説明

スピーカシステム及びスピーカシステムの製造方法

【課題】薄型化でき、容易に製造することができるスピーカシステムを提供する。
【解決手段】スピーカシステム1は、スピーカ部2と、スピーカ部2が正面に取り付けられたバッフルボード10とを備えている。バッフルボード10のスピーカ取付部11には、4つの突起部12,13,14,15と、ダンパー取付部18と、エッジ取付部21とが形成されている。スピーカ部2は、振動板30と、エッジ35と、磁気回路保持部材40と、ダンパー80とを備えている。振動板30は、バッフルボード10の正面側に露出する。エッジ35は、振動板30の外周に配置され、エッジ取付部21に固定されて振動板30を支持する。磁気回路保持部材40は、磁気回路50を保持し、突起部12〜15に固定されている。ダンパー80は、ダンパー取付部18に固定されて振動板30の背面側に取り付けられ、振動板30を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカシステム及びスピーカシステムの製造方法に関し、特に、バッフルボードにスピーカユニットの部品を組み付けて構成されるスピーカシステム及びスピーカシステムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカシステムは、家庭用音響機器としては、テレビ受像機用、パーソナルコンピュータ用、又はオーディオ用など種々の電子機器に、また、車載用音響機器などに、広く使用されている。このような電子機器に用いられるスピーカシステムとして、薄型で省スペース化されたものが必要とされている。例えば、電子機器としては、小型化や薄型化が進み、電子機器内にスピーカを配置するために極めて狭いスペースしか確保できないものがある。
【0003】
例えば従来のボックス型のスピーカシステムは、一般に、ボックスを形成する筐体に、別途それ自体が単独で組み立てられたスピーカユニットが固定されて構成されている。しかしながら、このようなスピーカユニットは、振動板や磁気回路などを取り付けるためのフレームを有しているため、スピーカシステムの構造は複雑である。また、スピーカユニットは、フレームを有しているため、ある程度の厚みを有しており、スピーカシステムの薄型化が困難であるという問題があった。
【0004】
下記特許文献1には、振動板をバッフルボードに直接接合したボックス形のスピーカシステムの構造が開示されている。このボックス型のスピーカシステムでは、スピーカユニットのフレームは磁気回路を支持する部分とダンパーを貼る部分とが設けられており、ボックスの背面により、磁気回路が支持されている。
【0005】
下記特許文献2には、スピーカのフレームとキャビネットとを樹脂で一体に成型したスピーカシステムが開示されている。このスピーカシステムでは、フレーム部分となるキャビネットの一部がスピーカの正面から奥に深く絞り込まれるように形成されており、その絞り込まれた部位に、スピーカの種々の構成要素が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−253381号公報
【特許文献2】実開昭52−79922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載されているような構造は、磁気回路を固定するためのフレームを不可欠なものとしており、また、ボイスコイルがダンパーにより支持されているものである。したがって、バッフルボードとスピーカ部分とを合わせた部分の厚みを小さくするには限界がある。また、このようなスピーカシステムを製造する場合には、ボックスを先に作成しておいたうえで、そのボックスの背面側に磁気回路などを取り付けたり、ボックスの前面側に振動板などを取り付けたりする必要がある。したがって、製造工程が複雑になり、作業工数が比較的多く必要となるため、スピーカシステムの製造コストが上昇するという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載されているような、フレーム部分がスピーカの前面から奥に深く絞り込まれるように形成された構造では、スピーカシステムの薄型化、省スペース化は困難である。
【0009】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、薄型化でき、容易に製造することができるスピーカシステム及びスピーカシステムの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、スピーカシステムは、第1の取付部、第2の取付部、及び第3の取付部が形成されたバッフルボードと、バッフルボードの正面側に露出する振動板と、振動板の外周に配置され、第1の取付部に固定されて振動板を支持するエッジと、第2の取付部に固定され、磁気回路を振動板の背面側に位置するように保持する磁気回路保持部材と、振動板の背面側に配置され、第3の取付部に固定されて振動板を支持するダンパーとを備える。
【0011】
好ましくは第2の取付部及び第3の取付部のそれぞれは、エッジのエッジロール部よりも外側に位置している。
【0012】
好ましくは磁気回路保持部材は、磁気回路が内部に配置される円筒部と、円筒部から円筒部の側方に突出する複数の係合部とを有し、複数の係合部は、第2の取付部に接合されて第2の取付部に位置決めされている。
【0013】
好ましくはダンパーは、2つ以上配置されており、互いにスピーカ取り付け部中心から略均等な角度で配置されている。
【0014】
好ましくはダンパーは、第3の取付部に固定された固定部と、それぞれ固定部から振動板の中央部に向けて延びる帯状に形成された2つの可動部とを備え、2つの可動部のそれぞれは、振動板の中央部側の部位で振動板に接合されている。
【0015】
好ましくは2つの可動部は、それぞれの振動板の中央部側の部位で互いに連結されており、2つの可動部を連結する部位が、振動板に接合されている。
【0016】
好ましくはダンパーは、振動板の中心を通り振動板の外周縁に直交する直線上に配置されており、2つの可動部は、振動板の振動面に対して略垂直な方向から見て、上記直線を挟んで対称となるように形成されている。
【0017】
好ましくは第1の取付部は、バッフルボードの正面側に形成されており、エッジは、バッフルボードの正面側から第1の取付部に取り付けられている。
【0018】
好ましくは第1の取付部は、バッフルボードの背面側に形成されており、エッジは、バッフルボードの背面側から第1の取付部に取り付けられている。
【0019】
好ましくはバッフルボードの背面側には、錦糸線を介してボイスコイルに接続された端子が固定された第4の取付部が形成されており、第4の取付部は、エッジのエッジロール部よりも外側に位置している。
【0020】
この発明の他の局面に従うと、エッジを介して振動板が取り付けられたバッフルボードの背面側に、振動板を支持する複数のダンパーと、磁気回路を保持する磁気回路保持部材とが取り付けられてなるスピーカシステムの製造方法は、振動板が取り付けられたバッフルボードに、複数のダンパーを、それぞれが互いに架橋部を介して連結された状態で固定する第1のステップと、第1のステップの後、架橋部を除去することで複数のダンパーを互いに切り離す第2のステップとを備える。
【0021】
好ましくはスピーカシステムの製造方法は、第2のステップの後、予め磁気回路が取り付けられた磁気回路保持部材を、磁気回路が振動板の中央部に位置するように、バッフルボードに固定する第3のステップをさらに備える。
【発明の効果】
【0022】
これらの発明に従うと、バッフルボードに、エッジが固定される第1の取付部と、磁気回路保持部材が固定される第2の取付部と、ダンパーが固定される第3の取付部とが設けられている。したがって、薄型化でき、容易に製造することができるスピーカシステム及びスピーカシステムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の1つにおけるスピーカシステムを示す分解斜視図である。
【図2】スピーカシステムのバッフルボード及びスピーカ部を示す背面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】スピーカシステムの製造工程を説明するフローチャートである。
【図6】スピーカシステムの製造工程を説明する第1の図である。
【図7】スピーカシステムの製造工程を説明する第2の図である。
【図8】スピーカシステムの製造工程を説明する第3の図である。
【図9】スピーカシステムの製造工程を説明する第4の図である。
【図10】スピーカシステムの製造工程を説明する第5の図である。
【図11】スピーカシステムの製造工程を説明する第6の図である。
【図12】本発明の一変型例に係るスピーカシステムを示す分解斜視図である。
【図13】スピーカシステムのスピーカ部を示す断面図である。
【図14】本実施の形態の他の変型例の一例に係るスピーカシステムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態の1つにおけるスピーカシステムについて説明する。
【0025】
[実施の形態]
【0026】
本実施の形態において、スピーカシステム1は、ボックス型(BOX型)スピーカである。スピーカシステム1は、エッジを介して振動板が取り付けられたバッフルボードの背面側に、振動板を支持する複数のダンパーと、磁気回路を保持する磁気回路保持部材とが取り付けられて構成されている。スピーカシステム1は、バッフルボードにスピーカユニットのすべての部品が接合されたものである。
【0027】
[スピーカシステム1の構造の説明]
【0028】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるスピーカシステム1を示す分解斜視図である。
【0029】
図1に示されるように、スピーカシステム1は、薄型のスピーカ部2と、スピーカ部2が正面(図1において左上背方に面する面)に取り付けられたバッフルボード10と、バッフルボード10の背方を覆う背部ハウジング(図1において二点鎖線で示す。)25とを有している。スピーカシステム1は、バッフルボード10と背部ハウジング25とで構成されるエンクロージャにスピーカ部2が取り付けられている、ボックス型のものである。
【0030】
バッフルボード10は、例えば平板状のものであり、スピーカシステム1の正面側に配置される。バッフルボード10には、スピーカ部2が取り付けられるスピーカ取付部11が設けられている。スピーカ取付部11の中央部には、スピーカ部2の振動板30が配置される孔部11aが形成されている。孔部11aの周囲には、4つの突起部(第2の取付部の一例)12,13,14,15と、ダンパー取付部(第3の取付部の一例)18と、エッジ取付部(第1の取付部の一例)21と、2つの端子取付部(第4の取付部の一例)27,28とが形成されている。突起部12〜15、ダンパー取付部18、及び端子取付部27,28は、バッフルボード10の背面側(スピーカシステム1のエンクロージャの内面側)に形成されている。他方、エッジ取付部21は、バッフルボード10の正面側(スピーカシステム1の正面側)に形成されている。
【0031】
バッフルボード10は、例えば、樹脂の一体成形などにより形成されている。すなわち、バッフルボード10の各部は、一体に形成されている。
【0032】
スピーカ部2は、振動板30と、エッジ35と、磁気回路保持部材(以下、単に保持部材ということがある。)40と、磁気回路50と、ボイスコイルボビン60と、端子71,72と、ダンパー80とを有している。スピーカ部2は、エッジ35と、保持部材40と、端子71,72と、ダンパー80とがそれぞれバッフルボード10に固定されることで、バッフルボード10に取り付けられた状態で構成される。スピーカ部2は、全体として、薄型に構成されている。スピーカ部2は、スピーカ取付部11に、バッフルボード10の正面側から振動板30及びエッジ35が取り付けられ、バッフルボード10の背面側から他の部材が取り付けられて、バッフルボード10に組み付けられている。すなわち、スピーカシステム1は、予めそれ自体で動作可能なものとして組み立てられたスピーカユニットをバッフルボードに取り付けて構成されたものとは、異なる構造を有している。
【0033】
なお、図1において、ダンパー80としては、スピーカシステム1の組立て前の状態のものが示されているが、実際に組み立てられて使用状態にあるスピーカシステム1においては、異なる形状となる。すなわち、図1において示されているダンパー80は、製造工程の途中におけるものであり、最終的には取り除かれるべき架橋部80aを有するものである。最終的な形状のダンパーの構成や製造工程に関する事項など、詳細は後述する。
【0034】
図2は、スピーカシステム1のバッフルボード10及びスピーカ部2を示す背面図である。
【0035】
図2に示されるように、本実施の形態において、振動板30は平板状の楕円形である。また、エッジ35は、振動板30の外周に配置されて環状をなしている。振動板30は、上下方向(図2において上下方向)が振動板30の長軸の方向に一致するようにして配置されている。なお、背面から見た振動板30及びエッジ35の全体の形状は、後述の図6にも表されている。振動板30は、2つの半円弧と2つの直線とで構成される長円形(トラック形(小判形))であってもよい。
【0036】
振動板30は、エッジ35がバッフルボード10に固定されることで、エッジ35に支持された状態でバッフルボード10に取り付けられている。本実施の形態において、エッジ35は、バッフルボード10の正面側からエッジ取付部21に取り付けられている。振動板30は、バッフルボード10の正面側に露出している。エッジ35のうち、振動板30に接着された部分とバッフルボード10のエッジ取付部21に固定された部分との間は、エッジロール部35aとなる。エッジロール部35aは、例えば振動板30の外周縁に垂直な断面視で波状に湾曲した形状を有している。エッジロール部35aが設けられていることで、振動板30は、スピーカシステム1の前後方向(図2において紙面に垂直な方向)に変位可能である。
【0037】
バッフルボード10において、孔部11aは、振動板30の略相似形を有している。孔部11aは、エッジ35の外形状よりも、エッジ取付部21への取り付け代だけ若干小さい形状に形成されている。突起部12〜15は、それぞれ、スピーカ取付部11の下側、上側、右側(図2において右側)、左側(図2において左側)の部位に形成されている。突起部12〜15は、それぞれ、孔部11aの端縁部に近接するようにして配置されている。ダンパー取付部18は、孔部11aの端縁部と略相似形の楕円に沿って形成された、所定の幅の溝部である。端子取付部27は、スピーカ取付部11の右下方であって突起部14の近傍に設けられている。また、端子取付部28は、スピーカ取付部11の左上方であって突起部15の近傍に設けられている。
【0038】
図1に示されるように、保持部材40は、その中央部に形成された円筒部41と、円筒部41から円筒部41の側方に突出する4つの係合突起(係合部の一例)42,43,44,45とを有している。円筒部41には、保持部材40の正面側から磁気回路50が挿入され、固定されている。本実施の形態において、磁気回路50は内磁型のものである。磁気回路50は、ポットヨーク51と、磁石52と、ポールピース53とを有している。ポットヨーク51は、正面視で円形の椀形状を有する。磁石52は、円板状であり、ポットヨーク51の内側に配置される。ポールピース53は、円板状であり、磁石52の正面に配置される。ポールピース53とポットヨーク51の正面側端部との間には、正面視で円形の磁気ギャップが構成されている。磁気回路50は、ポットヨーク51が円筒部41にはめ込まれるようにして、保持部材40に固定されている。
【0039】
保持部材40は、係合突起42〜45が、それぞれ、バッフルボード10の突起部12〜15に接合されて、突起部12〜15により位置決めされている。図2に示されるように、係合突起42,43は、円筒部41を中心に、それぞれ、振動板30の長軸方向下側、上側に分かれて配置されている。また、係合突起44,45は、円筒部41を中心に、それぞれ、振動板30の短軸方向右側、左側に分かれて配置されている。すなわち、保持部材40は、背面視で、円筒部41を中心に、係合突起42〜45が上下左右に突出した十字形を有している。振動板30の短軸方向に対応する係合突起44,45は、振動板30の長軸方向に対応する係合突起42,43に対して、その長さが短くなるように形成されている。
【0040】
突起部12〜15は、図に示すように、孔部11aの端縁部近傍から背方に突出するように、背面に水平な断面がコ字形状を有するように形成されている。保持部材40の係合突起42〜45は、それぞれ、先端部が正面側に折れ曲がる爪形状を有している。各係合突起42〜45の爪形状部は、突起部12〜15のそれぞれに接着され、接合されている。これにより、保持部材40の位置は、厳密に位置決めされる。すなわち、磁気回路50は、スピーカ取付部11に対する位置が厳密に位置決めされた状態で保持部材40に保持される。
【0041】
ボイスコイルボビン60は、薄型の(高さが低い)円筒形状を有している。ボイスコイルボビン60は、振動板30の背面に接合されている。ボイスコイルボビン60は、磁気回路50の磁気ギャップに配置されるボイスコイル61を有している(例えば、図4を参照。)。ボイスコイル61には、2つの錦糸線62,63が接続されている。錦糸線62,63は、それぞれ、端子71,72に接続されている。
【0042】
端子71,72は、バッフルボード10の端子取付部27,28に固定されている。端子71,72は、バッフルボード10の背面側に向けて露出するようにして取り付けられている。
【0043】
図1に示されるように、ダンパー80は、スピーカシステム1の組立段階においては、1つの部材で構成されている。図2に示されるように、スピーカシステム1の組立てが完成した状態では、スピーカ部2には、2つのダンパー81,91が配置されている。すなわち、後述のように、ダンパー81,91は、スピーカシステム1の組立時において、1つの部材であるダンパー80が2つに分離されたものである。ダンパー91は、ダンパー81と同一の形状を有しているが、これに限られるものではない。
【0044】
ダンパー81,91は、上下に分かれて、それぞれ、スピーカ部2の周縁部に配置されている。ダンパー81,91は、振動板30の長軸上にその中央部が位置するように配置されている。すなわち、ダンパー81,91は、振動板30の中心を通り振動板30の外周縁と直交する直線上に配置されている。2つのダンパー81,91は、スピーカ取り付け部中心から略均等な角度で配置されている。2つのダンパー81,91は、振動板30の中央部を中心として、回転方向に180度の間隔を開けて、点対称に配置されている。
【0045】
ダンパー81は、2つの可動部82,83と、固定部84と、連結部85とを有している。同様に、ダンパー91は、2つの可動部92,93と、固定部94と、連結部95とを有している。
【0046】
ダンパー81,91は、固定部84,94において、それぞれダンパー取付部18に固定されている。可動部82,83,92,93は、それぞれ、固定部84,94から振動板30の中央部に向けて延びる帯形状を有している。可動部82,83,92,93は、前後方向すなわち振動板30に垂直な方向に可撓性を有している。可動部82,83,92,93は、それぞれ、長手方向が振動板30の長軸に平行になるように、背面視で(振動板30の振動面に対して略垂直な方向から見て)直線状に形成されている。可動部82と可動部83とは、振動板30の長軸を挟んで略対称な形状を有している。同様に、可動部92と可動部93とは、振動板30の長軸を挟んで略対称な形状を有している。
【0047】
可動部82,83のそれぞれの上端部すなわち振動板30の中央部側の部位には、連結部85が接続されている。連結部85は、両可動部82,83同士をその上端部側の部位で連結している。同様に、可動部92,93のそれぞれの下端部すなわち振動板30の中央部側の部位には、連結部95が接続されている。連結部95は、両可動部92,93同士をその下端部側の部位で連結している。連結部85,95は、それぞれ、その中央部が振動板30の外周縁と略相似な形状となるように湾曲した、背面視で弓形状となる形状を有している(例えば、後述の図8に示されている。)。
【0048】
ダンパー81は、連結部85を含む可動部82,83の先端部で、振動板30の背面に接着されている。同様に、ダンパー91は、連結部95を含む可動部92,93の先端部で、振動板30の背面に接着されている。ダンパー81,91は、振動板30及びそれに接続されたボイスコイルボビン60を支持している。振動板30は、可動部82,83,92,93が前後方向に可撓性を有していることで、可動部82,83,92,93及びエッジ35を変形させながら、前後方向に変位可能である。
【0049】
図3は、図2のA−A線断面図である。図4は、図3の部分拡大図である。
【0050】
図4においては、図3のうち一点鎖線で囲まれた部分が拡大して示されている。
【0051】
図3に示されるように、エッジ取付部21は、バッフルボード10の正面側(図3において上方)から背面側(図3において下方)に向けて一段窪む階段形状のような断面を有している。エッジ取付部21は、孔部11aの周囲に、正面視で環状に形成されている。
【0052】
図4に示されるように、エッジ35は、波形の断面を有している。エッジ35は、エッジロール部35aの外周を囲むように形成されたエッジ端部37を有している。エッジ端部37は、エッジロール部35aよりも厚く形成されている。エッジ端部37が設けられていることで、エッジ35がエッジ取付部21に取り付けられていない状態で、エッジ35の形状が全体として維持される。エッジ35は、エッジロール部35aの内周部側で振動板30に接着されている。エッジ35及び振動板30は、エッジ取付部21にエッジ端部37が接着されることで、バッフルボード10に取り付けられている。
【0053】
図4に示されるように、ダンパー81の固定部84は、その下端部(図4において右方の端部)が上方に突出する、L字形状の断面を有している。固定部84の突出部分は、溝状のダンパー取付部18にはまるように形成されている。ダンパー81は、固定部84がダンパー取付部18にはまることで、バッフルボード10に対して位置決めされている。固定部84は、ダンパー取付部18に接着されて固定されている。
【0054】
ダンパー81の可動部82は、振動板30の中央部に向けて、振動板30に略平行に、固定部84から延伸されている。可動部82は、その長手方向に沿う断面(図4に示される断面)が厚みが薄い波形を有する、帯状に形成されている。可動部82が波形に形成されていることにより、ダンパー81が前後方向(図4において上下方向)のいずれの方向にもたわみやすくなり、振動板30がスムーズに振動可能になっている。可動部82のうち振動板30の中央部側の先端部は、正面側に曲がり、振動板30の背面に接触するように形成されている。可動部83も可動部82と同一の断面形状を有している。ダンパー81のうち、可動部82,83の先端部とそれらの間に形成された連結部85との正面側の部位は、振動板30の背面に沿うように形成されている。
【0055】
図3に示されるように、ダンパー91もダンパー81と同様の構成を有している。ダンパー81の可動部82,83のうち、振動板30の中央部側の先端部には、突出部80bが形成されている。ダンパー91の可動部92,93のうち、振動板30の中央部側の先端部には、突出部90bが形成されている。突出部80b,90bは、振動板30に沿うように形成されている。ダンパー81,91は、突出部80b,90bにおいても振動板30に接着されている。
【0056】
スピーカシステム1は、信号線などが、スピーカ部2の背方から端子71,72に取り付けられて用いられる。端子71,72間に信号が流れると、ボイスコイル61が駆動され、磁気回路50に対してボイスコイルボビン60と振動板30とが変位する。すなわち、スピーカ部2は、信号線を通じて端子71,72間に電圧が印加されることで動作する。
【0057】
[スピーカシステム1の製造工程の説明]
【0058】
図5は、スピーカシステム1の製造工程を説明するフローチャートである。
【0059】
図5に示されるように、スピーカシステム1は、大まかに、磁気回路50及び保持部材40を除く各部材をバッフルボード10に取り付ける工程(S11〜S13)と、磁気回路50と保持部材40とを組み合わせる工程(S21〜S24)と、前2つの工程で構成された構造同士を組み合わせる工程(S31)とを経て、製造される。
【0060】
すなわち、ステップS11において、バッフルボード10のエッジ取付部21に、振動板30が取り付けられたエッジ35を取り付ける。また、端子取付部27,28に、端子71,72を取り付ける。これにより、構造S1が得られる。
【0061】
図6は、スピーカシステム1の製造工程を説明する第1の図である。
【0062】
図6に示されるように、構造S1では、孔部11aがエッジ35及び振動板30で覆われている。エッジ35は、予め振動板30に接着された状態で、振動板30とともに取り付けられる。振動板30はバッフルボード10の正面側から配置されており、バッフルボード10の正面側に露出する。振動板30の背面は、孔部11aを介してバッフルボード10の背面側に露出する。
【0063】
図5に示されるように、ステップS12において、構造S1すなわち振動板30が取り付けられたバッフルボード10に、ダンパー81,91を取り付ける。これにより、構造S2が得られる。
【0064】
ここで、本実施の形態において、ダンパー81,91は次のようにして取り付けられる。すなわち、まず、図1において示したダンパー80のように、ダンパー81,91が互いに架橋部80aを介して連結された状態のものが、バッフルボード10に固定される。そして、その後、架橋部80aが除去されることで、2つのダンパー81,91が、それぞれバッフルボード10に取り付けられたまま、互いに分離される。
【0065】
図7は、スピーカシステム1の製造工程を説明する第2の図である。
【0066】
図7に示されるように、ダンパー81,91は、バッフルボード10に取り付けられる前においては、架橋部80aを介して互いに接続された状態のもの(すなわちダンパー80)となっている。ダンパー80は、可動部82と可動部92との間、及び可動部83と可動部93との間が、それぞれ架橋部80aを介して互いに接続されている。
【0067】
架橋部80aは、図7において上下方向に、直線状に形成されたものが2つ配置されている。一方の架橋部80aは、可動部82の突出部80bと可動部92の突出部90bとの間を上下に接続する。もう1つの架橋部80aも、これと同様に、可動部83の突出部80bと可動部93の突出部90bとの間に形成されている。架橋部80aは、可動部82や可動部92の幅よりも細く形成されている。各架橋部80aは、例えば、突出部80b,90bにそれぞれ接続されている部位で、その長手方向に垂直な断面の断面積が小さくなるように形成されており、その部位で容易に切断可能である。
【0068】
ダンパー80は、構造S1にバッフルボード10の背面側から取り付けられる。ダンパー80は、ダンパー81となる部位の固定部84と、ダンパー91となる部位の固定部94とが、共にダンパー取付部18にはまるようにしてスピーカ取付部11に配置される。固定部84,94は、ダンパー取付部18に接着されて固定される。これにより、ダンパー80が、スピーカ取付部11に固定される。また、可動部82,83,92,93のそれぞれの先端部と、突出部80b,90bと、連結部85,95とは、振動板30の背面に接着されて固定される。
【0069】
図8は、スピーカシステム1の製造工程を説明する第3の図である。
【0070】
図7に示されるようにダンパー80の取り付けが行われた後、ダンパー80の2つの架橋部80aを、それぞれの突出部80b,90bとの接合部で切り離すことにより、ダンパー80から除去する。架橋部80aが除去されることで、図8に示されるように、ダンパー81とダンパー91とが互いに切り離される。各ダンパー81,91は、互いに位置決めされた状態で、バッフルボード10と振動板30とに固定された状態となる。これにより、構造S2が得られる。
【0071】
図5に示されるように、ステップS13において、構造S2に、予め巻回されたボイスコイル61が取り付けられているボイスコイルボビン60を取り付ける。また、錦糸線62,63の取り付けが行われる。これにより、構造S3が得られる。
【0072】
図9は、スピーカシステム1の製造工程を説明する第4の図である。
【0073】
図9に示されるように、ボイスコイルボビン60は、振動板30の背面中央部に位置決めされて配置される。ボイスコイルボビン60は、振動板30に接着され、固定される。ここで、ボイスコイル61には、リード線64を介して錦糸線62が、リード線65を介して錦糸線63が、それぞれ接続されている。リード線64,65は、ボイスコイル61として巻回された線の端部である。リード線64,65は、それぞれ、はんだなどにより錦糸線62,63に接続されている。ボイスコイルボビン60が振動板30に接着された後、リード線64,65は、それぞれ振動板30の背面に、接着材64a,65aなどを用いて固定される。
【0074】
リード線64,65と錦糸線62,63との接続部は、ダンパー81,91に形成されている中継部88,98にはめ込まれ、接着されて固定されている。中継部88は、端子71に近い側の可動部82の突出部80bに形成されている。また、中継部98は、端子72に近い側の可動部93の突出部90bに形成されている。中継部88,98は、例えば、その間にリード線64,65と錦糸線62,63との接続部を挟むことができるような断面U字のクリップ形状(半輪形状)を有している。
【0075】
錦糸線62,63は、中継部88,98に固定された部分から各端子71,72までの間に、振動板30の動きを妨げないようにして配されている。錦糸線62,63は、それぞれ、はんだなどを用いて、端子71,72に接続される。これにより、端子71,72を通じて、ボイスコイル61に通電可能になる。
【0076】
このようにしてバッフルボード10に部材が取り付けられて構造S3が構成される一方で、磁気回路50と保持部材40とが組み立てられる。
【0077】
すなわち、図5に示されるように、ステップS21において、ポールピース53と磁石52とを接着し、固定する。これにより、構造A1が得られる。
【0078】
ステップS22において、構造A1を、ポットヨーク51に接着し、固定する。これにより、構造A2が得られる。
【0079】
ステップS23において、構造A2について、着磁を行う。これにより、構造A3が得られる。構造A3は、磁気回路50である。
【0080】
ステップS24において、構造A3は、保持部材40に接合される。これにより、構造A4すなわち磁気回路50を保持した状態の保持部材40が得られる。なお、磁気回路50の着磁は、磁気回路50が保持部材40により保持された状態で行われてもよい。
【0081】
図10は、スピーカシステム1の製造工程を説明する第5の図である。
【0082】
図10において、保持部材40の長手方向に沿った平面における保持部材40の断面図が示されている。図10に示されるように、保持部材40の円筒部41は、その内径の寸法が互いに異なる2つの部分を有しており、円筒部41のうち正面側(図10において上方)の部位の方が、内径の寸法が大きくなっている。円筒部41には、内径が異なる部分において、正面側に面する段部41aが形成されている。ポットヨーク51は、円筒部41のうち内径の寸法が小さい部分に嵌入する外径を有しており、その正面側の部位には、フランジ部51aが形成されている。
【0083】
図11は、スピーカシステム1の製造工程を説明する第6の図である。
【0084】
図11に示されるように、磁気回路50が保持部材40より保持された状態で、ポットヨーク51は、保持部材40に対して円筒部41の径方向に位置決めされている。また、段部41aがポットヨーク51のフランジ部51aに接触することで、保持部材40に対して円筒部41の軸方向に位置決めされている。これにより、スピーカ部2において、磁気回路50の位置が位置決めされ、スピーカシステム1が正常に動作する。
【0085】
上記のように、構造S3と、構造A4とがそれぞれ構成されると、それらを用いて、スピーカシステム1が構成される。
【0086】
図5に示されるように、ステップS31において、構造S3に、構造A4が固定される。上記のようにして予め磁気回路50が取り付けられた保持部材40は、係合突起42〜45が、それぞれ、バッフルボード10の突起部12〜15に接合されて、バッフルボード10に固定される。上述のように、突起部12〜15に係合突起42〜45がそれぞれ位置決めされることで、磁気回路50の位置が位置決めされる。磁気回路50は、振動板30の中央部に位置するように、すなわちボイスコイル61に対応する位置に位置するように、バッフルボード10に固定される。
【0087】
以上のようにしてステップS31までの処理が終了すると、図2に示されるように、スピーカ部2がバッフルボード10に取り付けられた状態の構造が得られ、スピーカシステム1が完成する。
【0088】
このように、本実施の形態において、バッフルボード10に直接スピーカ部2を構成する各部材が取り付けられているので、バッフルボード10に別途単独で構成されたスピーカユニットを取り付ける場合と比較して、取り付けるためのねじの類や、スピーカユニットとバッフルボードとの間に挟むパッキン(シーラー)などを要しない。したがって、スピーカシステム1を構成する部品の点数を少なくすることができ、製造コストを低減することができる。
【0089】
エッジ取付部21、突起部12〜15、ダンパー取付部18、及び端子取付部27,28のそれぞれは、エッジ35のエッジロール部35aの外周部よりも外側に位置している。すなわち、振動板30と、ダンパー81,91と、磁気回路50とのそれぞれが独立してバッフルボード10に取り付けられている。スピーカシステム1のスピーカ部2は、これらを互いに組み付けるためのフレーム構造を有しないので、スピーカ部2の厚み方向の寸法を小さくし、薄型化できる。
【0090】
スピーカ部2を構成する部材のそれぞれをバッフルボード10に取り付けていくことで、スピーカ部2を構成するのと同時に、スピーカシステム1を構成できる。スピーカユニットをそれ自体単独で組み立ててから、スピーカユニットをバッフルボードなどに取り付けるようなものと比較して、スピーカシステム1を、少ない手順で、容易に、かつ、精度良く組み立てることができる。スピーカシステム1の製造コストを低減することができる。
【0091】
ダンパー81,91が互いに架橋部80aを介して連結された状態のものがバッフルボード10に固定された後、架橋部80aが除去されることで、2つのダンパー81,91が分離した状態となる。これにより、2つのダンパー81,91をそれぞれの所定位置に容易にかつ確実に位置決めされた状態で取り付けることができる。特に、2つのダンパー81,91の位置が互いにずれにくくなるため、振動板30などが、良好な精度で、振動可能になる。
【0092】
また、ダンパー81,91は、ボイスコイルボビン60に接合されてボイスコイルボビン60を支持するのではなく、振動板30を支持している。したがって、ダンパー81,91を小型化し、ボイスコイルボビン60を薄型化できるので、スピーカ部2を薄型化することができる。
【0093】
[変型例の説明]
【0094】
エッジ35及び振動板30は、バッフルボードの背面側から取り付けられていてもよい。
【0095】
図12は、本発明の一変型例に係るスピーカシステム101を示す分解斜視図である。
【0096】
図12に示されるように、スピーカシステム101は、上述の実施の形態と比較して、エッジ35が取り付けられるエッジ取付部121の位置が異なるバッフルボード110を有している点、及び、振動板30がバッフルボード110の背面側から取り付けられている点で相違する。その他の構成は、上述の実施の形態と同様であり、以下ではその説明を省略する。
【0097】
図13は、スピーカシステム101のスピーカ部102を示す断面図である。
【0098】
図13に示される断面は、上述の実施の形態における図3に対応するものである。図13に示されるように、スピーカシステム101において、エッジ取付部121は、バッフルボード110の背面側に面し、バッフルボード110の背面側から正面側に(図13において上方に)一段窪むような階段形状に形成されている。エッジ35は、バッフルボード110の背面側から、エッジ取付部121に取り付けられている。バッフルボード110の正面側には、孔部11aを介して、振動板30と、エッジ35のエッジロール部35aとが露出する。
【0099】
スピーカシステム101は、まず、エッジ35及び振動板30をバッフルボード110の背面側からバッフルボード110に取り付け、その後、ダンパー81,91及び保持部材40などを、バッフルボード110の背面側からバッフルボード110に取り付けることで、製造可能である。すなわち、本変型例においては、バッフルボード110の背面側から、スピーカ部102を構成する各部材をバッフルボード110に取り付けることができる。スピーカ部102をバッフルボード110に取り付けるための各工程において、バッフルボード110の背面側を望んですべての作業を行うことができるので、バッフルボード110を裏返したりする必要はなくなる。したがって、より少ない製造工数で、容易に、スピーカシステム101を製造することができ、製造コストを低減することができる。
【0100】
振動板は、上述のような楕円形のものに限られない。ダンパーの数は、2つに限られない。
【0101】
図14は、本実施の形態の他の変型例の一例に係るスピーカシステム201を説明する図である。
【0102】
図14に示されるように、スピーカシステム201は、上述の実施の形態と比較して、背面視で円形の振動板230及びエッジ235を有している点、及び、4つのダンパー81,91,281,291を有している点で、主に相違する。
【0103】
スピーカシステム201において、バッフルボード210は、孔部(図示せず)が円形に形成され、それに合わせてダンパー取付部18及びエッジ取付部(図示せず)も円形に沿って形成されたスピーカ取付部211を有している。
【0104】
4つのダンパー81,91,281,291のそれぞれは、上述のダンパー81と同型状を有している。ダンパー81,91,281,291は、スピーカ取り付け部中心から90度ずつ間隔を開けて、すなわちスピーカ取り付け部中心から略均等な角度で、エッジ235の外周部に沿って配置されている。ダンパー81,91は、それぞれ、スピーカ部202の下方、上方に配置されている。また、ダンパー281,291は、それぞれ、スピーカ部202の右側(図14において右側)、左側(図14において左側)に配置されている。
【0105】
各ダンパー81,91,281,291は、振動板230の中心を通る直線すなわち振動板230の直径の延長線上にそれらの中央が位置するように配置されている。ダンパー81,91が通る振動板230の直径の延長線と、ダンパー281,291が通る振動板230の直径の延長線とは、互いに直交している。ダンパー81は、振動板230の直径の延長線上にあり、ダンパー81に対して、振動板230の中央部に配置されたボイスコイル(図14において不図示)を挟んで反対側にダンパー91が配置される。また、ダンパー81を通過する直径に直交する直径の延長線上において、ボイスコイルを挟んだ左右にもダンパー281,291がそれぞれ配置される。
【0106】
各ダンパー81,91,281,291は、それを通る振動板230の直径の延長線に対して、背面視で略対称な形状を有するように形成されている。振動板230は、その下部、上部、右側部、左側部の4箇所で、それぞれダンパー81,91,281,291により支持されている。
【0107】
本変型例において、スピーカ取付部211の形状に応じて、突起部12〜15は、互いに振動板230の中央部から等距離だけ離れた位置、すなわち孔部211aの端縁部に配置されている。突起部12〜15は、それぞれ、ダンパー81,91,281,291に対応する位置に配置されている。
【0108】
磁気回路50を保持する保持部材240は、背面視で略十字形状を有し、各突起部12〜15の位置に合わせた形状を有している。すなわち、保持部材240は、突起部12,13,14,15にそれぞれ対応する係合突起242,243,244,245を有している。各係合突起242〜245は、互いに略同型状を有している。保持部材240は、突起部12〜15により係合突起242〜245が位置決めされた状態で、バッフルボード210に取り付けられる。
【0109】
なお、本変型例に係るスピーカシステム201の製造工程において、4つのダンパー81,91,281,291は、互いに架橋部(図示せず)を介して一体に連結された状態で、バッフルボード210に固定される。架橋部としては、例えば、ダンパー81とダンパー281とを連結するものと、ダンパー281とダンパー91とを連結するものと、ダンパー91とダンパー291とを連結するものと、ダンパー291とダンパー81とを連結するものとの4つが設けられていればよい。架橋部の構成はこれに限られない。
【0110】
このように、円形の振動板230を用いた場合であっても、上記と同様に、スピーカシステム201を薄型化できる。また、スピーカシステム201の部品点数を削減でき、組立てに必要な工数も削減できる。
【0111】
[その他]
【0112】
磁気回路保持部材やダンパーなどのバッフルボードのスピーカ取付部への取付構造は、上記のようなものに限られない。例えば、スピーカ取付部に溝部(第2の取付部の一例)が設けられており、その溝部に磁気回路保持部材に設けられた凸部がはめ込まれるようにして、磁気回路保持部材が位置決めされたうえでバッフルボードに取り付けられていてもよい。また、スピーカ取付部に突起部(第3の取付部の一例)が設けられており、その突起部に、ダンパーに設けられた凹部が係合するようにして、ダンパーが位置決めされた状態でバッフルボードに取り付けられていてもよい。
【0113】
バッフルボードとしては、上述の実施の形態のようなボックス型のスピーカシステムに用いられる平板状のものに限られない。バッフルボードは、例えば、車両の内装体であったり、建築物の壁面や天井面であったりしてもよい。
【0114】
バッフルボードは、例えば、その平板状部分に、別途形成されたスピーカ取付部が組み付けられて、スピーカ部を組付可能に構成されていてもよい。
【0115】
スピーカシステムは、密閉型のものであってもよいし、バッフルボードにバスレフダクトを設けたバスレフ型のものであってもよい。スピーカシステムは、ボックス型のものに限られない。スピーカシステムは、その他の形式のものであってもよい。また、同一のバッフルボードに2以上のスピーカ部が設けられているものであってもよい。
【0116】
複数のダンパーが、当初から互いに分離されており、それぞれ個別にバッフルボードに取り付けられるようにしてもよい。ダンパーの形状は上記のものに限られない。各ダンパーの可動部は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。連結部は設けられていなくてもよい。
【0117】
ダンパーの数や、磁気回路保持部材の係合突起及び突起部の数などは、上記に限られない。これらの数は、奇数であってもよい。
【0118】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
1,101,201 スピーカシステム
2,102,202 スピーカ部
10,110,210 バッフルボード
11 スピーカ取付部
11a,211a 孔部
12,13,14,15 突起部(第2の取付部の一例)
18 ダンパー取付部(第3の取付部の一例)
21,121 エッジ取付部(第1の取付部の一例)
27,28 端子取付部(第4の取付部の一例)
30,230 振動板
35,235 エッジ
35a エッジロール部
40,240 磁気回路保持部材
41 円筒部
42,43,44,45,242,243,244,245 係合突起(係合部の一例)
50 磁気回路
60 ボイスコイルボビン
61 ボイスコイル
62,63 錦糸線
71,72 端子
80,81,91,281,291 ダンパー
80a 架橋部
82,83,92,93 可動部
85,95 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の取付部、第2の取付部、及び第3の取付部が形成されたバッフルボードと、
前記バッフルボードの正面側に露出する振動板と、
前記振動板の外周に配置され、前記第1の取付部に固定されて前記振動板を支持するエッジと、
前記第2の取付部に固定され、磁気回路を前記振動板の背面側に位置するように保持する磁気回路保持部材と、
前記振動板の背面側に配置され、前記第3の取付部に固定されて前記振動板を支持するダンパーとを備える、スピーカシステム。
【請求項2】
前記第2の取付部及び前記第3の取付部のそれぞれは、前記エッジのエッジロール部よりも外側に位置している、請求項1に記載のスピーカシステム。
【請求項3】
前記磁気回路保持部材は、
前記磁気回路が内部に配置される円筒部と、
前記円筒部から前記円筒部の側方に突出する複数の係合部とを有し、
前記複数の係合部は、前記第2の取付部に接合されて前記第2の取付部に位置決めされている、請求項1又は2に記載のスピーカシステム。
【請求項4】
前記ダンパーは、2つ以上配置されており、互いにスピーカ取り付け部中心から略均等な角度で配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のスピーカシステム。
【請求項5】
前記ダンパーは、
前記第3の取付部に固定された固定部と、
それぞれ前記固定部から前記振動板の中央部に向けて延びる帯状に形成された2つの可動部とを備え、
前記2つの可動部のそれぞれは、前記振動板の中央部側の部位で前記振動板に接合されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のスピーカシステム。
【請求項6】
前記2つの可動部は、それぞれの前記振動板の中央部側の部位で互いに連結されており、前記2つの可動部を連結する部位が、前記振動板に接合されている、請求項5に記載のスピーカシステム。
【請求項7】
前記ダンパーは、前記振動板の中心を通り前記振動板の外周縁に直交する直線上に配置されており、
前記2つの可動部は、前記振動板の振動面に対して略垂直な方向から見て、前記直線を挟んで対称となるように形成されている、請求項5又は6に記載のスピーカシステム。
【請求項8】
前記第1の取付部は、前記バッフルボードの正面側に形成されており、
前記エッジは、前記バッフルボードの正面側から前記第1の取付部に取り付けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載のスピーカシステム。
【請求項9】
前記第1の取付部は、前記バッフルボードの背面側に形成されており、
前記エッジは、前記バッフルボードの背面側から前記第1の取付部に取り付けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載のスピーカシステム。
【請求項10】
前記バッフルボードの背面側には、錦糸線を介してボイスコイルに接続された端子が固定された第4の取付部が形成されており、
前記第4の取付部は、前記エッジのエッジロール部よりも外側に位置している、請求項1から9のいずれか1項に記載のスピーカシステム。
【請求項11】
エッジを介して振動板が取り付けられたバッフルボードの背面側に、前記振動板を支持する複数のダンパーと、磁気回路を保持する磁気回路保持部材とが取り付けられてなるスピーカシステムの製造方法であって、
前記振動板が取り付けられたバッフルボードに、前記複数のダンパーを、それぞれが互いに架橋部を介して連結された状態で固定する第1のステップと、
前記第1のステップの後、前記架橋部を除去することで前記複数のダンパーを互いに切り離す第2のステップとを備える、スピーカシステムの製造方法。
【請求項12】
前記第2のステップの後、予め前記磁気回路が取り付けられた前記磁気回路保持部材を、前記磁気回路が前記振動板の中央部に位置するように、前記バッフルボードに固定する第3のステップをさらに備える、請求項11に記載のスピーカシステムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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