説明

スプリンクラー配管兼用空調システム

【課題】建物における空調システムにおける配管とスプリンクラー設備における配管を合理的に兼用する。
【解決手段】建物に設置される消火設備としてのスプリンクラー設備における配管の一部を当該建物に設置される空調システムにおける配管と兼用するスプリンクラー配管兼用空調システムであって、スプリンクラー設備における立主管を空調システムにおける立主管3(往管3a)と兼用し、及び/又は、スプリンクラー設備における各階の横主管を空調システムにおける各階の横主管8(往管8a)と兼用する。本発明における空調システムは、各階の天井部に設置した輻射パネル9による輻射空調システムであることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に設置される消火設備としてのスプリンクラー設備における配管の一部を当該建物に設置される空調システムにおける配管と兼用するスプリンクラー配管兼用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように建物に設置される空調システムにおいては、熱媒体である冷温水(冷房時においては冷水、暖房時においては温水)を、パイプシャフトに設置した立主管から各階に設置した横主管を介して各空調機器に循環供給することが最も一般的であり、その一例を図4に示す。
これは地域冷暖房システムから熱源の供給を受け、各階の空調システムとして輻射パネルによる輻射空調システムを採用した場合の例であって、符号1は地階の機械室に設置された一次熱交換器、2は一次ポンプ、3はパイプシャフト内に設置された立主管(往管3aおよび還管3b)、4は一次膨張タンク、5は各階に設置された二次熱交換器、6は二次ポンプ、7は二次膨張タンク、8は各階の横主管(往管8aおよび還管8b)、9は天井面に設置された輻射パネルである。
【0003】
一方、建物には規模や用途に応じてスプリンクラー設備の設置が義務付けられ、これもパイプシャフト内に設置された立主管から各階に分岐された横主管を介して多数のスプリンクラーヘッドが各階の天井面に設置される。その一例を同じく図4に併せて示す。
図4における符号10は消火水槽、11はスプリンクラーポンプ、12は双口送水口、13はパイプシャフト内に設置された立主管、14は消防用補助高架水槽、15は各階に設置されたアラーム弁、16は各階の横主管、17はスプリンクラーヘッドである。
【0004】
このように、従来の建物では空調システムとスプリンクラー設備がそれぞれ独立に設置されることから、建物のパイプシャフトや各階の天井内にはそれらを双方の配管を重複して設置するための充分なスペースを確保しなければならず、設備費や施工性の点でも不合理である。
そのため、たとえば特許文献1に示されるようにそれら配管の一部を兼用する配管システムについての提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−319828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示される配管システムは天井内配管を高度にシステム化してそれをマトリックスに配管するものであって、配管経路や総配管長を必ずしも充分に合理化できるものではないし、コスト削減や施工性改善もさして期待できるものでもなく、普及するに至っていない。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は空調配管とスプリンクラー配管とを簡易にかつ合理的に兼用し得る有効適切なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は建物に設置される消火設備としてのスプリンクラー設備における配管の一部を当該建物に設置される空調システムにおける配管と兼用するスプリンクラー配管兼用空調システムであって、前記スプリンクラー設備における立主管を前記空調システムにおける立主管と兼用し、及び/又は、前記スプリンクラー設備における各階の横主管を前記空調システムにおける各階の横主管と兼用することを特徴とする。
【0009】
本発明における空調システムは、各階の天井部に設置した輻射パネルによる輻射空調システムであることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空調システムとスプリンクラー設備における双方の立主管及び/又は横主管とを兼用することにより、配管系全体を充分に簡易に合理化することができ、したがってパイプシャフト内および天井内での配管の設置スペースの節約や施工性の改善を実現できるし、コストダウンを充分に図ることができる。
また、本来的には非常時にしか作動しないスプリンクラー設備の一部を常時運転する空調システムと兼用することにより、防災設備としての信頼性を向上させることができるし、防災設備に対する定期的な点検作業を軽減できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態であるスプリンクラー配管兼用空調システムの概要を示す系統図である。
【図2】同、通常モード(空調運転時)の運転状況を示す図である。
【図3】同、非常モード(スプリンクラー作動時)の運転状況を示す図である。
【図4】従来一般の空調システムとスプリンクラー設備の概要を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を図1に示す。本実施形態は図4に示したように従来は独立に設置されている空調システムにおける配管とスプリンクラー設備における配管の一部を兼用するものであって、特に双方の立主管と各階の横主管とを兼用するようにしたものである。
【0013】
本実施形態における空調システムは、基本的には図4に示した従来のシステムと同様に各階の空調システムとして輻射パネル9による輻射空調システムを採用した場合の適用例であって、一次熱交換器1、一次ポンプ2、パイプシャフト内に設置した立主管3(往管3aおよび還管3b)、一次膨張タンク4、各階に設置した二次熱交換器5、二次ポンプ6、二次膨張タンク7、横主管8(往管8aおよび還管8b)、天井面に設置された輻射パネル9により構成されたものであり、通常時(空調運転時)には図2に示すような経路で冷温水を循環させて従来と同様の輻射空調を行うものである。なお、二次膨張タンク7は開放型に限らず密閉型としても良い。
【0014】
一方、本実施形態におけるスプリンクラー設備も、基本的には図4に示した従来のものと同様に消火水槽10とスプリンクラーポンプ11を備えているものの、図4に示したような専用の立主管13は省略されていて、スプリンクラーポンプ11の吐出側を空調システムにおける上記の立主管3(往管3a)に接続してそれをスプリンクラー設備の立主管として兼用しており、各階のアラーム弁15をその立主管3(往管3a)に接続している。また、その立主管3(往管3a)に一次熱交換器1を介して接続されている一次膨張タンク4は消防用補助高架水槽を兼用するものとなり、したがって従来における消防用補助高架水槽14も省略されている。
さらに、従来においてはアラーム弁15の吐出側に接続されている各階の横主管16も省略され、アラーム弁15の吐出側を空調システムにおける上記の横主管8(往管8a)に接続してそれを延長してスプリンクラーヘッド17に接続しており、空調システムにおける上記の横主管8(往管8a)がスプリンクラー配管を兼用するものとなっている。
【0015】
そして、本実施形態では、空調運転時に火災が発生した際には、スプリンクラーヘッド放水によりスプリンクラーポンプ11が起動すると同時に配管経路が切り換えられて、図3に示すように消火水槽10から立主管3(往管3a)、アラーム弁15、横主管8(往管8a)を介してスプリンクラーヘッド17からの散水がなされるようになっている。なお、空調運転停止時にも同様に配管経路の切り換えを行うと良い。
具体的には、火災発生によりスプリンクラーヘッドが放水したら、スプリンクラーポンプ11が起動するとともに、配管経路の要所(たとえば輻射パネル9の前後や、二次熱交換器5の入口等)に予め設置されている遮断弁が自動的に開閉操作されて配管経路が図2に示す空調運転時の通常モードから図3に示すスプリンクラー作動時の非常モードへと切り換えられ、それにより通常の密閉式スプリンクラー設備と同様にスプリンクラーポンプ11からスプリンクラーヘッド17へ至る配管経路に消火水が加圧供給され、さらに火災が拡大してスプリンクラーヘッド17が開放された場合には直ちにそこから散水が開始されるようになっている。但し、空調機器及び空調配管が消火設備と同等の性能を確認できる場合は遮断弁を省いても良い。
【0016】
以上のように、従来においてはそれぞれ独立に設置していた空調システムとスプリンクラー設備における双方の立主管と横主管とを兼用することにより、配管系全体を簡易にかつ充分に合理化することができ、それによりパイプシャフト内および天井内での配管の設置スペースを節約できるし、施工性を大きく改善でき、コストダウンを充分に図ることができる。
しかも、スプリンクラー設備は本来的には非常時にしか作動しないので不断の点検が必要であるが、本実施形態のようにスプリンクラー設備の一部を空調システムと兼用することにより常時運転することになるから、防災設備としての信頼性を自ずと向上させることができるし、防災設備に対する定期的な点検作業を軽減できる利点もある。
【0017】
なお、上記実施形態はあくまで好適な一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、本発明は様々な用途や規模の建物に広く適用できるものであって、それに応じた適宜の設計的変更や応用が可能なものである。
たとえば、上記実施形態では立主管と横主管を兼用するものとしたが、立主管のみを兼用することでも良いし、横主管のみを兼用することでも良い。
また、上記実施形態は各階に設置する空調機器として輻射パネルを使用した輻射空調システムへの適用例であるが、本発明は熱媒体として水を循環させるものであれば様々な空調システムへの適用が可能であり、したがって空調機器としては輻射パネルに限らずファンコイルユニットやエアハンドリングユニット、水冷パッケージであっても良いし、熱源設備も上記実施形態のように地域冷暖房システムより熱源供給を受けるものに限ることはない。
但し、いずれにしても空調システムとスプリンクラー設備に兼用する立主管及び/又は横主管の仕様は、空調システムとして要求される機能とスプリンクラー設備として要求される機能の双方を満足し得るように設定する必要がある。
【符号の説明】
【0018】
1 一次熱交換器
2 一次ポンプ
3 立主管
3a 往管(スプリンクラー設備の立主管を兼用)
3b 還管
4 一次膨張タンク(消防用補助高架水槽を兼用)
5 二次熱交換器
6 二次ポンプ
7 二次膨張タンク
8 横主管
8a 往管(スプリンクラー設備の横主管を兼用)
8b 還管
9 輻射パネル
10 消火水槽
11 スプリンクラーポンプ
12 双口送水口
15 アラーム弁
17 スプリンクラーヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置される消火設備としてのスプリンクラー設備における配管の一部を当該建物に設置される空調システムにおける配管と兼用するスプリンクラー配管兼用空調システムであって、
前記スプリンクラー設備における立主管を前記空調システムにおける立主管と兼用し、及び/又は、前記スプリンクラー設備における各階の横主管を前記空調システムにおける各階の横主管と兼用することを特徴とするスプリンクラー配管兼用空調システム。
【請求項2】
前記空調システムは、各階の天井部に設置した輻射パネルによる輻射空調システムであることを特徴とする請求項1記載のスプリンクラー配管兼用空調システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−4944(P2011−4944A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151010(P2009−151010)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】