説明

スピーカー装置用ダンパー及びスピーカー装置

【課題】製品コストの低減が図れ、かつ二重構造ダンパーと同様の構造を有するスピーカー装置用ダンパーを提供する。
【解決手段】ダンパーは、外周枠(第1の環状部)と、その内側に配置された内周枠(第2の環状部)と、弾性を有し、外周枠と内周枠との間に配置されると共に、外周枠と内周枠とを連結し、複数のアーム部を含む第1及び第2アームと、を備えている。第1アームを構成する複数のアーム部と、第2アームを構成する複数のアーム部とは、外周枠及び内周枠の母線方向に距離をおいて配置され、異なる平面上に位置している。これにより、1つのダンパーにてダブルダンパー構造を実現できる。また、ダブルダンパーの場合、2つのダンパーを用いて構成されるので、その分だけダンパーの製品コストが高くなってしまうのに対して、かかるダンパーでは、1つのダンパーによりダブルダンパー構造を実現でき、ダブルダンパーと比較してダンパーの製品コストを下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー装置用ダンパーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コルゲーション形ダンパー、ギャザード形ダンパー、蝶形ダンパーなどに代表される各種のスピーカー装置用ダンパーが知られている。
【0003】
このうち、蝶形ダンパーは、一般的に、環状の形状を有する内周枠と、環状の形状を有し、内周枠より大きな直径を有する外周枠と、内周枠と外周枠とを連結する複数のアーム部と、を備えて構成される。例えば、このような構成を有する蝶形ダンパーが特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の蝶形ダンパーは、外周枠に対するアーム部の連結部分においてダンパーの駆動方向に対してアーム部の両側に外周枠の一部が存在するように、アーム部の一端が連結されている。そのため、ダンパーが駆動することにより内周枠が振幅しても外周枠の一部が壁の役目を果たし、アーム部が大きく振幅するのを抑止でき、かかる応力が低減できるとされている。
【0005】
また、その他にも、この種の構成を有するダンパーの一例が特許文献2乃至4に記載されている。
【0006】
特許文献2に記載のダンパーは、熱可塑性エラストマーを用いて射出成型により成型されたダンパー本体を有し、ダンパー本体は、ボイスコイル接着部と、フレームに貼着されるダンパー周縁部と、ボイスコイル接着部とダンパー周縁部との間を弾性をもって橋絡するサスペンションレバーと、透かし窓と、から構成され、そのダンパー本体を2枚重ねてなり、さらに、それらのダンパーの中間にメッシュを介在挟持してインサートモールド成型されてなる。かかる構成により、耐久性の良好な軟らかいグレードで自由に振幅特性、柔軟度を実現できて、密な防塵効果を有するという顕著な効果を有するとされている。
【0007】
特許文献3に記載のダンパーは、ボイスコイルボビンが巻回されたボビンが嵌合する小径筒部と、スピーカフレームに固定される大径筒部と、小径筒部と大径筒部との間に橋絡されたアーム部と、を有して構成され、特に、アーム部の小径筒接続部と大径筒接続部とは、小径筒部、大径筒部の一方の開放面近傍に接続され、他方のアーム部の小径筒接続部と大径筒接続部とは、小径筒部、大径筒部の他方の開放面近傍に接続されている。これにより、スピーカ用ダンパーのアーム部のボビン(小径筒部)との接続は、ボビンの軸方向において異なる2箇所の部分となり、ボビンが軸方向に移動してもボビンの横ぶれが発生し難いとされている。
【0008】
特許文献4に記載のダンパーは、第1のダンパー部材と第2のダンパー部材とを有し、第1のダンパー部材は、一方の端面側に開放面が形成され、また、他方の端面側には中心部にボイスコイルが取り付けられる穴が形成され、ボイスコイルの移動方向に可撓可能なダンパー部が形成されてなり、さらに、第1のダンパー部材の開放面と、第2のダンパー部材の開放面とが対向するように第1のダンパー部材及び第2のダンパー部材が一体化されてなる二重構造ダンパーとなっている。これにより、第1のダンパー部材の筒面と、第2のダンパー部材の筒面とが2つのダンパー部の間隔を確保するスペーサの役割を果たすので、スペーサが不要となり、組み付け工数が低減し、コストも低減できるとされている。
【0009】
【特許文献1】特開2002−262391号公報
【特許文献2】特開2003−97641号公報
【特許文献3】特開2003−219497号公報
【特許文献4】特開2003−32788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した各種の特許文献のうち、特許文献2及び4に記載のダンパーは、2つのダンパー部材(又はダンパー本体)を組み合わせて構成されているので、1つのダンパーにより構成されたものと比較して、ボイスコイルボビン及び振動板等の振動系部材を安定的に振動させることができるものと推察されるが、その反面、それらのダンパーは、2つのダンパー部材(又はダンパー本体)を用いて構成されることでダンパーの製品コストが高くなり、ひいてはスピーカー装置の製品コストが高くなってしまうという問題がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題としては、製品コストの低減が図れ、かつ二重構造ダンパーと同様の構造を有し、振動系部材を安定的に振動させることが可能なスピーカー装置用ダンパー及びスピーカー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、スピーカー装置用ダンパーであって、第1の環状部と、前記第1の環状部の内側に配置された第2の環状部と、弾性を有し、前記第1の環状部と前記第2の環状部との間に配置されると共に、前記第1の環状部と前記第2の環状部とを連結する第1及び第2アームと、を備え、前記第1アームと前記第2アームは、前記第1の環状部及び前記第2の環状部の母線方向に距離をおいて配置され、異なる平面上に位置していることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の1つの実施形態では、スピーカー装置用ダンパーは、第1の環状部と、前記第1の環状部の内側に配置された第2の環状部と、弾性を有し、前記第1の環状部と前記第2の環状部との間に配置されると共に、前記第1の環状部と前記第2の環状部とを連結する第1及び第2アームと、を備え、前記第1アームと前記第2アームは、前記第1の環状部及び前記第2の環状部の母線方向に距離をおいて配置され、異なる平面上に位置している。
【0014】
上記のスピーカー装置用ダンパーは、例えばフレームに取り付けられる第1の環状部と、例えばボイスコイルが巻かれたボイスコイルボビンに取り付けられ、第1の環状部の内側に配置された第2の環状部と、弾性を有し、第1の環状部と第2の環状部との間に配置されると共に、第1の環状部と第2の環状部とを連結する第1及び第2アームと、を備えて構成される。そして、第1アームと第2アームは、第1の環状部及び第2の環状部の母線方向に距離をおいて配置され、異なる平面上に位置している。ここで、母線方向とは、第1及び第2の環状部の各一端面及び当該各一端面に対向する各他端面に対して垂直な方向をいう。
【0015】
つまり、このスピーカー装置用ダンパーは、2つの蝶型ダンパーを重ねて構成されるダブルダンパーを1つの蝶型ダンパーにて実現した構造を有する。
【0016】
これにより、かかるスピーカー装置用ダンパーを適用したスピーカー装置では、1つのダンパーを有するスピーカー装置と比較して、ボイスコイルボビン等を含む振動系部材のローリング(横揺れ)が生じ難くなり、かかる振動系部材を、上記の母線方向に安定的に振動させることができる。
【0017】
また、上記した2重構造ダンパー(ダブルダンパー)の場合、2つのダンパーを用いて構成されるので、その分だけダンパーの製品コストが高くなってしまうのに対して、かかるスピーカー装置用ダンパーでは、1つのダンパーによりダブルダンパー構造を実現できるので、上記したダブルダンパーと比較して、スピーカー装置用ダンパーの製品コストを下げることができる。これにより、スピーカー装置の製品コストも下げることができる。
【0018】
上記のスピーカー装置用ダンパーの一つの態様では、前記第1アーム及び前記第2アームの各々は、前記第1の環状部及び前記第2の環状部の周方向に一定の間隔をおいて配置された複数のアーム部を有し、前記第1アームを構成する前記複数のアーム部と、前記第2アームを構成する前記複数のアーム部とは、前記母線方向において平面的に重なっていない。好適な例では、前記複数のアーム部はS字状の形状に形成されているのが好ましい。このため、かかるスピーカー装置用ダンパーを射出成形方法等にて作製する場合に、第1アーム及び第2アームの作製が容易となる。
【0019】
上記のスピーカー装置用ダンパーの他の態様では、前記第1アームを構成する前記複数のアーム部と、前記第2アームを構成する前記複数のアーム部とは、前記母線方向において、前記周方向に一定の間隔をおいて交互に配置されている。
【0020】
これにより、ボイスコイルボビン等を含む振動系部材を上記の母線方向に安定的に振動させることができ、振動系部材にローリングが生じるのを防止できる。
【0021】
本発明の他の実施形態では、スピーカー装置は、上記のスピーカー装置用ダンパーと、ボイスコイルが巻かれたボイスコイルボビンと、フレームと、を備え、前記第1の環状部はフレームに取り付けられていると共に、前記第2の環状部はボイスコイルボビンに取り付けられている。これにより、ダブルダンパーを有するスピーカー装置と同様の作用を生じるスピーカー装置を構成することができる。よって、ボイスコイルボビン等を含む振動系部材を上記の母線方向及びスピーカー装置の中心軸方向に安定的に振動させることができ、振動系部材にローリングが生じるのを防止できる。また、1つのスピーカー装置用ダンパーによりダブルダンパー構造を実現できるので、スピーカー装置用ダンパーの製品コストを下げることができ、ひいてはスピーカー装置の製品コストを下げることができる。
【実施例】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0023】
[スピーカー装置の構成]
図1に、本発明の実施例に係るダンパー7を含むスピーカー装置100を、その中心軸L1を通る平面で切断したときの断面図を示す。
【0024】
スピーカー装置100は、図1に示すように、ヨーク1、マグネット2及びプレート3を含む磁気回路30と、フレーム4、ボイスコイルボビン5、ボイスコイル6、ダンパー7、振動板8、エッジ9及びキャップ11を含む振動系部材31と、を有して構成される。なお、本発明では、スピーカー装置の構造及び駆動方式、並びにダンパー7以外のスピーカー装置用構成部品(振動系部材31及び磁気回路30)の構造などに限定はない。
【0025】
まず、磁気回路30の構成について説明する。
【0026】
本磁気回路30は、外磁型の磁気回路として構成されている。
【0027】
ヨーク1は、略円柱状の形状をなすポール部1aと、そのポール部1aの外周壁の下端部から外側に延在するように形成されたフランジ部1bと、を有する。
【0028】
マグネット2は、略環状の形状をなし、フランジ部1b上に取り付けられている。マグネット2上には、略環状の形状を有するプレート3が取り付けられている。そして、プレート3の内周壁とポール部1aの外周壁との間隙には、マグネット2の磁束が集中する磁気ギャップ32が形成されている。
【0029】
次に、振動系部材31の構成について説明する。
【0030】
フレーム4は、様々なスピーカー装置用構成部材を支持する機能を有する。フレーム4は、略椀状の形状及び階段状の断面形状をなし、第1段部4aと、当該第1段部4aの上側に且つ外側に設けられた第2段部4bと、当該第2段部4bの上側に且つ外側に設けられた第3段部4cと、を有している。フレーム4の要素である第1段部4aは、プレート3上に取り付けられている。これにより、フレーム4は、磁気回路30に結合されている。第2段部4b上にはダンパー7の外周部、即ち、外周枠70が配置される。また、第3段部4c上には、エッジ9の外周部が配置される。
【0031】
ボイスコイルボビン5は、略円筒状の形状をなしている。ボイスコイルボビン5の下端部付近は、ヨーク1のポール部1aの上端部付近を覆っている。このため、ボイスコイルボビン5の内周壁の下端部付近は、ポール部1aの外周壁の上端部付近と対向している一方、ボイスコイルボビン5の外周壁の下端部付近は、プレート3の内周壁及びマグネット2の内周壁の一部と夫々対向している。
【0032】
ボイスコイル6は、ボイスコイルボビン5の外周壁の下端部付近に巻かれており、ボイスコイル6の外周壁はプレート3の内周壁と対向している。ボイスコイル6は、1つの配線からなり、図示しないプラス及びマイナスのリード線を夫々有している。プラス側のリード線はL(又はR)チャンネル信号の入力配線であり、マイナス側のリード線はグランド(GND:接地)信号の入力配線である。プラス及びマイナスの各リード線は、それぞれフレーム4の適当な位置に設けられた図示しない端子に電気的に接続されている一方、端子は、図示しないアンプ側の出力配線にも電気的に接続されている。これにより、ボイスコイル6には、端子、プラス及びマイナスの各リード線を介してアンプ側から1チャンネル分の信号や電力が入力される。
【0033】
ダンパー7は、略環状の形状をなし、ボイスコイルボビン5等を弾性的に支持する役割を果たす。好適な例では、ダンパー7は樹脂材料にて形成されているのが好ましい。ダンパー7の内周枠71は、その内周壁に設けられた複数のリブ71aを介してボイスコイルボビン5の外周壁の上端部付近に取り付けられている一方、ダンパー7の外周枠70は、フレーム4の第2段部4b上に取り付けられている。さらに、ダンパー7の外周枠70に設けられた爪部70a上には補強剤90が塗布され、ダンパー7は、その補強剤90を通じてフレーム4に補強された上で固定されている。なお、ダンパー7の詳細な構成は後述する。
【0034】
振動板8は、コーン状の形状を有し、入力信号に応じた音波を放射する機能を有する。振動板8の内周縁部は、ボイスコイルボビン5の外周壁の上端部に取り付けられている。一方、振動板8の外周縁部には、略Ω状の断面形状を有するエッジ9が取り付けられている。エッジ9の外周縁部はフレーム4の第3段部4c上に取り付けられている。
【0035】
キャップ11は、ドーム状の形状をなし、その外周端部付近は、放音側となる振動板8の内周部の放音面上に取り付けられている。このため、キャップ11は、放音側から水分や異物などが磁気回路30側に侵入するのを防止する役割を果たす。
【0036】
以上の構成を有するスピーカー装置100において、アンプ側から出力された信号及び電力は、端子並びにボイスコイル6のプラス及びマイナスのリード線を介してボイスコイル6へ供給される。これにより、磁気ギャップ32内でボイスコイル6に駆動力が発生し、偏心型の振動板8をスピーカー装置100の中心軸L1方向に振動させる。こうして、スピーカー装置100は、矢印Y1の方向に音波を放射する。
【0037】
[ダンパーの構成]
次に、図2及び図3を参照して、本発明の実施例に係るダンパー7の構成について詳述する。
【0038】
図2(a)は、図1の放音方向Y1と逆側から観察したときのダンパー7の斜視図を示す。図2(b)は、図1の放音方向Y1と逆側から観察したときのダンパー7の平面図を示す。図3は、図2(b)の切断線A−A’に沿ったダンパー7の断面図であり、特にダンパー7の中心軸L2を通る位置で切断した断面図を示す。
【0039】
ダンパー7は、2つの蝶型ダンパーを重ねて構成される二重構造ダンパー(ダブルダンパー)を、1つの蝶型ダンパーにて実現した構造を有する。
【0040】
具体的には、ダンパー7は、蝶型ダンパー構造を有し、フレーム4に取り付けられる外周枠(第1の環状部)70と、外周枠70の内側に配置され、ボイスコイルボビン5に取り付けられる内周枠(第2の環状部)71と、弾性を有し、外周枠70と内周枠71との間に配置されると共に、外周枠70と内周枠71とを連結し、複数のアーム部72a、72b、72cを含んで構成される第1アーム72と、同じく、弾性を有し、外周枠70と内周枠71とを連結し、複数のアーム部73a、73b、73cを含んで構成される第2アーム73と、を備えて構成される。
【0041】
外周枠70は、円環状の形状をなし、その外周壁の下端部から外側へ突出してなる爪部70aを有する。爪部70aはフレーム4と嵌合する部位である。
【0042】
内周枠71は、円環状の形状をなし、その内径は外周枠70の内径より小さく、その内周壁には複数のリブ(突起)71aが形成されている。このリブ71aは、内周枠71をボイスコイルボビン5に安定的に取り付ける役割を果たす。内周枠71の中心軸と外周枠70の中心軸は、ダンパー7の中心軸L2上に位置している。
【0043】
複数のアーム部72a、72b、72cを含んで構成される第1アーム72と、複数のアーム部73a、73b、73cを含んで構成される第2アーム73とは、図3に示すように、外周枠70及び内周枠71の母線方向Y2に距離をおいて配置され、異なる平面上に位置している。ここで、母線方向Y2とは、図2(a)及び図3において、外周枠70及び内周枠71の各一端面(各上面)及び当該各一端面に対向する各他端面(各下面)に対して垂直な方向、言い換えればダンパー7の中心軸L2に平行な方向をいう。本例では、アーム部72a、アーム部72b及びアーム部72cを含んで構成される第1アーム72と、アーム部73a、アーム部73b及びアーム部73cを含んで構成される第2アーム73とは、外周枠70及び内周枠71の母線方向Y2に一定の距離d1をおいて配置されている。
【0044】
また、第1アーム72を構成する、アーム部72a、アーム部72b及びアーム部72cは、夫々S字状の形状に形成され、その各々は、同一平面S1上に位置しており、且つ外周枠70及び内周枠71の周方向Y3に一定の間隔をおいて配置されている。一方、第2アーム73を構成する、アーム部73a、アーム部73b及びアーム部73cも、夫々S字状の形状に形成され、その各々は、上記の平面S1より上方に位置する同一平面S2上に位置しており、且つ外周枠70及び内周枠71の周方向Y3に一定の間隔をおいて配置されている。また、アーム部72a、アーム部72b及びアーム部72cと、アーム部73a、アーム部73b及びアーム部73cとは、外周枠70及び内周枠71の母線方向Y2において平面的に重なっていない。また、第1アーム72の各アーム部、即ちアーム部72a、アーム部72b及びアーム部72cと、第2アーム73の各アーム部、即ちアーム部73a、アーム部73b及びアーム部73cとは、外周枠70及び内周枠71の母線方向Y2において、外周枠70及び内周枠71の周方向Y3に一定の間隔をおいて交互に配置されている。
【0045】
以上の構成を有するダンパーは、次のような作用効果を奏する。
【0046】
本実施例に係るダンパー7は、外周枠70と、その外周枠70の内側に配置された内周枠71と、弾性を有し、外周枠70と内周枠71との間に配置されると共に、外周枠70と内周枠71とを連結し、複数のアーム部72a、72b、72cを含んで構成される第1アーム72と、弾性を有し、外周枠70と内周枠71とを連結し、複数のアーム部73a、73b、73cを含んで構成される第2アーム73と、を備えて構成され、第1アーム72と第2アーム73とは、外周枠70及び内周枠71の母線方向Y2に距離をおいて配置され、異なる平面上に位置している。つまり、かかるダンパー7は、2つの蝶型ダンパーを重ねて構成されるダブルダンパーを1つの蝶型ダンパーにて実現した構造を有する。
【0047】
これにより、かかるダンパー7を適用したスピーカー装置100では、1つのダンパーを有するスピーカー装置と比較して、ボイスコイルボビン5等を含む振動系部材31のローリング(横揺れ)が生じ難くなり、かかる振動系部材31を、上記の母線方向Y2及びスピーカー装置100の中心軸L1方向に安定的に振動させることができる。
【0048】
好適な例では、第1アーム72を構成する、アーム部72a、アーム部72b及びアーム部72cは、夫々S字状の形状に形成され、その各々は同一平面S1上に位置しているのが好ましい。また、第2アーム73を構成する、アーム部73a、アーム部73b及びアーム部73cは、夫々S字状の形状に形成され、その各々は、上記の平面S1の上方に位置する同一平面S2上に位置しているのが好ましい。
【0049】
また、上記したダブルダンパーの場合、2つの蝶型ダンパーを用いて構成されるので、その分だけダンパーの製品コストが高くなってしまうのに対して、本実施例では、1つのダンパーによりダブルダンパー構造を実現できるので、上記したダブルダンパーと比較して、ダンパー7の製品コストを下げることができる。これにより、スピーカー装置100の製品コストも低減できる。
【0050】
また、本実施例のダンパー7では、第1アーム72の構成要素である、アーム部72a、アーム部72b及びアーム部72cと、第2アーム73の構成要素である、アーム部73a、アーム部73b及びアーム部73cとは、外周枠70及び内周枠71の周方向Y3に一定の間隔をおいて配置され、アーム部72a、アーム部72b及びアーム部72cと、アーム部73a、アーム部73b及びアーム部73cとは、外周枠70及び内周枠71の母線方向Y2において平面的に重なっていない。このため、かかるダンパー7を射出成形方法等にて作製する場合に、第1アーム72及び第2アーム73の作製が容易となる。
【0051】
また、第1アーム72を構成する、アーム部72a、アーム部72b及びアーム部72cと、第2アーム73を構成する、アーム部73a、アーム部73b及びアーム部73cとは、外周枠70及び内周枠71の母線方向Y2において、外周枠70及び内周枠71の周方向Y3に一定の間隔をおいて交互に配置されている。これにより、ボイスコイルボビン5等を含む振動系部材31を上記の母線方向Y2及びスピーカー装置100の中心軸L1方向に安定的に振動させることができ、振動系部材31にローリングが生じるのを防止できる。
【0052】
[変形例]
上記の実施例では、内周枠70及び外周枠71はいずれも円環状の形状に形成するようにしたが、本発明では、これに限定されず、内周枠70及び外周枠71は、環状の形状を有していればよい。例えば、本発明では、内周枠70及び外周枠71は角型に且つ環状の形状に形成することもできる。
【0053】
また、上記の実施例では、第1アーム72を構成する、アーム部72a、アーム部72b及びアーム部72c、並びに、第2アーム73を構成する、アーム部73a、アーム部73b及びアーム部73ctは、それぞれS字状の形状に形成したが、本発明では、これに限定されず、それらの各アーム部は既知の各種の形状を採用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例に係るダンパーを有するスピーカー装置の断面図を示す。
【図2】本実施例に係るダンパーの斜視図及び平面図を示す。
【図3】本実施例に係るダンパーの断面図を示す。
【符号の説明】
【0055】
4 フレーム
5 ボイスコイルボビン
7 ダンパー
70 外周枠
71 内周枠
72a、73a、72b、73b、72c、73c アーム部
100 スピーカー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の環状部と、
前記第1の環状部の内側に配置された第2の環状部と、
弾性を有し、前記第1の環状部と前記第2の環状部との間に配置されると共に、前記第1の環状部と前記第2の環状部とを連結する第1及び第2アームと、を備え、
前記第1アームと前記第2アームは、前記第1の環状部及び前記第2の環状部の母線方向に距離をおいて配置され、異なる平面上に位置していることを特徴とするスピーカー装置用ダンパー。
【請求項2】
前記第1アーム及び前記第2アームの各々は、前記第1の環状部及び前記第2の環状部の周方向に一定の間隔をおいて配置された複数のアーム部を有し、
前記第1アームを構成する前記複数のアーム部と、前記第2アームを構成する前記複数のアーム部とは、前記母線方向において平面的に重なっていないことを特徴とする請求項1に記載のスピーカー装置用ダンパー。
【請求項3】
前記第1アームを構成する前記複数のアーム部と、前記第2アームを構成する前記複数のアーム部とは、前記母線方向において、前記周方向に一定の間隔をおいて交互に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカー装置用ダンパー。
【請求項4】
前記複数のアーム部はS字状の形状に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のスピーカー装置用ダンパー。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスピーカー装置用ダンパーと、
ボイスコイルが巻かれたボイスコイルボビンと、
フレームと、を備え、
前記第1の環状部はフレームに取り付けられていると共に、前記第2の環状部はボイスコイルボビンに取り付けられていることを特徴とするスピーカー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−318284(P2007−318284A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143711(P2006−143711)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】