説明

スピーカーシステム用高性能卵型エンクロージャー

【課題】回折効果の少ない卵型は、殻としては非常に高い剛性を発揮するが、スピーカーから発する内部の音圧の激しい変化により、各種の振動モードで殻に変形が発生し再生音に特定の色付けをして高忠実度再生を阻害する。スピーカーユニットの後ろ面から放射された音波は、内部空間で反射を繰り返して濁った音となる。吸音材に頼ったエンクロージャーでは、再生音の過渡特性の悪化を招き歯切れの良くない再生音となる。
【解決手段】卵型のスピーカーシステムは、低域の周波数応答特性が素直なエンクロージャー形状である。外殻の厚みを連続的に変化させ、共振周波数を分散することが出来る。凸凹面を連続的に成型し、吸音材に頼ることなく内部の不要振動を速やかに制動し吸収することが出来る。ホーン開口径とホーン長が連続して変化する形状となり、音楽再生上で重要な特性である音の定位を改善して良好な状態で広帯域を忠実に再生できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカーシステムに用いられるエンクロージャーの形状とその構成要素の組み合わせに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から回折効果の少ない形状のスピーカーシステム用エンクロージャーの形状は研究されているが、如何に共振の少ない高剛性のエンクロージャーを実用的に構成し高音用と低音用の再生音を理想的に融合させる位置関係が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−307986号公報
【特許文献2】特開2005−252782号公報
【特許文献3】特開2006−229900号公報
【特許文献4】特開2006−262429号公報
【特許文献5】実開平5−55685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
卵型の外形で回折効果による低域周波数再生領域での周波数の乱れを抑え、一体型でかつ外殻の厚みが異なる形状として、エンクロージャー自体の共振周波数を分散させる。内部では襞が螺旋となる卵型の空間を有して、定在波の発生を抑制しかつ吸音材に頼らないで内部に発生した音波を速やかに減衰吸収させる形状を持つ。また音を放射する場所ごとに音道長の異なる高音用スピーカーの前面ホーンを、低音用スピーカーの直前に配置し、高低音があたかも一つのスピーカーから放射されるような効果で、音の定位の安定性を図る。これらの特徴を持ったスピーカー用エンクロージャーの構成要素が本発明の概要である。
【0005】
回折効果の少ない卵型形状のスピーカーエンクロージャーを一体で構成した場合であっても、エンクロージャー自体に発生する強い共振点が原因となって再生音に濁りが加わる。
【0006】
定在波の発生が少ない卵型形状の内部空間を持っていても、吸音材に頼ったスピーカーエンクロージャーでは過渡特性の悪化を招き、歯切れの良くない再生音となる。
【0007】
回折効果の少ない卵型形状のスピーカーエンクロージャーで、広帯域を均一に再生する為に高音用と低音用の2つのスピーカーユニットを用いる場合に、各ユニットからの再生音を均一に合成することが困難で、音の定位が悪化する。
【0008】
本発明では、これらの課題を解決して高忠実度の再生が出来るスピーカーエンクロージャーの形状や構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する為に、本発明では、スピーカーシステム用エンクロージャーとして一つの理想的な形状である卵型で、かつその外殻の厚みを連続して変化させ、内部には連続した渦巻状の凹凸で吸音特性を向上させる構造と形状を持つエンクロージャーとし、開口径と音道長が連続的に変化する高音用ホーンを低音用スピーカーの直前に配置する構造とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構造を持つエンクロージャーを用いたスピーカーシステムは、特有の共振音を放射せず、過渡特性の良い歯切れのよい音で、ステレオ再生時には定位の良い音場を再現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】エンクロージャー構成 正面図、側面図及び上面図
【図2】エンクロージャー構成 側面図
【図3】エンクロージャー本体 縦断面図
【図4】エンクロージャー本体 横断面図
【図5】エンクロージャー内面 襞
【図6】高音及び低音スピーカーユニット バッフル
【図7】高音用前面 ホーン断面
【発明を実施するための形態】
【0012】
回折効果の少ない卵型形状のスピーカーエンクロージャーを一体で構成した場合、一体として卵型を形成させれば、殻としては非常に高い剛性を発揮できる。しかしながら、実際にはスピーカーユニット取り付け穴やバスレフ型の場合はポートの取り付け穴が開くので、結果的に剛性が純粋な卵型の形状に対して低下し、スピーカーから発する内部の音圧の激しい変化により、卵型の殻には各種の振動モードで殻が波打つような変形が発生する。この変形振動は殻の厚みと周辺の長さによって各種の共振現象を発生する。この変形現象が特定の周波数で鋭い共振現象を引き起こして、いわゆる箱鳴りとして、再生音に特定の色付けをして高忠実度再生を阻害する。
卵型の外形に合わせて内部空間も卵型を形成すれば、内壁間の距離が全ての対角部分で異なり、定在波の発生が少ない空間となる特徴を有する。ただし、スピーカーユニットの後ろ面から放射された音波は、内部空間で反射を繰り返して濁った音となる。この濁った音がスピーカーユニットの振動板を透過して前面に放射される。また、バスレフ型の場合はポートを通って、濁った内部の音が外部に放射される。この内部反射音を吸収して減衰させる目的で、大量の吸音材が張り付けられる。吸音材に頼って内部の音に対処したスピーカーエンクロージャーでは、再生音の過渡特性の悪化を招き歯切れの良くない再生音となる。
回折効果の少ない卵型形状のスピーカーエンクロージャーを採用した場合、卵型外形に沿って低音用と高音用のスピーカーユニットを取り付けると、各スピーカーの意ニットの音を出す方向(音軸方向)は拡散する方向となる。音軸方向を前面の同一方向に両スピーカーを揃えた場合は、両方のスピーカーの音軸の間隔が離れて、低音と高音が分離された位置から聞こえ、音像の定位が悪化する。
上記の課題を解決するために下記の発明を適用する。
無垢のバーチ合板による卵型に製作されたエンクロージャーの固有共振周波数を分散させる為に、エンクロージャー外殻の厚みを連続的に変化させる構造をエンクロージャーに採用する。
また、エンクロージャー内面に吸音効果が高く、且つ音の乱反射を起こす為の螺旋状の凹凸を付加する構造を形成する。
スピーカー前面に取り付けられた音道の長さを、音の通過する道筋ごとに連続的に変化させ、音筋ごとにカットオフ周波数が連続変化するホーン形状をエンクロージャーに組み込み、低音用と高音用ユニットの発音位置(ボイスコイル中心点)を揃えて同一垂直平面上に置き、高音用スピーカー前面に取り付けられた音道を、低音用ユニットに向かって長くして、高音用スピーカーからの放射音と低音用スピーカーの放射音が連続的に混合される、高音用ホーン開口部と低音用ユニット配置の相互位置関連性を有するエンクロージャーの形態を持たせる。
【実施例】
【0013】
実施例としては添付の図1から図7に下記のごとく例示する。
図1に卵型の形状をしたスピーカーシステムの代表的な外形として、正面図と上面からみた上面図を示す。スピーカーから放射された音波の回折効果が少なく、低域の周波数応答特性が素直なエンクロージャー形状として知られている
図2に示す2はスピーカーユニット前面に装着するバッフル部分である。3は高音用スピーカー取り付け部、4は低音用スピーカー取り付け部であるが、何れのスピーカーも1の本体に取り付けることなく、2に取り付けても、本発明の効果は全く同一である。この形状のスピーカーシステム用エンクロージャーに残る上記の課題を解決する手段である本名発明詳細を下記する。
1.エンクロージャーに発生する特定の共振周波数を分散させて、振動特性を改良する為に、本発明では、図3の5に示す本体部分の外殻の厚みを、連続的に変化させる。図3及び図4で本体1で示す外殻5部分の共振周波数は外殻の厚みによって左右されるが、本発明の如く、外殻の厚みを連続的に変化させて薄い部分と厚い部分を形成することにより、外殻表面に生じる変形が不統一な形になり結果的に共振周波数を分散することが出来る。
2.図2の2に示す本体部分の内部空間の壁面を、本名発明により図5の断面に示すようなでこぼこ面を連続的に成型することにより、内部の音波がその都度違う方向に拡散と反射を繰り返し、内部壁面に衝突吸収する作用が増強され、吸音材に頼ることなく、内部の不要振動を速やかに制動し吸収することが出来る。
3.図2の3部に取り付けられた高音用スピーカーからの音は、4に取り付けられた低音用スピーカーからの音と融合して全体として広帯域の音声を忠実に再生することを目的とする。本発明の高音用前面ホーン形状を図7に示すように形成することで、図6に示す如く高音用のスピーカーの音軸3と低音用音軸4を出来る限り図6の6の部位で素直な状態で融合させることが出来る。図7の高音用ホーンの音道長さは7と8部分で異なり、ホーン開口径とホーン長が連続して変化する形状となり、最も開口径が大きく音道の長く高音スピーカーから低域再生周波数が最も低くなる8部分を、低音用スピーカーから出る音と理想的な位置である図6の6部分で混合できる。このような本発明の効果として、高音用と低音用のスピーカーから放射される音があたかも一転から放射される状態となり、音楽再生上で重要な特性である音の定位を改善して良好な状態で広帯域を忠実に再生できる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明を採用したスピーカーシステムは、広帯域を忠実に再生できる能力を持ち、オーディオシステムやシアターシステム、スタジオモニターシステムや拡声装置などに適応できる。
【符号の説明】
【0015】
1 エンクロージャー本体
2 スピーカーユニット用バッフル
3 高音用スピーカーユニット取り付け部
4 低音用スピーカーユニット取り付け部
5 エンクロージャー外殻
6 高低音融合位置
7 高音用ホーン上部拡散音道ルート
8 高音用ホーン下部低音融合音道ルート




























【特許請求の範囲】
【請求項1】
無垢の天然木および合板で卵型に製作されたエンクロージャーの固有共振周波数を分散させる為に、エンクロージャー外殻の厚みを連続的に変化させる構造を有するエンクロージャー。
【請求項2】
請求項1においてエンクロージャー内面に吸音効果が高く、且つ音の乱反射を起こす為の螺旋状の凹凸を付加する構造を有するエンクロージャー。
【請求項3】
請求項1においてスピーカー前面に取り付けられた音道の長さを、音の通過する道筋ごとに連続的に変化させ、音筋ごとにカットオフ周波数が連続変化するホーン形状を有するエンクロージャー。
【請求項4】
低音用と高音用ユニットの発音位置(ボイスコイル中心点)を揃えて同一垂直平面上に置き、高音用スピーカー前面に取り付けられた音道を、低音用ユニットに向かって長くして、高音用スピーカーからの放射音と低音用スピーカーの放射音が連続的に混合される、高音用ホーン開口部と低音用ユニット配置の相互位置関連性を有するエンクロージャー。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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