説明

スピードスプレーヤの送風量制御装置

【課題】 吸気口の全開時に少しも空気取入の障害にならず、不都合な渦や騒音発生の原因にもならず、すっきりとした外観を備えた、実用的且つコスト上有利な、スピードスプレーヤの送風量制御装置を提供する。
【解決手段】 遮蔽板23は、スピードスプレーヤ1の送風機4の吸気口15の中央部に配設される。前記遮蔽板23は、前記送風機4の回転軸6を中心とする全方位にほぼ均等に面積が拡縮自在であり、且つ、少なくとも最も縮小した状態において前記送風機4の本来の送風量に影響しない大きさとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果樹園等で薬液の噴霧作業に用いられるスピードスプレーヤの送風量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
果樹園等で薬液(防除剤)等の噴霧作業に用いられるスピードスプレーヤは、車体の後部に大風量の送風機を備えている。この送風機は、車体に搭載した噴霧ノズルからの噴霧を前記車体の上方及び左右側方へと拡散させるための送風を行う。
【0003】
前記スピードスプレーヤによる散布作業は、果樹の葉が繁茂している時季に加えて、落葉季にも行われることがある。当然、繁茂季と落葉季では、必要とされる送風量は異なる。繁茂季には、密集状態で生い茂った葉のすべてに確実に噴霧粒子が付着するように、大風量の送風が必要となるが、落葉季には、繁茂季のような大量の送風は必要ない。そればかりか、落葉季の散布で大風量の送風を行うと、農薬等の噴霧粒子が果樹園外へも及んでしまう危険がある等、問題が多い。このため、前記送風機による送風量を調節可能にするための何らかの手段が必要である。
【0004】
また、果樹の種類によって樹木の背丈や葉の量は異なるので、繁茂季においても、望ましい送風量は果樹園ごとに異なる。この点も、前記送風機の送風量調節手段が必要とされる所以である。
【0005】
最も一般的な送風量調節手段は、前記送風機とその動力源との間に変速装置を設けることである。すなわち、前記スピードスプレーヤの走行用エンジンから前記送風機の動力を取り出す場合には、その動力伝達系に、適宜の形式の変速装置を介装すれば良い。しかし、変速装置の採用はコスト上有利であるとは言えず、しかも、送風量の多段階調節を可能にするために変速段階を多くすればするほど、コストアップにつながってしまう。送風量の調節は、季節ごと又は作業現場ごとに行われるのが通常であり、走行しながらの噴霧作業中に調節を必要とするものではないことに鑑みれば、できるだけ簡易な構成の風量調節手段を採用して、コストアップを可能な限り抑制するのが望ましい。
【0006】
送風量調節手段の他の例として、前記送風機を駆動するための専用のエンジンを設け、この送風専用エンジンの出力制御によって風量調整を行うことも考えられる。しかし、この方法はコスト上一層不利である。また、少なくとも前記送風専用エンジンの重量分だけスピードスプレーヤの重量が増してしまうほか、前記送風専用エンジンの取付スペースの確保も必要となり、好ましくない。
【0007】
さらに他の従来技術として、下記特許文献には、前記送風機の吸気口の実効面積を調整する遮蔽板を備えた吸気量制御装置が記載されている。
【特許文献1】実公昭61−35020号公報
【特許文献2】実開昭63−32668号公報
【特許文献3】実開昭63−164969号公報
【特許文献4】実開昭64−52572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献に記載のものには、次のような欠点があった。すなわち、前記吸気口の全開時においても前記遮蔽板が空気取入の邪魔になる場合がある。また、前記遮蔽板による前記吸気口の閉塞箇所のバランスが悪いことから、風の流れに片寄りが生じて前記送風機の風胴内に不都合な渦ができてしまったり、それが原因で、空気取入時の余計な騒音の原因になったりしやすい。さらに、前記吸気口の外方への突出量が大きくて邪魔になったり外観を損ねたりする場合がある。これらの欠点があるので、前記特許文献に記載のものの殆どは実用性に乏しく、現実に利用されているものは少ないのが現状である。
【0009】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、吸気口の全開時に少しも空気取入の障害にならず、不都合な渦や騒音発生の原因にもならず、すっきりとした外観を備えた、実用的且つコスト上有利な、スピードスプレーヤの送風量制御装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明に係るスピードスプレーヤの送風量制御装置は、スピードスプレーヤの送風機の吸気口の中央部に配設される遮蔽板を備え、該遮蔽板は、前記送風機の回転軸を中心とする全方位にほぼ均等に面積が拡縮自在であり、且つ、少なくとも最も縮小した状態において前記送風機の本来の送風量に影響しない大きさとされていることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
前記送風量制御装置によれば、前記遮蔽板が前記吸気口の中央部に配設され、少なくとも最も縮小した状態において前記送風機の本来の送風量に影響しない大きさであるので、前記遮蔽板を最小状態にしておけば、前記送風機の100%の送風性能が発揮される。また、前記遮蔽板の面積を前記最小状態から拡張し、又は拡張状態から縮小させることで、その面積変化分だけ前記吸気口の実効面積が増減される。これにより、前記吸気口からの空気取入量を自在に制御でき、送風量を自在に制御することができる。
【0012】
しかも、前記遮蔽板は、前記回転軸を中心とする全方位にほぼ均等に面積が拡縮自在であるので、前記吸気口の周方向のいずれの箇所でも互いに均一量の空気が取り入れられることになる。このため、空気の流れがスムーズになり、異常な騒音が発生することもない。さらに、前記遮蔽板は、前記吸気口の中央部に配設されるので、外観もすっきりとしたものとなる。加えて、前記送風量制御装置の主要部は前記遮蔽板でありその構成も簡潔であるので、コスト上も有利である。以上の理由により、前記送風量制御装置の実用性は極めて高い。
【0013】
好適な実施の一形態として、前記遮蔽板は、それぞれが径方向の拡縮用長孔を有するとともに互いに重ね合わされた複数のフィンと、該フィンの内で互いに重なり合った上下一組のフィンの端部同士を相対回動自在に連結する連結ピンと、前記拡縮用長孔の相互一致部分に挿通される中心軸を備えたものとすることもできる(請求項2)。この構成は、サイズフリーの料理用落し蓋の構成として良く知られているものと実質的に同一である。
【0014】
この実施の形態によれば、前記遮蔽板の外周から中心向きに力を加えると、前記各フィンは、前記中心軸に対する前記各拡縮用長孔の位置を互いに均一にずらしながら連動して回動する。これにより、前記遮蔽板の直径が小さくなる。逆に、前記遮蔽板の外周を外向きに引くと、前記各フィンは、前記中心軸に対する前記各拡縮用長孔の位置を互いに均一にずらしながら連動して回動し、前記遮蔽板の直径が大きくなる。このように、単一の操作によって前記複数のフィンが連動して拡縮移動するので、前記遮蔽板の拡縮操作性が良好となる。
【0015】
好適な実施の一形態として、前記複数のフィンの互いに重なり合った部分を押圧して前記遮蔽板を任意の拡縮状態に保持する弾性部材を備えたものとすることもできる(請求項3)。このようにすれば、前記遮蔽板を任意の拡縮状態に保持させるための特別な操作又は作業が不要となるので、操作性又は作業性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の一形態に係る送風量制御装置を備えたスピードスプレーヤの右側面図、図2は、図1のスピードスプレーヤの拡大後面図、図3は、図2のIII−III矢視要部拡大端面図、図4は、図2における遮蔽板の最大拡張状態の後面図、図5は、図4の遮蔽板を構成するフィンの平面図、図6は、遮蔽板を半分程度拡張したスピードスプレーヤの後面図、図7は、遮蔽板を最大に拡張したスピードスプレーヤの後面図である。
【0018】
図1のスピードスプレーヤ1は、果樹園等で防除液等の大規模散布を効率的に行うのに適した散布車である。前記スピードスプレーヤ1は、噴霧液タンク2を搭載した車体3の後部に、大風量の軸流式の送風機4を備えている。該送風機4は、前記車体3の前後方向に沿った軸線を有する風胴5と、該風胴5内に回転軸6を前後方向へ向けて配設された動翼7を備えている。該動翼7は、前記スピードスプレーヤ1を走行駆動する内燃エンジン8等を原動機として回転駆動される。前記風胴5内には、前記動翼7の前方位置に、整流羽根9が固定されている。
【0019】
前記風胴5の前方の円弧状吐風口11には、その周方向に沿って多数の噴霧ノズル10が配設されている。前記噴霧液タンク2内の防除液は、前記内燃エンジン8で駆動される散布用ポンプ13で圧送されて、前記多数の噴霧ノズル10から前記車体3の上方及び左右外方へ向けて放射状に噴霧される。同時に、前記動翼7の回転によって前記車体3の後方の吸気口15から吸入された空気は、前記整流羽根9で整流されるとともにエアガイド12に案内され、前記吐風口11から高速気流となって、前記車体3の上方及び左右外方へと放射状に吐出される。これにより、前記各噴霧ノズル10から噴霧された噴霧粒子が、樹木の葉等の目的物に向けて、より広範囲に、且つ、より遠くへと拡散する。したがって、作業者は、前記車体3の操縦席19でステアリングハンドル等の操縦装置20を操作し、果樹園内で前記スピードスプレーヤ1を低速走行させながら、前記噴霧ノズル10からの噴霧と前記送風機4による送風を行うことにより、広大な果樹園での防除作業を効率的且つ確実に行うことができる。
【0020】
図2に示すように、前記風胴5の、後方へ向けて開口した前記吸気口15には、吸気口グリッド16が配設されている。該吸気口グリッド16は、細い金属丸棒材を円板状に組み合わせて溶接し、前記車体3の後方から見てドーナツ形状の網目状または格子状に形成したものであり、前記風胴5の後面5aに対して、ねじ17等の固着具を用いて取着されている。前記吸気口グリッド16は、前記動翼7の後方で大きく開口した前記吸気口15を通気可能に覆い、主として、回転する前記動翼7による事故発生を防止する。
【0021】
図3に示すように、前記吸気口グリッド16の中央開口部16aは、気流案内作用を奏する椀状の固定式スピンナー18の後面18aで閉じられている。前記固定式スピンナー18は、前記吸気口グリッド16に固着されて支持され、その開口部18bは、前方に位置する前記動翼7の円筒状のハブ21側へ向けられている。前記動翼7は、前記回転軸6に固着された前記ハブ21と、該ハブ21の外周に沿って放射状に突設された複数枚の羽根22を備えている。前記固定式スピンナー18の外径は、前記ハブ21の外径とほぼ同一径とされている。
【0022】
図2及び図3に示すように、前記送風機4には、本発明の実施の一形態に係る送風量制御装置Mが取り付けられている。該送風量制御装置Mは、前記送風機4の前記吸気口15の中央部に配設される遮蔽板23を備えている。該遮蔽板23は、前記送風機4の前記回転軸6と同心にして前記吸気口グリッド16の後方に配置され、前記固定式スピンナー18に取り付けられている。前記遮蔽板23は、前記回転軸6を中心とする全方位にほぼ均等に面積が拡縮自在であり、且つ、少なくとも最も縮小した状態において前記送風機4の本来の送風量に影響しない大きさとされている。
【0023】
図2は、前記遮蔽板23を縮小させてその面積を最小にした状態を示している。一例として、該遮蔽板23を半分程度まで拡張すると、図6に示すように、前記吸気口15が半分程度閉じられた状態となり、前記遮蔽板23を拡張してその面積を最大にすると、図7に示すように、前記吸気口15の大部分が閉じられた状態となる。前記遮蔽板23の面積は、図2の最小状態と図6の最大状態との間で、前記回転軸6を中心として無段階に拡縮自在である。したがって、前記送風機4による送風量を無段階に制御することができる。
【0024】
図4に示すように、本実施の形態では、前記遮蔽板23として、サイズフリーの料理用落し蓋の構成として良く知られているものと実質的に同一の構成を採用している。すなわち、前記遮蔽板23は、それぞれが径方向の拡縮用長孔24を有するとともに互いに重ね合わされた複数のフィン25と、該フィン25の内で互いに重なり合った上下一組のフィンの端部同士を相対回動自在に連結する連結ピン26と、前記拡縮用長孔24の相互一致部分に挿通される中心軸27を備えている。
【0025】
前記フィン25は、いずれも図5に示す同一規格のものとされ、扇状の薄板で形成されている。前記フィン25の形状を扇形にすることで、前記遮蔽板23の最大状態の形状を円形にすることができ、且つ、前記遮蔽板23の最小状態の形状を円形により近いものとすることができる。但し、前記フィン25の形状は、扇形には限定されず、二等辺三角形等であっても良い。前記フィン25の材料としては、耐薬品性の良好なプラスチック板又はステンレス板等を用いることができる。
【0026】
前記フィン25の中心角θの大きさ及び枚数は、次の要件を満たすように設定する。すなわち、図4に示すように、前記中心軸27を中心として前記遮蔽板23を一杯まで広げたときに、互いに隣接する各フィンの半径部分が互いに同一量だけ重なり合った状態で、前記遮蔽板23の全体形状が円形又は円形近似の形状となるような角度及び枚数とする。
【0027】
また、前記フィン25の半径rは、次の要件を満たすように設定する。すなわち、前記遮蔽板23を少なくとも最も縮小した状態において、該遮蔽板23が前記送風機4の本来の送風量に影響しない(前記送風機4の定格送風量が確保される)サイズとなるような大きさである。したがって、前記フィン25の半径rは、前記動翼7の前記ハブ21の外径と同程度か、それより小さいことが好ましい。前記動翼7は、前記羽根22の先端部に近い位置ほど送風量(吸気量)が多く、前記ハブ21に近い位置ほど送風量(吸気量)が少ないので、前記フィン25の半径rを前記ハブ21の外径とほぼ同じにしてあれば、前記送風機4の最大送風性能が阻害されることはない。また、前記羽根22の根元部分ではほとんど送風が行われないことに鑑みれば、前記ハブ21の外径より前記遮蔽板23の半径rの方がやや大きい程度では、最小状態の前記遮蔽板23が前記送風機4の本来の送風性能を阻害することはほとんどないと言って良い。
【0028】
図5に示すように、前記フィン25には、前記連結ピン26の挿通孔28と、前記拡縮用長孔24が形成されている。前記連結ピン挿通孔28は、前記フィン25の円弧の両端部に形成されている。前記拡縮用長孔24は、前記フィン25の半径rのほぼ半分の長さを有し、前記フィン25の中心角θの二等分線上であって、前記フィン25の要部分側半部に形成されている。
【0029】
図4において、一番上(スピードスプレーヤ1への取付状態において最も外側又は後側)のフィン25aと二番目のフィン25bは、それらの円弧の端部同士を重ね合わせて、リベット等の前記連結ピン26で相対回動自在に連結されている。同様に、前記二番目のフィン25bと三番目のフィン25c、該三番目のフィン25cと四番目のフィン25d、該四番目のフィン25dと五番目のフィン25e、該五番目のフィン25eと六番目のフィン25f、該六番目のフィン25fと七番目のフィン25gも、それらの円弧の端部同士を重ね合わせて、前記連結ピン26で相対回動自在に連結されている。一番下(スピードスプレーヤへの取付状態において最も内側又は前側)の前記七番目のフィン25gと前記一番上のフィン25aの間は、前記連結ピン26による連結はなされていない。前記一番上のフィン25aには、その円弧寄りの位置に、拡縮操作ハンドル29が固着されている。作業者は、前記拡縮操作ハンドル29を把持して、前記遮蔽板23を容易に拡縮操作することができる。
【0030】
また、前記複数のフィン25の互いに重なり合っている要部分側には、前記拡縮用長孔24の相互一致部分に、前記中心軸27が挿通されている。該中心軸27は、図3に示すようにボルトであり、前記複数のフィン25を前後両側から挟むように重ね合わされたフィン受け板30とフィン押圧板31をも貫通している。前記ボルト27のヘッドは、第一のワッシャ32を介して前記フィン受け板30に当接し、前記フィン押圧板31から前記スピードスプレーヤ1の後方へ突出した前記ボルト27の端部には、第二のワッシャ33と、弾性部材としての圧縮コイルばね34と、第三のワッシャ35が順に装着されて、最後に止め部材としてのナット36がねじ結合されている。前記圧縮コイルばね34は、前記複数のフィン25の互いに重なり合った部分を押圧して、前記遮蔽板23を任意の拡縮状態に保持する作用を奏する。
【0031】
前記フィン受け板30の前面には、複数本の雌ネジ付き取付脚37が固着されている。該各取付脚37には、前記固定式スピンナー18を貫通する取付ボルト38がねじ結合されている。このようにして、前記遮蔽板23は前記吸気口15の中央部に取り付けられている。
【0032】
なお、前記遮蔽板23は、前記吸気口グリッド16によって直接的に支持させることもできる。
【0033】
前記構成において、前記拡縮操作ハンドル29を利用して、前記遮蔽板23の外周から中心向きに力を加えると、前記各フィン25は、前記中心軸27に対する前記各拡縮用長孔24の位置を互いに均一にずらしながら連動して回動する。これにより、前記遮蔽板23の直径が小さくなる。逆に、前記遮蔽板23の外周を外向きに引くと、前記各フィン25は、前記中心軸27に対する前記各拡縮用長孔24の位置を互いに均一にずらしながら連動して回動し、前記遮蔽板23の直径が大きくなる。このように、単一の操作によって前記複数のフィン25が連動して拡縮移動するので、前記遮蔽板23の拡縮操作性が良好である。加えて、前記圧縮コイルばね34を設けてあるので、前記遮蔽板23を任意の拡縮状態に保持させるための特別な操作又は作業は不要である。したがって、前記遮蔽板23の拡縮操作性が一層良好である。
【0034】
前記遮蔽板23の拡張状態においては、前記各フィン25の半径方向先端部側は、前記送風機4の吸気作用で吸引されて、前記吸気口グリッド16に張り付く方向に引張られる。よって、走行噴霧作業時に前記車体3が振動しても、前記遮蔽板23の拡張時の形状が不測に変化してしまうようなことはない。
【0035】
前記送風量制御装置Mによれば、前記遮蔽板23が前記吸気口15の中央部に配設され、少なくとも最も縮小した状態において、前記送風機4の本来の送風量に影響しない大きさであるので、図2に示すように前記遮蔽板23を最小状態にしておけば、前記送風機4の100%の送風性能が発揮される。また、前記遮蔽板23の面積を図2の前記最小状態から任意の拡張状態へと拡大し、又は任意の拡張状態から縮小させることで、その面積変化分だけ前記吸気口15の実効面積が増減される。これにより、前記吸気口15からの空気取入量を無断階に自在に制御でき、送風量を無断階に自在に制御することができる。
【0036】
しかも、前記遮蔽板23は、前記動翼7の前記回転軸6を中心とする全方位にほぼ均等に面積が拡縮自在であるので、前記吸気口15の周方向のいずれの箇所でも互いに均一な量の空気が取り入れられることになる。このため、空気の流れがスムーズになり、異常な騒音が発生することもない。
【0037】
さらに、前記遮蔽板23は、前記吸気口15の中央部に配設されるので、外観もすっきりとしたものとなる。図3では、図示明確化のために前記各フィン25の厚みを誇張して示してあるので、前記遮蔽板23の全体の厚みが大きくなっているが、実際には、該遮蔽板23の前記スピードスプレーヤ1の後方への突出量は僅かである。したがって、前記遮蔽板23が邪魔になったり、それによって前記スピードスプレーヤ1の外観が損なわれる等の心配はない。加えて、前記送風量制御装置Mの主要部は前記遮蔽板23でありその構成も簡潔であるので、コスト上も有利である。
【0038】
さらにまた、前記送風量制御装置Mは、既存のスピードスプレーヤに容易に後付けすることができる。よって、既存のスピードスプレーヤの使用範囲を低コストで容易に拡大することができる。
【0039】
前記送風量制御装置Mは、面積を自在に調整可能であるため、送風機の大きさが異なるスピードスプレーヤについて広く使用できる利点もある。
【0040】
以上の多くの理由により、前記送風量制御装置Mの実用性は極めて高い。
【0041】
なお、他の実施の形態として、前記遮蔽板23を前記スピードスプレーヤ1の前記操縦席19から遠隔的に拡縮操作できるようにしても良い。この場合には、前記操縦装置20の付近に図示しない操作レバー等の遮蔽板拡縮操作部材を設け、該操作部材と前記遮蔽板23とを図示しない遠隔連動装置で連動連結する。
【0042】
また、他の実施の形態として、前記遮蔽板23の全体形状を、単純な平面的な形状に代えて、その中央部が前記スピードスプレーヤ1の後方へ向けて滑らかに膨出した形状とすることもできる。このようにすれば、前記遮蔽板23が前記固定式スピンナー18と同様の気流案内作用を奏することになる。よって、該固定式スピンナー18を省略することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の一形態に係る送風量制御装置を備えたスピードスプレーヤの右側面図である。
【図2】図1のスピードスプレーヤの拡大後面図である。
【図3】図2のIII−III矢視要部拡大端面図である。
【図4】図2における遮蔽板の最大拡張状態の後面図である。
【図5】図4の遮蔽板を構成するフィンの平面図である。
【図6】遮蔽板を半分程度拡張したスピードスプレーヤの後面図である。
【図7】遮蔽板を最大に拡張したスピードスプレーヤの後面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 スピードスプレーヤ
4 送風機
6 回転軸
15 吸気口
23 遮蔽板
24 拡縮用長孔
25 フィン
26 連結ピン
27 中心軸
34 弾性部材(圧縮コイルばね)
M 送風量制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピードスプレーヤ(1)の送風機(4)の吸気口(15)の中央部に配設される遮蔽板(23)を備え、該遮蔽板(23)は、前記送風機(4)の回転軸(6)を中心とする全方位にほぼ均等に面積が拡縮自在であり、且つ、少なくとも最も縮小した状態において前記送風機(4)の本来の送風量に影響しない大きさとされている、スピードスプレーヤの送風量制御装置。
【請求項2】
前記遮蔽板(23)は、それぞれが径方向の拡縮用長孔(24)を有するとともに互いに重ね合わされた複数のフィン(25)と、該フィン(25)の内で互いに重なり合った上下一組のフィンの端部同士を相対回動自在に連結する連結ピン(26)と、前記拡縮用長孔(24)の相互一致部分に挿通される中心軸(27)を備えている、請求項1に記載のスピードスプレーヤの送風量制御装置。
【請求項3】
前記複数のフィン(25)の互いに重なり合った部分を押圧して前記遮蔽板を任意の拡縮状態に保持する弾性部材(34)を備えている、請求項2に記載のスピードスプレーヤの送風量制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−312615(P2007−312615A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142822(P2006−142822)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000141990)株式会社共立 (110)
【Fターム(参考)】