説明

スピーカシステム

【課題】 口径の大きなスピーカユニットを用いても小型化が可能で、定位感や音場感が良好で、コストアップにならないマルチウエイのスピーカシステムを提供する。
【解決手段】 振動板(1a,2a)とこの振動板を振動自由に支持するフレーム(1c,2c)とを有する第1及び第2のスピーカユニット(1,2)と、前記第1及び第2のスピーカユニット(1,2)が固定されたキャビネット(3)と、を備え、第1及び第2のスピーカユニット(1,2)の各フレーム(1c,2c)がキャビネット(3)の共通のバッフルボード(4)に固定されており、第1及び第2のスピーカユニット(1,2)の、バッフルボード(4)に対するその厚さ方向の位置を規定する面を、互いに異なる面(4e,4c1)にすると共に、厚さ方向において、各フレーム(1c,2c)同士が一部重なるように配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカシステムに係り、特に、マルチウエイのスピーカシステムにおけるスピーカユニットの配置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスピーカユニットを用いた所謂マルチウエイスピーカシステムにおいて、各スピーカユニットを同一のバッフル面に配置する場合には、図4に示すように各ユニットが違いに干渉しないようdtだけ離隔して配置するのが最も一般的であり、この形態の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
一方、近年、パーソナルユース等のシステムコンポにおいては、小型であることが特に要望されており、この場合、限られた面積のバッフル面にできるだけ大口径の複数のスピーカユニットを配置しなければならない。
そこで、スピーカユニットのフレームのフランジを一部切り欠き、その切り欠き部に他のスピーカユニットのフレームのフランジを入れ込んで配置するようにしたスピーカシステムが知られている。この形態の一例を図5に示す。
図5は、そのスピーカシステム500の正面図であり、高音用スピーカシステム12のフレーム12cのフランジ12c1に切り欠き部12dを形成し、その切り欠き部に低音用スピーカシステム11のフランジ11c1を入れ込むように各スピーカユニット11,12が配置されている。
【特許文献1】特開昭63−158078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特に、小型のいわゆるブックシェルフ型のスピーカにおいては、複数のスピーカユニットの位置が同一バッフル面上で離れる程、音源が分散し定位感、音場感を向上させることが難しくなる。
また、搭載する低音用スピーカは、広い再生周波数特性を得るために、できるだけ口径の大きいものを使用するのが望ましいが、口径の大きなスピーカを用いて各スピーカユニットを離して配置すると、バッフル面の面積がその分大きくなりスピーカの小型化が難しくなるという問題が生じる。
【0005】
その点、図5に示したような形態は、音源が集中する方向であり、この点に関しては好ましい形態であるが、スピーカユニットのフレームの一部を切り欠くことにより、新たに専用のフレームの金型を起こさなければならず、また、一般的な切り欠きのない円形のフレームが流用できないので部品共用化の妨げとなり、スピーカのコストアップになるという問題があった。
【0006】
また、切り欠く形状も、スピーカシステム毎に各スピーカユニットの配置の最適形態が異なるため、それぞれの配置形態に応じた切り欠きを有するフレームを製作する必要がある。
従って、汎用性が失われてスピーカユニットの共用化の妨げになるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、口径の大きなスピーカユニットを用いても小型化が可能で、定位感や音場感が良好で、コストアップにならないマルチウエイのスピーカシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本願発明は次の〔1〕乃至〔3〕の手段を有する。
〔1〕 振動板(1a,2a)とこの振動板を振動自由に支持するフレーム(1c,2c)とを有する第1及び第2のスピーカユニット(1,2)と、前記第1及び第2のスピーカユニット(1,2)が固定されたキャビネット(3)と、を備えたスピーカシステムにおいて、
前記第1及び第2のスピーカユニット(1,2)の各前記フレーム(1c,2c)が前記キャビネット(3)の共通のバッフルボード(4)に固定されており、前記第1及び第2のスピーカユニット(1,2)の、前記バッフルボード(4)に対するその厚さ方向の位置を規定する面を、互いに異なる面(4e,4c1)にすると共に、前記厚さ方向において、前記各フレーム(1c,2c)同士が一部重なるように配置して成ることを特徴とするスピーカシステム(50)である。
〔2〕 前記第1のスピーカユニット(1)の再生帯域の下限が、前記第2のスピーカユニット(2)の再生帯域の下限よりも低域側にあり、前記第1のスピーカユニット(1)の前記フレーム(1c)を、前記第2のスピーカユニット(2)の前記フレーム(2c)よりも、前記キャビネット(4)に対して外側に位置するよう重ねて配置したことを特徴とする〔1〕記載のスピーカシステム(50)である。
〔3〕 前記第1及び第2のスピーカユニット(1,2)の前記バッフルボード(4)に対するその厚さ方向の位置を、互いに異なる面(4e,4c1)で規定して成ることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のスピーカシステム(50)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、口径の大きなスピーカユニットを用いても小型化が可能であり、各スピーカユニットが接近して配置されるので再生音の定位感や音場感が良好であり、スピーカユニットの汎用性が確保され、コストアップにならないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図3を用いて説明する。
図1は、本発明のスピーカシステムの実施例を示す正面図である。
図2は、本発明のスピーカシステムの実施例を説明する断面図である。
図3は、本発明のスピーカシステムの実施例におけるキャビネットの正面図である。
【0011】
実施例のスピーカシステム50は、低音用スピーカユニット1と中高音用スピーカユニット2とがキャビネット3のバッフルボード4に固定された2ウエイのスピーカシステムである。低音用スピーカユニット1の再生帯域は、中高音用スピーカユニット2の再生帯域よりも概ね低域側に寄っており、低音用スピーカユニット1の再生帯域の下限は中高音用スピーカユニット2の再生帯域の下限よりも低域側にある。
【0012】
低音用スピーカユニット1は、コーン状の振動板1aと、その周囲に接合されたエッジ1bと、このエッジ1bの外周部を支持するフレーム1cとを有してなる。
フレーム1cは、所定の外径D1aを有する環状のフランジ部1c1と、このフランジ部1c1に外径D1aより小なる外径D1bで連接し、そのフランジ部1c1からさらに小径となる方向の略円錐状に設けられた連結部1c2と、この連結部1c2のフランジ部1c1とは反対側に設けられた基部1c3とよりなる。
フランジ部1c1の内周面側には、上述したようにエッジ1bの外周部が固定され、基部1c3には、このスピーカユニット1を駆動するための磁束を発生させるマグネット1dが取り付けられている。
【0013】
中高音用スピーカユニット2は、ドーム状の振動板2aと、その周囲に接合されたエッジ2bと、このエッジ2bの外周部を支持するフレーム2cとを有してなる。
フレーム2cは、所定の外径D2aを有するフランジ部2c1と、このフランジ部2c1に外径D2aより小なる外径D2bで突出する突出部2c2とよりなる。この突出部2c2の内部には、このスピーカユニット2を駆動するための磁束を発生させるマグネット2dが収納されている。
従って、これらのスピーカユニット1,2において、各振動板1a,2aは各フレーム1c,2cに対して振動自由に支持されている。
【0014】
キャビネット3は、概ね直方体であり、その一面であるバッフルボード4には、各スピーカユニット1,2を取り付けるための孔や凹部が設けられている。
即ち、図3に示すように、低音用スピーカユニット1を取り付けるための孔4aと、中高音用スピーカユニット2を取り付けるための孔4b及び凹部4cである。
具体的には、孔4aの直径φ1は、低音用スピーカユニット1のフランジ部1c1の外径D1aより小さく、そのスピーカユニット1の連結部1c2がフランジ部1c1に連接する部位の外径D1bより大きい径に設定される。
【0015】
また、孔4bの直径φ2は、中高音用スピーカユニット2のフランジ部2c1の外径D2aより小さく、突出部2c2の外径D2bより大きい径で設定される。
また、凹部4cの直径φ3は、中高音用スピーカユニット2のフランジ部2c1の外径D2aよりわずかに大きく設定され、凹部4cの深さdp2は、フランジ部2c1の厚さと同じか僅かに大きく(深く)なるように設定される。
【0016】
孔4aの周囲には、低音用スピーカユニット1のフランジ部1c1をねじで固定するためのねじ孔4d1が4箇所設けられている。フランジ部1c1には、このねじ孔4d1と対応する位置に貫通孔(図示せず)が設けられている。
また、孔4bの周囲の凹部4cには、中高音用スピーカユニット2のフランジ部2c1をねじで固定するためのねじ孔4d2が4箇所設けられている。フランジ部2c1には、このねじ孔4d2と対応する位置に貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0017】
ここで、2つの孔4a,4bの中心の間隔、換言すれば、各スピーカユニット1,2の中心の間隔であるL1は、各スピーカユニット1,2のフランジ部1c1,2c1の外径D1a,D2a及び低音用スピーカユニット1の連接部1c2の最大外径D1bに対して、
(D1b+D2a)/2 < L1 < (D1a+D2a)/2 (式1)
を満たすように設定している。
【0018】
このようなバッフルボード4に各スピーカユニット1,2を取り付ける際には、まず、中高音用スピーカユニット2を、バッフルボード4の前方から(図2の矢印方向)取り付ける。
具体的には、突出部2c2を孔4bに挿入し、フランジ部2c1を凹部4cに収納し、凹部4cの底面4c1に当接したら、ねじ5(図1参照)をねじ孔4d2にねじ込んでフランジ部2c1をバッフルボード4に固定する。
【0019】
次に、低音用スピーカユニット1を、バッフルボード4の前方から取り付ける。
具体的には、基部1c3側から孔4aに挿入し、フランジ部1c1がバッフルボード4の表面4eに当接したら、ねじ5(図1参照)をねじ孔4d1にねじ込んでフランジ部1c1をバッフルボード4に固定する。
【0020】
このように各スピーカユニット1,2を固定すると、各スピーカユニット1,2の中心間隔L1が上述した式1のように規定されているので、低音用スピーカユニット1のフランジ部1c1が中高音用スピーカユニット2のフランジ部2c1の一部に、バッフルボードの厚さ方向において重なる形態となる。
【0021】
従って、この実施例によれば、スピーカユニットの間隔L1をより小さくして配置できるので、ある所定面積のバッフルボードに対してより口径の大きなスピーカユニットを用いることができる。
また、ある所定口径のスピーカユニットを用いた場合には、バッフルボードの面積がより狭くて済むのでスピーカユニットを小型にすることができる。
また、搭載する複数のスピーカユニット同士の間隔がより接近するので、音源が集中し、音の定位感や音場感が良好になる。
また、スピーカユニットのフレームを切り欠く必要がないので、専用の金型が不要であり、部品の種類が増加することがなく、スピーカユニットの共用化が可能となり、コストアップにならないというメリットがある。
【0022】
上述した実施例は、低音用スピーカユニット1のフランジ1c1が中高音用スピーカユニットフランジ2c1の前方、すなわち、キャビネット3に対して外側に位置するように重ねる形態としたものであるが、変形例として、これとは逆に、中高音用スピーカユニット2のフランジ部2c1が前方に位置するように重ねる形態としてもよい。
この場合は、バッフルボード4の前面側に低音用スピーカユニット1のフランジ部1c1を収める凹部を設け、そこに低音用スピーカユニット1のフランジ部1c1を収めると共に、中高音用スピーカユニット2のフランジ4をバッフルボード4の前面に当接させる構成とすればよい。
【0023】
以上詳述した実施例の構成は、換言するならば、各スピーカユニット1,2のフランジ部1c1,2c1のバッフルボード4に対するその厚さ方向の固定基準位置(面)を、異なる位置(面)とし、その厚さ方向にフランジ部1c1,2c1が重なるように配置すればよいものである。
実施例において異なる位置(面)とは、バッフルボード4の前面(表面)4eと凹部4cの底面4c1とである。
【0024】
ところで、マルチウエイスピーカシステムにおいては、各スピーカの奥行き方向の音源位置を合わせるようにすると、位相が合致して良好な音場が形成できることが知られている。
すなわち、一般的に、低音用スピーカユニットの方が、振動板にボイスコイルを介して力が付与される位置(ここではこれを奥行き方向の音源位置と称している)が奥側(フランジから遠い側)にあるので、低音用スピーカユニットのフランジを、より前方に位置させた方が音場形成上良好である。
本実施例で示した各スピーカユニット1,2についても同様であり、実施例によれば、各スピーカユニット1,2の奥行き方向の音源位置が凹部4cの深さdp2の分だけ接近するので、実施例のように低音用スピーカユニットのフランジ部を前方側(キャビネットに対して外側)にして重ねる方が好ましい。
【0025】
また、実施例のスピーカシステムは2ウエイのシステムであるが、2ウエイに限るものではなく、3ウエイやそれ以上のマルチスピーカシステムにも同様に適用できる。その場合、各スピーカユニットの中心位置を、キャビネットの正面から見て一軸上に配列しなくてもよいことは言うまでもない。
【0026】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において別の変形例としてもよいのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のスピーカシステムの実施例を示す正面図である。
【図2】本発明のスピーカシステムの実施例を説明する断面図である。
【図3】本発明のスピーカシステムの実施例におけるキャビネットの正面図である。
【図4】従来のスピーカシステムを示す正面図である。
【図5】従来の他のスピーカシステムを示す正面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 低音用スピーカユニット
1a 振動板
1b エッジ
1c フレーム
1c1 フランジ部
1c2 連結部
1c3 基部
1d マグネット
2 中高音用スピーカユニット
2a 振動板
2b エッジ
2c フレーム
2c1 フランジ部
2c2 突出部
2d マグネット
3 キャビネット
4 バッフルボード
4a,4b 孔
4c 凹部
4c1 底面
4d1,4d2 ねじ孔
4e 表面
3 キャビネット
4 バッフルボード
5 ねじ
50 スピーカシステム
L1 間隔
D1a,D1b,D2a,D2b 外径
φ1〜φ3 直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板とこの振動板を振動自由に支持するフレームとを有する第1及び第2のスピーカユニットと、
前記第1及び第2のスピーカユニットが固定されたキャビネットと、を備えたスピーカシステムにおいて、
前記第1及び第2のスピーカユニットの各前記フレームが前記キャビネットの共通のバッフルボードに固定されており、
前記第1及び第2のスピーカユニットを、前記バッフルボードの厚さ方向において前記各フレーム同士が一部重なるように配置して成ることを特徴とするスピーカシステム。
【請求項2】
前記第1のスピーカユニットの再生帯域の下限が、前記第2のスピーカユニットの再生帯域の下限よりも低域側にあり、前記第1のスピーカユニットの前記フレームを、前記第2のスピーカユニットの前記フレームよりも、前記キャビネットに対して外側に位置するよう重ねて配置したことを特徴とする請求項1記載のスピーカシステム。
【請求項3】
前記第1及び第2のスピーカユニットの前記バッフルボードに対するその厚さ方向の位置を、互いに異なる面で規定して成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピーカシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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