した振動板とを備え、前記第一の板状磁石は、その板端に磁極を形成し、前記第二の板状磁石は、その厚み方向の両端に磁極を形成し、前記磁気ギャップにおけるボイスコイル部分においては、このボイスコイル部分に対して磁束が略直交する構成とするとともに、前記第二の板状磁石の側面部と前記ボイスコイルとの間に磁性流体を介在させ、前記第二の板状磁石に対向する振動板の一部に孔を設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明は、磁気ギャップを介して水平方向、または略水平方向に配置した第一、第二の板状磁石と、前記磁気ギャップに可動自在に配置したボイスコイルと、このボイスコイルに結合した振動板とを備え、前記第一の板状磁石は、その板端に磁極を形成し、前記第二の板状磁石は、その厚み方向の両端に磁極を形成し、前記磁気ギャップにおけるボイスコイル部分においては、このボイスコイル部分に対して磁束が略直交する構成としたスピーカであって、磁気ギャップを介して磁気ギャップ水平方向、または略水平方向に配置したので、薄型化が図れ、しかも磁気ギャップの両側に第一、第二の板状磁石を配置したので、磁力を高めて音声出力を高めることができるものとなる。
【0008】
また、前記第二の板状磁石の側面部と前記ボイスコイルとの間に磁性流体を介在させるとともに、前記第二の板状磁石に対向する振動板の一部に孔を設けることにより、ローリング現象を防止しギャップ不良を低減できるとともに、ボイスコイルからの放熱効果がよくなり、スピーカとしての高耐入力化を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の一実施形態を、電子機器として携帯電話を例にし、添付図面を用いて説明する。
【0010】
図1において、1は本体で、この本体1には蓋2が開閉自在に結合されている。この図1における背面側から見ると一般的な携帯電話と同じように本体1には操作ボタン(図示せず)が設けられ、また蓋2には液晶式の表示部(図示せず)が設けられている。
【0011】
また、本体1の外面側には図1のごとく2個のカバー3が設けられ、これらのカバー3の背面側の本体1内には図2、図3に示したスピーカ4が実装されている。
【0012】
スピーカ4は図3に示すように非磁性体であるステンレス301により形成された表面側のプレート5と、磁性体である冷間圧延鋼板により形成されたプレート6との間に、プレート6側からプレート5に向けて順にネオジウム製の第二の板状磁石7、磁性体である冷間圧延鋼板により形成されたリング8、PEI樹脂フィルムにより形成された振動板9、銅線などにより形成されたボイスコイル10、磁性体である冷間圧延鋼板により形成されたリング11、ネオジウム製の2枚の第一の板状磁石12を順次配置している。そして、第二の板状磁石7の側面部とボイスコイル10との間に磁性流体14を介在させるとともに、第二の板状磁石7に対向する振動板9の一部に孔15を設けている。
【0013】
なお、プレート5の表面の一部と各部の外周側は図5、図6のごとく、樹脂製のフレーム13で覆っている。
【0014】
図3、図5、図6に示すように、上記プレート6は長円形状で、その長手方向中心軸部分の長方形状の固定部6Aの上平面には、長方形状の第二の板状磁石7の下面が接着剤(図示せず)により固定され、固定部6Aの両側には長方形状の開口部6Bが形成されている。
【0015】
またプレート6の外周部分にはリング8が磁束を通過できる状態で固定されている。
【0016】
さらにリング8上には振動板9の外周が載せられ、振動板9の外周部にはリング11が載せられた状態になっている。
【0017】
また、振動板9上方で、上記プレート6の開口部6Bに対向するプレート5下面部分には、上記2枚の第一の板状磁石12の上面が接着剤(図示せず)により固定されている。なお、上記2枚の第一の板状磁石12のそれぞれの外周面は、上記プレート5下面部分に上記2枚の第一の板状磁石12の上面を接着する接着剤(図示せず)の一部が、この第一の板状磁石12のそれぞれの外周面とフレーム13内周面間に進入することにより、このフレーム13部分にも固定されている。
【0018】
また振動板9上面で、第二の板状磁石7の外周に対応する部分には、図6に示すように長円形状のボイスコイル10が固定されている。
【0019】
そして、第二の板状磁石7の側面部とボイスコイル10との間に磁性流体14を介在させる(厳密には、ボイスコイル10は振動板9の上面で第二の板状磁石7の外周に対応する部分に固定されているので、ボイスコイル10が固定されている部位の振動板9との間に磁性流体14は介在されていることになる。)とともに、前記第二の板状磁石7に対向する振動板9の一部に孔15を設けている。
【0020】
以上のように構成された状態で、ネオジウム製の2枚の第一の板状磁石12は、図7に示すごとく、その長手方向内側端部がN極、外側端部がS極に磁化されている。
【0021】
また、ネオジウム製の第二の板状磁石7は、図7に示すごとく、その厚み方向の表面側がS極、厚み方向の下面側がN極に磁化されている。
【0022】
この結果、図4と図7に示すごとくネオジウム製の2枚の第一の板状磁石12のそれぞれの内側のN極から出た磁束(図4においては図面の煩雑感を避けるために一方の第一の板状磁石12から出た磁束だけを記載している)は、内方へと略水平に進行してボイスコイル10を略直交状態で横切り、次に第二の板状磁石7上面のS極に進入する(なお、第一の板状磁石12と第二の板状磁石7は水平、または略水平状態に配置されていると説明しているが、この略水平状態とは図6に示したように第一の板状磁石12と第二の板状磁石7の厚み方向が一部水平方向で重なった状態、および両者が厚み方向で一部水平方向で重なってはいないが接近した状態も含んだものである。つまり、磁束をボイスコイル10に略直交するように進行させることが重要で、その点で水平状態には若干の幅が設定されるものである。)。
【0023】
その後、第二の板状磁石7下面のN極から出た磁束はプレート6の長方形状の固定部6Aを進行し、リング8、振動板9の外周部を通過後にリング11に進入し、次にこのリング11を例えば4分の1周進行後、このリング11の内周に図6のごとく固定されている第一の板状磁石12の外周S極へと進入することとなる。
【0024】
そして以上の磁束の流れがそのまま磁気回路となり、この磁気回路内で第一の板状磁石12の内側N極と第二の板状磁石7の上面S極間が磁気ギャップとなり、この磁気ギャップでボイスコイル10は電磁界駆動力が与えられ、これによりボイスコイル10が固定された振動板9に振動が伝えられ、音声出力が発せられることになる。
【0025】
ここで再び磁気ギャップにおける磁束の進行について説明する。
【0026】
図4と図7に示す第一の板状磁石12のそれぞれの内側のN極から出た磁束は、磁気ギャップにおいて内方へと略水平に進行し、ボイスコイル10を略直交状態で横切るということは電磁界駆動力を大きくするために非常に重要なことであり、本実施の形態において大きな特徴点となっている。
【0027】
本実施の形態において、磁束が磁気ギャップにおいて内方へと略水平に進行し、ボイスコイル10を略直交状態で横切る理由について考察する。
【0028】
一般的に考えると、第一の板状磁石12のN極から出た磁束は、距離的に短い第二の板状磁石7の上面のS極へと斜めに進行しようとするが(この場合磁束はボイスコイル10をわずかながら斜めに横切ることになる)、第二の板状磁石7の下面のN極の反発を受けることで、実際にはその反発力で持ち上げられ、その結果として本実施の形態においては、磁束が磁気ギャップにおいて内方へと略水平に進行し、ボイスコイル10を略直交状態で横切るものと考えられる。
【0029】
さて本実施の形態では上述のごとく磁気ギャップの両側に第一の板状磁石12、第二の板状磁石7を設けたので、いわゆる磁力が大きくなり、その結果として上記振動板9による音声出力も大きなものとすることができる。
【0030】
磁力を大きくするための第一の板状磁石12、第二の板状磁石7は文字通り板状でそれ自体が薄型のものであるので、結果として全体形状を非常に薄いものとすることができる。
【0031】
そして、第二の板状磁石7の側面部とボイスコイル10との間には、磁性流体14を介在させている。この磁性流体14の働きにより、ローリング現象を抑制しギャップ不良を低減できるとともに、ボイスコイル10からの放熱効果もよくなることにより高耐入力化を図ることができる。
【0032】
また、従来の円環状の磁気回路を有するスピーカ構造において磁気ギャップに磁性流体を用いた場合には、磁性流体により内部空気が密閉されるため、空気の流れが阻止され特性悪化となる課題を有していた。本発明の構成では、第二の板状磁石7の側面部とボイスコイル10との間に磁性流体14を介在させるとともに、第二の板状磁石7に対向する振動板9の一部に孔15を設けているため、第二の板状磁石7と振動板9と磁性流体14で囲まれた部分の空気の流通が阻止されることはなく、振動板9の振動が制限されるようなことはない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように本発明は、磁気ギャップを介して水平方向、または略水平方向に配置した第一、第二の板状磁石と、前記磁気ギャップに可動自在に配置したボイスコイルと、このボイスコイルに結合した振動板とを備え、前記第一の板状磁石は、その板端に磁極を形成し、前記第二の板状磁石は、その厚み方向の両端に磁極を形成し、前記磁気ギャップにおけるボイスコイル部分においては、このボイスコイル部分に対して磁束が略直交する構成としたスピーカであって、磁気ギャップを介して磁気ギャップ水平方向、または略水平方向に配置したので、薄型化が図れ、しかも磁気ギャップの両側に第一、第二の板状磁石を配置したので、磁力を高めて音声出力を高めることもできるものとなる。
【0034】
さらに、前記第二の板状磁石の側面部と前記ボイスコイルとの間に磁性流体を介在させるとともに、前記第二の板状磁石に対向する振動板の一部に孔を設けることにより、ローリング現象を抑制しギャップ不良を低減できるとともに、ボイスコイルからの放熱効果もよくなることにより高耐入力化を図ることができる。
【0035】
この結果、携帯電話等の携帯機器には非常に活用しやすいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態を携帯電話に適用した斜視図
【図2】本発明の一実施形態を携帯電話に適用した斜視図
【図3】同スピーカの分解斜視図
【図4】同スピーカの分解斜視図
【図5】同スピーカを長手方向で切断した断面図
【図6】同スピーカを短手方向で切断した断面図
【図7】図6のA部分の拡大断面図
【符号の説明】
【0037】
1 本体
4 スピーカ
7 第二の板状磁石
12 第一の板状磁石
14 磁性流体
15 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ギャップを介して水平方向、または略水平方向に配置した第一、第二の板状磁石と、前記磁気ギャップに可動自在に配置したボイスコイルと、このボイスコイルに結合した振動板とを備え、前記第一の板状磁石は、その板端に磁極を形成し、前記第二の板状磁石は、その厚み方向の両端に磁極を形成し、前記磁気ギャップにおけるボイスコイル部分においては、このボイスコイル部分に対して磁束が略直交する構成とするとともに、前記第二の板状磁石の側面部と前記ボイスコイルとの間に磁性流体を介在させ、前記第二の板状磁石に対向する振動板の一部に孔を設けたスピーカ。
【請求項2】
第一、第二の板状磁石は磁気回路形成体で磁気的に連結した請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
第一、第二の板状磁石はそれぞれ長方形とし、これら長方形状の第一、第二の板状磁石の長手方向を磁気ギャップを介して略対向させた請求項1または請求項2に記載のスピーカ。
【請求項4】
長方形状の第二の板状磁石の長手方向両側に、それぞれ磁気ギャップを介して長方形状の第一の板状磁石を、その長手方向を略対向させて配置した請求項3に記載のスピーカ。
【請求項5】
ボイスコイルは平面形状を略長円形状とし、この略長円形状のボイスコイルの両側の長辺を、長方形状の第二の板状磁石の両側の磁気ギャップに配置した請求項4に記載のスピーカ。
【請求項6】
第一の板状磁石の、第二の板状磁石への対向側端部をN極とした請求項1から5のいずれか一つに記載のスピーカ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のスピーカを本体内に内蔵した電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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