説明

スプリンクラー消火設備

【課題】散水時の居住者のパニックを防止して速やかに避難可能とする。
【解決手段】防護区画に設置された開放型スプリンクラーヘッド26と煙感知器28を設ける。給湯器10からの熱水と水道管からの水道水を混合ヘッダ20に供給して混合することにより温水を開放型スプリンクラーヘッド26に供給可能とする。混合ヘッダ20と開放型スプリンクラーヘッド26との間には、遠隔制御により開閉制御される電動弁24aが設けられる。制御盤11は、煙感知器28から火災検出信号を受信した場合に、電動弁24aを開制御して混合ヘッド20から開放型スプリンクラーヘッド26に温水を供給して散水させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者介護施設などに設置され、火災時にスプリンクラーヘッドから消火用水を放水させるスプリンクラー消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者施設として普及しているグループホーム等の簡易施設での火災が社会的な問題となっており、火災時にスプリンクラーヘッドから消火用水を放水させるスプリンクラー消火設備の設置が強く求められている。
【0003】
このような高齢者向けの簡易施設に設置するスプリンクラー消火設備としては、水道水を水源として使用することでホンプ設備を不要とし、設備構成を簡単にしてコスト的にも負担を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−095768号公報
【特許文献2】特開2008−073204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の水道水を水源としたスプリンクラー消火設備にあっては、火災時にスプリンクラーヘッドから水道水を散水するため、散水した部屋などに居住している高齢者に冷たい水道水がかかってパニックとなり、速やかな避難行動がとれなくなることが懸念される。
【0006】
本発明は、散水時の居住者のパニックを防止して速やかに避難可能とするスプリンクラー消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スプリンクラー消火設備において、
防護区画に設置されたスプリンクラーヘッドと、
防護区画に設置された火災感知器と、
給湯器からの熱水と水道配管からの水道水の混合量を調整して混合して所定温度の温水をスプリンクラーヘッドに供給する混合ヘッダと、
混合ヘッダとスプリンクラーヘッドとの間の配管に設けられ、火災感知器の火災検出時に開放されて混合ヘッドからスプリンクラーヘッドに温水を供給する制御弁と、
を設けたことを特徴とする。
【0008】
ここで、混合ヘッダは、熱水と水道水の混合量を弁穴の開度を調整して温水温度を所定温度に維持する調整機構を備える。
【0009】
また火災感知器は、煙感知器または炎感知器を使用する。
【0010】
混合ヘッダは、少なくとも2つの温水ポートを備え、温水ポートにスプリンクラーヘッドに対するヘッド配管をループ接続し、各温水ポートの出口部分のヘッド配管の各々に制御弁を設ける。
【0011】
混合ヘッダの温水ポートに対応して設けた制御弁の2次側に、少なくとも4つのポートを持つヘッダを介して開放型スプリンクラーヘッドをループ接続する。
【0012】
ヘッダは第1ポート、第2ポート、第3ポート及び第4ポートを有し、第1ポートに入力配管を接続し、第2ポートと第3ポートに開放型スプリンクラーヘッドを接続するヘッド配管をループ接続し、第4ポートを次のヘッダの第1ポートに対する渡り配管を接続する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、火災時に混合ヘッドで調整された温水をスプリンクラーヘッドから散水するため、散水した部屋などに居住している高齢者等に放水がかかっても温水であることからパニックとならず、落ち着いて避難を開始することができる。
【0014】
また、混合ヘッダの温度調整により同一施設内の散水温度を人体に触れた場合に熱くも冷たくもない適正な一定温度に保つことができる。
【0015】
また火災感知器として煙感知器または炎感知器を使用しており、煙感知器または炎感知器の発報により早期に散水が開始されるため、初期消火も容易で煙の発生が少なく、容易に避難できる。
【0016】
また、給湯器が動作しない場合であっても、水道水をそのまま優先的に散水するため、信頼性を高めることができる。
【0017】
また混合ヘッダに対しスプリンクラーヘッドに対する配管を制御弁を介してループ接続することにより、水圧に制限のある水道水であっても圧力損失を抑えて充分な放水量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるスプリンクラー消火設備の実施形態を示した説明図
【図2】図1の混合ヘッダの実施形態を示した説明図
【図3】図1の混合ヘッダの他の実施形態を示した説明図
【図4】混合ヘッダに対しヘッド配管をループ接続した本発明の他の実施形態を示した説明図
【図5】混合ヘッダに対し4ポートのヘッダを介してヘッド配管をループ接続する本発明の他の実施形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明によるスプリンクラー消火設備の実施形態を示した説明図である。図1において、本実施形態にあっては、高齢者向け施設として共用部Aと個室Bの部分を一例として示しており、共用部Aと個室Bからなる施設は日常生活に必要なお湯を供給する給湯器10が設置されている。
【0020】
給湯器10からは給湯配管16が引き出され、ヘッダ18で分岐され、例えば共用部に設けた混合水栓32に給湯している。混合水栓32には水道配管14を接続したヘッダ15からの配管が接続され、給湯器10からの熱水と水道配管14からの水道水を適宜に混合することで、希望する温水を出すようにしている。
【0021】
本実施形態にあっては、水道配管14により供給される水道水を水源とし、これに給湯器10からの熱水を利用したスプリンクラー消火設備を構築している。本実施形態のスプリンクラー消火設備にあっては、混合ヘッダ20が設けられ、混合ヘッダ20には水道配管14からの水道水がヘッダ15を介して供給されている。また給湯器10からの熱水がヘッダ18からチャッキ弁22を介して供給されている。
【0022】
混合ヘッダ20は給湯器10から供給された熱水と水道配管14による水道水とを所定の割合で混合し、散水により人体に触れた場合に熱くもなく冷たくもない適正な所定温度に調整された温水を供給できるようにしている。
【0023】
混合ヘッダ20からは電動弁(制御弁)24aを介してヘッド配管25が共用部に引き出され、共用部に設置している開放型スプリンクラーヘッド26を接続している。また混合ヘッダ20からは電動弁24bを介してヘッド配管25が引き出され、個室に設置した開放型スプリンクラーヘッド26に接続している。
【0024】
開放型スプリンクラーヘッド26を設置した共用部A及び個室Bのそれぞれには、火災感知器として、本実施形態にあっては煙感知器28を設置している。煙感知器28は火災による煙濃度が所定濃度に達したときに発報して火災検出信号を中継器30に出力する。中継器30は本実施形態にあっては煙感知器28ごとに設けられており、煙感知器28から火災検出信号を受信すると、対応する電動弁24a,24bに対し開制御信号を出力すると共に、火災制御信号を制御盤11に出力する。
【0025】
制御盤11は中継器30を介して煙感知器28からの火災検出信号を受信すると、給湯器10に対し運転指示信号を出力して給湯器10の給湯動作を行わせる。また制御盤11は手動操作により電動弁24a,24bの開閉操作ができる。
【0026】
給湯器10としては、瞬間湯沸器、貯湯湯沸し器、貯蔵湯沸器など適宜の給湯器を使用することができる。例えば給湯器10として瞬間湯沸器を使用した場合には、火災検出信号により電動弁24aまたは24bが開放して散水が開始されると、このときの水流により給湯器10の自動点火が行われて、水道配管14からの水道水を加熱して熱水として給湯配管16に供給することが可能である。
【0027】
また制御盤11は給湯器10の動作チェックなどの監視機能を備えており、給湯器10の運転待機状態、停止状態などを表示し、また給湯器10の試験により正常か障害かの点検監視も行うことができる。
【0028】
なお本実施形態にあっては、水道水を分配するヘッダ15及び給湯器10からの熱水を分配するヘッダ18を介して混合ヘッダ20に熱水と水道水を供給するようにしているが、混合ヘッダ20を単独で設け、ここに給湯器10からの熱水と水道配管14による水道水の供給を直接行うようにしてもよい。
【0029】
図2は図1の混合ヘッダの実施形態を示した説明図である。図2において、混合ヘッダ20は、本体38の内部に、左側から熱水室38a、混合室38b及び温水室38cを形成している。熱水室38aと混合室38bの隔壁部分には弁穴48が開口され、ここにテーパ弁体46を配置している。
【0030】
テーパ弁体46は、右側に連通開口54を備えた隔壁52との間に設けた形状記憶合金バネ56を当接しており、左側には本体48の端部に、ネジ部50bにより進退自在に設けた調整ロッド50との間に設けた初期設定バネ58を当接している。調整ロッド50は外部に調整ノブ50aを設けており、調整ノブ50aによりネジ部50bを回すことで、初期設定バネ58に対するバネ荷重を任意の初期値に設定可能としている。
【0031】
本体38の熱水室38aの下側には熱水ポート40が設けられ、ここに給湯器からの熱水が供給される。また混合室38bの下側には水道水ポート42が設けられ、ここに冷水となる水道水が供給される。右側の温水室38cには、この実施形態にあっては4つの温水ポート44が設けられ、温水ポート44から混合した所定温度の温水、例えば体温付近となる温度の温水を外部に供給できるようにしている。
【0032】
ここで形状記憶合金バネ56は所定の設定記憶温度に達すると、バネが伸展して記憶形状に変異し、その後、記憶設定温度以下に下がると記憶形状の保持機能は失われて外力により縮むことを可能とする性質を有する。
【0033】
次に図2の混合ヘッド12の動作を説明する。初期状態にあっては形状記憶合金バネ56は混合室38bの温度が記憶設定温度より低いことから、記憶形状に伸展変形しておらず、調整ロッド50のねじ込み操作で決まる初期設定バネ58のバネ荷重とのバランスで決まる位置にテーパ弁体46を保持し、弁穴48との間の開度を初期開度に設定している。
【0034】
この状態で熱水ポート50に熱水が供給されると同時に水道水ポート42に水道水が供給され、そのときの初期開度で決まる量の熱水が熱水室38aから混合室38bに流れ込んで水道水と混合され、設定温度に近い温水となって温水室38cに入り、温水ポート44から外部に供給される。
【0035】
熱水室38aから流れ込む熱水の温度が高くなることで、混合室38bの温水の温度が形状記憶合金バネ56の記憶設定温度を超えたとすると、形状記憶合金バネ56が記憶形状に伸展し、初期設定バネ58に抗してテーパ弁体46を左側に押すことで、弁穴48の流路を閉じるか狭めることになる。
【0036】
これによって混合室38bに流れ込む熱水室38aからの熱水の量が減少または停止し、水道水によって温水の温度が低下する。なお、弁穴48を閉じて熱水の供給を停止したとしても、混合ヘッダ20内や配管25が暖められているため、いきなり開放型スプリンクラーヘッド26から水道水のみの冷たい水が散水されることはない。その後、形状記憶合金バネ56が水道水で冷やされることから、温水の温度が記憶設定温度を下回ると、形状記憶合金バネ56の記憶形状を保つ剛性が失われ、このため初期設定バネ58のバネ荷重によってテーパ弁体46は右側に押し戻されて弁穴48の開度を広げ、混合室38bに流れ込む熱水の量が増加し、温水の温度が増加する。このような温水の温度に応じたテーパ弁体46の動きにより、混合ヘッダ20から供給される温水は所定温度に維持されることになる。
【0037】
図3は図1の混合ヘッダの他の実施形態を示した説明図であり、ピストン型の弁機構を用いたことを特徴とする。図3において、混合ヘッダ20の本体38に、左側から熱水室38a、混合室38b及び温水室38cに仕切られており、熱水室38aはシリンダを構成し、Oリング61を備えたピストン60を摺動自在に組み込んでいる。
【0038】
ピストン60の右側にはロッド62が一体に設けられ、混合室38bとを仕切る隔壁に設けた弁穴の弁座66の右側にロッド62と一体に円盤状の弁体64を設けている。ロッド62の右端と連通開口54を備えた隔壁52との間には、図2の実施形態と同様、形状記憶合金バネ56が配置されている。またピストン60と本体38の左側端部にネジ部50bにより軸方向に調整自在に設けた調整ロッド50との間には、初期設定バネ58が配置されている。
【0039】
また図2の実施形態と同様、本体38の温水室38aに対しては温水ポート40が設けられ、混合室38bに対しては水道水ポートが設けられ、更に温水室38cには4つの温水ポート44が設けられている。
【0040】
図3の混合ヘッダ20の動作は次のようになる。初期状態にあっては、調整ロッド50のノブ50aの操作によるネジ部50bのねじ込みにより初期設定バネ58のバネ荷重を調整することで、形状記憶合金バネ56との荷重バランスで決まる位置にピストン60、ロッド62及び弁体64でなる弁部材が位置し、弁座66との間に所定の初期開度を設定している。
【0041】
この状態で熱水ポート40に熱水が供給されると同時に水道水ポート42に水道水が供給されると、弁座66に対する弁体64の開度で決まる量の熱水が混合室38bに流れ込み、水道水と混合されて所定の温水となって温水室38aから外部に供給される。
【0042】
この状態で温水の温度が形状記憶合金バネ56の記憶設定温度を超えたとすると、形状記憶合金バネ56が記憶形状に伸展して、初期設定バネ58に抗してロッド62を介してピストン60を左側に押し、弁座66に対し弁体64が当接するか流路を絞ることで、混合室38bに流れ込む熱水の量を減少または停止させる。
【0043】
これによって混合室38bに対する熱水の量が減少して温水の温度が低下する。温水の温度が形状記憶合金バネ56の記憶設定温度を下回ると、形状記憶合金バネ56の記憶形状を保つ剛性が失われ、初期設定バネ58の力によりピストン60が右側に押し戻され、弁座66に対する弁体64の開度が増して混合室38bに流れ込む熱水の量が増加し、温水の温度が上昇する。このような温水温度に依存した形状記憶合金バネ56の機能による弁体64の動きで、温水室38cから供給される温水の温度が所定温度に保たれることになる。
【0044】
次に図1を参照して、本実施形態におけるスプリンクラー消火設備の全体的な動作を説明する。いま共用部Aで火災が発生し、共用部Aに設けている煙感知器28において火災による煙濃度が所定濃度に達することで火災発報となり、火災検出信号を中継器30に出力したとする。
【0045】
中継器30は煙感知器28からの火災検出信号を受信すると、混合ヘッダ20の2次側に設けた電動弁24bに開制御信号を出力して開放させる。また制御盤11に対し火災検出信号を出力し、給湯器10に運転指示信号を出力して給湯動作を開始させる。
【0046】
電動弁24bが開制御されると、混合ヘッダ20より給湯器10から供給された熱水と水道配管14から供給された水道水を、図2または図3の混合ヘッダ20の実施形態に示したように混合して、所定の温度の温水をヘッド配管25を介して共用部Aに設置されている開放型スプリンクラーヘッド26に供給して散水させる。
【0047】
このとき開放型スプリンクラーヘッド26から散水される消火用水は混合ヘッダ20で調整された温水となっており、共用部Aに高齢者がいて開放型スプリンクラーヘッド26からの散水を身体で受けたとしても、散水している温水は人体に触れたとしても熱くもなくまた冷たくもない適正な温度であることから、散水を受けてもパニックとならず、落ち着いて避難を開始することができる。
【0048】
また本実施形態にあっては、火災を早期に発見可能な煙感知器28の火災検出信号により、開放型スプリンクラーヘッド26から温水を散水するようにしているため、火災の初期段階で散水が開始され、確実に初期消火を行うことが可能となる。
【0049】
また本実施形態にあっては、給湯器10が万一故障して、混合ヘッダ20に対し熱水の供給ができない場合であっても、図2または図3の混合ヘッダ20の実施形態から明らかなように、熱水の供給がなくとも水道水をそのまま供給することができ、温水を散水するメリットは損なわれるが、スプリンクラー消火設備としての機能は何ら損なわれることなく、火災発生に対し確実に消火を行うことができる。
【0050】
また通常時にあっては、混合ヘッダ20の2次側に設けている電動弁24a、24bは全閉状態にあり、開放型スプリンクラーヘッド26までのヘッド配管25には水が来ておらず、電動弁24a、24bが開かれない限り、誤動作により散水が行われてしまうことは起きない。
【0051】
図4は混合ヘッドに対しヘッド配管をループ接続した本発明の他の実施形態を示した説明図である。図4において、混合ヘッダ20には4つの温水ポートPa〜Pdが設けられており、共用部Aに対しては温水ポートPaから電動弁24aを介してループ配管70aが引き出され、ループ配管70aの反対側は電動弁24bを介して温水ポートPbに接続されている。
【0052】
また個室Bに対しては温水ポートPcから電動弁24cを介してループ配管70bが引き出され、ループ配管70bは電動弁24dを介して温水ポートPdに接続されている。ループ配管70a,70bのそれぞれには開放型スプリンクラーヘッド26が接続されている。それ以外の構成は図1の実施形態と同じであり、また混合ヘッダ20も図2または図3に示した実施形態と同じになる。
【0053】
図4の実施形態にあっては、水圧に制限のある水道水を使用した場合の損失を低減し、水道水であっても十分な放水量を確保することができる。例えば共用部Aで火災が発生して煙感知器28aが火災検出信号を出力すると、中継器30は制御盤11に火災検出信号を出力すると共に、電動弁24a,24bに対し開制御信号を出力して開放動作を行わせる。
【0054】
このため開放型スプリンクラーヘッド26に対しては、混合ヘッダ20の温水ポートPaと温水ポートPbの2つのポートからの温水が供給され、これによって配管における損失を低減すると共に、十分な温水を供給して散水することが可能となる。このようなループ配管による損失低減と散水量の確保は、ポートPc,Pd側についても同様である。
【0055】
図5は混合ヘッダに対し4ポートのヘッダを介してヘッド配管をループ接続する本発明の他の実施形態を示した説明図である。図5にあっては、温水を供給する混合ヘッダ20の2次側のみを取り出して示しており、混合ヘッダ20の温水ポートは電動弁24aを介して引き出されている。
【0056】
本実施形態にあっては、電動弁24aの2次側の配管系に3箇所に分けて開放型スプリンクラーヘッド26を設置した場合を例に取っており、3箇所の開放型スプリンクラーヘッド26に対応して、4つのポートP1〜P4を備えた3つのヘッダ72を配置している。
【0057】
1段目のヘッダ72については、電動弁24aからの入力配管をポートP1に接続し、ポートP2からループ配管70を引き出してポートP3に接続し、ループ配管70の途中に開放型スプリンクラーヘッド26を接続している。ポートP4は次のヘッダ72のポートP1に対する入力配管としての渡り配管74を接続している。
【0058】
2段目のヘッダ72についても、1段目のヘッダ72と同様、ポートP2をポートP3にループ配管70で接続し、ループ配管70に開放型スプリンクラーヘッド26を接続している。3段目のヘッダ72についても同様である。3段目のヘッダ72のポートP4は1段目のポートP1側にループ接続しても良いし、水圧が確保できればP4は閉鎖してもよい。
【0059】
このように混合ヘッダ20の2次側に設けた電動弁24aに対し、多段階に4つのポートP1〜P4を備えたヘッダ72を使用して複数の開放型スプリンクラーヘッド26を多段接続するループ配管を、必要に応じて任意数の段数設けることができ、ループ配管により水圧の損失を防止して各開放型スプリンクラーヘッド26から同様な散水量で散水することができる。
【0060】
ヘッダ72を用いた開放型スプリンクラーヘッド26のループ配管70にあっては、火災検出により電動弁24aを開制御した場合、ポートP1に供給された温水はポートP2及びポートP3のそれぞれからループ配管70の途中に設けた開放型スプリンクラーヘッド26に供給されて散水され、これによって温水の供給に伴う損失を低減し、且つ十分な量の温水を供給して散水することができる。このため水源として水道水による制限された圧力であっても、十分な量の散水を開放型スプリンクラーヘッド26から行うことが可能となる。
【0061】
なお、各ヘッダ72に更にポートを二つづつ用意し、ヘッダ72同士を別に設けた配管により直接接続して、各スプリンクラーヘッド26までの水圧の損失を防ぐ構成としてもよい。
【0062】
なお、上記の図1や図4の実施形態にあっては、共用部または個室といった1つの防護区画に開放型スプリンクラーヘッド26を1台設けた場合を例に取っているが、ヘッド1台当たりの規定散水量を確保できる範囲で複数設けてもよいことはもちろんである。図4または図5に示したループ配管による場合には、ループ配管に2台の開放型スプリンクラーヘッド26を接続しても、図1の実施形態と同等の放水量をほぼ確保することが可能である。
【0063】
また上記の実施形態は火災を早期に検出して散水させる火災感知器として煙感知器を例に取っているが、これ以外に火災による炎を検出して火災検出信号を出力する炎感知器を使用してもよい。また感知器以外に、発振器を設けることによる手動操作で電動弁を開放して温水を散水させるようにしてもよい。
【0064】
また、火災感知器の火災の誤検出による散水を防止することを優先させる場合は、スプリンクラーヘッドを閉鎖型とし、スプリンクラーヘッドと火災感知器のアンドの作動で散水をおこなうようにしてもよい。火災感知器は閉鎖型感知ヘッドでもよく、閉鎖型感知ヘッドが火災の熱を感知して内部の弁体を開放し、電動弁の代わりに設けた一斉開放弁を開放する構成としてもよい。
【0065】
また、給湯器10と混合ヘッド20の間には配管16が存在し、散水時初期の混合ヘッドの熱水ポート40に入る水が、必ずしも熱水でないことが考えられ、最初はスプリンクラーヘッドから冷水が散水される可能性がある。この場合は、混合ヘッダ20から出力される水が所定の温度以上の温水となるまで一時的に排水して、熱水ポート40又は温水ポート44の水温を監視して所定温度になったらスプリンクラーヘッドに温水を供給するような、例えば三方弁のような切替制御弁を給湯器10から開放型スプリンクラーヘッド26の間の配管に設けても良い。
【0066】
また本発明は主に高齢者向設備を対象とするものであるが、これに限定されず、例えば一般家庭における水道水を利用したスプリンクラー消火設備として使用することも可能である。
【0067】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0068】
10:給湯器
11:制御盤
12:混合ヘッダ
14:水道配管
15,18:ヘッダ
16:給湯配管
20:混合ヘッド
22:チャッキ弁
24a〜24d:電動弁
26:開放型スプリンクラーヘッド
28:煙感知器
30:中継器
32:混合水栓
34:トイレ
38:本体
38a:熱水室
38b:混合室
38c:温水室
40:熱水ポート
42:水道水ポート
44:温水ポート
46:テーパ弁体
48:弁穴
50:調整ロッド
52:隔壁
54:連通開口
56:形状記憶合金バネ
58:初期設定バネ
60:ピストン
62:ロッド
64:弁体
66:弁座
70a,70b:ヘッドループ配管
72:ヘッダ
74:渡り配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護区画に設置されたスプリンクラーヘッドと、
前記防護区画に設置された火災感知器と、
給湯器からの熱水と水道配管からの水道水の混合量を調整して混合して所定温度の温水を前記スプリンクラーヘッドに供給する混合ヘッダと、
前記混合ヘッダと前記スプリンクラーヘッドとの間の配管に設けられ、前記火災感知器の火災検出時に開放されて前記混合ヘッドから前記スプリンクラーヘッドに温水を供給する制御弁と、
を設けたことを特徴とするスプリンクラー消火設備。
【請求項2】
請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記混合ヘッダは、熱水と水道水の混合量を弁穴の開度を調整して温水温度を所定温度に維持する調整機構を備えたことを特徴とするスプリンクラー消火設備。
【請求項3】
請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記火災感知器は、煙感知器または炎感知器であることを特徴とするスプリンクラー消火設備。
【請求項4】
請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記混合ヘッダは、少なくとも2つの温水ポートを備え、前記温水ポートに前記スプリンクラーヘッドに対するヘッド配管をループ接続し、各温水ポートの出口部分のヘッド配管の各々に前記制御弁を設けたことを特徴とするスプリンクラー消火設備。
【請求項5】
請求項1記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記混合ヘッダの温水ポートに対応して設けた前記制御弁の2次側に、少なくとも4つのポートを持つヘッダを介して前記スプリンクラーヘッドをループ接続したことを特徴とするスプリンクラー消火設備。
【請求項6】
請求項5記載のスプリンクラー消火設備に於いて、前記ヘッダは第1ポート、第2ポート、第3ポート及び第4ポートを有し、第1ポートに入力配管を接続し、第2ポートと第3ポートに前記スプリンクラーヘッドを接続するヘッド配管をループ接続し、第4ポートを次の前記ヘッダの第1ポートに対する渡り配管を接続することを特徴とするスプリンクラー消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179330(P2012−179330A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46097(P2011−46097)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】