説明

スピーカー用電極

【課題】
本発明のスピーカー用電極は、スピーカーを軽量化でき、柔軟性と透明性に優れたスピーカー用電極を提供することにある。
【解決手段】
本発明のスピーカー用電極は、基板上に金属化合物で構成された網目状のライン(以下、金属化合物で構成された網目状のラインを導電部という)を有するスピーカー用電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカーを軽量化でき、透明性かつ柔軟性に優れたスピーカー用電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカーとは、電気信号を物理振動に変えて、音楽や音声などの音を生み出す機械であり、ダイナミック型、静電型、圧電型等の変換方式がある。
【0003】
これらの中で、静電型スピーカーは、薄型化にも対応しやすく、省スペースであり、音を発生させる原理から、音の指向性があり、音を遠くまで到達させることが可能である。
【0004】
従来からの一般的な静電型スピーカーは、複数の孔を有する固定電極、振動膜、そして両者間の振動のための空隙を設けるスペーサーを含む構成となっており、この状態で、振動膜と固定電極とに、バイアス電流により直流バイアス電圧を印加しておき、振動膜と固定電極間に、音声信号等の交流信号を加えることで動作させている。
【0005】
ここで、静電型スピーカーの振動膜に作用する力は、一般的に固定電極と振動膜との距離の2乗に反比例するため、音圧を下げるためには固定電極と振動膜との距離を小さくすることが要求される。
【0006】
固定電極は電極としての役割と、振動膜で発生した音を外部へ通過させるための役割を担っており、パンチングメタル等の導電性を有する多孔板、導電性を有する繊維や、金属の網、基板に金属蒸着した導電膜に孔を開けた導電性基板等が用いられている(例えば特許文献1〜3)。
【0007】
また、特許文献4では、スピーカーに透明性を付与するために、ガラスやアクリル板に透明な電極膜を設けたものを固定電極として用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009―260543号公報
【特許文献2】特開2003−125315号公報
【特許文献3】特許第4682927号明細書
【特許文献4】特開平11−178098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前述した従来の技術には次のような問題点がある。
【0010】
特許文献1で開示されている静電型スピーカーでは、導電性を有する金属の多孔板を用いているため、柔軟な屈曲性や透明性を有しておらず、金属のため、軽量化にも限界があり、特許文献2では、金属を蒸着した導電性基板が固定電極として用いられるため、スピーカーは透明性を有しておらず、スピーカーの設置が視聴者に意識されることとなる。
【0011】
特許文献3では、固定電極や振動膜に透明な部材を用いているが、この部材がガラスやアクリル板等であるため、スピーカーに柔軟性を付与することができない。
【0012】
また、特許文献4では、ITO/In、Sn、Zn酸化物等の導電膜を固定電極として用いた発明も開示されているが、前述の導電膜は一般的に耐屈曲性に乏しく、屈曲により、導電膜にクラックやひび割れが生じることで、導電膜としての機能を消失してしまい、柔軟性に乏しい。
【0013】
従って、スピーカーを軽量化でき、透明性かつ柔軟性に優れたスピーカー用電極が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような構成を採用するものである。
1)基板上に金属化合物で構成された網目状のライン(以下、金属化合物で構成された網目状のラインを導電部という)を有することを特徴とする、スピーカー用電極。
2)屈曲直径10mmにおける屈曲前後において、表面比抵抗値の変動率が20%以内であることを特徴とする、前記1)記載のスピーカー用電極。
3)前記導電部と樹脂部とで構成された導電層を有し、
一方の表面に、前記導電部が存在することを特徴とする、前記1)又は2)に記載のスピーカー用電極。
4)前記樹脂部が、リン酸エステル、カルボン酸エステル、及び脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする、前記3)記載のスピーカー用電極。
5)表面比抵抗値が0.1〜100Ω/□であることを特徴とする、前記1)〜4)のいずれかに記載のスピーカー用電極。
6)前記導電部の網目状のラインが、不規則な網目状のラインであることを特徴とする、前記1)〜5)のいずれかに記載のスピーカー用電極。
7)前記1)〜6)のいずれかに記載のスピーカー用電極を用いたスピーカー。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スピーカーを軽量化でき、さらには透明性かつ柔軟性に優れたスピーカー用電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のスピーカー用電極の一例の断面図
【図2】本発明のスピーカー用電極の一例の断面図
【図3】屈曲評価方法
【図4】不規則な網目状のラインの一例の上面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、前記課題を解決したスピーカー用電極、つまり、スピーカーを軽量化でき、透明性かつ柔軟性に優れたスピーカー用電極であり、より具体的には、基板上に金属化合物で構成された網目状のライン(以下、金属化合物で構成された網目状のラインを導電部という)を有するスピーカー用電極であり、このような構成にしてみたところ、前記課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0018】
本発明のスピーカー用電極の断面構成の一例を図1及び図2に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
本発明のスピーカー用電極は、基板上に金属化合物で構成された網目状のライン(以下、金属化合物で構成された網目状のラインを導電部という)を有することが重要である。基板上に金属化合物で構成された網目状のラインを有する、つまり基板上に導電部を有するとは、図1のように基板上に直接導電部が接している態様もあれば、図2のように基板上に後述する樹脂部を介して導電部を有する態様も含む。
【0020】
ここで、本発明の導電部の網目状のラインとは、いくつかの点を何本かの線分で結んだ構造のことを示す。つまり、本発明における網目状のラインとは、金属化合物や前述した各種添加剤などで構成される線分が、複数の点で結ばれた構造を意味する。例えば、繊維状やワイヤー状の金属化合物であれば、該繊維状またはワイヤー状の金属化合物同士が少なくとも1点以上の接点を有した状態で絡み合ったり、重なり合ったりすることで、導電性を示す線分が形成され、該線分に囲まれた部分が開口部となり、網目状のラインの導電部となる。ここで、線分に囲まれた開口部は、透明性に寄与する。粒子状の金属化合物であれば、粒子状の金属化合物同士がいくつも連結、接触、結合することで線分を形成し、これら粒子状の金属化合物で形成された線分がいくつかの点で重なり合い、囲まれた部分が開口部となることで、網目状のラインを得ることができる。網目状のラインは、規則的な網目状のライン(例えば、格子状のライン)でもよいし、後述するように不規則な網目状のラインをとることもできる。
【0021】
前述のような構成とすることで、透明性かつ柔軟性に優れたスピーカー用電極とすることが可能である。なお、本発明のスピーカー用電極は、前述の導電部を有しさえすれば、その他の層、例えば、反射防止層、ハードコート層、紫外線遮断層、赤外線遮断層、防汚層、ガスバリア層などの機能層をさらに有する態様も含む。
【0022】
前述の導電部を構成する金属化合物としては特に限定されず、白金、金、銀、銅、ニッケル、インジウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、ビスマス、コバルト、鉄、アルミニウム、亜鉛、錫などが挙げられる。金属化合物は、これらの金属を1種用いた化合物であっても良く、2種以上を組み合わせてなる金属化合物であっても良い。また、金属化合物は純金属でなくても、公知の導電化処理、例えば、有機溶媒処理、酸処理、加熱処理、通電処理などによって、最終的に所定の導電性が得られるものであれば良く、金属酸化物、有機酸金属塩、脂肪酸金属塩、各種化合物が被覆、結合した金属化合物なども選択できる。
【0023】
金属化合物の形状は、網目状のラインを形成することができれば、特に限定されないが、微粒子、粉末、繊維、ワイヤー等の形状が挙げられる。
【0024】
また、前述の導電部には、網目状のラインを形成するために必要であれば、金属化合物以外に、他の各種添加剤、例えば、分散剤、界面活性剤、保護樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、などの無機成分、有機成分を含有することができる。また、該導電部の形成に必要でなくても、該導電部を有する基板を、本発明のスピーカー用電極として用いるために必要である場合にも、上述したような各種添加剤を含有しても良い。
【0025】
本発明の導電部は、基板上に金属化合物分散液を塗布した後、網目状のラインとなるようにエッチング処理等を行って形成させることができるが、基板上に金属化合物分散液を公知の塗布方法、例えば、マイクログラビア法、コンマコート法、スプレー法、ダイコート法、アプリケーター法、ディッピング法などによって、網目状のラインとなるように塗布することで形成させる手法が好ましい。金属化合物分散液の塗布方法として、基板と接触する接触式の塗布方法を用いた場合、基板と接触した部分がキズに発生し、金属化合物分散液を塗布した際に、基板と接触した部分にスジが発生するなどの問題が生じる場合があるため、基板と接触しない非接触式の塗布方法が好ましい。
【0026】
本発明のスピーカー用電極に用いられる基板としては、熱可塑性樹脂フィルムを用いることが出来る。基板が熱可塑性樹脂フィルムである場合、透明性、柔軟性、加工性などの点で好ましい。また、本発明のスピーカー用電極の透明性を高めるために、電極に使用する基板としては、透明性の高い基板(透過率の高い基板)を使用することが望ましい。
【0027】
本発明の電極中の基板として好適な熱可塑性樹脂フィルムとは、熱によって溶融もしくは軟化するフィルムの総称であって、特に限定されるものではないが、代表的なものとして、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリ乳酸フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムやポリスチレンフィルムなどのアクリル系フィルム、ナイロンなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、フッ素系フィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムなどを用いることができる。
【0028】
これらは、ホモポリマーでも共重合ポリマーであってもよい。これらのうち、機械的特性、寸法安定性、透明性などの点で、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルムなどが好ましく、更に、機械的強度、汎用性などの点で、ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0029】
また、この熱可塑性樹脂フィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0030】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、特に限定されるものではなく、機械的強度、ハンドリング性やスピーカー特性などに応じて適宜選択されるが、通常は好ましくは10〜500μm、より好ましくは30〜250μm、最も好ましくは50〜150μmである。
【0031】
本発明のスピーカー用電極は、屈曲直径10mmにおける屈曲前後において、表面比抵抗値の変動率が20%以内であることが好ましい。ここで、屈曲直径10mmにおける屈曲前後の表面比抵抗値の変動率の評価方法は、図3に示すように、直径10mmの円柱棒を基板の導電部上に設置し、これを支点としてスピーカー用電極を100回屈曲させた後の該電極の表面比抵抗値を測定し、屈曲前の該電極の表面比抵抗値に対する、屈曲前後の該電極の表面比抵抗値の差の絶対値の割合を変動率とした。つまり、以下の式によって求めることができる。
【0032】
表面比抵抗値の変動率(%)=「屈曲前後の電極の表面比抵抗値の差の絶対値」/「屈曲前の電極の表面比抵抗値」×100
前述の表面比抵抗値の変動率は、より好ましくは10%以内、さらに好ましくは5%以内である。屈曲直径10mmにおける屈曲前後において、該電極の表面比抵抗値の変動率が20%よりも大きい場合には、本発明のスピーカー用電極を用いたスピーカーが屈曲された場合に、十分な機能を発現せず、良好な音質や音圧が得られない可能性がある。また、前述の表面比抵抗値の変動率は、理想的には0%であることが好ましいが、屈曲試験において導電部にかかる外力の影響により、金属化合物がより密着した状態の網目状のラインとなったり、網目状のラインの一部に亀裂が生じたりする可能性も考えられるため、現実的には前述の変動率の下限値は1%程度であると思われる。
【0033】
本発明のスピーカー用電極は、前述の導電部と樹脂部とで構成された導電層を有し、電極の一方の表面に、前述の導電部が存在することが好ましい。つまり、本発明の電極の好ましい態様は、導電部と樹脂部とで構成された導電層を有し、基板と導電層の積層体であり、導電層中の導電部が、電極(積層体)の一方の表面に存在する態様である。この好ましい態様の本発明の電極は、導電部と基板とは接してもよいし、基板と導電層とが接しながら、導電部と基板とが離れていてもよい(図2)。本発明の電極が、導電部と樹脂部で構成され導電層を有することで、導電部の断線や耐擦傷性が向上することから、導電層の導電性悪化の抑制や、ハンドリング性を向上させることができる。また、本発明のスピーカー用電極が導電層を有している場合は、図2に示すように、電極の一方の表面に、導電部が存在することが、電圧印加させるために必要である。
【0034】
前述の導電部と樹脂部とから構成される導電層は、導電部を構成する金属化合物と樹脂部を構成する樹脂とを含有すれば、導電層の有する特性を損なわない範囲において、各種の添加剤等を含有することも可能である。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、有機または無機の微粒子、充填剤や後述するリン酸エステル等の金属密着改良剤等が挙げられる。
【0035】
導電部を構成する金属化合物と樹脂部を構成する樹脂の導電層中の含有量に関して、金属化合物と樹脂との合計の含有量は、特に限定されないが、導電層の全成分100質量%において、50質量%以上100質量%以下が金属化合物と樹脂の合計量であることが好ましい。また、導電層中の金属化合物と樹脂との含有比率は、特に限定されず、スピーカー用電極に必要十分な表面比抵抗値を得ることができるだけの金属化合物と樹脂との比率を適宜選択すれば良い。
【0036】
本発明の導電層を構成する樹脂部に用いられる樹脂は、特に限定されないが、紫外線硬化性化合物から得られる樹脂または熱硬化性化合物から得られる樹脂であることが好ましい。紫外線硬化性化合物または熱硬化性化合物としては、特に限定されるものではないが、3官能以上の多官能アクリレートを用いることが好ましい。
【0037】
3官能以上の多官能アクリレートの具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの3官能以上の多官能アクリレートは、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、市販されている3官能以上の多官能アクリレートを含む紫外線硬化性化合物または熱硬化性化合物としては三菱レーヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC”など)、東亞合成化学工業株式会社;(“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)、ダイセル・サイテック株式会社;(商品名“Ebecryl”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0038】
また、3官能以上の多官能アクリレート以外に、アリルエステルモノマ−:オルソフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、コハク酸ジアリル、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマー:メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、フェノールEO付加物アクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2,6−ジブロム−4−tert−ブチルフェニルアクリレート、各種のウレタンアクリレート、エポキシアクリレートのような紫外線硬化性化合物から得られる樹脂または熱硬化性化合物から得られる樹脂を、導電層を構成する樹脂部の樹脂として用いることができる。
【0039】
本発明において、上記の紫外線硬化性化合物または熱硬化性化合物を硬化させる方法としては、例えば、活性線として紫外線を照射する方法や高温加熱法等を用いることができ、これらの方法を用いる場合には、上記の紫外線硬化性化合物または熱硬化性化合物に、光重合開始剤または熱重合開始剤等を加えることが望ましい。
【0040】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
【0041】
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量は、使用する紫外線硬化性化合物及び/または熱硬化性化合物100質量部に対して、0.01〜10質量部が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。また200℃以上の高温で熱硬化させる場合には熱重合開始剤の添加は必ずしも必要ではない。
【0042】
本発明における導電層は、ハードコート性を有していることが好ましい。該導電層がハードコート性を有することで、層の硬度が向上し、膜強度や耐擦傷性を向上することができるため、導電層の導電性悪化の抑制や、ハンドリング性を向上させることができる。
【0043】
ここでいうハードコート性を有するとは、表面特性試験機ヘイドン(新東科学(株)製 MODEL:HEIDON−14D)を用いて、各種硬度の鉛筆の芯を円筒状にした鉛筆(MITSU−BISHI製)を角度45度に設置、鉛筆の芯を導電層表面に当て、荷重500gで速度30mm/minで引っ掻き試験を行ったときの、導電層表面の鉛筆硬度がB以上であることを示す。
【0044】
本発明における導電層がハードコート性を有する場合には、導電部である金属化合物で構成された網目状のラインが断線しにくく、導電性を保持することが可能となるため、好ましい。導電層のハードコート性は、導電層を製造する際に用いる紫外線硬化性化合物及び/または熱硬化性化合物(樹脂部の原料である紫外線硬化性化合物及び/または熱硬化性化合物)として、硬化後にハードコート性を有することとなる化合物を選択することにより付与することができる。
【0045】
本発明における前記樹脂部は、リン酸エステル、カルボン酸エステル、及び脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことが好ましい(このような化合物を、金属密着改良剤という。)。前記化合物は、樹脂部中に含有されてさえいれば構わないが、導電層を構成する導電部と樹脂部との密着性を向上させるという観点では、樹脂部中の導電部との界面付近に存在していることが好ましい。また、前記化合物(金属密着改良剤)としては、リン酸エステルが最も好ましい。前記樹脂部が、前記化合物(金属密着改良剤)を少なくとも1つ含むことにより、後述する転写法によって本発明のスピーカー用電極を得る際に、導電部を簡便に転写することが可能となる。
【0046】
導電層を製造する際に用いる金属密着改良剤は、導電層中の樹脂部を得るために使用する紫外線硬化性化合物及び/または熱硬化性化合物の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部である事が好ましい。
【0047】
本発明のスピーカー用電極の表面比抵抗値は、0.1〜100Ω/□であることが好ましい。ここで、表面比抵抗値とは、ランダムに少なくとも3箇所測定した時の平均値を意味する。かかる表面比抵抗値は、より好ましくは0.1〜30Ω/□であり、さらに好ましくは0.1〜10Ω/□である。スピーカー用電極の表面比抵抗値を0.1〜100Ω/□に制御するためには、有機溶媒処理、酸処理、加熱処理、通電処理などの公知の導電化処理方法を施しても良い。例えば、スピーカー用電極を25℃のアセトンに30秒間浸漬後、150℃で2分間加熱処理することにより、処理前よりも低抵抗化でき、0.1〜100Ω/□の表面比抵抗値を有するスピーカー用電極を得ることができるが、導電化処理方法及び条件は、特に限定されない。
【0048】
該電極の表面比抵抗値が100Ω/□よりも大きいと、スピーカー用電極としての機能を発現できないため、好ましくない。該電極の表面比抵抗値は、低い方が好ましいものの、現実的に0.1Ω/□未満とすることは困難と考えられるため、該電極の表面比抵抗値は0.1Ω/□が下限と考えられる。
【0049】
ここで、前述のスピーカー用電極の表面比抵抗値の測定は、常温(23℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下で、JIS−K−7194(1994年制定)に準拠した形で、ロレスター−EP(三菱化学(株)製 型番:MCP−T360)を用いて測定することができる。
【0050】
本発明の導電部の網目状のラインは、不規則な網目状のラインであることが好ましい。ここで、不規則な網目状のラインとは、前述した網目状のラインを構成する開口部の形状や線状の部分の形状や線太さが、不規則であることを示す。つまり、この不規則な網目状のラインにおける不規則とは、前述の網目状の構造が、その形状において、開口部の形状や大きさが不揃いである状態、網目部分すなわち線状の部分の形状も直線ではなく線太さが不揃いである状態のものであることを意味し、微分干渉顕微鏡等の観察像で特定することができ、線分で囲まれた開口部の構造について、形状、サイズが不揃いである状態、例えば、サイズが不揃いな円形、楕円形、三角形、四角形、五角形のような多角形であったり、これらが複合した形状であったりする状態を示す。例えば、不規則な形状としては、特開平10−312715号公報、特開2008−243547号公報などに記載の形状が挙げられる。
【0051】
本発明の導電部の網目状のラインが、不規則な網目状であることは、本発明のスピーカー用電極を対向して設置した際に、モアレ現象が発生しないため、好ましい。ここで、モアレ現象とは、「点または線が幾何学的に規則正しく分布したものを重ね合せた時に生ずる縞状の斑紋」であり、また広辞苑によれば、「点または線が幾何学的に規制正しく分布したものを重ね合わせた時に生ずる縞模様の斑紋。網版印刷物を原稿として網版を複製する時などに起こりやすい」との記載されている。そのため、規則性のある網目状のラインの導電部を有する電極を用いた場合には、モアレ現象が発生しやすいが、本発明の不規則な網目状のラインの導電部を有する電極を用いた場合には、モアレ現象が発生しないため、本発明の導電部が不規則な網目状のラインであることは、視認性の観点で有利となる。
【0052】
本発明のスピーカー用電極は、全光線透過率が50%以上であることが好ましく、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上である。全光線透過率が50%より小さいと、視認性、透明性の観点で問題が生じる場合がある。
【0053】
また、スピーカー用電極の全光線透過率は高い程好ましく、その上限は特に限定されないが、該電極表面の光反射を考慮すると、該電極の全光線透過率を92%より高くすることは困難と考えられるので、全光線透過率92%がスピーカー用電極の全光線透過率の物理的限界値(上限)と思われる。
【0054】
本発明のスピーカー用電極は静電型スピーカーに用いることができ、その際にはスピーカー用電極に複数の孔を設けても良い。ここで孔は、静電型スピーカーの振動膜で発生した音を通過させるための役割を担う。孔のサイズや孔間隔は、スピーカー用電極の導電性を損なわず、良好な音質を得ることができれば、特に限定はされない。
【0055】
本発明のスピーカー用電極は、基板上に金属化合物で構成された網目状のラインを有する積層体(図1で示す積層体であり、以下、この積層体を網目状金属化合物積層体という)を用いることにより、好適にスピーカー用電極を得ることができる。また、前記網目状金属化合物積層体を用いることによって、導電部と樹脂部とで構成された導電層と基板とを有し、さらに一方の表面に導電部が存在する本発明の好ましい態様のスピーカー用電極を簡易な方法で得ることができる。以下、網目状金属化合物積層体を用いた本発明の好ましい態様のスピーカー用電極及びの製造方法について、それぞれ説明する。
【0056】
網目状金属化合物積層体は、基板上に金属化合物の塗膜を形成し、エッチング処理やフォトリソグラフィー処理により網目状のラインを形成する方法や、基板上に金属化合物分散液を網目状のラインが形成されるように塗布、または印刷する方法によって得ることができ、これを本発明のスピーカー用電極として用いることができる。また、このようにして得られた網目状金属化合物積層体は、公知の導電化処理方法にて導電化処理することで、表面比抵抗値を0.1〜100Ω/□に制御することができる。
【0057】
また、導電部と樹脂部とで構成された導電層と基板とを有し、さらに一方の表面に前記導電部が存在する本発明の好ましい態様のスピーカー用電極は、前述の導電化処理された網目状金属化合物積層体の導電部を有する面上に、紫外線硬化性化合物または熱硬化性化合物を塗布し、新たな基板を貼り合わせた後に硬化する工程1と、網目状金属化合物積層体を構成する基板と導電層(導電部並びに前記樹脂を塗布・硬化して得られた部分(樹脂部))とを剥離する工程2とによる、新たに貼り合わせた基板へ導電層を転写する転写法や、前述の導電化処理された網目状金属化合物積層体の導電部を有する面上に、導電部の表面が出るように紫外線硬化性化合物または熱硬化性化合物からなる樹脂をオーバーコートするオーバーコート法等により得ることができる。
【0058】
上述の転写法を用いることで、比較的簡単に、導電部と樹脂部とで構成された導電層と基板とを有し、さらに導電部が一方の表面に存在した本発明の好ましい態様のスピーカー用電極を得ることができ、この手法により得られる導電層の表面は優れた平滑性を有しているため、他部材と貼り合わせる際に、気泡混入や貼り合わせ上の不具合が生じにくいという利点を有する。
【0059】
オーバーコート法を用いて得られたスピーカー用電極は、導電層の表面に導電部が存在していれば、特に問題はないが、紫外線硬化性化合物または熱硬化性化合物のレベリング性の問題により、網目状金属化合物積層体の開口部を均一に埋めることが難しく、また、オーバーコート層により導電部である網目状のラインが全て覆われてしまうと、スピーカー用電極としての機能を発現することができないため、注意が必要である。上記のことから、導電層を有するスピーカー用電極は、転写法を用いて得ることが好ましい。
【0060】
前述の転写法の工程1において、網目状金属化合物積層体の導電部を有する面に、紫外線硬化性化合物または熱硬化性化合物を塗布する方法としては、各種の塗布方法が適用でき、特に限定されないが、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法またはスプレーコート法などを用いることができる。
【0061】
また、前述の転写法の工程1において、基板上に金属化合物分散液を網目状のラインが形成されるように塗布または印刷する前に、基板の表面にアンカーコート剤やプライマー層をコーティングし、親水性処理、コロナ放電処理、プラズマ処理などを行ってもよい。前記の金属化合物分散液を基板上に塗布する方法として、ダイコート法、アプリケーター法、コンマコート法、ディッピング法等を用いることが好ましい。
【0062】
以下、本発明のスピーカー用電極をより具体的に例示して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、基板に、金属化合物分散液を塗布し、金属化合物で構成された網目状のラインを有する積層体(網目状金属化合物積層体)とする。その後、網目状金属化合物積層体を150℃で2分間、熱処理を行い、アセトンで30秒処理し、1Nの塩酸に入れ、1分間放置する。その後、網目状金属化合物積層体を取り出して、水洗し、乾燥することで導電化処理した網目状金属化合物積層体が得られる。
【0063】
続いて、得られた網目状金属化合物積層体の導電部を積層した面に、光開始剤を添加した紫外線硬化性化合物をワイヤーバーによって塗布し、90℃で1分間、熱処理を行い、新たな基板を貼り合わせた後、紫外線照射により紫外線硬化性化合物を硬化して樹脂とし、最後に網目状金属化合物積層体を構成する基板と金属化合物で構成される網目状のラインとを剥離することで、好適にスピーカー用電極が得られる。上記の方法を用いて本発明のスピーカー用電極を製造することにより、透明性および柔軟性のいずれにも優れたスピーカー用電極を得ることができる。
[特性の測定方法および効果の評価方法]
各実施例・比較例で作成したスピーカー用電極の特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)表面観察(形状観察)
スピーカー用電極の導電部を有する面の表面を微分干渉顕微鏡(LEICA DMLM ライカマイクロシステムズ(株)製)にて倍率100倍で観察し、網目の有無及び形状を観察した。
(2)表面比抵抗値
スピーカー用電極の表面比抵抗値は、スピーカー用電極を常態(23℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下で、JIS−K−7194(1994)に準拠した形で、ロレスタ−EP(三菱化学株式会社製、型番:MCP−T360)を用いて測定した。単位は、Ω/□である。なお、本測定器は1×10Ω/□以下が測定可能である。
(3)全光線透過率
全光線透過率は、常態(23℃、相対湿度65%)において、スピーカー用電極を2時間放置した後、スガ試験機(株)製全自動直読ヘイズコンピューター「HGM−2DP」を用いて、光源がスピーカー用電極の導電部を有する面の表面に垂直にあたるように置いて測定した。測定は、ランダムに3点行い、その平均値を全光線透過率とした。
(4)屈曲性試験
スピーカー用電極の導電部上に、直径10mmの円柱棒を設置し、これを支点としてスピーカー用電極を100回屈曲させた。屈曲前後の電極の表面比抵抗値の差の絶対値、及び、屈曲前の電極の表面比抵抗値を用いて、以下の式により表面比抵抗値の変動率を求めたなお、表面比抵抗値は、前述の測定方法にて測定した。
【0064】
表面比抵抗値の変動率(%)=「屈曲前後の電極の表面比抵抗値の差の絶対値」/「屈曲前の電極の表面比抵抗値」×100
(5)スピーカー動作試験
スピーカー用電極を、間隔を開けて対向させ、この2枚の電極間にスペーサーを用いて導電性を有する振動膜を設置したスピーカー構成にて、振動膜に所定のバイアス電圧を印加、スピーカー用電極に印加する電圧を変化させることで、スピーカーとしての動作試験を行った。スピーカーとしての動作が認められなかった場合を「×」、動作が認められたが音質が劣る場合を「○」、動作が認められ、音質も良好であった場合を「◎」とした。
(6)耐モアレ評価
LCD表示材の画面の前で、画面とスピーカー用電極が概ね平行になるように持ち、スピーカー用電極を回転させ、回転中にモアレ現象が発現するか否かを目視で確認することで評価した。また、前述のスピーカー動作試験のスピーカー構成体において、モアレ現象が発現するか否かについても目視で観察することで評価した。いずれの評価においても、モアレが観察されないものを「○」、いずれかの評価でモアレが部分的にでも観察されるものを「△」とした。目視観察にて「○」であれば、耐モアレ性は良好とした。
【実施例】
【0065】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0066】
(網目状金属化合物積層体1)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラー(登録商標)T60)の片面に、藤倉化成株式会社製の金属微粒子溶液XA−9053を、スクリーン印刷により、規則的な網目状(格子状)のラインに印刷し、金属化合物で構成された網目状のラインを有する、網目状金属化合物積層体1を得た。
【0067】
(網目状金属化合物積層体2)
ポリエチレンテレフタレートフィルム上に金属化合物で構成された不規則な網目状のラインを有する表面比抵抗値10Ω/□の透明導電性基板(東レフィルム加工(株)製 ナノ銀透明導電フィルムTCC−010を網目状金属化合物積層体2とした。
【0068】
(紫外線硬化性化合物1)
紫外線硬化性化合物1として、下記紫外線硬化性化合物Aと紫外線硬化性化合物Bの混合比が60/40(wt/wt)である紫外線硬化性化合物1を用いた。
紫外線硬化性化合物A:4官能ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック(株)製 Ebecryl(登録商標)8405)
紫外線硬化性化合物B:ノニルフェノールEO変性アクリレート(東亞合成(株)製 アロニックス(登録商標)M111)
(実施例1)
網目状金属化合物積層体1を150℃の熱風オーブン(タバイエスペック(株)製 PHH−200)で2分間熱処理し、スピーカー用電極とした。得られたスピーカー用電極の全光線透過率は、70%であり、表面比抵抗値は、28.4Ω/□であった。屈曲試験後の表面比抵抗値は33.5Ω/□であったため、屈曲試験前後の表面比抵抗値の変動率は18.0%であり、スピーカー動作試験にて「○」であった。
【0069】
(実施例2)
網目状金属化合物積層体1を、実施例1と同様に熱処理した後、25℃のアセトン(佐々木化学(株)製)に30秒浸漬し、25℃で3分間乾燥した後、150℃の熱風オーブンにて2分間熱処理して、スピーカー用電極とした。得られたスピーカー用電極の全光線透過率は82%であり、表面比抵抗値は15.3Ω/□であった。屈曲試験後の表面比抵抗値は、16.7Ω/□であったため、屈曲試験前後の表面比抵抗値の変動率は9.2%であり、スピーカー動作試験にて「○」であった。また、耐モアレ評価も良好であり、「○」であった。
【0070】
(実施例3)
網目状金属化合物積層体2をそのままスピーカー用電極とした。屈曲試験前後での表面比抵抗値はそれぞれ10Ω/□、10.6Ω/□であり、変動率は6.0%であり、スピーカー動作試験にて「◎」であった。また、耐モアレ評価も良好であり、「○」であった。
【0071】
(実施例4)
網目状金属化合物積層体2の導電部が積層された面上に、紫外線硬化性化合物1を100質量部とし、それに対し、光開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 イルガキュア(登録商標)184)を3質量部、金属密着改良剤としてリン酸エステル(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)PM−2)を1質量部添加したものを、WET厚み12μmになるようにバーコート法を用いて塗布した。次に、この積層体を90℃の熱風オーブン(タバイエスペック(株)製 PHH−200)で1分間、乾燥させた後、コンベア式UV照射装置(アイグラフィックス(株)製 ECS−401GX、高圧水銀灯4kw×1灯)を用い、500mJ/cmの照射量を照射し、紫外線硬化性化合物からなる樹脂が積層された積層体を得た。続いて、この網目状金属化合物積層体の基材と、導電部及び樹脂部で構成された導電層とを剥離することで、スピーカー用電極を得た。
【0072】
得られたスピーカー用電極の屈曲試験前後での表面比抵抗値は10Ω/□、10.6Ω/□であり、表面比抵抗値の変動率は6.0%であり、スピーカー動作試験にて「◎」であった。また、耐モアレ評価も良好であり、「○」であった。
【0073】
(実施例5)
網目状金属化合物積層体2の導電部が積層された面上に、水性ウレタン樹脂分散液(大日本インキ化学工業(株)製HYDRAN(登録商標)AP−201)を水で固形分濃度3質量%まで希釈したものをWet7μmになるようにバーコート法で塗布後、170℃で2分間乾燥させて樹脂部を固化させ、導電層を有したスピーカー用電極を得た。
【0074】
得られたスピーカー用電極の屈曲試験前後での表面比抵抗値は10Ω/□、10.6Ω/□であり、表面比抵抗値の変動率は6.0%であり、スピーカー動作試験にて「◎」であった。また、耐モアレ評価も良好であり、「○」であった。
【0075】
(比較例1)
市販のITOフィルム(表面比抵抗値170Ω/□)は、網目状のラインを有しておらず、屈曲試験後の表面比抵抗値は測定限界(1×10Ω/□)以上であり、表面比抵抗値を示さなかった。
【0076】
(比較例2)
金属多孔版をスピーカー用電極として用いた場合、良好なスピーカー動作が確認されたが、基板上に金属化合物で構成された網目状のラインを有する構成にはなっておらず、透明性、柔軟性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、スピーカーを軽量化でき、透明性および柔軟性に優れたスピーカー用電極に関するものである。
【符号の説明】
【0078】
1 金属化合物からなる網目状のライン(導電部)
2 基板
3 導電部と基板を有するスピーカー用電極
4 樹脂部
5 導電層
6 基板
7 導電層と基板を有するスピーカー用電極
8 導電部が存在する面上に設置された屈曲棒
9 スピーカー用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に金属化合物で構成された網目状のライン(以下、金属化合物で構成された網目状のラインを導電部という)を有することを特徴とする、スピーカー用電極。
【請求項2】
屈曲直径10mmにおける屈曲前後において、表面比抵抗値の変動率が20%以内であることを特徴とする、請求項1記載のスピーカー用電極。
【請求項3】
前記導電部と樹脂部とで構成された導電層を有し、
一方の表面に、前記導電部が存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載のスピーカー用電極。
【請求項4】
前記樹脂部が、リン酸エステル、カルボン酸エステル、及び脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする、請求項3記載のスピーカー用電極。
【請求項5】
表面比抵抗値が0.1〜100Ω/□であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のスピーカー用電極。
【請求項6】
前記導電部の網目状のラインが、不規則な網目状のラインであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のスピーカー用電極。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のスピーカー用電極を用いたスピーカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−16958(P2013−16958A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147099(P2011−147099)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】