説明

スピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するインイヤ型イヤホンおよびイヤプラグ型イヤホン

【課題】スピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホンを提供し、構造においてイヤホンボディの音場特性を変化させる。
【解決手段】スピーカーユニットと、ハウジングと、可動要素とを含むスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホンを提供する。スピーカーユニットが、ハウジング内に配置され、ハウジングが、スピーカーユニットの前面に形成されるイヤプラグ構造を含むものである。イヤプラグ構造内の室が、容積を有し、可動要素が、ハウジングに配置されるとともに、室と対応するように移動し、室の容積を調節する。従って、スピーカーユニットにより出力される音響の周波数応答が、室の容積の変化に応じて変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホンに関し、特に、スピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の急速な進歩に伴い、電子製品は、次第に軽く、薄く、そして小さくなり、人々は、ラジオまたはウォークマン(登録商標、以下同じ)のような小型化した電子製品をいつでもどこでも使用することができる。また、一般のMP3ウォークマン、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(personal digital assistants=PDAs)またはノートブックパソコンのような個人用デジタル製品は、ますます一般的なものとなり、日常生活で不可欠なものとなっている。更に、ラジオおよびMP3の両方の機能を統合した携帯電話が、出現している。
【0003】
電子製品の種類を問わず、イヤホンは、電子製品にとって必須な備品となっており、従って、ユーザーは、他人を妨害することなく電子製品により提供される音響情報を聴くことができる。更に、イヤホンは、リスナーにとって好適な音響伝達を提供するから、リスナーは、より明確に音響の内容を聞いて理解することができ、音響がコンピューターのスピーカーから伝達される時に不鮮明であるという状況とは、異なっている。特に、ユーザーが移動している時、例えば、エクササイズ、運転、激しい活動を行っている時、または雑音のある環境において、イヤホンが使用されることにより、音響伝達が影響を受けることがない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、耳および耳道の大きさと構造は、人により異なるものであり、異なる人が、音楽に対して異なる好みを有するから、イヤホンの音質に対する判断は、人により様々であり、各個人の要求に合わせることは困難である。一方で、市場において利用可能である大部分のイヤホンの周波数応答曲線は、固定されており、信号の高音部分または低音部分への周波数応答が変更される場合、電子等化器(electronic equalizer)または関連するソフトウェアにより音場の分布特性を変化させることを必要とする。たとえ追加された電子等化器がイヤホンの周波数応答を変化させても、電子等化器内のインダクタンスまたはキャパシタンスにより時間遅延が引き起こされる。従って、イヤホンの構造を改善することは、避けられない課題である。
【0005】
本発明の目的は、スピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホンを提供し、構造においてイヤホンボディの音場特性を変化させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホンを提供し、それが、スピーカーユニットと、ハウジングと、可動要素とを含むものである。スピーカーユニットが、スピーカーユニットの前面に形成されるイヤプラグ構造を有するハウジング内に配置される。イヤプラグ構造が、室を有し、室が容積を有する。可動要素が、イヤプラグ構造上に配置されるとともに、室に対応するように移動し、室の容積を調節する。
【0007】
本発明の実施形態において、可動要素が、室内に配置されるとともに、イヤプラグ構造を外部へ延伸するのに適する内部スリーブを含むものである。更に、ハウジングが、ロック部を有し、対応するように内部スリーブの外部表面にロックすることに用いる。
【0008】
本発明の実施形態において、イヤホンが、更に、イヤプラグ構造および内部スリーブをカバーするためのイヤクッションを含むものである。また、内部スリーブが、対応するようにイヤクッションから露出される少なくとも1つの出音孔を有する。
【0009】
本発明の実施形態において、可動要素が、イヤプラグ構造を外部へ延伸する外部スリーブを含むものである。更に、ハウジングが、対応するようにロック部を有し、外部スリーブの内部表面にロックすることに用いる。
【0010】
本発明の実施形態において、イヤホンが、更に、イヤクッションを含むものであり、イヤプラグ構造および外部スリーブをカバーする。また、外部スリーブが、対応するようにイヤクッションから露出される少なくとも1つの出音孔を有する。
【0011】
本発明は、室の容積を調節するための可動構造を採用し、可動構造が、可動内部スリーブまたは外部スリーブを介して室に相対して移動し、室の容積を変化させる。従って、各個人が、異なる音楽に対してイヤホンボディの周波数応答を調節することができ、イヤホンが異なる顧客の必要性を満たすことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に基づくスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホンは、スピーカーユニットと、ハウジングと、可動要素とを含むものであり、そのうち、可動要素が、ハウジングの内部または外部に配置され、前室についてスピーカーユニットとハウジングとの間を移動して、前室の容積を調節し、もはやただ1つに固定された容積を有するだけのものではない。前室中のスピーカーユニットからの音響の音場特性が、異なる前室の容積によって変化するから、本発明は、イヤホンボディの構造において、スピーカーとハウジングとの間に前室の容積を調節する可動構造を使用することにより、イヤホンの音場特性を変化させる。従って、各個人が、異なる音楽に対してイヤホンボディの周波数応答を調節することができ、イヤホンが、異なる顧客の必要性を満たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態にかかるスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホンを示す断面図である。スピーカーユニット110が、イヤホンハウジング(housing)120内に配置されるとともに、伝送線112を介して外部ホスト(例えば、MP3プレーヤー、携帯電話、ウォークマンまたはコンピューター)に電気接続されて、スピーカーユニット110が、人の耳にとって好ましい音響情報(sound information)を出力することができる。スピーカーユニット110の内部構造は、図1に示していない。スピーカーユニット110の外形寸法(profile size)が、イヤホンハウジング120の内部の室の容積と実質的に一致し、スピーカーユニット110が、人の耳の外耳道に挿入されることができ(図示せず)、従って、このタイプのイヤホン100が、通常、マイクロイヤホンまたはインイヤ型イヤホンとして呼ばれるものである。しかしながら、スピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン100は、様々なタイプのイヤホンに広く応用されることができるものであり、図1に示すようなマイクロイヤホンまたはインイヤ型イヤホンに限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、イヤホンハウジング120が、スピーカーユニット110の前面にイヤプラグ構造120aを形成し、イヤプラグ構造120a内に室(chamber)122を形成して、共鳴効果(resonance effect)を発生することに用い、スピーカーユニット110により出力される音声の音場特性が、前室122により異なるものとなる。例えば、高音部分または低音部分の周波数応答が、周波数応答の曲線において高音部分または低音部分のいずれかが際立つように変化されるものである。通常、イヤホンの音場特性を設計する時、前室122の実際の容積も、高音部分または低音部分の周波数応答に対する前室122の容積の影響を解析するために考慮に入れられる。
【0015】
図2は、イヤホンの音場特性における前室の容積変化を示す周波数応答曲線グラフである。異なる周波数応答曲線が、異なる符号により表される。可聴周波数の範囲内は、人の耳により聴くことができるものであり(20Hz−20KHz)、人工耳試験(artificial ear test)の結果から分かるように、前室の容積の増加につれて(23mmから90mm)、高周波数部分の周波数応答が変化する。従って、異なる容積を有する前室に対する応答周波数曲線は、異なるものである。前室122が、ただ固定される容積を有するだけで、容積が望まれる調節ができない場合、前室122の機能が制限されるので、性能がそれ以上改善されない。
【0016】
従って、本発明のイヤホン100は、スピーカーとハウジングとの間の前室の容積を調節するために可動構造(movable structure)を採用し、可動要素130が、前室122に相対して移動し、前記の問題を克服する。図1に示すように、可動要素130が、イヤプラグ構造の前室122内に配置されるとともに、イヤプラグ構造120aを外部へ可動的に延伸して、それにより、前室122の容積を増加させる。可動要素130が、例えば、なめらかな表面を有するスリーブであり、イヤプラグ構造120aの側壁にしっかりと接触させる。外力の下、可動要素130が、外力が働く方向に沿って自由に伸縮する。図3および図4は、それぞれ本発明の別な2つの実施形態にかかる可動要素を示す概略図である。
【0017】
図3に示すように、可動要素140が、前室122内に配置される内部スリーブ142を含むものであり、前室122の容積を調節することに用いられる。また、内部スリーブ142の外部表面が、更に、第1ロック部(first locking part)144を有し(例えば、螺山(ねじやま)部(threaded part))、イヤホンのハウジング120の内壁が、対応するように第2ロック部124(例えば、螺山部)を有する。2つのロック部が、相互にロックされ、内部スリーブ142が前室122についてねじり出されるとともに、軸方向に沿ってハウジング120の外部へ延伸し、それにより前室122の容積を増加させる。内部スリーブ142が前室122内にねじ込まれる時、前室122の容積が減少する。
【0018】
また、イヤクッション160が、ハウジング120のイヤプラグ構造120a上に配置され、イヤプラグ構造120aおよび内部スリーブ142を環状にカバーするものであり、外耳道に挿入されることができ、外部の雑音が耳に入ることを防止する。イヤクッション160の材質が、軟質ゴムであり、ユーザーが、長時間使用の後、不快に感じることがない。更に、内部スリーブ142が、前室122の容積を調節するために使われる以外に、1つまたはそれ以上の出音孔(phonating holes)146が、イヤクッション160の開口162から露出するように配置されるものであり、スピーカーユニット110の音響を出音孔146から耳の内部に到達させる。
【0019】
次に、図4を参照すると、可動要素150が、イヤホンハウジング120の外部に配置される外部スリーブ152を含むものであり、前室122の容積を調節することに用いられる。また、外部スリーブ152の内部表面が、更に第1ロック部154(例えば、螺山部)を有し、イヤホンハウジング120の外壁が、対応するように第2ロック部124(例えば、螺山部)を有する。2つのロック部が、相互にロックされ、外部スリーブ152が、前室122について外部へねじり出されるとともに、軸方向に沿ってハウジング120の外部へ延伸し、それにより前室122の容積を増加する。外部スリーブ152が、前室122にねじ込まれる時、前室122の容積が減少する。
【0020】
同様に、イヤクッション160が、更に、ハウジング120のイヤプラグ構造120a上に配置され、イヤプラグ構造120aおよび外部スリーブ152を環状にカバーするものであり、外耳道に挿入されることができ、外部の雑音が耳に入ることを防止する。イヤクッション160の材質が、軟質ゴムであり、ユーザーが、長時間使用の後、不快を感じることがない。また、外部スリーブ152が、前室122の容積を調節するために使用される以外に、1つまたはそれ以上の出音孔156が、イヤクッション160の開口162から露出するように配置されるものであり、スピーカーユニット110の音響を出音孔156から耳の内部に到達させる。
【0021】
以上のごとく、この発明を最良の実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態にかかる調節可能なスピーカー前室の容積を有するイヤホンを示す断面図である。
【図2】イヤホンの音場特性における前室の容積変化を示す周波数応答曲線グラフである。
【図3】それぞれ本発明の別な2実施形態にかかる可動要素を示す概略図である。
【図4】それぞれ本発明の別な2実施形態にかかる可動要素を示す概略図である。
【符号の説明】
【0023】
100 イヤホン
110 スピーカーユニット
112 伝送線
120 イヤホンハウジング
120a イヤプラグ構造
122 室
124 第2ロック部
130 可動要素(スリーブ)
140 可動要素
142 内部スリーブ
144 第1ロック部
146 出音孔
150 可動要素
152 外部スリーブ
154 第1ロック部
156 出音孔
160 イヤクッション
162 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホンであり、
スピーカーユニットと、
ハウジングであり、前記スピーカーユニットをカバーし、前記スピーカーユニットの前面に形成されるイヤプラグ構造を有し、そのうち、前記イヤプラグ構造が、室を有し、前記室が容積を有するものであるハウジングと、
可動要素であり、前記イヤプラグ構造上に配置されるとともに、前記室と対応するように移動し、前記室の前記容積を調節する可動要素と、
を含むものであるスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン。
【請求項2】
前記可動要素が、前記室内に配置されるとともに、前記イヤプラグ構造を外部へ延伸することに適する内部スリーブを含むものである請求項1記載のスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン。
【請求項3】
前記イヤプラグ構造が、対応するようにロック部を有し、前記内部スリーブの外部表面にロックすることに用いる請求項2記載のスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン。
【請求項4】
更に、イヤクッションを含むものであり、前記イヤプラグ構造と前記内部スリーブとをカバーすることに用いる請求項2記載のスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン。
【請求項5】
前記内部スリーブが、対応するように前記イヤクッションから露出される少なくとも1つの出音孔を有するものである請求項4記載のスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン。
【請求項6】
前記可動要素が、前記イヤプラグ構造の外部に配置される外部スリーブを含むものである請求項1記載のスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン。
【請求項7】
前記ハウジングが、対応するようにロック部を有して、前記外部スリーブの内部表面にロックすることに用いる請求項6記載のスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン。
【請求項8】
更に、イヤクッションを含むものであり、前記イヤプラグ構造と前記内部スリーブとをカバーすることに用いる請求項6記載のスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン。
【請求項9】
前記外部スリーブが、対応するように前記イヤクッションから露出される少なくとも1つの出音孔を有するものである請求項8記載のスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン。
【請求項10】
前記スピーカーユニットの寸法が、耳に挿入されることに適するものである請求項1記載のスピーカーとハウジングとの間に前室の調節可能な容積を有するイヤホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−11488(P2008−11488A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−274654(P2006−274654)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(503116213)固昌通訊股▲ふん▼有限公司 (19)
【Fターム(参考)】